説明

合成樹脂板及び合成樹脂板の識別方法

【課題】同一色相を呈して端面でも単一色相である合成樹脂板同士の識別ができる合成樹脂板と、この合成樹脂板の識別方法を提供する。
【解決手段】合成樹脂に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%含まれた構成の合成樹脂板とする。また、略同色の内層1と外層2とが積層された合成樹脂板Pであって、少なくとも内層1又は外層2に該蛍光物質が含まれた構成の合成樹脂板Pとしてもよい。これらの合成樹脂板は、その端面に300〜400nmの波長の光を照射して蛍光物質を発光させる識別方法によって、他の合成樹脂板と識別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略同一色相を呈する合成樹脂板を識別できるようにした合成樹脂板、及びこれの識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂板は、種々の用途に使用されていて、同一樹脂であっても用途に適した品質を持つように、樹脂自体の改良がなされると共に、樹脂と副資材とを配合して必要な品質を有するようになされている。そして、用途によっては並列して使用され、美観上同一色相の樹脂板を使用することが求められて、異品質の合成樹脂板であっても同一色相にすることが要求されている。また、同一樹脂であるにも拘らず、配合組成が異なる樹脂板が同一色相で製造され、これらが混在して製品が作製される場合も多くみられるようになって来た。
【0003】
このために、一般には、各合成樹脂板は識別可能なダンボールケースに入れられたり、マスキングを変えたりなどして、これらが品質の異なる合成樹脂板であることを明確にしている。しかし、加工されて製品になった後はマスキングも剥離されるので、それらの識別ができなくなってきた。また、合成樹脂板を加工したりした後の端材は、加工メーカーで保管されて再使用されたり回収されたりするのであるが、端材が大きいとマスキングが残り樹脂板の種類・品質がわかるが、ある程度以下の大きさになるとマスキングが剥離されて、樹脂端材の種類・品質がわからなくなるという問題が内在している。さらに、端材を回収する際にも、どの種類・品質の端材かが不明となり、回収が困難になるという問題も内在していた。
【0004】
この問題を解決するため、彩色不透明の外層とは異なる色相の識別層を積層一体とされた熱可塑性樹脂板が開発された(特許文献1)。このような構造の合成樹脂板であると、種類・品質の異なる樹脂板同士であっても識別層を比較することで、お互いの合成樹脂板を識別することができる。
また、内層の両面に顔料濃度の異なる外層を設けた熱可塑性樹脂板も開発された(特許文献2)。この合成樹脂板であっても、品質の異なる樹脂板を識別することができる。
【特許文献1】実公平6−6917号公報
【特許文献2】特開2004−58443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1にあっては、外層と異色の識別層が積層されているため、樹脂板の端面にも当該外層と識別層とが露出し、端面が二色以上の色相を呈し外観が見苦しいという別の問題を発生した。この問題は、特許文献2の熱可塑性合成樹脂板にあっては、顔料の多少だけであるので色相の変化は目立たないものの、識別できるだけの色相変化は必要であり、やはり端面は二色以上の色相を呈して、外観が見苦しいことは変わることがなかった。
本発明は、上記問題に基づき、同一色相を呈して端面でも単一色相である合成樹脂板同士の識別ができる合成樹脂板を提供することを目的とする。
また、この合成樹脂板の識別方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の合成樹脂板は、合成樹脂に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%含まれていることを特徴とするものである。
また、本発明の第2の合成樹脂板は、略同色の内層と外層とが積層された合成樹脂板であって、少なくとも内層に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が含まれていることを特徴とするものである。
また、本発明の第3の合成樹脂板は、略同色の内層と外層とが積層された合成樹脂板であって、少なくとも外層に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が含まれていることを特徴とするものである。
【0007】
そして、本発明において、蛍光物質がオキサゾール系化合物であることが好ましいし、また内層又は外層に蛍光物質が0.01〜5質量%含まれていることも好ましい。
【0008】
