説明

合体式プロテクタ

【課題】コストアップになるような面倒な設計を行わずに、誤組付を防止することのできる合体式プロテクタを提供する。
【解決手段】2個のプロテクタ10,20を、当該プロテクタ10,20の周壁10A,20Aに互いに離間して設けた2箇所の連結部51,52によって合体させる合体式プロテクタであって、前記連結部51,52は、互いに係脱自在とされた凸型の係合部15,25と凹型の係合部26,16の対により構成され、2箇所の連結部51,52のうちの一方の連結部51を、第1のプロテクタ10に設けた凸型の係合部15と第2のプロテクタ20に設けた凹型の係合部26の組み合わせで構成し、他方の連結部52を、第1のプロテクタ10に設けた凹型の係合部16と第2のプロテクタ20に設けた凸型の係合部25の組み合わせで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のワイヤーハーネスを保護するためのプロテクタに係り、特に2個のプロテクタを合体させた合体式プロテクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、ワイヤーハーネスの保護のために各種のプラスチック製のプロテクタが使用されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。この種のプロテクタの中に、取付上の便宜や組立上の便宜を図るために2個のプロテクタを合体させた合体式プロテクタがある。
【0003】
図3は合体式プロテクタの一例を示す。この合体式プロテクタは、第1のプロテクタ110と第2のプロテクタ120を合体可能としたもので、第1のプロテクタ110の下壁に2つの係合孔(凹型の係合部)116が設けられ、第2のプロテクタ120の上壁に2つの係合突起(凸型の係合部)125が設けられている。2つの係合孔116と2つの係合突起125は、それぞれ相互間の間隔が等しい位置に配置されており、係合突起125と係合孔116を係合させることにより、第1のプロテクタ110と第2のプロテクタ120とを合体させることができるようになっている。
【0004】
ところで、図3の合体式プロテクタでは、第1のプロテクタ110に設けられた2つの係合孔116が、第2のプロテクタ120に設けられた2つの係合突起125のうちのどちらの係合突起125とも係合可能なものであるため、第1のプロテクタ110と第2のプロテクタ120を向きを間違えて合体させて、誤組付状態にしてしまう可能性があった。
【0005】
このような誤組付を防止する方法として、特許文献1に、2つの部材を連結するための係合部の他に、2つの部材を正規の向きで合わせたときに互いに非干渉となって係合部同士の係合を許し、且つ、逆向きに合わせたときに互いに干渉して、それにより係合部同士の係合を阻止する誤組付防止部を設ける方法が示されている。
【0006】
また、特許文献2に、複数の係合部のうちの一部の係合部の配置間隔を左右で変えておき、正規の向きで合わせたときには係合部同士が互いに係合し、逆向きに合わせたときには、左右の関係が逆になることで、対応する係合部の位置がずれて、一部の係合部が係合不可となるようにする方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−161231号公報
【特許文献2】特開2006−74845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前者の方法は、余計な誤組付防止部を設ける必要があり、後者の方法は、複数の係合部のうちの一部の係合部の配置間隔を違えて設ける等の煩わしい設計をせざるを得ず、コストアップになりやすいという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストアップになるような面倒な設計を行わずに、誤組付を防止することのできる合体式プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る合体式プロテクタは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) それぞれワイヤーハーネスを収容可能な2個のプロテクタを、当該プロテクタの周壁に互いに離間して設けた2箇所の連結部によって合体させる合体式プロテクタであって、
前記連結部は、互いに係脱自在とされた凸型の係合部と凹型の係合部の対により構成され、
前記2箇所の連結部のうちの一方の連結部を、前記2個のプロテクタのうちの第1のプロテクタに設けた前記凸型の係合部と第2のプロテクタに設けた前記凹型の係合部の組み合わせで構成し、
他方の連結部を、前記第1のプロテクタに設けた前記凹型の係合部と前記第2のプロテクタに設けた前記凸型の係合部の組み合わせで構成したこと。
(2) 上記(1)の構成の合体式プロテクタにおいて、
前記凹型の係合部として係合孔が設けられ、前記凸型の係合部として、前記2個のプロテクタを合わせたときに、前記係合孔に対して略垂直に挿入されることで該係合孔の孔縁に係合される弾性係止羽根を有する係合突起が設けられていること。
(3) 上記(2)の構成の合体式プロテクタにおいて、
前記係合孔が、前記プロテクタの周壁に突設された板状の連結ブラケットに貫通して設けられていること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの構成の合体式プロテクタにおいて、
前記2個のプロテクタのうちの一方のプロテクタに、取付対象部材に対する固定手段が設けられていること。
