説明

可逆性感熱記録媒体

【課題】サーマルヘッド等により書き替えに対応可能な高速消去性に優れた可逆性感熱記録媒体、該可逆性感熱記録媒体を用いた画像処理方法及び画像形成装置を提供することである。
【解決手段】支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、支持体側の記録層が表示面側の記録層よりも熱伝導性が高いことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体、それを用いる画像処理方法、及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。しかし、これら実用化されている従来の記録媒体は環境問題上、リサイクルや使用量の減量化などの見直しが迫られているが、不可逆的な発色であるため、一度記録した画像を消去して繰り返し使用することはできないし、新しい情報は画像が記録されていない部分に追記されるぐらいで記録可能な部分の面積は限られている。そのため、記録する情報量を減らしたり、記録エリアがなくなった時点でカードを作り直しているのが実状である。そこで、近年盛んに論じられているゴミ問題や森林破壊問題を背景に、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれていた。
【0003】
ところで、これらの要求から様々な可逆性感熱記録媒体が提案されてきた。例えば、透明・白濁という物理的変化を利用した高分子タイプの可逆性感熱記録媒体が開示されている(特許文献1、2参照)。また、新たに化学的変化を利用した染料タイプの可逆性感熱記録媒体も提案されている。具体的には、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組合せを用いるもの(例えば、特許文献3参照)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(例えば、特許文献4 参照)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(例えば、特許文献5、6、7参照)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いたもの(例えば、特許文献8参照)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(例えば、特許文献9、10参照)などが開示されている。
【0004】
さらに本発明者らは、先に特許文献11において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、その発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものを使用することが提案されている(例えば、特許文献12、13参照)。
【0005】
しかし、このような材料を用いた記録媒体では、消色速度が遅く書き替えに時間がかかる、消色が不充分、あるいは発色画像の熱安定性が低いなどの問題を有していた。
そこで、さらに本発明者らは特許文献14に記載のフェノール化合物を用いることで、発色と消色のコントラストが高く、高速消去が可能であり、画像部の発色安定性に優れる記録媒体を提案した。このフェノール化合物を用いた記録媒体は、ホットスタンプやヒートローラー、セラミックヒータなどの加熱部材による消去が可能であり実用性に優れるものであった。
【0006】
さらに、これらのフェノール化合物を用いて可逆性感熱記録媒体を作製する際に、より実用性を高めるため消色性の向上と画像安定性の向上を狙いとした発色消色制御剤や、消色促進剤が検討されており、特許文献15、16、17などに記載の長鎖アルキル化合物を用いることで、消去性が向上して消し残りがほとんど発生しなくなったり、さらには特に特許文献17記載の長鎖アルキル化合物をもちいることで、消色性の向上と共に発色画像が安定なものとなった。
さらに、近年、書き替え装置の小型化や省エネルギー化の要求が高まり、サーマルヘッド以外に消去用の熱源を必要としないサーマルヘッド消去や、さらに画像の記録と消去を1パスで行なうサーマルヘッドオーバーライトなど、サーマルヘッド書き替えに対応した記録媒体が必要とされてきた。
【0007】
上記のフェノール化合物や発色消色制御剤、消色促進剤を用いた場合であっても消色が充分でなく、消し残りが発生したり、さらに高速な消去の際には消し残りが増大してしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献18には、無機セラミックスを主材料としてなる熱伝導を制御する熱制御層を、記録層の上または下に設けることによって、消色温度幅を広げて消色性を高めることが記載されている。この熱制御層によって、ホットスタンプの加熱による消去温度幅が広がったものの、サーマルヘッド消去といった数ミリ秒の極めて短い加熱時間の消去には対応できるものではなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−107584号公報
【特許文献2】特開平4−78573号公報
【特許文献3】特開昭60−193691号公報
【特許文献4】特開昭61−237684号公報
【特許文献5】特開昭62−138556号公報
【特許文献6】特開昭62−138568号公報
【特許文献7】特開昭62−140881号公報
【特許文献8】特開昭63−173684号公報
【特許文献9】特開平2−188293号公報
【特許文献10】特開平2−188294号公報
【特許文献11】特開平5−124360号公報
【特許文献12】特開平6−210954号公報
【特許文献13】特開平10−95175号公報
【特許文献14】特開平10−67177号公報
【特許文献15】特開平9−48175号公報
【特許文献16】特開平9−290563号公報
【特許文献17】特開平11−70731号公報
【特許文献18】特開2004−255625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、サーマルヘッド書き替えに対応可能な高速消去性に優れた可逆性感熱記録媒体を提供することである。