また、本発明の合成樹脂板の識別方法は、蛍光物質を含む合成樹脂板の端面に300〜400nmの波長の光を照射して蛍光物質を発光させることにより、他の合成樹脂板と識別することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の合成樹脂板は、合成樹脂に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%含まれているので、これに主に360nmの波長の光を照射するブラックライトを当てると、樹脂板が蛍光を発し、この蛍光物質を含まない略同色の合成樹脂板と識別することができる。そして、蛍光物質を含む合成樹脂板を切削などの二次加工しても、これにブラックライトを当てることにより蛍光を発するので容易に他の発光しない合成樹脂板と識別することができる。
【0010】
また、本発明の第2の合成樹脂板は、略同色の内層と外層とが積層されていても、少なくとも内層に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が含まれているので、ブラックライトを合成樹脂板の端面に当てると当該端面の内層が蛍光を発する。そのため、通常の白色灯や蛍光灯や太陽の下では、合成樹脂板の端面であっても外層と内層とは略同一色相を有して識別できないが、ブラックライトを当てたときだけ内層が蛍光するので、蛍光物質を含まない略同色の合成樹脂板と識別することができる。
【0011】
また、本発明の第3の合成樹脂板においても、外層がブラックライトを当てると蛍光を発して他の合成樹脂板と識別することができる。
また、蛍光物質がオキサゾール系化合物であると、他の蛍光物質よりも蛍光を強く発して、蛍光をはっきりと視認することができ、識別が容易である。また、内層又は外層に蛍光物質を0.01〜5質量%含くませると、層の厚さが薄くても蛍光を視認することができて他の合成樹脂板と識別することができる。
【0012】
さらに、本発明の合成樹脂板の識別方法は、蛍光物質を含む合成樹脂板の端面に300〜400nmの波長の光を照射して蛍光物質を発光させることだけであるので、通常は略同一色相の異品質の合成樹脂板を使用して用途に応じた製品を作製でき、外観色相を統一した装置、製造設備などとすることができるが、これらを識別したいときにのみにブラックライトを照射することで識別できる。また、製品作製後の識別ができない端材であっても、ブラックライトを端面に照射することでこれらを識別でき、再使用を可能にしたり、回収を可能にしたりする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて詳述するが、これらに限定されるものではない。
【0014】
図1は本発明の一実施形態の合成樹脂板の断面図である。
この合成樹脂板P(P1)は内層1の両面に外層2、2を積層一体化したものであり、該内層1と外層2とは略同一の色相にされていると共に、内層1には300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%含まれている。そのため、通常は端面であっても内層1と外層2、2とは略同一色相であり、外観上識別することはできない。
なお、略同一の色相とは、外観上目視では識別ができ難い色相を有していることをいう。
【0015】
上記の合成樹脂板P1の内層1と外層2とは、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、フッ素樹脂などの熱可塑性合成樹脂、或はフェノールなどの熱や紫外線などで硬化する硬化性合成樹脂から形成されている。そして、この内層1と外層2とは略同一の色相を呈していて、その表裏面は勿論のこと端面であっても同一色相を呈して、端面を見ても内層1と外層2とを識別することはできず、外観上、表裏両面も端面も同一の単一色相を呈している。
【0016】
そして、内層1は0.5〜19mmに、外層2は0.5〜9mmの厚さにそれぞれ形成されていて、合計厚さを1.5〜20mm程度となされていている。好ましくは、内層1の厚さを0.5〜2mmとして厚さ中央に配するのが望ましい。なお、この合成樹脂板P1は、透明でも透光性でも不透明であってもよい。
【0017】
この合成樹脂板P1の内層1は、前記合成樹脂と必要により添加される安定剤などの添加剤とよりなる基本組成物に、蛍光物質を0.01〜5質量%均一に混合された蛍光組成物より形成されてなるものである。一方、外層2は上記基本組成物より形成されてなるものであり、蛍光物質は含まれていない。そのため、内層1と外層2とは蛍光物質の添加の有無のみであるので、その色相は略同一となり、外観上色相を区別することはできない。なお、内層1と外層2との基本配合物を異ならせる必要がある場合は、顔料などにより両層1、2とが略同一の色相となるように調色する。
