説明

可逆性感熱記録媒体に書き込まれた筆記インク像の除去方法とその装置、および筆記インク像除去手段を内蔵する画像消去記録装置

【課題】可逆性記録媒体を紙の代替として有効に使用できるようにするため、書き込みができ、書き込まれたインク像を簡単に剥がれないような付着性を有するが、剥がし除去しようとすれば確実に除去することができ、除去されたインク物質が飛散しない除去方法とその装置、および筆記インク像除去手段を内蔵する画像消去記録装置の提供。
【解決手段】加熱による温度変化によって画像の記録表示とその消去が可能な可逆性感熱記録媒体の表面に、筆記具によって形成されたインク像を、前記表面に除去部材を線状に当接し、それらを相対的に摺動する除去する方法で、可逆性感熱記録媒体の表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有し、除去部材の少なくとも当接部が化学繊維を含む不織布からなる柔軟度が1.2以上のものである、可逆性感熱記録媒体の表面の筆記インク像の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可逆的に発色状態と消色状態を形成できる感熱記録層を有し、印字と消去を繰り返し書き替えが可能な可逆感熱記録媒体に対して、書き込まれた筆記インク像の除去方法とその装置、および筆記インク像除去手段を内蔵する画像消去記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のハードコピーは、紙などの記録媒体に外部からインクあるいはトナーなどの着色剤を付着固定して画像形成を行なうか、あるいは感熱記録紙のように紙などの基材上に記録層を設け、これにエネルギーを加えて可視画像を形成するなど、永久画像を形成するものであった。しかし、複写機やファクシミリの普及、コンピューターからの情報出力によって紙を主体とする記録媒体の消費量が急激に増大し、自然破壊やエネルギー消費、廃棄物処理などの社会問題を引き起こしている。
【0003】
これらの問題を解決するため、いったん記録した可視画像を消去でき、繰り返して画像形成が可能な記録媒体が注目されている。例えば、脂肪酸などの有機低分子結晶粒子を分散した高分子膜の光散乱性変化を利用し、透明と白濁の二状態を可逆的に形成できる可逆性感熱記録媒体(光散乱型可逆性感熱記録媒体という)がある(例えば、特許文献1参照。)。
そして、この記録媒体は、すでに磁気カードの内容表示部として実用化されている。しかし、表示される画像は黒や青の着色地肌、またはアルミ蒸着膜などの光反射性の地肌に白色の印字となるので、通常のハードコピーとしては違和感が大きいという問題がある。
【0004】
この問題に対し、ロイコ染料である電子供与性化合物と顕減色剤とを主成分として樹脂母材中に含有させてなる可逆性感熱記録層が支持体上に設けられてなり、発色と消色の二状態をとり得て、白色地肌に可逆的に発色印字画像を形成できる可逆性感熱記録媒体(ロイコ型可逆性感熱記録媒体という)が提案され、近年実用化されている(例えば、特許文献2および3参照。)。
この可逆性感熱記録媒体の発色消色は加熱温度および/または冷却速度の違いによって制御されるものである。この種のロイコ染料と特定の顕色剤を用いた可逆性感熱記録媒体は、繰り返し印字/消去が可能であり、紙を使い捨てる必要がないために、省資源あるいは省エネルギーの目的に極めて有効な手段である。
【0005】
さらに詳しくは、この可逆性感熱記録材料は、酸と塩基の反応速度の差を利用して、発色と消色を繰り返すものである。ロイコ染料と顕色剤として長鎖アルキル基を持つ電子受容性化合物とを樹脂母材中に含有する可逆性感熱記録材料が開示されている。特に顕色剤が長鎖アルキル構造である場合には、凝集力が高く、ロイコ染料に接触したり分離するために、発色と消色を繰り返すのに有効である。(例えば、特許文献4,5参照。)
【0006】
しかしながら、このような可逆性感熱記録媒体の問題として、繰り返し使用すると手垢とかごみ等が異物が表面に付着しあるいは蓄積して、それが画像形成手段または画像消去手段の機能を低減させることがある。
可逆性感熱記録媒体シート状にして用いた場合に、発生するこれら問題を課題とし、クリーニングロールあるいはブレードのようなクリーニング部材を画像形成装置に具備させた提案がある(例えば、特許文献6、7参照。)。
【0007】
一方、オフィスではコンピューターのディスプレイ上の情報を一時的にレーザープリンタなどの出力装置によって、ハードコピーとして紙などに出力し、その内容を確認するとともに、鉛筆、ペン等によって書き込んだり修正したり、重要な部分をマーカーペン、蛍光ペンあるいはフエルトペンのような溶剤系筆記具でマーキングすることが頻繁に行なわれている。
しかし、このような一般紙と同様に上記の可逆性感熱記録媒体を活用し、記録表示された画像情報についてのコメントなどを該可逆性感熱記録媒体表面に直接筆記またはマーキングできるようになれば、「可逆性」という特徴と相俟って、利便性が高いものとしてなると考えられる。
しかしながら、可逆性感熱記録媒体の表示画像が不用になって書き替えようとするとき、記録媒体表面に付着している筆記インクが消去用加熱ヒータや印字部のサーマルヘッドに付着しあるいは焼きついてしまい、その結果固着した加筆インクの残滓は、可逆性感熱記録媒体の消去品質および印字品質を著しく低下させ、消去残り、印字のかすれを生じ、最終的に書き替えができなくなってしまう。
【0008】
このような不具合を解消するため、発熱素子をもたせた熱ペンによって可逆記録層を発色させて筆記しようとする方法があるが、この方法では可逆性感熱記録層の発色の色と同じ加筆しかできず、例えば通常行なわれるような赤字の書き込みは不可能であり、また、熱ペンは皮膚へ接触させると火傷を負う可能性があり、安全性の上からも好ましくなく、さらに手書きの手軽さはなく、期待される利便性が大幅に制約されてしまう。
【0009】
従って、この筆記インク像を特許文献6あるいは7に提案されるクリーニング部材で除去することが考えられるが、筆記インクの特性が手垢とかごみと全く相違することが大きな理由で、困難である。
可逆性感熱記録媒体表面に筆記具によって形成されたインク画像を除去することについて、既に提案された技術がある。
先ず、電子黒板に可逆性感熱記録媒体を用い、クリーニング手段によって印字の書き替え前に筆記インクをクリーニングし、クリーニング手段として具体的には弾性体のブレードを使用する提案がある(例えば、特許文献8参照。)。
【0010】
また、可逆性感熱記録シートに筆記できるインキおよびその筆記されたインキ画像を加熱によって軟化させてロールに転写し掻きとる提案がある(例えば、特許文献9参照。)。
【0011】
さらに、ロイコ型可逆性感熱記録媒体の表面に付着した物質を除去するシート状の除去部材を供給する機構を設け、該除去部材を圧接ローラで前記表面に押し付けながら、記録媒体と除去部材を反対方向に移動させて、付着物質を除去する装置に関する技術がある(例えば、特許文献10参照。)。
【0012】
可逆性感熱記録媒体が、オフィスにおいて真に上記のような利便性の高いものになるためには、(1)該記録媒体表面に筆記具によるインク画像の書き込みが可能であり、しかも、(2)筆記したインク画像は、通常の扱いの中で手の接触や紙同士の接触によって簡単に取れない程度の付着力で記録媒体上に形成され、さらに(3)記録表示画像を書き替えるときには、消去用ヒータおよび/またはサーマルヘッドの加熱手段によって記録媒体を加熱する前に、表面から筆記インク画像を完全に除去できるように、可逆性感熱記録媒体等の材料と装置と双方の面から検討し、該3つの要件が満たされることが必要になる。
このような観点から特許文献10に提案されている技術を検討すると、該提案は(1)と(2)については何ら考慮されたものではなく、(3)の要件について装置の面のみから検討されたものであり、利便性の高いとの目的には未だ不十分なものである。
【0013】
求められる付着力も求められる除去の完全性も、材料の表面の性状によって左右され大きく異なっているものであり、例えば、ホワイトボードへのマーカーによる書き込みとふき取り消去に適用される条件が、可逆性感熱記録媒体に適用されるものでもない。
【0014】
以上挙げた公知の技術は、いずれも上記3つの点が考慮されたものではないことは、明らかである。
本発明者等の検討結果によれば、表面に筆記具によって筆記でき、筆記されたインク画像が簡単に取れない程度の付着力を有し、必要な場合に該筆記インク像を完全に除去できるといった3つの条件に加えて、除去されたインク物質が装置内に飛散して部品の機能を低下させない必要があることが認識された。
しかしながら、従来の可逆性感熱記録媒体およびそれに関し提案されている技術には、これらの要求を満足させるものは皆無であり、今後このような可逆性感熱記録技術に対する要求は高まるものと考えられ、従来には全くなかった新たな課題である。
【0015】
【特許文献1】
特開昭55−154198号公報
【特許文献2】
特開平2−188293号公報
【特許文献3】
特開平2−188294号公報
【特許文献4】
特開平5−124360号公報
【特許文献5】
特開平6−210954号公報
【特許文献6】
特開平06−008585号公報
【特許文献7】
特開平06−047989号公報
【特許文献8】
特開平6−32095号公報
【特許文献9】
特開平7−70502号公報
【特許文献10】
特開2002−52748号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のような実状に鑑みてなされたものであって、可逆性記録媒体をオフイスで使われている紙の代替として有効に使用できるようにすることを目的として、筆記具で書き込みができ、書き込まれたインク像を簡単に剥がれないような付着性を有するが、剥がし除去しようとすれば実用上問題のないレベルまで確実に除去することができ、しかも除去されたインク物質が飛散しないような、可逆性感熱記録媒体に書き込まれた筆記インク像の除去方法とその装置、および筆記インク像除去手段を内蔵する画像消去記録装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題に対し、マーカーペン、蛍光ペンあるいはフエルトペンのような溶剤系筆記具を構成するインクが、柔軟性のある化学繊維を含む不織布に付着しやすいこと、いったん付着したインクが脱落しにくいことを見出した。
本発明者等は、可逆性感熱記録媒体の表面性を検討し、一定条件のものにすれば、筆記具による筆記、筆記インク画像が付着性および該筆記インク像の除去に有効であることを確認した。
