説明

合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスおよびその前後方向を識別する方法

【課題】ガラス基板のような板状体のための合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスの前後方向を容易に識別できるようにする。
【解決手段】容器本体10は、その左方壁13および右方壁14に、凹陥部50A,50Bを有する。凹陥部50の第1の側壁52Aは底面51に鈍角で傾斜する面とされ、第2の側面52Bは底面51に垂直な面とされる。レーザ光を凹陥部50の底面から第1の側壁52Aを越えて左方壁13まで移動するときの反射光強度Lを測定し、受光強度Lxとして閾値Laを外れた低い強度が測定されたかどうかで、容器本体10が正しい向きかどうかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素板ガラス、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、蛍光表示管、サーマルヘッド用ガラス基板、カラーフィルターなどの各種のガラス基板、あるいはこれらのガラス基板を用いて製造した完成パネルなどのような板状体を搬送しあるいは保管するのに用いられる板状体搬送用ボックスと、その板状体搬送用ボックスの前後方向を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置等を組み込むのに用いられるガラス基板は、大型化しかつ薄板化している。そのようなガラス基板は、搬送時の衝撃等により損傷を受けやすい。そのために、ガラス基板等を搬送するときに使用する搬送用ボックスとして、特許文献1に記載されるような、緩衝性を有する合成樹脂発泡体製の容器本体と蓋体とよりなる容器であって、容器本体の相対向する側壁に一定ピッチで等間隔に並設された縦溝に、前記の板状体を1枚ずつ挿入して相互に接触させないように支持して収納するようにした搬送容器が用いられている。
【0003】
図8(a)は、そのような形態の容器本体の一例を示す斜視図であり、容器本体10Aは、相対向する後方壁11と前方壁12と、相対向する左方壁13と右方壁14である4つの側壁と低壁15とからなり、前記左方壁13と右方壁14の内側面には、容器本体10Aに収容した板状体の左右の側縁を挿入して支持するための一定ピッチで形成された複数の縦溝20からなる縦溝領域aが、前記後方壁11または前方壁12のいずれか一方に偏位した位置に形成されている。該縦溝領域aと後方壁11との間、および縦溝領域aと前方壁12との間は、縦溝20のない領域b1,b2となっており、図示の例で、縦溝領域aは前方壁12側に偏位した位置に形成されていることから、前記領域b1の横幅は領域b2の横幅よりも広くなっている。図8(a)には示されないが、容器本体の底壁と蓋体の天板面にも、収納される板状体の下縁と上縁を支持するための横溝が形成される場合がある。
【0004】
また、前記左方壁13と右方壁14の外側面には、持ち運びの便のために取手としての凹陥部50が形成されることもあり、通常、該凹陥部50は、その断面を図8(b)に示すように、平坦面である底面51と、該底面51に垂直な面とされた左右の側壁52,53および作業者の手または搬送治具の引っ掛かり部となる上端壁54で構成される。
【0005】
上記形態の板状体搬送用ボックスにおいて、板状体を容器本体10A内に収容する作業および収容した板状体を容器本体10Aから取り出す作業は、通常、作業ロボットを用いて行われる。作業は、搬送用ボックスの前後方向の一方の面(後方壁11と前方壁12のいずれかの表面)を基準面とし、そこから他方の面に向けて、前記縦溝20間のピッチと同じピッチでロボットアームが移動し、順次縦溝20内に板状体を挿入し、また、縦溝20から板状体を取り出していく。
【0006】
前記縦溝のない領域b1は、最後の板状体を挿入するとき、あるいは最初の板状体を取り出すときに、ロボットアームや作業用治具が容器本体10Aあるいは既に収容した板状体に干渉することなく容器本体内に入り込めるように設けられるものであり、そのために横幅が広くされている。また、縦溝のない領域b2は、外部からの衝撃時に収容した板状体と容器本体10Aの前方壁12に干渉するのを避けるために設けられるものであり、ロボットアームや作業用治具の挿入を予定しないことから、領域b2の横幅は領域b1の横幅よりも狭く設定し、有効収容容積をより大きくしている。
