説明

可逆熱変色性積層体

【課題】着色状態で長期間放置した後消色状態にした際の褐変(着色)を防止することができ発色時には青色の色調を呈し消色時に無色になる可逆熱変色性積層体を提供する。
【解決手段】(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記で示されるフルオラン誘導体(ロ)電子受容性化合物(ハ)、(イ)(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を積層してなる可逆熱変色性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性積層体に関する。更に詳細には、発色時には青色の色調を呈し、消色時には無色になる可逆熱変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物との電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体を必須成分とする相溶体から構成される青色から無色に発色する可逆熱変色性組成物を着色剤として用いた可逆熱変色性積層体に関して幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記した従来の可逆熱変色性積層体は、含有される可逆熱変色性組成物の電子供与性呈色性有機化合物としてアザフタリド系化合物を用いている。
前記アザフタリド系化合物を用いた可逆熱変色性組成物は、発色状態においては青色の色調を呈するものの、着色状態で長期間放置した後、消色状態にすると褐変(着色)を生じ易く、繰り返しの可逆熱変色機能を損なうものであった。
【特許文献1】特開2001−115153号公報
【特許文献1】特開2006−233110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、可逆熱変色性積層体に関して更に検討を加えたところ、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体である化合物からなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を設ける積層体において、(イ)成分に特定のフルオラン系化合物を適用することにより、従来の可逆熱変色性組成物の適用では成し得なかった、着色状態で長期間放置した後、消色状態にしても褐変(着色)を生じ難く、発色時には良好な青色の色調を示し、消色時には無色になる積層体が得られ、各種印刷物や記録材料への実用性に優れた可逆熱変色性積層体が得られることを見出して本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記したように、着色状態で長期間放置した後、消色状態にした際の褐変(着色)を防ぎ、発色時には青色の色調を示し、消色時には無色になる可逆熱変色性積層体を検討した結果、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として一般式(1)で示されるフルオラン系化合物を適用し、顕色剤として機能する(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前者の発消色を特定温度域で生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を積層した系が前記要件を満たすことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、支持体上に、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)で示されるフルオラン誘導体、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を積層してなる可逆熱変色性積層体を要件とする。
【化1】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数1〜8のアルコキシ基を示す。)
更には、前記可逆熱変色層と色調の異なる可逆熱変色層を併設してなること、前記可逆熱変色層上に、透明性金属光沢顔料を含む金属光沢層を積層してなること、前記支持体と可逆熱変色層の間に非変色層を設けてなること、最上層に透明性保護層を積層してなること、前記支持体の下層に粘着層を設けてなること、磁性記録媒体又はICチップを備えてなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の可逆熱変色性積層体は、特定のフルオラン系化合物を電子供与性呈色性有機化合物として用いることにより、着色状態で長期間放置した後、消色状態にした際の褐変(着色)を防止することができ、発色時には青色の色調を呈し、消色時には無色になる可逆熱変色性積層体を得ることができ、示温材料、印刷物、感熱記録材、教習具、玩具、装飾具等、多様な分野への応用性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記可逆熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱消色型の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記可逆熱変色性組成物は、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性を有する(図1参照)。
また、大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0007】
以下に各(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に説明する。
前記一般式(1)で示されるフルオラン系化合物は、3′と6′の位置にフェニルアミノ基を有する。
そのうち、3′と6′の位置のフェニルアミノ基が同一(対称)の化合物としては、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン
3´,6´−ビス(ジフェニルアミノ)−スピロ〔イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン〕−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−プロピルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−プロピルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−ブチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−ヘキシルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−オクチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(2,3−ジメチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(2,4−ジメチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔ジ−(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔ジ−(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔ジ−(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔ジ−(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔(3−エチルフェニル)(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔(3−エチルフェニル)(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔(4−エチルフェニル)(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メトキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エトキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−メトキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−プロピルオキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−ヘキシルオキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(4−オクチルオキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等が挙げられる。
また、3′と6′の位置のフェニルアミノ基が異なる化合物としては、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−プロピルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−ブチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−ペンチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−ヘキシルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−ジフェニルアミノ−6´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−ジフェニルアミノ−6´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−ジフェニルアミノ−6´−〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−ジフェニルアミノ−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−6´−ジフェニルアミノ−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−6´−ジフェニルアミノ−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メトキシフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エトキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−メトキシフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´−〔フェニル(3−エトキシフェニル)アミノ〕−6´−〔フェニル(4−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等が挙げられる。
なお、前記フルオラン系化合物のうち、良好な可逆熱変色特性を示すためには、各窒素に結合するフェニル基には、アルキル基、或いは、アルコキシ基が置換されていることが好ましい。これは、アルキル基、或いは、アルコキシ基を有することによって(ハ)反応媒体に対する溶解性が向上し、良好な発色濃度、消色特性を示すからである。
前記アルキル基、或いは、アルコキシ基として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、或いは、炭素数1〜4のアルコキシ基が用いられる。
また、3′と6′の位置のフェニルアミノ基は同一(対称)構造が化合物の合成に優れるため好ましい。
【0008】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及び、ビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0009】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記各化合物を用いてマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0010】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0011】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、カプリン酸2−メチルブチル、パルミチン酸1−エチルプロピル、ステアリン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸1−エチルヘキシル、ミリスチン酸1−エチルヘキシル、パルミチン酸1−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルペンチル、カプリル酸2−メチルペンチル、カプリン酸2−メチルペンチル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、カプロン酸1−エチルペンチル、パルミチン酸1−エチルペンチル、ステアリン酸1−メチルプロピル、ステアリン酸1−メチルオクチル、ステアリン酸1−メチルヘキシル、ラウリン酸1,1−ジメチルプロピル、カプリン酸1−メチルペンチル、パルミチン酸2−メチルヘキシル、ステアリン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ラウリン酸3,7−ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7−ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0012】
更には、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から高温側へ変化させる場合とで異なり、両曲線を合体するとループ状を示す)を示して変色する、温度変化に依存して色彩記憶性熱変色性を与えるためには、先に本出願人が提案した、特公平4−17154号公報に開示した、5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0013】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデルシ、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