また本発明者等は、特に前記不織布としてシート状のものを用い、不織布を可逆性感熱記録媒体に密着させ、可逆性感熱記録媒体の搬送を損なわない程度に加圧し摺接させると、インク画像の除去に対して特に好ましいものであることを多くの実験から新たに確認した。
さらに本発明者等は、除去部材となる不織布として、薄くかつ一定レベル以上の柔軟性を有するものを用いることが必要であり、また不織布の繊維の方向が記録媒体搬送方向に対して一定の関係を形成させると、特にインク画像の除去の確実性を一層高めるのに好ましいことを発見し、本発明を創出するに至った。
【0018】
上記課題は、本発明の(1)「加熱による温度変化によって画像の記録表示とその消去が可能な可逆性感熱記録媒体の表面に、筆記具によって形成されたインク像(筆記インク像という)を、可逆性感熱記録媒体の前記表面に除去部材を線状に当接し、可逆性感熱記録媒体と除去部材とを相対的に摺動することによって除去する方法であって、可逆性感熱記録媒体の表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有し、かつ除去部材の少なくとも当接部が化学繊維を含む不織布からなる柔軟度が1.2以上のものであることを特徴とする、可逆性感熱記録媒体の表面の筆記インク像の除去方法」、(2)「除去部材がシート状物であって、可逆性感熱記録媒体の前記表面への除去部材による当接を、除去部材の背後から押し付け部材によって押し付けて行なうことを特徴とする、前記第(1)項に記載の筆記インク像の除去方法」、(3)「押し付け部材がエッジ部を有し、該押し付け部材のエッジ部を押し付けること特徴とする、前記第(2)項に記載の筆記インク像の除去方法」、(4)「可逆性感熱記録媒体を一定方向に搬送し、除去部材を構成する不織布繊維のMD対する直交方向が該搬送方向にあわせたものであることを特徴とする前記第(2)項または第(3)項に記載の筆記インク像の除去方法」、(5)「可逆性感熱記録媒体が少なくともロイコ染料と顕色剤を含む記録層を支持体上に設けたシート状物であることを特徴とする、前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の筆記インク像の除去方法」、(6)「筆記具を構成するインクが着色剤、樹脂、界面活性剤および溶剤を含むものであることを特徴とする、前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の筆記インク像の除去方法」により達成される。
【0019】
また、上記課題は、本発明の(7)「記録表示された画像を有しかつ請求項1乃至6のいずれかに記載の方法によって筆記インク像の除去された可逆性感熱記録媒体を加熱して、表示画像を消去する方法」により達成される。
【0020】
また、上記課題は、本発明の(8)「前記第(7)項に記載の方法によって表示画像が消去された可逆性感熱記録媒体を、前記消去温度より高い温度で加熱して、表示画像を形成する方法」、(9)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の方法によって筆記インク像が除去された可逆性感熱記録媒体を加熱して、表示画像を形成する方法」により達成される。
【0021】
また、上記課題は、本発明の加熱による温度変化によって情報の記録消去が可能な可逆性感熱記録媒体を一定方向に搬送し、筆記具によって形成された該可逆性感熱記録媒体の表面上のインク画像(筆記インク像という)を、可逆性感熱記録媒体の前記表面に除去部材を押し付けて当接し、可逆性感熱記録媒体と除去部材とを相対的に摺動することによって除去する方法に用いる装置であって、表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有する可逆性感熱記録媒体を用い、かつ少なくとも前記当接部が化学繊維を含み柔軟度1.2以上の不織布からなる除去部材、前記除去部材を可逆性感熱記録媒体の表面に押し付ける押付け部材、前記可逆性感熱記録媒体の前記表面の反対側の面を支持して前記除去部材と前記可逆性感熱記録媒体とを前記押付け部材共に挟持する搬送部材とを少なくとも具備することを特徴とする筆記インク像の除去装置」、(11)「押付け部材の少なくとも可逆性感熱記録媒体に接触し押し付ける部分が、弾性体でかつエッジ形状であることを特徴とする、前記第(10)項に記載の筆記インク像の除去装置」、(12)「除去部材がシート状長尺物であることを特徴とする、前記第(10)項または第(11)項に記載の筆記インク像の除去装置」、(13)「除去部材が、押付け部材で押し付けられる部分を境にして可逆性感熱記録媒体搬送方向の上流側端部が固定されていることを特徴とする、前記第(12)項に記載の筆記インク像の除去装置」、(14)「押付け部材と搬送部材とが除去部材と可逆性感熱記録媒体とを挟持する位置に、可逆性感熱記録媒体が搬送されていないときには、除去部材と搬送部材が圧接しないか、または接触しない位置にあることを特徴とする、前記第(10)項乃至第(13)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(15)「可逆性感熱記録媒体に対して除去部材を摺接していないとき、除去部材を隔離させる手段を有することを特徴とする前記第(10)項乃至第(14)の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(16)「除去部材を押付け部材と搬送部材とが対向する位置まで搬送する除去部材供給手段を有することを特徴とする前記第(10)項乃至第(15)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(17)「筆記インク像を除去した後の除去部材を回収する除去部材回収手段を有することを特徴とする前記第(10)項乃至第(16)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(18)「筆記インク像を除去した後の除去部材を装置外へ排出する除去部材排出手段を有することを特徴とする前記第(10)項乃至第(17)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(19)「除去部材の重さが坪量5グラム以上30グラム未満であることを特徴とする前記第(10)項乃至第(18)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(20)「除去部材を構成する不織布がセルロース繊維を含むことを特徴とする前記第(10)項乃至第(19)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(21)「除去部材を構成する不織布がレーヨン繊維および/またはポリエステル繊維を含むことを特徴とする前記第(10)項乃至第(20)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」、(22)「除去部材を構成する不織布繊維のMD対する直交方向が可逆性感熱記録媒体の搬送方向にあわせたものであることを特徴とする前記第(10)項乃至第(21)項の何れかに記載の筆記インク像の除去装置」により達成される。
【0022】
また、上記課題は、本発明の(23)「前記第(10)項乃至第(22)項のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に形成された記録表示画像を消去するための加熱手段と共に具備することを特徴とする画像消去装置」により達成される。
【0023】
また、上記課題は、本発明の(24)「前記第(10)項乃至第(22)項のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に記録表示画像を形成するために加熱手段と共に具備することを特徴とする画像記録装置」により達成される。
【0024】
また、上記課題は、本発明の(25)「前記第(10)項乃至第(22)項のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に形成された記録表示画像を消去するために加熱手段および可逆性感熱記録媒体に記録表示画像を形成するために加熱手段と共に具備することを特徴とする画像消去記録装置」により達成される。
【0025】
また、上記課題は、本発明の(26)「加熱による温度変化によって画像の記録表示とその消去が可能な可逆性感熱記録媒体の表面に、筆記具によってインク像を形成する方法であって、可逆性感熱記録媒体の表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有し、かつ筆記具を構成するインクが着色剤、樹脂、界面活性剤および溶剤を含むものであることを特徴とする可逆性感熱記録媒体の表面に筆記インク像の形成方法」により達成される。
【0026】
すなわち、本発明は、可逆性感熱記録媒体上に筆記具によって形成されたインク画像(筆記インク像という)を、該記録媒体に除去部材を当接し摺動させて除去する方法であって、該除去部材の少なくとも前記当接部が柔軟度が1.2以上の化学繊維を含む不織布からなり、かつ可逆性感熱記録媒体として表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有するものを用いることを特徴とする筆記インク像除去方法である。
このような特徴を有する本発明の筆記インク像除去方法は、(1)可逆性感熱記録媒体表面に筆記インク像が形成可能で、(2)該筆記インク像が、通常の扱いでは手の接触や紙同士の接触によって簡単に取れない程度の付着力を有し、(3)該記録媒体に形成された記録表示画像を書き替える際に必要な場合に、記録媒体表面から筆記インク像を完全に除去することができ、しかも(4)除去されたインク物質を飛散させず従って記録表示画像を書き替える装置(画像消去記録装置という)内の部品の機能を低下させないものであり、可逆性感熱記録媒体を利便性の高いものとして、オフィスにおいて手軽に使用できるようにしたものである。
なお、本発明における筆記具とは、構成するインクが少なくとも着色剤、樹脂、界面活性剤および溶剤からなる、いわゆる溶剤系インクを意味し、例えばマーカーペン、サインペン、蛍光ペンあるいはフエルトペン等が用いられる。
【0027】
以下に、本発明の特徴部の概要を説明するが、詳細については後述する。