【特許文献1】特開2006−256663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業ロボットを用いて容器本体10A内へ板状体の収容作業および取り出し作業を行う場合、作業ロボットに対する容器本体10Aの前後の向きは、予め定めた向きでなければならない。特に、前記した容器本体10Aのように、板状体収容空間の前方側と後方側に、横幅の違う縦溝のない領域b1,b2が形成されている容器本体10Aでは、前後の向きを逆にして作業ロボットに対してセットすると、挿入および取り出し時に一定ピッチで動くロボットアームの各ピッチ毎の位置と縦溝領域aにおける縦溝20の位置とが一致しなくなり、板状体の挿入および取り出しができなくなる。さらに、作業時に容器の破壊および板状体の損傷が発生する。
【0008】
容器本体の前後の向きを目視で容易に認識できる形状であり、かつロボットへのセッティングを手作業で行う場合には、前後の向きを逆にするというセッティングミスは起こり難い。しかし、この種の合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスは、成形の容易性、収容および取り出し作業の容易性、あるいは保管時での省スペース化などの観点から、左右対照あるいは前後対照の形状に作られる場合が多く、作業者が前後の方向を間違えてセッティングするのを完全に回避することはきわめて困難である。そのために、作業者の視認に頼ることなく、板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを確実に識別できる識別方法が求められる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来用いられている板状体搬送用ボックスに対してわずかな形状変更を加えるのみで、識別手段が確実に板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別できるようにした合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスを開示することを第1の課題とする。また、前記板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを容易かつ確実に識別することのできる識別方法を開示することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスは、相対向する前方壁と後方壁および相対向する左方壁と右方壁である4つの壁と底壁とからなる上方が開口した容器本体と、容器本体に被着される蓋体とを備えた合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスであって、前記左方壁と右方壁の双方の外側面には、底面と前記前方壁側である第1側壁と前記後方壁側である第2側壁とを少なくとも有する凹陥部が形成されており、前記凹陥部の前記底面は平坦面であり、前記第1側壁と第2の側壁のいずれか一方は前記底面に垂直な面であり、他方は前記底面に鈍角で傾斜する面であることを特徴とする。
【0011】
容器本体として、その容器本体の左方壁と右方壁の内側面に、容器本体に収容した板状体の左右の側縁を挿入して支持するための複数の縦溝からなる縦溝領域が前記前方壁または後方壁のいずれか一方に偏位した位置に形成されている形状のものを用いることもできる。
【0012】
また、本発明による上記した合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法は、レーザ光を前記左方壁と右方壁に形成した凹陥部のいずれか一方における凹陥部の底面に向けて照射する工程と、レーザ光の照射を継続した状態で、レーザ光源または板状体搬送用ボックスのいずれかまたは双方を移動して、レーザ光の照射ポイントを前記底面位置から前記第1側壁と第2の側壁のいずれか一方を越えた位置まで移動させるレーザ光移動工程と、レーザ光移動工程におけるレーザ光の反射光を連続的に受光し、その間に受光強度が所定の閾値を外れた低い強度まで変化したかどうかを判定する工程と、前記判断工程の判定結果に基づき、対象となる板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する工程と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
上記した本発明による板状体搬送用ボックスは、従来のこの種の板状体搬送用ボックスの左右の側壁に形成されている凹陥部(好ましい一例として搬送の利便のために形成される取手部が挙げられる)における一方の側壁を、凹陥部の底面に対して鈍角で傾斜する面とするだけであり、大きな設計変更は伴わない。また、成形処理にも大きな変化はなく、板状体の収容および取り出し作業にも変化はない。さらに、保管時でのスペース等にも変化はない。