【0014】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0015】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0016】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N−メチルアミド、カプリル酸N−メチルアミド、カプリン酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−メチルアミド、ミリスチン酸N−メチルアミド、パルミチン酸N−メチルアミド、ステアリン酸N−メチルアミド、ベヘニン酸N−メチルアミド、オレイン酸N−メチルアミド、エルカ酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−エチルアミド、ミリスチン酸N−エチルアミド、パルミチン酸N−エチルアミド、ステアリン酸N−エチルアミド、オレイン酸N−エチルアミド、ラウリン酸N−ブチルアミド、ミリスチン酸N−ブチルアミド、パルミチン酸N−ブチルアミド、ステアリン酸N−ブチルアミド、オレイン酸N−ブチルアミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、ミリスチン酸N−オクチルアミド、パルミチン酸N−オクチルアミド、ステアリン酸N−オクチルアミド、オレイン酸N−オクチルアミド、ラウリン酸N−ドデシルアミド、ミリスチン酸N−ドデシルアミド、パルミチン酸N−ドデシルアミド、ステアリン酸N−ドデシルアミド、オレイン酸N−ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N−メチルアミド、アジピン酸N−メチルアミド、グルタル酸N−メチルアミド、マロン酸N−メチルアミド、アゼライン酸N−メチルアミド、コハク酸N−エチルアミド、アジピン酸N−エチルアミド、グルタル酸N−エチルアミド、マロン酸N−エチルアミド、アゼライン酸N−エチルアミド、コハク酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−ブチルアミド、グルタル酸N−ブチルアミド、マロン酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−オクチルアミド、アジピン酸N−ドデシルアミド等が挙げられる。
【0017】
また、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(2)で示される化合物を用いることもできる。
【化2】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(2)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(3)で示される化合物が用いられる。
【化3】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0020】
前記可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、(ハ)成分5〜100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0021】
また、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物として用いることもできる(図3参照)。
【0022】
更に、各種光安定剤を必要により添加することができる。
前記光安定剤は、(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物の光劣化を防止するために含有され、(イ)成分1質量%に対して0.3〜24質量%、好ましくは0.3〜16質量%の割合で含有される。又、前記光安定剤のうち、紫外線吸収剤は、太陽光等に含まれる紫外線を効果的にカットして、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する。又、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等は、光による酸化反応を抑制する。
前記光安定剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0023】
前記可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料として使用される。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜30μmの範囲が実用性を満たす。
尚、マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0024】
本発明においては、前記マイクロカプセル顔料をビヒクル中に分散して、塗料や印刷インキ等の液状組成物を調製し、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段により、支持体上に可逆熱変色層を形成して可逆熱変色性積層体を得ることができる。
前記可逆熱変色層は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の化合物により形成される層であり、前記マイクロカプセル顔料は樹脂に分散状態に固着されてなる。
また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に前記マイクロカプセル顔料をブレンドした成形用樹脂組成物により成形した成形物を支持体上に貼着して積層体を形成してもよい。
前記可逆熱変色層は、支持体上に併設したり、支持体上に複数の可逆熱変色層を積層して設けてもよい。
また、支持体と可逆熱変色層の間に非変色層を設けたり、可逆熱変色層上に非変色像を設けたり、可逆熱変色層中に一般の染料や顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記支持体の材質としては、紙、合成紙、糸、布帛、植毛或いは起毛布、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材、金属等が挙げられる。
前記積層体の具体例としては、被服、履物、貴金属、照明器具、玩具、造花、文房具、日用品、台所用品、化粧用具、運動用具、書籍等の印刷物、乗物、機械、屋内装飾品、医療品等が挙げられる。
更に、前記支持体は裏面に粘着層を設けて各種対象物に貼着可能な構成であってもよいし、支持体は磁性材による記録体、非接触で情報記録、書き換え、読み取りが可能なICチップ等の記録体を該支持体の表面、裏面、内面に設けた情報記録カードや情報記録タグであってもよい。
【0025】
