説明

合成樹脂製ピストン状部材及び射出成形金型

【課題】 本発明は、シール筒片を有する合成樹脂製ピストン状部材において、射出ゲートのゲート口に起因する金型からの型抜き時におけるシール部の変形や損傷を、ゲート口近傍の金型形状から防ぐことを技術的な課題とするものである。
【解決手段】 合成樹脂製ピストン状部材において、筒状のステムの外側に外鍔状の連結部を介してシール筒片を連設し、このシール筒片の上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部を形成し、この上下のシール部の外周面をシリンダー状部材の内周面に密摺接するものとし、シール筒片の側周面の上下のシール部の間の所定位置に凸部を突設し、この凸部の突設高さは上下のシール部から外側に突出しない範囲とし、この凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口筒部に組付け固定して使用される手動押下げポンプ等に利用される合成樹脂製のピストン状部材及びこのピストン状部材を射出成形するための射出成形金型に関するものである。

【背景技術】
【0002】
引用文献1の図2には容器本体の口筒部に組付け固定して使用される手動押下げポンプの代表的な例が示されている。図7はこの種の手動押下げポンプの一例を示すものである。
図7中、手動押下げポンプ1は主として円筒状の上端部近傍に外鍔状にフランジ3を付設したシリンダー部2、このシリンダー部2の内側に密摺接状に上下動可能に配設されるピストン部104、そしてこのピストン部104の上端部に嵌着されるノズル15aを付設したノズルヘッド15の3つの部材で構成されている。
そしてこのポンプ1は、組付きキャップ16を使用して、フランジ3によりパッキン20を介して、容器本体18の口筒部19に組付け固定され、使用される。
【0003】
図8は、図7に示されるポンプ1に使用されているにピストン部104を示すものである。
このピストン部104は円筒状のステム105の下端部の外側に外鍔状の連結部106を介してシール筒片107を付設したものである。
このシール筒片107はその側周壁を、上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部108a、108bを形成し、これら上下のシール部108a、108bの外周面をシリンダー部の内周面に密摺接する構成としている。
【0004】
一方、引用文献2には射出ゲートとしてサブマリンゲートを有する射出成形金型についての記載がある。図11はサブマリンゲートを配設した金型の一例である。
この金型51は上金型51aと下金型51bから構成され、パーティングライン56に沿って配設されるランナー57の先端部に、成形品の側周面を形成する下金型51bの金型壁に潜り込むように傾斜するサブマリンゲート58を有し、このサブマリンゲート58の先端部が下金型51bのキャビティ面53に繋がり、ゲート口58pを開口している。また、下金型51bにはエジェクターピン59a、59bが配設されている。
【0005】
前述したピストン部104のシール筒片107の側周面は、図9、図10(a)に示されるようなサブマリンゲート58を有するキャビティ金型52を用いて成形されるが、図9、図10(a)に示されるようにゲート口58pがシール筒片107の略中央高さ位置に対応するキャビティ面53に開口するように、サブマリンゲート58が配設されている。
なお、図9は、図10(a)中のキャビティ金型52の斜視図であるが、見易いように図10(a)中の下側を上にした状態で斜視した図である。)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−16452号公報
【特許文献2】特開2005−169893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図10(b)は図8のピストン部104を、図10(a)の状態から型抜きする途中の状態を示すものである。(図中、白抜き矢印は引抜き方向を示す。)
この図に示されるように、型抜きの際、上方に向けて拡径状に形成されるシール筒片107の上のシール部108aがキャビティ金型52のキャビティ面53に開口したサブマリンゲート58のゲート口58pの開口周縁部に強く接触する場合があり、このような接触によりシール部108aが変形したり、部分的に損傷し、その結果、シール性が損なわれポンプとしての機能が十分に発揮できなくなる、また上下方向のスムーズな摺動性が損なわれると云うような問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記したようなシール筒片を有する合成樹脂製ピストン状部材において、射出ゲートのゲート口に起因する金型からの型抜き時におけるシール部の変形や損傷を、ゲート口近傍の金型形状から防ぐことを技術的な課題し、高い生産性で、シール機能とスムーズな摺動性が十分に発揮される合成樹脂製ピストン状部材を供給することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段のうち、合成樹脂製ピストン状部材に係る本発明の主たる構成は、
