説明

合成リボースリビトールホスフェートオリゴマーを用いた免疫原性抱合体の製造方法

【課題】インフルエンザ菌の感染に対するワクチンとして有用である免疫原性抱合体を提供すること。
【解決手段】合成リボースリビトールホスフェート(PRP)オリゴマーを固相/液相系中での重合により製造し、得られたPRPオリゴマーに、少なくとも1つのT細胞ペプチドを含む合成ペプチドを結合させて免疫原性抱合体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザ菌(Hi)に対する合成ワクチンに関する。特に、本発明は、ポリリボシルリビトール リン酸(sPRP)の反復ユニットを含む合成オリゴ糖に共有結合させることにより、哺乳動物において高力価の抗PRPおよび抗OMP抗体を誘導することのできる免疫原性合成PRPペプチド抱合体ワクチンを形成させるための、Hiの外膜タンパク(OMP)P1、P2およびP6の強力なTヘルパ−細胞決定因子(THD)およびB細胞エピトープ(BE)の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ菌b型(Hib)は、5才未満の子供における細菌性髄膜炎の主要な病因である(参考文献1、2)。(参考文献は、本開示の最後に示す)。細菌は、ポリリボシルリビトール リン酸(PRP)の反復重合体である多糖類の夾膜によって、食菌作用から守られている。生物の夾膜多糖類に対して誘導された抗体は、保護作用を有する(参考文献3)。ジフテリア トキソイド(PRP−D)、破傷風トキソイド(PRP−T)、CRM197(HbOC)等の各種担体タンパクおよびナイセリアの外膜タンパクにPRPをリンクさせた効果の高い抱合体ワクチンが開発されている(参考文献4、5)。しかし、これらの抱合体ワクチンは、その他の感染性夾膜インフルエンザ菌a型およびc型、特に重要なワクチンの全くない中耳炎の一般的な病因の1つであり、いずれの型にも属さない非夾膜インフルエンザ菌株に対しては保護作用がない。したがって、現在のHibワクチンに特定の非夾膜インフルエンザ菌免疫原を含めることは、多目的Hiワクチンの開発にあたって重要である。
【0003】
グラノフら(Granoff & Munson)(参考文献6)は、Hib外膜タンパク(OMP)P1、P2およびP6に対する抗体が菌血症のラット仔動物モデルで保護作用を有すると報告している。したがって、追加免疫原およびPRP担体として精製OMPまたはその保護エピトープを利用することによって、保護作用の高い多目的インフルエンザワクチンが得られると考えられる。いくつかのHib亜型から、P1をコード化した遺伝子がクローン化されている(参考文献7、8)。これらHib分離株からのP1タンパクの配列について、広範な分析が行なわれ、過変性領域が3個所あることが知られている。実際に、ハンセン(Hansen)のグループによって報告されているP1特異性MAbは、試験したHib分離株のわずか50%を識別するに過ぎない(参考文献7、9)。P2タンパクについては、2種類のHib亜型(1Hおよび3L)から分離したP2遺伝子のニュクレオチド配列が全く同じであることが知られている(参考文献10、11)が、Hibの別の2亜型(2Lおよび6U)ではP2タンパク配列のアミノ酸が異なることが知られている(参考文献11)。それに対して、抗原決定因子、遺伝子配列および制限フラグメント長多型表現等の分析結果は、Hiの全ての株でP6タンパクは高度に保存されていることを暗示している(参考文献12)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の研究で、分類可能またはいずれの型にも属さないインフルエンザ株からの精製P1に対するマウスP1特異性モノクローナル抗体(MAb 7C8)およびウサギ抗血清が哺乳動物モデルで保護作用を有することが認められている(参考文献9、13、14)。また、マーフィーら(Murhpy & Bartos)(参考文献15)は、いずれの型にも属さないインフルエンザ菌のP2タンパクの表面露出エピトープを識別するモノクローナル抗体がin vitroで抗細菌活性を有することを報告している。抗P1および抗P2モノクローナル抗体は、分類可能およびいずれの型にも属さないインフルエンザ菌株と交差反応を示すことが知られている(参考文献16〜18)。しかし、分類可能およびいずれの型にも属さないインフルエンザ菌株の両方に対して効果的な多目的ワクチンとして在来のHib OMP全体を使用することには大きな問題がある。第1に、いずれの型にも属さないHiに起因する中耳炎から回復した子供は、一般にP2およびリポオリゴ糖類等の変動性抗原に対する抗細菌性抗体を獲得する。第2に、上記のP1およびP2の交差保護性エピトープは、現在のところ同定されていない。第3に、抗P6抗細菌性抗体によって識別されるエピトープは細菌の表面に少量しか表現されないので、再感染の恐れがある(参考文献12)。第4に、OMPに対する細胞免疫反応の役割について、ほとんど知られていない。Hi OMPの免疫優勢Tヘルパー細胞エピトープの特性は、知られていない。したがって、これらのエピトープがHi感染に対して免疫反応を誘発するか否かを明らかにするためには、機能的Tヘルパー細胞エピトープならびにP1、P2およびP6タンパクの保存、表面露出かつ/または保護的B細胞エピトープを同定する必要がある。
【0005】
疾病に対する免疫を誘導する方法は常に進歩し、現在では抗原として特性の明らかな物質をできるだけ少量使用する傾向にある。その目的は、ある種の在来免疫原の副次的影響を排除し、かつ疾病に対するそれらの免疫原性および保護作用を保存するためである。最近の研究で、ウイルス性または細菌性タンパクの特定の領域を有する合成ペプチドを実験動物に免疫投与すると、親タンパクに対する免疫反応の誘導およびそれらの生物学的機能の中和が可能であることが示唆されている(参考文献19〜22)。このように、合成タンパクは、感染性疾病に対する安価で、安全なワクチンとして有望である。基礎免疫学の最近の進歩によって、優れた、効果の高い免疫原は2つの明瞭な機能性抗原決定因子(エピトープ)をもっていなければならないことが明らかにされている。その1つ(T細胞エピトープ)は、免疫系の適当なMHCクラスII抗原コンテキスト中に存在するように設計する。もう1つのエピトープ(B細胞エピトープ)は、抗体の生産を誘導するうえで、認知B細胞抗原受容体によって認知されなければならない(参考文献23〜26)。したがって、強力で、有効な合成ワクチンを製造するためには、機能TヘルパーおよびB細胞エピトープの両方を合成構成物中に含める必要がある。
【0006】
合成PRP二量体、三量体および四量体を合成し、精製し、担体タンパクと抱合体を形成させて、動物を用いた免疫原性試験が行なわれている(参考文献27、28)。これらの試験で、合成PRP三量体タンパク抱合体は、フロイントの完全アジュバント(CFA)の存在下で、実験動物において抗PRP抗体反応を誘導することが認められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
我々の目的は、従来の非相同担体タンパクを用いるかわりに、Hi OMPからの免疫優勢エピトープを有する合成ペプチドを追加免疫原およびPRP担体として用い、優れた保護作用と自己由来T細胞プライミングを有する第1世代の完全合成PRPペプチド抱合体ワクチンを開発することであった。このようなワクチンは、PRPが異質タンパク、例えばジフテリア トキソイド(PRP−D)、破傷風トキソイド(RPR−T)またはCRM197(HbOC)、またはナイセリアのOMPと抱合体を形成している従来のワクチンに対して、その他にも優れた点を持っている。第1に、合成Hiワクチンを使用することによって、将来多価複合ワクチンとする場合にDまたはTの量を減らすことができ、これらの担体タンパクに対する過剰免疫の危険性を軽減することができる。第2に、PRPを保存されている保護エピトープと共役させて、感染性Hi疾患及び中耳炎の両方に有効なワクチンを製造することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は単独でまたはPRP抱合体としてHi感染に対するワクチンとして有用である免疫原性合成ペプチドを提供する。本発明の範囲内で改良が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
記号およびその定義
・CRM197:ジフテリア毒素と抗原的に交差反応性を有する非毒性タンパク
・Hi:インフルエンザ菌
・Hib:インフルエンザ菌b型
・MAP:多価抗原性ペプチド
・MBS:m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシニミド
・OMP:外膜タンパク
・PEG:ポリエチレン グリコール モノメチルエーテル
・PRP:ポリリボセリビトール リン酸
本発明は、合成PRPオリゴマーとHi外膜タンパクの抗原決定因子からなる免疫原性合成抱合体ワクチンの提供を目的とする。本発明の別の目的は、特定の長さを有する合成PRPオリゴマーからなる合成抱合体ワクチンを提供することである。さらに、本発明の目的は、固体担体としてポリエチレン グリコール モノメチルエーテル(PEG)を用い、特定部位でHi外膜タンパクの抗原性決定因子と抱合体を形成することのできる化学的反応性の高い官能基を有する合成PRPを効率よく製造するための化学工程を提供することである。
【0010】
本発明は、さらに別の側面において、T細胞エピトープに対して糖成分の適切な配位を選ぶことによって、合成PRPペプチド抱合体の免疫原性を改善する方法を提供するものである。さらに、本発明の別の目的は、Hibの抗原性決定因子を含む多抗原性ペプチド系(MAP)を担体として用いて合成PRPペプチド抱合体中の炭水化物部分の密度を高めることによって、炭水化物の免疫原性を向上させることのできる化学工程を提供することである。本発明は、別の側面において、免疫原性合成PRPペプチド抱合体と交差反応性Hi抗原とからなる多目的Hiワクチンの提供を目的とする。本発明の別の目的は、免疫原性合成PRPペプチド抱合体と、別のワクチン、例えばDTPポリオ、ナイセリア血清型A、B、CおよびW、ならびにS.pneumoniae血清型6B、14、19Fおよび23F等と混合したHi抗原とからなる新しい世代の多価ワクチンを提供することである。
