説明

合成樹脂管の地中敷設工法

【課題】 地盤中に、特に、施工が困難である砂礫、玉石および岩盤層等の地盤中でも、鞘管(ケーシング管)を使用しないで合成樹脂管を非開削で直接敷設できる合成樹脂管の地中敷設工法を提供する。
【解決手段】 敷設すべく合成樹脂管内には、中空のロッドが挿入され、このロッドの先端に打撃装置が連結されて合成樹脂管内の先端側に位置し、この打撃装置には先端側に合成樹脂管の外径より僅かに大きい外径の掘削ロッドビットが、合成樹脂管先端より外出して連結され、
合成樹脂管およびロッドの後端は、合成樹脂管およびロッドに推力を付与する推進機に連結され、
打撃装置で掘削ビットに打撃力を付与して掘削しつつ合成樹脂管に推力を付与し地中に推進し敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に合成樹脂管(例えば、塩化ビニル管、ポリエチレン管)を敷設する合成樹脂管の地中敷設工法に関し、特に、施工が困難である砂礫、玉石、岩盤層等の地盤中でも、ケーシング管(鞘管)を使用しないで塩ビ管等の合成樹脂管を直接敷設できる合成樹脂管の地中敷設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中には、下水道管路、上水道管路、ガス管路および電線管路等の種々の管路が、鋼管、合成樹脂管等を敷設することによって設けられている。これらの管の敷設工法で、例えば、下水道管路は、図9に示すように本管20の敷設と、家庭の宅内枡22と本管20とを接続する枝管21との敷設(埋設)工事がある。従来、この間の敷設(埋設)工事は、開削工法によって行われていた。例えば、道路23に沿って開削溝を掘削して、この開削溝内に本管20を敷設し、マンホール24を設置した後、開削溝を埋め戻すことによって本管20が敷設されていた。そして、家庭の宅内枡22と本管20とを結ぶ枝管21は、開削工法によって本管20から宅内枡22との間を結ぶ敷設用の溝を掘削し、この溝に枝管21を敷設し、溝を埋め戻すことによって行っていた。
【0003】
このような開削工法での道路に沿っての本管の埋設工事においては、交通規制が必要となり、交通渋滞の原因になるし、歩行者、走行車の安全対策も必要となる。開削溝の掘削及びこの埋め戻しに多大の時間と労力が必要となるし、道路の舗装復旧も加わるため多大の経費が必要となる。また、枝管21の埋設工事においては、図9に例示するように本管20と宅内枡22との間に塀25や植木26および水路、他の埋設管等が存在する場合には、それが障害物となり、これらの撤去作業や修復作業が伴い、施工が困難となることも多い。
【0004】
そこで、このような課題を解決するものとして、開削溝を掘削することなく地中に各種の管を敷設する非開削工法が提供されている。従来、この非開削工法には、敷設すべく埋設管の先端に円錐形の推進ヘッドを設け、この埋設管を発信立坑側から推進機により押し込み地中に推進させ敷設する工法(例えば、特許文献1、2および3参照)、
敷設すべく埋設管内に、オーガスクリューと先端にカッタヘッドを備えるオーガを挿通し、このオーガで掘削し、土砂を埋設管内より立坑側に排土しつつ埋設管を地中に推進させ敷設する工法(例えば、特許文献4および5参照)、等が提供されている。
【特許文献1】特開昭50−146112号公報
【特許文献2】特開平9−14480号公報
【特許文献3】特開平10−68290公報
【特許文献4】特開平2−144498号公報
【特許文献5】特開平9−60475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、敷設すべく埋設管の先端に円錐形の推進ヘッドを設け、この埋設管を推進ヘッドを先頭に発進立坑側から推進機により押し込み地中に推進させる敷設工法は、埋設管に大きな押し込み力(推力)を付与し、先頭の推進ヘッドで土砂を圧密して削孔しつつ埋設管を推進させるために、埋設管が塩化ビニル管やポリエチレン管のような耐力のない合成樹脂管の場合には、座屈、変形及び破損等が発生する課題、および埋設すべく地盤に砂礫、玉石および岩盤層等が存在する場合には削孔できず敷設できない課題がある。
また、敷設すべく埋設管内に、オーガスクリューと先端にカッタヘッドを備えるオーガを挿通し、このオーガで掘削し、掘削土砂を埋設管内より立坑側に排土しつつ埋設管を地中に推進させて敷設する工法は、合成樹脂管でも敷設可能であるが、やはり地盤中に玉石、岩盤層が存在する場合には削孔できず敷設できない課題がある。玉石等はオーガにより埋設管内に運ばれ、オーガスクリューと埋設管の内壁との間に挟まり、オーガの回転を不能とすることがあり、また、オーガでは、先端にカッタヘッドを備えていても岩盤層は掘削できないか、できたとしても削孔は長時間を要し、実際には使用に不向きである。
