説明

合成樹脂廃棄物の溶解処理装置

【課題】例えば梱包材や包装材等として使用された発泡ポリスチレン等の合成樹脂廃棄物を溶媒により溶解処理する装置に係り、溶解処理装置を構成する部材の修理や交換等のメンテナンスを容易・迅速に行うことができるようにする。
【解決手段】溶媒を収容した溶解槽2内に合成樹脂廃棄物を投入し、回転する羽根車10によって破砕し且つ撹拌して合成樹脂廃棄物を溶解処理する装置であって、上記羽根車との共働で合成樹脂廃棄物を破砕する複数枚の固定破砕板31〜33を設け、その複数枚の固定破砕板とそれらを連結保持する保持部材とを1つのユニットとして構成すると共に、そのユニットを上記溶解槽2内に脱着可能に取付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば梱包材や包装材等として使用された発泡ポリスチレン等の合成樹脂廃棄物を溶媒により溶解処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に下記特許文献1において、溶媒を収容した溶解槽内に合成樹脂廃棄物を投入し、回転する羽根車によって順次破砕し且つ撹拌して合成樹脂廃棄物を溶解処理する装置を提案した。
【0003】
ところが上記のような装置においては、溶媒で溶解可能な合成樹脂廃棄物のみを投入する必要があるが、誤って他の廃棄物等を投入してしまう等のおそれがある。この場合、缶や瓶もしくは木屑等の固い異物等を投入すると、羽根車が変形したり、破損して修理もしくは交換しなければならない。
【0004】
【特許文献1】特開平12−37725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、溶解処理装置を構成する部材の修理や交換等のメンテナンスを容易・迅速に行うことのできる合成樹脂廃棄物の溶解処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明による合成樹脂廃棄物の溶解処理装置は、以下の構成としたものである。
【0007】
即ち、溶媒を収容した溶解槽内に合成樹脂廃棄物を投入し、回転する羽根車によって破砕し且つ撹拌して合成樹脂廃棄物を溶解処理する装置であって、上記羽根車との共働で合成樹脂廃棄物を破砕する複数枚の固定破砕板を設け、その複数枚の固定破砕板とそれらを連結保持する保持部材とを1つのユニットとして構成すると共に、そのユニットを上記溶解槽内に脱着可能に取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成された本発明による合成樹脂廃棄物の溶解処理装置によれば、羽根車との共働で合成樹脂廃棄物を破砕する複数枚の固定破砕板が変形もしくは破損して補修もしくは交換する必要がある場合に固定破砕板とその保持部材とからなるユニット全体を溶解槽内から容易に取り出して補修・交換等を行うことができるので、メンテナンス性が向上し、この種の溶解処理装置の維持・管理を容易・迅速に行うことができる等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明による合成樹脂廃棄物の溶解処理装置を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0010】
図1は本発明による溶解処理装置の一実施形態を示す縦断正面図、図2はその平面図、図3は右側面図、図4は図1におけるA−A線断面図である。
【0011】
図において、1は装置本体フレームで、その周囲の略全面には薄板状の外装材が取付けられているが図には省略した。その本体フレーム1内には、使用済みの発泡ポリスチレン成形体等の廃棄物を溶解する溶解槽2が設けられ、その溶解槽2はステンレス等の金属板材により上面が開口する略箱状に形成されている。また溶解槽2の上部の本体フレームには廃棄物投入口が設けられ、その投入口には開閉扉が設けられているが図には省略した。
【0012】
また溶解槽2の上部には、図1および図4に示すように合成樹脂廃棄物を溶解する溶媒の噴霧ノズル3が多数設けられている。その溶媒として本実施形態においては発砲ポリスチレンを溶解するリモネンが用いられ、図に省略した溶媒貯留タンクから図3に示すポンプ4および供給管5を介して上記各噴霧ノズル3に溶媒が供給され、溶解槽2の上部開口内に広く拡散して供給される。6は上記ポンプ4の駆動モータである。
