説明

台車移動装置

【課題】1つの駆動源の動力によって、移動台車の移動動作と、回転力利用手段による動作とを行うことができ、移動台車へ電力の供給を直接行うことなく、回転力利用手段を動作させることができる台車移動装置を提供すること。
【解決手段】台車移動装置1は、移動台車4、線状の台車引き部材35、駆動源3及び移動停止手段23を有している。移動台車4は、回転力発生部材51、回転制限手段50及び回転力利用手段6を有している。台車移動装置1は、回転制限手段50によって回転力発生部材51の回転を制限することにより、台車引き部材35の走行力を移動台車4の移動力に変換して、移動台車4を移動させるよう構成してあると共に、移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されたときには、台車引き部材35の走行に応じて回転力発生部材51が回転し、回転力利用手段6が作動するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動台車を移動させる駆動源を利用して、回転力利用手段を作動させることができる台車移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動台車上にコンベア等の搬送手段を配設し、搬送手段の上に載置した部品、製品又はパレット等のワークを、移動台車によって搬送し、さらに搬送手段によって搬送する際には、移動台車を駆動するためのモータ等の駆動源と、搬送手段を駆動するためのモータ等の駆動源とを用いている。すなわち、各動作を行う毎に駆動源を設けている。
【0003】
例えば、特許文献1の自動式台車装置においては、台車には、この台車を駆動するための台車用モータを設け、モータによって台車を走行させている。また、台車上には、コンベア用モータによって駆動するコンベアを設けており、台車によって搬送したワークを、コンベアによってさらに搬送するよう構成している。
さらに、特許文献1においては、台車用モータ及びコンベア用モータに電力を供給するための給電ケーブルが通行の障害にならないようにするために、この給電ケーブルを、床面内に収納する工夫を行っている。
【0004】
しかしながら、上記従来の移動台車の構造においては、1つの駆動源の動力によって1つの動作しか行うことができない。そのため、例えば、台車の移動と、この移動以外の他の動作とを行うためには、2つの駆動源を用いる必要が生じている。このことは、設備コストを高くする要因になり、設備における消費電力も大きくする要因になっている。
【0005】
また、駆動源を移動台車に配設すると、駆動源へ電力を供給するための電力ケーブルの取り回しに工夫が必要となる。そのため、上記特許文献1のように床面に電力ケーブルを収納するか、又は移動台車の上方もしくは天井位置に電力ケーブルを這わせる必要が生じている。このことは、設備の構成を複雑化又は大型化する要因になり、設備コストを一層高くする要因になっている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−168548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、1つの駆動源の動力によって、移動台車の移動動作と、回転力利用手段による動作とを行うことができ、移動台車へ電力の供給を直接行うことなく、回転力利用手段を動作させることができる台車移動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、移動経路を移動可能な移動台車と、
上記移動経路に沿って配設すると共に一部を上記移動台車に係合させた線状の台車引き部材と、
上記移動経路に配設し、上記台車引き部材を走行させる駆動源と、
上記移動台車の移動を停止させる移動停止手段とを有しており、
上記移動台車は、上記台車引き部材と係合して、該台車引き部材の走行に応じて回転可能な回転力発生部材と、該回転力発生部材の回転を制限するための回転制限手段と、上記回転力発生部材による回転力を利用して作動する回転力利用手段とを有しており、
上記回転制限手段によって上記回転力発生部材の回転を制限することにより、上記台車引き部材の走行力を上記移動台車の移動力に変換して、該移動台車を移動させるよう構成してあると共に、該移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されたときには、上記台車引き部材の走行に応じて上記回転力発生部材が回転し、上記回転力利用手段が作動するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置にある(請求項1)。
【0009】
本発明の台車移動装置は、駆動源によって台車引き部材を走行させ、この台車引き部材を利用して、移動台車の移動動作と回転力利用手段による動作とを行うよう構成してある。
具体的には、本発明において、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されていないときには、回転力発生部材の回転は、回転制限手段によって制限されている。そのため、駆動源が台車引き部材を走行させる走行力は、移動台車を移動させる移動力に変換される。これにより、駆動源による動力を、台車引き部材を介して移動台車へ伝達し、この移動台車を移動させることができる。
【0010】
一方、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されたときには、駆動源が台車引き部材を走行させる走行力は、移動台車の移動力に変換されず、回転力発生部材を回転させる回転力に変換される。これにより、駆動源による動力を、台車引き部材及び回転力発生部材を介して回転力利用手段へ伝達し、この回転力利用手段を作動させることができる。
【0011】
このように、移動台車に配設した回転力利用手段は、台車引き部材及び回転力発生部材を介して、駆動源による動力を受けて動作することができる。そのため、移動台車へ電力の供給を直接行うことなく、回転力利用手段を動作させることができる。これにより、移動台車に電力ケーブルを配線することなく、回転力利用手段を動作させることができる。
【0012】