【0006】
さらに、合成樹脂管の場合は、強度の高い鋼管などを鞘管(ケーシング管)として配設し、この鞘管内に合成樹脂管を挿入して埋設する工法も提供されている。この工法によれば合成樹脂管であっても、合成樹脂管には推力や削孔壁面との摩擦抵抗等による高い応力がかからないので、座屈、変形および破損等が発生することなく容易に敷設できる。しかし、この工法は、敷設すべく埋設管の他に鞘管を使用するために、その分多く費用がかかるし、鞘管と埋設管の施工であり、また鞘管内に埋設管を挿通した後、鞘管と埋設管との間に充填材を注入したりする施工であり、施工工程が多くなる課題がある。
【0007】
この発明は、このような課題を解決せんと提案されたものであり、その目的は、地盤中に、特に、施工が困難である砂礫、玉石および岩盤層等の地盤中でも、鞘管(ケーシング管)を使用しないで合成樹脂管を非開削で直接敷設できる合成樹脂管の地中敷設工法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、敷設すべく合成樹脂管が、先端にリングビットを備えており、この合成樹脂管内には中空のロッドが挿入され、このロッドの先端に打撃装置が連結されて合成樹脂管内の先端側に位置し、この打撃装置には先端側に合成樹脂管の外径より僅かに大きい外径の掘削ビットが、合成樹脂管先端のリングビットより先行位置として連結され、
合成樹脂管およびロッドの後端は、合成樹脂管およびロッドに推力を付与する推進機に連結され、
ロッドは推進機に設けられたスイベルに連結され、ロッドの中空部が流体通路となり、前記スイベルを介し流体圧力源よりロッドの流体通路を通して打撃装置に圧縮流体が供給されて打撃装置が駆動される掘削装置、を使用して合成樹脂管を地中に敷設する合成樹脂管の地中敷設工法であって、
前記掘削装置を立坑内に設置し、合成樹脂管の先端を敷設すべき方向に向けてセットし、打撃装置を駆動し掘削ビットに打撃力を付与して地中を敷設すべき方向に向けて掘削しつつ推進機で合成樹脂管とロッドに推力を付与し地中に推進し、合成樹脂管が所定の到達立坑または宅内枡に到達したら掘進を停止し、掘削ビットを取り外すか又は縮径して打撃装置およびロッドを合成樹脂管より引き抜き、敷設することを特徴とする。
また、合成樹脂管の先端に備えるリングビットは、無くてもよい。
【0009】
これにより掘削ビットは、打撃装置により打撃力が付与され、推進機により推力が付与されて削孔しつつ掘進する。この掘削ビットは、合成樹脂管先端より先行する位置にあるため、合成樹脂管は、掘削ビットで掘削した削孔に掘削ビットに追随して推進機の推力で押し込まれる格好となる。この時、掘削ビットの外径は、合成樹脂管の外径より僅かに大きいため、掘削ビットが形成する削孔は、合成樹脂管の外径より僅かに大きい。従って、合成樹脂管は小さい推力で押し込むことができ、大きな外力は作用しないので、合成樹脂管でも座屈、変形、破損等を生ずることなく、ケーシング管(鞘管)を使用せず、地中に直接敷設することができる。
また、掘削ビットには、打撃装置による打撃力が付与されるので、砂礫、玉石および岩盤層等の地盤中でも、容易に削孔でき、合成樹脂管でもケーシング管(鞘管)を使用せず直接敷設できる。
さらに、ケーシング管(鞘管)を使用せずに直接地中に敷設できるので、施工工程が少なく、しかも施工時間が短くて済む。
【0010】
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記推進機に回転駆動機構が設けられ、ロッドは該回転駆動機構に連結され、掘削ビットは、ロッドを介し回転駆動機構により回転可能となっており、
掘削ビットには、打撃装置による打撃力、推進機による推力および回転駆動機構による回転力が付与され、地中を掘進することを特徴とする。
これにより前記作用、効果に加え、掘削ビットには打撃力の他に回転力も付与して掘進するので、掘削効率がより向上し、施工時間も更に短縮できる。
【0011】
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記推進機には回転駆動機構が設けられ、合成樹脂管は該回転駆動機構に連結されて回転可能となっており、
合成樹脂管には、推進機による推力および回転駆動機構による回転力が付与され、地中を推進することを特徴とする。
これにより前記作用、効果に加え、合成樹脂管にも回転力が付与され、合成樹脂管を回転しつつ推進できるので、地中への押し込み進入を一層容易にすることができる。しかし、実際には塩化ビニル管等を回転させると外周面に傷が付くおそれがある為、回転させず推進させるのが好ましい施工といえる。
