台車用アウトリガ装置
【課題】アウトリガアームを回動させるだけでロックし、また確実かつ簡単にロック解除することを可能とする台車用アウトリガ装置を提供する。
【解決手段】アウトリガアーム53の基部53bに設けた円筒管54を、台車2のフレーム2a上に固設したブラケット51にボルト軸52を介して配設支持し、円筒管54を中心に回転し台車2外方に向けて張り出したアウトリガアーム53の戻し操作をロックするロック機構61を設けた台車用アウトリガ装置において、ロック機構61が、円筒管54から径方向へ延出するレバー62と、前記レバー62の所定部分において回動自在に支持されるウエイト63と、アウトリガアーム53の回動操作に伴ってウエイト63が摺動するウエイト受け面51cとを備える。そしてウエイト63とウエイト受け面51cとの摺接点P1が、接線L2よりもボルト軸54側へ入り込むとロック状態となり、アウトリガアーム53を持ち上げることができなくなる。
【解決手段】アウトリガアーム53の基部53bに設けた円筒管54を、台車2のフレーム2a上に固設したブラケット51にボルト軸52を介して配設支持し、円筒管54を中心に回転し台車2外方に向けて張り出したアウトリガアーム53の戻し操作をロックするロック機構61を設けた台車用アウトリガ装置において、ロック機構61が、円筒管54から径方向へ延出するレバー62と、前記レバー62の所定部分において回動自在に支持されるウエイト63と、アウトリガアーム53の回動操作に伴ってウエイト63が摺動するウエイト受け面51cとを備える。そしてウエイト63とウエイト受け面51cとの摺接点P1が、接線L2よりもボルト軸54側へ入り込むとロック状態となり、アウトリガアーム53を持ち上げることができなくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガアームを接地させると同時にロックさせることのできる台車用アウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工事現場等、電源設備や照明手段のない場所において夜間照明を行う場合には、発電機を搭載した移動式投光機が使用される。この種の移動式投光機は、キャスタ付きの台車に発電機が搭載されており、又、この台車の後部にマスト支持装置が設けられ、このマスト支持装置の上端部に照明灯が取付けられている。マスト支持装置は、テレスコピック式に昇降するマストユニットを有し、このマストユニットを手動、電動、或いは油圧等により伸張させることで照明高さを調整する。
【0003】
又、台車には、この台車の設置状態を安定化させるためのアウトリガ装置が設けられている。一般的なアウトリガ装置は、発電機を搭載する台車の後輪側の左右コーナー部に、支軸を傾斜配設し、この支軸にアウトリガアームの基部を回動自在に軸支し、このアウトリガアームを台車の斜め後方へ末広がり状に張り出させて接地させた位置で固定するようにしている。
【0004】
しかし、このような従来のアウトリガ装置では、アウトリガアームを接地した際に、このアウトリガアームを、操作ハンドル等を用いて台車に締め付けて固定する作業が必要であり、又、移動させる際には、操作ハンドルを操作してアウトリガアームの締め付けを緩めた後、このアウトリガアームを初期位置に戻す作業が必要であり、操作性が悪いという問題がある。
【0005】
これに対処するに、例えば特許文献1(実開平6−37033号公報)には、自動ロック機構を備えたアウトリガ装置が開示されている。すなわち、この文献に開示されている技術では、アウトリガ装置のアウトリガアームの基部を支持する支軸の近傍にロック機構を設けている。このロック機構は円弧状係止面を有するウエイトとアウトリガアームの基部に突設し、当該円弧状係止面と係合する係合ピンから構成される。そして、アウトリガアームを張り出し方向へ回動操作すると、その回動途中でウエイトが一体回動し、係合ピンはウエイトに形成した円弧状係止面に摺接する。この状態でウエイトの全荷重が係合ピンを介してアウトリガアームに掛かり、アウトリガアームを設置面方向へ付勢してアウトリガアームの張出し状態をロックする。
【0006】
この文献に開示されている技術では、アウトリガアームを張り出し方向へ回動させるだけで、自動的にロックされるため使い勝手が良い。