さらに本発明の他の目的は、上記可逆性感熱記録媒体を用いる画像処理方法、及び画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、サーマルヘッドオーバーライトなどの数ミリ秒の極めて短時間での消去の場合には、サーマルヘッドからの距離や発熱ドット中心からの距離によって感熱記録層内部の温度分布が大きくなり、均一な加熱状態にならないために消去残りが発生すると考え、特に感熱記録層内部の熱伝導を向上させて、感熱記録層内を均一加熱することで、サーマルヘッドによる消去性の改善を検討した。
なお、明細書中、可逆性感熱記録層、感熱記録層は、単に記録層と云うことがある。
【0012】
記録層内の熱伝導を高める種々の検討を行なった結果、特に、記録層の支持体側の熱伝導性を向上させることにより、サーマルヘッド消去性が改善されることがわかった。これは、サーマルヘッドから離れた記録層の下部の熱伝導性を高めることで、記録層全体の加熱温度がより均一となり、消色性が改良されたものと考えられる。
【0013】
熱伝導性を高める手段としては、高熱伝導の無機微粒子を用いる方法がある。しかしながら、記録層塗工液中にこれらの無機微粒子を添加して塗布・乾燥した場合には、乾燥過程で支持体上に塗工された記録層液中の対流が起き、無機微粒子は相対的に表面側に多く含有された状態になってしまうことがTEM観察の結果などからわかった。そこで、本発明では、好ましい記録媒体の作製方法として、記録層を分割して多段塗工し、支持体側に向かって感熱記録層塗工液を熱伝導性の高いものにすることによって、支持体側に熱伝導性高い記録層をもった可逆性感熱記録媒体が提供される。尚、多段塗工によって作製される記録層の分割数はとくに制限はないが、生産性の点から2〜4層程度が好ましい。
さらに、本発明においては記録層と支持体の間に中空フィラーを含むアンダー層を設けることによって、よりいっそう消去性が向上することが判った。
【0014】
これは、記録層の下部に高密度に高熱伝導性の、例えば酸化亜鉛超微粒子を含有することで、サーマルヘッド加熱など短時間加熱では従来は充分に加熱できなかった記録層の下部まで良好な熱伝導となり、消色性が向上したものと考えられる。
【0015】
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(10)によって解決される。
(1)「支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、支持体側の感熱記録層が表示面側の感熱記録層よりも熱伝導性が高いことを特徴とする可逆性感熱記録媒体」;
(2)「前記感熱記録層が多段塗工で作製された複数層の積層構造を有し、各感熱記録層が表示面側から支持体側に向かって熱伝導性が高いことを特徴とする前記(1)に記載の可逆性感熱記録媒体」;
(3)「前記支持体と前記感熱記録層との間に中空粒子を含むアンダー層を設けたことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の可逆性感熱記録媒体」;
(4)「前記電子受容性化合物が下記式(1)で示される炭素数8以上の飽和脂肪族基を有するフェノール化合物であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【0016】
【化1】


(式中、X及びXは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−から選ばれる2価の基、或いはこれら2価の基を2個以上組み合わせた2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1〜22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8〜30の炭化水素基を表わす。また、pは0〜4の整数を表わし、pが2〜4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも、異なっていてもよい。また、pが0のとき、Xは直接結合手ではない。さらに、qは1〜3の整数を表わす。)」;
(5)「情報記憶部を設けたことを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体」;
(6)「記録媒体の表示面もしくは裏面の少なくとも1つに、接着剤層又は粘着剤層を設けたことを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体」;
(7)「前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を用いて、画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法」;
(8)「サーマルヘッドを用いて前記可逆性感熱記録媒体の表示部に画像を形成することを特徴とする前記(7)に記載の画像処理方法」;
(9)「サーマルヘッドを用いて画像を消去することを特徴とする前記(7)に記載の画像処理方法」;
(10)「前記(8)又は(9)の少なくともいずれか1項に記載の画像処理方法により、画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理装置」。
【発明の効果】
【0017】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、発色感度、画像濃度が良好で、サーマルヘッド消去性に優れた実用性の高いものである。
また本発明の上記可逆性感熱記録媒体を用いた画像処理方法、及び画像処理装置は、画像濃度が良好で、サーマルヘッド消去性に優れる画像を形成することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、熱伝導性を高める方法としては、アルミナや酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの高熱伝導性無機微粒子を用いる方法がある。これらの高熱伝導性無機微粒子のなかでも、特に酸化亜鉛超微粒子が好ましい結果が得られる。また、感熱層の表面側よりも支持体側の熱伝導性を高める方法としては、上記の高熱伝導性微粒子の含有率を変えた記録層を積層する等の方法がある。
