説明

合成樹脂製のカップ型容器及びそのカップ型容器の製造方法

【課題】白化処理を必要としないフランジ付きのカップ型容器を提案する。
【解決手段】底壁1aの縁部に容器の胴部を形成する環状周壁1bを一体的に連結してその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ本体1と、このカップ本体1の上端開口部1′に配設されたフランジ2とを備えた合成樹脂製のカップ型容器において、前記カップ本体1を、フランジ2とともにブロー成形によって製品形状に仕上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部の周りにフランジを備えた合成樹脂製のカップ型容器及びその製造方法に関するものであり、該容器の耐熱性の改善を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
底壁の縁部に環状周壁を起立させてその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ型の容器は、効率的な製造が可能であり、衛生面における管理が比較的容易であることから近年、コーヒーや乳飲料、アイスクリームの如き冷蔵、冷凍菓子、お茶等の容器として多用されるようになってきている。
【0003】
かかるカップ型の容器は容器の口部開口の周りに外側へ向けて延出するフランジが設けられており、このフランジに薄肉のシートを貼着することにより容器を密封状態に保持している。
【0004】
ところで、この種の容器は、サーモフォーミングや射出成形によって製造されているのが普通であり、容器に充填すべき内容物としてその温度が90℃にも及ぶようなものを充填する場合には容器の胴体部分はフランジを含め熱による変形が避けられない状況にあった。
【0005】
この点に関する先行技術としては、結晶性樹脂からなる一次成形品を用い、この一次成型品をブロー成形することによって耐熱性の改善を図った技術が知られている(例えば、特許文献1参照)が、フランジ部については熱による結晶化を施す、所謂、白化処理により耐熱性を付与していることから、効率的な製造を行うのが困難なばかりか、例えば、容器の全てを透明あるいは半透明で構成する必要がある場合には容易に対処し得ないのが現状であった。
【特許文献1】特開2004−58602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、効率的な製造が可能であり、かつ、容器の全体について耐熱性の改善を図ることができる新規な合成樹脂製のカップ型容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底壁の縁部に容器の胴部を形成する環状周壁を一体的に連結してその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ本体と、このカップ本体の上端開口部に配設されたフランジとを備えた合成樹脂製のカップ型容器であって、
前記カップ本体を、フランジとともにブロー成形によって成形してなる、ことを特徴とする合成樹脂製のカップ型容器である。
【0008】
上記の構成になるカップ型容器においてフランジは、ブロー成形の際にカップ本体とともに延伸を伴うものがとくに好ましく、これによれば白化処理によらずとも耐熱性を高めることが可能となる。
【0009】
ブロー成形は、成形体の加熱処理を挟む前後二回のブロー成形を行うダブルブロー成形法がとくに有利に適合する。
【0010】
カップ型容器の構成素材としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることができる。また、バリア層を含む複数の樹脂層を重ね合わせた積層体を適用してもよい(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂を内層、外層としその中間にバリア性を有する樹脂層を配置した積層体等)。
【0011】
また、本発明は、底壁の縁部に容器の胴部を形成する環状周壁を一体的に連結してその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ本体と、このカップ本体の上端開口部に配設されたフランジとを備えた合成樹脂製のカップ型容器を製造するに当たり、
押出し成形、射出成形あるいは圧縮成形によりプリフォームを形成し、このプリフォームを用いた一次ブロー成形によってフランジ付きの中間成形体を形成し、次いで一次ブロー成形によって得られた中間成形体に対して残留応力を除去する加熱処理を施し、さらに、加熱処理後の成形体の二次ブロー成形を行うことによって最終成形体とすることを特徴とする合成樹脂製のカップ型容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
カップ型容器を、カップ本体のみならずフランジを含めてその全体をブロー成形(ダブルブロー成形)によって形成すると、白化処理をせずとも耐熱性の改善が図られ、透明あるいは半透明のカップ型容器を容易に製造し得る。
【0013】
また、白化処理が不要なので製造工程の簡略化、製造ラインの短縮化が可能でカップ型容器の効率的な製造が可能となる。
【0014】
カップ型容器のような口径が大きい容器をブロー成形するに当たってはそれに対応するような口径の大きなプリフォームを射出成形によって成形する必要があり、この場合、プリフォームの個数取りが少なくなり生産性が劣化する不具合があるが、本発明のブロー成形に用いるプリフォームはボトル等のブロー成形に使用するプリフォームを用いることができるので個数取りが少なくなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう合成樹脂製のカップ型容器の実施の形態を示した図である。
【0016】
図1における1はカップ型容器の主要部を構成するカップ本体である。このカップ本体1は容器の底部を形成する底壁1aと、この底壁1aの縁部に一体的につながり容器の胴部を形成する環状周壁1bからなる。
【0017】
また、2はカップ本体1の上端開口部1′から外方に突出するように水平に配設されたフランジである。このフランジ2は内周端縁2aがカップ本体1の上端開口部1′に一体連結しており、外周端縁2bがカップ本体1のサイズよりも外側へ向けて突出した自由端になっている。なお、本発明のカップ型容器に形成されるフランジ2は傾斜をつけて突設してもよいし、図示したフランジ2とは逆向き、すなわち、内方に向けて突設することも可能である。
【0018】