更に、前記積層体の可逆熱変色層上には、光安定剤および/または光遮蔽性顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、透明性保護層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記光遮蔽性顔料は、金属光沢顔料、透明二酸化チタン、透明酸化鉄、透明酸化セシウム、透明酸化亜鉛等の顔料類が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示す。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3′,6′−ビス(ジフェニルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン5.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t)は−15℃、発色開始温度(t)は−5℃、消色開始温度(t)は47℃、完全消色温度(t)は62℃であった。
【0027】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3′,6′−ビス[フェニル(3−メチルフェニル)アミノ]−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0部、(ハ)成分としてステアリン酸ステアリル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t)は43℃、発色開始温度(t)は51℃、消色開始温度(t)は45℃、完全消色温度(t)は58℃であった。
【0028】
比較例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−−4−アザフタリド1.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン5.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青緑色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t)は−18℃、発色開始温度(t)は−7℃、消色開始温度(t)は48℃、完全消色温度(t)は64℃であった。
【0029】
比較例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0部、(ハ)成分としてステアリン酸ステアリル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t)は52℃、発色開始温度(t)は55℃、消色開始温度(t)は55℃、完全消色温度(t)は61℃であった。
【0030】
比較例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3−(2−アセトアミド−4−ジペンチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t)は−17℃、発色開始温度(t)は−7℃、消色開始温度(t)は44℃、完全消色温度(t)は62℃であった。
【0031】
可逆熱変色性液状組成物の調製
実施例1及び2、比較例1乃至3のマイクロカプセル顔料40.0部をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して可逆熱変色性スクリーン印刷用インキを調製した。
【0032】
可逆熱変色性積層体の作成
前記各可逆熱変色性スクリーン印刷用インキを用いて、スクリーン印刷により上質紙に所定の大きさの円(可逆熱変色層)を印刷して可逆熱変色性積層体(試験試料)を得た。
【0033】
初期及び経時消色試験
前記各試験試料を完全消色温度以上に加温して初期の消色時の白度を明度値として、色差計〔東京電色(株)製、TC−3600〕を用いて測定した。
次いで、各試験試料を完全発色温度以下に冷却し、恒温室で50℃、30日間放置した後、完全消色温度以上に加温して経時後の消色時の白度を明度値として、色差計〔東京電色(株)製、TC−3600〕を用いて測定した。
更に、経時後の各試料の状態(色残り)を目視により観察した。
以下の表に試験結果を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表中の試験結果の記号に関する説明は以下のとおりである。
初期及び経時消色試験
○:初期と比較して色残りは見られなかった。
×:初期と比較して消色時に灰色乃至褐色の残色が見られる。
【0036】
前記試験結果より、本発明の積層体はいずれも消色時の褐変(着色)劣化が起こらない優れた変色機能を示した。一方、比較例で作成した積層体はいずれも、経時により消色時の褐変(着色)劣化を生じた。
【0037】
実施例3
可逆熱変色性カードの作製(図4参照)
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して可逆熱変色性水性インキを得た。
支持体2として白色上質紙(40mm×60mm)上の全面に、前記可逆熱変色性インキを用いてスクリーン印刷にて可逆熱変色層3を設けて可逆熱変色性カード(可逆熱変色性積層体1)を得た。
【0038】
前記カードを−15℃以下に冷却すると、可逆熱変色層は青色に発色し、この状態は−15〜62℃の温度域で保持された。
前記カードを62℃以上に加温すると、可逆熱変色層は消色し、この状態は−15〜62℃の温度域で保持された。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記カードの可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず、良好な消色性を示した。
【0039】
実施例4
可逆熱変色性マグカップの作製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30.0部、硬質液状エポキシ樹脂60.0部、紫外線吸収剤2.0部、揺変性付与剤2.0部、レベリング剤0.3部、シランカップリング剤7.0部を混合し、更に常温硬化型の脂肪族ポリアミン40.0部を添加して可逆熱変色性エポキシインキを得た。
支持体として陶器製マグカップ(高さ90mm、直径80mm)の側面に、前記可逆熱変色性エポキシインキを用いて、曲面印刷機にて星柄を形成し、70℃で1時間加熱硬化させて可逆熱変色層を設け、可逆熱変色性マグカップ(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0040】
前記マグカップは、室温(25℃)下では可逆熱変色層が青色に発色して星柄が視認されるが、90℃の湯が注がれると可逆熱変色層が消色して無色になり、星柄は視認されなくなった。この状態から湯を取り除く、或いは、湯温が43℃以下になると可逆熱変色層が発色して再び青色の星柄が視認された。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記マグカップを室温下(25℃)の可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0041】
実施例5
可逆熱変色性シートの作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、ウレタン樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤3.0部、増粘剤1.0部を混合して、青色から無色に変色する可逆熱変色性水性インキを得た。