【0011】
さらに本発明は、抗Hib抗体、例えば抗PRPおよび抗OMP抗体の存在を検出するための診断用免疫検定に使用できる合成PRPペプチド抱合体の提供を目的とする。
さらに本発明の目的は、分類可能またはいずれの型にも属さないHi株の生物標本中における有無を検出するための診断用免疫検定キットの成分として、PRP特異性抗体とOMP特異性抗体の混合物を提供することである。
【0012】
本発明は、Hibの外膜タンパク(P1、P2およびP6)の各種抗原性決定因子(Tヘルパー細胞およびB細胞エピトープ)のアミノ酸配列を有するペプチドからなる免疫原およびワクチンの提供に関する。これらのペプチドの1つ以上からなり、遊離のペプチドとして、または免疫原性を向上させるために合成糖抱合体ワクチンとして合成PRPオリゴマーと共役結合させ、かつ/または脂質性部分とリンクさせて投与することのできる合成ワクチンを開示する。
【0013】
本発明は、その1側面において、インフルエンザ菌の少なくとも1種類のタンパク、望ましくはインフルエンザb型の外膜タンパクの少なくとも1つの抗原性決定因子に相当するアミノ酸配列を有する合成ペプチドを提供する。
【0014】
本発明は、その1実施例において、HiのP1タンパクの保存されている抗原性決定因子に相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する基本的に純粋なペプチドからなり、このペプチドはin vitroにおいてHiを認識することのできるポリクローナル抗体を哺乳動物において誘導することができる。これらのP1特異性ポリクローナル抗体は、生物試料中のHiの存在を検出する試験キットの成分として使用することができる。例えば、ペプチドは以下の表1に規定するように、Hib MinnA株の成熟P1タンパク(SEQ ID No:1、12、3、4、5、6、7、9、13または14および15)または免疫原性を保持しているあわゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列1−29、39−64、103−137、165−193、189−218、226−253、248−283、307−331、400−437および179−218に相当するアミノ酸配列を有する。
【0015】
別の実施例で、本発明はHiのP2タンパクの保存されている抗原性決定因子に相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する基本的に純粋なペプチドからなり、このペプチドはin vitroにおいてHiを認識することのできるポリクローナル抗体を哺乳動物において誘導することができる。これらのP2特異性ポリクローナル抗体は、生物試料中のHiの存在を検出する試験キットの成分として使用することができる。例えば、ペプチドは以下の表2に規定するように、Hib MinnA株の成熟P2タンパク(SEQ ID No:16、23、28、29、30、31および32)または免疫原性を保持しているあわゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列1−14、125−150、241−265、263−289、285−306、302−319および314−341に相当するアミノ酸配列を有する。
【0016】
別の実施例で、本発明はHiのP6タンパクの保存されている抗原性決定因子に相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する基本的に純粋なペプチドからなり、このペプチドはin vitroにおいてHiを認識することのできるポリクローナル抗体を哺乳動物において誘導することができる。これらのP6特異性ポリクローナル抗体は、生物試料中のHiの存在を検出する試験キットの成分として使用することができる。例えば、ペプチドは以下の表3に規定するように、Hib MinnA株の成熟P6タンパク(SEQ ID No:35−41)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列1−22、19−41、35−58、54−77、73−96、90−114および109−134に相当するアミノ酸配列を有する。
【0017】
別の実施例で、本発明はP1タンパクの免疫優勢直線性B細胞エピトープに相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する少なくとも1種類のP1ペプチドからなる。これらのペプチドは、抗Hi抗体、例えば保護抗体の存在を検出ための診断用キットにおける標的抗原として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表1に規定するように、Hib MinnA株の成熟P1タンパク(SEQ ID No:12、3、4、7、9、13または14および15)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列39−64、103−137、165−193、248−283、307−331、400−437および179−218に相当するアミノ酸配列を有する。
【0018】
別の実施例で、本発明はP2タンパクの免疫優勢直線性B細胞エピトープに相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する少なくとも1種類のP2ペプチドからなる。これらのペプチドは、抗Hi抗体、例えば保護抗体の存在を検出ための診断用キットにおける標的抗原として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表2に規定するように、Hib MinnA株の成熟P2タンパク(それぞれSEQ ID No:20、24、28および32)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列53−81、148−174、241−265および314−342に相当するアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の実施例で、本発明はP6タンパクの免疫優勢直線性B細胞エピトープに相当する少なくとも1つのアミノ酸配列を有する少なくとも1種類のP6ペプチドからなる。これらのペプチドは、抗Hi抗体、例えば保護抗体の存在を検出ための診断用キットにおける標的抗原として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表3に規定するように、Hib MinnA株の成熟P6タンパク(それぞれSEQ ID No:39、40および41)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列73−96、90−114および109−134に相当するアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の実施例で、本発明はP1の免疫優勢T細胞エピトープとして同定されたペプチドからなる。これらのペプチドは、PRPの自己由来担体として、または自己由来または非相同性B細胞エピトープの担体として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表1に規定するように、Hib MinnA株の成熟P1タンパク(それぞれSEQ ID No:12、6、10および13または14)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列36−64、226−253、339−370および400−437に相当するアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の実施例で、本発明はP2の免疫優勢T細胞エピトープとして同定されたペプチドからなる。これらのペプチドは、PRPの自己由来担体として、または自己由来または非相同性B細胞エピトープの担体として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表2に規定するように、Hib MinnA株の成熟P2タンパク(それぞれSEQ ID No:26、27および28)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列125−150、193−219、219−244および241−265に相当するアミノ酸配列を有する。
【0022】
別の実施例で、本発明はP6の免疫優勢T細胞エピトープとして同定されたペプチドからなる。これらのペプチドは、PRPの自己由来担体として、または自己由来または非相同性B細胞エピトープの担体として使用することができる。これらのペプチドは、例えば、以下の表3に規定するように、Hib MinnA株の成熟P6タンパク(それぞれSEQ ID No:36、37、39および41)または免疫原性を保持しているあらゆるタンパクまたはその変異体のそれぞれアミノ酸配列19−41、35−58、73−96および109−134に相当するアミノ酸配列を有する。
【0023】
したがって、本発明は、別の側面において、少なくとも1つの合成B細胞エピトープにリンクしたインフルエンザ菌の少なくとも1種類のタンパクの少なくとも1つの免疫優勢T細胞エピトープに相当するアミノ酸配列を有する合成ペプチドからなる免疫原抱合体を提供する。
【0024】
本発明は、別の側面において、合成PRPオリゴマーのきわめて効率の高い化学合成プロセスを提供する。このプロセスは固体担体としてポリエチレン グリコール モノメチルエーテル(PEG)を用いる固相/液相合成を組合せたものである。固相担体は、従来の担体が所定のポアー数のガラス等の化学反応性官能基をgあたり約30〜35μmolしか含んでいないのに対して、約200〜500μmol/gの反応性官能基を含んでいる。従来の固相合成ではモル数で5〜10倍過剰であるのに対して、各共役サイクルにおける合成PRP反復ユニットの量は化学量論的な量である。さらに、本発明の新規なプロセスは反応速度が速く、コスト効果が高く、営業生産にスケールアップする場合にも簡単である。それに対して、液相合成は手間がかかり、高価であり、長時間を要する。
【0025】
本発明のこのプロセスから得られる製品は、以下の式で現される化学反応性PRPオリゴ糖類からなる。
【0026】
【化1】