【特許文献1】実開平6−37033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、アウトリガアームのロック解除する場合、台車方向にウエイトの荷重に抗して回動操作しなければならず、操作性に問題がある。また、台車外方に張り出したアウトリガアームの回動によりロック解除できる構成のため、何らかの拍子にアウトリガアームが回動し、意図しない時にロック解除されてしまう可能性もある。 本発明は、上記事情に鑑み、台車を設置する際にアウトリガアームを接地させるとロックし、また確実かつ簡単にロック解除することができて操作性が良い台車用アウトリガ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、アウトリガアームの基端に設けた支持部を台車に固設したブラケットに回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、 前記ロック機構が、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトと、前記アウトリガアームの回動操作に伴って前記ウエイトが摺動するウエイト受け面とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アウトリガアームを台車から張り出させて接地すると、ロック機構がアウトリガアームをロックするので操作性がよい。又、ロック機構を構成するウエイトを押圧するだけでロックを解除することができるため、ロック解除時の操作性及び確実性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1にアウトリガ装置を装備する投光機の側面図、図2に同じく平面図を示す。
【0011】
投光機1の台車2は、その前後部の左右に前輪3と後輪4とがそれぞれ備えられて、移動自在にされている。この台車2上に発電機5が載置されて固定されている。更に、この台車2の後部にハンドル6が設けられている。このハンドル6に図示しないリンク機構を介して後輪4が連設されているため、ハンドル6を把持して台車2を手押しする際に、ハンドル6を操作することで台車2の方向転換を行うことができる。また、台車2の後部中央にマスト支持装置10が配設され、又、台車2の後部左右に、台車2を地面に対して安定的に設置するためのアウトリガ装置11が設けられている。
【0012】
マスト支持装置10は、台車2上に立設されている円筒状の支柱12を有し、この支柱12に、伸縮駆動自在なマスト14が挿通支持されている。本形態によるマスト14は、例えば、油圧駆動、電動、手動等によりテレスコピック式に昇降自在な第1〜第3の三段のマストシリンダ15〜17を有している。又、最頂部となる第3マストシリンダ17の上端部に照明灯取付部18を介して照明灯19が固設されている。尚、符号41は、マスト14の回動を規制する止め部材であり、押しボルト41aが、支柱12に固設されているナット34に螺入されている。この止め部材41を回動すると、螺入された押しボルト41aの先端がマスト14に押し付けられて、マスト14の回動が規制される。
【0013】
次に、アウトリガ装置11の構成について説明する。
【0014】
アウトリガ装置11は、台車2の後部の左右両側に配設されている。尚、左右のアウトリガ装置11は対称な構成を有しているため、以下においては、図3乃至図7に基づき、台車右側のアウトリガ装置11の構成についてのみ説明し、台車左側のアウトリガ装置については同一の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0015】
台車2の後部に、アーム支持ブラケット51が固設されている。このアーム支持ブラケット51は平板の両端を上方に曲げ形成したもので、互いに対向する台形状の側面51aと、この側面51aの下端を連設する底面51bから構成されている。この底面51bには台車2の前方へ延出するウエイト受け面51cが連続形成されている。
【0016】
この底面51b及びウエイト受け面51cは、溶接等の手段により台車2のフレーム2a上に固設されている。又、アーム支持ブラケット51の両側面51aは、台車2の外側斜め後方に指向している。
【0017】
このアーム支持ブラケット51の相対向する側面51aの間に、ボルト軸52が挿通されている。ボルト軸52は、アーム支持ブラケット51の底面51b及びウエイト受け面51cに対して予め設定された距離をもって配設されている。
【0018】
アウトリガアーム53は、略直線状に延びた本体部53aとこの本体部53aから略L字状に曲げ形成された基部53bから構成される。基部53bの先端は支持部である円筒管54に固定されており、この円筒管54はボルト軸52を外装することによりアーム支持ブラケット51に軸支されている。又、この円筒管54の軸方向一端には、後述するロック機構61を構成するレバー62が固設されている。このレバー62は所定の板厚を有する平板で形成されており、円筒管54の径方向に延出している。
【0019】
レバー62の先端には、ロック機構61を構成するウエイト63の基端部が支持軸64を介して回動自在に支持されている。このウエイト63は、比較的板厚の厚い平板で形成され、支持軸64を中心に両端面に沿って略扇状に拡開し、その縁部にウエイト受け面51cに対し摺動する弧状の摺動面63bが設けられている。ウエイト63を構成する一端面には、ボルト軸52との干渉を回避するため円弧状の切欠き部63cと、該切欠き部63cと摺動面63bの一端との間に掛止面63aが形成されている。摺動面63bは、掛止面63aが形成された一端面側から他端面側に向かって、支持軸64からの距離が連続的に長くなる曲線(例えばインボリュート曲線や偏芯円弧)形状を有している。更に、ロック解除手段として、L字状に曲げ形成されたロック解除ペダル65が、ウエイト63の側面から外方に向かって突設されている。