【0014】
また、上記した本発明による板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法は、レーザ光を容器本体に形成した前記凹陥部に照射した後、レーザ光が凹陥部の側壁を越えて凹陥部外にまで移動するときの、レーザ光受光部が検出する反射光の強度変化を判別し、それに基づき正しい向きかどうかを識別するものであり、識別方法としてきわめて容易であり、かつ確実な識別結果で得られる。使用するレーザ光は、識別の対象となる板状体搬送用ボックスに照射したときに、所要強度の反射光が得られることを条件に任意の波長および強度のレーザ光を用いることができるが、大気中での減衰が最も小さいことから、赤外線レーザ光は好ましい。
【0015】
好ましくは、本発明による合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスを構成する容器本体と蓋体は、熱可塑性樹脂の発泡性粒子を型内成形することによって成形される。より好ましくは、発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子を用いる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られたものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、更に好ましくは55〜75重量%である。発泡体の倍率は、10〜30倍程度が好ましい。
【0016】
発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子による成形品は、同じ発泡倍率の発泡ポリプロピレン系樹脂成形品に比べて強度があり、また深さが100cmを超える大型の容器本体等を成形しても収縮率が小さく、高い寸法精度を維持できる。さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂成形品に比べて、摩擦等による粉砕片が出難い長所がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスの前後方向を容易かつ確実に識別することができる。そのために、作業用ロボットを用いて板状体搬送用ボックス内に板状体を収容しあるいは取り出す作業を、支障なく遂行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明による合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスを実施の形態に基づき説明する。図1は板状体搬送用ボックスの全体を示す斜視図、図2は図1に示す板状体搬送用ボックスの左側面図(図2(a))と右側面図(図2(b))、図3は図1のIII−III線による断面図、図4は本発明による板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法を実行する装置の一例を説明するための主要構成図、図5は本発明による識別方法のフローを示す図、図6は識別が正の場合での受光強度の変化の一例を説明する図、図7は識別が偽の場合での受光強度の変化の一例を説明する図、である。
【0019】
図1に示すように、本発明による合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスAは合成樹脂発泡体からなり、4つの側壁と底壁とからなる上方が開口した容器本体10と、容器本体10に被着される蓋体30とを備える。この例において、容器本体10および蓋体30はともにスチレン改質ポリエチレン系樹脂素材の発泡性粒子を型内成形することによって形成されている。
【0020】
容器本体10の水平断面は長方形であり、図8に示した容器本体10Aと同様、相対向する後方壁11と前方壁12と、相対向する左方壁13と右方壁14である4つの側壁と低壁15とを有する。前方壁12の適所には、表面が凹凸面とされた領域Sが形成されており、シールやICタグ等を貼り付ける領域として用いられる。表面が凹凸面であることから、貼り付けられた部材の実接着面積を小さくすることができ、必要時に、シールやICタグ等を容易に剥離することができる。
【0021】