それ故、本発明の台車移動装置によれば、1つの駆動源の動力によって、移動台車の移動動作と、回転力利用手段による動作とを行うことができ、移動台車へ電力の供給を直接行うことなく、回転力利用手段を動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記台車移動装置は、上記移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されていないときには、上記台車引き部材から上記回転力発生部材に加わる動力トルクが、上記回転制限手段から上記回転力発生部材に加わる負荷トルクよりも小さいことにより、上記移動台車が移動し、上記移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されたときには、上記台車引き部材から上記回転力発生部材に加わる動力トルクが、上記回転制限手段から上記回転力発生部材に加わる負荷トルクよりも大きくなることにより、上記回転力発生部材が回転するよう構成することが好ましい(請求項2)。
【0014】
この場合には、台車引き部材から回転力発生部材に加わる動力トルクと、回転制限手段から回転力発生部材に加わる負荷トルクとの大小関係によって、移動台車の移動動作と、回転力利用手段による動作とを切り替えることができる。そのため、移動停止手段による停止操作を利用し、移動台車の移動動作と、回転力利用手段による動作とを容易に切り替えることができる。
【0015】
上記移動台車は、上記移動経路を往復移動するよう構成してあり、上記台車引き部材は、可撓性を有すると共にループ状に配設してあり、上記駆動源は、上記台車引き部材を上記移動経路における一方向へ走行させる正回転と、上記台車引き部材を上記移動経路における他方向へ走行させる逆回転とを行う駆動モータを有しており、上記移動台車には、上記移動経路に対する一方向側と他方向側とに、上記台車引き部材と回転接触する空転部材がそれぞれ配設してあり、上記台車引き部材は、一方の上記空転部材と、上記回転力発生部材と、他方の上記空転部材とに順次掛け渡してあることが好ましい(請求項3)。
【0016】
この場合には、駆動モータを正回転させることにより、台車引き部材を一方向へ走行させる。このとき、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されていないときには、移動台車が移動経路における一方向に向かって移動することができる。また、このとき、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されたときには、回転力発生部材が一方の回転方向へ回転して、回転力利用手段を動作させることができる。
【0017】
また、駆動モータを逆回転させることにより、台車引き部材を他方向へ走行させる。このとき、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されていないときには、移動台車が移動経路における他方向に向かって移動することができる。また、このとき、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されたときには、回転力発生部材が他方の回転方向へ回転して、回転力利用手段を動作させることができる。
【0018】
また、台車引き部材がループ状に配設してあることにより、駆動モータの回転方向を正回転又は逆回転に切り換えて、移動台車を移動経路における一方向と他方向とに往復移動させることが容易である。
また、移動台車に一対の空転部材を設け、台車引き部材が、一方の空転部材と、回転力発生部材と、他方の空転部材とに順次掛け渡してあることにより、台車引き部材を介して移動台車を移動させるときに、駆動源が台車引き部材を走行させる力(引っ張る力)を、回転力発生部材だけに直接作用させるのではなく、空転部材及び回転力発生部材の全体に作用させることができる。そのため、台車引き部材の走行力を移動台車の移動力に変換することが容易であり、移動台車を容易に移動させることができる。
【0019】
上記回転力発生部材は、回転力伝達車であり、上記一対の空転部材は、一対の空転従動車であり、上記台車引き部材は、上記回転力伝達車と上記一対の空転従動車との間に挟まれた状態で、これらに掛け渡してあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、一対の空転従動車によって、台車引き部材を回転力伝達車へ押圧することができ、台車引き部材から回転力伝達車へ、駆動源によるトルクを容易に伝達することができる。
【0020】
上記回転力伝達車と上記一対の空転従動車とは、仮想の二等辺三角形を形成する状態で配設してあり、当該回転力伝達車は、上記二等辺三角形の頂角を形成する位置に配設してあると共に、該各空転従動車は、上記二等辺三角形の底角を形成する位置にそれぞれ配設してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、回転力伝達車と一対の空転従動車との位置関係を一層適切にすることができ、特に、移動台車を移動経路上において往復移動させる際に、いずれの方向に向けても安定して移動台車を移動させることができる。
【0021】
また、上記回転制限手段は、上記回転力利用手段の作動を開始するときに生じる静摩擦力を利用して、上記回転力発生部材の回転を制限するよう構成することができる(請求項6)。
この場合には、回転制限手段として、トルクキーパー等の回転力利用手段以外の部品を用いることなく、回転力発生部材の回転を制限することができる。そのため、回転力制限手段を容易に構成することができる。また、回転力利用手段に生じる静摩擦力を利用した回転制限手段は、特に、回転力利用手段に生じる静摩擦力が、移動台車の移動を開始させるために必要な力よりも大きいときに有効である。
【0022】
また、上記回転制限手段は、トルクキーパーを用いて構成してあり、該トルクキーパーは、上記回転力発生部材に接続する回転部と、該回転部を保持する保持部と、上記回転部の回転を阻止すると共に該回転部に加わる回転トルクが所定値以上になったときに該回転部の回転を可能にする回転制限部とを有して構成することもできる(請求項7)。