【0020】
次に、このような構成による本形態の作用について説明する。
【0021】
投光機1を移動させる場合、台車2の後部左右に配設されているアウトリガアーム53を、図1の一点鎖線で示すように立ち上げて収納位置にセットし、図示しないキャッチャに係合させて、収納状態を保持させる。
【0022】
この状態では、図3に示すように、アウトリガアーム53は、その本体部53aが台車2の上方を向き、その基部53bがフレーム2aに対して略平行に台車2の後方に指向し配設されている。このとき、レバー62は、その先端がアーム支持ブラケット51の底面51b方向へ指向している。また、ウエイト63の掛止面63aはアーム支持ブラケット51上のウエイト受け面51cに当接している。更に、ロック解除ペダル65は、アーム支持ブラケット51の側面51aと当接し、ウエイト63の回動を規制している。
【0023】
投光機1を現場に搬入し所望の位置で台車2を固定する場合、作業者は収納状態にあるアウトリガアーム53をキャッチャから外す。そして、図4の示すように、アウトリガアーム53を台車2の後方(図4の反時計回り方向)に向かって回動すると、ウエイト63は台車2の前方へ移動する。このとき、掛止面63aの摺接面がボルト軸52の軸芯とウエイト63の支持軸64の軸芯とを通る直線L1がウエイト受け面51aと交差する位置に到達するまで、掛止面63aがウエイト受け面51a上を摺動する。
【0024】
図5に示すように、アウトリガアーム53を更に回動すると、ウエイト63はレバー62によって持ち上げられた状態となる。そして、ウエイト63は、自重により支持軸64を中心にアウトリガアーム53と逆方向に回動し、摺動面63bがウエイト受け面51c上を摺動する。このとき摺動面63bのウエイト受け面51cに対する摺接点P1が、ボルト軸52の軸心を中心とし支持軸64の中心を通る円の支持軸64の中心位置における接線L2よりもボルト軸52側へ入り込むと、アウトリガアーム53は持ち上げる方向にロックされる。すなわち、摺接点P1が接線L2よりもボルト軸52側にあるとアウトリガアーム53を持ち上げたときにウエイト63の摺接点P2には下向き、つまりウエイト受け面51c側に荷重がかかり、持ち上げることができなくなるのである。アウトリガアーム53に無理に持ち上げようとする力が作用した場合、ウエイト63の摺動面63bに押圧力が生じ、ウエイト63を取り付けたレバー63とアウトリガアーム53とが固設されている円筒管54に軸方向の曲げモーメントが作用する。このとき、円筒管54はボルト軸52を外装する構成であるため、この曲げモーメントをボルト軸52と円筒管54の双方で受けることができ、強固に保持することができる。
【0025】
その後、アウトリガアーム53の先端が設置面に接地されるまで回転させると、アウトリガアーム53は台車2の斜め後方へ張り出した状態でロックされる。
【0026】
その際、このロック機構61が左右のアウトリガアーム53に対して個別に設けられているため、接地面に段差がある場合或いは一方のアウトリガアーム53の先端が窪地に接地された場合であっても、各アウトリガアーム53を確実に接地させた状態でロックすることができる。
【0027】
又、例えば、アウトリガアーム53を接地させた状態でハンドル6を操作して台車2を僅かに移動させ、何れかのアウトリガアーム53の先端が窪地に入り込んだとき、アウトリガアーム53が更に回転してその先端が窪地に接地される。このとき、図6に示すように、円筒管54に固設されているレバー62がアウトリガアーム53と同方向(図6の反時計回り方向)へ回転し、ウエイト63が更に持ち上げられる。その結果、このウエイト63が自重により更に支持軸64を中心にアウトリガアーム53と逆方向(図6の時計回り方向)へ回動し、摺動面63bは、掛止面63aから更に離れた位置(P2で示す位置)でウエイト受け面51cと摺接する。この場合も、この摺接点P2が接線L2よりも円筒管54側にあるため、ウエイト63の摺接点P2がウエイト受け面51cに押し付けられて、アウトリガ−アーム53はロックされる。
【0028】
尚、ウエイト63の一端面側に円筒管54との干渉を回避する切欠き部63cが形成されているため、ウエイト63の掛止面63aがボルト軸52の下方に臨まされても、このウエイト63が円筒管54と干渉することはない。
【0029】
アウトリガ装置11のロック状態を解除し台車2を移動させる場合は、ウエイト63の側面に外方に向かって突設されているロック解除ペダル65を、例えば足で、台車2の前方へ押し出す。そして、ウエイト63が支持軸64を中心に台車2の前方に向かって(図5、図6の反時計回り方向)回動し、摺動面63bがウエイト受け面51cから浮くため、アウトリガ装置11のロックを解除した状態となる。この状態において、作業者はアウトリガアーム53を持ち上げることができる。