【0042】
実施例1の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中の(イ)成分を2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン2.5部に換えた以外は同様の方法により、ピンク色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、ウレタン樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤3.0部、増粘剤1.0部を混合して、ピンク色から無色に変色する可逆熱変色性水性インキを得た。
【0043】
実施例1の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中の(イ)成分を1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン3.0部に換えた以外は同様の方法により、橙色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、ウレタン樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤3.0部、増粘剤1.0部を混合して、橙色から無色に変色する可逆熱変色性水性インキを得た。
【0044】
支持体として白色ポリエステルフィルム(100mm×145mm、厚み188μm)上に、前記青色の可逆熱変色性インキを用いて四角形、ピンク色の可逆熱変色性インキを用いて円形、橙色の可逆熱変色性インキを用いて三角形をスクリーン印刷にて形成して可逆熱変色層を設けた後、その上層を厚み16μmの透明ポリエステルフィルムでラミネート処理し、透明性保護層を設けて可逆熱変色性シート(可逆熱変色性積層体)を得た。
前記シートは、−15℃以下に冷却した後、室温(25℃)下では可逆熱変色層が発色して青色の四角形、ピンク色の円形、橙色の三角形がそれぞれ視認されるが、70℃の湯水に浸すと可逆熱変色層が消色して無色になり、図形は視認されなくなった。湯水から取り出して−15℃以下に冷却すると、可逆熱変色層が発色して再び青色の四角形、ピンク色の円形、橙色の三角形がそれぞれ視認された。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記シートを室温(25℃)下で可逆熱変色層が着色状態で保管した後、消色させても、全ての可逆熱変色層に褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0045】
実施例6
可逆熱変色性インジケーターの作製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して青色から無色に変化する可逆熱変色性水性インキを得た。
支持体として裏面に粘着層を有する白色アート紙(20mm×50mm)上に、非変色性淡青色インキを用いて「危険」の文字をスクリーン印刷し、該文字上に前記可逆熱変色性インキを用いて「OK」の抜き文字をスクリーン印刷にて形成して可逆熱変色層を設け、更にその上層を厚み16μmの透明ポリエステルフィルムでラミネート処理し、透明性保護層を設けて可逆熱変色性インジケーター(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0046】
前記インジケーターは、室温(25℃)下では青色の「OK」の文字が視認されるが、58℃以上になると可逆熱変色層が消色して下層の「危険」の文字が視認され、高温であることがわかった。43℃以下になると、可逆熱変色層が発色して再び青色の「OK」の文字が視認された。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記インジケーターを室温(25℃)下の可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0047】
実施例7
可逆熱変色性カードの作製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部、非変色性蛍光ピンク顔料3.0部を混合して青紫色からピンク色に変化する可逆熱変色性水性インキを得た。
支持体として白色コート紙(54mm×86mm)上に、前記可逆熱変色性水性インキを用いて四角形のベタ柄をスクリーン印刷にて形成して可逆熱変色層を設けた。
次いで、前記可逆熱変色層上に、アクリル樹脂と青色透明性金属光沢顔料(メルク株式会社製、商品名:Xirallic T60−23WNT Galaxy Blue)からなるメタリックインキを用いて印刷して金属光沢層を設け、更にその上層を厚み16μmの透明ポリエステルフィルムでラミネート処理し、透明性保護層を設けて可逆熱変色性カード(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0048】
前記カードは、室温(25℃)下では可逆熱変色層が発色し、メタリックブルー色の四角形が視認されるが、高温(58℃以上)下では可逆熱変色層が消色してピンク色になった。前記カードは43℃以下になると可逆熱変色層が発色して再びメタリックブルー色の四角形が視認された。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記カードを室温(25℃)下の可逆熱変色層が青紫色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な変色性を示した。
【0049】
実施例8
可逆熱変色性熱収縮性フィルムの作製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料100.0部、アクリル樹脂80.0部、レベリング剤2.0部を混合して青色から無色に変化する可逆熱変色性水性グラビアインキを得た。
支持体として熱収縮性透明ポリスチレン樹脂(厚み40μm)表面に、ポリエステル樹脂からなる透明アンカーコート層を設け、その上層に前記可逆熱変色性水性グラビアインキを用いてペンギンの絵柄をグラビア印刷にて形成して可逆熱変色層を設け、更にその上層にポリエステル樹脂からなる非変色性白色インキを全面に印刷して青色から無色に変化する可逆熱変色性熱収縮性フィルム(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0050】
前記可逆熱変色性熱収縮性フィルムの端部を、印刷面が内側になるように円筒状に貼り合わせた後、ポリエステル樹脂製飲料容器に装着して加熱収縮加工を施し可逆熱変色性飲料容器を得た。
前記飲料容器は、室温(25℃)下では白色の背景に青色のペンギンの絵柄が視認されるが、お茶等の飲料(58℃以上)が注がれると可逆熱変色層が消色して白色の背景のみ視認された。この状態から飲料を取り除く、或いは、飲料が43℃以下になると再び可逆熱変色層が発色し、白色の背景に青色のペンギン柄が現出した。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
更に、前記飲料容器を室温(25℃)下の可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0051】
実施例9