【0023】
この場合には、トルクキーパーを利用して、回転力発生部材の回転を制限することができる。そして、回転制限手段としてのトルクキーパーは、台車引き部材から回転力発生部材に加わる回転トルクが所定値以上になったときに、当該回転力発生部材の回転の制限を解除する。これにより、回転力発生部材を回転させて、回転力利用手段を作動させることができる。なお、移動台車の移動が移動停止手段によって停止されることによって、台車引き部材から回転力発生部材に加わる回転トルクが所定値以上になる。
【0024】
また、上記回転力利用手段は、上記回転力発生部材から回転力を受けて回転する複数の動力伝達車を用いて構成してあり、上記回転制限手段は、上記回転力発生部材及び上記複数の動力伝達車の組合せにおいて、それらの回転中心から動力伝達位置までの半径の大きさによって決定されるトルク伝達比を利用して、上記回転力発生部材の回転を制限するよう構成することもできる(請求項8)。
【0025】
この場合には、回転力発生部材及び複数の動力伝達車の組合せにおけるトルク伝達比を利用して、回転力発生部材の回転を制限することにより、回転力制限手段を容易に構成することができる。また、この場合には、回転制限手段は、回転力利用手段に生じる静摩擦力と、回転力発生部材及び複数の動力伝達車の組合せにおけるトルク伝達比との両者を利用して構成することもできる。
【0026】
また、上記回転力利用手段は、上記回転力発生部材の回転力を受けて、上記移動台車上に載置したワークを搬送する搬送コンベアとすることができる(請求項9)。
この場合には、移動台車の移動によって、この移動台車上に載置したワークを移動させると共に、回転力発生部材が回転するときには、回転力利用手段としての搬送コンベアを作動させて、ワークを移動台車から他の架台又は他のコンベア等へ送り出すことができる。なお、ワークとしては、各種部品、製品、パレット等がある。
【0027】
また、上記搬送コンベアは、上記回転力発生部材に対して動力伝達部材を介して連結した複数の搬送ローラを回転させて、該搬送ローラ上に載置した上記ワークを搬送するよう構成することが好ましい(請求項10)。
この場合には、回転力発生部材が回転するときには、複数の搬送ローラ上に載置したワークを、移動台車から他の架台又は他のコンベア等へ容易に送り出すことができる。
【0028】
また、上記回転力利用手段は、上記搬送コンベア以外にも、上記回転力発生部材によって生じる回転力を利用する種々の機構とすることができる。
例えば、回転力利用手段は、回転力発生部材によって生じる回転力を利用して、ワークを載置したテーブルを昇降させて、ワークの受渡を行う機構等とすることもできる。
【0029】
また、上記移動停止手段は、上記移動経路の両端に配設したストッパーによって構成してあると共に、該ストッパーに上記移動台車を衝突させることによって、該移動台車の移動を停止させるよう構成することが好ましい(請求項11)。
この場合には、移動停止手段の構成が簡単であり、移動台車を移動経路において往復移動させる際に、この移動台車を移動経路における一方向端と、他方向端とにおいて容易に停止させることができる。
【0030】
また、ストッパーは、固定したメカストッパーとするだけでなく、衝突時のエネルギーを吸収するよう構成したショックアブソーバ等を用いて構成することもできる。
また、移動停止手段は、移動台車の移動経路に設けたシリンダー等のアクチュエータとし、このアクチュエータを動作させることによって移動台車の移動を所定の位置で停止させることもできる。
【0031】
また、上記移動台車は、複数の車輪を転がすことによって移動するよう構成することができる(請求項12)。
この場合には、移動台車の移動抵抗(移動台車の移動を開始させるのに必要な力)を容易に小さくすることができる。
【0032】
また、上記移動台車は、レールに対して多数のボールベアリングを介した転がり接触によりスライダーをスライドさせるよう構成したスライドガイドを用いて移動するよう構成することもできる(請求項13)。
この場合にも、移動台車の移動抵抗(移動台車の移動を開始させるのに必要な力)を容易に小さくすることができる。
【0033】
また、上記台車引き部材は、ベルト、歯付ベルト、チェーン又はワイヤとし、上記回転力発生部材は、上記台車引き部材と係合するプーリ、歯車又はスプロケットとすることができる(請求項14)。
この場合には、台車引き部材及び回転力発生部材の選定が容易である。
また、台車引き部材をベルト又はワイヤとしたときには、回転力発生部材は、ベルト又はワイヤと係合するプーリとすることができる。また、台車引き部材を歯付ベルトとしたときには、回転力発生部材は、歯付ベルトと係合する歯車又は歯付プーリとすることができる。また、台車引き部材をチェーンとしたときには、回転力発生部材は、チェーンと係合するスプロケットとすることができる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の台車移動装置にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例の台車移動装置1は、図1〜図3に示すごとく、床上に設定した移動経路Dを移動可能な移動台車4と、移動経路Dに沿って配設すると共に一部を移動台車4に係合させた線状の台車引き部材35と、移動経路Dの端部に配設すると共に台車引き部材35を走行させる駆動源3と、移動台車4の移動を停止させる移動停止手段23とを有している。
【0035】
図2に示すごとく、移動台車4は、台車引き部材35と係合して、台車引き部材35の走行に応じて回転可能な回転力発生部材(回転力伝達車)51と、回転力発生部材51の回転を制限するための回転制限手段50と、回転力発生部材51による回転力を利用して作動する回転力利用手段6とを有している。
そして、台車移動装置1は、回転制限手段50によって回転力発生部材51の回転を制限することにより、台車引き部材35の走行力を移動台車4の移動力に変換して、移動台車4を移動させるよう構成してある。また、台車移動装置1は、移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されたときには、台車引き部材35の走行に応じて回転力発生部材51が回転し、回転力利用手段6が作動するよう構成してある。