また、前記左方壁13と右方壁14の内側面には、容器本体10に収容した板状体の左右の側縁を挿入して支持するための一定ピッチで形成された複数の縦溝20からなる縦溝領域aが、前記前方壁12側に偏位した位置に形成されている。そのために、縦溝領域aと後方壁11との間に形成される縦溝20のない領域b1の横幅は、縦溝領域aと前方壁12との間に形成される縦溝20のない領域b2の横幅よりも広い。また、図示の例では、前記縦溝20のない領域b1と領域b2の双方に、縦溝20に沿う方向の凹溝21,22が形成されており(図3参照)、いずれの凹溝21,22もその横幅は前記縦溝20の1ピッチよりも広くされている。
【0022】
このように、縦溝20のない領域b1、b2に凹溝21,22を形成することにより、領域b1、b2での樹脂量を、縦溝20が形成されている縦溝領域aにおける対応する横幅での樹脂量とほぼ同等とすることができ、発泡成形後の養生時に発生する収縮量を、縦溝20が形成されている縦溝領域aと、凹溝21が形成されている領域b1と、凹溝22が形成されている領域b2と、でほぼ等しくすることができる。結果として、前記領域b1,b2に近い縦溝20に起こりやすかった、溝幅が狭くなる等の寸法変化を抑制することができる。なお、この凹溝21,22は、本発明による板状体搬送用ボックスAでは省略してもよい。
【0023】
図示の板状体搬送用ボックスAにおいて、容器本体10と蓋体30の外面には、容器本体10に蓋体30を被着した後に掛け渡すバンド(不図示)のための溝16、31が形成されている。また、図3に示すように、容器本体10の底面15と蓋体30の天板面には、収納される板状体の下縁と上縁を支持するための横溝40が形成される。
【0024】
本発明による板状体搬送用ボックスAにおいても、図8に示した容器本体10Aと同様に、容器本体10の左方壁13の外側面には取手として機能する左凹陥部50Aが、右方壁14の外側面には右凹陥部50Bが形成されている。ただし、左凹陥部50Aおよび右凹陥部50Bは、その形状の一部が、前記容器本体10Aに形成した凹陥部50と異なっている。
【0025】
すなわち、前記左凹陥部50Aは、図2(a)の左側面図および部分断面図に示すように、平坦面である底面51と、後方壁11側に形成される第1の側壁52Aと、前方壁12側に形成される第2の側壁53Aと、作業者の手または搬送治具の引っ掛かり部となる上端壁54で構成されている。そして、前記第1の側壁52Aは、前記底面51に鈍角で傾斜する面であり、前記第2の側壁53Aは、前記底面51に垂直な面とされている。
【0026】
また、前記右凹陥部50Bは、図2(b)の右側面図および部分断面図に示すように、平坦面である底面51と、後方壁11側に形成される第1の側壁52Bと、前方壁12側に形成される第2の側壁53Bと、作業者の手または搬送治具の引っ掛かり部となる上端壁54で構成されており、左凹陥部50Aと同様に、前記第1の側壁52Bは、前記底面51に鈍角で傾斜する面とされ、前記第2の側壁53Bは、前記底面51に垂直な面とされている。
【0027】
なお、図示のものでは、左凹陥部50Aと右凹陥部50Bは、全体として縦長状の同じ形状であるが、第1の側面52A,52Bが底面51に対して鈍角で傾斜する面であり、第2の側面53A,53Bが底面51に対して垂直な面であることを条件に、全体形状は任意であり、両者が異なった形状であってもよい。また、前記上端壁54は作業の利便のために設けられるものであり、上端壁54を有しない形状であってもよい。
【0028】
次に、上記した板状体搬送用ボックスAの前後方向を識別する方法を、図4〜図6を参照して、作業手順とともに説明する。最初に、図4に示すように、空のあるいは板状体を収容した板状体搬送用ボックスA(あるいは容器本体10)を、規定のテーブルTにセットする。テーブルTは、容器本体10内に板状体を収容しまた取り出す作業を行う作業ロボットに関連して設けられているテーブルであることが好ましいが、それに限らない。テーブルTには、好ましくは、容器本体10の低壁15に形成した溝16に係合する位置決め用突起Taを形成する。
【0029】
搬送用ボックスAの前後方向を識別するための装置100は、レーザ発光手段101と、該レーザ発光手段101から照射されるレーザ光が被検知体(この例では、板状体搬送用ボックスA)に当たり、そこから反射してくる反射光を受光する反射光受光手段102と、該反射光受光手段102からの反射光強度に関する信号を処理するコンピュータ110とを備える。コンピュータ110は、反射光強度Lの閾値Laに関するデータを格納する閾値データ格納手段111と、反射光受光手段102からの反射光受光強度Lxと閾値データとを比較し、受光強度Lxが所定の閾値Laを外れた低い強度まで変化したかどうかを判定する比較判定手段112と、比較判定手段112の判定結果を表示する表示手段113を備える。