【0012】
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記推進機には回転駆動機構が設けられ、ロッドは該回転駆動機構に連結され、掘削ビットはロッドを介し回転駆動機構により回転可能となっており、
前記リングビットは、合成樹脂管の先端に回転可能に設けられており、掘削ビットより掘削ビットの回転力が伝達可能となっていることを特徴とする。
これにより前記作用、効果に加え、掘削ビットには打撃力、回転力および推力が付与されるばかりでなく、リングビットにも回転力が付与されるので、リングビットを回転しつつ掘進できるので、合成樹脂管の地中への押し込み進入は、さらに一層容易になる。
【0013】
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記掘削ビットが、拡径・縮径可能なビットであって、掘進時は拡径し、到達立坑または宅内枡に到達したら縮径して合成樹脂管内を打撃装置およびロッドと共に引き抜くことを特徴とする。
これにより掘削ビットは合成樹脂管が到達立坑または宅内枡に到達するまでは拡径して掘削し、到達したら縮径して、合成樹脂管から打撃装置およびロッドと共に引き抜くことができる。
【0014】
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記掘削ビットが、打撃装置に着脱可能に連結され、到達立坑または宅内枡に到達したら打撃装置より取り外し、合成樹脂管内より打撃装置およびロッドを引き抜くことを特徴とする。
これにより掘削ビットは、到達立坑または宅内枡に到達したら、打撃装置より取り外して打撃装置およびロッドを合成樹脂管より引き抜くことができる。
【0015】
さらに、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法は、前記掘削ビットには打撃装置と連通する排出孔が先端面および/または側面に向かって貫通して設けられ、打撃装置を駆動させた圧縮流体は、該排出孔より排出されることを特徴とする。
これによりスイベルを介し流体圧力源(例えば、コンプレッサ)よりロッドの流体通路(中空部)を通して打撃装置に供給された圧縮流体(例えば、圧縮空気)は、打撃装置を駆動した後、掘削ビットの排出孔より排出される。
この時、合成樹脂管と打撃装置の間および合成樹脂管とロッドとの間が、流体の排出通路となっていると、前記掘削ビットの排出孔より排出された流体は、スライムを伴って排出通路より立坑側に排出される。
これにより掘削ビットで掘削して発生する土砂(スライム)は、立坑側に排出しつつ掘進できるので、掘削抵抗が減少し掘進がより容易となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の合成樹脂管の地中敷設工法によれば、次のような効果を奏する。
(1)合成樹脂管でも座屈、変形、破損等を生ずることなく、ケーシング管(鞘管)を使用せずに、かつ非開削で地中に直接敷設することができる。
(2)掘削ビットには、打撃装置により打撃力が付与されるので、地盤中に砂礫、玉石、および地盤層等が存在する地盤中でも、容易に掘削でき、合成樹脂管でもケーシング管(鞘管)を使用せずに、また非開削で座屈、変形、破損等を生ずることなく直接地中に敷設できる。
【0017】
(3)合成樹脂管は、ケーシング管(鞘管)を使用せずに直接地中に敷設できるので、施工工程が少なく、施工時間も短い。従って、施工費用も安価となる。
(4)非開削工法なので、歩行者、走行車の障害となったりすることがないし、歩行者、走行車への対策も必要ないし、地上に建物、塀および植木等の障害物が存在しても、障害物はそのままの状態で施工できる。
【0018】
(5)掘削ビットに打撃力の他に回転力も付与して掘進すると、掘削効率が向上し、施工時間も更に短縮できる。
(6)合成樹脂管にも回転力を付与すると、合成樹脂管を回転しつつ掘進できるので、地中への押し込みや進入を一層容易にすることができ、施工時間も短縮できる。
(7)リングビットが回転でき、リングビットにも回転力を付与すると、合成樹脂管は回転せず推力だけ付与し、リングビットを回転しつつ掘進できるので、合成樹脂管の地中への押し込み進入は、一層容易となるし、合成樹脂管には推力だけしか付与されないので、合成樹脂管には座屈、変形、破損等を生じさせるおそれもない。
【0019】
(8)掘削ビットに打撃装置と連通する排出孔が設けられていると、スイベルを介し流体圧力源(例えば、コンプレッサ)よりロッドの流体通路(中空部)を通して打撃装置に供給された圧縮流体(例えば、圧縮空気)は、打撃装置を駆動した後、掘削ビットの排出孔より排出できる。