【0027】
ここで、nは望ましくは3〜20の整数、Rは−CH2−(CH2)m−X(ただし、mは3〜5の整数、Xは−CH2NH2、−CH2SHまたはアミノ反応基、ハロゲン、メタンスルフォニル、トリフルオロメタンスルフォニルまたは、トルエンスルフォニル等の化学反応性官能基、またはフェニルアジド、ニトロフェニル、ベンジルフェニル等の光反応基)で規定されるリンカーフラグメントである。反応基は合成PRPを別の分子とリンクさせる。
【0028】
本発明は、別の側面で、少なくとも1つの合成T細胞エピトープにリンクした合成炭水化物抗原からなる免疫原性抱合体を提供する。炭水化物抗原は、細菌から得てもよいが、特に合成リボセリビトール リン酸(PRP)オリゴマーである。
【0029】
別の実施例において、本発明は哺乳動物において高力価の抗PRP抗体を誘導することができる免疫原性合成PRPペプチド抱合体ワクチンを提供する。合成PRP担体抱合体ワクチンは、以下の式で現される分子を含む。
【0030】
【化2】

【0031】
ここで、nおよびmは上記の規定と同じであり、R'はHIV−1 gagタンパクp24からのアミノ酸配列GPKEPFRDYVDRFYK(SEQ ID No:50)を含む少なくとも1つのTヘルパー細胞エピトープ、例えばヒトT細胞エピトープまたはHi OMPからのT細胞エピトープを有する合成ペプチドである。担体は、TヘルパーおよびB細胞エピトープを含むペプチドであってもよい。
【0032】
別の実施例において、本発明は所定の長さの合成PRPオリゴマーとT−および、またはT−Bエピトープを含むHib P1ペプチドの免疫原性合成配糖体からなる。合成PRPオリゴマーの大きさは、少なくともPRPの3反復単位であるが、好ましくは6反復単位である。ペプチドは、例えば、下表1に規定したそれぞれHib MinnA株のP1タンパク(それぞれSEQ ID No:12、4、5、6、10および13または14)または免疫原性を保持したあらゆるタンパクまたはその変異体のアミノ酸配列39−64、165−193、189−218、226−253、339−370および400−437に相当するアミノ酸配列を有することができる。
【0033】
別の実施例において、本発明は所定の長さの合成PRPオリゴマーとT−および、またはT−Bエピトープを含むP2ペプチドの免疫原性合成配糖体からなる。合成PRPオリゴマーの大きさは、少なくともPRPの3反復単位であるが、好ましくは6反復単位である。ペプチドは、例えば、下表2に規定したそれぞれHib MinnA株のP2タンパク(それぞれSEQ ID No:23、26、27および28)または免疫原性を保持したあらゆるタンパクまたはその変異体のアミノ酸配列125−150、193−219、219−244および241−265に相当するアミノ酸配列を有することができる。
【0034】
別の実施例において、本発明は所定の長さの合成PRPオリゴマーとT−および、またはT−Bエピトープを含むP6ペプチドの免疫原性合成配糖体からなる。合成PRPオリゴマーの大きさは、少なくともPRPの3反復単位であるが、好ましくは6反復単位である。ペプチドは、例えば、下表3に規定したそれぞれHib MinnA株のP6タンパク(それぞれSEQ ID No:36、37、39および41)または免疫原性を保持したあらゆるタンパクまたはその変異体のアミノ酸配列19−41、35−58、73−96および109−134に相当するアミノ酸配列を有することができる。
【0035】
別の実施例において、本発明は合成ペプチド配糖体内での炭水化物密度を増すために、担体として機能性Tヘルパー細胞エピトープを含む多抗原性ペプチド系(MAP)を用いることにより炭水化物抗原、例えば合成PRPの免疫原性が向上するという概念を提供する。MAPは、Hib MinnA株のP2タンパクまたはそのあらゆるタンパクのアミノ酸配列193−219に相当する配列、例えば(図1)DIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNG(SEQ ID No:26)を含んでいてもよい。
【0036】
別の実施例において、本発明は哺乳動物において細胞仲介およびホルモン性免疫反応を誘導する合成PRPリポペプチド(または合成PRPリポペプチドの混合物)からなる。リポペプチドは、例えばHib MinnA株のP1タンパクまたはそのあらゆるタンパクのアミノ酸配列165−193に相当する配列トリパルミチルCSSYAKAQVERNAGLIADSVKDNQITSALSTQC(SEQ ID No:4)を含んでいてもよい。
【0037】
別の実施例において、本発明はHibのP1、P2またはP6のいずれかの同定されたT−Bエピトープからなり、Hi感染に対する免疫を哺乳動物に賦与するために使用される免疫原性キメラペプチドワクチンを提供する。ペプチドは、例えばVKTIGDKRTLTLNTCARTRTTETGKGVKTEKEKSVGVGLRVYF(SEQ ID No:42)、
VKTIGDKNTLTLNTFGDGFYAQGYLETRFVTKASENGSNFGDC(SEQ ID No:43)、
VKTIGDKNTLTLNTCGANYLLAQKREGAKGENKRPNDKAGEV(SEQ ID No:44)、
VKTIGDKRTLTLNTDIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNGC(SEQ ID No:45)、
VKTIGDKRTLTLNTYAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYELC(SEQ ID No:46)、
GYLETRFVTKASENGSDFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF(SEQ ID No:47)、
AKGENKRPNDKAGEVFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF(SEQ ID No:48)および
ARTRTTETGKGVKTEKFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF(SEQ ID No:49)
の配列を有するか、その免疫原性を有する変異体の一部であってもよい。本発明のペプチドはHi分離体のMinnA以外の相同性領域に相当する配列を有していてもよい。
【0038】
新規な合成ペプチドおよびここに提供される抱合体は病原体、特にインフルエンザ菌によって起こる疾病に対するワクチンとして、上記の少なくとも1つの合成ペプチドかつ、または少なくとも1つの合成抱合体と、そのための生理学的に許容される担体を含む製品に製剤化することができる。ワクチンは、ワクチンの有効量を宿主に投与することによって、病原性疾病に対する免疫を宿主に賦与するために使用することができる。
【0039】
ワクチンは、さらに少なくとも1種類の別の免疫原および/または免疫刺激性分子からなる。また本発明は、ワクチンの有効量を宿主に投与することによって、Hi感染に対する免疫を宿主に賦与する方法を含む。
【0040】
本発明に記載したペプチドは、さらに脂質でリポペプチドに修飾するか、または合成リポペプチド配糖体として合成PRPにリンクさせ(かつ/または重合化させ)て別のワクチンとすることもできる。
【0041】
ワクチンは、例えば筋肉内注射または非経口的経路によって哺乳動物に投与したとき、または微粒子、カプセルリポソームおよび毒素および抗体等の標的分子を用いて粘膜表面に運搬したとき、Hiに対する免疫を賦与するために使用することができる。
【0042】
さらに本発明は、ここに提供されるいずれかの合成ペプチドのアミノ酸配列をコード化した遺伝子を含む抗原運搬用の生ベクターを含む。生ベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスおよびレトロウイルル等のウイルス性ベクターであってもよい。生ベクターは、サルモネラ菌およびマイコバクテリア等の細菌性ベクターであってもよい。生ベクターは、それと生理学的に許容される担体とからなるワクチンに組み込んでもよい。
【0043】
前記のように、ここに提供される合成ペプチドは、インフルエンザ菌による感染を検出するための診断試薬としても使用することができる。ここに記載した合成ペプチドおよび抱合体のいずれかに対する抗体も、本発明に含まれる。
【0044】
図1は、ここに報告した合成PRPペプチド抱合体試験に使用した以下のペプチド担体のアミノ酸配列を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
図2及び図3は、従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P1の推定構造を示す。親水性プロットはホップ(Hopp)の方法(参考文献30)によって測定した。値はヘプタペプチドウンドーの平均から求め、各セグメントの中点にプロットした。
【0047】
図4〜6は、それぞれ従来の構造解析アルゴリズムによるOMP P2およびP6の推定構造を示す。上のパネルは、チョウら(Chou & Fasman)(参考文献29)にしたがって行なった局所平均α−螺旋構造およびβ−回転ポテンシャルの二次構造解析を示す。下のパネルは、ホップら(Hopp & Woods)(参考文献30)の方法により推定した親水性プロットである。値はヘプタペプチドウインドーの平均から求め、各セグメントの中点にプロットした。
【0048】
図7は、Hib OMP P1の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【0049】
図8は、Hib OMP P2の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【0050】
図9は、Hib OMP P6の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【0051】
図10〜12は、モルモット、ラットおよびウサギの抗P6抗血清とP6ペプチドのELISA反応性を示す。
【0052】
図13は、3種類のヒト回復期血清とP1ペプチドのELISA反応性を示す。
【0053】
図14は、3種類のヒト回復期血清とP2ペプチドのELISA反応性を示す。
【0054】
図15〜17は、免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す。
【0055】
図18〜20は、免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す。
【0056】
図21及び図22は、固体担体としてPEGを用いたPRP合成の1フローチャートを示す。
【0057】
図23〜25は、PRP中間体の合成フローチャートを示す。Bzはベンジル、Acはアセチル、ETSはエチルチオ、Meはメチル、Allylはアリル、DMTは4,4'−ジメトキシトリチル、NCEはシアノエチル、MMTは4−メトキシトリチルを現す。
【0058】
図26は、破傷風トキソイドと抱合体を形成させた合成PRP二量体および三量体に対するウサギの免疫反応を示す。
【0059】
図27は、各種PRP担体抱合体に対するウサギの免疫反応を示す。
【0060】
図28は、HibPi−4およびOMPのMAPの各種合成ペンタマーおよびヘキサマーに対するウサギの免疫反応を示す。
【0061】
本発明は、Hib OMPの免疫原性エピトープの同定、新規な合成PRPペプチド抱合体およびこれらからなるワクチンに関する。これらの新規免疫原は、Hib OMPのP1、P2およびP6と抗原性決定因子を共有する化学合成ペプチドにより調製する。ペプチドまたはリポペプチドは、単独または合成PRPオリゴマーにリンクさせ、ワクチンとして使用する。これらのワクチンは、例えば筋肉内または非経口経路で哺乳動物に投与し、または微粒子、カプセル、リポソームならびに毒素および抗体等の標的分子を用いて粘膜表面に運搬させて、Hi感染に対する免疫の賦与に使用する。
【0062】
次に、実施例を参照して本発明の原理を詳細に説明する。開示を明快にするため、本発明は以下の項に分けて詳細に説明するが、それによって制限されるものではない。
(i)エピトープの推定およびペプチドの合成
(ii)合成ペプチドを用いたHi OMP P1、P2およびP6の免疫優勢B細胞エピトープの同定および特性
(iii)合成ペプチドを用いたHi OMP P1、P2およびP6の免疫優勢T細胞エピトープの同定および特性
(iv)Hib OMPペプチドの免疫原性
(v)担体としてPEGを用いたPRPオリゴマーの固相炭水化物合成
(vi)合成PRPオリゴマーとHib OMPペプチドの抱合化および配糖体の免疫特性
(vii)Hi合成PRPペプチド抱合体ワクチンの利用
エピトープの推定およびペプチドの合成