シリンダー状部材の内側に上下動可能に配設される合成樹脂製ピストン状部材において、
筒状のステムの外側に外鍔状の連結部を介してシール筒片を連設し、このシール筒片の上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部を形成し、この上下のシール部の外周面をシリンダー状部材の内周面に密摺接するものであり、
シール筒片の側周面の上下のシール部の間の所定位置に凸部を突設し、
この凸部の突設高さは上下のシール部から外側に突出しない範囲とし、
この凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形された構成とする、と云うものである。
【0010】
ここで、上記構成においては前述した手動押下げポンプを構成する部材であるシリンダー部あるいはピストン部と云う用語の替わりに、シリンダー状部材あるいはピストン状部材と云う用語を用いるようにしている。
これは、本発明のピストン状部材は手動押下げポンプに使用される部材に限定されるものではなく、広く、一般的にシリンダー状部材の内側に密摺接状に上下動可能に配設される部材にも適用することができることを考慮し、このような観点から、シリンダー状部材あるいはピストン状部材と云う用語を用いるようにしたものである。
【0011】
そして、上記構成によれば、シール筒片の形状を、その側周面の上下のシール部の間の所定位置に凸部を突設した形状とし、この凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形されたものとすることにより、
シール筒片の側周面を形成する金型のキャビティ面には、凸部に対応する位置に凹部が刻設され、射出ゲートのゲート口はこの凹部が刻設されたキャビティ面に開口するため、シール筒片の上のシール部が、ゲート口の開口周縁部に強く接触すると云う問題を効果的に防止することができる。
【0012】
そして、凸部(金型面の凹部)による上記のような防止効果により、シール筒片のシール部の変形や損傷を確実に防ぐことができ、シール機能とスムーズな摺動性が十分に発揮される合成樹脂製ピストン状部材を提供することができる。
また、上記構成に係る手段は型抜き等に係る成形条件の調整ではなく、金型形状で対応するものであり、高い生産性で筒片のシール部の変形や損傷を確実に防ぐことができる。
【0013】
また、凸部の突設高さは上下のシール部から外側に突出しない範囲とすることにより、この凸部が、シール部のシリンダー状部材に対するシール機能を邪魔することがない。
【0014】
合成樹脂製ピストン状部材に係る本発明の他の構成は、上記主たる構成において、凸部の頂部から下方基端部に向けての形状を緩やかな傾斜面とする、と云うものである。
【0015】
凸部の形状は、シール部のゲート口の開口周縁部への強い接触を防止する効果の他に、この凸部自体の型抜き性を考慮して決めることができるが、上記構成とすることにより、凸部自体のスムーズな型抜き性と共に、シール部のゲート口の開口周縁部への強い接触をより効果的に緩和することができる。
なお、凸部の横幅は極力狭い方が好ましく、突出高さは0.03mm程度でシール部のゲート口の開口周縁部への強い接触を防ぐ効果が発揮される。
勿論、凸部の突出高さは0.03mm程度に限定されるものではなく、上下のシール部から外側に突出しない範囲で、上記接触を防ぐ効果や、シール部成形性と型抜き性等を考慮して適宜に決めることができるものである。
【0016】
合成樹脂製ピストン状部材に係る本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、円筒状のシリンダー部と、このシリンダー部の内側に密摺接状に配設される円筒状のピストン部と、このピストン部の上端部に嵌着されるノズルヘッド部を有し、容器本体の口筒部に組付け固定して利用される手動押下げポンプのピストン部として使用する、と云うものである。
【0017】
上記構成は、本発明の合成樹脂製ピストン状部材の主要な用途に係るものである。本発明のピストン状部材を手動押下げポンプのピストン部として使用することにより、シール性が確実に発揮され、摺動性がスムーズで、操作性に優れた手動押下げポンプを提供することができる。
【0018】
次に、本発明に係る前述した課題を解決するための手段のうち、射出成形金型に係る本発明の主たる構成は、