本発明に用いられる除去部材としては、少なくとも可逆性感熱記録媒体に当接される部分が、化学繊維を含む不織布からなるものである。当接部が不織布でありさえすれば良く、例えばブレードのような比較的硬い材質からなる板状体の一端部に不織布を固定したものが適用可能である。しかしながら、シート状の不織布を固定せずに、押し付け部材で背後から可逆性感熱記録媒体に押し付けて当接するやりほうが特に有効である。
この場合、可逆性感熱記録媒体の一定方向に搬送し、その搬送方向に対し除去部材の不織布を構成する繊維のCD方向が搬送方向になるよう配置すると、より効果的である。
【0028】
この不織布は、本発明の目的を達成するレベルで筆記インク像を除去するには、柔軟度が1.2以上のものであることが必要である。この柔軟度は、不織布をシート状にして所定の方法によって測定し算出される値である。
また、除去部材に用いられる不織布が、特に坪量5グラム以上30グラム未満のものであると、特に好ましく用いられる。
【0029】
また、筆記インク像が充分に付着でき、かつそれを確実に除去できるためには、可逆性感熱記録媒体の表面の性質が重要な因子となる。
本発明者等が検討した結果、該記録媒体の表面の性質として、蒸留水に対する動的後退接触角が75度から100度の範囲にある必要であることを確認した。この動的後退接触角は、公知の方法によって測定し算出される値である。
【0030】
また、背後から除去部材を可逆性感熱記録媒体に押し付けるために、装置に具備される押し付け部材として、除去部材へ押し付ける部分がエッジ形状の弾性体であるものを用いることが、特に効果的であり、この場合線状のエッジ形状部が可逆性感熱記録媒体の搬送方向に対して直角方向になるように設置されることが好ましい。なお、除去部材として押し付ける部分がエッジ形状のものに限らずローラ状の弾性体を用いることができる。
本発明の筆記インク像除去装置において押し付け部材を具備する場合には、少なくとも押し付け部材によって押し付けられる位置で、搬送される可逆性感熱記録媒体と除去部材を押付け部材と搬送部材が挟むように、押付け部材、除去部材および搬送部材が配置されたものとなる。
【0031】
さらに、本発明は、筆記インク像除去装置を手段に1つとして具備させた画像記録消去装置に関するものであり、可逆性感熱記録媒体に形成されている表示記録画像を消去する加熱手段(消去用加熱手段という)および可逆性感熱記録媒体に表示記録画像を形成する加熱手段(記録用加熱手段という)の双方と筆記インク像除去手段を共に具備する画像記録消去装置、消去用加熱手段と筆記インク像除去手段とを具備する画像消去装置、および記録用加熱手段と筆記インク像除去手段とを具備する画像記録装置が包含される(以下、画像消去装置と画像記録装置とを区別して表現する必要ない場合には、画像記録消去装置と総称する)。
【0032】
本発明の筆記インク像除去方法とその装置および画像記録消去装置に適用される可逆性感熱記録媒体は、例えば熱、光、電気、磁気などのエネルギーを利用し、目視できる画像を可逆的に形成できる層を有するものであれば良く、その書き替えすなわち画像の消去と形成は一種のエネルギーだけを用いるものであっても二種以上のエネルギーを組み合わせて用いるものであっても良い。
【0033】
本発明に適用可能な可逆性感熱記録媒体としては、特に限定されるものではない。以下に代表的なもの挙げて説明する。
まず、熱を用いて表示記録画像の書き換えを行なう可逆性感熱記録媒体には、ロイコ染料の可逆発色を用いるものが代表例として挙げられる。これは高いコントラストの黒色の発色画像が形成できるので、オフイス内の文書用としては最も好適なものである。この記録媒体については後で詳述する。
この他の熱を利用して書き替えを行なうものとしては、例えば、高分子中に有機低分子化合物の結晶粒子を分散させた記録層を設け、その光散乱性の可逆変化を利用した記録媒体、あるいは高分子液晶層を設け、その光散乱性の可逆変化を利用した記録媒体を挙げることができる。
前者は、通常前記低分子化合物の融点以上に加熱することによって、記録層を白濁化して記録表示画像を形成し、またこの白濁化温度より低い温度に加熱することによって透明に戻し消去するプロセスに用いられる。
後者は、等方点以上に加熱し急冷して記録層を透明化して記録表示画像を形成し、また加熱後徐冷することによって白濁状態にして、前記画像を消去するプロセスに用いられる。
この他にも液晶材料や高分子材料を単独または組み合わせて用い、加熱温度または加熱後の冷却速度の違いによって、記録と消去を行なう記録媒体がある。
【0034】
さらに、電気的に画像を形成できて、画像の保持に電力を必要としないメモリー性を有する記録媒体がある。
中でも電界によって印字・消去できる記録媒体は、消費電力が小さくできる点で有効である。
このような記録媒体の例として、液晶材料を用いたものがある。例えば、強誘電性高分子液晶を用いたものは、安定なメモリー性を有している点で好ましいものである。
また、メモリー性を持つスメクチック液晶やコレステリック液晶材料も利用できる。これらの液晶材料は、記録層の偏光特性の変化を利用した画像形成が可能であるが、これ以外にも二色性色素を含有させることにより、着色画像を可逆的に形成することもできる。
これらの記録層は、電界で可逆的に画像形成するのが一般的であるが、電界だけではなく例えば熱などの他のエネルギーとの組み合わせで画像の書き替えを可能にしたり、画像保持特性を向上させる方式がある。
【0035】
また、電気的に書き替え記録ができる記録媒体として、電気泳動材料がを使うものも利用できる。
これは、例えば着色した溶媒中に酸化チタンなどの白色の微粒子を分散し、この粒子を電界により移動させて可逆的に画像形成を行なう。
特に、この電気泳動材料をマイクロカプセル中に閉じ込め、これを高分子フィルムなど支持体上に樹脂によって固定した記録層は、文書用書き替え型可逆性記録媒体として好適である。
さらに、球状の粒子であり、その球の半分が着色し、あとの半分が白色の粒子をマイクロカプセル中に媒質とともに閉じ込め、このマイクロカプセルを支持体上に保持させ、球体を電界により回転させて画像を可逆的に形成する記録媒体も本発明の方法に適用できる。
【0036】
このような記録媒体を用いて電界によって画像形成する場合、静電スタイラスや、これをライン状に並べたヘッドによる書き込み、イオンフローによる書き込み、あるいは電子写真感光体などを利用し静電潜像を記録媒体上に転写する方法など公知の書き込み方法が利用できる。
【0037】
これらのうち、特にロイコ染料を用い熱によって可逆的に発色/消色する材料を用いた可逆性感熱記録媒体(ロイコ型記録媒体という)が、白色の地肌にコントラストの高い画像を形成でき、オフイスにおける他の記録媒体よりも実用的な書き替え特性を持っているものと考えられるので、本発明の方法に適用するのに、最も好ましいものである。
このロイコ型記録媒体には、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって、発色および消色する記録媒体も包含される。
このようなロイコ型記録媒体については、例えば特開平10−58724号公報、特開平5−124360号公報、特開平11−268419号公報あるいは特開平11−1927373号公報などに詳述されている。
【0038】
本発明は、可逆性感熱記録媒体上にインクにより筆記し、筆記して形成されたインク像が使用上問題のないレベルの付着性を持ち、さらに除去部材を該筆記インク像に密着させて摺接することによって、不織布にインクを捕獲して記録媒体上から除去することを基本とするものであるが、これらを確実に達成するためには、該記録媒体の表面の物性の制御が重要であり、本発明においては、その物性として蒸留水に対する動的後退接触角が75度から100度の範囲にあるものに特定した。
この動的接触角は、通常公知の方法によって測定できるものである。例えば、オリエンテック社製動的接触角測定装置DCA−2型などを用いることにより容易に測定できる。この測定によって得られる動的後退接触角の値が、75度から100度の範囲に入る場合には、筆記具で記録媒体に書き入れてインク像を形成することができ、しかも筆記インク画像の該記録媒体への定着性と、記録表示画像の書き替え時に求められる筆記インク像の除去性とが両立できる。
動的後退接触角が75度より小さいと、筆記インク画像の除去性が十分でなくなり、インクが残留することによって記録表示画像の書き替え手段に対して汚れを付着させることとなり、画像不良の原因となる。また、100度を越えるとインクがはじいて記録媒体に筆記することが困難になる。
後述するように、本発明に用いられる可逆性感熱記録媒体には、記録層の上に保護層を設けたものも包含されるが、保護層の形成如何に関係なく、加熱手段をあてる該記録媒体の表面層の物性として、前記動的後退接触角を有することが必要である。
【0039】
さらに、可逆性感熱記録媒体への筆記インク像の付着性を向上させるには、筆記具を構成するインク組成物を制御することが、より有効である。
先述のように、本発明に用いられる筆記具としては、それを構成するインクが少なくとも着色材、樹脂、界面活性剤および溶剤からなるものである。
着色剤としては染料でも顔料でも良いが、可逆性感熱記録媒体を構成する表面層に無機フィラーや樹脂が含まれている場合、それらへの染着性と筆記インク像除去後に薄い色の残り易さを考慮すると、染料より顔料のほうが好ましい。
また、筆記しやすさ、はじきにくさ、乾燥の速さの点で、溶剤としてはエチルアルコールのような低級アルコールが好ましい。
【0040】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の方法に用いる可逆性感熱記録媒体(以下、記録媒体ともいう)の1例を示す断面概略図である。
記録媒体の代表的な例は第1図(a)のように支持体(11)上面に可逆性感熱記録層(12)、保護層(13)が順次積層されたものである。
また、もう一つの代表的な例として、図1(b)のように、支持体(11)の上面に可逆性記録層(12)、保護層(13)が積層され、さらに支持体下面にバックコート層(15)を設けたものである。
【0041】
支持体(11)としては、紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが用いられる。
支持体として用られる紙には、あらかじめ平滑性や白色度などを高めるためフィラーを結着材とともに塗布したコート紙が好ましく用いられる。
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが用いられる。
フィルムとしては、透明であっても、フィラーを分散させて白色にしたものであっても良い。
支持体の表面には、必要に応じて、あらかじめ画像情報が印刷されてあっても良い。
【0042】