【0018】
合成樹脂として塩化ビニル樹脂を用いた場合は、塩化ビニル樹脂100重量部と熱安定剤1〜7重量部と滑剤0.5〜2.0重量部と補強剤0〜10重量部と顔料0〜1重量部などからなる基本組成物を作製する。また、この基本組成物に蛍光物質を0.01〜5質量%(0.01〜6.3重量部)配合して蛍光組成物を作製する。そして、上記基本組成物で外層2を形成し、蛍光組成物で内層1を形成することとなる。内層1に含ませる蛍光物質が0.01質量%以下では300〜400nmの光を発するブラックライトを照射しても発光が弱く、これを配合していない外層2との識別が困難となる。また5質量%以上を配合しても、識別するに必要以上の発光は不必要で無意味である。最も好ましいのは0.01〜1質量%の範囲である。このように、内層1のみに蛍光物質を0.01〜5質量%含むので、例えば内層1の厚さが外層2の半分であると、合成樹脂板全体には0.002〜1.0質量%となる。従って、このように内層1に含まれる蛍光物質の含有量がある一定範囲であっても、合成樹脂板全体に含まれる含有量は内層1と外層2との厚みにより異なることとなる。
【0019】
上記の蛍光物質は、300〜400nmの波長の光、特に380nm前後の紫外線を吸収して、それを目に見える可視光に変えて放出するものである。その可視光の色は一般には440nm前後の青紫色である。そのため、合成樹脂にも蛍光増白剤として少量が配合されて、熱劣化して黄味を帯び易い合成樹脂板の色相を補色し、明るい色相にするために一部使用されている。しかし、0.02質量%以上配合されて、他の合成樹脂板との識別には利用されてはいない。
【0020】
このような蛍光物質には種々のものがあり、有機蛍光物質と無機蛍光物質とに分けられる。有機蛍光物質は透明若しくは不透明合成樹脂板を作製するために用いられ、具体的には、クマリン系樹脂、オキサゾール系樹脂、スチルベン系樹脂、ピラゾリン系樹脂、イミダゾロン系樹脂、シミダゾール系樹脂、トリアゾール系樹脂、ナフタルイミド系樹脂などが好ましく用いられる。市販品としては、ハコール産業社製「ハッコールPSR」(クマリン系)、ヘキストAG社製「HOSTALUX KCB」(ベンズオキサゾール系)、住友化学社製「WHITEFLOUR PSN CONC」(オキサゾール系)などあり、入手可能である。
【0021】
この中でも、オキサゾール系樹脂は、合成樹脂への分散が良好であるうえ、放出する光量が多くて視認し易いので特に好ましく用いられる。具体的には、2,5−チオフェンジイル(5−tert−1,3−ベンザオキサゾール)、4,4´−ビス(ベンザオキサゾール2−イル)スチルベン、4,4´−ビス(ベンザオキサゾール−2−イル)フラン、2,2´−(ビニレンジ−P−フェニレン)ビスベンゾオキサゾールなどが挙げられる。
【0022】
また、無機蛍光物質としては、YS;EU、ZnGeO:Mn、BaMgAl1427:Eu、ZnO:Zn、Sr(POCl:Eu、YS:EU、ZnGeO:Mn、BaMgAl1627:Eu、3(Ba、Mg)O.8Al:Eu、Mnなどが挙げられる。
【0023】
このような合成樹脂板P1は、例えば次のようにして製造することができる。
合成樹脂に必要により安定剤などを配合した基本組成物と、この基本組成物に蛍光物質をさらに配合した蛍光組成物をそれぞれ作製する。これらの各組成物を用いて各カレンダーシートを製造する。そして、複数枚の基本組成物カレンダーシートの上に1枚乃至複数枚の蛍光組成物カレンダーシートを重ね合せ、さらに複数枚の基本組成物カレンダーシートを重ね合せた後、ホットプレスしてカレンダーシートを融着して一体化することで製造することができる。
また、上記各組成物を用いて、蛍光組成物で内層を、基本組成物で外層を形成するように、3層共押出し成形することでも製造することができる。
【0024】
このようにして得られた合成樹脂板P1は、内層1に蛍光物質を含むので、内層1に300〜400nmの近紫外線を主に放射するブラックライトを照射すると、蛍光物質が当該近紫外線の波長の光を吸収して、目に見える可視光線(青紫色など)を放出するので、この内層1が青紫色などに視覚されるが、蛍光物質が含まれない外層2は発光しない。
【0025】