【0030】
板状体搬送用ボックスA(あるいは容器本体10)をテーブルTにセット(S01)した後、レーザ発光手段101は、その左方壁13に形成した凹陥部50Aまたは右方壁14に形成した凹陥部50Bのいずれか一方の底面51に対して垂直方向にレーザ光を照射し、反射光受光手段102は、その反射光を受光する(S02)。反射光強度信号はコンピュータ110に送られ、比較判断手段112はその強度を測定する(S03)。なお、以下の説明では、左方壁13に形成した凹陥部50Aにレーザ光を照射する場合を例とする。
【0031】
凹陥部50Aの底面51にレーザ光の照射を継続した状態で、テーブルTを図4で右方向に移動させるか、レーザ発光手段101および反射光受光手段102を左方向に移動させる。双方を同時移動させてもよい。いずれの場合にも、レーザ光の照射ポイントは、図6に示すように、凹陥部50Aの底面51における所定位置S1から、底面51に鈍角で傾斜している面である前記第1の側壁52Aを越え、左方壁13の表面まで、相対的に移動する。この工程をレーザ光移動工程(S04)という。
【0032】
コンピュータ110の比較判断手段112は、レーザ光が上記の所定距離を移動したかどうかを監視する(S05)。また、閾値データ格納手段101から識別しようとする板状体搬送用ボックスA(あるいは容器本体10)に関する前記閾値Laに関するデータを取り込むとともに、受光強度Lxが所定の閾値Laを外れた低い値を示したかどうかを判定する(S06)。
【0033】
すなわち、図6にレーザ光の移動距離と反射光強度Lとの関係を示すように、測定開始時におけるポイントS1では、反射光の多くが反射光受光手段102でとらえられるので、実際に受光する受光強度Lxは閾値Laを越えた大きな値を示す。第1の側壁52Aの開始点であるポイントS2から終了点であるポイントS3の間では、反射光のほとんどは第1の側壁52Aの傾斜角度に応じた方向に向かうこととなり、反射光受光手段102に達する反射光はほとんど0となる。そのために、ポイントS2〜S3の間では、反射光受光強度Lxは閾値Laを外れた低い値(図6ではほぼ0)の値を示す。ポイントS3を越えると、レーザ光は左方壁13の表面上を照射するが(ポイントS4)、左方壁13の表面と凹陥部50Aの底面51はほぼ平行な面であり、ポイントS4での反射光は再び反射光受光手段102でとらえられる。図6に示すように、レーザ光反射面と反射光受光手段102との間の距離の関係で、ポイントS4での反射光受光強度Lxは、ポイントS1におけるよりも大きくなる場合もある。
【0034】
従って、反射光の受光強度が図6に示すような変化を示した場合は、すなわち、S06で、比較判断手段112が、受光強度は閾値を外れた低い値を示したと判定した場合は、板状体搬送用ボックスAあるいは容器本体10は、後方壁11を図で左側となる位置で、テーブルTにセットされているものと判断して、正と識別し(S07)、表示手段113に正であることを示す適宜の信号を送る。その場合には、容器本体10への板状体の収容作業あるいは板状体搬送用ボックスAからの収容した板状体の取り出し作業は、そのまま進行することとなる。
【0035】
図7は、板状体搬送用ボックスAあるいは容器本体10の前後方向が、設定とは反対向き(図4に示した向きとは逆の向き)になっている場合での、レーザ光の移動距離と反射光受光強度Lとの関係を示す。この場合には、レーザ光は、その移動の過程で、凹陥部50Aの第2の側面53Aの位置を通過する。しかし、第2の側面53Aは底面51に対して垂直な面であり、そのポイントSpにおいて、反射光受光手段102がとらえる反射光受光強度Lxは、閾値Laより低い値となることはなく、むしろ、レーザ光反射面と反射光受光手段102の間の距離の関係で、ポイントSp以降での反射光受光強度Lxは、ポイントS1における値よりも大きくなる。この場合に、S06で、比較判断手段112は、受光強度は閾値を外れた低い値を示さない判定し、偽と判定する(S08)。そして、表示手段113に偽であることを示す適宜の信号を送る。その場合には、作業者は、板状体搬送用ボックスAあるいは容器本体10の前後方向の向きを反転させる操作を行う。その操作の後に、容器本体10への板状体の収容作業あるいは板状体搬送用ボックスAからの収容した板状体の取り出し作業を行うこととなる。
【0036】