本発明で用いられる高熱伝導性無機粒子の好ましい熱伝導率は20Wm−1−1以上であるものが好ましく、より好ましくは30Wm−1−1以上であることが好ましい。好ましい範囲の上限は特に無いが、500Wm−1−1を越える高熱伝導性の物質としてはダイヤモンドなどに限定され、実用性が低いため、好ましい熱伝導性の範囲としては20〜500Wm−1−1であり、より好ましくは30〜500Wm−1−1である。
ここで、例えば本発明で用いられる上記高熱伝導性無機微粒子の熱伝導率(Wm−1−1)は、アルミナが20〜40、酸化亜鉛が54、窒化ホウ素が60、窒化ケイ素30〜90、窒化アルミニウム70〜270である。
なお、以下に高熱伝導性無機微粒子として、酸化亜鉛を用いる場合を例にとって説明する。
【0019】
酸化亜鉛は、記録層中に用いられているロイコ染料や顕色剤、ポリマーといった有機物や、この種の記録材料に添加されるシリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機充填剤に比べて熱伝導度が高いものであり、記録層への添加によって層内の熱伝導が良好となって加熱温度ムラの低減が期待される。しかしながら、従来公知の酸化亜鉛を記録層中に添加した場合には、粒子径が数ミクロン程度と粗大であるために酸化亜鉛を記録層内に均一に添加させることが困難となり、記録層内の酸化亜鉛粒子の分布によって温度分布のムラが発生して消去不良を起こしたり、酸化亜鉛粒子による光散乱によって記録層の発色濃度を低下させてしまったり、記録層自体が着色する原因となってしまう。
【0020】
そこで、本発明においては、好ましくは粒子径10〜100nmの酸化亜鉛微粒子を用いることによって、酸化亜鉛微粒子は可視領域で実質的に透明となり、上記のような画像濃度の低下への悪影響がなくなる。さらに、粒子が微細化されることによってより均一に分布して記録層内の温度分布ムラが少なくなる。
また、一方で粒子径が10nm未満の場合には凝集しやすくなるため安定な分散が難しくなるという問題がある。そこで、本発明においては酸化亜鉛微粒子は粒子径10〜100nmのものが好ましく用いられ、さらに、特に好ましくは10〜70nmのものが用いられる。
【0021】
本発明において用いられる高熱伝導性無機微粒子の添加量は、記録層中の5〜40重量%が好ましく、5重量%よりも少ない場合には消去性向上の効果が少なく、また、40重量%よりも多い場合には記録層の強度が低下して、繰り返しての使用の際に記録媒体の変形や画像濃度の低下などの問題が起きる場合がある。
また、前述のように酸化亜鉛微粒子を記録層塗工液中に添加し、塗布・乾燥した場合には乾燥過程での記録層塗工液中の溶剤などの対流現象によって、酸化亜鉛微粒子は記録層の上部に動き、記録層の下部よりも上部に高密度に分布する。これは記録層断面のTEM(透過電子顕微鏡)観察によって確認される。
【0022】
すなわち、従来の公知の記録層の作製方法のように、記録層塗工液中に酸化亜鉛微粒子を添加し、塗布・乾燥した場合には、本発明の記録層下部の酸化亜鉛微粒子含有量が相対的に上部よりも高い状態にはなっていない。そこで、本発明では、好ましい記録媒体の作製方法として、記録層を分割して多段塗工し、支持体側の記録層塗工液を熱伝導性の高いものにすることによって、支持体側に熱伝導性高い記録層をもった可逆性感熱記録媒体が提供される。
また、酸化亜鉛微粒子を記録層中に含有させる際に、記録層中のロイコ染料との相互作用によって記録層の着色を起こすことがあり、とくにペイントシェイカーやボールミルなどによる分散の際に着色の傾向が見られる。
【0023】
これは微細化された酸化亜鉛粒子の表面活性によるものと考えられる。酸化亜鉛微粒子の表面活性を低下させる方法としては、表面処理を行なうことが好ましく、改質の方法としてはコーティングによる改質、トポケミカルな改質、マイクロカプセル化による改質、沈殿反応による改質などがある。なかでもとくに、アルミナ、チタン系、ジルコニア系化合物による表面改質されたものが好ましく用いられる。
尚、以上のことは酸化亜鉛粒子のみならず、他の高熱伝導性無機粒子においても同様である。
【0024】
さらに、本発明では、支持体上に中空粒子を含有するアンダー層を設け、さらにアンダー層上に、可逆性感熱記録層を設け、さらに必要に応じて感熱記録層上に保護層等を形成した可逆性感熱記録媒体が提供される。
このとき、中空粒子を含有したアンダー層を用いることで、支持体などへの熱の拡散が防止でき、サーマルヘッドからの熱を高効率に使用することができる。
本発明では、記録層中に用いた酸化亜鉛微粒子による記録層内温度の均一化とさらにアンダー層の断熱効果によって、きわめて良好な消去性を示す。
【0025】
ここで、本発明で用いられるアンダー層について説明する。
アンダー層に含有させる中空粒子は、ブタン、ペンタン等の低沸点の液体をポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等の重合体又は共重合体でマイクロカプセル化したもの等である。あらかじめ発泡させた中空粒子と未発泡状態の中空粒子があるが、未発泡状態で添加し可逆性感熱記録媒体作製時又は印字時の熱により発泡させると均一な発泡が難しく画質が劣るため、あらかじめ発泡した中空粒子を添加した方が良好な画質が得られる。
【0026】
中空粒子の粒径は0.2〜50μmが好ましく、0.2μm未満であると充分なクッション性と断熱性が得られにくい。また50μmを超えると塗膜の平滑性が下がり均一なクッション性が損なわれ、画像抜けや消去の不均一化等が発生しやすくなる。
また、中空粒子の体積中空率は50%以上が好ましく、これより低い体積中空率では充分なクッション性と断熱性が得られにくい。また、中空率が70%〜95%のものが特に好ましい。
該中空率は比重から算出する体積比で、下記式で表わされる。
中空率(%)=〔1−1/(A/B)〕×100
(式中、A=シェル材の比重、B=中空粒子の真比重)
また、中空粒子は比重が小さく作業上扱いにくいので、無機顔料で被覆された比重の高い中空粒子を用いてもよい。中空粒子を被覆する無機顔料としては炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンであり、これらを熱融着等で中空粒子に被覆させたものを使用することができる。
【0027】
さらに、また中空粒子の隔壁の厚さは0.05〜3μmであることが好ましい。かかる厚さが0.05μmより薄い場合は、粒子の強度が低く、印字/消去を繰り返した際に中空粒子が破壊されてしまい、クッション性や断熱性が低下する。一方、3μmより厚い場合は、粒子が堅くなるためクッション性が低下したり、断熱性が低くなり、好ましくない。