Hi OMPの免疫優勢T細胞およびB細胞エピトープをマップを作成するために、実施例12で詳細に記載するようにt−Boc固相ペプチド合成法を用い、P1、P2およびP6タンパク配列のほとんどを網羅するそれぞれ13、12および7種類の重複合成ペプチド(下表1、2および3)を合成した。ペプチドの長さは、従来のアルゴリズム(参考文献29〜31)を用いた二次構造推定によって推定した高指数の親水性β回転に基づいて選択した(図2〜6)。このようなペプチドは、表面が露出し、免疫原性を有すると思われる。ファン レゲンモルテル(Van Regenmotel)(参考文献32)によって提案されているように、天然のエピトープをよく模倣するものとして25残基を超える長さのペプチドを選んだ。場合によっては、部位特異的抱合化を目的として、ペプチドのN末端またはC末端にさらにシステインを追加した。
【0063】
合成ペプチドを用いたHi OMP P1、P2およびP6の免疫優勢B細胞エピトープの同定および特性
Hib OMPの免疫優勢B細胞エピトープを同定するため、異なったハプロタイプ(H−2、H−2、H−2、H−2、およびH−2)のウサギ、モルモットおよびマウスにフロイントのアジュバントとともに精製P1、P2またはP6タンパクを免疫投与した。一次および二次免疫投与後、P1、P2およびP6特異性ELISAで判定したところ(表4、5および6)、いずれの動物も強く、特異的な抗OMP抗体反応を示した。グラノフら(Granoff & Munson)によってすでに報告されているように(参考文献6)、ウサギの抗P1、抗P2および抗P6抗血清は、生Hib誘発投与に対して長期間ラット仔動物を防御した。モルモットの抗p2抗血清も、このモデルで有効であった。
【0064】
Hib OMPの直線性B細胞エピトープのマップを作成するため、P1、P2およびP6の配列のほとんどを網羅する重複合成ペプチドをそれぞれELISAプレート上にコーティングし、実施例17で記載するように各種抗P1、抗P2および抗P6抗血清でプローブした。結果は図7〜9および7に要約する。P1の免疫優勢直線性B細胞エピトープは、Hib MinnA株の成句P1タンパクのアミノ酸配列39−64、103−137、165−193、248−283、307−331、400−437および179−218に相当するペプチド配列の範囲内に位置していることが明らかとなった(下表1参照)。免疫優勢B細胞エピトープを含むP2ペプチドは、Hib MinnA株の成熟P2タンパクの残基53−81、148−174、241−265および314−342として同定した(下表2参照)。同様に、免疫優勢B細胞エピトープを含むP6ペプチドは、Hib MinnA株の成熟P6タンパクの残基73−96、90−114および109−134であった(下表3参照)(図10〜12)。興味あることに3種類のヒト回復期血清も、上記のP1およびP2免疫優勢エピトープと強く反応した(図13および14)。さらに、株特異的P1防御性B細胞エピトープは、P1タンパクの残基165−193に相当する領域にマップした。これらの結果は、上記のB細胞エピトープが生物液体中の抗Hi抗体の有無を検出するための診断キットにおける標的抗原として使用できることを示している。
【0065】
合成ペプチドを用いたHi OMP P1、P2およびP6の免疫優勢T細胞エピトープの同定および特性
Hib OMP特異性T細胞エピトープは、天然OMPで免疫を与えた各種系統のマウスから得たP1、P2およびP6ペプチドならびにT細胞培養株を用いて測定した。重複P1ペプチド(13種類)、P2ペプチド(17種類)およびP6ペプチド(7種類)に対するOMP特異性T細胞培養株のリンパ球増殖反応は、実施例19に記載する従来の増殖検定法を用いて測定した。結果(図15〜20、下表7)から、ある種の合成ペプチドのみが増殖反応を誘発し、T細胞エピトープの識別はMHCにより制限を受けることが認められた。P1の残基39−64、226−253、339−370および400−437、P2の残基125−150、193−219、219−244および241−264、P6の残基19−41、35−58、73−96および109−134は、適当なマウスMHCコンテキストが存在する場合、それぞれ相当するOMP特異性マウスT細胞培養株に対して高い刺激を示した。したがって、これら免疫優勢T細胞エピトープは、それらの免疫原性を向上させるために、PRPかつ/またはOMP B細胞エピトープの自己由来担体として使用することができる。
【0066】
Hib OMPペプチドの免疫原性
合成OMPペプチドがワクチンとして使用できるか否かを調べるために、遊離のペプチドおよびペプチドKLH抱合体について、それぞれ免疫原性を検定した。ウサギの抗ペプチド抗血清を用い、免疫ペプチドおよびそれらの親ペプチドとの反応性をELISAおよび免疫ブロットによって測定した。下表8に示すように、HIBP1−8およびHIBP1−8−KLH抱合体を除く全ての抗P1ペプチド抗血清が、ELISAでそれぞれ相当する免疫ペプチドに対して特異的であることが認められた。遊離のペプチドにより高力価のペプチド特異性IgG抗体が誘導されたことから、ペプチドは機能Tヘルパー決定因子とB細胞エピトープとからなっていると考えられる。さらに、使用した全ての検定で抗HIBP1−4、抗HIBP1−5、抗HIBP1−7、抗HIPB1−9、抗HIBP1−10、抗HIBP1−11および抗HIBP1−14抗血清がP1を識別したことから、これらの領域は抗原性を有し、抗体と反応できるように遊離の状態にあることを示している。これらのペプチドはウサギにおける強力なIgG抗体反応によって誘導されたタンパクTヘルパー決定因子およびペプチドKLH抱合体を含んでいることから、これらはワクチン調製物中で抗原として作用することは明らかである。
【0067】
Hib P1ペプチド特異性抗血清がインフルエンザ菌のいずれの型にも属さない株の天然P1と交差反応を示すか否かを測定することは興味のあることであった。HIBP1−1、HIBP1−3、HIBP1−5、HIBP1−6、HIBP1−7、HIPB1−9、抗HIBP1−12およびHIBP1−13合成ペプチドに対するウサギの抗血清は、分類可能およびいずれの型にも属さない分離株からのP1タンパクを識別した。これらの結果は、成熟P1タンパクの残基1−29、39−64、103−137、189−218、226−253、248−283、307−331および499−437に相当するペプチドが、インフルエンザ菌の分類可能およびいずれの型にも属さない株に高度に保持されているエピトープを含んでいることを示している。
【0068】
P2ペプチドKLH抱合体に対するウサギの抗血清について、天然P2に対する反応性をP2特異性ELISAおよび免疫ブロット分析により検定した。HIBP2−26−KLHおよびOMP2−13−KLH抱合体を除くすべてのペプチド特異性抗血清が免疫ブロットでP2を識別したが、Porin−1、OMP2−5、7、8、10、12、CHIBP2ペプチドKLH抱合体のみが、P2特異性ELISAで天然P2と交差反応を示す抗体を誘導することが認められた(下表9)。フロイントの完全アジュバントに乳化させた非抱合体ペプチドは、免疫ブロットでPorin−1およびHIBP2−26を除き、全てきわめて強力なP2に対するペプチド特異性抗体反応を誘導した(下表9)。さらに、非抱合体ペプチドOMP2−4、8、10、11、12および13に対する抗血清は、P2特異性ELISAで精製P2と強く反応した。これらのデータは、これらのペプチドが強い機能性Tヘルパー細胞エピトープと免疫原性B細胞エピトープを含んでいることを暗示している。さらに、3種類のいずれの型にも属さないん分離株SB30、SB32およびSB33から精製したP2を、免疫ブロットの標的抗原として用いた。ウサギの抗Porin−1O、MP2−5、8、10、11、12および13抗血清は3種リーチング全ての株からのP2と強く反応した。これらの結果は、残基1−19、125−150、183−219、241−265、263−289、285−306および302−319に相当するペプチドはインフルエンザ菌の分類可能およびいずれの型にも属さない株に保存されているエピトープを含んでいることを暗示している。
【0069】
P6特異性ELISAおよび免疫ブロット分析を用いて、P6ペプチドに対するウサギの抗血清のP6に対する反応性を検定した。P6−4に対する抗血清を除くすべてのペプチド特異性抗血清がP6−ELISAで天然P6を識別し、免疫ブロットで分類可能およびいずれの型にも属さないP6と交差反応を示すことが認められた(下表10)。これらの結果は、P6ペプチドが強力な機能性Tヘルパー細胞エピトープと免疫原性B細胞エピトープを含んでいることを暗示している。さらに、これらの結果は、P6タンパクがインフルエンザ菌の分類可能およびいずれの型にも属さない株に保持されていることを暗示している。したがって、保持されているこれらのP1、P2およびP6エピトープは交差反応性(Hiの分類可能およびいずれの型にも属さない株)合成ワクチンの調製に単独または混合して使用することができる。上記のペプチドは、さらに別のワクチンを製造するために、重合化し、または脂質で修飾してリポペプチドとし、または合成PRPにリンクさせて合成糖ペプチドまたはリポ糖ペプチド抱合体として使用することもできる。これらのワクチンは、例えば筋肉内または非経口的に哺乳動物に投与し、または微粒子、カプセルおよび毒素および抗体等の標的分子を用いて粘膜表面に運搬することによって、Hi感染に対する免疫賦与に使用することができる。
【0070】
さらに、P1、P2およびP6から同定した免疫優勢TおよびB細胞エピトープからなり、タンデムにリンクした合成キメラペプチドが、Hi感染に対して強い防御抗体反応を誘導するか否かを測定するため、実験を行なった。アミノ酸配列VKTIGDKRTLTLNTCARTRTTETGKGVKTEKEKSVGVGLRVYF、VKTIGDKNTLTLNTFGDGFYAQGYLETRFVTKASENGSNFGDC、VKTIGDKNTLTLNTCGANYLLAQKREGAKGENKRPNDKAGEV、VKTIGDKRTLTLNTDIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNGC、VKTIGDKRTLTLNTYAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYELC(SEQ ID No:46)、GYLETRFVTKASENGSDFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF、AKGENKRPNDKAGEVFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSFおよびARTRTTETGKGVKTEKFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSFを有するペプチドを合成し、精製し、CFAまたはミョウバンの存在下でウサギに免疫投与した。結果を下表11に要約する。いずれの抗ペプチド抗血清も相当する免疫ペプチドと強く反応したが、キメラペプチドは必ずしも全てが天然OMPに対する抗体を誘導するとは限らなかった。もっとも優れた免疫原はペプチド1P13−2P8および26−113であり、これらのペプチドはミョウバンの存在下で投与した場合、天然P1およびP2タンパクを識別する抗体を誘導した。これらのペプチドはHi株に保持されているエピトープを含んでいるので、追加免疫原として、またはリポペプチドに修飾して、またはワクチンとして合成PRPオリゴマーにリンクさせて使用することができる。これらのワクチンは、例えば筋肉内投与または非経口的経路によって哺乳動物に投与することによって、または微粒子、カプセル、リポソームならびに毒素および抗体等の標的分子を用いて粘膜表面に運搬させることによって、Hi感染に対する免疫を賦与することができる。
【0071】
担体としてPEGを用いたPRPオリゴマーの固相炭水化物合成
図21〜25に概略を示したように、固相/液相合成ときわめて効率的なリンアミド化法を組合せて、合成PRPを調製した。この方法は新規なプロセスであり、固体担体としてポリエチレン グリコール モノメチルエーテル(PEG)を使用する。従来の所定ポアー数のガラス等の担体が約30〜35μmol/gの反応基を持っているのに対して、この固相担体は約200〜500μmol/gの範囲にある多くの化学的反応性の官能基を有している。この合成法では各共役サイクルでわずか化学量論的量の合成PRP反復ユニットを使用するのに対して、従来の固相合成ではモル数で5〜10倍も過剰が使用される。さらに、PEGは反応溶液に可溶性であり、各共役サイクルにおける共役効率は約95〜98%である。サイクルの終点でPEG結合合成PRPをエーテルで沈殿させ、副生物を除去する。合成PRPヘキセマーの場合、最終収率は約70%であった。したがって、本発明に係わる合成プロセスはきわめて速く、コスト効果が高く、営業生産のためにスケールアップする場合にも簡単であるのに対して、液相合成は人件費がかかり、高価であり、時間がかかる。
【0072】
以下に、本合成プロセスをさらに詳細に説明する。オリゴマーの出発物質であるPRP反復ユニットは、以下の式で現される。
【0073】
【化3】