(9)また、合成樹脂管と打撃装置の間、および合成樹脂管とロッドとの間が、流体の排出通路となっていると、掘削ビットの排出孔より排出された流体は、スライムを伴って排出通路より立坑側に排出でき、これにより掘削ビットで掘削して発生するスライムは、立坑側に排出しつつ掘進できるので、掘削抵抗が減少し掘進がより容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、合成樹脂管の地中敷設工法として、下水道管を地中敷設する実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は下水道管の本管を地中敷設する断面模式図であり、図2は下水道管の枝管を地中敷設する断面模式図である。
【0021】
図1では、例えば図9に示す下水道管の本管20を地中敷設する場合であり、発進立坑27内に設置した掘削装置1としての推進機2で本管20が到達立坑28に向けて掘進され、地中敷設されている様子が模式的に示され、図2では、例えば図9に示す下水道管の枝管21を地中敷設する場合であり、立坑27内に設置した掘削装置1としての推進機2で枝管21が宅内枡22に向けて掘進され、地中敷設する様子が模式的に示されている。この場合の下水道管の本管20および枝管21が合成樹脂管であることはいうまでもなく、図1乃至図8では符号7として示され、以下では合成樹脂管7として説明する。
【0022】
図3はこの発明の実施の形態の要部を示す一部断面説明図である。敷設すべく合成樹脂管7には、先端にリングビット8が連結され、この合成樹脂管7内には中空のロッド9が挿入され、このロッド9の先端に打撃装置10が連結されて合成樹脂管7内の先端側に位置し、この打撃装置10には、先端側に合成樹脂管7の外径より僅かに大きい外径の掘削ビット11が、合成樹脂管7先端のリングビット8より先行位置として連結され、合成樹脂管7およびロッド9の後端は、該合成樹脂管7およびロッド9に推力を付与する推進機2に連結されている。
【0023】
推進機2は、機台5に設けられたガイドレール6に沿って進退自在に取り付けられ、図示しないシリンダのピストンロッドに連結され、ガイドレール6に沿って進退されるようになっている。従って、推進機2に連結された合成樹脂管7およびロッド9には、推進機2によって推力を付与することができる。
【0024】
前記推進機2にはスイベル3が連結され、このスイベル3にはホース4を介して図示しない流体圧力源、例えばコンプレッサに連結されている。
前記推進機2に連結された中空のロッド9は、中空部が流体通路となっており、スイベル3に連通され、打撃装置10には前記推進機2を介して流体圧力源、例えばコンプレッサよりロッド9の流体通路を通して圧縮流体、例えば、空気圧が供給され、打撃装置10を駆動するようになっている。この打撃装置10としては、ハンマーを内蔵し供給された圧縮流体で作動するものを示すことができる。
この打撃装置10を駆動した圧縮流体、例えば圧縮空気は、図3に示すように合成樹脂管7と打撃装置10との間16、および合成樹脂管7とロッド9との間17を流体の排出通路として立坑27側に排出するか、または掘削ビット11に打撃装置10と連通する排出孔(図示省略)が先端面および/または側面に向かって貫通して設けられ、打撃装置10を駆動させた圧縮流体、例えば圧縮空気は、該排出孔より排出され、合成樹脂管7と打撃装置10との間16、および合成樹脂管7とロッド9との間17の排出通路よりスライムを伴って立坑27側に排出するようにする。
【0025】
しかして、掘削装置1として推進機2を立坑27内に設置し、合成樹脂管7の先端を敷設すべき方向に向けてセットし、打撃装置10を駆動すると掘削ビット11に打撃力が付与されるので、該掘削ビット11で地中は敷設すべき方向に向けて掘削される。そこで推進機2で合成樹脂管7とロッド9に推力を付与すると、合成樹脂管7は、掘削ビット11で掘削した削孔に沿って推進機2で順次押し込まれて進入し、ついには到達立坑28または宅内枡22に到達する。合成樹脂管7が所定の到達立坑28または宅内枡22に到達したら推進機2での推進および打撃装置10の打撃駆動を停止し、掘削ビット11を取り外すか又は縮径して打撃装置10およびロッド9を合成樹脂管7より引き抜き、合成樹脂管7の地中敷設が完了する。当然に合成樹脂管7の先端に設けられたリングビット8も取り除く。なお、リングビット8は必ずしも必要ではないが、設けると削孔に沿っての地中への進入が容易となり、合成樹脂管7に不要な外力がかからず、座屈、変形、破損等から防止できるので好ましい。
【0026】