【0028】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の可逆性感熱記録媒体は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本的な発色・消色現象を説明する。
【0029】
図1はこの可逆性感熱記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度Tでロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度Tで消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0030】
本発明の可逆性感熱記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤(ロイコ染料)が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0031】
可逆性感熱記録層に用いられるロイコ染料としては、この種の可逆性感熱記録媒体に一般的に用いられる化合物を1種または2種以上用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。これらの化合物の例としては、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−230680号公報などに記載のロイコ染料である。
【0032】
なかでも特に好ましい例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリドなどが挙げられる。
【0033】
また、本発明において顕色剤としては、下記式(1)で示される炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物が特に好ましく用いられる。
【0034】
【化2】


(式中、X及びXは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−から選ばれる2価の基、或いはこれら2価の基を2個以上組み合わせた2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1〜22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8〜30の炭化水素基を表わす。また、pは0〜4の整数を表わし、pが2〜4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも、異なっていてもよい。また、pが0のとき、Xは直接結合手ではない。さらに、qは1〜3の整数を表わす。)
【0035】
具体的には、RおよびRは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。
の炭素数は1〜22であり、炭素数が22を超えると原料入手が困難になり、また、合成も行ないにくくなるため好ましくない。
【0036】
またRの炭素数は8〜30であり、炭素数が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。炭素数が30を超えると原料入手が困難になり、また、合成も行ないにくくなるため好ましくない。
及びXは直接結合手または下記表1に示すヘテロ原子を含む2価の基を示し、
【0037】
【表1】

【0038】
好ましくは、表1で表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。その具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0039】
【表2】

【0040】
本発明におけるフェノール化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、フェノール化合物を単独または混合して用いることもできる。
【0041】
【表3】

(式中のr、sは前記のRおよびRの炭素数を満足する整数を表わす)等が挙げられる。
【0042】
また、これらの他にも、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報、特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報、特開平11−99749号などに記載の顕色剤を用いることができる。
【0043】
本発明において、可逆性感熱記録層形成用樹脂としては、架橋状態にある樹脂が好ましく用いられ、具体的にはアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0044】
更に、本発明において好ましくは、水酸基価70(KOHmg/g)以上の樹脂が含有される(当初用いられる)が、水酸基価70(KOHmg/g)以上の樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂などが用いられ、特に発色の安定性が良好で、消色性が良好であることから、アクリルポリオール樹脂が好ましく用いられる。水酸基価としては70(KOHmg/g)以上であり、特に好ましくは90(KOHmg/g)以上である。水酸基価の大小は架橋密度に影響するため塗膜の耐化学薬品性、物性などを左右する。本発明者らは、水酸基価が70(KOHmg/g)以上で耐久性、塗膜表面硬度、ワレ抵抗性が向上することから特に好ましく用いられる。
【0045】
また、アクリルポリオール樹脂においては構成の違いによってその特性に違いがあり、水酸基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4―ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが用いられるが、特に第1級水酸基をもつモノマーを使用した方が塗膜のワレ抵抗性や耐久性がよいことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0046】