【0013】
一方、溶解槽2の底部2aは、水平面に対して所定の角度傾斜しており、その傾斜の最も低い位置には、溶媒排出用の凹部2bが設けられている。その凹部2b内には、パンチングメタル等よりなる下部回収容器7が脱着可能に収容配置され、その下部回収容器7で合成樹脂廃棄物に混入した砂やゴミ等が回収される。また上記凹部2bの一端側の溶解槽壁面には図1に示すように排出管8が連通固着され、その排出管8を介して前記ポンプ4により合成樹脂廃棄物を溶解した溶媒を図に省略した回収タンクに回収する構成である。
【0014】
また溶解槽2内の略中央部には、廃棄物を破砕し撹拌する羽根車10が設けられ、溶解槽2の側方に配置したモータ9によって所定の速度で回転駆動する構成である。その羽根車10は本実施形態においては、図1および図5に示すように筒軸15上に所定の間隔をおいて4つ設けられている。その各羽根車10は図7に示すように一対の側板11・11と、その両側板11・11間に配置される複数枚の羽根板12と、上記各側板11の外面に配置される鎌状の可動破砕板13とよりなる。
【0015】
上記各羽根板12の幅方向両側には矩形の突部12aが、また各側板11および可動破砕板13には上記突部12aが係合するスリット状の係合孔11a・13aが、それぞれレーザーカット等により精度よく形成されており、上記各突部12aを係合孔11a・13aに係合すると共に、各側板11を前記筒軸15に溶接等で固着し、かつ上記各側板11と可動破砕板13とに形成した多数の小孔11b・13bにリベット14を挿通してかしめることによって一体化されている。そのリベット14を工具等で破断することによって可動破砕板13は側板11に対して脱着可能である。
【0016】
上記筒軸15の両端部には、図5に示すように筒軸15の内径と同等もしくはそれよりも小径の支軸16が脱着可能に連結され、その各支軸16および軸受部材20を介して上記羽根車10が溶解槽2に回転可能に軸受支持されている。上記各支軸16は、図示例においては短筒状のカラー17を介して筒軸15の両端部内面に保持され、その筒軸15と支軸16およびカラー17とを貫通する連結ピン18で脱着可能に連結されている。18aはその連結ピン18の抜け止め係止クリップである。
【0017】
上記軸受部材20は、図5および図6に示すように溶解槽2の内側と外側に配置した一対の軸支持部材21・22とピロブロック23とよりなる。その一方の軸支持部材21はそれと一体に設けた円形の突部21aを溶解槽2に形成した上記突部21aと略同径同大の孔2cに嵌合することによって精度よく位置決め保持され、他方の軸支持部材22は上記軸支持部材21にねじ24で取付けられている。また上記ピロブロック23は軸支持部材22に形成した凹部22aに嵌合保持されている。図5において左側の軸受部材20も上記と同様に構成されている。
【0018】
また前記筒軸15の両端部に設けた一対の支軸16のうち一方(図5で右側)の支軸16は前記モータ9の出力軸9aにカップリング材25を介して脱着可能に連結されている。なお、そのモータ9は、本実施形態においては過負荷が掛かって停止した場合などに逆転できるように可逆転式のモータが用いられ、常時は羽根車10を図4において矢印a方向に回転するように構成されている。
【0019】
さらに前記各羽根車10には、前記一対の側板11・11と複数枚の羽根板12とによってバケット状の凹部Pが形成され、その凹部Pは後述する滝落とし用の凹部として機能する。また前記鎌状の各可動破砕板13の外周縁部13cは回転方向(図4で矢印a方向)前側に行くに従って内方に湾曲している。すなわち回転方向前側に行くに従って筒軸15からの距離が漸次短くなるように形成されている。さらに上記各外周縁部13cにはV字状の切欠き凹部13dがそれぞれ2つずつ形成されている。
【0020】
一方、上記羽根車10の近傍には、羽根車10の可動破砕板13との共働で廃棄物を破砕する固定破砕板31〜33が設けられ、本実施形態においては図1に示すように前記筒軸15の長手方向略中央部に対応する位置に配置した破砕板31と、その両側に配置した破砕板32・32、および更にその外側に配置した破砕板33・33の3種類5枚の固定破砕板が設けられている。
