説明

合成樹脂容器

【課題】従来の合成樹脂容器と、その耐久性を同じにしつつ、その厚みを減少させた合成樹脂容器を提供する。
【解決手段】リン脂質あるいは脂肪族ポリエステルをベースとした疎水性部位が外側に配置され、親水性部位が内側に配置された高分子材料からなるナノカプセルの合成樹脂添加剤を合成樹脂に混入させた樹脂材料から成形した合成樹脂容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカプセルを配合した合成樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子内に親水性を有する部位と、疎水性を有する部位との両方を備えた構造を有するマイクロカプセル(以下「リボソーム」という)が知られている。この構造は、生体の細胞膜や神経組織の重要な構成成分と構造が類似している。そのため、マイクロカプセル化したリボソームに遺伝子を封入し、治療、研究などに使用されている。また、このマイクロカプセル化したリボソームは、汎用樹脂材料に添加して合成樹脂を形成することにより、このリボソームが結晶の核として汎用樹脂の結晶化を促進させ、合成樹脂の強度を向上させることが知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】[検索]、インターネット(URL; http://www.boron.co.jp/nanocapu/nanocap1.htm)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このようなリボソームを合成樹脂に添加した樹脂材料を主材料として用いて製造された合成樹脂容器であって、従来の合成樹脂容器の強度とほぼ同じに構成した場合に、その容器(口部、肩部、胴部)の肉厚を減少させることができる合成樹脂容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、本発明の合成樹脂容器は、リン脂質あるいは脂肪族ポリエステルをベースとした疎水性部位が外側に配置され、親水性部位が内側に配置された高分子材料からなるナノカプセルの合成樹脂添加剤を合成樹脂に混入させた樹脂材料から成形したことを特徴としている。このような合成樹脂容器として、前記ナノカプセルの径が、30〜70nmであるものが好ましい。また、前記合成樹脂添加剤が、ナノカプセル内に、酸素吸着剤あるいは生分解性を発揮する材料を導入したものであってもよい。
【0005】
このような合成樹脂容器において、その胴部の厚みが0.22〜0.36mmとなるようにブロー成形されたものが好ましい。また、前記樹脂材料から成形される合成樹脂フィルムから成形してもよい。さらに、このような合成樹脂フィルムと金属箔フィルムとの積層シートから造られるラミネートチューブ等にあっては、その胴部の厚みが0.175〜0.28mmであるものが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の合成樹脂容器は、リン脂質あるいは脂肪族ポリエステルをベースとした疎水性部位からなる外層および親水性部位からなる内層を備えた高分子材料のナノカプセルからなる合成樹脂添加剤を合成樹脂に混入させた樹脂材料から成形されるため、合成樹脂内において、合成樹脂添加剤は均一に分散される。これは、合成樹脂添加剤の外側に脂溶性部位が配列されており、それらの部位が主材料の合成樹脂と親和性を有し、ナノサイズのカプセルが凝集しないためである。そして、この均一に分散されたナノカプセルが合成樹脂の結晶の核として作用するため、合成樹脂の結晶化度を高くすることができる。特に、そのナノカプセルの径を30〜70nmとすることによりその結晶化度を高くすることができる。つまり、合成樹脂添加剤を用いないで成形される従来の樹脂容器に比べ、厚さを薄くすることができる。また、合成樹脂添加剤を合成樹脂に混入するだけでよいため、既存の設備を用いることができる。
【0007】