本発明に用いられる架橋剤としては、従来公知のイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ化合物等が挙げられる。その中でもイソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。ここで用いられるイソシアネート系化合物は、公知のイソシアネート単量体のウレタン変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ブロックドイソシアネートなどの変性体から選択される。また、変性体を形成するイソシアネート単量体としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネートNDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4 −シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、等が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0047】
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。架橋促進剤としては、例えば1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、有機すず化合物などの金属化合物などが挙げられる。また、架橋剤は添加した全量が架橋反応をしていても、していなくてもよい。
【0048】
すなわち、未反応硬化剤が存在していてもよい。この種の架橋反応は経時的に進行するため、未反応の硬化剤が存在していることは架橋反応が全く進行していないことを示すのではなく、未反応の硬化剤が検出されたとしても、架橋状態にある樹脂が存在しないということにはならない。また、本発明におけるポリマーが架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるポリマーは、溶媒中に該ポリマーが溶け出し溶質中には残らなくなるため、溶質のポリマー構造の有無を分析すればよい。
【0049】
さらに、本発明によれば、上記の顕色剤、ロイコ染料とともに、直鎖の炭化水素基やアミド基や尿素基などの水素結合基などをもった発色消色制御剤を記録層中に含有させることにより、発色画像の保存安定性が良好であるとともに、消色時の消色性も向上して良好な消去性を得ることができる。
【0050】
また、本発明によれば、接着性改良などのために記録層と保護層の間に中間層を設けることができる。
該中間層に用いられる樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが広く用いられ、その例としてはポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
さらに、本発明によれば、可逆性感熱記録層上に架橋状態にある樹脂を含有する保護層を設けることができる。該保護層に用いられる樹脂としては、前述の記録層と同様の熱硬化樹脂や、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂等が用いられる。
該保護層中に用いる樹脂として、特に好ましくは、紫外線吸収基を分子構造中に有した紫外線吸収性ポリマーが用いられる。
紫外線吸収性ポリマーとしては紫外線吸収基を有した単量体と、架橋可能な官能基を有した単量体をもつポリマーが好ましく用いられ、紫外線吸収基を有した単量体としては、(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ω−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール骨格を有した単量体が特に好ましく用いられる。
【0051】
また、官能基を含む単量体としては、例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t −ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、なかでもヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートなどが特に好ましく用いられる。
【0052】
更に塗膜強度アップや耐熱性向上のために、紫外線吸収性基を含む単量体と官能基を含む単量体の共重合体に下記に示す単量体を共重合させてもよい。例えば、スチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソブチレン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル、メタクリロニトリル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのモノマー群;アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ラウリルトリデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチルステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステル群;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチレンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど1分子中に2個以上の重合性2重結合を有するモノマー群などから挙げられ、特に限定されるものではないが、なかでもスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどが特に好ましく用いられる。また、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0053】
以上より、本発明で用いられる紫外線吸収構造を有するポリマーの具体的な好ましい例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルからなる共重合体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0054】