【0030】
そして、アウトリガアーム53を収納位置まで立ち上げ、図示しないキャッチャに係合させて保持する。すると、ロック機構61は、図1の初期状態に戻される。
【0031】
このように、本形態では、アウトリガアーム53を、接地位置に回動させるだけでロックすることができるため、台車2の固定時の操作性がよい。又、ウエイト63側面に突設されているロック解除ペダル65を押し出すだけでロックを解除することができるため、ロック解除時の操作性及び確実性も良好である。
【0032】
又、アウトリガアーム53と、支持軸64を介してウエイト63が連設されたレバー62とが円筒管54に固設され、一方、アーム支持ブラケット51は台車2に固設されているため、これらの部品をアッセンブル化し易く、部品管理及び搬送が容易となる。
【0033】
尚、本発明は、上述した形態に限るものではなく、例えばウエイト受け面51cはボルト軸52との距離が固定されていればアーム支持ブラケット51とは別体に形成されていても良く、或いはフレーム2aの上面自体をウエイト受け面51cとしても良い。又、例えばウエイト63の先端がバネ圧によりウエイト受け面51cに摺接されている場合は、このウエイト受け面51cがフレーム2aに立設されていても良い。
【0034】
更に、ロック機構61を備えるアウトリガ装置は、投光機1以外の種々の台車に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】アウトリガ装置を装備する投光機の側面図
【図2】アウトリガ装置を装備する投光機の平面図
【図3】アウトリガアームが収納位置にセットされているときのロック機構の状態を示す要部拡大側面図
【図4】ウエイトが最遠位置にあるときのロック機構の状態を示す要部拡大側面図
【図5】アウトリガアームが接地されたときのロック機構のロック状態を示す要部拡大側面図
【図6】アウトリガアームが更に接地方向へ回動したときのロック機構のロック状態を示す要部拡大側面図
【図7】アウトリガアームが接地されたときのロック機構の状態を示す要部拡大平面図
【符号の説明】
【0036】
1…投光機、
2…台車、
2a…フレーム、
11…アウトリガ装置、
51…アーム支持ブラケット(ブラケット)、
51c…ウエイト受け面、
52…ボルト軸、
53…アウトリガアーム、
53a…本体部
53b…基部
54…円筒管(支持部)、
61…ロック機構、
62…レバー、
63…ウエイト、
63a…掛止面、
63b…摺動面、
64…支持軸、
65…ロック解除ペダル(ロック解除手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガアームを接地させると同時にロックさせることのできる台車用アウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工事現場等、電源設備や照明手段のない場所において夜間照明を行う場合には、発電機を搭載した移動式投光機が使用される。この種の移動式投光機は、キャスタ付きの台車に発電機が搭載されており、又、この台車の後部にマスト支持装置が設けられ、このマスト支持装置の上端部に照明灯が取付けられている。マスト支持装置は、テレスコピック式に昇降するマストユニットを有し、このマストユニットを手動、電動、或いは油圧等により伸張させることで照明高さを調整する。
【0003】
又、台車には、この台車の設置状態を安定化させるためのアウトリガ装置が設けられている。一般的なアウトリガ装置は、発電機を搭載する台車の後輪側の左右コーナー部に、支軸を傾斜配設し、この支軸にアウトリガアームの基部を回動自在に軸支し、このアウトリガアームを台車の斜め後方へ末広がり状に張り出させて接地させた位置で固定するようにしている。
【0004】
しかし、このような従来のアウトリガ装置では、アウトリガアームを接地した際に、このアウトリガアームを、操作ハンドル等を用いて台車に締め付けて固定する作業が必要であり、又、移動させる際には、操作ハンドルを操作してアウトリガアームの締め付けを緩めた後、このアウトリガアームを初期位置に戻す作業が必要であり、操作性が悪いという問題がある。
【0005】
これに対処するに、例えば特許文献1(実開平6−37033号公報)には、自動ロック機構を備えたアウトリガ装置が開示されている。すなわち、この文献に開示されている技術では、アウトリガ装置のアウトリガアームの基部を支持する支軸の近傍にロック機構を設けている。このロック機構は円弧状係止面を有するウエイトとアウトリガアームの基部に突設し、当該円弧状係止面と係合する係合ピンから構成される。そして、アウトリガアームを張り出し方向へ回動操作すると、その回動途中でウエイトが一体回動し、係合ピンはウエイトに形成した円弧状係止面に摺接する。この状態でウエイトの全荷重が係合ピンを介してアウトリガアームに掛かり、アウトリガアームを設置面方向へ付勢してアウトリガアームの張出し状態をロックする。