筒状のステムの外側に外鍔状の連結部を介してシール筒片を連設し、このシール筒片は上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部を形成する構成としたピストン状部材を、シール筒片の側周面を形成するキャビティ面の前記上下のシール部の間に対応する部分にゲート口を開口する射出ゲートにより射出成形する射出成形金型であって、
前記キャビティ面部分の所定の領域を刻設して凹部を形成し、この凹部にゲート口が開口位置する構成とする、と云うものである。
【0019】
上記構成は、シール筒片の側周面に形成される凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形される本発明の合成樹脂製ピストン状部材を成形するための射出成形金型に係るものである。
そして、キャビティ面部分の所定の領域を刻設して凹部を形成し、この凹部が刻設されたキャビティ面に射出ゲートのゲート口が開口位置する構成とすることにより、成形品の型抜き時において、シール筒片の緩やかに上方に向けて拡径する上のシール部がゲート口の開口周縁部に強く接触することによるシール部の変形や損傷を確実に防ぐことができる。

【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の合成樹脂製ピストン状部材の主たる構成を有するものにあっては、シール筒片の形状を、その側周面の上下のシール部の間の所定位置に凸部を突設した形状とし、この凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形されたものとすることにより、このシール筒片の側周面を形成する金型のキャビティ面には、この凸部に対応する位置に凹部が刻設され、射出ゲートのゲート口はこの凹部に開口位置するため、シール筒片の緩やかな拡径状に形成される上のシール部が、ゲート口の開口周縁部に強く接触すると云う問題を効果的に防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明のピストン状部材の一実施例であるピストン部を示す半縦断側面図、(b)は(a)中のシール筒片を拡大したものである。
【図2】図1の部材を成形するための本発明の射出成形金型の一例を部分的に縦断して示す概略説明図である。
【図3】図2中の第2キャビティ金型の斜視図である。
【図4】図1の部材の型抜き工程の途中の状態を要部拡大して示す概略説明図である。
【図5】本発明のピストン状部材の他の実施例であるシール部材を示す半縦断側面図である。
【図6】(a)は摺動底蓋付き注出容器の一例、(b)は(a)の容器に使用される本発明のピストン状部材のさらに他の実施例である摺動底蓋を示す半縦断側面図である。
【図7】手動押下げポンプの一例を示す縦断側面図である。
【図8】図7中のピストン部を示す半縦断側面図である。
【図9】図8のピストン部を成形するためのサブマリンゲートを配設したキャビティ金型の斜視図である。
【図10】図7のピストン部を図8の金型から型抜きする工程の概略説明図である。
【図11】サブマリンゲートを配設した射出成形金型の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明による合成樹脂製ピストン状部材の一実施例を示すものである。
このピストン状部材は、図7に示される手動押下げポンプ1の部材の一つとして、図8に示される従来のピストン部104の替わりに使用される、本発明によるピストン部4を示すものであり、(a)半縦断側面図、(b)は(a)中のシール筒片7近傍を拡大したものである。
このピストン部4は高密度ポリエチレン樹脂製の射出成形品で、円筒状のステム5を有し、このステム5の下端部の外側に外鍔状の連結部6を介してシール筒片7を連設したものである。
また、このシール筒片7はその側周壁を、上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部8a、8bを形成し、これら上下のシール部8a、8bの外周面を、シリンダー状部材の一つである図7に示される手動押下げポンプ1を構成する部材の一つであるシリンダー部2の内周面に密摺接する構成としている。
【0023】
そしてこのピストン部4の、図8に示した従来のピストン部104に対する特徴は、シール筒片7の側周面の上下のシール部8a、8bの間の所定位置、すなわち後述するように、射出成形金型の射出ゲートの一つであるサブマリンゲートのゲート口が開口位置する領域に左右一対の凸部9を突設している点にある。
また、図1(b)に示されるように、凸部9の突設高さは上下のシール部8a、8bから外側に突出しない範囲としている。これによりこの凸部9が、シール部8a、8bのシリンダー部2に対するシール機能を邪魔することがない。
なお、本実施例では凸部9の突設高さを0.03mmとしている。
【0024】
また、本実施例では、凸部9の頂部から下方基端部に向けての形状を緩やかな傾斜面としており(図1(b)参照)、これによりこの凸部9自体の型抜きもスムーズに達成することができる。