このような合成樹脂管7の地中敷設工法によれば、掘削ビット11は、打撃装置10により打撃力が付与され、推進機2により推力が付与されて削孔しつつ掘進する。この掘削ビット11は、合成樹脂管7先端より先行する位置にあるため、合成樹脂管7は、掘削ビット11に追随して推進機2の推力で押し込まれる格好となる。この時、掘削ビット11の外径は、合成樹脂管7の外径より僅かに大きいため、掘削ビット11が形成する削孔は、合成樹脂管7の外径より僅かに大きい。従って、合成樹脂管7には進入に際し付加される抵抗が少ないため、小さな推力で押し込むことができ、大きな外力(摩擦抵抗等)が作用せず、合成樹脂管でも座屈、変形、破損等を生ずることなく、ケーシング管(鞘管)を使用せず地中に直接敷設することができる。
【0027】
また、掘削ビット11には、打撃装置10による打撃力が付与されるので、砂礫、玉石および岩盤層等の地盤中でも、容易に削孔でき、合成樹脂管でもケーシング管(鞘管)を使用せず直接敷設できる。
また、ケーシング管(鞘管)を使用せずに直接地中に敷設できるので、施工工程が少なく、しかも施工時間も短縮する。
さらに、非開削工法なので、歩行者、走行車の交通の障害も生ぜず、合成樹脂管7を敷設する地上に、建物、塀および植木等の障害物があっても支障なくそのままの状態で施工できる。
【0028】
なお、この合成樹脂管7の地中敷設工法では、合成樹脂管7およびロッド9は、1本の長尺な合成樹脂管およびロッドを使用するのではなく、所定長の合成樹脂管およびロッドを使用し、所定長が地中に進入したら合成樹脂管7およびロッド9の後端に所定長の合成樹脂管およびロッドを継ぎ足すことを順次繰り返して施工するものである。
また、この発明の合成樹脂管の地中敷設工法では、合成樹脂管7と合成樹脂管7に挿入されたロッド9とは、常に同心状態を維持することが必要である。そのためロッド9には、図3に示すようにスタピライザ12を設けると、ロッド9が合成樹脂管7と常に同心的に保持されるので好ましい。
【0029】
図4は、前記実施の形態に示す合成樹脂管の地中敷設工法の施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す説明図である。この施工例は、掘削ビットが着脱可能なビットの場合の例である。
まず、ロッド9の先端に打撃装置10を連結して先端にリングビット8を備える合成樹脂管7内に挿入する。この合成樹脂管7の先端側から合成樹脂管7の外径より僅かに大きい外径の掘削ビット11が打撃装置10に連結される。本例の掘削ビット11は、打撃装置10に着脱可能なビットである。そして、この合成樹脂管7とロッド9の後端は、立坑27内に設置された推進機2(図1乃至図3参照)に取り付けられる。
次に、この推進機2に取り付けられた合成樹脂管7は、先端を敷設すべき方向に向けてセットし、掘削ビット11に打撃装置10により打撃力を付与し、推進機2で推力を付与して削孔しつつ掘進する。すると合成樹脂管7は、掘削ビット11で掘削した削孔に掘削ビット11に追随して推進機2の推力で押し込まれ、敷設すべき方向に進入する(図4(a))。
【0030】
すると遂には図4(b)に示すように合成樹脂管7は、所定の到達立坑28または宅内枡22に到達する。そこで、打撃装置10および推進機2の駆動を停止し、到達立坑28または宅内枡22側から図4(c)に示すように掘削ビット11を打撃装置10より取り外す。
次に、図4(d)に示すように推進機2により打撃装置10およびロッド9を合成樹脂管7より引き抜く。この引き抜きは、推進機2によりロッド9を引き抜くことにより打撃装置10も引き抜くことができる。この場合のロッド9の引き抜きは、地中進入施工とは逆に、所定長を引き抜いたら、所定長のロッドを取り外すことを繰り返すことによって行う。掘削ビット11は、合成樹脂管7の外径より僅かに大きいが、取り外されているので、打撃装置10およびロッド9は、合成樹脂管7内を挿通でき、引き抜くことが可能となる。これにより図4(e)に示すように合成樹脂管7の地中敷設が完了する。この地中敷設が完了後には合成樹脂管7の先端に取り付けられているリングビット8は、取り外す。
【0031】
掘削ビット11を打撃装置10に着脱可能とする構成は、従来公知のものが採用可能である。例えば、掘削ビット11と打撃装置10がネジ結合する構成、および一方に凸部、他方に該凸部が嵌入する凹溝を設け、互いに嵌合することで結合する構成、等を一例として挙げることができる。
【0032】
図5は、前記実施の形態に示す合成樹脂管の地中敷設工法の他の施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す説明図である。この施工例は、掘削ビットが拡縮可能なビットの場合である。