支持体(11)の厚さは、可逆性感熱記録媒体の厚さを左右するものであり、本発明の方法に用いる可逆性感熱記録媒体として、特にオフイスにおける一般紙と同じように用いることができるものが好ましく、したがって厚さが薄いシート状であるものが望ましい。
従って、支持体(11)の厚さは、他の記録媒体よりも実用的な0.05mmから0.5mm程度が好ましいが、特に文書用として用いる場合は、扱いやすさの点で一般に用いられている紙と同程度の0.05mmから0.25mmが好ましい。
【0043】
可逆性感熱記録層(12)は、熱の印加条件によって可視光に対する吸収、透過、反射、散乱などの光学特性が変化する材料であり、可逆的に二つの状態に室温で固定できる材料を含む層である。
特に、高いコントラストが得られ視認性に優れる点から、ロイコ染料を含有する可逆性感熱記録層が好ましい。
ロイコ染料には、例えばフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物などを用いられる。
ロイコ染料を可逆的に発色させる顕色剤として、フェノール性水酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などの酸性基と分子間凝集力を制御する長鎖の炭化水素基を連結した化合物が用いられる。これらの顕色剤の連結基や長鎖炭化水素基の間にはヘテロ原子を含む二価の基を有していてもよい。
具体的には、特開平5−124360号公報などに記載されているような、ロイコ型記録媒体が使用できる。
可逆性感熱記録層は、可逆発色材料であるこれらのロイコ染料と顕色剤および樹脂によって少なくとも形成され、樹脂としては書き替えの繰り返しに伴う熱的、機械的ストレスに強い硬化型のものが好ましい。
可逆性感熱記録層の厚さは、3μmから15μm程度である。
【0044】
可逆性感熱記録層上に保護層(13)を設けることは必ずしも必要とするものではないが、加熱手段であるサーマルヘッド等から、熱的、機械的なストレスから記録層を保護し、表面のダメージを防ぐのに、非常に有効で好ましい。
また紫外線によるロイコ染料の分解を防止するため、紫外線を吸収する機能を持つことが好ましい。紫外線吸収性と熱的、機械的強度を別々の層で機能分離して持たせ、保護層を二層以上の構成にしても良い。いずれにしても強度の点から硬化型樹脂を用いることが好ましい。
記録表示画像を形成するために、加熱手段として用いられる、例えばサーマルヘッドとの滑りも重要であり、記録媒体の表面にある程度の凹凸をつけるためにフィラーを加えることもある。
また、文書用として用いるには表面の光沢がある程度低いことも求められるが、これもフィラーの添加で達成できる。
保護層には、この他に着色剤を含有させることもできる。特に文書用では普通の紙と混在したとき、可逆性記録媒体を容易に区別できるようにするため着色することがある。保護層の厚さは1μmから10μm程度である。
【0045】
バックコート層(14)は、特に紙を支持体とする場合に重要であり、紙が吸湿して伸縮しても、可逆性記録媒体にカールが発生するのを抑えることができる。バックコート層の材料には硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
以上説明した支持体、記録層および保護層とのバランスによって材料の硬さと膜厚を選択することが必要である。
本発明に用いられる可逆性記録媒体には、さらに必要に応じて支持体上にアンダーコート層、断熱層などを設けることもできる。
また支持体の両面に記録層、保護層を設け、両面に印字できるようにすることもできる。
支持体(11)には磁気、光メモリ、光磁気、ICメモリなどの情報記録部を有していても良い。また、画像情報、文書識別情報、座標情報など各種の情報をバーコード、二次元コードなどによりコード化して保持させても良い。特に座標情報はペンなどによって検出し記録媒体上に可視画像を手書きするのと同時にデジタル情報として取り込んで利用することが可能になる。
【0047】
前述したように、本発明に用いられる可逆性感熱記録媒体として、筆記インク像が確実に付着し、また該筆記インク像が除去部材によって確実に除去されるためには、記録層上に保護層に設ける如何に関係なく、その表面の蒸留水に対する動的後退接触角が75度から100度の範囲にあるものであることが必要である。
【0048】
可逆性感熱記録媒体の表面に、このような範囲の動的後退接触角を持たせるやり方について説明する。
先ず、表面層を構成する樹脂について言えば、シリコーン系樹脂、あるいはフッ素系の樹脂を用いることが好ましく、特に、シリコーン変性ポリマーを用いることが、このような表面物性の制御に好ましい。
シリコーン変性ポリマーとしては、シリコーングラフトポリマー、シリコーンブロックポリマー、シリコーン変性アクリルポリマー、シリコーン変性ポリビニルアルコール等が好ましいが、シリコーングラフトポリマーがとくに好ましい。シリコーングラフトポリマーとしてはシリコーングラフトアクリルポリマー、シリコーングラフト変性ポリビニルアルコール等が好ましく、中でも熱、紫外線、電子線などによって架橋可能なポリマーであることが、可逆性感熱記録媒体の印字消去の繰り返し耐久性の点から特に好ましい。
【0049】
表面層には、これらのシリコーン変性ポリマーは単独または他の樹脂と混合して用いることができる。混合するポリマーとしては、ポリエステル、アクリル、ポリスチレン、ポリウレタンなど公知の熱可塑性樹脂のほかに、可逆記録媒体としての印字消去の繰り返し耐久性の点から熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などの硬化性樹脂が好ましい。
【0050】
また、上記動的後退接触角の範囲の表面層を得るやり方として、前記の樹脂成分に対し同時にフィラーを含有させることが好ましい。
フィラーとしては、従来公知の無機あるいは有機のフィラーが単独または混合して用いられる。
有機フィラーとしては、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の粒子、熱硬化性樹脂の中空粒子、ポリエチレンワックス、セラック、木粉、コルク粉末等が挙げられる。
無機フィラーとしては、たとえばシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、鉄フェライト、ニッケルフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水珪酸、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、硫化亜鉛、硫酸バリウム、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、タルク、カオリン、クレー等が挙げられる。
特に好ましいものとして、カルシウムでコートされたシリカ粒子が用いられる。
【0051】
フィラーは前記の樹脂に分散して用いられ、特に粒子径を制御することによって、表面の凹凸形状が変化し動的後退接触角を制御することができる。
すなわち、粒子径が小さすぎると表面凹凸に現れてこないので効果が少なく、また大きすぎると加筆インクが除去しにくくなるために、フィラー粒子径として0.2〜2μm、特に0.4〜1μmのものが好ましく用いられる。
【0052】
図2は、ロイコ型可逆性感熱記録媒体の基本的な発色/消色プロセスを示すものである。
図2の(a)と(b)は材料の違いによる発色消色プロセスの代表的な二つの例である。いずれも消色した状態から加熱し、可逆発色成分が溶融する温度T以上にいったん加熱したのち急冷するとロイコ染料が発色状態で固定され、発色状態からTより低温側にある消色温度範囲(T〜T)に加熱するとロイコ染料が消色し、元の状態に戻せる。
画像印字は、通常サーマルヘッドを用いて行なわれるが、レーザー光による記録も可能である。
一方、消去は、基板上に帯状の発熱体を持ちガラス等によって保護層が形成されたセラミックヒータ基板、あるいはヒートローラなどが実用的に用いられている。
【0053】
ロイコ型可逆性感熱記録媒体に用いられる画像消去記録装置は、画像印字部と、印字画像を消す消去部を基本的に有するものであり、このような画像消去記録装置はすでに公知であり、例えば特開平5−124360号公報、特開平10−58724号公報、特開平11−192779号公報などに詳述されている。
本発明の画像消去記録装置は、このような公知の装置にさらに筆記インク像の除去手段が設けられたものである。
可逆性感熱記録媒体は、筆記具によって筆記できることが、使用上の利便性を高めるために必要である。
筆記インク像のインクが表面に存在する場合には、可逆性感熱記録媒体を繰り返し使用すると、そのインクが消去ヘッド(消去用加熱手段)および印字ヘッド(記録用加熱手段)に付着して画像品質劣化を起すことになるために、消去および印字のプロセスにとっては、可能な限りあってはならないものである。
本発明の画像消去記録装置では筆記インク像の除去手段を設けて、この問題を解消するものである。
【0054】
本発明の装置としては、筆記インク像除去装置と、先述のように、可逆性感熱記録媒体に形成されている表示記録画像を消去する加熱手段(消去用加熱手段という)および可逆性感熱記録媒体に表示記録画像を形成する加熱手段(記録用加熱手段という)の双方と筆記インク像除去手段を共に具備する画像記録消去装置、消去用加熱手段と筆記インク像除去手段とを具備する画像消去装置、および記録用加熱手段と筆記インク像除去手段とを具備する画像記録装置が包含される。
【0055】
以下に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図3は、消去用加熱手段、記録用加熱手段および筆記インク像除去手段を具備する、本発明の代表的な画像消去記録装置の一例について、その概略構成を示すものである。
図3において、(31)は画像消去記録装置、(32)は給紙部、(33)は筆記インク像除去手段、(34)は可逆記録層に記録された画像の消去部(消去用加熱手段)、(35)は可逆記録層に発色画像(表示記録画像)を形成する印字部(記録用加熱手段)である。
この装置には、さらに記録媒体を誘導するガイド部(36)と記録媒体を搬送するローラ(37)などが設置される。
さらに、図示していないが、電源、駆動部、制御部などが配置される。
記録媒体(38)が搬送ローラーによって除去手段(33)へ搬送されて筆記インク像が除去された後、消去部(34)に送られ、記録層に形成された発色画像が消去され、さらに印字部(35)で新たな発色画像が印字される。