このような合成樹脂容器であって、合成樹脂添加剤として酸素吸着剤を備えたナノカプセルを用いる場合、廃棄された合成樹脂容器を燃焼しても、従来の合成樹脂容器に比べ、燃焼ガスである二酸化炭素の発生量を抑えることができる。これは、合成樹脂を燃焼するとき、合成樹脂の炭素原子は、酸素と結合しようとするが、その前に合成樹脂内に分散されている酸素吸着剤が酸素を吸着してしまうためである。また、合成樹脂添加剤として、生分解性を発揮する材料を備えたナノカプセルを用いる場合、合成樹脂も一緒に生分解する。そのため、土に埋めるだけでその廃棄が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の合成樹脂容器を図面に基づいて説明する。図1は本発明の合成樹脂容器の一実施形態を示す側面図、図2aは図1の一部断面側面図である実施例1、図2bは本発明の合成樹脂容器の実施例2を示す一部断面側面図、図3〜図5bは本発明の合成樹脂容器の実施例3〜実施例5を示す図面、図5bは図5aの一部断面側面図である。
【0009】
図1及び図2(a)に示すチューブ容器10は、柔軟性を有するチューブ本体11と、その開口部に螺合されるキャップ12とからなる。チューブ本体11は、胴部13と、その胴部13の下端を平面状に閉鎖する底部14と、その胴部13の上端に形成された肩部15と、雄ねじ16aを備えた頭部16とからなる合成樹脂の一体成形品である。また、キャップ12は、内面に雌ねじを備えている。
【0010】
このチューブ本体11は、主材料である合成樹脂に合成樹脂添加剤を、2〜4%添加した樹脂材料を溶融させパリソンを成形し、ブローエアーで膨らますブロー成形法によって成形される。このチューブ本体11は、実施例1である図2aに示すように、単層の合成樹脂で造られる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が好ましい。
【0011】
また、キャップ12にも主材料である合成樹脂に、合成樹脂添加剤を、2〜4%混入させた樹脂材料を用いてもよい。この場合、この樹脂材料を溶融し、射出成形等によって形成される。このような合成樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0012】
このチューブ本体11及びキャップ12に用いられる合成樹脂添加剤は、リン脂質をベースとした疎水性部位が外側に配列され、親水性部位が内側に配列された高分子材料製のナノカプセルと、そのナノカプセルに包み込まれるようにして導入された酸素吸収剤とか
らなり、その径が30〜70nm、特に40〜60nmのものが適する。この合成樹脂添加剤は、その外側に疎水性部位が配列されており、合成樹脂との親和性を有するため、合成樹脂内において均一に分散され、合成樹脂の結晶の核となり主成分である合成樹脂の結晶を成長させる。又、この合成樹脂添加剤のナノカプセル内にナノサイズの酸素吸収剤を備えているため、生成された合成樹脂を燃焼しても、酸素吸収剤が酸素を吸収し、その主成分の炭素原子と酸素原子との結合を阻止する。
【0013】
このようにして成形された合成樹脂のチューブ本体11は、主材料である合成樹脂の結晶化度が高い。そのため、引張強度の高いものが得られ、厚みを薄くすることができる。また、このチューブ本体11を焼却しても、燃焼ガスである二酸化炭素の発生量が小さく、環境に優しい。しかし、ナノカプセル内に酸素吸収剤は入れなくてもよい。
【0014】
このように、主材料をポリエチレンとし、ブロー成形によって成形されるチューブ容器の場合、そのチューブ本体11の胴部13の厚みは、0.225〜0.360mmであり、特に0.315〜0.360mmが適する。又肩部15の厚みは、0.30〜0.80mmであり、特に0.42〜0.80mmが適する。さらに、頭部16の厚みは、0.4〜1.12mmであり、特に0.56〜1.12mmが適する。
【0015】
この実施形態では、合成樹脂添加剤として、リン脂質をベースとした疎水性部位を備えたナノカプセルを開示したが、脂肪族ポリエステルをベースとした疎水性部位を外側に配列させたナノカプセルを用いても良い。この場合、生分解性の効果が発揮される。このような生分解性を有する合成樹脂容器は、廃棄時に焼却せず土に戻すことができ、一層環境に優しい容器ということができる。
【0016】