従って、外層2も内層1も共に上記基本組成物で形成した合成樹脂板Aと、内層1を蛍光組成物で外層2を基本組成物で形成した合成樹脂板P1とを区別するには、ブラックライトを両合成樹脂板の端面に照射して観察すればよい。即ち、合成樹脂板Aは内層1も外層2も青紫色などに発光しないが、合成樹脂板P1は内層1のみが青紫色などに発光して視覚されるので、合成樹脂板Aと合成樹脂板P1とを区別することが可能となる。しかし、このような合成樹脂板P1であっても、太陽光などの下では、内層1も外層2も略同一の色相を有しているので、両合成樹脂板の端面を観察しても外観上は区別することができない。そのため、両合成樹脂板を並列して使用して、或はこれらから製作された製品を並列して使用しても、同一色相を呈し美観が良くなる。また、合成樹脂板を回収する際に、両合成樹脂を区別して回収することもできる。さらに、各合成樹脂板が端材となりマスキングなどが剥離して同じ色相の合成樹脂板となって外観上区別できない場合であっても、端面にブラックライトを照射することで区別できる。
【0026】
上記の如く識別する際に、合成樹脂板P1を暗室の中に入れてブラックライトを照射すると発光した内層1をはっきりと目視できるので、よりはっきりと区別することが可能となる。
なお、図1の合成樹脂板P1は内層1と外層2、2との3層構造であるが、内層1と外層2との2層構造の合成樹脂板であっても、同様に識別することができる。
【0027】
図2は本発明の他の実施形態の合成樹脂板の断面図である。
この合成樹脂板P(P2)は、内層1の両面に外層2、2を積層一体化したものであるが、内層1を合成樹脂板P2の中央に位置させずに外層2の一方に寄せて積層した合成樹脂板である。そして、該内層1と外層2とは略同一の色相にされていると共に、内層1には300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%含まれている。そのため、通常は端面であっても内層1と外層2、2とは略同一色相であり、外観上識別することはできない。
【0028】
この合成樹脂板P2の内層1、外層2に使用される樹脂、蛍光物質は前記合成樹脂板P1に使用されたものと同じであるので、説明を省略する。
【0029】
このような合成樹脂板P2であっても、端面にブラックライトを照射すると内層1が青紫色などに発光し、他の合成樹脂板と区別できる。さらに、前記の合成樹脂板P1とも、青紫色などに発光する内層1の端面での位置が異なるので、この合成樹脂板P1とも区別できる。
このように、外層2、内層1、外層2の各厚さを変更し、各厚さ毎に品質の異なる合成樹脂板とすると、これらの各合成樹脂板同士も区別することもできる。
【0030】
図3は本発明の更に他の実施形態の合成樹脂板の断面図である。
この合成樹脂板P(P3)は内層1が2層形成されていて、外層2、内層1、中間層3、内層1、外層2とがこの順で積層一体化されて5層構造をなしている。これらの各層は識別できない程度の略同一の色相にされていると共に、内層1、1には300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%含まれている。また、外層2と中間層3とは同一の基本組成物により形成された層である。なお、外層1と中間層3とは組成を変えても形成されてもよいが、色相は略同一とすることが好ましい。
【0031】
この5層構造の合成樹脂板P3であっても、前記合成樹脂板P1と同様に、その端面にブラックライトを照射することにより、内層1、1のみが青紫色などに発光して目視されるので、これと異なる構成の合成樹脂板とは区別することができる。そして、これらの各層の厚みをそれぞれ変更し、各厚さ毎の多種類の合成樹脂板とすると、これらの合成樹脂板同士をも区別することが可能となる。
【0032】
図4は本発明の更に他の実施形態の合成樹脂板の断面図である。
この合成樹脂板P(P4)は、内層1の両面に外層2、2を積層一体化したもので、該内層1と外層2とは識別できない程度の略同一の色相にされていると共に、外層2、2には300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%含まれている。
【0033】
このような合成樹脂板P4であっても、端面にブラックライトを照射すると外層2、2が青紫色などに発光し、端面が発光しない合成樹脂板、或は前記の内層1が発光する合成樹脂板P1と区別することができる。そして、この合成樹脂板P4は外層2の表面にブラックライトを当てても表面が発光するので、この方法によっても外層2に蛍光物質を含まない合成樹脂板と区別することもできる。
【0034】
図5は本発明の更に他の実施形態の合成樹脂板の断面図である。
この合成樹脂板P(P5)は単一の樹脂層4からなるものであり、その樹脂層4に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%含まれている。
【0035】
このような合成樹脂板P5は、表面でも端面でもブラックライトを当てると全体が青紫色などに発光し、略同一色相で蛍光物質を含まずに発光しない合成樹脂板と区別できる。さらに、前記の合成樹脂板P1、P2、P3、P4などのように、一部の層のみが発光する他の合成樹脂板とも区別できる。そして、この合成樹脂板P5であると、どの場所であっても蛍光物質を含むので、切削などを行いネジなどの他形状にしても、ブラックライトを照射することで蛍光を発するので、他の合成樹脂板と識別することができる。