【0074】
ここで、BnおよびDMTは、それぞれベンジルおよびジメチトキシトリチル基である。この反復ユニットを実施例10に記載するようにPEGに共役させ、トリクロロ酢酸(TCA)で脱トリチル化し、ついで別のPRP反復ユニットと共役させて、次式で現されるように長い結合鎖の化合物とする。
【0075】
【化4】

【0076】
得られた化合物を、つぎにTCAで脱トリチル化する。各サイクルで、脱トリチル化した鎖を触媒、望ましくはテトラゾールの存在下で共役させることによって鎖の延長を行なう。各共役工程の終了時に、酸化剤、望ましくはt−ブチル ヒドロパーオキシドを用いて、リンの酸化を行なう。望ましい長さのオリゴマーが得られるまで、この合成サイクル(脱トリチル化、共役、および酸化)を繰り返す。以下の式で現されるチェーンターミネーターを用いて、PRPオリゴマー化を終了する。
【0077】
【化5】

【0078】
ここで、mは望ましくは4〜6の整数であり、MMTはモノメトキシトリチルである。重合化終了後、望ましくはアンモロリーシスによって、得られたPEG保持オリゴマー(本発明の目的の1つである)を固体担体から解離させる。回収される物質は、次式によって現される。
【0079】
【化6】

【0080】
ここで、nは望ましくは3〜20の整数、mは望ましくは4〜6の整数、Bnはベンジル、MMTはモノメトキシトリチルである。この化合物は対イオンを有する。このイオンは、上記のようにアンモニアまたは置換アンモニアであることが望ましい。
【0081】
実施例10に記載するように水/酢酸/t−ブタノールの存在下で、活性炭にコーチングしたパラジウムによって水素化して、側鎖を保護している置換基を除去する。得られたオリゴマーを常法、除ましくはゲルおよび陰イオン交換クロマトグラフィーの組合せによって精製してもよい。
【0082】
上記のように、重合化終了前の最後の段階で化合物X6を共役させることによって(図23〜25)、合成PRPオリゴマーを変換し、以下の式で現される化学反応性官能基を持たせるのが容易となる。
【0083】
【化7】

【0084】
ここで、nは望ましくは3〜20の整数であり、Rは−CH2−(CH2)m−X(ただし、mは望ましくは3〜5の整数、Xは−CH2NH2、−CH2SH等の化学反応性官能基、またはハロゲン、メタンスルフォニル、トリフルオロメタンスルフォニルまたはトルエンスルフォニル等のアミノ反応基、またはフェニルアジド、ニトロフェニル、ベンジルフェニル等の光励起性反応基である)で現されるリンカーフラグメントである。
【0085】
官能基を有する化合物は、本発明における最も好ましい実施例においては、下記の式で現される抱合体を形成している。
【0086】
【化8】