さらに、図2bに示すチューブ本体11aの実施例2のように、多層構造としてもよい。このチューブ本体11aは、主材料としてポリエチレンに合成樹脂添加剤を、2.0〜4.0%混入させた樹脂材料から成形した内層17および外層18と、その内外層の間に、ガスバリア性の合成樹脂から成形した中間19とを備えている。この内層17は、内容物に対する浸食を防止し、外層18は外部品との接触等の物理的な保護層として作用する。このような中層19は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等で構成される。このように多層構造とすることにより、ガスバリア性を備えた合成樹脂容器が得られる。
【0017】
このブロー成形によって製造される三層構造のチューブ容器は、その容器本体11aの胴部13の内層17の厚みは、0.120〜0.190mmであり、特に0.17〜0.19mmが適する。又外層18の厚みは、0.08〜0.13mmであり、特に0.11〜0.13mmが適する。さらに、胴部13全体の厚みは、0.24〜0.36mmであり、特に0.32〜0.36mmが適する。このように従来のガスバリア性を備えたチューブ容器の約0.09〜0.13mmより薄くすることができる。又ここでは、三層構造のチューブ容器について説明したが、その他2層、4層以上であってもよい。
その用途によって適宜決定することができる。
【0018】
図3に示す二重エアゾール容器20は、外容器21と、その外容器内に挿入される可撓性を有する内袋22と、その内袋を挟んで外容器の開口部を塞ぐエアゾールバルブ23とからなる。外容器21及びエアゾールバルブ23は公知のものを用いる。二重エアゾール
容器の内袋22は底部24を有する筒状の本体25と、その上端に形成されたフランジ部26とからなる。
【0019】
内袋22は、図1のチューブ容器と同様の合成樹脂製であり、主材料である合成樹脂に、前述の合成樹脂添加剤を、2.0〜4.0%添加させた樹脂材料からブロー成形により製造される。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。内袋とチューブ本体では、その性質である柔軟性の程度、強さ等が異なるため、その厚みは、約90%程度、内袋の厚みの方がチューブ容器より薄いものが好ましい。
【0020】
このように、主材料をポリエチレンとし、ブロー成形によって成形される二重エアゾール容器の内袋の場合、その本体25の厚みは、0.20〜0.32mm、特に0.28〜0.32mmが適する。又この袋22も、図2に示すような三層構造でもよく、その場合、内層の厚みが、0.10〜0.16mm、特に0.14〜0.16mmが適する。又、外層の厚みは0.08〜0.13mm、特に0.11〜0.13mmが適する。さらに、本体25全体として、厚みを0.29〜0.33mmとすることができる。このように、従来のガスバリア性を備えた内袋の厚みが0.07〜0.11mmより薄く成形することができる。
【0021】
図4に示すボトル30は、硬質のボトル本体31と、その開口部に螺合されるキャップ32とからなる。ボトル本体31は、底部33を有する筒状の胴部34と、その胴部の上端に形成された肩部35と、雄ねじ36aを備えた頭部36からなる合成樹脂の一体成形品である。ボトル本体31はブロー成形によって成形される。キャップ32は、図1のキャップ12と実質的に同じものであり、射出成形により成形される。
【0022】
このボトル本体31の合成樹脂は、主材料である合成樹脂に合成樹脂添加剤を、2.0〜4.0%添加させた樹脂材料から、ブロー成形して製造される。混入させる合成樹脂添加剤を、5%より多くしても効果はあがらない。又2%より少なくすると、強度不足となり、合成樹脂添加剤の効果を得ることができない。
【0023】
このように、主材料をポリエチレンとし、ブロー成形によって成形されるボトルの場合、そのボトル本体31の厚みは、0.40〜0.64mm、特に0.56〜0.64mmが適する。又肩部35の厚みは、0.4〜0.64mm、特に0.56〜0.64mmが適する。さらに、頭部36の厚みは、0.8〜1.3mm、特に1.1〜1.3mmが適する。
【0024】
このボトルも図2(b)に示すような三層構造としてもよく、この場合、内層の厚みが0.2〜0.32mm、特に0.28〜0.32mmであり、外層の厚みが0.18〜0.29mm、特に0.25〜0.29mmが適する。このように、従来のガスバリア性を備えたボトルより0.15〜0.23mm薄く成形することができる。