【0036】
以下に、本例の台車移動装置1につき、図1〜図6と共に詳説する、
図1、図2に示すごとく、本例の台車移動装置1は、駆動源3によって台車引き部材35を走行させ、この台車引き部材35を利用して、移動台車4の移動動作と回転力利用手段6による動作とを行うよう構成してある。
また、本例の移動台車4は、この移動台車4上に載置した部品、製品又はパレット等のワーク8を搬送するよう構成してあり、本例の台車移動装置1は、工場内においてワーク搬送を行うよう構成したトラバーサである。
【0037】
図2、図3に示すごとく、本例の移動台車4は、移動経路Dの一方向D1と他方向D2とに繰り返し往復移動するよう構成してある。また、本例の駆動源3は、正逆両回転が可能な駆動モータ31を用いて構成してある。
また、本例の台車移動装置1は、シーケンサ等のコンピュータを用いた制御装置によって動作の制御を行うよう構成してある。
【0038】
また、図1に示すごとく、本例の移動経路Dの両端には、移動台車4の到達を検出する検出スイッチ24が配設してある。そして、制御装置は、検出スイッチ24から移動台車4の到達を検出した信号を受け、所定時間待機した後、駆動モータ31の回転方向を逆転させるよう構成してある。こうして、本例の台車移動装置1においては、制御装置によって駆動モータ31の正逆回転を制御することにより、移動台車4を移動経路D上において往復移動させる。
本例の検出スイッチ24は、移動台車4に設けた検出ドッグと接触して、移動台車4の到達を検出するリミットスイッチである。検出スイッチ24は、これ以外にも、移動台車4の到達を非接触で検出する近接スイッチ等とすることもできる。
【0039】
また、図1、図4に示すごとく、本例の移動経路Dにおける一端には、駆動モータ31が配設してあり、この駆動モータ31の出力軸には、台車引き部材35を掛け渡す駆動部材311が配設してある。また、床板部2の移動経路Dにおける他端には、台車引き部材35を掛け渡す従動部材321を従動回転可能に配設したテンションブラケット32が配設してある。このテンションブラケット32の位置を調整することにより、台車引き部材35のテンション(張力)を調整することができる。
なお、テンションブラケット32は、床板部2に配設した空気シリンダーの可動部に配設することができ、この空気シリンダーの推力によって、台車引き部材35に安定してテンションを発生させておくことができる。
【0040】
図1、図4に示すごとく、本例の台車引き部材35は、可撓性を有しており、床板部2において、ループ状に配設してある。
本例の台車引き部材35は、複数の鋼線を撚り合わせてなるワイヤである。そして、台車引き部材35に係合する回転力発生部材(回転力伝達車)51、駆動部材311及び従動部材321は、いずれもプーリである。
なお、台車引き部材35は、ワイヤ以外にも、例えば、ベルトの片面に歯面を形成してなる歯付ベルトとすることもできる。この場合には、台車引き部材35に係合する回転力発生部材51、駆動部材311及び従動部材321は、いずれも歯付プーリとすることができる。
【0041】
図1、図5に示すごとく、本例の移動経路Dは、移動台車4を移動させる際の移動用ベースとなる床板部2に形成してある。床板部2上には、一対のガイドバー211によって直線状の台車移動ガイド21が形成してあり、台車移動ガイド21の横断面方向における両脇には、床カバー22が配設してある。
また、移動台車4の下部には、移動経路Dの形成方向に並べて台車ガイド用ローラ44が複数配設してあり、この台車ガイド用ローラ44は、台車移動ガイド21における一対のガイドバー211の間に配置してある。そして、台車ガイド用ローラ44が台車移動ガイド21によってガイドされることにより、移動台車4を移動経路Dに沿って移動させることができる。
【0042】
また、本例においては、図5に示すごとく、床カバー22を傾斜形成することによって、床板部2上に極端な段差が生じることを防止しており、台車移動装置1における床板部2上を作業者又は他の台車等が横断できるようになっている。
また、本例の台車ガイド用ローラ44、台車引き部材35(ループ状であるため送り側部分351と戻り側部分352の両方)、駆動部材311、従動部材321等は、床カバー22の内部に配設してある。
なお、床板部2は、工場の床面を掘り下げて形成した溝状ピットの上に配設し、台車ガイド用ローラ44、台車引き部材35、駆動部材311、従動部材321等は、溝状ピット内に配設することもできる。
【0043】
図1、図4に示すごとく、本例の移動停止手段23は、床板部2における移動経路Dの両端に配設したストッパー231によって構成してある。そして、本例の移動台車4は、移動停止手段23に衝突することによって、移動が停止される。
なお、移動経路Dの両端には、移動台車4がストッパー231に衝突するときのエネルギーを吸収するよう構成したショックアブソーバ等を配設することができる。
【0044】
図1〜図3に示すごとく、本例の移動台車4は、この移動台車4上に載置したワーク8の搬送を行うよう構成してある。この移動台車4は、台車架台41の下部に、車輪用軸受421を介して、複数(本例では4つ)の車輪42を配設してなり、複数の車輪42を転がすことによって移動するよう構成してある。
なお、図示は省略するが、移動台車4は、スライドガイドを用いて移動するよう構成することもでき、スライドガイドは、レールに対して多数のボールベアリングを介した転がり接触によりスライダーをスライドさせるよう構成したものとすることができる。
【0045】
また、図4に示すごとく、移動台車4における台車架台41には、移動経路Dに対する一方向D1側と他方向D2側とに、台車引き部材35と回転接触する空転部材(空転従動車)43がそれぞれ配設してある。空転部材43は、回転力発生部材51を間に挟んで、移動経路Dに対する一方向D1側と他方向D2側とに配設してある。本例の空転部材43は、複数のころを介して転がり接触により回転するよう構成したローラによって構成してあり、台車架台41の下部に固定したブラケット46の下端における支軸431によって支持してある。