【0021】
上記各固定破砕板31〜33には、図1および図に示すように破砕用突部31a〜33aが一体に設けられ、その破砕用突部31a〜33aは羽根車10の回動軌跡に沿う円弧状のガイド板34に形成したスリット状の貫通孔34aから羽根車10側に突出している。その各破砕用突部31a〜33aの位置および形状が異なる以外は上記各固定破砕板31〜33は同一形状に形成されている。
【0022】
上記破砕用突部31a〜33aのうち、中央の突部31aが最も高い位置で、かつ羽根車10の回転方向に向かって最も後ろ側に位置し、次いでその両側の突部32aがそれよりも低く且つ羽根車10の回転方向前に位置し、さらにその外側の突部33aが最も低く且つ羽根車10の回転方向前側に位置するように順にずらして設けると共に、隣り合う破砕用突部31a〜33a間に羽根車10が位置するように構成されている。
【0023】
上記各固定破砕板31〜33の下部および背面側には、上記ガイド板34と共に各固定破砕板31〜33を連結保持するベース板35と横板36とが設けられている。そのベース板35と固定破砕板31〜33とは、図に示すように各固定破砕板31〜33に形成した突出片31b〜33b(31b、32bは不図示)をベース板35に形成したスリット状の係合孔35aに係合させて連結保持させた構成であり、また上記横板36は各固定破砕板31〜33の背面側に形成した切込溝31c〜33c(31c、32cは不図示)に係合保持させた構成である。
【0024】
上記固定破砕板31〜33やガイド板34、ベース板35および横板36は、本実施形態においてはレーザーカットにより精度よく形成されており、それによって前記貫通孔30aと破砕用突部31a〜33a、突出片31b〜33bと係合孔34a、および切込溝31c〜33cと横板36とは、互いにガタツキなく精度よく嵌合もしくは係合している。
【0025】
上記各固定破砕板31〜33は、それらを連結保持する上記ガイド板34やベース板35および横板36と共に1つのユニットとして構成され、上記ベース板35を、溶解槽2の底部2a上に溶接等で一体的に設けた板状の台座37にボルト38等で固定することによって脱着可能に取付けられている。
【0026】
さらに上記各固定破砕板31〜33には、図4および図に示すように開口31d〜33dが形成され、それらの開口を貫通するようにしてリモネン等の溶媒を暖めるためのヒータ40が設けられている。そのヒータ40は図4において前後方向に迂回する管路41を設けて、図に省略したボイラ等からの温水を上記管路41内に循環させる構成である。
【0027】
また上記固定破砕板31〜33の上部には、溶媒中に浮遊するゴミ等の浮遊物を回収する上部回収容器45が脱着可能に設けられている。その回収容器45は図示例においては横断面逆台形状の枠体45aの上面を除く前後左右および下面に網45bを張設した構成であり、その枠体45aの長手方向両端部には取っ手45cが設けられている。
【0028】
前記の各羽根車10が上記ガイド板34に沿って回動する際、各羽根車10の外側の羽根板12と一対の側板11・11およびガイド板34とで囲まれた領域には、図10に示すように断面略V字状の溶媒汲み上げ用の凹部Qが形成され、その汲み上げ凹部Q内に溜まった溶媒Sが羽根車10の回転に伴って上部回収容器45に向かって移動することによって該容器45内に溶媒Sが流入し、それによって溶媒S中のゴミ等が回収容器45で捕捉されて回収される構成である。
【0029】
上記の構成において、例えば使用済みの発泡ポリスチレン等の合成樹脂廃棄物をリモネン等の有機溶媒で溶解処理するにあたっては、前記モータ6を駆動してポンプ4を作動させ、新しい溶媒を供給管5を介して噴霧ノズル3から溶解槽2内に噴出供給する。その際、前回の溶解処理で羽根車10や回収容器7・45に古い溶媒が付着している場合には、噴霧ノズル3を溶解槽2の上部に設けたことによって上記の古い溶媒を流し取ることができる。
【0030】
上記のようにして溶解槽2内に所定の初期レベルまで溶媒が供給されたところで、本体フレーム1の上部の廃棄物投入口(不図示)から溶解槽2内に廃棄物Wを投入する。そのとき羽根車10は、図4に示す定位置で停止するように設定されており、この定位置は羽根車10の上部の溶解槽2内の空間が広く空いた状態となり、廃棄物を最も多く投入することができる。