さらに、本発明によれば、該保護層中に紫外線吸収能を有する無機微粒子を含有することができる。
本発明に用いられる無機顔料は0.1μm以下の平均粒径を有する顔料ならば任意である。このような無機顔料としては酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物及びこれらの複合酸化物、硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物あるいは硫酸化合物、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。
この中でも特に好ましいのは400nm以下の波長領域に吸収端を有する顔料である。
【0055】
このような顔料は、紫外線UV−A領域、即ち波長320〜400nmの紫外線UV−A領域に吸収端を有する顔料(A)および紫外線UV−A領域より短波長側に吸収端を有する無機顔料(B)の2群に分類できる。本発明では無機顔料(A)あるいは無機顔料(B)を単独で用いることもできるが、無機顔料(A)と無機顔料(B)を併用することにより本発明の効果がより顕著になる。無機顔料(A)あるいは無機顔料(B)を単独で用いる場合にはこれらの顔料を中間層あるいは保護層のいずれかに含有させることができる。また無機顔料(A)と無機顔料(B)を併用する場合にはこれらの顔料を同時に中間層あるいは保護層に含有させることができるが、無機顔料(A)と無機顔料(B)を中間層と保護層に別々に含有させることもできる。この場合無機顔料(A)を中間層に含有させ、無機顔料(B)を保護層に含有させることにより、本発明の効果が一層顕著に発揮される。
【0056】
無機顔料(A)の具体例としては硫化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化亜鉛、窒化ガリウム等が挙げられる。
【0057】
また無機顔料(B)の具体例としてはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム等が挙げられる。
さらに、本発明においては保護層中にこの種の記録媒体に使用される無機/有機のフィラー、滑剤などを用いてもよい。
【0058】
本発明の可逆性感熱記録媒体の支持体としては、紙、樹脂フィルム、PETフィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、感熱記録層を保持できるものであればよい。また、必要に応じた厚みのものが単独あるいは貼り合わす等して用いることができる。すなわち、好ましくは60〜150μmで、数μm程度から数mm程度まで任意の厚みの支持体が用いられる。
また、これら支持体上に前記アンダー層を設ける場合、接着層を介して設けることにより、クラック発生防止やバリの発生が改善される。
該接着層は、上記の各層と同様の塗工方式等で形成することができる。
【0059】
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、上述した可逆性感熱記録媒体を構成する支持体の感熱層を形成する面と反対の面に、接着剤層又は粘着剤層を設けたものである。
この可逆性感熱記録ラベルには、接着剤層又は粘着剤層を形成したもの(無剥離紙型)と、その接着剤層又は粘着剤層の下に剥離紙をつけるもの(剥離紙型)とがあり、接着剤層を構成する材料としては、ホットメルト型のものが通常用いられる。
【0060】
接着剤層又は粘着剤層の材料は、一般的に用いられているものが使用可能である。
例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、該可逆性感熱記録媒体を構成する少なくとも感熱記録層を可逆表示部として機能し、それと情報記憶機能のある部材(情報記憶部)と合わせて作製される情報表示記憶部材として用いることができる。
【0062】
次に、該情報表示記憶部材について説明する。
この情報記憶部と可逆表示部を有する部材としては、次の3つのものに大別できる。
(1)情報記憶機能のある部材の一部を可逆性感熱記録媒体の支持体として用い、そこに感熱記録層を直接形成したもの。
(2)情報記憶機能のある部材に、別途形成された、支持体上に感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体の支持体面を接着したもの。
(3)情報記憶機能のある部材に、前記可逆性感熱記録ラベルが接着剤層又は粘着剤層を介して、接着されたもの。
これら(1)、(2)、(3)場合、情報記憶部と可逆表示部のそれぞれの機能が発揮できるよう設定されることが必要であり、そうでありさえすれば情報記憶部の設定位置は目的に応じて任意に選定でき、可逆性感熱記録媒体における支持体の感熱記録層を設けた面と反対側の面に設けることも、支持体と感熱記録層との間でも、あるいは感熱記録層上の一部に設けることもできる。
この情報記憶機能のある部材としては、特に限定されないが、一般的なカード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットを用いることができる。
【0063】
これらの例としては、ICカードや光カード等の厚手カード、フレキシブルディスク、光磁気記録ディスク(MD)やDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスク、CD−R等の追記型ディスク、相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)、ビデオテープカセット等を挙げることができる。
この可逆表示機能と情報記憶機能の双方を有する情報表示記憶部材は、例えばカードの場合で説明すると、情報記憶部に記憶された情報の一部を可逆性感熱記録層に表示することによって、カード所有者等は、特別な装置がなくてもカードを見るのみで情報を確認することができて、可逆性感熱記録媒体を適用しないカードに比べてその利便性が非常に向上することになる。
【0064】
情報記憶部は、必要な情報を記憶できるものでありさえすれば特に限定されないが、例えば、磁気記録、接触型IC、非接触型ICあるいは光メモリが有用である。