まず、ロッド9の先端に打撃装置10を連結して先端にリングビット8を備える合成樹脂管7内に挿入する。この合成樹脂管7内に挿入された打撃装置10には、合成樹脂管7の先端側から合成樹脂管7の外径より僅かに大きい外径の掘削ビット(拡縮ビット)11が連結される。本例の掘削ビット11は、拡縮可能なビットであり、拡径すると外径が合成樹脂管7の外径より僅かに大きくなり、縮径すると外径が合成樹脂管7の内径より小さくなるビットである。従って、この拡縮ビットの場合は、先に打撃装置10の先端側に取り付けて、縮径状態で合成樹脂管7内に挿通してセットしてもよい。。そして、この合成樹脂管7とロッド9の後端は、立坑27内に設置された推進機2に取り付けられる。
次に、この推進機2に取り付けられた合成樹脂管7は、先端を敷設すべき方向に向けてセットし、拡径した掘削ビット11に打撃装置10により打撃力を付与し、推進機2で推力を付与して削孔しつつ掘進する。すると合成樹脂管7は、掘削ビット11で掘削した削孔に掘削ビット11に追随して推進機2の推力で押し込まれ、敷設すべき方向に進入する(図5(a))。
すると遂には図5(b)に示すように合成樹脂管7は、所定の到達立坑28または宅内枡22に到達する。そこで、打撃装置10および推進機2の駆動を停止し、図5(c)に示すように掘削ビット11を縮径する。
次に、図5(d)に示すように推進機2により縮径した掘削ビット11、打撃装置10およびロッド9を合成樹脂管7より引き抜く。この時、掘削ビット11は、合成樹脂管7の内径より小さい径に縮径しているので、合成樹脂管7内を挿通できる。これにより図5(e)に示すように合成樹脂管7の地中敷設が完了する。この地中敷設完了後には、合成樹脂管7の先端に取り付けられているリングビット8は取り外す。
【0033】
拡縮可能な掘削ビット11としては、リトラクトビットなどの従来公知のものを採用し得る。例えば、特許第2574705号に示すものを例示することができる。このリトラクトビット(掘削ビット11)は、例えば、図6(a)(b)に示すように一方向の回転で拡径(図6(a))し、多方向の回転で縮径(図6(b))するビットである。この拡縮可能なビット(拡径ビットともいう)の場合には、ビットが複数の分割体で構成されているため、そのうちの1枚だけの外径をオーバーサイズ(少し大径)にしておくと、掘削・推進時の多少の方向修正が可能となる。実験によれば、この拡径ビットでは、正転、反転を繰り返すことで多少の方向修正ができた。この実験は、中空ロッドの中へターゲットを挿入し、目視することで確認した。
【0034】
なお、前記実施の形態は、掘削ビット11、合成樹脂管7およびリングビット8は、回転しない場合で説明したが、これらは回転するようにしてもよい。
即ち、前記推進機2には回転駆動機構(図示省略、以下同じ)が設けられ、ロッド9は該回転駆動機構に連結され、掘削ビット11はロッド9を介し回転駆動機構により回転可能となっており、
掘削ビット11には、打撃装置10による打撃力、推進機2による推力および回転駆動機構による回転力が付与され、地中を掘進するようにしてもよい。回転駆動機構としては、モータにより伝導機構を介して回転させる構成を例示できる。
この実施の形態によれば、掘削ビット11には打撃力の他に回転力も付与して掘進できるので、掘削効率がより向上し、施工時間も更に短縮する。
【0035】
また、前記推進機2には回転駆動機構が設けられ、合成樹脂管7は該回転駆動機構に連結されて回転可能となっており、
合成樹脂管7には、推進機2による推力および回転駆動機構による回転力を付与して、地中を掘進するようにしてもよい。
この実施の形態によれば、合成樹脂管7にも回転力が付与され、合成樹脂管7を回転しつつ推進できるので、地中への押し込み進入を一層容易にすることができる。
【0036】
また、前記推進機には回転駆動機構が設けられ、ロッドは該回転駆動機構に連結され、掘削ビットはロッドを介し回転駆動機構により回転可能となっており、
前記リングビットは、合成樹脂管の先端に回転可能に設けられており、掘削ビットより掘削ビットの回転力が伝達可能となっていてもよい。
この実施の形態によれば、掘削ビット11には打撃力、回転力および推力が付与されるばかりでなく、リングビット8にも回転力が付与されるので、リングビット8を回転しつつ掘進できるので、合成樹脂管7の地中への押し込み進入は、さらに一層容易になる。
【0037】
この掘削ビット11の回転力をリングビット8に伝達する構成の一例を、図7および図8について説明する。図7はこの実施の形態を示す斜視図、図8はこの実施の形態を示す分解斜視図である。