【0025】
次に、図2は図1のピストン部4を成形するための射出成形金型の一例を部分的に縦断して示す概略説明図であり、この金型は本発明の射出成形金型の一例に相当する。また図3は図2中の第2キャビティ金型52bの斜視図であり、見易いように図2中の下側を上にした状態で見た斜視図である。
【0026】
図2示される金型51は第1キャビティ金型52a、第2キャビティ金型52b、コア金型55を有しピストン部4のシール筒片7の側周面は第2キャビティ金型52bにより形成される。
この、第2キャビティ金型52bのキャビティ面53には、シール筒片7の側周面に形成される凸部9を形成するための凹部54が刻設されている。(図3も参照)
【0027】
そして、コア金型55とのパーティングライン56に沿って配設されるランナー57の先端部から、第2キャビティ金型52bの金型壁に潜り込むように傾斜するサブマリンゲート58が配設され、このサブマリンゲート58の先端部が上記の凹部54が刻設されているキャビティ面53に繋がり、ゲート口58pが開口位置するようにしている。
【0028】
図4は、図1のピストン部4のシール筒片7部分の上記第2キャビティ金型52bからの型抜き工程の途中の状態を要部拡大して示す概略説明図である。(図中、白抜き矢印は引抜き方向を示す。)
この図に見られるように、キャビティ面53に凹部54が刻設されているので、シール筒片7のシール部8aがサブマリンゲート58のゲート口58pの開口周縁部に接触することなくスムーズに型抜きを達成することができる。
一方、凹部54のない従来の金型では前述したように図10(b)に示されるようにシール部108aがゲート口58pの開口周縁部に強く接触する、さらには引掛かる場合がある。
【0029】
次に図5は、本発明による合成樹脂製ピストン状部材の他の実施例であるシール部材を示す半縦断側面図である。このシール部材11は図7の手動押下げポンプ1に使用されている従来のシール部材111の替わりに使用するものである。
【0030】
図7に沿って説明すると、手動押下げポンプ付き注出容器の使用前、ノズルヘッド15は組付きキャップ16の上に配設されるリング体17に螺合した状態で保管されるが、この状態でシール部材111はシリンダー部2に貫通形成されている通気孔5pを塞いで、空気の流入を防ぐ機能を発揮する。
そして、使用時にノズルヘッド15をリング体17から螺脱した図7の状態では、このシール部材111はシリンダー部2に対して上昇変位して、通気孔5pは開放される。
【0031】
そして、図5に示されるシール部材11は、図1のピストン部4と類似的な構造を有しており、円筒状のステム12の下端部外側にシール筒片13を連設し、このシール筒片13の上端部と下端部をシール部13a、13bとしたものであり、これらの点は図7に示されるシール部材111と同様である。
【0032】
ただ、このシール部材11のシール筒片13の側周面には図1のピストン部4と同様に、図7中のシール部材111にはない、凸部14が突設されており、この凸部14を介してサブマリンゲートにより射出成形されたもので、これにより図1のピストン部4と同様に、型抜きの際におけるシール部13aの変形や損傷がなく、シール機能が確実に発揮される。
【0033】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例では本発明のピストン状部材の例として、手動押下げポンプに使用されるピストン部4とシール部材11の例を説明したが、本発明のピストン状部材は手動押下げポンプに使用される部材に限定されるものではなく、広く、一般的にシリンダー状部材の内側に密摺接状に上下動可能に配設される部材にも適用することができる。
【0034】
図6(a)は、摺動底蓋付き注出容器の一例を示す半縦断側面図、(b)はこの注出容器21に使用されている摺動底蓋25の半縦断側面図であるが、この摺動底蓋25は本発明のピストン状部材の一例に相当するものである。
【0035】
図6(a)の注出容器25は、主として円筒状の胴部23を有する容器本体22、容器本体22の上端部に組付け固定される手動押下げポンプ24、そして上昇変位可能に密摺接状に配設される摺動底蓋25の部材から構成され、内容液の注出による内部の減圧に伴って摺動底蓋25が上昇変位し、容器内部への空気の侵入を防ぐ機能を有するものである。
なお図6の実施例では容器本体22の下端部に中央部を開口した底カバー29を敷設している。
【0036】
摺動底蓋25は図6(b)に示されるように、短筒状の底蓋本体26の外側に図1のピストン部4と同様に外鍔状の連結片を介してシール筒片27が連設され、このシール筒片27の上端部と下端部をシール部27a、27bとしたものであり、またシール筒片27の側周面には図1のピストン部4と同様に、凸部28が突設されており、この凸部28を介してサブマリンゲートにより射出成形されたもので、これにより型抜きの際におけるシール部27aの変形や損傷がなく、胴部23内周面へのシール機能が確実に発揮される。