【0087】
ここで、nは望ましくは3〜20の整数、mは望ましくは3〜5の整数、R'は−(CH2−Y−担体)(ただし、Yはリンカー分子であり、m−マレイミジベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミドであってもよく、担体はHiペプチドまたはそのMAP系)である。抱合体は対イオンを伴っている。その対イオンは、図にしめしたようにNa+、であることが望ましい。
【0088】
合成PRPの調製法には多くの方法があることは明らかである。これらの公知の技術、例えばヨーロッパ特許公報0 320 942(参考文献28)および0 276 516(参考文献27)、ならびに本発明に関連して使用される技術は、本発明の範囲に含まれる。
【0089】
合成PRPオリゴマーとTヘルパー細胞エピトープペプチドの抱合化および配糖体の免疫特性
本発明にしたがって利用されるペプチドは、若い哺乳動物に投与したとき安全で、免疫学的に有効なT細胞エピトープ、例えば非−1 画タンパクp24からのヒトT細胞エピトープ、P24Eとして利用できるあらゆるペプチドを含む。特定の実施例では、Hibの外膜タンパクからのペプチドを用い、その抱合化の技術は実施例11および13に詳しく記載する。抗PRP IgG抗体反応を誘導するに必要な最低反復ユニット数を測定するために、合成PRPオリゴマー(二量体および三量体)を破傷風トキソイドに共役させ、ミョウバンの存在下で配糖体をウサギに注射した。図26に示した結果から、免疫を誘導するためには合成PRPオリゴマーが少なくとも3反復単位必要であると思われる。
【0090】
本発明にしたがって、完全合成PRPペプチド抱合体ワクチンを調製した。すなわち、十分に特性の明らかな合成T細胞エピトープ、例えばHib特異性保護エピトープと少なくとも1つの機能性Tヘルパー細胞エピトープを有するHIBP1−4ペプチド(P1タンパクの残基165−193)に、ペプチドのN末端またはC末端のいずれかに附加したシステインを介して合成PRPオリゴマーを共役させた。
【0091】
効果的な合成PRPペプチド抱合体ワクチンを調製するために、炭水化物抗原の免疫原性に影響すると思われるいくつかの要因を注意深く検査する必要がある。これらの要因は、(i)オリゴ糖類の側鎖の長さ、(ii)T細胞エピトープに対する糖の抱合部位、(iii)ペプチド上の炭水化物抗原の密度、(iv)配糖体の安定性に影響する抱合化条件、(v)抗原賦与および処理を最適化するために、炭水化物部分と担体ペプチドとの間にリンカーまたはスペサーが必要かどうか等である。最後に、1対のペプチド、すなわち、それぞれC末端(HIBP1−4:SEQ ID No:51)およびN末端(CHIBP1−4:SEQ ID No:52)に附加した追加システイン残基のみが異なるHIBP1−4およびCHIBP1−4(図1)を合成し、精製し、T細胞エピトープとして使用して、T細胞エピトープに対する糖の配位が構成物の免疫原性に及ぼす影響を調べた。炭水化物抗原として、合成PRP三量体を用いた。2種類のPRPペプチド抱合体(PRP−CHIBP1−4およびHIBP1−4−PRP)を調製し、アルムの存在下でウサギに注射した。3回免疫投与したのち、ウサギの抗血清の抗PRPおよび抗ペプチドIgG抗体力価を検定した。いずれの抱合体も強い抗ペプチドおよび抗P1抗体反応を誘導したが、合成HIBP1−4−PRPのみが抗PRP IgG抗体反応を誘導した。これらの結果は、T細胞エピトープに対する糖の配位が、炭水化物抗原に対する宿主の免疫反応に著しい影響を及ぼすことを暗示している。
【0092】
機能性T細胞エピトープを含む全てのペプチドが免疫系に合成PRPオリゴマーを効果的に賦与するか否かを検討するため、機能性T細胞エピトープを有することが知られている別のペプチド2種類(COMP2−8:SEQ ID No:53およびP24EC:SEQ ID No:56)を合成PRP三量体と抱合体を形成させた。配糖体をミョウバンに吸収させ、ウサギに免疫投与した。結果を下表12に要約する。両配糖体(COMP2−8−PRPおよびP24EC−PRP)とも、抗PRP IgG抗体反応を誘導した。合成配糖体ワクチンの免疫原性に対する炭水化物密度の影響を測定するために、合成PRP二量体と8側鎖OMP2−8ペプチド(P2タンパクの残基193−219)(図1:SEQ ID No:54)を含む多抗原性ペプチド系(MAP)を抱合化させた。抱合体化のために9つのシステイン残基が用意されていたにもかかわらず、MAP1分子中にわずか5分子のPRP三量体が共役結合しているに過ぎなかった。しかし、50μgの合成配糖体をミョウバンの存在下で3回注射すると、2匹のウサギとも強い抗PRP IgG抗体反応を獲得した。抗PRP IgG抗体力価は、直線性ペプチドPRP抱合体と比較して約4倍も高かった(下表12)。さらに、抗ペプチドおよび抗P2抗体反応は、直線性ペプチドPRP抱合体に比較して1〜2桁高かった。さらに図27に示した結果を分析すると、Hib MAPと合成PRPオリゴマーの抱合体はワクチンとして優れ、ジフテリア トキソイドまたはP1またはP2タンパクと共役した天然PRPとほぼ同等の高い抗PRP IgG抗体力価を誘導することが認められた。
【0093】
炭水化物反復ユニットの長さが配糖体中の炭水化物抗原の免疫原性に影響するか否かを調べるため、合成PRPの二量体、三量体、五量体、六量体および天然PRP(分子量30kDa)をそれぞれ直線性ペプチドHIBP1−4およびOMP2−8 MAPのいずれかと共役させた。驚くべきことに、天然PRPと抱合体を形成させたペプチドは両方とも抗PRP IgG抗体反応を誘導しなかった。それに対して、直線性ペプチドHIBP1−4と抱合体を形成させたPRPの五量体および六量体とも強く、一定した抗PRP IgG抗体反応を誘導した(図28)。合成PRP六量体と抱合体を形成させたOMP2−8 MAPも高い免疫原性を示した。
【0094】
合成グリコペプチド抱合技術の利用
本発明の選択実施例において、配糖体技術は一般的に病原性外膜性バクテリアに対する抱合ワクチンの製造に利用することができる。このように、本発明の配糖体技術は、インフルエンザ、肺炎球菌、大腸菌、髄膜炎菌、チフス菌、ミュータンス連鎖球菌、クリプトコッカス、ネオフォルマンス、クレブシェラ、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌を含む細菌により表現される保護多糖類による感染に対して防御作用を表すワクチンに利用することができる。
【0095】
特定の実施例において、本合成配糖体技術はタンパクまたはオリゴ糖類に対する抗体を誘導するワクチンの製造に利用することができる。このようなワクチンは、治療剤または生物活性物質と共約させて、例えば腫瘍細胞に対する免疫誘導、または抗腫瘍抗体の誘導に用することができる。
【0096】
本発明に係わる方法の応用は当該分野の専門家にとっては容易に理解できる。本発明の製品の例およびその製造法および利用を、以下の実施例で説明する。
【0097】
上記のペプチドのあらゆる変異体、または機能的に同等な変異体は、本発明の範囲に含まれる。上記の"変異"または"機能的に同等な変異"という用語は、その程度は問わず、インフルエンザ菌分離株のP1、P2およびP6ペプチドと同様に作用する限り、ペプチドがアミノ酸残基の1つまたはそれ以上を付加、切除、または誘導体化によって修飾された場合を意味し、その場合本発明の範囲内に含まれるものである。
【0098】
これらのペプチド(表1〜3および11)および同様なペプチドのアミノ酸配列が明らかになると、これらのペプチドは市販のペプチド合成装置、例えばアプライド・バイオシステムス モデル430A等を用いるか、DNA組換え技術によって容易に合成することができる。合成PRP二量体は免疫原性を有さず、すでに報告されている結果と一致した。
上記の開示は、本発明を一般的に記載したものである。さらに完全な理解は、以下の実施例を参照することによって得られる。これらの実施例は、説明のためにのみ記載したもので、本発明を限定するためのものではない。態様の変更、相当するものとの置換は容易に推定できるものであり、本発明の範囲と考えられる。ここでは特定の用語を使用したが、このような用語は記述を目的としたものであり、制限を目的としたものではない。この開示では免疫学的方法が明瞭に記載されていないかも知れないが、当該技術分野の専門家には自明の事実である。
【実施例】
【0099】
実施例1
2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−[2,5−ジ−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル]−5−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−D−リビトール(化合物14、図23〜25)の調製
室温において、すでに記載されている(参考文献33〜36)ように12の中間体を経由してD−リボースから調製した2,5−ジ−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−D−リビトール(化合物13、図23〜25)10.2g、ピリジン(3.4ml)および4−ジメチルアミノピリジン(860mg)を含むジクロロメタン溶液200mlに4,4'−ジメトキシトリチルクロライド(6.2g)を添加した。18〜24時間撹拌したのち、反応混合液を重炭酸ナトリウム飽和液に注いだ。水層をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、溶媒を留去した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、NMRによってその構造を確認した。
【0100】
実施例2
2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−O−[2,5−ジ−O−ベンジル−3−O−サクシニル−β−D−リボフラノシル]−5−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−D−リビトール(化合物16、図21及び22)の調製
実施例1から得られた生成物1.34gを含む乾燥ピリジン溶液(4.5ml)に、無水コハク酸(390mg)と4−ジメチルアミノピリジン(240mg)を添加した。反応混合液を50〜80℃の水浴中で3〜10時間撹拌した。水(2.0ml)を添加したのち、反応混合液をロータリーエバポレーターで濃縮した。ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン(95:5:2.5,v/v/v)でシリカゲルクロマトグラフィーを行なってトリエチルアミン塩を得て、その構造をNMRで確認した。
【0101】
実施例3
リボシルリビトール ホスフォロアミデートの調製
化合物16の溶液(乾燥ジオキサン5ml中1.2g)に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.4ml)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフォロアミデート(640μl)を添加した。1〜3時間撹拌したのち、さらにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(430μl)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフォロアミデート(250μl)を添加した。反応混合液をジクロロメタンで3倍に希釈し、等量の1M重炭酸トリエチルアンモニウム液、ブライン液で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。生成物をシリカゲルで精製し、その構造をNMRで確認した。
【0102】
実施例4
1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−6−シアノ−ヘキサン(化合物X2,図23〜25)の調製
ジメチルスルフォキシドに溶解した青酸ナトリウム(1.2g)を90℃で30分間加熱した。すでに報告されている方法(参考文献37)にしたがって調製した固体の1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−6−ブロモヘキサン(5.8g,化合物X1)を青酸ナトリウム溶液に添加した。120〜130℃で20〜180分間加熱したのち、反応混合液を氷冷水中に注ぎ、水層をエーテルで抽出し、ブライン液で洗浄し、乾燥したのち濃縮した。
(vii)Hi合成PRPペプチド抱合体ワクチンの利用
生成物を0.5トール、107℃で蒸留して無色油状物を得た。高解像質量分析で、Cl2H24ONSiの理論値226.1627に対して実測値226.1624が得られた。
【0103】
実施例5
7−アミノ−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−ヘプタン(化合物X3、図23〜25)の調製 水酸化リチウムアルミニウム(600mg、アルドリチ)のエーテル溶液(50ml)に、実施例4で得られた生成物のエーテル溶液(50ml)を滴下した。1−3時間後に、反応混合液を水に注ぎ、30分間撹拌した。水酸化アルミニウムの沈殿を濾過して除き、水層をエーテルで3回抽出した。エーテル抽出液をブライン液で洗い、乾燥して、濃縮した。粗生成物を0.25トール、82℃で蒸留した。高解像質量分析で、Cl3H31ONSiの理論値245.2175に対して実測値245.2159が得られた。
【0104】
実施例6
(N−モノメトキシトリチル)−7−アミノ−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−ヘプタン(化合物X4、図23〜25)の調製
実施例5で得られた生成物(2.3g)のジクロロメタン溶液(40ml)に、モノ、メトキシトリチルクロライド(3.7g、アルドリッチ)を添加した。室温で10〜24時間撹拌したのち、溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液中に注いだ。水層をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液をブライン液で洗い、乾燥した。溶液を濃縮し、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。精製した製品を高解像質量分析し、C33H47O2NSiの理論値517.3376に対して実測値517.3355が得られた。
【0105】
実施例7
N−モノメトキシトリチル−7−アミノヘプタノール(化合物X5、図14)の調製