【0006】
この文献に開示されている技術では、アウトリガアームを張り出し方向へ回動させるだけで、自動的にロックされるため使い勝手が良い。
【特許文献1】実開平6−37033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、アウトリガアームのロック解除する場合、台車方向にウエイトの荷重に抗して回動操作しなければならず、操作性に問題がある。また、台車外方に張り出したアウトリガアームの回動によりロック解除できる構成のため、何らかの拍子にアウトリガアームが回動し、意図しない時にロック解除されてしまう可能性もある。 本発明は、上記事情に鑑み、台車を設置する際にアウトリガアームを接地させるとロックし、また確実かつ簡単にロック解除することができて操作性が良い台車用アウトリガ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、アウトリガアームの基端に設けた支持部を台車に固設したブラケットに回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、 前記ロック機構が、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトと、前記アウトリガアームの回動操作に伴って前記ウエイトが摺動するウエイト受け面とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アウトリガアームを台車から張り出させて接地すると、ロック機構がアウトリガアームをロックするので操作性がよい。又、ロック機構を構成するウエイトを押圧するだけでロックを解除することができるため、ロック解除時の操作性及び確実性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1にアウトリガ装置を装備する投光機の側面図、図2に同じく平面図を示す。
【0011】
投光機1の台車2は、その前後部の左右に前輪3と後輪4とがそれぞれ備えられて、移動自在にされている。この台車2上に発電機5が載置されて固定されている。更に、この台車2の後部にハンドル6が設けられている。このハンドル6に図示しないリンク機構を介して後輪4が連設されているため、ハンドル6を把持して台車2を手押しする際に、ハンドル6を操作することで台車2の方向転換を行うことができる。また、台車2の後部中央にマスト支持装置10が配設され、又、台車2の後部左右に、台車2を地面に対して安定的に設置するためのアウトリガ装置11が設けられている。
【0012】
マスト支持装置10は、台車2上に立設されている円筒状の支柱12を有し、この支柱12に、伸縮駆動自在なマスト14が挿通支持されている。本形態によるマスト14は、例えば、油圧駆動、電動、手動等によりテレスコピック式に昇降自在な第1〜第3の三段のマストシリンダ15〜17を有している。又、最頂部となる第3マストシリンダ17の上端部に照明灯取付部18を介して照明灯19が固設されている。尚、符号41は、マスト14の回動を規制する止め部材であり、押しボルト41aが、支柱12に固設されているナット34に螺入されている。この止め部材41を回動すると、螺入された押しボルト41aの先端がマスト14に押し付けられて、マスト14の回動が規制される。
【0013】
次に、アウトリガ装置11の構成について説明する。
【0014】
アウトリガ装置11は、台車2の後部の左右両側に配設されている。尚、左右のアウトリガ装置11は対称な構成を有しているため、以下においては、図3乃至図7に基づき、台車右側のアウトリガ装置11の構成についてのみ説明し、台車左側のアウトリガ装置については同一の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0015】
台車2の後部に、アーム支持ブラケット51が固設されている。このアーム支持ブラケット51は平板の両端を上方に曲げ形成したもので、互いに対向する台形状の側面51aと、この側面51aの下端を連設する底面51bから構成されている。この底面51bには台車2の前方へ延出するウエイト受け面51cが連続形成されている。
【0016】
この底面51b及びウエイト受け面51cは、溶接等の手段により台車2のフレーム2a上に固設されている。又、アーム支持ブラケット51の両側面51aは、台車2の外側斜め後方に指向している。
【0017】
このアーム支持ブラケット51の相対向する側面51aの間に、ボルト軸52が挿通されている。ボルト軸52は、アーム支持ブラケット51の底面51b及びウエイト受け面51cに対して予め設定された距離をもって配設されている。
【0018】