新しい記録媒体を使用し印字だけを行なえばよい場合には、筆記インク像除去手段を機能させずに通過させたり、別の経路で直接印字部(35)へ送ることができる。また、筆記インク像が存在していない場合にも、同様に記録媒体を消去部(34)に直接送ることができる。
このような場合には、センサーなどで検知して自動的に選択するようにしても良いし、使用者が判断して選択しても良い。
このような操作モードを切り替えるのに、本装置自体にそのための手段を設けても良いし、接続するコンピューター側から行なっても良い。
【0056】
本発明の画像記録装置の特徴部である筆記インク像除去手段についてさらに詳しく説明する。
図4(a)は、筆記インク像除去手段の最も基本的な構造を示している。
図4において、(41)は、弾性体からなるローラ状の押付け部材である。
押付け部材(41)は、加圧機構(43)に設けたバネによって圧力を加えられるようになっている。記録媒体の搬送面に対して押付け部材と対向する位置に受けローラ(44)が設置されている。
受けローラ(44)は、駆動ユニットからの伝達により搬送力をもつローラであっても良いし、記録媒体の移動に伴って回転するだけのローラであっても良い。
(45)は、記録媒体面に当接させる除去部材であり、繊維質のシート状不織布である。
【0057】
次の図4(b)は、筆記インク像除去手段の他の例を示している。
この例では用いられる押付け部材が、記録媒体の移動方向に対して傾斜する方向に延びるエッジ部を有する弾性体であり、加圧機構(43)によってこのエッジ部が除去部材を記録媒体面に押し付けることを特徴とするものである。
後述のように、押付け部材としては、前記のローラ状のものよりもこのエッジ部を持つもののほうが、筆記インク像を除去するのにはるかに効果的である。
【0058】
受けローラ(44)は、押付け部材からの圧力を受けて記録媒体を挟み込む強度を持ち、押付け部材とともに除去部材(45)と記録媒体を密着させる作用を持つ。
押付け部材が均一に記録媒体へ圧力をかけられるように、受けローラ自体もゴムなどの弾性体であることが好ましい。
また、図4では加圧機構(43)は押圧部材側に設けてあるが、受けローラ(44)側に設けて、記録媒体を加圧機構と除去部材とで挟んで、押付け部材側へ圧力をかける構造であってもよい。
本装置の筆記インク像除去手段で重要な点は、除去部材が記録媒体面に線状に密着し、その状態を保持したまま記録媒体が搬送されることである。線状に密着していることによって、筆記インク像が剥ぎ取られながら除去部材に強く付着する状態が得られ、剥ぎ取られた筆記インクが除去部材の線状の部分だけに溜まることになる。
【0059】
次に、図5は図4(b)と同じく、押付け部材としてエッジ部を有する弾性体を用いられた筆記インク像除去手段の概略図であり、図5によって本発明における筆記インク像除去手段の基本的な動作を説明する(各番号は、図4に示すものと同じである)。
筆記インク像が形成された記録媒体(38)は、図5(a)に示すように筆記インク像除去手段(33)に搬送される。押付け部材(41)と受けローラ(44)の間で、記録媒体(38)と除去部材(45)が線状に密着した状態を保ちながら当接し、同図(b)のように、インク像が剥ぎ取られ、除去部材(45)の繊維に確保され密着する。
記録媒体(38)上の筆記インク像は、押圧部材(41)のエッジ部で、押し付けられた除去部材(45)の線状の部分に溜まるが、除去部材が記録媒体面に充分密着していれば、記録媒体の通過した部分にはインクは残らない。
このようにして記録媒体が除去部材に摺接されながら搬送され、同図(c)のように記録媒体上の筆記インク像は完全に除去される。
剥ぎ取られたインク物質は、除去部材が細かい繊維質からなっているため、その目に食い込み保持されることになって、ほとんど脱落しないでその状態が保たれる。
【0060】
本発明の除去方法は、基本的に記録媒体上の筆記インク像を物理的に除去するものであるが、特に記録媒体上に実質的に問題のないレベルまで、除去手段を1回通過するだけで確実に除去でき、さらに、除去したインク物質が再び別の記録媒体に付着したり、装置の搬送ローラなど記録媒体に接する部分を汚すことがないよう除去部材に確実に保持できるようにした。
その方法は、細かな凹凸を有し、除去部材として柔軟性があり記録媒体に密着して記録媒体表面に摺接できる化学繊維を含む不織布、特にそのシート状のものを用い、さらにこれを確実に摺接するため、弾性体からなる押付け部材を用いて除去部材を記録媒体面に押し付けて行なうことを特徴とするものである。
記録媒体は、押付け部材に対して相対的に移動し、記録媒体上の筆記インク像を、押付け部材で押し付けて、剥離した後、消去部材繊維の凹凸の目に付着保持させる。
繊維の目によって、インク物質は強く付着するため脱落せず、押さえつけられた除去部材に加筆インクを確実に確保することができる。特に、押付け部材としてエッジ部を設けたものが用いられる場合には、このような結果を顕著に得ることができる。
【0061】
本発明の特徴は、除去部材にあり、該除去部材(45)は基本的に化学繊維を含む不織布が用いられ、特にシート状のものを用いた場合は効果的である。
不織布には、紙と同様に製造時の巻き取り方向であるMD方向に繊維がある程度そろって配向している。記録媒体上に付着するインクを不織布の繊維によってかきとるとき、繊維は搬送方向に対して横になって延びているほうが繊維の凹凸によってかきとりやすくなる。
しかも、記録媒体表面に繊維全体が均一に当たるようになるためインクの除去が確実に行える。また、かきとられたインクが繊維の間に深く入りやすくなり、インクが不織布に確実に捕獲される。
したがって、不織布の設置方向は可逆性記録媒体の搬送方向に対しMD方向と直交方向、すなわちCD方向と平行とすることが好ましい。
【0062】
本発明の除去手段による筆記インク像の除去について、さまざまな不織布を用いて実験した結果、シート状の不織布であって、特にその柔軟性が除去の確実性を高めるために重要であることがわかった。
この柔軟性の程度(本件では柔軟度と呼ぶ)は、以下の方法で定量化できる。図6(a)に示されるように、先ず評価する繊維質のシート状不織布を底辺が60mm、高さが200mmの二等辺三角形の形に切りだし試験片とした。
次に図6(b)に示すような試験台を水平な台の上に用意した。試験台は高さ20cmの水平部分と角度45度の斜面を持ったものである。
図6(c)のように、三角形の試験片を水平部分に置き、試験台の縁の辺DEと試験片の底辺BCが平行になるように保ちながら、試験片の頂点Aを水平部分からゆっくり押し出していく。
試験片は、図6(d)(e)のように自重により先端が下方に曲がり、あるところまで押し出すと斜面に頂点Aが接する。その際、図6(f)に示すように、試験台の縁の辺BCから押し出した試験片の長さを(L)とする。
ここでは、測定した(L)から次式により求めた値を繊維質シートの柔軟度として用いる。
該柔軟度については、繊維のMDとCDとの双方について測定することができる。
【0063】
【数1】
柔軟度=(1/L)×100
【0064】
各種のパルプ繊維からなる紙、パルプ繊維と合成繊維が混合された不織布、合成繊維の不織布について上記の柔軟度の測定と、前述の加筆物消去装置を用い筆記インク像の除去性を評価した結果、柔軟度が1.2以上のとき除去性が良好となることが判明した。
柔軟度1.2以上の繊維質シートを用いると、筆記インク像はほぼ完全にシートの繊維に付着して記録媒体上から除去され、続く記録媒体の印字画像の消去と新たな画像の印字を繰り返しても、記録媒体には安定して良好な記録表示画像が形成できる。特に、化学繊維を含む不織布を用いた場合に、この効果は顕著である。
しかし、除去部材として柔軟度が1.2未満の繊維質シートを用いた場合は、記録媒体上の筆記インク像の一部がそのまま残ってしまうことが多く、この状態のまま、記録媒体の画像の消去と新たな印字を繰り返すと、残留した筆記インク像を形成する物質が、印字ヘッドに転移し固着して印字画像にかすれを生ずる。
【0065】
さらに、本発明における除去部材として特に好ましい繊維質シートは、平米坪量が5gから20gの紙または不織布である。
平米坪量がこれより大きな繊維質シートでは、筆記インク像の一部が残留する場合があり、印字ヘッドに転移し固着して記録媒体への印字において接触が不充分になり、印字画像品質を低下させる。
また、平米坪量がこれ以下の場合には、押付け部材により加圧され記録媒体に摺接するとき破損することがあり、筆記インク像を完全に除去できないだけではなく、筆記インク像除去装置のトラブルとなり、除去部材の交換や清掃などメンテナンスに手間取ることになる。
【0066】
さらに本発明に用いられる除去部材として、記録媒体と当接する部分が少なくとも合成繊維を含む不織布であって柔軟性の高い柔軟度が1.2以上であるものであること必要があるが、特に当接部ではなく除去部材全体がシート状のものが好ましく、また上記平米坪量範囲の薄いものであれば好ましい。
不織布の材質として、例えばレーヨン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維など合成繊維の一種または複数種含むものが用いられ、必要に応じて木材パルプ、麻などの植物からとられるセルロース繊維のような天然繊維を混合したものを用いることができる。
これらの繊維質で柔軟性の高いシートを用いることによって、記録媒体上の筆記インク像を確実に除去することができる。
また、除去部材には、繊維質の柔軟性を増して密着性を高めたり、記録媒体面とインク画像の付着力を弱める目的で、水や溶剤を少量含ませておくこともできる。
【0067】
図4に示すように、本発明の方法において、弾性体の押付け部材によって除去部材を記録媒体面に押し付けて、除去部材の記録媒体面への密着性を高める上で重要な要素である。
押付け部材が弾性体の平面状であると、密着が困難な場合があり、、除去部材と記録媒体とが、可能な限り、線状で当接し密着するような形状であることが必要である。
本発明において、除去部材と記録媒体と線状で当接するとは、「線状」およびそれからある程度の巾(ニップ巾)がある場合も包含される。押し付け部材として硬めのゴムが用いられる場合にはほぼ線状になり、柔らかくなると1mmのニップ巾となり、次に述べるローラ状のものを用いるとニップ巾が2〜3mm程度になる場合がある。通常ニップ巾が狭い方が有効である。
押し付け部材としての1つの、図4(a)に示すローラ状のものは、記録媒体面にわずかな凹凸があっても圧力が狭いニップ部分に集中するため、除去部材を密着させることができる。ローラ状の押付け部材は、筆記インク像を除去するときは回転しないよう固定されていることが好ましい。