【0036】
以下実施例に基づいて具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
塩化ビニル樹脂100重量部に対して、錫系熱安定剤4重量部、滑剤3重量部、アクリル系加工助剤3重量部、MBS系耐衝撃剤5重量部、無機充填剤3重量部、顔料を均一に混合して基本組成物を作製した。さらに、この組成物にオキサゾール系蛍光物質を1重量部(1.67質量%)均一に配合して蛍光組成物を作製した。
【0038】
これらの各配合物を用いて、厚さ0.5mmのカレンダーシートをそれぞれ作製した。続いて、基本組成カレンダーシートを4枚重ね、この上に蛍光組成カレンダーシートを2枚重ね、更にこの上に基本組成カレンダーシートを4枚重ね、これらの10枚のカレンダーシートの上下に艶板を重ねた後、ホットプレスにより熱圧一体化し、厚さ1mmの内層の上下に厚さ2mmの外層がそれぞれ積層された、厚さ5mmのアイボリー色相の塩化ビニル樹脂板を得た。
【0039】
(比較例1)
上記の基本組成カレンダーシートを10枚重ね合せ、上記と同様にホットプレスし、外層のみからなる厚さ5mmのアイボリー色相の塩化ビニル樹脂板を得た。
【0040】
実施例1及び比較例1の各塩化ビニル樹脂板を50×50mmに切断して各試料片を得た。各試料片は同一色相のアイボリー色相を呈していて、表裏面は勿論のこと、各端面を比較しても識別することができなかった。しかし、各試料片を暗室の中に入れ、各試料片の端面に、ブラックライトを照射すると、実施例1の試料片は内層のある中央部分が青紫色に発光したが、外層は発光することはなかった。また、比較例1の試料片は端面が全く発光することはなかった。このことにより、実施例1と比較例1の各試料片を識別することができた。
【0041】
この結果より、色相が略同一であっても、本発明の合成樹脂板は端面にブラックライトを照射することで、蛍光物質が配合している層が発光して、他の合成樹脂板と識別することが可能であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す合成樹脂板の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す合成樹脂板の断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態を示す合成樹脂板の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態を示す合成樹脂板の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示す合成樹脂板の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 内層
2 外層
3 中間層
4 樹脂層
P 合成樹脂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が0.01〜5質量%含まれていることを特徴とする合成樹脂板。
【請求項2】
略同色の内層と外層とが積層された合成樹脂板であって、少なくとも内層に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が含まれていることを特徴とする合成樹脂体。
【請求項3】
略同色の内層と外層とが積層された合成樹脂板であって、少なくとも外層に300〜400nmの波長の光により発光する蛍光物質が含まれていることを特徴とする合成樹脂体。
【請求項4】
蛍光物質がオキサゾール系化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の合成樹脂板。
【請求項5】
内層又は外層に蛍光物質が0.01〜5質量%含まれていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の合成樹脂板。
【請求項6】
蛍光物質を含む合成樹脂板の端面に、300〜400nmの波長の光を照射して蛍光物質を発光させることにより、他の合成樹脂板と識別することを特徴とする合成樹脂板の識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−274149(P2006−274149A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98019(P2005−98019)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】