可逆熱変色性記録材の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、ウレタン樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤3.0部、増粘剤1.0部を混合して、青色から無色に変色する可逆熱変色性水性インキを得た。
支持体として裏面に粘着層を設けた透明ポリエステル樹脂フィルム(45mm×45mm、厚み25μm)表面に、ウレタン樹脂とイソシアネート硬化剤からなる透明アンカーコート層を設け、その上層に前記可逆熱変色性水性インキを用いてベタ柄の四角形をスクリーン印刷にて形成して可逆熱変色層を設け、更にその上層にエポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリレートモノマーを含む透明性保護層を積層して紫外線を照射、重合させ可逆熱変色性記録材(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0052】
前記記録材を、白色ポリエステルフィルム基材(54mm×86mm、厚み188μm)に貼着して情報表示用カードとして実用に供した。
前記記録材を−15℃以下に冷却し、可逆変色層を完全に青色に発色させた後、サーマルヘッドを有する感熱プリンターにて文字情報を印字した。
前記記録材は青色の背景に白色の文字情報が明瞭に表示され、−15〜62℃の温度域に保持されている限り視認される。
また、前記記録材を再び−15℃以下に冷却し、変色層を完全に青色状態に発色させると白色の抜き文字は視認されなくなり、前記感熱プリンターを用いて白色の抜き文字を形成することにより、繰り返し何度も使用することができた。
更に、前記記録材を可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0053】
実施例10
可逆熱変色性IC記録材の作製
実施例9の白色ポリエステルフィルムをICチップを内蔵した白色ポリエステルフィルム(54mm×86mm、厚み750μm)に換えた以外は同様の方法により可逆熱変色性IC記録材(可逆熱変色性積層体)を得た。
前記記録材は、ICチップに記憶された情報を、サーマルヘッドを有する感熱プリンターにて印字することで青色の背景に白色の文字情報として明瞭に表示され、−15〜62℃の温度域に保持されている限り視認される。
また、前記記録材を再び−15℃以下に冷却し、変色層を完全に青色状態に発色させると白色の抜き文字は視認されなくなり、前記感熱プリンターを用いて白色の抜き文字を形成することにより、繰り返し何度も使用することができた。
更に、前記記録材を可逆熱変色層が青色に発色した状態で保管した後、消色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【0054】
実施例11
可逆熱変色性記録材の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40.0部、ウレタン樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤3.0部、増粘剤1.0部、非変色性黄色顔料5.0部を混合して、緑色から黄色に変色する可逆熱変色性水性インキを得た。
支持体として白色ポリエステル樹脂フィルム(210mm×297mm、厚み188μm)表面に、ウレタン樹脂とイソシアネート硬化剤からなる透明アンカーコート層を設け、その上層に、前記可逆熱変色性水性インキを用いて全面にベタ柄をスクリーン印刷にて形成して可逆熱変色層を設け、更にその上層にウレタン樹脂及びベンゾトリアゾール骨格を有するアクリル共重合樹脂からなる紫外線吸収保護層(透明性保護層)、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリレートモノマーからなる透明性保護層を順次積層して紫外線を照射、重合させシート状の可逆熱変色性記録材(可逆熱変色性積層体)を得た。
【0055】
前記記録材を、スーパーマーケットのPOPとして実用に供した。
前記記録材を、−15℃以下に冷却し、可逆変色層を完全に緑色に発色させた後、サーマルヘッドを有する感熱プリンターにて商品名、価格情報を印字した。
前記記録材は緑色の背景に黄色の商品名、価格情報が明瞭に表示され、−15〜62℃の温度域に保持されている限り視認される。
また、前記記録材を再び−15℃以下に冷却し、可逆熱変色層を完全に緑色状態に発色させると黄色の抜き文字は視認されなくなり、前記感熱プリンターを用いて黄色の抜き文字を形成することにより、繰り返し何度も使用することができた。
更に、前記記録材を可逆熱変色層が発色した状態で保管した後、変色させても褐変は見られず良好な消色性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図4】本発明可逆熱変色性積層体の一実施例の縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0057】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
完全消色温度
消色開始温度
発色開始温度
完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 可逆熱変色性積層体
2 支持体
3 可逆熱変色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)で示されるフルオラン誘導体、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を積層してなる可逆熱変色性積層体。
【化1】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数1〜8のアルコキシ基を示す。)
【請求項2】
前記可逆熱変色層と色調の異なる可逆熱変色層を併設してなる請求項1記載の可逆熱変色性積層体。
【請求項3】
前記可逆熱変色層上に、透明性金属光沢顔料を含む金属光沢層を積層してなる請求項1又は2記載の可逆熱変色性積層体。
【請求項4】
前記支持体と可逆熱変色層の間に非変色層を設けてなる1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性積層体。
【請求項5】
最上層に透明性保護層を積層してなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可逆熱変色性積層体。
【請求項6】
前記支持体の下層に粘着層を設けてなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可逆熱変色性積層体。
【請求項7】
磁性記録媒体又はICチップを備えてなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の可逆熱変色性積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−64324(P2010−64324A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231677(P2008−231677)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】