【0011】
上記(1)の構成の合体式プロテクタによれば、2箇所の連結部をそれぞれ構成する凸型の係合部と凹型の係合部の対が、2個のプロテクタに互い違いに設けられているので、正規の向きと逆の向きに2個のプロテクタを合体しようとした場合、凸型の係合部と凸型の係合部が対向すると共に、凹型の係合部と凹型の係合部が対向してしまう。従って、その場合は係合することができず、両プロテクタの誤組付を防止することができる。
上記(2)の構成の合体式プロテクタによれば、2個のプロテクタを合わせるのに伴って、係合孔に略垂直に係合突起を挿入することができて、係合孔と係合突起を互いに係合させることができ、組み付けが容易にできるようになる。
上記(3)の構成の合体式プロテクタによれば、プロテクタの周壁に突設された板状の連結ブラケットに係合孔を形成しているので、ワイヤーハーネスの収納空間に係合突起が侵入することがなく、係合突起がワイヤーハーネスの邪魔にならない。
上記(4)の構成の合体式プロテクタによれば、固定手段が設けられたプロテクタを取付対象部材に固定することにより、両方のプロテクタを取付対象部材に同時に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2箇所の連結部をそれぞれ構成する凸型の係合部と凹型の係合部の対を2個のプロテクタに互い違いに設けるだけで、面倒な設計をせずに、両プロテクタの誤組付を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の合体式プロテクタの合体前の状態を示す斜視図である。
【図2】同合体式プロテクタの合体後の状態を示す斜視図であり、(a)は斜め上から見た図、(b)は斜め下から見た図である。
【図3】従来の合体式プロテクタの合体前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態の合体式プロテクタの合体前の状態を示す斜視図、図2は合体後の状態を示す斜視図であり、(a)は斜め上から見た図、(b)は斜め下から見た図である。
【0015】
図1および図2に示すように、この合体式プロテクタは、それぞれ樹脂の成形品よりなる合体可能な第1のプロテクタ10と第2のプロテクタ20より構成されている。
【0016】
第1のプロテクタ10は、下側半体11と上側半体12を合わせて、ロック手段13,14を互いにロックさせることにより一体に結合されており、内部の収納空間にワイヤーハーネスを収容できるようになっている。同様に、第2のプロテクタ20は、下側半体21と上側半体22を合わせて、ロック手段23,24を互いにロックさせることにより一体に結合されており、内部の収納空間にワイヤーハーネスを収容できるようになっている。
【0017】
このようにワイヤーハーネスの収納空間を形成する第1のプロテクタ10と第2のプロテクタ20の各本体の周壁10A,20Aには、2箇所に連結部51,52が互いに離間して設けられている。これら連結部51,52は、2個のプロテクタ10,20の一方および他方にそれぞれ設けられて互いに係脱自在とされた凸型の係合部15,25と凹型の係合部26,16の対により構成されており、これら連結部51,52を構成する凸型の係合部15,25と凹型の係合部26,16を互いに係合させることによって、第1のプロテクタ10と第2のプロテクタ20を合体させることができるようになっている。
【0018】
具体的には、第1のプロテクタ10の下面に凸型の係合部15が設けられ、当該凸型の係合部15から所望間隔だけ離間した第1のプロテクタ10の側面に凹型の係合部16が設けられている。そして、第2のプロテクタ20においては、当該第2のプロテクタ20の側面に前記第1のプロテクタ10に設けられた凸型の係合部15に係合する凹型の係合部26が設けられ、当該凹型の係合部26から所望間隔だけ離間した第2のプロテクタ20の上面に前記第1のプロテクタ10に設けられた凹型の係合部16に係合する凸型の係合部25が設けられている。
【0019】
そして、ここで特徴的なことは、2箇所の連結部51,52のうちの一方の連結部51を、2個のプロテクタ10,20のうちの第1のプロテクタ10に設けた凸型の係合部15と第2のプロテクタ20に設けた凹型の係合部26の組み合わせで構成し、他方の連結部52を、第1のプロテクタ10に設けた凹型の係合部16と第2のプロテクタ20に設けた凸型の係合部25の組み合わせで構成していることである。
【0020】
本発明において、凹型の係合部16,26としては係合孔18,28が設けられ、凸型の係合部15,25としては、2個のプロテクタ10,20を合わせたときに、係合孔18,28に対して略垂直に挿入されることで係合孔18,28の孔縁に係合される弾性係止羽根を有する傘型(あるいはキノコ型)の係合突起が設けられている。また、凹型の係合部16,26である係合孔18,28は、各プロテクタ10,20の本体を構成する周壁10A,20Aに突設された板状の連結ブラケット17,27に貫通して設けられている。
【0021】
第1のプロテクタ10と第2のプロテクタ20を合体させる場合、凹型の係合部26,16の係合孔28,18にそれぞれ凸型の係合部15,25の係合突起が挿入されると、図2(a)および(b)に示したように、これらの係合突起に設けられた弾性係止羽根の先端部が係合孔28,18に当接して、係合突起の後退を防止する。従って、凸型の係合部15,25は凹型の係合部26,16に係合され、両プロテクタ10,20は合体される。
【0022】