アウトリガアーム53は、略直線状に延びた本体部53aとこの本体部53aから略L字状に曲げ形成された基部53bから構成される。基部53bの先端は支持部である円筒管54に固定されており、この円筒管54はボルト軸52を外装することによりアーム支持ブラケット51に軸支されている。又、この円筒管54の軸方向一端には、後述するロック機構61を構成するレバー62が固設されている。このレバー62は所定の板厚を有する平板で形成されており、円筒管54の径方向に延出している。
【0019】
レバー62の先端には、ロック機構61を構成するウエイト63の基端部が支持軸64を介して回動自在に支持されている。このウエイト63は、比較的板厚の厚い平板で形成され、支持軸64を中心に両端面に沿って略扇状に拡開し、その縁部にウエイト受け面51cに対し摺動する弧状の摺動面63bが設けられている。ウエイト63を構成する一端面には、ボルト軸52との干渉を回避するため円弧状の切欠き部63cと、該切欠き部63cと摺動面63bの一端との間に掛止面63aが形成されている。摺動面63bは、掛止面63aが形成された一端面側から他端面側に向かって、支持軸64からの距離が連続的に長くなる曲線(例えばインボリュート曲線や偏芯円弧)形状を有している。更に、ロック解除手段として、L字状に曲げ形成されたロック解除ペダル65が、ウエイト63の側面から外方に向かって突設されている。
【0020】
次に、このような構成による本形態の作用について説明する。
【0021】
投光機1を移動させる場合、台車2の後部左右に配設されているアウトリガアーム53を、図1の一点鎖線で示すように立ち上げて収納位置にセットし、図示しないキャッチャに係合させて、収納状態を保持させる。
【0022】
この状態では、図3に示すように、アウトリガアーム53は、その本体部53aが台車2の上方を向き、その基部53bがフレーム2aに対して略平行に台車2の後方に指向し配設されている。このとき、レバー62は、その先端がアーム支持ブラケット51の底面51b方向へ指向している。また、ウエイト63の掛止面63aはアーム支持ブラケット51上のウエイト受け面51cに当接している。更に、ロック解除ペダル65は、アーム支持ブラケット51の側面51aと当接し、ウエイト63の回動を規制している。
【0023】
投光機1を現場に搬入し所望の位置で台車2を固定する場合、作業者は収納状態にあるアウトリガアーム53をキャッチャから外す。そして、図4の示すように、アウトリガアーム53を台車2の後方(図4の反時計回り方向)に向かって回動すると、ウエイト63は台車2の前方へ移動する。このとき、掛止面63aの摺接面がボルト軸52の軸芯とウエイト63の支持軸64の軸芯とを通る直線L1がウエイト受け面51aと交差する位置に到達するまで、掛止面63aがウエイト受け面51a上を摺動する。
【0024】
図5に示すように、アウトリガアーム53を更に回動すると、ウエイト63はレバー62によって持ち上げられた状態となる。そして、ウエイト63は、自重により支持軸64を中心にアウトリガアーム53と逆方向に回動し、摺動面63bがウエイト受け面51c上を摺動する。このとき摺動面63bのウエイト受け面51cに対する摺接点P1が、ボルト軸52の軸心を中心とし支持軸64の中心を通る円の支持軸64の中心位置における接線L2よりもボルト軸52側へ入り込むと、アウトリガアーム53は持ち上げる方向にロックされる。すなわち、摺接点P1が接線L2よりもボルト軸52側にあるとアウトリガアーム53を持ち上げたときにウエイト63の摺接点P2には下向き、つまりウエイト受け面51c側に荷重がかかり、持ち上げることができなくなるのである。アウトリガアーム53に無理に持ち上げようとする力が作用した場合、ウエイト63の摺動面63bに押圧力が生じ、ウエイト63を取り付けたレバー63とアウトリガアーム53とが固設されている円筒管54に軸方向の曲げモーメントが作用する。このとき、円筒管54はボルト軸52を外装する構成であるため、この曲げモーメントをボルト軸52と円筒管54の双方で受けることができ、強固に保持することができる。
【0025】
その後、アウトリガアーム53の先端が設置面に接地されるまで回転させると、アウトリガアーム53は台車2の斜め後方へ張り出した状態でロックされる。
【0026】
その際、このロック機構61が左右のアウトリガアーム53に対して個別に設けられているため、接地面に段差がある場合或いは一方のアウトリガアーム53の先端が窪地に接地された場合であっても、各アウトリガアーム53を確実に接地させた状態でロックすることができる。
【0027】
又、例えば、アウトリガアーム53を接地させた状態でハンドル6を操作して台車2を僅かに移動させ、何れかのアウトリガアーム53の先端が窪地に入り込んだとき、アウトリガアーム53が更に回転してその先端が窪地に接地される。このとき、図6に示すように、円筒管54に固設されているレバー62がアウトリガアーム53と同方向(図6の反時計回り方向)へ回転し、ウエイト63が更に持ち上げられる。その結果、このウエイト63が自重により更に支持軸64を中心にアウトリガアーム53と逆方向(図6の時計回り方向)へ回動し、摺動面63bは、掛止面63aから更に離れた位置(P2で示す位置)でウエイト受け面51cと摺接する。この場合も、この摺接点P2が接線L2よりも円筒管54側にあるため、ウエイト63の摺接点P2がウエイト受け面51cに押し付けられて、アウトリガ−アーム53はロックされる。
