説明

可視光通信受信器

【課題】可視光通信信号の混信防止を簡単な構成で実現することができる可視光通信受信器を提供する。
【解決手段】筐体10と;開口部10aを有する光遮蔽部材30と;前記筐体10内に前記開口部10aに対向するように所定間隔を有して配設され、可視光領域に感度を持ち前記開口部10aと略同面積を有する受光素子11と;前記受光素子11で受光した可視光から可視光通信信号を復調する復調手段12と;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可視光通信信号を受信可能な可視光通信受信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明制御システムにおいて、照明装置から出射される可視光による可視光通信を利用した提案がされている。例えば、照明装置に予めアドレスを設定しておき、照明装置は点灯時に自己のアドレスを可視光通信によって送信する。そして、可視光信号を受信可能な端末が可視光に含まれるアドレス情報を受信し、受信したアドレス情報を含む制御信号によって特定の照明装置を制御することができる。可視光通信は、通信範囲を特定することができるためこのように照明制御システムに適用すれば、視覚的に制御対象となる照明装置を容易に判別することができる。
【0003】
ところが、複数の照明装置が互いの照射範囲が重複するように設置されると、可視光信号を受信する受信器は複数の可視光信号を受信してしまい正しいデータを取得できない場合がある。
【0004】
そこで、可視光信号を時分割で送信する等の制御により、可視光通信領域が重複する照明装置から送信される可視光信号を時間的にずらすことで混信を防止する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−266794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では特別な中央制御装置が必要であるとともに予め可視光通信を発信するタイミングを設定する必要があり、設定が手間である。また、新たに照明装置を追加する場合は、その制御系に接続する必要があるため、既に敷設したシステムに対応していない照明装置は可視光通信信号を他の照明装置と混信しないタイミングで送信することができないという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、可視光通信信号の混信防止を簡単な構成で実現することができる可視光通信受信器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る可視光通信受信器は、筐体と;開口部を有する光遮蔽部材と;前記筐体に前記開口部に対向するように所定間隔を有して配設され、可視光領域に感度を持つ受光素子と;前記受光素子で受光した可視光から可視光通信信号を復調する復調手段と;を具備したことを特徴とする。
【0008】
開口部を有する光遮蔽部材とは、例えば、開口部が設けられた平面状の部材や筒状の部材であってもよく、筐体の一部または別体であってもよい。開口部の形状は円形、四角形、その他どのような形状であってもよい。
受光素子は、可視光に感度を有しており、例えば、可視光領域の光を受信したときに電気信号に変換するものである。
開口部に対向するとは、開口部を介して外部に望むように配設されていることをいい、開口部を平面視したときに視認可能な構成であることをいう。
請求項2の発明に係る可視光通信受信器は、前記受光素子は、前記開口部と略同面積を有することを特徴とする。
開口部の面積とは、開口部を平面視したときの面積であり、受光素子の面積とは、可視光を実質的に受光可能な面積をいう。
【0009】
受光素子の面積が開口部と略同面積とは、両者が同面積の場合の他、受光素子の面積が開口部の面積に対して多少異なる場合も含む。例えば開口部と受光素子との面積比が0.5〜1.6程度であってもよく、好ましくは0.6〜1.0程度が望ましい。
請求項3の発明に係る可視光通信受信器は、前記受光素子は、前記開口部を平面視したときに全体が開口部の内側に配設されていることを特徴とする。
【0010】
全体が開口部の内側に配設されるとは、開口部を平面視したときに受光素子の外周が開口部の周縁よりも内側にあることをいい、この場合は受光素子の面積は開口部の面積よりも小さく、開口部と受光素子との面積比が1.0以下となる。
請求項4の発明に係る可視光通信受信器は、前記受光素子から前記開口部までの領域を含む所定位置に空間部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