磁気記録層は、通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等のような金属化合物及び塩ビ系、ウレタン系及びナイロン系のような樹脂等を用いて支持体に塗工形成するか、または樹脂を用いず前記の金属化合物を用いて蒸着、スパッタリング等の方法により形成される。また、表示に用いる可逆性感熱記録媒体における可逆性感熱記録層をバーコード、2次元コード等のようなやり方で記憶部として用いることもできる。
【0065】
また、前記(3)の可逆性感熱記録ラベルを用いる例として、磁気ストライプ付塩化ビニル製カード等のように、支持体として可逆性感熱記録層の塗布が困難な厚手のもの場合には、その全面又は一部に接着剤層又は粘着剤層を設けることができる。
こうすることによって、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性を向上できる。
この接着剤層又は粘着剤層を設けた可逆性感熱記録ラベルとしては、上記の磁気付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0066】
また、この可逆性感熱記録ラベルは、フレキシブルディスク、MDやDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ上の表示ラベルの代わりとして用いることができる(図2、図3参照)。
さらに、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスクの場合には、直接ディスクに可逆性感熱記録ラベルを貼ることや、直接ディスク上に可逆性感熱記録層を設けることもできる。こうすることによって、それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更する等の用途への応用が可能である。
【0067】
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、CD−Rなどの追記型ディスク上に可逆性感熱記録ラベルを貼って、CD−Rに追記した記憶情報の一部を書換え表示することも可能である。
さらに、ビデオテープカセットの表示ラベルとして用いてもよい(図4参照)。
厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に熱可逆記録機能を設ける方法としては、上記の可逆性感熱記録ラベルを貼る方法以外に、それらの上に可逆性感熱記録層を直接塗布する方法や、予め別の支持体上に可逆性感熱記録層を形成しておき、厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に該感熱記録層を転写する方法等がある。
【0068】
転写する場合には、可逆性感熱記録層上にホットメルトタイプ等の接着層や粘着層を設けておいてもよい。
厚手カード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット等のように剛直なものの上に可逆性感熱記録ラベルを貼着したり、可逆性感熱記録層を設ける場合には、サーマルヘッドとの接触性を向上させ、画像を均一に形成するために弾力があり、クッションとなる層又はシートを剛直な基体とラベル又は可逆性感熱記録層の間に設けることが好ましい。
【0069】
さらに、本発明の可逆性感熱記録媒体を用いた画像処理方法、画像処理装置に関する例の概略図を図5に示す。
図5は裏面に磁気記録部を有した可逆性感熱記録媒体の書き替えを示したもので、まず、記録媒体裏面の磁気記録部を磁気ヘッド34で書き替えを行った後、消去温度まで加熱されたセラミックヒータ38によって、記録媒体表面側の可逆性感熱記録部を消去する。その後、サーマルヘッド53にて可逆性感熱記録部に書き込みを行なったのち、図左方向へカードを搬出する。
【実施例】
【0070】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、文中、部又は%とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。
【0071】
実施例1
[アンダー層液の作製]
中空粒子 10部
平均粒子径:4μm
中空率:90%
壁材主成分:アクリロニトリル、メタクリロニトリル
ポリビニルアルコールの10%水溶液 150部
クラレ社製PVA618
水 20部
上記組成からなる混合物を撹拌分散して得られた塗布液を、100μmの白PET上に厚さ約15μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布乾燥した。
【0072】
[感熱記録層1−1の作製]
N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−オクタデシルウレア 4部
アクリルポリオール樹脂
(三菱レイヨン社製LR503 固形分濃度50%溶液) 12部
メチルエチルケトン 70部
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に酸化亜鉛微粒子分散液(住友大阪セメント社製 ZS−303 固形分濃度30% 粒子径30nm)7部、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン1.5部、日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート75%酢酸エチル溶液)2.5部を順次加え、よく攪拌し感熱記録層塗布液を調製した。
上記組成の感熱記録層塗布液を、上記のアンダー層上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥して、膜厚約5.0μmの感熱記録層1−1を設けた。
【0073】
[感熱記録層1−2の作製]
次に上記の感熱記録層1−1の作製で用いられた酸化亜鉛微粒子分散液を4部用いた他は同様にして感熱記録層塗布液を調整し、これを上記の感熱記録層1−1上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して膜厚約5.0μmの感熱記録層1−2を設けた。
【0074】
[保護層の作製]
紫外線吸収性ポリマーの40%溶液(日本触媒社製UV−G300) 10部
イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX) 1.4部
シリコーン系アクリル樹脂(東亞合成社製GS−1015) 0.5部
メチルエチルケトン 10部