ここでは、胴部23が図7中のシリンダー部2のようなシリンダー状部材に相当し、摺動底蓋25の底蓋本体26が図1中のピストン4のようなピストン状部材のステム5に相当する。
【0037】
また、本願発明の射出成形金型についても図2、3に示した例は主として射出ゲートの一つであるサブマリンゲートが配設されるキャビティ金型の例を示したものであり、成形品の形状や、型抜き性等を考慮して、他のタイプの射出ゲートを選択する、さらに金型を分割する等、さまざまな態様で金型構造を構成することができる。
また、図2、3に示した例では左右に一対の2箇所にサブマリンゲートを配設した例を示しているが、サブマリンゲートの配設箇所の数は成形されるピストン状部材の形状や成形性を考慮して1箇所とすることもできるし、さらに3、4箇所と多数にすることもできる。勿論その際にはピストン状部材のシール筒片の側周面にサブマリンゲートの配設箇所の数に応じた凸部が形成される。

【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明の合成樹脂製ピストン状部材は、射出ゲートのゲート口に起因するシール部の変形や損傷をなくし、優れたシール性と操作性を発揮するものであり、手動押下げポンプ等の部材として幅広い用途展開を期待することができる。

【符号の説明】
【0039】
1 ;手動押下げポンプ
2 ;シリンダー部
3 ;フランジ
4、104;ピストン部
5、105;ステム
5p;通気孔
6、106;連結片
7、107;シール筒片
8a、8b;シール部
108a、108b;シール部
9 ;凸部
11、111;シール部材
12;ステム
13;シール筒片
13a、13b;シール部
14;凸部
15;ノズルヘッド
15a;ノズル
16;組付きキャップ
17;リング体
18;容器本体
19;口筒部
20;パッキン
21;注出容器
22;容器本体
23;胴部
24;手動押下げポンプ
25;摺動底蓋
26;底蓋本体
27;シール筒片
27a、27b;シール部
28;凸部
29;底カバー
51;金型
51a;上金型
52b;下金型
52;キャビティ金型
52a;第1キャビティ金型
52b;第2キャビティ金型
53;キャビティ面
54;凹部
55;コア金型
56;パーティングライン
57;ランナー
58;サブマリンゲート
58p;ゲート口
59a;エジェクターピン
59b;エジェクターピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー状部材の内側に上下動可能に配設される合成樹脂製ピストン状部材であって、筒状のステムの外側に外鍔状の連結部を介してシール筒片を連設し、該シール筒片の上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部を形成し、該上下のシール部の外周面をシリンダー状部材の内周面に密摺接するものであり、前記シール筒片の側周面の前記上下のシール部の間の所定位置に凸部を突設し、該凸部の突設高さは前記上下のシール部から外側に突出しない範囲とし、前記凸部位置に射出ゲートのゲート口を配設して射出成形されたものであることを特徴とする合成樹脂製ピストン状部材。
【請求項2】
凸部の頂部から下方基端部に向けての形状を緩やかな傾斜面とした請求項1記載の合成樹脂製ピストン状部材。
【請求項3】
円筒状のシリンダー部と、該シリンダー部の内側に密摺接状に配設される円筒状のピストン部と、このピストン部の上端部に嵌着されるノズルヘッド部を有し、容器本体の口筒部に組付け固定して利用される手動押下げポンプの前記ピストン部として使用することを特徴とする請求項1または2記載の合成樹脂製ピストン状部材。
【請求項4】
筒状のステムの外側に外鍔状の連結部を介してシール筒片を連設し、該シール筒片は上端部を上方に向けて、また下端部を下方に向けてそれぞれ緩やかに拡径させて上下にシール部を形成する構成としたピストン状部材を、前記シール筒片の側周面を形成するキャビティ面の前記上下のシール部の間に対応する部分にゲート口を開口する射出ゲートにより射出成形する射出成形金型であって、前記キャビティ面部分の所定の領域を刻設して凹部を形成し、該凹部にゲート口が開口位置する構成とした射出成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−11386(P2011−11386A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155730(P2009−155730)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】