ボトルのブロー成形に使用されるような通常のプリフォーム(試験管状をなすもの)を成形したのち、該プリフォームを用いた加熱収縮工程を含む二段階のブロー成形(ダブルブロー成形)により図2に示すような外観形状を呈するブロー成形体(最終成形体)を成形し、さらに図2中のC−C部位から下側部分をカップ型容器に仕上げればよく、このような成形方式にしたがうことによりカップ本体1のみならずフランジ2についても延伸加工が施されるため、耐熱性の改善を図りつつも容器の全体を透明な状態に保持することが可能となる。なお、図2に示したところの最終成形体につき、その下側部分をカップ型容器に仕上げるには、図2中のC−Cを境にして水平方向にカットしてもよいし、容器のフランジに対応する部位に下から上に向けてカッターの如き切断手段を突き当てるようにカットすればよい。
【0019】
ここに、ダブルブロー成形により耐熱性が改善される理由は、延伸歪(残留応力)を緩和できること、密度の向上を図ることができるからであり、これによって得られたカップ型容器は、90℃程度の温度においても実質的に熱による変形がない。とくにダブルブロー成形によって得られたカップ型容器の胴部は1.380〜1.400g/cm程度の密度が得られる。また、好ましくは、フラン時の形状や肉厚等を調整することによって、フランジの密度は1.385g/cm以上とする。
【0020】
本発明にしたがってカップ型容器を製造するには、押出し成形、射出成形あるいは圧縮成形によって得られた成形体(プリフォーム)を100〜120℃まで加熱し、一次金型内で延伸倍率7〜12倍でブロー成形(一次ブロー成形)を行う。次いで一次ブロー成形にて得られた中間成形体に加熱処理を施して一次ブロー成形の際の延伸歪を緩和し密度を向上させたのち、150〜220℃の温度域に加熱した一次ブロー成形によって得られた中間成形体を二次金型にてブロー成形(二次ブロー成形)を行い最終形状とする。かかる延伸加工により、延伸加工が施された部分(容器の胴部)は耐熱強度が高まる。
【0021】
上記の製造過程において形成される中間成形体は、最終成形体の形状よりも大きく成形されるものであり、加熱処理工程で最終成形体と同等か若干小さい形状にまで形成される。そして、二次ブロー成形ではほとんど延伸が行われない状態で最終成形体とするものである。また、上記の延伸倍率とは、縦方向(軸方向)の延伸倍率と横方向(径方向)の延伸倍率との積で表すものとする。
【0022】
本発明にしたがう容器は、熱水シャワーによる殺菌が可能であるだけでなく、内容物の温度が90℃にも及ぶような高温充填に十分耐え得るものであり、とくに飲料用容器に適する。
【0023】
合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート樹脂の他、ポリエチレンナフタレートやポリトリメチレンテレフタレート等の樹脂を適用することができる。また、ガスバリア性を必要とする内容物に対してはガスバリア層を有する積層体を用いてもよい。ガスバリア層を構成する樹脂としてはポリアミドやエチレンビニルアルコール共重合体、酸素吸収ポリマー等が使用できる。
【0024】
ボトルのブロー成形に通常用いられる試験管形状をなす(PET樹脂製)プリフォームを用い下記の条件のもとでブロー成形を行い、得られたカップ型容器(口径71mm、容量220ml)の耐熱性の改善状況について調査(80℃、85℃、90℃に設定した恒温槽へ5分間放置)を行った。
【0025】
条件:
一次ブロー成形: プリフォーム加熱温度100℃、金型温度130℃、
延伸倍率10倍
加熱処理 : 一次ブロー成形体(中間成形体)温度197℃、
二次ブロー成形: 金型温度85℃
【0026】
その結果、本発明にしたがって製造されたカップ型容器は製品品質に影響を及ぼすような変形は見られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
白化処理を施す必要なしに容器全体の耐熱性の改善を図り得るフランジ付きのカップ型容器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にしたがうカップ型容器の外観斜視図である。
【図2】本発明にしたがうカップ型容器の製造に適したブロー成形後の成形体(最終成形体)の側面を示した図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カップ本体
1a 底壁
1b 環状周壁
2 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁の縁部に容器の胴部を形成する環状周壁を一体的に連結してその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ本体と、このカップ本体の上端開口部に配設されたフランジとを備えた合成樹脂製のカップ型容器であって、
前記カップ本体を、フランジとともにブロー成形によって成形してなる、ことを特徴とする合成樹脂製のカップ型容器。
【請求項2】
前記フランジは、ブロー成形の際にカップ本体とともに延伸を伴うものである、請求項1記載の合成樹脂製のカップ型容器。
【請求項3】
前記ブロー成形が、成形体の加熱処理を挟む前後二回のブロー成形によるものである、請求項1又は2記載の合成樹脂製のカップ型容器。
【請求項4】
前記カップ型容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の単一素材からなる、請求項1〜3の何れかに記載の合成樹脂製のカップ型容器。
【請求項5】
前記カップ型容器は、バリア層を含む複数の樹脂層を重ね合わせた積層体からなる、請求項1〜3の何れかに記載の合成樹脂製のカップ型容器。
【請求項6】
底壁の縁部に容器の胴部を形成する環状周壁を一体的に連結してその内側領域に内容物の充填空間を区画形成するカップ本体と、このカップ本体の上端開口部に配設されたフランジとを備えた合成樹脂製のカップ型容器を製造するに当たり、
押出し成形、射出成形あるいは圧縮成形によりプリフォームを形成し、このプリフォームを用いた一次ブロー成形によってフランジ付きの中間成形体を形成し、次いで一次ブロー成形によって得られた中間成形体に対して残留応力を除去する加熱処理を施し、さらに、加熱処理後の成形体の二次ブロー成形を行うことによって最終成形体を形成することを特徴とする合成樹脂製のカップ型容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−286045(P2009−286045A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142655(P2008−142655)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】