以上の組成物をよく撹拌し、保護層塗布液を調整した。
上記組成の保護層塗布液を上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、厚さ約3.5μmの保護層を設け本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0075】
実施例2
実施例1中で、感熱記録層1−1の作製で用いた酸化亜鉛微粒子分散液を10部に変えた他は同様にして、感熱記録層2−1を作製し、感熱記録層1−2の作製で用いた酸化亜鉛微粒子分散液を7部に変えた他は同様にして、感熱記録層2−2を作成し、それ以外は実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0076】
比較例1
実施例1中で用いた、記録層1−1および1−2の酸化亜鉛微粒子分散液を用いなかった他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0077】
比較例2
実施例1中で、感熱記録層1−1の作製で用いた酸化亜鉛微粒子分散液を1部に変えた他は同様にして、感熱記録層2’−1を作製し、感熱記録層1−2の作製で用いた酸化亜鉛微粒子分散液を4部に変えた他は同様にして、感熱記録層2’−2を作成し、それ以外は実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0078】
以上のように作製した可逆性感熱記録媒体について、以下の試験を行なった。
<発色試験>
ビーコム社製感熱印字装置を用いて、13、14、15Vの各電圧で、2msecの条件で印字し、発色した画像濃度と地肌部の濃度をマクベス濃度計RD914にて測定した。
<消色試験>
上記発色試験にて作製した画像を、東洋精機社製熱傾斜試験器にて120℃1秒にて加熱して、消色濃度を測定した。
<サーマルヘッド消色試験>
ビーコム社製感熱印字装置にて、21V、2msecの条件でベタ印字した部分に、8〜16Vを0.5V刻み2msecの条件で、エネルギーを変えて消去し各条件の消色部分の濃度をマクベス濃度計で測定し、最も消色した部分の濃度を選択し、サーマルヘッド消色濃度とした。
以上の結果を表4に示す。
【0079】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の可逆性感熱発色組成物の発色・消色特性を示す図である。
【図2】本発明における可逆性感熱記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す図である。
【図3】本発明における可逆性感熱記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す図である。
【図4】本発明における可逆性感熱記録ラベルをビデオテープカセットの表示ラベルとして用いた例を示す図である。
【図5】本発明の画像処理装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
34 磁気ヘッド
38 セラミックヒータ
40 搬送ローラ
47 搬送ローラ
53 サーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、支持体側の感熱記録層が表示面側の感熱記録層よりも熱伝導性が高いことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
前記感熱記録層が多段塗工で作製された複数層の積層構造を有し、各感熱記録層が表示面側から支持体側に向かって熱伝導性が高いことを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
前記支持体と前記感熱記録層との間に中空粒子を含むアンダー層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
前記電子受容性化合物が下記式(1)で示される炭素数8以上の飽和脂肪族基を有するフェノール化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【化1】


(式中、X及びXは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−から選ばれる2価の基、或いはこれら2価の基を2個以上組み合わせた2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1〜22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8〜30の炭化水素基を表わす。また、pは0〜4の整数を表わし、pが2〜4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも、異なっていてもよい。また、pが0のとき、Xは直接結合手ではない。さらに、qは1〜3の整数を表わす。)
【請求項5】
情報記憶部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
記録媒体の表示面もしくは裏面の少なくとも1つに、接着剤層又は粘着剤層を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を用いて、画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
サーマルヘッドを用いて前記可逆性感熱記録媒体の表示部に画像を形成することを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
サーマルヘッドを用いて画像を消去することを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
請求項8又は9の少なくともいずれか1項に記載の画像処理方法により、画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−100510(P2008−100510A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241145(P2007−241145)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】