所定位置に空間部が設けられているとは、受光素子及びその周囲から開口部方向にかけて、筐体の外部斜め方向から開口部を介して入射した光が反射等する部材が無いことをいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る可視光通信受信器によれば、可視光通信信号の混信を防止することができる。
本発明に係る可視光通信受信器によれば、可視光通信信号の混信を防止するとともに感度を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る可視光通信受信器によれば、受光素子の受光面に直交する方向からの可視光を確実に受光することができ可視光通信信号の混信を防止することができる。
【0014】
本発明に係る可視光通信受信器によれば、受光素子の受光面に対して斜め方向から入射する可視光が、筐体内で反射して受光素子へ入射することを防止するので可視光通信信号の混信を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るリモコン装置の実施例を示すブロック図。
【図2】本発明に係るリモコン装置の実施例の正面図。
【図3】本発明に係るリモコン装置の実施例の断面図。
【図4】本発明に係るリモコン装置の説明図。
【図5】本発明に係るリモコン装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る可視光通信受信器としてのリモコン装置の実施例を示すブロック図、図2は、本発明に係るリモコン装置の正面図、図3は、本発明に係るリモコン装置の断面図である。本実施形態では、可視光通信受信器をリモコン装置として説明するがこれに限定されず、可視光通信信号を受信可能な機器であれば適用することができる。
【0018】
図1において、リモコン装置1は、可視光に感度を有する受光素子11、受光素子11で受信した可視光信号を電気信号に変換する復調手段としての受信回路12、制御信号を送信する制御部13、可視光信号に含まれる情報を記憶する記憶部14、各電子部品に電源を供給する電池15、制御部13からの制御信号を無線で送信する無線通信部16、各種操作を行う操作部17を具備している。
【0019】
図2に示すように、リモコン装置1の筐体10は、正面一端側に開口部10aが設けられており、正面側の一面が開口部10aを有する光遮蔽部材30を構成している。また、受光素子11は開口部10aと所定間隔を有して対向するように筐体11内部に配設されている。受光素子11は、四角形状に構成されており、開口部11aを平面視したときに全体が開口部11aの内側に配設される寸法関係を有している。つまり、受光素子11の面積は開口部11aの面積よりもやや小さいがほぼ同面積となるように構成されている。また、筐体10の正面他端側には貫通孔10bが横一例に3つ設けられており、この貫通孔10bから操作部17が突出するように設けられている。
【0020】
図3は、図2のA-A断面を示す断面図である。筐体10は、正面側のカバー20、背面側のボディ21、カバー体20及びボディ一21に挟み込まれるように一端側に設けられた端板22で構成され、全体が略直方体状に形成されている。
ボディ21には、正面側に向かって突設する支柱21aが4つ設けられており、
この支柱21aの位置に対応するカバー体20には背面側に突設する支柱20aが設けられている。
カバー体20とボディ21とは、周縁及び支柱20a、21aで当接し図示しないねじによって接合される。
さらに、ボディ21には正面側に向かって突出形成される突出部21bを4つ有しており、この突出部21bにはねじ穴が設けられている。
【0021】
基板23は、一端側及び他端側の4箇所にねじ貫通孔、一端側の2箇所に支持孔が設けられている。この基板23は、支持孔に一端側の支柱21aを貫通させて位置決めするとともに、ねじ貫通孔が設けられた箇所を突出部21bに載置し、図示しないねじによって基板を突出部21bに固定する。
【0022】
基板23は、受光素子11、操作部17が配設されるとともに、復調手段としての受信回路12、制御部13、記憶部14が実装されており、ボディ21の他端側に配設された電源部としての電池15から電源が供給される。
【0023】
無線通信部16は、基板23とは別体で設けられ、図示しない電線によって基板23と接続されるとともに、突出部21bによって基板23とボディ21との間に形成された空隙に配設される。
【0024】