【0031】
上記溶解槽2内に廃棄物を投入し終わったところで投入口の開閉扉(不図示)を閉め前記モータ9を駆動して羽根車10を回転させるもので、そのモータは上記開閉扉を閉めたとき自動的に駆動するように構成することもできる。その場合、安全のため開閉扉2を閉じてから数秒後に羽根車10が回転するように構成するのが好ましい。ただし、コンベア等を用いて自動投入する構成とし、投入口の周囲を柵等で囲って安全が確保されれば上記の限りではない。
【0032】
上記のようにして羽根車10が回転すると、その羽根車10の羽根板12と可動破砕板13等によって廃棄物が溶媒中に順次押し込まれる。そのとき溶解槽2の側板の内面に付着した廃棄物は鎌状の可動破砕板13の先端部で順次掻き落とされ、その先端部で掻き落とされなかった廃棄物は可動破砕板13のV字型切欠き凹部13dによって溶媒中に押し込まれる。
【0033】
その溶媒中に押し込まれた廃棄物は、羽根車10の可動破砕板13と固定破砕板31〜33とによって順次切断され、これを繰り返すことによって次第に細かく破砕されていく。その際、上記破砕板31〜33の羽根車10に対する位置は前述のように羽根車10の回転方向にずらして配置されているので、羽根車10に一度に大きな力が作用するのが防止され、モータに掛かる負荷が軽減される。
【0034】
上記の廃棄物の破砕動作は、主として溶媒内で行われるので、廃棄物がバタついたり、跳ねることなくスムースに行うことができ、静電気も発生しない。また溶媒中に押し込まれた廃棄物は、その溶媒で徐々に溶解されると共に、上記の破砕によって溶媒との接触面積が増大して溶解が促進される。
【0035】
また羽根車10が前記のように回転することによって、図9に示すように側板11・11と羽根板12とで形成された前記滝落とし用の凹部Pが溶媒内に浸入したのち溶媒の液面上方に露出して再び溶媒内に浸入する。これを繰り返すことによって上記凹部P内に溜まった溶媒Sが廃棄物に滝落とし状に振りかけられると共に、溶媒が撹拌されて廃棄物の溶解速度が増大される。
【0036】
さらに溶媒加熱用のヒータ40を設けたことによって、リモネン等の溶媒が効率よく暖められて、発泡ポリスチレン等の合成樹脂廃棄物をさらに効率よく溶解することが可能である。また発泡ポリスチレンの溶解率が例えば20〜30重量%程度になるとリモネン等の有機溶媒の粘度も新液時より非常に高くなるため、廃液も困難となるが、温水循環方式で暖めることにより粘度が下がり、廃液がスムーズに行われる。また直接熱が有機溶媒に伝わらず、温水式の放熱により両側から熱が伝わるので非常に安全であり熱効率もよい。
【0037】
前記羽根車10の回転で、前記ガイド板34と、羽根車10の一対の側板11・11および羽根板12とで形成される前記の溶媒汲み上げ用凹部Qが上記ガイド板34に沿って上昇移動し、上部回収容器45の側方まで移動したところで上記凹部Q内に溜まった溶媒Sが回収容器45内に流入して濾過される。これを繰り返すことによって溶媒S中に浮遊するゴミ等を順次回収容器45で捕捉して回収することができる。なお上記の回収容器45を透過して下方に流出した溶媒は、ガイド板34の下面側を通って順次羽根車10の下方に移動し、その付近の溶媒と合流して循環を繰り返す。
【0038】
また溶解槽2内に前記廃棄物と共に砂や小石等が投入されて溶媒に混入した場合には、それらは溶媒内を徐々に下降して溶解槽底部2aに沈殿した後、溶媒の流れと共に底部2aの傾斜面に沿って排出通路2bに向かって移動し、その通路2b内に設けた下部回収容器7で回収される。その下部回収容器7および上部回収容器45に回収した砂やごみ等は、例えば溶解処理終了後に回収容器と共に溶解槽2から取り出して廃棄することができる。また必要に応じて例えば上記回収容器内や溶解槽底部等に永久磁石などを設置しておけば、金属の異物を吸着することもできる。
【0039】