【0068】
しかしながら、押付け部材として、図4(b)に示されるようなエッジ部を持つものがあり、このエッジ部で除去部材を記録媒体に密着させ摺接させる方法は、加筆インクの消去をより確実にするのに、ローラ状の押付け部材よりはるかに効果的である。
その理由は、エッジ部を有する押付け部材を用いる方法によれば、圧力が線状に集中し、加圧力を比較的低くしても記録媒体面に除去部材を密着させることができるからであると考えられる。
すなわち、広い面で摺接させ高い圧力をかけて押えると、記録媒体との摩擦力が大きくなり、記録媒体にブレーキをかけてしまうことになって搬送ができなくなる場合が出てくるが、エッジで押し付けることによって、筆記インク像の除去効果が充分に得られるレベルで加圧しても搬送が可能になる。
【0069】
図7は、図4と同様の筆記インク像除去手段であるが、さらに除去部材として繊維質シート状のものを用い、そのシートの端部を記録媒体搬送方向上流側に固定したものである。
このように除去部材を固定すると、除去部材が記録媒体表面との摩擦で記録媒体の搬送方向に引っ張られ、押圧部材のエッジ部の部分からずれることが防止できる。
除去部材がずれると、筆記インク像が完全に剥ぎ取れず、一部が記録媒体表面に残留して、画像消去用およびまたは画像記録用の加熱手段の印字部へ付着して、画像の書き替えに支障をきたすことになる。
しかし、図7に示される装置によると、筆記インク像が確実に剥ぎ取られ、除去部材に転移し保持され、インク物資の残留による問題は生じない。
また、図8に示すように弾性体の押付け部材が複数のエッジをもち、複数ヶ所で除去部材を記録媒体に密着させ摺接することによって、筆記インク像はさらに確実に除去できる。
【0070】
本発明における筆記インク像除去手段は、押付け部材によって除去部材を記録媒体面に押し付けて、記録媒体上の筆記インク像を物理的に剥ぎ取るものであるが、除去部材を記録媒体面に均一に密着させるためには、以上のような押圧部材の形状や硬さだけではなく、押付け部材と除去部材を介して記録媒体を挟み込む受けローラやベルトなどの搬送部材の性質が重要である。
この搬送部材として記録媒体の搬送力が充分でないと、除去部材との摩擦力に打ち勝ち確実に搬送できなくなる。
記録媒体と除去部材を均一に密着させ、しかも充分な搬送力を得るためには、搬送部材は弾性体の受けローラやベルトであることが好ましい。
受けローラが剛体であると、記録媒体と除去部材が部分的に密着摺接が不充分になって、インクの残留が発生する場合が出てくる。
【0071】
また、筆記インク像除去手段を構成する搬送部材である受けローラまたはベルトが弾性体であること、さらに対向する押付け部材の硬度より低い硬度を持つ弾性体であることが、確実なインク除去にとって好ましい。
このような硬度の関係にあると、押付け部材のエッジ部が除去部材と記録媒体を挟んで若干搬送部材側に食い込む状態となり、このとき除去部材と記録媒体の均一な密着が可能になり、その状態で摺接させることによって筆記インク像の確実な除去が達成しやすくなる。
受けローラは、ゴムなどの弾性体を金属の芯に被覆した構造が一般的であり、この状態で硬度とゴム厚を調整して、適度な食い込み状態をつくる。
ただし、食い込み量が多くなりすぎると搬送が難しくなるので、この点は押付け部材の硬度との関係から調節することが必要である。
また、弾性体のベルトで受ける場合も、ベルトが金属などの剛体のローラに巻きついている部分で押付け部材と除去部材および記録媒体を挟むことが好ましく、食い込み量はゴムローラを用いるときと同様に調節する。
【0072】
以上のように、本発明における筆記インク像除去手段は、加圧された押付け部材と受けローラなどの搬送部材の間に、除去部材と記録媒体を挟み込み、除去部材と記録媒体表面を摺接させるものである。
記録媒体は、この筆記インク像除去手段へ給紙部から送られてくるが、押付け部材と受けローラの間に圧力がかかった状態では、記録媒体がこの間に入り込みにくく、搬送できなくなることになる。
そのため、押付け部材の圧力は、記録媒体の先端が押付け部材、例えばエッジ部を通過した後に、加わるように加圧部を制御する方法をとることが好ましい。このようにすることによって、記録媒体は除去部材と密着した状態で搬送され摺接してインク像が除去できる。
また、このような制御を行なうと、記録媒体が押付け部材に到達するまでの間、搬送部材の受けローラが回転していても、接している除去部材の表面が受けローラとの摩擦で変質したり破損したりするのを防止でき、常に安定したインク除去性を発揮させることが可能になる。
【0073】
上記のような記録媒体の確実な搬送と、除去部材の安定なインク除去性の維持のために、押付け部材が除去部材を受けローラと離れた位置にあらかじめ置いておき、押付け部材のエッジ部の位置を記録媒体の先端が通過したのち、除去部材と記録媒体が接触し所定圧力がかかる位置へ移動させる方法も有効である。
その際除去部材も押付け部材とともに移動することが好ましいが、押付け部材だけが移動し除去部材が記録媒体に接触していても圧力が実質的にかからなくなれば充分な効果が得られる。
また、押付け部材を移動させるのではなく、受けローラ側を移動させて記録媒体の押付け部材位置への挿入を容易にする方法を取ることも可能であり、同様の効果が得られる。
【0074】
記録媒体が筆記インク像除去手段を通過したあとの状態についても同様な方法をとることにより、除去部材の変質、破損を防ぎ安定したインク除去性を発揮させることができる。
すなわち、押付け部材のエッジ部の位置を記録媒体の後端が通過する前または通過するとき押付け部材と受けローラにかかる圧力を解除する方法が有効である。これは加圧部を制御することによって可能になる。
【0075】
同様に記録媒体の後端部が通過する前に、または通過するときに押付け部材を移動させ記録媒体と除去部材が接触しないようにするか、少なくとも圧接しないようにすることによって除去部材の変質、破損を防ぎ、安定したインク除去性を発揮させることが可能になる。また、押付け部材を移動させるのではなく、受けローラを移動させて圧接を解除する方法も可能であり、同様の効果が得られる。
【0076】
本発明における筆記インク像除去手段は、繊維質のシート状の除去部材を筆記インク像が形成された記録媒体表面に均一に密着圧接した状態で、記録媒体を移動させ表面を摺接することによって、記録媒体上の筆記インク像を剥ぎ取って、除去部材へ付着転移させることができる。
ここで除去部材は押付け部材のエッジの部分で押し付けているので、インクは除去部材に線状に付着保持された状態になっている。この状態のまま多数の加筆され記録媒体を通過させると、除去部材に付着したインク量が増加し、これがあまり多くなると記録媒体から完全にインクを剥ぎ取れなくなってくる。
また、多量の付着したインクの一部が脱落して装置の他の部分を汚し、記録媒体の裏面などに付着したり、印字画像消去部や印字部に付着して焼きつき画像品質を低下させることもある。
これを防止するためには、ある程度付着した時点で除去部材を一定量ずつ移動し、新たな部分が押付け部材によって記録媒体に密着し、摺接するようにすればよい。
従って、本発明における筆記インク像除去手段には、除去部材を一定量ずつ移動させる送り機構を設けることが望ましい。
【0077】
このような除去部材送り機構による、除去部材の新たな部分を圧接部に供給するタイミングとしては、除去部材へのインク付着量によって使用者自身が判断して行なっても良いし、付着量を検知して送りの制御を行なっても良い。
しかし、簡単にするためには、例えば1枚の記録媒体が通過したら一定量移動させるような制御が好ましい。除去部材の移動を通過枚数で制御させる場合には、その通過枚数は主に除去部材のインク保持能力によって設定する必要がある。剥離除去した多量のインク物質があっても、実験的に予測して、充分保持できるレベルをある程度余裕をもって設定することが重要である。
【0078】
上記のように除去部材の移動によって新たな部分を記録媒体と圧接させるようにするとき、除去部材を移動させる方向は記録媒体の搬送方向とは反対の方向であることが好ましい。
同じ方向に移動させるとインクが除去部材から仮に脱落した場合に、筆記インク像が除去された記録媒体上に再び付着させてしまう危険があり、従って反対方向に移動させるようにして、この危険を回避することができる。
【0079】
インクが線状に付着した除去部材を移動して新たな部分を供給するとき、その移動量は次に搬送されてくる記録媒体に対して除去部材上のインクが確実に接触しない量であることが必要である。
記録媒体に圧接し摺接させるとき、除去部材が上流で固定されていても、除去部材自体の伸びがあるため、記録媒体との摩擦で搬送方向に引っ張られることがある。このような部分も含めて確実に付着したインクを再び接触させないために、必要な最少量より移動量を大きくしておくことが重要である。
ただし、1回ごとの移動量が大きすぎると、1枚の除去部材で筆記インク像の除去が可能な処理枚数が少なくなってしまうので、上記の条件を満たした上で移動量をあまり過剰にしないことも実用上から好ましいことである。
除去部材がロール状に巻かれており、必要なときに一定量ずつ送り出されるような構造は、除去部材の交換の頻度を下げるために効果的である。また、その場合、使用後の部分を巻き取るような構造であれば、除去部材の交換が容易になりさらに好ましい。
【0080】
上記のように除去部材は、少なくとも一ヶ所へのインク付着量が多くなり過ぎないように少しずつ移動させて使用することが好ましい。除去部材は繊維質のシートであり、少しずつずらしながら使用していくと、最後には新たに使用できる部分がなくなり、交換する必要が生ずる。
したがって、この筆記インク像除去手段には、新たな除去部材のシートを供給する手段が備えられていることが好ましい。
同様に使用し終わった時点で筆記インク像除去手段から除去部材が排出されるような排出手段が設けられていることが好ましい。使用後の除去部材にはインクが付着しているので、手で引き抜く場合に手が汚れたり、装置内を汚すこともあり得るので、除去面に触れずに排出されると使用後の除去部材の処理が容易になる。
【0081】
除去部材シートの交換は、使用者が交換をする時期がわかるように除去部材の残量を検知し、使用者に知らせる除去部材交換時期指示手段が設けられていることが好ましい。あるいは、複数枚のストックされたシート状除去部材を自動的に供給交換する手段が設けられていればさらに有効である。
除去部材の残量がなくなった場合は、除去部材を交換することが安定な加筆物の消去を実現する上で重要である。同じ位置で記録媒体と摺接し続けると、インクを付着保持できなくなったり、記録媒体から剥ぎ取れなくなってくる。