【0028】
尚、ウエイト63の一端面側に円筒管54との干渉を回避する切欠き部63cが形成されているため、ウエイト63の掛止面63aがボルト軸52の下方に臨まされても、このウエイト63が円筒管54と干渉することはない。
【0029】
アウトリガ装置11のロック状態を解除し台車2を移動させる場合は、ウエイト63の側面に外方に向かって突設されているロック解除ペダル65を、例えば足で、台車2の前方へ押し出す。そして、ウエイト63が支持軸64を中心に台車2の前方に向かって(図5、図6の反時計回り方向)回動し、摺動面63bがウエイト受け面51cから浮くため、アウトリガ装置11のロックを解除した状態となる。この状態において、作業者はアウトリガアーム53を持ち上げることができる。
【0030】
そして、アウトリガアーム53を収納位置まで立ち上げ、図示しないキャッチャに係合させて保持する。すると、ロック機構61は、図1の初期状態に戻される。
【0031】
このように、本形態では、アウトリガアーム53を、接地位置に回動させるだけでロックすることができるため、台車2の固定時の操作性がよい。又、ウエイト63側面に突設されているロック解除ペダル65を押し出すだけでロックを解除することができるため、ロック解除時の操作性及び確実性も良好である。
【0032】
又、アウトリガアーム53と、支持軸64を介してウエイト63が連設されたレバー62とが円筒管54に固設され、一方、アーム支持ブラケット51は台車2に固設されているため、これらの部品をアッセンブル化し易く、部品管理及び搬送が容易となる。
【0033】
尚、本発明は、上述した形態に限るものではなく、例えばウエイト受け面51cはボルト軸52との距離が固定されていればアーム支持ブラケット51とは別体に形成されていても良く、或いはフレーム2aの上面自体をウエイト受け面51cとしても良い。又、例えばウエイト63の先端がバネ圧によりウエイト受け面51cに摺接されている場合は、このウエイト受け面51cがフレーム2aに立設されていても良い。
【0034】
更に、ロック機構61を備えるアウトリガ装置は、投光機1以外の種々の台車に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】アウトリガ装置を装備する投光機の側面図
【図2】アウトリガ装置を装備する投光機の平面図
【図3】アウトリガアームが収納位置にセットされているときのロック機構の状態を示す要部拡大側面図
【図4】ウエイトが最遠位置にあるときのロック機構の状態を示す要部拡大側面図
【図5】アウトリガアームが接地されたときのロック機構のロック状態を示す要部拡大側面図
【図6】アウトリガアームが更に接地方向へ回動したときのロック機構のロック状態を示す要部拡大側面図
【図7】アウトリガアームが接地されたときのロック機構の状態を示す要部拡大平面図
【符号の説明】
【0036】
1…投光機、
2…台車、
2a…フレーム、
11…アウトリガ装置、
51…アーム支持ブラケット(ブラケット)、
51c…ウエイト受け面、
52…ボルト軸、
53…アウトリガアーム、
53a…本体部
53b…基部
54…円筒管(支持部)、
61…ロック機構、
62…レバー、
63…ウエイト、
63a…掛止面、
63b…摺動面、
64…支持軸、
65…ロック解除ペダル(ロック解除手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトリガアームの基端に設けた支持部を台車に固設したブラケットに回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、
前記ロック機構は、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトとを備え、
前記アウトリガアームの回動操作に伴って、前記台車に固設されたウエイト受け面を前記ウエイトが摺動することを特徴とする台車用アウトリガ装置。
【請求項2】
前記ウエイトは、前記レバーに支持されるその基端を中心に扇状に拡開し、その縁部が曲線状に形成されることを特徴とする請求項1記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項3】
前記ウエイトの縁部は、前記レバーに支持されるその基端からの距離が連続的に長くなる曲線で形成することを特徴とする請求項2記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項4】