操作部17は、その長手方向に押圧可能なプッシュスイッチであり、基板23の他端側に設けられており、その一部がカバー20の貫通孔10bから外部へ突出している。
【0025】
前述した突出部21bは、基板の他端側で3つの操作部17を両端から挟み込む位置に2箇所設けられている。そして、基板23を突出部21bに載置したときに、操作部17は突出部21b近傍に位置することになり、操作部17を操作したときに基板23へかかる応力を突出部21bで支持することができるので、操作部17の操作による基板23の歪みや変形を最小限に抑えることができる。さらに、無線通信部16を基板23とは別体で構成し、基板23とボディとで形成される空隙に配設したので操作部17の操作によって、無線通信部16に力がかかることがない。
【0026】
このように、ボディ21から突出部21bを設けて基板23を支持することによって、操作部17を操作したときの基板23の変形を抑制するとともに、比較的変形に弱い無線通信部16への応力を無くすことができる。
【0027】
一方、受光素子11は、基板の一端側に配設されており、基板23をボディ21に位置決め固定したときに、開口部10aと所定間隔を有して対向配置される。このとき、外部から開口部10aを平面視したときに視認可能な領域を点線で示している。
【0028】
受光素子11は、受光素子11から開口部10aを臨む範囲内、すなわち、受光素子11を含む平面と受光素子11から開口部10aの縁部を通る直線で形成される角度θが所定の角度範囲内の場合に可視光を受信することができ、この範囲から送信された可視光通信信号を受信することができる。
図4は、受光素子11、開口部10aを有する光遮蔽部材30及び異なる可視光通信信号を発信する2つの光源L1、L2、との関係を示す説明図である。
光源L1とL2とは1mの間隔Dを有して、例えば図示しない天井に配設されており、リモコン装置1は光源L1の直下に2mの間隔hを有して配置している。
【0029】
ここで、図4の左右方向における開口部10aと受光素子11との長さ寸法d1とd2とが3mmの場合、光遮蔽部材30と受光素子11との間隔Lが6mm以上であれば、光源L2からの可視光は受光素子11に到達しない。従って、光源L1及びL2から異なる可視光通信信号が送信されていたとしても混信しない。
【0030】
つまり、光遮蔽部材30を受光素子の前面に配設したことによって、受光素子に対して斜め方向から照射される光を遮光することができ、混信しない領域をリモコン装置側で形成することができる。
従って、実際に使用する場合には、リモコン装置1を適宜移動させて混信しない領域で使用すればよい。
【0031】
図5は、筒状の光遮蔽部材30を用いた場合の説明図であり、その他の構成は図4と同様である。この場合には、光遮蔽部材30を筐体10に設ける必要がなく、直接受光素子11に対して配設すればよいので、受光素子11と開口部10aとの位置合わせが容易になる。ここで、筒状の光遮蔽部材30の内面は反射率を低くしておくことが好ましく、例えば内面を黒色にしておくことが望ましい。
【0032】
光源L1、L2、開口部10a、受光素子11等の寸法関係は図4と同様であり、上述したようにこの構成であっても同様に可視光通信信号が混信しない領域をリモコン装置側で形成することができる。
【0033】
本願発明者らは、このように受光素子11に斜め方向から入射する光を遮光することで極めて容易に可視光通信信号の混信を防止することができることを見出した。
さらに、斜め方向からの光を一部遮光することが、可視光通信信号の混信防止の観点からより効果的であることが分かってきた。
【0034】
受光素子11は、受光面に直交する方向から入射した可視光通信信号を最も強く受信することができ、異なる可視光通信信号が斜め方向から入射するような場合であっても、その一部を遮光することで受信強度差が明確となり混信防止ができるものと考えられる。
従って、開口部10aから所定間隔を有して受光素子11を配設することによって、所定方向以外から入射する可視光通信信号の混信を防止することができる。
【0035】
また、開口部10aを筐体10の外部から平面視したときの受光素子11の面積を開口部10aの面積と同程度にしておけば受光素子11に対して直交する方向から入射する光を最大限受光することができるため、受信感度を高めることができるとともに可視光通信信号の混信を抑制することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では開口部10aを平面視したときに図2に示すように受光素子11全体が開口部10aの内側に配設されている。仮に、開口部10aより外側に受光素子11の一部が存在すると、その領域では受光素子11に対して直交する方向から入射した光を受光せず、斜め方向から入射する光のみを受光することになり、受光素子11に直交する方向から入射する光と斜め方向から入射する光とで受信強度差を作りだすという効果が小さくなり好ましくない。このように、開口部10aを平面視したときに受光素子11全体が開口部10aの内側に配設されるように構成することで混信防止をさらに抑制することができる。