合成樹脂管7の先端には、リングビット8が回転自在に設けられている。このリングビット8の内側には、掘削ビット11がリングビット8と同軸的に位置している。リングビット8の内周壁面には、図8に示すように突片14、14が所定間隔に設けられ、この突片14・14間が軸方向の溝15を形成している。一方、掘削ビット11の外周壁面には、図8に示すようにリングビット8の溝15に嵌入する突起13が、リングビット8の溝15に対応する位置に設けられており、掘削ビット11とリングビット8は、図7に示すように溝15に突起13が嵌入されて挿着されている。これにより掘削ビット11の回転は、リングビット8に伝達される。この実施の形態は、掘削ビット11の回転力をリングビット8に伝達する構成の一例を示すためのであるため、図7および図8では掘削ビット11の外径がリングビット8の外径より僅かに大きく描かれていないが、実際には掘削ビット11の外径はリングビット8の外径より僅かに大きいものである。
なお、この掘削ビット11の回転力をリングビット8に伝達する構成は、前記実施の形態に限定されるものではなく、従来公知の手段を採用し得る。
【0038】
また、この発明では、前記掘削ビット11に打撃装置10と連通する排出孔(図示省略、以下同じ)が先端面および/または側面に向かって貫通して設けられ、打撃装置10を駆動させた圧縮流体は、該排出孔より排出するようにしてもよい。
この実施の形態によれば、スイベル3を介し流体圧力源(例えば、コンプレッサ)よりロッド9の流体通路(中空部)を通して打撃装置10に供給された圧縮流体(例えば圧縮空気)は、打撃装置10を駆動した後、掘削ビット11の排出孔より排出することができる。
【0039】
この時、図3に示すように合成樹脂管7と打撃装置10の間16および合成樹脂管7とロッド9との間17が、流体の排出通路16、17となっていると、前記掘削ビット11の排出孔より排出された流体は、スライムを伴って排出通路16、17より立坑側に排出できる。
この実施の形態によれば、掘削ビット11で掘削して発生する土砂(スライム)は、立坑側に排出しつつ掘進できるので、掘削抵抗が減少し掘進がより容易となる。
【0040】
なお、前記実施の形態は、この発明を制限するものではなく、この発明は、要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が許容される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、下水道管路だけでなく、上水道管路、ガス管路および電線管路等における合成樹脂管の地中敷設にも有効に利用できる
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】下水道管の本管を合成樹脂管として地中敷設する様子を示す断面模式図である。
【図2】下水道管の枝管を合成樹脂管として地中敷設する様子を示す断面模式図である。
【図3】この発明の実施の形態の要部を示す一部断面説明図である。
【図4】この発明の施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す説明図である。
【図5】この発明の他の施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す説明図である。
【図6】拡縮可能なビット(リトラクトビット)の一例を示す斜視図(a)(b)である。
【図7】掘削ビットの回転力をリングビットに伝達する構成の一例を示す斜視図である。
【図8】掘削ビットの回転力をリングビットに伝達する構成の一例を示す分解斜視図である。
【図9】下水道管の配管例を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 掘削装置
2 推進機
3 スイベル
5 機台
6 ガイドレール
7 合成樹脂管
8 リングビット
9 ロッド
10 打撃装置
11 掘削ビット
16、17 流体通路
22 宅内枡
27、28 立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設すべく合成樹脂管は、先端にリングビットを備えており、この合成樹脂管内には中空のロッドが挿入され、このロッドの先端に打撃装置が連結されて合成樹脂管内の先端側に位置し、この打撃装置には先端側に合成樹脂管の外径より僅かに大きい外径の掘削ビットが、合成樹脂管先端のリングビットより先行位置として連結され、
合成樹脂管およびロッドの後端は、合成樹脂管およびロッドに推力を付与する推進機に連結され、
ロッドは推進機に設けられたスイベルに連結され、ロッドの中空部が流体通路となり、前記スイベルを介し流体圧力源よりロッドの流体通路を通して打撃装置に圧縮流体が供給されて打撃装置が駆動される掘削装置、を使用して合成樹脂管を地中に敷設する合成樹脂管の地中敷設工法であって、