【0046】
また、本例においては、台車引き部材35の走行力を移動台車4の移動力に変換することを容易にするために、台車引き部材35は、一方の空転部材43と、回転力発生部材51と、他方の空転部材43とに順次掛け渡してある。また、本例においては、一対の空転部材43によって台車引き部材35を回転力発生部材51へ押圧するために、台車引き部材35は、回転力発生部材51と一対の空転部材43との間に挟まれた状態で、回転力発生部材51と一対の空転部材43とに掛け渡してある。
また、本例においては、一対の空転部材43の配設位置と、回転力発生部材51の配設位置とが、移動経路Dの形成方向に対する横方向に互いにずらしてあり、台車引き部材35は、一対の空転部材43の外周と、回転力発生部材51の外周とに蛇行して掛け渡してある。
【0047】
より具体的には、図4に示すごとく、本例の回転力発生部材51は、移動経路Dの形成方向において、一対の空転部材43の間に配設してある。また、一対の空転部材43は、移動台車4の下部(台車架台41の下部)において、床板部2に配設した台車引き部材35に係合する位置に配設してある。本例の回転力発生部材51は、一対の空転部材43の高さ方向位置よりも高い位置に配設してある。そして、一対の空転部材43に対して回転力発生部材51を高い位置に配設することにより、台車引き部材35は、移動台車4に係合する部分において、山形状を有して配設してある。
さらに、回転力発生部材51と一対の空転部材43とは、仮想の二等辺三角形を形成する状態で配設してある。回転力発生部材51は、二等辺三角形の頂角を形成する位置に配設してあり、各空転部材43は、二等辺三角形の底角を形成する位置にそれぞれ配設してある。
【0048】
図2、図4に示すごとく、本例の回転力発生部材51は、台車架台41に配設した軸受521によって回転可能に支持した回転シャフト52に固定してある。
また、本例の回転力利用手段6は、回転力発生部材51の回転力を受けて、移動台車4上に載置したワーク8を搬送する搬送コンベア6である。この搬送コンベア6は、移動台車4の上部に配設してあると共に、ワーク8を搬送する搬送ローラ65を複数配設してなるワーク搬送部と、回転力発生部材51から回転動力を伝達される動力伝達部とを有している。
【0049】
ワーク搬送部は、ワーク8に回転接触する複数の搬送ローラ65を複数のコンベア用シャフト64にそれぞれ配設し、各コンベア用シャフト64を一対のコンベア用軸受63によってそれぞれ回転支持してなる。また、本例の搬送ローラ65の外側角部の全周には、ワーク8を搬送コンベア6によって搬送する際に、このワーク8の横ずれを防止するための鍔部が形成してある。
【0050】
動力伝達部は、回転力発生部材51から回転動力を伝達されるメインシャフト53と、このメインシャフト53に固定した第1動力伝達車61Aと、上記コンベア用シャフト64に固定した第2動力伝達車61Bと、第1動力伝達車61Aと第2動力伝達車61Bとを連結する線状の第1連結部材62Aと、第2動力伝達車61B同士を連結する線状の第2連結部材62Bとを有している。
本例の第1動力伝達車61A及び第2動力伝達車61Bは、プーリであり、第1連結部材62A及び第2連結部材62Bは、プーリの外周と係合するベルトである。なお、第1動力伝達車61A、第2動力伝達車61B、第1連結部材62A及び第2連結部材62Bは、いずれも動力伝達部材として機能する。
【0051】
また、図2、図4に示すごとく、上記回転シャフト52の一端と、上記メインシャフト53の一端とには、互いに直角方向に噛合するかさ歯車54がそれぞれ配設してある。
図2、図3に示すごとく、回転力発生部材51が回転するときには、回転シャフト52が回転し、一対のかさ歯車54の噛合により、メインシャフト53が回転する。このメインシャフト53の回転と同時に第1動力伝達車61Aが回転し、第1連結部材62A及び第2連結部材62Bにより動力伝達されて第2動力伝達車61Bが回転する。これにより、複数のコンベア用シャフト64及び搬送ローラ65が回転して、搬送ローラ65上に載置したワーク8を移動台車4から移動経路Dに直交する方向へ送り出す、又は移動経路Dに直交する方向から搬送ローラ65上へワーク8を受け取ることができる。
【0052】
なお、搬送コンベア6におけるワーク8の受渡方向Eが搬送台車2の走行方向と同一である場合には、上記かさ歯車54を介さず、回転力発生部材51と第1動力伝達車61Aとを連結することができる。
【0053】
本例の台車移動装置1は、台車引き部材35から回転力発生部材51に加わる動力トルクと、回転制限手段50から回転力発生部材51に加わる負荷トルクとの大小関係によって、移動台車4の移動動作と、回転力利用手段6による動作とを切り替えるよう構成してある。
【0054】
すなわち、本例の台車移動装置1は、移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されていないときには、駆動源3から台車引き部材35を介して回転力発生部材51に加わる動力トルクが、回転制限手段50から回転力発生部材51に加わる負荷トルクよりも小さいことにより、移動台車4が移動するよう構成してある。また、台車移動装置1は、移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されたときには、駆動源3から台車引き部材35を介して回転力発生部材51に加わる動力トルクが、回転制限手段50から回転力発生部材51に加わる負荷トルクよりも大きくなることにより、回転力発生部材51が回転し、回転力利用手段6による動作を行うよう構成してある。
【0055】
図2、図3に示すごとく、本例の回転制限手段50は、回転力利用手段6の作動を開始するときに生じる静摩擦力を利用して、回転力発生部材51の回転を制限するよう構成してある。すなわち、本例の台車移動装置1においては、台車引き部材35が回転力発生部材51を回転させようとするときに回転力利用手段6に生じる静摩擦力である回転抵抗が、台車引き部材35が移動台車4の移動を開始させるために必要な力(静摩擦力)である移動抵抗よりも大きくなっている。
【0056】