なお羽根車10が回転している状態で、例えば羽根車10と溶解槽2の側板内面との間に廃棄物が挟まってモータ9が停止してしまった場合には、モータ9を逆転させることによって廃棄物を反対方向に回動させて取り除くことができる。その際、羽根車10の可動破砕板13の外周縁部13cは前述のように回転方向前側に行くに従って半径方向内方に湾曲しているので、羽根車10を逆転したときには上記外周縁部13cは溶解槽内面との間に挟まった廃棄物から離れる傾向となるので、逆転動作をスムースに行うことができる。羽根車10と前記ガイド板34との関係についても同様であり、羽根車10とガイド板34とのクリアランスは、前述のように羽根車10の回転方向下流側に行くに従って小さくなり、逆転したときには回転方向前側に行くに従ってクリアランスが大きくなるのでスムースに逆転させることができる。
【0040】
また上記のように廃棄物が挟まる等してモータに過負荷が作用したときには、それを自動的に検知してモータを停止させるようにしてもよく、さらに必要に応じてモータを自動的に逆転させるように構成こともできる。例えば何らかの原因でモータ等に過負荷が掛かった場合に羽根車の回転を一旦停止し、次いで例えば1/2回転ほど逆回転を行った後、再び正運転を試みる。これを例えば3回程度行っても過負荷が解消されない場合は自動停止させるようにすればよい。本実施形態においては上記の操作で殆どの過負荷は解消される構造となっている。
【0041】
上記のようにして溶解槽2内に投入した合成樹脂廃棄物を溶媒によって順次溶解し、所定量の廃棄物が溶解されたところで、羽根車10の回転を停止させる、あるいは警報等を発して溶媒交換を促す。その手段としては、例えば廃棄物が溶解して体積が増大した溶媒の量を、溶解槽外部に設置したガラス管式液面センサ等で検知し、それに基づいて羽根車の駆動モータを停止させたり、溶媒交換を報知する。また上記ガラス管に溶媒の上限許容レベルを表記し、そのレベルに溶媒の液面が達したら溶媒交換等を促す、あるいは自動的に交換するように構成することもできる。
【0042】
次に、羽根車10が停止したところで、廃棄物を溶解した溶解槽2内の溶媒を溶解槽2の底部に連通接続した排出管8から前記ポンプ4により図に省略した回収タンク内に回収する。その際、前記回収容器7・45で捕捉できなかったゴミ等は上記排出管8と回収タンクとの間に防塵フィルタ等を設けることによって回収することもできる。また回収容器7・45内に捕捉されたゴミ等は、それらの容器を図に省略した廃棄物投入口もしくはメンテナンス用開口等から取り出すことによって容易に除去することができると共に、つぎに新規な溶媒を溶解槽内に噴出させる際に清掃することができる。又そのとき排出時に生じるポンプ内の汚れを除去することもできる。
【0043】
上記のようにして羽根車10の可動破砕板13と固定破砕板31〜33とで合成樹脂廃棄物を順次破砕して溶媒で溶解する際に、合成樹脂廃棄物と共に缶や瓶もしくは木屑等の固い異物が溶解槽2内に進入して羽根車10や筒軸15等が変形もしくは破損等した場合には以下のようにして補修もしくは交換することができる。
【0044】
例えば羽根車10の可動破砕板13を補修もしくは交換する必要がある場合には、可動破砕板13と側板11とを連結する前記リベットを工具等で切断除去して可動破砕板13を取り出し、適宜補修もしくは交換して新たにリベットで側板11に固着すればよい。その際、隣り合う羽根車10・10間および最外側の羽根車10と溶解槽内面との間隔は、リベットかしめ用のスパナ等が充分に入る大きさに形成されているので何ら支障なく取付けることができる。
【0045】
また上記羽根車10を筒軸15と共に溶解槽2から取り出す必要がある場合には、筒軸15とその両端部に設けた支軸16との連結を解除すればよく、図示例においては連結ピン18の抜け止め係止クリップ18aを引き抜き、連結ピン18を引き抜く、またモータ9の出力軸9aに連結した支軸16にあっては該出力軸9aとの連結用カップリング材25による連結状態を解除する。そして上記両支軸16を筒軸15内に移動すれば、その筒軸15および支軸16を含めて回転翼10を溶解槽10から取り出すことができる。
【0046】
さらに前記固定破砕板31〜33が変形もしくは破損等して補修もしくは交換する必要がある場合には、それらの固定破砕板31〜33を支持する前記ベース板35の固定ボルト38を台座37から外し、そのベース板35や前記ガイド板34等と共にユニット化された固定破砕板31〜33を溶解槽2から取り出すことができる。
【0047】