【0025】
図5aに示すチューブ容器40は、弾性を有するチューブ本体41と、その開口に螺合されるキャップ42とからなり、チューブ本体41が筒状の胴部43と、その上端に設けられた頭部44からなる。また、このチューブ本体の胴部43は、図5bに示すように、アルミ箔を中間層に有し、アルミ層45と、そのアルミ層の内面に設けられる内層46と、アルミ層の外面に設けられる内層47とからなる。さらに、頭部44は、雄ねじ44aを備えており、射出成形によって成形されるものである。
【0026】
このチューブ本体41は、アルミ箔の両面にあらかじめ成形した内層および外層となる合成樹脂シートを貼り合わせ、その後、その福層シートの両側端を、ヒートシールにより貼り合わせて、筒状にすると共にその上端に頭部44を射出成形等により溶着する。
又、胴部44の下端の底部は、内容物を充填した後、ヒートシールにより貼り合わせられる。なお、アルミ箔を有しない図1、図2a、図2bのチューブ本体11、11aもシー
トから形成することができる。また、アルミ箔以外の金属フィルムを用いてもよい。
【0027】
内層46および外層47は、主材料である合成樹脂に、合成樹脂添加剤を3%添加した樹脂材料を押出成形等により、合成樹脂シートに成形したものものである。その内層の厚さは、0.175〜0.28mm、特に0.25〜0.28mmが好ましい。混入させる合成樹脂添加剤を、5%より大きくしても強度は大きくならない、2%より小さくする場合、その合成樹脂添加剤の効果を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の合成樹脂容器の一実施例を示す側面図である。
【図2】図2aは図1の一部断面側面図である実施例1を示す図面、図2bは本発明の合成樹脂容器の実施例2を示す一部断面側面図である。
【図3】本発明の合成樹脂容器の実施例3を示す側面図である。
【図4】本発明の合成樹脂容器の実施例4を示す側面図である。
【図5】図5a及び図5bは本発明の合成樹脂容器の実施例5の一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 チューブ容器
11、11a チューブ本体
12 キャップ
13 胴部
14 底部
15 肩部
16 頭部
16a雄ねじ部
17 外層
18 内層
19a中層
20 二重エアゾール容器
21 外容器
22 内袋
23 エアゾールバルブ
24 底部
25 内袋本体
26 フランジ部
30 ボトル
31 ボトル本体
32 キャップ
33 底部
34 胴部
35 肩部
36 頭部
36a 雄ねじ
40 チューブ容器
41 チューブ本体
42 キャップ
43 胴部
44 頭部
44a雄ねじ
45 アルミ層
46 内層
47 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質あるいは脂肪族ポリエステルをベースとした疎水性部位が外側に配置され、親水性部位が内側に配置された高分子材料からなるナノカプセルの合成樹脂添加剤を合成樹脂に混入させた樹脂材料から成形した合成樹脂容器。
【請求項2】
前記ナノカプセルの径が、30〜70nmである請求項1記載の合成樹脂容器。
【請求項3】
前記合成樹脂添加剤が、ナノカプセル内に酸素吸着剤あるいは生体分解性を発揮する材料を導入したものである請求項1又は2記載の合成樹脂容器。
【請求項4】
前記樹脂材料をその胴部の厚みが0.225mm〜0.36mmとなるようにブロー成形した請求項1又は2記載の合成樹脂容器。
【請求項5】
前記樹脂材料によって成形される合成樹脂フィルムから成形した請求項1又は2記載の合成樹脂容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−276790(P2007−276790A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101498(P2006−101498)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】