そのため、移動台車4を移動経路Dにおけるいずれかの端部から反対側の端部へ移動させるとき(移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されていないとき)には、上記回転抵抗が上記移動抵抗よりも大きくなっていることにより、回転力発生部材51がほとんど回転せず、駆動モータ31が台車引き部材35を走行させる走行力が移動台車4を移動させる移動力に変換されて、移動台車4を移動させることができる。
また、本例においては、回転抵抗が移動抵抗よりも大きくなっていることにより、駆動モータ31が台車引き部材35を走行させる走行力が、移動台車4を引っ張る力となって、移動台車4を移動させることができる。
【0057】
また、上記移動台車4の移動抵抗は、移動台車4の重力、及び移動台車4の移動を開始させるときの静摩擦係数等によって決まる抵抗力として捉えることができる。一方、回転力制限手段の回転抵抗は、回転力発生部材51及び回転力利用手段6に生じる慣性力、並びに回転力発生部材51及び回転力利用手段6の各部における静摩擦係数等によって決まる抵抗力として捉えることができる。
【0058】
なお、回転制限手段50は、回転力発生部材51及び複数の動力伝達車(本例では、かさ歯車54、第1動力伝達車61A及び第2動力伝達車61B)の組合せにおいて、それらの回転中心から動力伝達位置までの半径の大きさによって決定されるトルク伝達比を利用して構成することもできる。
このトルク伝達比を利用した回転制限手段50は、例えば、半径がAである小さな動力伝達車から、半径がAの2倍である大きな動力伝達車に動力伝達する際には、2倍の力が必要であることを利用して構成することができる。なお、動力伝達車としては、歯車、プーリ、スプロケット等が挙げられる。
【0059】
また、図6に示すごとく、上記回転制限手段50は、上記回転シャフト52又はメインシャフト53等に配設したトルクキーパー55によって構成することもできる。
トルクキーパー55は、上記回転力発生部材51に接続する回転部551と、回転部551を保持する保持部552と、回転部551の回転を阻止する回転制限部553とを有して構成することができる。そして、回転制限部553は、回転部551に加わる回転トルクが所定値以上になったときに、保持部552に対して回転部551の回転を可能にするよう構成しておく。また、回転制限部553は、皿バネ等によって構成することができる。
【0060】
そして、トルクキーパー55を利用して、回転力発生部材51の回転を制限し、移動台車4の移動が移動停止手段23によって停止されたときには、台車引き部材35から回転力発生部材51に加わる回転トルクが所定値以上になり、トルクキーパー55は、回転力発生部材51の回転の制限を解除することができる。
【0061】
図1に示すごとく、本例の台車移動装置1は、移動経路Dにおける一方の端部201に隣接して配設した他の受取側コンベア71から受け取ったワーク8を、移動台車4によって移動経路Dにおける他方の端部202まで搬送し、この他方の端部202に隣接して配設した他の送出側コンベア72へ送り出すよう構成してある。
【0062】
また、図2に示すごとく、移動台車4における台車架台41には、移動台車4が移動しているときに、搬送コンベア6上に載置したワーク8が、搬送コンベア6におけるワーク8の受渡方向Eに移動して落下することを防止する落下防止部材45が配設してある。この落下防止部材45は、搬送コンベア6におけるワーク8の受渡方向Eの両端に配設してあり、一方の落下防止部材45は、上記受取側コンベア71又は上記送出側コンベア72と接触したときには、落下防止状態を解除して、ワーク8の受渡を可能にするよう構成してある。
【0063】
また、上記のごとく、回転力発生部材51及び台車引き部材35を利用して搬送コンベア6を動作させるよう構成したことにより、移動台車4上には、搬送コンベア6を動作させるためのモータ等の動力源は配設していない。また、移動台車4上には、センサ等も配設していない。
そして、移動台車4には、動力用の電気ケーブルだけでなく、センサ用の電気ケーブルも配線も配線しておらず、電気配線は一切行っていない。
【0064】
本例の台車移動装置1は、以下のように、駆動モータ31の正逆回転を制御することにより、移動台車4によってワーク8の搬送を行う。
まず、図2に示すごとく、移動台車4が移動経路Dにおける一方の端部201にある状態において、制御装置は、駆動モータ31を所定時間逆回転させる。このとき、移動経路Dにおける一方の端部201に配設したストッパー231Aによって、移動台車4が他方向D2へ移動することが阻止されている。そのため、駆動モータ31による動力が、台車引き部材35及び回転力発生部材51を介して回転力利用手段6としての搬送コンベア6へ直接伝達される。
【0065】
そして、同図に示すごとく、駆動モータ31が台車引き部材35を移動経路Dにおける他方向D2へ向けて走行させる走行力は、移動台車4の移動力に変換されず、回転力発生部材51を逆回転方向へ向けて回転させる回転力に変換される。これにより、駆動モータ31の逆回転を受けて、回転力発生部材51が逆回転方向へ回転し、移動経路Dにおける一方の端部201に隣接する受取側コンベア71から、移動台車4における搬送コンベア6上へワーク8を受け取ることができる。
【0066】
次いで、制御装置は、駆動モータ31を所定時間逆回転させた後、駆動モータ31を正回転させる。このとき、回転力発生部材51の回転は、回転制限手段50によって制限されている。そのため、駆動モータ31が正回転することにより、台車引き部材35を移動経路Dにおける一方向D1へ向けて走行させる走行力(駆動モータ31が台車引き部材35を移動経路Dにおける一方向D1へ向けて引っ張る力)は、移動台車4を移動経路Dにおける一方向D1へ向けて移動させる移動力に変換される。
これにより、図1に示すごとく、駆動モータ31による動力が台車引き部材35を介して移動台車4へ伝達され、駆動モータ31の正回転により、台車引き部材35を介して移動台車4を引っ張るようにして、移動経路Dにおける一方向D1へ向けて移動させることができる。
【0067】