なお、上記の説明では、容器本体10の後方壁11が基準方向に向いている場合を「正」として識別するようにしたが、前方壁12が基準方向に向いている場合を、「正」として識別するようにしてもよい。その場合には、図5におけるS06での判断がYの場合に「偽」と識別し、Nの場合に「正」と識別することとなる。また、本発明において「閾値La」の値は、実際に識別作業を行う作業環境に応じて、実験的に最適な値を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】板状体搬送用ボックスの全体を示す斜視図。
【図2】図1に示す板状体搬送用ボックスの左側面図(図2(a))と右側面図(図2(b))。
【図3】図1のIII−III線による断面図。
【図4】本発明による板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法を実行する装置の一例を説明するための主要構成図。
【図5】本発明による識別方法のフローを示す図。
【図6】識別が正の場合での受光強度の変化の一例を説明する図。
【図7】識別が偽の場合での受光強度の変化の一例を説明する図。
【図8】従来の容器本体の一例を説明するための斜視図。
【符号の説明】
【0038】
A…合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックス、10…容器本体、30…蓋体、11…後方壁、12…前方壁、13…左方壁、14…右方壁、15…低壁、a…複数の縦溝からなる縦溝領域、b1,b2…縦溝のない領域、21,22…縦溝のない領域に形成された凹溝、16…バンドのための溝、50A…左凹陥部、50B…右凹陥部、51…底面、52A、52B…第1の側壁(底面に鈍角で傾斜する面)、53A,53B…第2の側壁(底面に垂直な面)、T…テーブル、Ta…位置決め用突起、L…反射光強度、La…閾値、Lx…反射光受光強度、100…搬送用ボックスの前後方向を識別するための装置、101…レーザ発光手段、102…反射光受光手段、110…コンピュータ、111…閾値に関するデータを格納する閾値データ格納手段、112…比較判定手段、113…表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する前方壁と後方壁および相対向する左方壁と右方壁である4つの壁と底壁とからなる上方が開口した容器本体と、容器本体に被着される蓋体とを備えた合成樹脂発泡体製の板状体搬送用ボックスであって、
前記左方壁と右方壁の双方の外側面には、底面と前記前方壁側である第1側壁と前記後方壁側である第2側壁とを少なくとも有する凹陥部が形成されており、前記凹陥部の前記底面は平坦面であり、前記第1側壁と第2の側壁のいずれか一方は前記底面に垂直な面であり、他方は前記底面に鈍角で傾斜する面であることを特徴とする板状体搬送用ボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の板状体搬送用ボックスであって、前記容器本体の左方壁と右方壁の内側面には、容器本体に収容した板状体の左右の側縁を挿入して支持するための複数の縦溝からなる縦溝領域が前記前方壁または後方壁のいずれか一方に偏位した位置に形成されていることを特徴とする板状体搬送用ボックス。
【請求項3】
前記凹陥部は前記容器本体に形成された取手部であることを特徴とする請求項1または2に記載の板状体搬送用ボックス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法であって、
レーザ光を前記左方壁と右方壁に形成した凹陥部のいずれか一方における凹陥部の底面に向けて照射する工程と、
レーザ光の照射を継続した状態で、レーザ光源または板状体搬送用ボックスのいずれかまたは双方を移動して、レーザ光の照射ポイントを前記底面位置から前記第1側壁と第2の側壁のいずれか一方を越えた位置まで移動させるレーザ光移動工程と、
レーザ光移動工程におけるレーザ光の反射光を連続的に受光し、その間に受光強度が所定の閾値を外れた低い強度まで変化したかどうかを判定する工程と、
前記判断工程の判定結果に基づき、対象となる板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする板状体搬送用ボックスの前後方向の向きを識別する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−1028(P2010−1028A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158799(P2008−158799)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】