前記掘削装置を立坑内に設置し、合成樹脂管の先端を敷設すべき方向に向けてセットし、打撃装置を駆動し掘削ビットに打撃力を付与して地中を敷設すべき方向に向けて掘削しつつ推進機で合成樹脂管とロッドに推力を付与し地中に推進し、合成樹脂管が所定の到達立坑または宅内枡に到達したら掘進を停止し、掘削ビットを取り外すか又は縮径して打撃装置およびロッドを合成樹脂管より引き抜き、敷設することを特徴とする合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項2】
敷設すべく合成樹脂管内には、中空のロッドが挿入され、このロッドの先端に打撃装置が連結されて合成樹脂管内の先端側に位置し、この打撃装置には先端側に合成樹脂管の外径より僅かに大きい外径の掘削ビットが、合成樹脂管先端より外出して連結され、
合成樹脂管およびロッドの後端は、合成樹脂管およびロッドに推力を付与する推進機に連結され、
ロッドは推進機に設けられたスイベルに連結され、ロッドの中空部が流体通路となり、前記スイベルを介し流体圧力源よりロッドの流体通路を通して打撃装置に圧縮流体が供給されて打撃装置が駆動される掘削装置、を使用して合成樹脂管を地中に敷設する合成樹脂管の地中敷設工法であって、
前記掘削装置を立坑内に設置し、合成樹脂管の先端を敷設すべき方向に向けてセットし、打撃装置を駆動し掘削ビットに打撃力を付与して地中を敷設すべき方向に向けて掘削しつつ推進機で合成樹脂管とロッドに推力を付与し地中に推進し、合成樹脂管が所定の到達立坑または宅内枡に到達したら掘進を停止し、掘削ビットを取り外すか又は縮径して打撃装置およびロッドを合成樹脂管より引き抜き、敷設することを特徴とする合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項3】
前記推進機には回転駆動機構が設けられ、ロッドは該回転駆動機構に連結され、掘削ビットはロッドを介し回転駆動機構により回転可能となっており、
掘削ビットには、打撃装置による打撃力、推進機による推力および回転駆動機構による回転力が付与され、地中を掘進することを特徴とする請求項1または2記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項4】
前記推進機には回転駆動機構が設けられ、合成樹脂管は該回転駆動機構に連結されて回転可能となっており、
合成樹脂管には、推進機による推力および回転駆動機構による回転力が付与され、地中を推進することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項5】
前記推進機には回転駆動機構が設けられ、ロッドは該回転駆動機構に連結され、掘削ビットはロッドを介し回転駆動機構により回転可能となっており、
前記リングビットは、合成樹脂管の先端に回転可能に設けられており、掘削ビットより掘削ビットの回転力が伝達可能となっていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項6】
前記掘削ビットは、拡径・縮径可能なビットであって、掘進時は拡径し、到達立坑または宅内枡に到達したら縮径して合成樹脂管内を打撃装置およびロッドと共に引き抜くことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項7】
前記掘削ビットは、打撃装置に着脱可能に連結され、到達立坑または宅内枡に到達したら打撃装置より取り外し、合成樹脂管内より打撃装置およびロッドを引き抜くことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項8】
前記掘削ビットには打撃装置と連通する排出孔が先端面および/または側面に向かって貫通して設けられ、打撃装置を駆動させた流体は、該排出孔より排出されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の合成樹脂管の地中敷設工法。
【請求項9】
前記合成樹脂管と打撃装置の間および合成樹脂管とロッドとの間が、流体の排出通路となり、前記掘削ビットの排出孔より排出された流体は、スライムを伴って排出通路より排出されることを特徴とする請求項8記載の合成樹脂管の地中敷設工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−127774(P2008−127774A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310967(P2006−310967)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(500088416)有限会社聖工業 (2)
【Fターム(参考)】