テトラブチルアンモニウムフルオライドの1M溶液(25.8ml)を化合物X4(4.3)のテトラヒドロフラン溶液(46ml)に徐々に滴下した。室温で4〜18時間撹拌したのち、溶液を100mlの水に注ぎ、さらに30分間撹拌した。有機層をブライン液で抽出し、乾燥した。粗生成物をシリカゲルで精製した。精製した製品を高解像質量分析し、C27H33O2Nの理論値403.2511に対して実測値403.2514が得られた。
【0106】
実施例8
N−モノメトキシトリチル−7−アミノヘプチル(2−シアノエチル)−N,N−ジエチルホスフォロアミデート(化合物X6、図23〜25)の調製
化合物X5(240mg)のジオキサン溶液(10ml)に、ジイソプロピルエチルアミン(840μl)と2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホフォロアミデート(270μl)を添加した。1時間撹拌したのち、反応混合液をジクロロメタンで希釈し、重炭酸トリエチルアンモニウムの1M溶液で洗い、さらにブライン液で洗った。乾燥し、濃縮したのち、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。生成物を高解像質量分析した。C36H50N3O3Pの理論値603.3620に対して実測値603.3620が得られた。生成物の構造は、さらにNMR分析で確認した。
【0107】
実施例9
サクシニルリボシルリビトール−PEG(図23〜25)の調製
化合物16(1.8g)のジクロロメタン溶液(18ml)にN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(295mg)とジシクロヘキシルカルボジイミド(450mg)を添加した。反応混合液を室温で撹拌した。2〜8時間後に、ジシクロヘキシルウレアを濾過して除いた。濾液、N−メチルイミダゾール(522μl)およびジイソプロピルエチルアミン(600μl)をポリエチレン グリコール モノメチルエーテル、PEG(平均モル重量5000、2.1g、フルカ)に加えた。混合物を、アルゴン下、室温で一夜撹拌した。機能化したPEGを冷エーテルで沈殿させ、濾過した。付加容量はゲイトら(Gait et al.)(参考文献36)の方法にしたがって分光分析で測定したところ、約200μmol/gであった。室温、1〜3時間で、遊離のヒドロキシル基を20%無水酢酸/ピリジンのジクロロメタン溶液で被覆した。ついで、担体を冷エーテルで沈殿させ、濾過し、冷エーテルで洗浄した。
【0108】
実施例10
可溶性重合担体(図21及び22)を用いた合成PRPの調製
1gのPEG−PRP−DMT(実施例9の生成物)をピリジンとともに2回蒸留し、アルゴン下でアセトニトリルに溶解した。PRPオリゴ糖を4段階のサイクルで重合させた。各段階で、まず機能化PEGを冷エーテルで沈殿させて副生物を除去し、ジクロロメタン/エーテル中で再結晶させた。合成の第1段階で、クロロフォルム/メタノール酸中3%トルエンスルフォン酸を用いてジメトキシトリチル基を除去し、ついでテトラゾールの存在下で、実施例9で得られたリボシルリビトールホスフォロアミデートと共役させた(180分間)。共役効率は95%であった。70%t−ブチルヒドロパーオキサイド溶液を用いて酸化(工程3)を行い(120分間)、最後に20%無水酢酸/ピリジンのジクロロメタン溶液で被覆した(工程4)。2サイクルの合成を行い、ついで実施例8から得たスペーサーのホスフォロアミデート生成物を共役させる。次に、樹脂の濃アンモニアテトラヒドロフラン水溶液とともに、50〜100℃で17〜24時間加熱した。混合物を濾過してPEGを除去し、洗浄し、溶媒を留去した。加圧水素化装置を用い、t−ブタノール/水/酢酸(4:3:1)中の10%Pd/活性炭の存在下、40psiで生成物の水素分解を行い、濾過して均一な生成物を得た。生成物を凍結乾燥し、0.01Hの重炭酸トリエチルアンモニウム、pH 7、中のセファデックスG−25カラムを用いたゲル濾過を組合せて精製し、水を用いたセファデックスC−25でイオン交換クロマトグラフィーを行なって精製した。適当な画分を凍結乾燥し、固体を得、その構造をNMRで分析した。リボシルリビトールホスフェート三量体のスペクトルを測定し、フーガーホウトら(Hoogerhout et al.)によって報告されているもの[ジャーナル カーボハイドレート ケミストリー(J.Carbohydr.Chem.)7.399,1988)と同じであることを認めた。
【0109】
実施例11
合成(PRP)3のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミドによる修飾
テトラヒドロフラン(1ml)に溶解したm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミド(20mg;63.6μmol)溶液を、0.1Mリン酸緩衝液(1ml)に溶解した合成(PRP)3溶液(5.2mg;4.3μmol)に添加した。溶液をアルゴン下、室温で30分間撹拌し、反応混合液をエーテル(4x5ml)で抽出し、得られた水層を0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸緩衝液、pH 7.2、で平衡させたセファデックスG−25(ファーマシア)カラム(2x30cm)に載せ、同じ緩衝液で溶出した。溶出液は254nmで分光光学的に追跡した。最初に溶出したピークを凍結乾燥した。(PRP)3中に取り込まれたマレイミド基の量を改良エルマン(Ellman)法(参考文献39)によって測定したところ、取込率は90%であった。
【0110】
実施例12
ペプチドの合成
ABI 430Aペプチド合成装置を用い、製造業者によって記載されている最適t−Boc条件下で、OMP P1、P2およびP6(表1〜3)からペプチドを合成し、フ化水素(HF)により樹脂から解裂させた。バイダックC4セミプレパラティブカラム(1x30cm)および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中15〜55%アセトニトリルグラジエントを用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で、流速2ml/分で40分間展開して、生成物を精製した。生化学的および免疫学的試験に用いた合成ペプチドは、分析用HPLCで測定した純度がすべて95%以上であった。ウォーターズのピコータグシステムで測定したアミノ酸の組成は、理論値とよく一致した。合成MAP(OMP2−8)は、タムら(Tam et al.)によって記載されている方法(参考文献40)にしたがって、t−Boc固相ペプチド合成法を用いてマヌアルで合成いた。PRP抱合体の形成のため、ペプチドのNおよびC末端にシステイン残基を付加した。MAPペプチドは、前記のようにRP−HPLCで精製した。
【0111】
実施例13
完全合成ペプチド−(PRP)3抱合体の調製
各合成ペプチド(OMP2−8)およびHIBP1−4の1〜2mgを0.5mlの脱ガス水に溶解し、脱ガス水に溶解したMBS−(PRP)3(1.6mg)を0.8ml添加した。得られた混合液をアルゴン下の室温で一夜撹拌した。不溶性の沈殿を遠心分離によって除去し、上清を0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸緩衝液、pH 7.2、で平衡させたセファデックスG−50カラム(2x30cm)でゲル濾過クロマトグラフィーにかけ、過剰のMBS−(PRP)3を除去した。合成ペプチド(PRP)3抱合体を集め、逆相HPLC、オルシノール検定およびアミノ酸分析により分析した。PRPに対するペプチドのモル比は、HIBP1−4およびMAPペプチド抱合体で、それぞれ約1:1および1:5であった。ついで、合成ペプチドPRP抱合体をアルムに吸着させ、免疫原性試験に供した。
【0112】
実施例14
天然PRP−BSA抱合体の調製
過ヨード酸水溶液(4)を処理して天然PRPから調製した過ヨード酸酸化PRP(0.1Mリン酸緩衝液、pH 6.0、1ml中25mg)溶液0.5mlを、0.2Mリン酸緩衝液、pH 8.0、0.5mlに溶解した牛血清アルブミン(BSA)(1.32mg:0,02μmol)に添加し、ついでナトリウム シアノボロヒドライド(14μg;0.22μmol;BSAに対して10相当量)を添加した。37℃で5日間培養したのち、反応混合液を0.1Mリン酸緩衝液、pH 7.5、(4x1L)に対して透析し、得られた溶液を0.2Mリン酸緩衝液、pH 7.2、で平衡させた分析用スーパロース12カラム(15x300mm、ファーマシア)に載せ、同じ緩衝液で溶出した。230nmにおける吸光度で画分を測定した。主要なピークをプールし、セントリプレップ30(ピアース)で2.2mlに濃縮した。タンパクはバイオラッドタンパク検定装置で定量したところ、300μg/mlであった。PRP誘導体化は、オルシノール検定で確認した。
【0113】
実施例15
抗ペプチドおよび抗OMP抗血清の調製
フロイントの完全アジュバントに乳化させた天然P1、P2またはP6または各ペプチド(5〜100μg)をウサギ、マウス(Balb/C)およびモルモットに筋肉内注射して免疫投与し、2週間間隔で2回追加免疫(同じ免疫原の半量をフロイントのアジュバントとともに)投与した。抗血清を集め、上記のように保存した。
【0114】
実施例16
抗PRP抗血清の調製
AlPO4 3mg/mlと混合した各PRP担体抱合体(PRP相当量で5〜50μg)をウサギの筋肉内に免疫投与し、2週間間隔で2回追加免疫(同じ免疫原の半量)投与した。最初の注射から2週間ごとに抗血清を集め、56℃で加熱不活性化し、−20℃に保存した。
【0115】
実施例17
P1、P2、P6およびペプチド特異性ELISA
精製OMPの200ngまたは各ペプチドの500ngをコーティング用緩衝液(15mMのNa2CO3および35mMのNaHCO3、pH 9.6)50μLに溶解し、室温で16時間マイクロタイター プレート ウエル(ヌンク−インミュノプレート、ヌンク、デンマーク)にコーティングした。ついで、これらのプレートを、0.1%(w/v)BSAリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で室温で30分間ブロックした。連続希釈した抗血清をウエルに添加し、室温で1時間培養した。抗血清を除去したのち、プレートを0.1%(w/v)ツイン−20および0.1%(w/v)BSAを含むPBSで5回洗浄した。ホースラディシュパーオキシダーゼ(ジャクソン インミュノリサーチ ラブ、ペンシルバニア)に共役させたヤギ抗ウサギ、モルモット、マウスまたはヒトIgG抗体からのF(ab')2を洗浄用緩衝液で希釈(1/8,000)し、マイクロタイタープレートに添加した。室温で1時間培養したのち、プレートを洗浄用緩衝液で5回洗浄した。ついで、基質としてテトラメチルベンジリジン(TMB)/H2O2(ADI、トロント)をプレートに添加して、反応させた。1NのH2SO4で反応を止め、ティトラテックマルティスキャンII(フロー ラブス、バージニア)を用い、450nmで吸光度を測定した。2種類の関連のない百日咳毒素ペプチドNAD−S1(19残基)およびS3(123−154)(32残基)をペプチド特異性ELISAの陰性対照として加えた。検定は3回行い、抗血清の反応性力価は常に免疫投与前の血清値の2倍以上の吸光度を示す希釈率とした。
【0116】
実施例18
抗PRP抗体の測定
精製PRP−BSAの200ngをコーティング用緩衝液(15mMのNa2CO3および35mMのNaHCO3、pH 9.6)200μLに溶解し、室温で16時間マイクロタイター プレート ウエル(ヌンク−インミュノプレート、ヌンク、デンマーク)にコーティングした。ついで、これらのプレートを、0.1%(w/v)BSAリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で室温で30分間ブロックした。PRP担体抱合体に対する抗血清を連続希釈し、ウエルに添加し、室温で1時間培養した。抗血清を除去したのち、プレートを0.1%(w/v)ツイン−20および0.1%(w/v)BSAを含むPBSで5回洗浄した。ホースラディシュパーオキシダーゼ(ジャクソン インミュノリサーチ ラブ、ペンシルバニア)に共役させたヤギ抗ウサギ、モルモット、マウスまたはヒトIgG抗体からのF(ab')2を洗浄用緩衝液で希釈(1/8,000)し、マイクロタイタープレートに添加した。室温で1時間培養したのち、プレートを洗浄用緩衝液で5回洗浄した。ついで、基質としてテトラメチルベンジリジン(TMB)/H2O2(ADI、トロント)をプレートに添加して、反応させた。1NのH2SO4で反応を止め、ティトラテックマルティスキャンII(フロー ラブス、バージニア)を用い、450nmで吸光度を測定した。標準抗PRP抗血清を陽性対照として加えた。検定は3回行い、抗血清の反応性力価は常に免疫投与前の血清値の2倍以上の吸光度を示す希釈率とした。
【0117】
実施例19
合成T細胞エピトープの増殖検定
各OMP(P1、P2またはP6)の5μgをBalb/c、C57B1/6およびA/J系マウスにプライミングすることによって、T細胞エピトープのマッピングを行なった。3週間後に脾臓を摘出し、10%の熱不活性化仔牛血清(ギブコ)、2mM L−グルタミン(フロー ラブ)、100U/mlのペニシリン(フロー ラブ)、100μg/mlのストレプトマイシン(フロー ラブ)、10単位/mlのrIL−2および50μMの2−メルカプトエタノール(シグマ)を添加いたPRMI1640(フロー ラブ)で脾臓細胞を5〜7日間培養した。標準的in vitro検定法(参考文献41)デ、プライムした脾臓細胞のOMPペプチドに対する増殖反応を測定した。簡単に述べると、5x105の放射線照射(1700ラド)した新鮮な遺伝子的同質脾臓細胞を抗原運搬細胞(APC)源として、ペプチドのモル濃度を変えて(IL−2を含まない培地に0,03〜3μM)、106個の脾臓細胞を96ウエルのミクロタイタープレート中で培養した。プレートは、37℃に保った5%CO2/空気の加湿インキュベーター中に40時間置いた。培養開始16時間後に、各ウエルに0.5μCiの[3H]−Tdr(5Ci/mmol,NEN)を添加した。細胞をガラス繊維フィルター上に採取し、シンチレーションカウンター(ベックマン)で細胞DNA中への3H−チミジンの取込みを測定した。結果は、各ペプチド濃度について3回測定した平均で表示した。標準偏差は、常に15%以下とした。3H−チミジンの取込みが無関係のペプチドまたは培地の値の3倍以上であった場合、増殖反応は陽性と判定した。
【0118】
実施例20
免疫ブロット分析
ペプチドおよびPRP担体抱合体に対する抗血清の免疫特異性は、すでに報告されている方法(参考文献42)にしたがって、免疫ブロット分析で測定した。
文献リスト
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
【表13】