前記ウエイトは、前記支持部との干渉を回避するための切欠き部を備えていることを特徴とする請求項3記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項5】
前記台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作がロックされているときに、前記ウエイトを前記台車前方に回動し前記ロック機構のロックを解除するロック解除手段を前記ウエイトの側面に設けることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項6】
前記ロック解除手段は、前記アウトリガアームが収納位置にセットされているときに前記ウエイトの回動を規制する機能を備えることを特徴とする請求項5記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項7】
台車の後部に固設したブラケットの互いに対向する側面の間に、アウトリガアームの基端に設けた支持部を回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し該台車の外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、
前記ロック機構は、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトとを備え、
該ウエイトは、前記レバーに支持されるその基端を中心に扇状に拡開し、その縁部が曲線状に形成され、
前記アウトリガアームを前記台車の外方に向かって回動操作するに伴い、前記ブラケットの底面と連設されたウエイト受け面を前記ウエイトが摺動することを特徴とする台車用アウトリガ装置。
【請求項1】
アウトリガアームの基端に設けた支持部を台車に固設したブラケットに回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、
前記ロック機構は、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトとを備え、
前記アウトリガアームの回動操作に伴って、前記台車に固設されたウエイト受け面を前記ウエイトが摺動することを特徴とする台車用アウトリガ装置。
【請求項2】
前記ウエイトは、前記レバーに支持されるその基端を中心に扇状に拡開し、その縁部が曲線状に形成されることを特徴とする請求項1記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項3】
前記ウエイトの縁部は、前記レバーに支持されるその基端からの距離が連続的に長くなる曲線で形成することを特徴とする請求項2記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項4】
前記ウエイトは、前記支持部との干渉を回避するための切欠き部を備えていることを特徴とする請求項3記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項5】
前記台車外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作がロックされているときに、前記ウエイトを前記台車前方に回動し前記ロック機構のロックを解除するロック解除手段を前記ウエイトの側面に設けることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項6】
前記ロック解除手段は、前記アウトリガアームが収納位置にセットされているときに前記ウエイトの回動を規制する機能を備えることを特徴とする請求項5記載の台車用アウトリガ装置。
【請求項7】
台車の後部に固設したブラケットの互いに対向する側面の間に、アウトリガアームの基端に設けた支持部を回動自在に支持し、該支持部を中心に回転し該台車の外方に向けて張り出した前記アウトリガアームの戻し操作をロックするロック機構を設けた台車用アウトリガ装置において、
前記ロック機構は、前記支持部から径方向へ延出するレバーと、前記レバーの所定部分において回動自在に支持されるウエイトとを備え、
該ウエイトは、前記レバーに支持されるその基端を中心に扇状に拡開し、その縁部が曲線状に形成され、
前記アウトリガアームを前記台車の外方に向かって回動操作するに伴い、前記ブラケットの底面と連設されたウエイト受け面を前記ウエイトが摺動することを特徴とする台車用アウトリガ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−174152(P2008−174152A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10684(P2007−10684)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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