以上のように本発明のおいては、羽根車10の可動破砕板13や羽根車10全体および固定破砕板31〜33を容易に溶解槽2から取り出して補修もしくは交換することができるものである。なお羽根車10全体および固定破砕板31〜33を溶解槽2から取り出して補修もしくは交換した後は、上記と逆の順序で組み付ければよい。
【0048】
また前記羽根車10の筒軸15の両端部に設けた支軸16を、軸受部材20を介して軸受支持させ、その軸受部材に形成した突部21aを溶解槽に形成した孔2cに嵌合保持させるようにしたことによって上記支軸16を所定の位置に精度よく且つ簡単・確実に位置決め保持させることができる。
【0049】
さらに羽根車10の羽根板12に形成した突部12aを側板11および可動破砕板13に形成したスリット状の係合孔11a・13aに嵌合させるようにしたことによって、上記羽根車10、特に可動破砕板13の強度を増大させることができる。また羽根車10の各側板11と羽根板12および可動破砕板13を上記実施形態のようにレーザーカット等により精度よく形成すればガタツキなく更に強固に結合することが可能となる。前記ガイド板34および固定破砕板31〜33についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように本発明による合成樹脂廃棄物の溶解処理装置は、前記の構成であるから、羽根車10との共働で合成樹脂廃棄物を破砕する複数枚の固定破砕板31〜33が変形もしくは破損して補修もしくは交換する必要がある場合にも上記固定破砕板とその保持部材とからなるユニット全体を溶解槽内から容易に取り出して補修・交換等を行うことができるので、メンテナンス性が向上し、この種の溶解処理装置の維持・管理を容易・迅速に行うことができ、産業上も有効に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による合成樹脂廃棄物の溶解処理装置の一実施形態を示す縦断正面図。
【図2】上記溶解処理装置の平面図。
【図3】上記溶解処理装置の右側面図。
【図4】図1におけるA−A線断面図。
【図5】上記溶解処理装置における羽根車およびその駆動機構の一部縦断正面図。
【図6】その一部の拡大図。
【図7】羽根車の分解斜視図。
【図8】固定破砕板の配置構成を示す拡大図。
【図9】廃棄物への溶媒滝落とし動作の説明図。
【図10】上部回収容器への溶媒導入動作の説明図。
【符号の説明】
【0052】
1 装置本体フレーム
2 溶解槽
3 溶媒噴霧ノズル
4 ポンプ
5 溶媒供給管
6 ポンプ駆動用モータ
7 下部回収容器
8 排出管
9 羽根車回転用モータ
10 羽根車
11 側板
12 羽根板
13 可動破砕板
14 リベット
15 筒軸
16 支軸
20 軸受部材
21、22 軸支持部材
25 カップリング材
31〜33 固定破砕板
34 ガイド板
40 ヒータ
45 上部回収容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒を収容した溶解槽内に合成樹脂廃棄物を投入し、回転する羽根車によって破砕し且つ撹拌して合成樹脂廃棄物を溶解処理する装置であって、上記羽根車との共働で合成樹脂廃棄物を破砕する複数枚の固定破砕板を設け、その複数枚の固定破砕板とそれらを連結保持する保持部材とを1つのユニットとして構成すると共に、そのユニットを上記溶解槽内に脱着可能に取付けたことを特徴とする合成樹脂廃棄物の溶解処理装置。
【請求項2】
上記保持部材は、上記羽根車の回動軌跡に沿う円弧状のガイド板と、上記複数枚の固定破砕板の下部に設けたベース板と、上記複数枚の固定破砕板の背面側に設けた横板とよりなる請求項1に記載の合成樹脂廃棄物の溶解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−179827(P2008−179827A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62084(P2008−62084)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【分割の表示】特願平11−185954の分割
【原出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】