【0131】
【表14】

【0132】
【表15】

【0133】
【表16】

【0134】
【表17】

【0135】
【表18】

【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は合成PRPペプチド接合体試験に使用したペプチド担体のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P1の推定構造を示す図である。
【図3】従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P1の推定構造を示す図である。
【図4】従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P2、6の推定構造を示す図である。
【図5】従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P2、6の推定構造を示す図である。
【図6】従来の構造分析アルゴリズムによるOMP P2、6の推定構造を示す図である。
【図7】Hib OMP P1の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【図8】Hib OMP P2の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【図9】Hib OMP P6の免疫優勢BおよびT細胞エピトープの模式図である。
【図10】モルモット、ラットおよびウサギの抗P6抗血清とP6ペプチドのELISA反応性を示す。
【図11】モルモット、ラットおよびウサギの抗P6抗血清とP6ペプチドのELISA反応性を示す図である。
【図12】モルモット、ラットおよびウサギの抗P6抗血清とP6ペプチドのELISA反応性を示す図である。
【図13】3種類のヒト回復期血清とP1ペプチドのELISA反応性を示す図である。
【図14】3種類のヒト回復期血清とP2ペプチドのELISA反応性を示す図である。
【図15】免疫優勢T細胞エピトープを有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図16】免疫優勢T細胞エピトープを有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図17】免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図18】免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図19】免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図20】免疫優勢T細胞エピトープ(星印で示した)を有するP1ペプチドに対するP1特異性マウスT細胞培養株の増殖反応を示す図である。
【図21】固体担体としてPEGを用いたPRP合成の1フローチャートを示す図である。
【図22】固体担体としてPEGを用いたPRP合成の1フローチャートを示す図である。
【図23】PRP中間体の合成フローチャートを示す図である。
【図24】PRP中間体の合成フローチャートを示す図である。
【図25】PRP中間体の合成フローチャートを示す図である。
【図26】破傷風トキソイドと抱合体を形成させた合成PRP二量体および三量体に対するウサギの免疫反応を示す図である。
【図27】各種PRP担体抱合体に対するウサギの免疫反応を示す図である。
【図28】HibPi−4およびOMPのMAPの各種合成ペンタマーおよびヘキサマーに対するウサギの免疫反応を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリボシルリビトール リン酸(PRP)オリゴマーを用いた免疫抱合体の製造方法であって、
ポリリボシルリビトール リン酸(PRP)オリゴマーを製造する工程と、
ポリリボシルリビトール リン酸(PRP)オリゴマーに少なくとも1つのT細胞エピトープを含む合成ペプチドを結合させて免疫抱合体を得る工程と
を有することを特徴とする免疫抱合体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの合成T細胞エピトープを有する合成ペプチドと、該合成T細胞エピトープにリンクした合成炭化水素抗原からなる免疫原性抱合体の製造方法において、
(1)下記式(1)で示される化合物:
【化1】

(上記式中、R1は第1の保護基であり、R2は第2の保護基である。)
を固体ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PEG)担体に対して結合させて、下記式(2):
【化2】

で示されるPEG担持化合物を形成する工程と、
(2)前記式(2)のPEG担持化合物を溶媒に溶解させる工程と、
(3)前記式(2)のPEG担持化合物から第1の保護基を除去して、脱保護されたPEG担持化合物を得る工程と、
(4)前記脱保護されたPEG担持化合物と下記式(3)の化合物:
【化3】

(R1およびR2は上記式(1)と同様に定義される。)
で表される鎖延長のための反復ユニットを結合させ、該反復ユニットのリン原子の保護基を除去して、PEG担持合成リボシルリビトール リン酸(PRP)を形成する工程と、
(5)前記PEG担持合成PRPを前記溶媒から固体として取り出して、該溶媒中の副生成物と分離する工程と、
(6)前記副生成物から分離したPEG担持合成PRPを、溶媒に溶解させる工程と、
(7)前記(2)〜(6)の工程を所望とする反復ユニット数が前記PEG担持合成PRPオリゴマーに得られるまで繰り返す工程と、
(8)下記式(4):
【化4】

(mは4〜6の整数、R3はPEG担持合成PRP保護オリゴマーをもたらす第3の保護基である。)
で示される鎖延長停止化合物で前記工程(7)を経たPEG担持合成PRPオリゴマーを処理して、PEG担持合成PRP保護オリゴマーを得る工程と、
(9)前記PEG担持合成PRP保護オリゴマーのリン原子から保護基を除去する工程と、
(10)前記リン原子から保護基を除去したPEG担持合成PRP保護オリゴマーを該溶媒から固体として取り出し、下記式(5):
【化5】

(上記式中、mは上記式(4)と同様に定義され、nは3〜20の整数であり、X-は対イオンである。)
で表わされる保護基を有する合成PRPオリゴマーを得る工程と、
(11)前記式(5)の合成PRPオリゴマーからPEG及び保護基を分離し、少なくとも1つの合成T細胞エピトープを有する合成ペプチドを結合して、下記式(6):
【化6】

(上記式中、m及びnは上記式(4)及び(5)と同様に定義され、R’は、前記合成ペプチドからなる部分である。)
に示す免疫原性抱合体を得る工程と、を有し、
前記式(6)における合成ペプチドが、以下の(I)〜(IV):
(I)インフルエンザ菌b型のP1タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列39−64、165−193、189−218、226−253、339−370及び400−437:
39-64:
LFKTAQFSTGGVYIDSRINMNGDVTS(C)
165-193:
YAKAQVERNAGLIADSVKDNQITSALSTQ(C)
189-218:
ALSTQQEFRDLKKYLPSKDKSVVSLQDRA(C)
226-253:
(C)AGVMYQFNEANRIGLAYHSKVDIDFADR
339-370:
LYEKLTLRAGIAYDQAASRHHRSAAIPDTDRT(C)
400-437:
(C)FKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF;
(C)FKEAQQAAGGFITTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF;
(II)インフルエンザ菌b型のP6タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列125−150、193−219、219−244及び241−265:
125-150:
SDYIPTSGNTVGYTFKGIDGLVLGAN(C)
193-219:
DIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNG(C)
219-244:
(C)GVLATLGYRFSDLGLLVSLDSGYAKT
241-265:
YAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYEL(C)
(III)インフルエンザ菌b型のP6タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列19−41、35−38、73−96及び109−134:
19-41:
(C) GYSVADLQQRYNTVYFGFDKYDI
35-58:
GFDKYDITGEYVQILDAHAAYLNA(C)
73-96:
RGTPEYNIALGQRRADAVKGYLAG(C)
109-134:
(C) GTVSYGEEKPAVLGHDEAAYSKNRRAVLAY
(IV)キメラ配列としての以下のアミノ酸配列:
以下のアミノ酸配列:
VKTIGDKRTLTLNTCARTRTTETGKGVKTEKEKSVGVGLRVYF、
VKTIGDKNTLTLNTFGDGFYAQGYLETRFVTKASENGSNFGDC、
VKTIGDKNTLTLNTCGANYLLAQKREGAKGENKRPNDKAGEV、
VKTIGDKRTLTLNTDIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNGC、
VKTIGDKRTLTLNTYAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYELC、
GYLETRFVTKASENGSDFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF、
AKGENKRPNDKAGEVFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF及び
ARTRTTETGKGVKTEKFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF
からなる群から選択されたアミノ酸配列の少なくとも1つからなるか、あるいは
前記合成ペプチドは、下記式(7):
【化7】

で表わされる多価抗原性ペプチドである
ことを特徴とする免疫原性抱合体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの合成T細胞エピトープが、以下の(I)〜(III)からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる合成ペプチドの少なくとも1つからなる請求項1に記載の製造方法。
(I)インフルエンザ菌b型のP1タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列39−64、226−253、339−370及び400−437:
39-64:
LFKTAQFSTGGVYIDSRINMNGDVTS(C)
226-253:
(C)AGVMYQFNEANRIGLAYHSKVDIDFADR
339-370:
LYEKLTLRAGIAYDQAASRHHRSAAIPDTDRT(C)
400-437:
(C)FKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF;
(C)FKEAQQAAGGFITTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF;
(II)インフルエンザ菌b型のP6タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列125−150、193−219、219−244及び241−265:
125-150:
SDYIPTSGNTVGYTFKGIDGLVLGAN(C)
193-219:
DIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNG(C)
219-244:
(C)GVLATLGYRFSDLGLLVSLDSGYAKT
241-265:
YAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYEL(C)
(III)インフルエンザ菌b型のP6タンパクからのエピトープである以下に示すアミノ酸配列19−41、35−38、73−96及び109−134:
19-41:
(C) GYSVADLQQRYNTVYFGFDKYDI
35-58:
GFDKYDITGEYVQILDAHAAYLNA(C)
73-96:
RGTPEYNIALGQRRADAVKGYLAG(C)
109-134:
(C) GTVSYGEEKPAVLGHDEAAYSKNRRAVLAY。
【請求項3】
前記合成T細胞ペプチドが、以下のアミノ酸配列:
VKTIGDKRTLTLNTCARTRTTETGKGVKTEKEKSVGVGLRVYF、
VKTIGDKNTLTLNTFGDGFYAQGYLETRFVTKASENGSNFGDC、
VKTIGDKNTLTLNTCGANYLLAQKREGAKGENKRPNDKAGEV、
VKTIGDKRTLTLNTDIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNGC、
VKTIGDKRTLTLNTYAKTKNYKIKHEKRYFVSPGFQYELC、
GYLETRFVTKASENGSDFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF、
AKGENKRPNDKAGEVFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF及び
ARTRTTETGKGVKTEKFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF、
からなる群から選択された1つのアミノ酸配列からなる合成ペプチドである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの合成T細胞エピトープが、以下のアミノ酸配列:
VKTIGDKRTLTLNTDIVAKIAYGRTNYKYNESDEHKQQLNGC及び
AKGENKRPNDKAGEVFKEVKTIGDKRTLTLNTTANYTSQAHANLYGLNLNYSF
のいずれか一方のアミノ酸配列からなる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記合成ペプチドがリポペプチドである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記リポペプチドが、
CSSYAKAQVERNAGLIADSVKDNQITSALSTQ(C)
のアミノ酸配列を有する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
1及びR3がジメトキシトリチル基であり、R2がベンジル基である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記R’が−(CH2−Y−担体)で構成されている(ここで、担体は前記合成ペプチドであり、Yは二反応基的化合物である)請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記Yが、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシサクシンイミドである請求項8に記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−131642(P2006−131642A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5426(P2006−5426)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【分割の表示】特願2000−197292(P2000−197292)の分割
【原出願日】平成5年2月3日(1993.2.3)
【出願人】(500096994)アヴェンティス パスツール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AVENTIS PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】