次いで、図3に示すごとく、移動台車4が移動経路Dにおける他方の端部202に移動したときには、この移動台車4が移動経路Dにおける他方の端部202に配設したストッパー231Bに衝突し、当該移動台車4の移動が停止される。このとき、移動台車4の移動が阻止されることにより、駆動モータ31が台車引き部材35を移動経路Dにおける一方向D1へ向けて走行させる走行力は、移動台車4の移動力に変換されず、回転力発生部材51を正回転方向へ向けて回転させる回転力に変換される。
そして、駆動モータ31の正回転を受けて、回転力発生部材51が正回転方向へ回転し、移動台車4における搬送コンベア6上から移動経路Dにおける他方の端部202に隣接する送出側コンベア72へワーク8を送り出すことができる。
【0068】
次いで、制御装置は、駆動モータ31を所定時間正回転させた後、駆動モータ31を逆回転させる。このとき、回転力発生部材51の回転は、回転制限手段50によって制限されていることにより、上記と同様にして、駆動モータ31の逆回転により、台車引き部材35を介して移動台車4を引っ張るようにして、移動経路Dにおける他方向D2へ向けて移動させることができる。
以降は、上記と同様にして、駆動モータ31の正逆回転を繰り返すことにより、移動台車4によって受取側コンベア71から受け取ったワーク8を搬送し、このワーク8を送出側コンベア72へ繰り返し送り出すことができる。
【0069】
このように、移動台車4に配設した搬送コンベア6は、台車引き部材35及び回転力発生部材51を介して、駆動モータ31による動力を受けて動作することができる。そのため、移動台車4へ電力の供給を直接行うことなく、搬送コンベア6を動作させることができる。これにより、移動台車4に電力ケーブルを配線することなく、搬送コンベア6を動作させることができる。
【0070】
それ故、本例の台車移動装置1によれば、1つの駆動源3の動力によって、移動台車4の移動動作と、搬送コンベア6による動作とを行うことができ、移動台車4へ電力の供給を直接行うことなく、搬送コンベア6を動作させることができる。そして、本例の台車移動装置1によれば、設備の構成を簡単かつ小型化することができ、設備コストを安くすることができる。
【0071】
さらに、本例の台車移動装置1においては、移動台車4に電力ケーブルを配線する必要がないことにより、電力ケーブルを保持するケーブルガイド等を移動台車4に配設する必要がない。そのため、移動台車4の構造を簡単にすることができ、床板部2上には、この床板部2の上を通行する際の障害になるものが存在しない。そのため、作業者又は他の台車等は、台車移動装置1を横切って通行することができる。
【0072】
また、本例の台車移動装置1においては、仮に、移動中の移動台車4に作業者が衝突した場合には、台車引き部材35の走行力は、回転力発生部材51の回転力に変換される。そのため、衝突時に作業者に与える衝撃力を極めて小さくすることが可能であり、台車移動装置1は、安全面においても優れている。また、この場合において、作業者がストッパー231の代わりとなり、搬送コンベア6が作動した場合でも、落下防止部材45によりワーク8が上記受渡方向Eへ落下することを防止することができる。
【0073】
(実施例2)
本例においては、台車移動装置1の他の具体例を示す。
本例の台車移動装置1Aは、図7〜図9に示すごとく、移動台車4において上下2段に搬送コンベア6を配設して構成することもできる。この場合には、上下2段の搬送コンベア6によって、上記受取側コンベア71及び送出側コンベア72との間でのワーク8の受渡を行うことができる。また、搬送ローラ65は、コンベア用のローラチェーンによって構成している。メインシャフト53と搬送ローラ65との間は、動力伝達車61及び連結部材62を適宜配設して、動力伝達を行うことができる。
【0074】
また、図9に示すごとく、一対の空転部材43と回転力発生部材51とは、移動経路Dの形成方向に沿って並べた状態で配設することができる。そして、台車引き部材35を、一対の空転部材43の外周における一方側と、回転力発生部材51の外周における他方側とに蛇行して掛け渡すことにより、移動経路Dの形成方向に直交する方向に折れ曲がった状態で配設することができる。また、本例の台車引き部材35は、チェーンによって構成しており、一対の空転部材43及び回転力発生部材51は、チェーンと係合するスプロケットによって構成している。
本例においても、その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1における、移動台車が移動動作している状態の台車移動装置を示す斜視説明図。
【図2】実施例1における、回転力発生部材の逆回転方向への回転によって、回転力利用手段(搬送コンベア)が動作する状態の移動台車を示す斜視説明図。
【図3】実施例1における、回転力発生部材の正回転方向への回転によって、回転力利用手段(搬送コンベア)が動作する状態の移動台車を示す斜視説明図。
【図4】実施例1における、移動経路に直交する方向から見た状態の移動台車を示す説明図。
【図5】実施例1における、移動経路の方向から見た状態の移動台車を示す説明図。
【図6】実施例1における、他の回転制限手段を示す説明図。
【図7】実施例2における、移動経路に直交する方向から見た状態の移動台車を示す説明図。
【図8】実施例2における、移動経路の方向から見た状態の移動台車を示す説明図。
【図9】実施例2における、上方から見た状態の移動台車を示す説明図。
【符号の説明】
【0076】
1 台車移動装置
2 床板部
23 移動停止手段
231 ストッパー
3 駆動源
31 駆動モータ
35 台車引き部材
4 移動台車
43 空転部材(空転従動車)
50 回転制限手段
51 回転力発生部材(回転力伝達車)
6 回転力利用手段(搬送コンベア)
65 搬送ローラ
8 ワーク
D 移動経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路を移動可能な移動台車と、
上記移動経路に沿って配設すると共に一部を上記移動台車に係合させた線状の台車引き部材と、
上記移動経路に配設し、上記台車引き部材を走行させる駆動源と、
上記移動台車の移動を停止させる移動停止手段とを有しており、