そうなると画像消去部や印字部へのインクの焼きつきの原因となり、画像品質を低下させる恐れがある。したがって、残量がなくなったときは交換が完了するまで書き替え動作をしないようにする書き替え停止手段が装置に設けられていることが実用上求められる。
【0082】
以上の説明からわかるように、本発明におけるインク像除去手段は、基本的に除去部材と記録媒体を押付け部材と受けローラの間にはさみ圧力を加えて摺接させるものであるため、記録媒体を確実に搬送できる充分な手段が設けられている必要がある。
そのため受けローラそのものに搬送力を持たせることも行なわれて良いが、それだけではなく、除去の上流側で記録媒体を押し込む搬送ローラを設置することも好ましい。このような搬送ローラは、記録媒体の一部分と接して送るものであっても良いが、できれば全体を接して均一に送るものであることが好ましい。そのほうが搬送の安定性が得られると同時に、記録媒体を変形させることも少ない。
【0083】
上記と同様、安定な搬送を達成する目的でインク像除去手段の下流側に搬送手段を設けることも好ましい。これは、記録層の印字画像を消去する画像消去部、あるいは記録層に書き込む印字部の加圧搬送ローラ(プラテンローラ)を兼用しても良いが、これらと別に搬送ローラを設ければさらに確実である。
【0084】
本発明の画像記録消去装置に用いられる可逆性感熱記録媒体には、熱によって発色/消色する可逆性感熱記録層を支持体上に設けたもの好適である。これは印字画像の消去と印字がいずれも熱によって行なわれるものであり、従来からある加熱ヒータやサーマルヘッドを用い比較的簡易な構造の装置で書き替えが達成できる。
画像記録消去装置の基本構成は図3に示す通りであるが、装置の設置面積や記録媒体の大きさを考慮して、各部の配置を縦型にしたり搬送経路を曲げたりすることによって、さらに利便性を高めることも可能である。
このような装置上のフレキシビリティーは、可逆性感熱記録媒体の場合特に優れており、また装置自体の小型化も他の方式より実現しやすい。
可逆性感熱記録媒体では記録層の印字画像を消去するための、ヒートローラやセラミックヒータ基板などの消去用加熱ヒータを含む消去用加熱手段と、記録層に記録表記画像を形成させるための、サーマルヘッドのような画像形成用加熱手段を少なくとも設置すればよい。
【0085】
本発明は、可逆性感熱記録媒体に筆記インク像が形成されていても、書き替えを可能にするものであるが、記録層に記録画像を形成する手段を除いた、消去のみを実行する画像消去装置とすることも可能である。この場合は記録媒体に形成された印字画像と筆記インク像の両方を消去でき、記録媒体を画像のない初期状態に容易に戻すことができる。
【0086】
文書用の書き替え記録を目的とする場合、可逆性感熱記録媒体の中でも特にロイコ染料の発色/消色を利用した可逆記録層を持つ記録媒体が、コントラストの高い黒発色画像が容易に得られることから有利である。この記録媒体は前述のように、例えば長鎖構造をもつ顕色剤を用いることによって可逆性を達成しており、加熱温度または冷却速度によって印字と消去を安定して繰り返すことができる。これは上記の画像消去記録装置で容易に画像を着替えることができる。
さらに、本装置によれば筆記インク像除去手段を設けてあるため、文書用として機密性の高い重要な筆記インク像を自動的に消去し、かつ印字画像の書き替えも安定して繰り返すことができる。
【0087】
【実施例】
以上、本発明の実施態様を具体的に説明したが、さらに具体的な実施例を以下に示す。
この実施例では、一例として下記の可逆性感熱記録媒体を用いた。また、筆記具にはアルコール系のマーカーである三菱鉛筆製「ピース」を用いた。
【0088】
記録媒体の作製例
[記録層]
1)2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン   2部
2)下記の構造の顕色剤                    8部
【0089】
【化1】



3)下記の構造の発色消色制御剤                3部
【0090】
【化2】



4)アクリルポリオール樹脂(三菱レイヨン社製 LR503) 15部
5)テトラヒドロフラン(THF)溶液           130部
【0091】
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、大昭和製紙社製しらおいコート紙上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約9.0μmの記録層を設けた。
【0092】
[保護層]
1)アクリルポリオール樹脂(三菱レーヨン社製LR327)   10部
2)シリカ(水澤化学社製P−832)              4部
3)シリコングラフトポリマー(東亞合成社製GS1015)  1.2部
4)MEK                          50部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約1.0μmまで粉砕分散した。得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHX 4部を加え、良く攪拌し保護層塗布液を調製した。上記保護層塗布液を、上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗工し100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約3.0μmの保護層を設け、A4サイズの本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0093】
(実施例1〜14、比較例1〜5)
印字画像を形成しかつマーカーで文字と線が書かれた可逆性感熱記録媒体を準備した。
筆記インク像除去手段(32)として図8に記載のものが具備された図3の画像消去記録装置に、該記録媒体を通過させて、筆記インク像を除去しかつ印字画像を消去した後に、新たな画像に書き替える操作を行った。
ただし、除去部材には表1に示す不織布を用い、押付け部材には硬度30度のゴム材を用い、線圧を2Kgとした。また、受けローラには硬度60度のゴムローラを用いた。
除去部材の種類、除去部材の設置方向、柔軟度、筆記インク像の除去状態、印字画像の消去状態、書換え印字の状態を表1にまとめて示す。
また、この操作を100回繰り返した後の印字状態、サーマルヘッドの汚れの程度も合わせて示す。サーマルヘッドの汚れは、アルコールをつけた綿棒で5回擦ったときの綿棒への付着物の程度で判断する。
【0094】
(実施例15)
筆記インク像除去手段(32)として図4(a)に記載のものが具備された図3の画像消去記録装置に、印字画像が形成されかつマーカーで文字と線が書かれた記録媒体を通過させて、筆記インク像を除去すると共に印字画像を消去した後、別の印字画像に書き替える操作を行なった。
ただし、除去部材として前記不織布Bからなるシートを用い、押付け部材には硬度60度のゴム材を用い、線圧を2Kgとした。また、受けローラには硬度23度のゴムローラを用いた。
その結果、筆記インク像は完全に除去でき、印字画像は別の画像に書き替えられた。
この一連の操作を100回繰り返して行なった。ただし、記録媒体は同一のものを使用し、1回ごとにマーカーで文字と線を書き込んだ。印字画像はランダムな文書画像を用いた。
その結果、筆記インク像の除去が確実に行なわれ、また印字画像の消去と印字にも異常のないことが確認できた。
【0095】
(実施例16)
筆記インク像除去手段(32)として図7に記載のものが具備された図3の画像消去記録装置に、印字画像が形成されかつマーカーで文字と線が書かれた記録媒体を通過させ、筆記インク像を除去すると共に印字画像を消去した後、別の画像に書き替える操作を行なった。
ただし、除去部材として前記不織布Aからなるシートを用い、押付け部材には硬度40度のゴム材を用い、線圧を2Kgとした。また、受けローラには硬度60度のゴムローラを用いた。
その結果、筆記インク像は完全に除去でき、印字画像は別の画像に書き替えられた。
この一連の操作を100回繰り返して行なった。ただし、記録媒体は同一のものを使用し、1回ごとにマーカーで文字と線を加筆した。印字画像はランダムな文書画像を用いた。
その結果、筆記インク像の除去が確実に行なわれ、また印字画像の消去と印字にも異常のないことが確認できた。
【0096】
【表1−1】



【0097】
【表1−2】



ただし、表面の動的後退接触角が100度を越える可逆性記録媒体は、インクがはじくため評価可能な描線を形成できなかった。
【0098】
表1において設置方向とは、可逆性記録媒体の搬送方向に対する不織布の設置方向であり、搬送方向と平行な方向が不織布のどの方向であるかを示している。したがって、CDのとき不織布の主な繊維方向が搬送方向に対し横になっており、MDのときは平行になっている。
【0099】
表1に示される不織布の組成
不織布A: 麻60%、ポリエステル40%
不織布B: 麻60%、パルプ20%、ポリエステル20%
不織布C: ポリエステル100%
不織布D: レーヨン100%
不織布E: パルプ30%、レーヨン70%
不織布F: パルプ30%、レーヨン70%
不織布G: パルプ30%、レーヨン70%
【0100】
評価基準
筆記インク像の状態
A:インク残りなし。   B:わずかにインク残りあり、
C:少しインク残りあり、 D:インク残りあり
印字画像の消去状態
:消去残りなし、 △:わずかに消去残りあり、 ×:消去残りあり
書換え印字の状態
○:良好、 △:わずかにかすれた部分あり、×:印字かすれあり
100回後の印字状態
○:良好、 △:わずかにかすれた部分あり、 ×:印字かすれあり
サーマルヘッドの汚れ
○:ほとんどなし、 △:少しあり、 ×:あり
【0101】
評価基準
筆記インク像の状態
A:インク残りなし。   B:わずかにインク残りあり、
C:少しインク残りあり、 D:インク残りあり
印字画像の消去状態
:消去残りなし、 △:わずかに消去残りあり、 ×:消去残りあり
書換え印字の状態
○:良好、 △:わずかにかすれた部分あり、×:印字かすれあり
100回後の印字状態
○:良好、 △:わずかにかすれた部分あり、 ×:印字かすれあり
サーマルヘッドの汚れ
○:ほとんどなし、 △:少しあり、 ×:あり