【0037】
ところで、本実施形態では、受光素子11は、開口部10aから所定間隔を有して設けられるとともに、点線で示された領域を含んで筐体10内に空間部Sが形成されている。すなわち、受光素子11から開口部10aにかけて反射部材が設けられていないため、開口部10aから入射した光は筐体10内で反射することが無く、斜め方向から入射した光は受光素子11へ入射しなくなる。
【0038】
従って、さらに受光素子11に対して直交する方向から入射した可視光通信信号と斜め方向から入射した可視光通信信号との強度差を明確にし、混信を防止することができる。
次に本実施形態に係るリモコン装置1の作用について説明する。
【0039】
所定間隔を設けて天井面に照明器具が複数設置され、各照明器具は自己のアドレスを可視光通信号として送信している場合について説明する。なお、照明器具は無線通信部を具備しており、無線の制御信号によって制御される。
【0040】
まず、リモコン装置1の操作部17のいずれか一つを長押しすると、制御部13が設定モードに移行する。この状態でリモコン装置1を照明器具の下側へ移動させると、受光素子11が可視光通信信号を含む可視光を受信し、受信回路12は可視光通信信号を復調し照明器具のアドレスを制御部13へ送信する。このとき、使用者が操作部17を操作すると、制御部13は受信したアドレスを記憶部14へ記憶するとともに操作された操作部17と受信したアドレスとを対応付けて記憶する。そして、操作部17とアドレスとの対応付けが完了すると設定モードを終了する。
次に、設定モードでアドレスとの対応付けがされた操作部17を操作すると、無線通信部から対応するアドレスと照明器具の点灯制御信号とが送信される。
点灯制御信号を受信した照明器具は、制御信号に自己のアドレスが含まれる場合には点灯制御信号の内容に従って制御を行う。
そして、アドレスとの対応付けが終了した操作部17は、その後別のアドレスとの対応付けが行われるまで対応する照明器具を制御することができる。
【0041】
このように、複数の照明器具から可視光通信が送信されている場合、可視光通信信号の混信が発生すると、所望の照明器具と操作部17との対応付けを行うことができなくなるが、本実施形態のリモコン装置1によれば、混信することなく確実に可視光通信信号を受信することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 可視光通信受信器としてのリモコン装置
10 筐体
10a 開口部
11 受光素子
12 復調手段としての受信回路
30 光遮蔽部材
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と;
開口部を有する光遮蔽部材と;
前記筐体に前記開口部に対向するように所定間隔を有して配設され、可視光領域に感度を持つ受光素子と;
前記受光素子で受光した可視光から可視光通信信号を復調する復調手段と;
を具備したことを特徴とする可視光通信受信器。
【請求項2】
前記受光素子は、前記開口部と略同面積を有することを特徴とする請求項1記載の可視光通信受信器。
【請求項3】
前記受光素子は、前記開口部を平面視したときに全体が開口部の内側に配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の可視光通信受信器。
【請求項4】
前記開口部は前記筐体の一部に設けられ、前記受光素子は前記筐体内に配設されるとともに前記受光素子から前記開口部までの領域を含む所定位置に空間部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の可視光通信受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−171708(P2010−171708A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12008(P2009−12008)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】