上記移動台車は、上記台車引き部材と係合して、該台車引き部材の走行に応じて回転可能な回転力発生部材と、該回転力発生部材の回転を制限するための回転制限手段と、上記回転力発生部材による回転力を利用して作動する回転力利用手段とを有しており、
上記回転制限手段によって上記回転力発生部材の回転を制限することにより、上記台車引き部材の走行力を上記移動台車の移動力に変換して、該移動台車を移動させるよう構成してあると共に、該移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されたときには、上記台車引き部材の走行に応じて上記回転力発生部材が回転し、上記回転力利用手段が作動するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項2】
請求項1において、上記移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されていないときには、上記台車引き部材から上記回転力発生部材に加わる動力トルクが、上記回転制限手段から上記回転力発生部材に加わる負荷トルクよりも小さいことにより、上記移動台車が移動し、
上記移動台車の移動が上記移動停止手段によって停止されたときには、上記台車引き部材から上記回転力発生部材に加わる動力トルクが、上記回転制限手段から上記回転力発生部材に加わる負荷トルクよりも大きくなることにより、上記回転力発生部材が回転するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記移動台車は、上記移動経路を往復移動するよう構成してあり、
上記台車引き部材は、可撓性を有すると共にループ状に配設してあり、
上記駆動源は、上記台車引き部材を上記移動経路における一方向へ走行させる正回転と、上記台車引き部材を上記移動経路における他方向へ走行させる逆回転とを行う駆動モータを有しており、
上記移動台車には、上記移動経路に対する一方向側と他方向側とに、上記台車引き部材と回転接触する空転部材がそれぞれ配設してあり、
上記台車引き部材は、一方の上記空転部材と、上記回転力発生部材と、他方の上記空転部材とに順次掛け渡してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項4】
請求項3において、上記回転力発生部材は、回転力伝達車であり、上記一対の空転部材は、一対の空転従動車であり、
上記台車引き部材は、上記回転力伝達車と上記一対の空転従動車との間に挟まれた状態で掛け渡してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項5】
請求項4において、上記回転力伝達車と上記一対の空転従動車とは、該回転力伝達車を頂角を形成する頂点に位置させると共に、該各空転従動車を底角を形成する頂点にそれぞれ位置させて、仮想の2等辺三角形を形成する状態で配設してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記回転制限手段は、上記回転力利用手段の作動を開始するときに生じる静摩擦力を利用して、上記回転力発生部材の回転を制限するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記回転制限手段は、トルクキーパーを用いて構成してあり、
該トルクキーパーは、上記回転力発生部材に接続する回転部と、該回転部を保持する保持部と、上記回転部の回転を阻止すると共に該回転部に加わる回転トルクが所定値以上になったときに該回転部の回転を可能にする回転制限部とを有していることを特徴とする台車移動装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記回転力利用手段は、上記回転力発生部材から回転力を受けて回転する複数の動力伝達車を用いて構成してあり、
上記回転制限手段は、上記回転力発生部材及び上記複数の動力伝達車の組合せにおいて、それらの回転中心から動力伝達位置までの半径の大きさによって決定されるトルク伝達比を利用して、上記回転力発生部材の回転を制限するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記回転力利用手段は、上記回転力発生部材の回転力を受けて、上記移動台車上に載置したワークを搬送する搬送コンベアであることを特徴とする台車移動装置。
【請求項10】
請求項9において、上記搬送コンベアは、上記回転力発生部材に対して動力伝達部材を介して連結した複数の搬送ローラを回転させて、該搬送ローラ上に載置した上記ワークを搬送するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか一項において、上記移動停止手段は、上記移動経路の両端に配設したストッパーによって構成してあると共に、該ストッパーに上記移動台車を衝突させることによって、該移動台車の移動を停止させるよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、上記移動台車は、複数の車輪を転がすことによって移動するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項において、上記移動台車は、レールに対して多数のボールベアリングを介した転がり接触によりスライダーをスライドさせるよう構成したスライドガイドを用いて移動するよう構成してあることを特徴とする台車移動装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項において、上記台車引き部材は、ベルト、歯付ベルト、チェーン又はワイヤであり、
上記回転力発生部材は、上記台車引き部材と係合するプーリ、歯車又はスプロケットであることを特徴とする台車移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−269431(P2007−269431A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96231(P2006−96231)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(590004305)株式会社 オチアイネクサス (3)
【Fターム(参考)】