【0102】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によって、可逆性記録媒体上に付着する筆記インク像を確実に除去できる方法と装置、その装置を用いて、繰り返し書き替えた場合にもサーマルヘッドのような加熱手段の機能低下の原因となる付着がなく、印字された画像の消去と新たな画像の印字を確実に実施でき、筆記インク像があっても信頼性の高い書き替えを実現できる可逆性記録媒体用画像消去記録装置を提供できる。
また、本発明の装置を用いることによって、筆記インク像をあらかじめ除去する手間が要らず、装置内で筆記インク像を除去するだけではなく表面に付着した汚れ、手垢、埃などを同時に除去することが可能になる。
その結果、印字画像の消去部およびサーマルヘッドへの汚れの付着が防止され、繰り返し使用によっても印字画像品質の低下がなく、信頼性の高い書き替えが実現できる。
したがって、書き替え可能な文書用の記録媒体に求められている筆記とそのインク物質の除去という課題が解決でき、オフィス作業の能率を維持したまま紙の使用量の削減を実現し、環境、資源、エネルギー問題の軽減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる可逆性感熱記録媒体の一つの例について説明する構成図である。
【図2】本発明で用いる可逆性感熱記録媒体の一つの例について発色/消色のプロセスを示す図である。
【図3】本発明の筆記インク像除去手段を有する画像消去記録装置の基本的な構成を示す図である。
【図4】本発明の画像消去記録装置における筆記インク像除去手段の基本的な例を示す図である。
【図5】本発明の画像消去記録装置における筆記インク像除去手段の基本的な動作を説明する図である。
【図6】本発明における除去部材の繊維質シートの柔軟度を測定する方法を説明する図である。
【図7】本発明の画像消去記録装置における筆記インク像除去手段の一つの例を示す図である。
【図8】本発明の画像消去記録装置における筆記インク像除去手段の別の例を示す図である。
【符号の説明】
11 支持体
12 可逆性感熱記録層
13 保護層
15 バックコート層
31 画像消去記録装置
32 給紙部
33 筆記インク像除去手段
34 画像の消去部
35 印字部
36 ガイド部
37 ローラ
38 記録媒体
41 押付け部材
43 加圧機構
44 受けローラ
45 シート状除去部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱による温度変化によって画像の記録表示とその消去が可能な可逆性感熱記録媒体の表面に、筆記具によって形成されたインク像(筆記インク像という)を、可逆性感熱記録媒体の前記表面に除去部材を線状に当接し、可逆性感熱記録媒体と除去部材とを相対的に摺動することによって除去する方法であって、可逆性感熱記録媒体の表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有し、かつ除去部材の少なくとも当接部が化学繊維を含む不織布からなる柔軟度が1.2以上のものであることを特徴とする、可逆性感熱記録媒体の表面の筆記インク像の除去方法。
【請求項2】
除去部材がシート状物であって、可逆性感熱記録媒体の前記表面への除去部材による当接を、除去部材の背後から押し付け部材によって押し付けて行なうことを特徴とする、請求項1に記載の筆記インク像の除去方法。
【請求項3】
押し付け部材がエッジ部を有し、該押し付け部材のエッジ部を押し付けること特徴とする、請求項2に記載の筆記インク像の除去方法。
【請求項4】
可逆性感熱記録媒体を一定方向に搬送し、除去部材を構成する不織布繊維のMD対する直交方向が該搬送方向にあわせたものであることを特徴とする請求項2または3に記載の筆記インク像の除去方法。
【請求項5】
可逆性感熱記録媒体が少なくともロイコ染料と顕色剤を含む記録層を支持体上に設けたシート状物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の筆記インク像の除去方法。
【請求項6】
筆記具を構成するインクが着色剤、樹脂、界面活性剤および溶剤を含むものであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の筆記インク像の除去方法。
【請求項7】
記録表示された画像を有しかつ請求項1乃至6のいずれかに記載の方法によって筆記インク像の除去された可逆性感熱記録媒体を加熱して、表示画像を消去する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって表示画像が消去された可逆性感熱記録媒体を、前記消去温度より高い温度で加熱して、表示画像を形成する方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法によって筆記インク像が除去された可逆性感熱記録媒体を加熱して、表示画像を形成する方法。
【請求項10】
加熱による温度変化によって情報の記録消去が可能な可逆性感熱記録媒体を一定方向に搬送し、筆記具によって形成された該可逆性感熱記録媒体の表面上のインク画像(筆記インク像という)を、可逆性感熱記録媒体の前記表面に除去部材を押し付けて当接し、可逆性感熱記録媒体と除去部材とを相対的に摺動することによって除去する方法に用いる装置であって、表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有する可逆性感熱記録媒体を用い、かつ少なくとも前記当接部が化学繊維を含み柔軟度1.2以上の不織布からなる除去部材、前記除去部材を可逆性感熱記録媒体の表面に押し付ける押付け部材、前記可逆性感熱記録媒体の前記表面の反対側の面を支持して前記除去部材と前記可逆性感熱記録媒体とを前記押付け部材共に挟持する搬送部材とを少なくとも具備することを特徴とする筆記インク像の除去装置。
【請求項11】
押付け部材の少なくとも可逆性感熱記録媒体に接触し押し付ける部分が、弾性体でかつエッジ形状であることを特徴とする、請求項10に記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項12】
除去部材がシート状長尺物であることを特徴とする、請求項10または11に記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項13】
除去部材が、押付け部材で押し付けられる部分を境にして可逆性感熱記録媒体搬送方向の上流側端部が固定されていることを特徴とする、請求項12に記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項14】
押付け部材と搬送部材とが除去部材と可逆性感熱記録媒体とを挟持する位置に、可逆性感熱記録媒体が搬送されていないときには、除去部材と搬送部材が圧接しないか、または接触しない位置にあることを特徴とする、請求項10乃至13の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項15】
可逆性感熱記録媒体に対して除去部材を摺接していないとき、除去部材を隔離させる手段を有することを特徴とする請求項10乃至14の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項16】
除去部材を押付け部材と搬送部材とが対向する位置まで搬送する除去部材供給手段を有することを特徴とする請求項10乃至15の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項17】
筆記インク像を除去した後の除去部材を回収する除去部材回収手段を有することを特徴とする請求項10乃至16の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項18】
筆記インク像を除去した後の除去部材を装置外へ排出する除去部材排出手段を有することを特徴とする請求項10乃至17の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項19】
除去部材の重さが坪量5グラム以上30グラム未満であることを特徴とする請求項10乃至18の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項20】
除去部材を構成する不織布がセルロース繊維を含むことを特徴とする請求項10乃至19の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項21】
除去部材を構成する不織布がレーヨン繊維および/またはポリエステル繊維を含むことを特徴とする請求項10乃至20の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項22】
除去部材を構成する不織布繊維のMD対する直交方向が可逆性感熱記録媒体の搬送方向にあわせたものであることを特徴とする請求項10乃至21の何れかに記載の筆記インク像の除去装置。
【請求項23】
請求項10乃至22のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に形成された記録表示画像を消去するための加熱手段と共に具備することを特徴とする画像消去装置。
【請求項24】
請求項10乃至22のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に記録表示画像を形成するために加熱手段と共に具備することを特徴とする画像記録装置。
【請求項25】
請求項10乃至22のいずれかに記載の除去装置を筆記インク像除去手段として、可逆性感熱記録媒体に形成された記録表示画像を消去するために加熱手段および可逆性感熱記録媒体に記録表示画像を形成するために加熱手段と共に具備することを特徴とする画像消去記録装置。
【請求項26】
加熱による温度変化によって画像の記録表示とその消去が可能な可逆性感熱記録媒体の表面に、筆記具によってインク像を形成する方法であって、可逆性感熱記録媒体の表面が75度以上100度以下の蒸留水に対する動的後退接触角を有し、かつ筆記具を構成するインクが着色剤、樹脂、界面活性剤および溶剤を含むものであることを特徴とする可逆性感熱記録媒体の表面に筆記インク像の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2004−130563(P2004−130563A)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−295432(P2002−295432)
【出願日】平成14年10月8日(2002.10.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】