また、本発明において、第1、第2のプロテクタ10,20のうち第2のプロテクタ20には、取付対象部材である車体パネルに対し係合可能な傘型(あるいはキノコ型)の係合凸部よりなる複数の固定手段32が設けられている。
【0023】
この合体式プロテクタを使用する場合は、第1のプロテクタ10および第2のプロテクタ20にそれぞれワイヤーハーネスを収容し、両プロテクタ10,20を合わせて、凸型の係合部15,25と凹型の係合部16,26を互いに係合することにより、両プロテクタ10,20を一体に合体させる。そして、第2のプロテクタ20に設けた固定手段32を車体パネルの取付孔に係合させることにより、車体に固定する。こうすることにより、ワイヤーハーネスを車体に沿って固定することができると共に、ワイヤーハーネスを保護することができるようになる。なお、取り付けの順番は、先に第2のプロテクタ20を車体パネルに取り付けておき、後から第1のプロテクタ10を第2のプロテクタ20に合体させてもよい。
【0024】
このように第1のプロテクタ10と第2のプロテクタ20とを合体させる際、この合体式プロテクタでは、2箇所の連結部51,52をそれぞれ構成する凸型の係合部15,25と凹型の係合部26,16の対が、プロテクタ10,20に互い違いに設けられているので、正規の向きと逆の向きにプロテクタ10,20同士を合体しようとしても、凸型の係合部15と凸型の係合部25が対向すると共に、凹型の係合部16と凹型の係合部26が対向する関係になり、その結果、両者を係合することができず、両プロテクタ10,20の誤組付を防止することができる。また、この合体式プロテクタでは、2箇所の連結部51,52をそれぞれ構成する凸型の係合部15,25と凹型の係合部26,16の対を2個のプロテクタ10,20に互い違いに設けるだけであるから、コストアップになるような面倒な設計をせずに、両プロテクタ10,20の誤組付を防止することができるという効果が得られる。
【0025】
また、本実施形態の合体式プロテクタによれば、2個のプロテクタ10,20を合わせるのに伴って、係合孔28,18に略垂直に係合突起(凸型の係合部15,25)を挿入することができて、係合孔28,18と係合突起(凸型の係合部15,25)を互いに係合させることができるので、組み付けが容易にできる。
【0026】
また、本実施形態の合体式プロテクタによれば、プロテクタ10,20の周壁10A,20Aに突設された板状の連結ブラケット17,27に係合孔18,28を形成することにより凹型の係合部16,26を設けているので、ワイヤーハーネスの収納空間に係合突起(凸型の係合部15,25)が侵入することがなく、係合突起(凸型の係合部15,25)がワイヤーハーネスの邪魔になるようなこともない。
【0027】
また、本実施形態の合体式プロテクタによれば、固定手段32が設けられた第2のプロテクタ20を取付対象部材である車体パネルに固定することにより、両方のプロテクタ10、20を車体パネルに同時に固定することができるので、車体に対する取り付けが簡単にできる。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0029】
10 第1のプロテクタ
10A 周壁
15 凸型の係合部
16 凹型の係合部
17 連結ブラケット
18 係合孔
20 第2のプロテクタ
20A 周壁
25 凸型の係合部
26 凹型の係合部
27 連結ブラケット
28 係合孔
32 固定手段
51 連結部
52 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれワイヤーハーネスを収容可能な2個のプロテクタを、当該プロテクタの周壁に互いに離間して設けた2箇所の連結部によって合体させる合体式プロテクタであって、
前記連結部は、互いに係脱自在とされた凸型の係合部と凹型の係合部の対により構成され、
前記2箇所の連結部のうちの一方の連結部を、前記2個のプロテクタのうちの第1のプロテクタに設けた前記凸型の係合部と第2のプロテクタに設けた前記凹型の係合部の組み合わせで構成し、
他方の連結部を、前記第1のプロテクタに設けた前記凹型の係合部と前記第2のプロテクタに設けた前記凸型の係合部の組み合わせで構成したことを特徴とする合体式プロテクタ。
【請求項2】
前記凹型の係合部として係合孔が設けられ、前記凸型の係合部として、前記2個のプロテクタを合わせたときに、前記係合孔に対して略垂直に挿入されることで該係合孔の孔縁に係合される弾性係止羽根を有する係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の合体式プロテクタ。
【請求項3】
前記係合孔が、前記プロテクタの周壁に突設された板状の連結ブラケットに貫通して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の合体式プロテクタ。
【請求項4】
前記2個のプロテクタのうちの一方のプロテクタに、取付対象部材に対する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の合体式プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−55627(P2011−55627A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201701(P2009−201701)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】