説明

合成樹脂製ボトルとその成形方法

【課題】クリスタル装飾感をインサート材と外殻体との組合せで現出させることにより、変化に富んだ高いクリスタル装飾感を現出させたボトルを提供する。
【解決手段】合成樹脂製ブロー成形品であるボトル本体2の稜線を有する胴部3と底部6をインサート材として、ボトル本体と稜線の数の異なる透明な合成樹脂製の多角状の外殻体10を射出成形し、ボトル本体の稜線と外殻体の稜線の組合せにより、立体感に変化のある高いクリスタル装飾効果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形技術を利用して成形した合成樹脂製ボトルと、このボトルの成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二重壁構造の合成樹脂製ボトルとして、少なくとも外壁層を透明にした構成のものが、優れた光学的装飾を得ることができることから利用されており、その成形手法として、一方のボトル構成部分の一部もしくは全体をインサート材とし、他方のボトル構成部分を射出成形などにより成形するインサート成形手法が知られている。
【0003】
一般に、インサート成形手段にあっては、一方のボトル構成部分のインサート材となる部分を金型で不動に保持して、他方のボトル構成部分の成形時に作用する圧力を、安定して受け止めることができるようにしている。
【0004】
例えば、特開昭49−083751号公報に示されているように、予めボトル状に成形された容器をインサート材として割金型に不動に組付け、このインサート材と割金型との間に形成された成形空間をゲートに連通させ、インサート材内に冷却水を循環供給して、インサート材を冷却し、この状態でゲートから溶融樹脂を成形空間に射出して、インサート材と一体に外壁層を成形している。
【特許文献1】特開昭49−083751号公報
【0005】
このように従来例に開示された技術においては、インサート材を、「外面部材の射出成形圧力により変形しない」ようにするために、インサート材を金型や水等の液体で不動に支持する等して、変形および変位しないように構成し、これにより一定形状のインサート成形品を成形するようにしていた。
【0006】
特に、インサート材がボトル状である場合には、インサート材を金型により内部から支えることができないので、液体をインサート材内に充填し、この液体の圧力で射出成形圧力を支えると共に、合成樹脂製のインサート材を冷却するようしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、外壁層を透明にしたと云う構成だけで光学的装飾効果を得ているので、得られる光学的装飾は、見た目のクリア感と外壁層の厚みによる立体感だけであり、このため装飾感が単調となり易い、と云う問題があった。
【0008】
また、インサート材内に液体を充填して成形する場合、成形の度にインサート材に対する液体の供給および排出作業を行うと共に、製品に付着した液体の拭き取りもしくは製品の乾燥を行わなければならず、取り扱いの手間が掛かる、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、外壁層である外殻体が現出する光学的装飾感にクリスタル装飾感を加えることを技術的課題とし、もって変化に富んだ高い光学的装飾感を現出させることを目的とする。
【0010】
また、本発明は、インサート材に液体を充填しないで、製品を射出成形することを技術的課題とし、もって液体を使用することによる成形処理および後処理の煩雑さを軽減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の主たる構成は、下端を底部で塞いだ多角筒状の胴部の上端に、口筒部を連設した合成樹脂製ブロー成形品であるボトル本体と、このボトル本体の胴部と底部をインサート材として、この胴部と底部を覆って射出成形された透明な合成樹脂製の外殻体とから構成した、ことにある。
【0012】
外殻体の外周面形状は、ボトル本体の胴部と異なる角数の多角形状となっている。
【0013】
本発明によるボトルは、ボトル本体の胴部と底部をインサート材として、透明な多角形状の外殻体を射出成形によりインサート成形したものであるので、外殻体の肉厚は、ボトル本体の胴部との組合せ位置関係で大きく変化し、これにより全体的に立体感に変化のある光学的な装飾効果が現出される。
【0014】
また、透明な外殻体には、その外周面に角部である外殻体稜線が形成されると共に、ボトル本体の胴部にも胴部稜線が形成されており、この両稜線の組合せにより、透明な外殻体が複雑で変化に富んだクリスタル装飾感を現出する。
【0015】
特に、ボトル本体の胴部に対して外殻体の外周面は、画数の異なる多角形状となっているので、胴部稜線と外殻体稜線との位置関係が、画一的にならず、これにより現出されるクリスタル装飾感は、変化に富んだものとなる。
【0016】
本発明の第一の発明の別の構成は、上記した第一の主たる構成に加えて、外殻体の外周面の多角形状を、ボトル本体の胴部の多角形状よりも角数を多くした、ものである。
【0017】
外殻体の外周面の多角形状を、ボトル本体の胴部の多角形状よりも角数を多くしたものにあっては、直接的にクリスタル装飾感を現出する外殻体稜線の数が多くなるので、その分、きめ細かいクリスタル感が現出される。
【0018】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、上記した第一の主たる構成に加えて、ボトル本体の外周面に、装飾表示を施した、ものである。
【0019】
ボトル本体の外周面に装飾表示を施したものにあっては、外殻体の厚みにより装飾表示が奥行きのある状態で表示されるだけではなく、外殻体稜線を境とした外殻体の表面角度の変化により、透過光線の屈折程度が大きく異なり、これにより装飾表示が多重に表示される。
【0020】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、ボトル本体の外周面に装飾表示を施した構成に加えて、装飾表示を、ボトル本体の胴部の外周面の一部に施した印刷層とした、ものである。
【0021】
装飾表示を、ボトル本体の胴部の外周面の一部に施した印刷層としたものにあっては、装飾表示が多重に見えることが強調されことにより、見る角度のわずかな違いにより、表示状態が切り換わり変化することになる。
【0022】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、ボトル本体の外周面に装飾表示を施した構成に加えて、装飾表示を、ボトル本体の胴部の外周面全域に施した金属蒸着膜層とした、ものである。
【0023】
装飾表示を、金属蒸着膜層としたものにあっては、装飾表示が発揮する輝き装飾が、胴部稜線と外殻体稜線の組合せと、外殻体のクリスタル作用とにより複雑化する。
【0024】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、第一の主たる構成に加えて、ボトル本体を、透明な合成樹脂製とした、ものである。
【0025】
ボトル本体を、透明な合成樹脂製としたものにあっては、ボトル全体が透明となり、内容物を透視できると共に、ボトル本体の肉厚も立体感を現出する光学的作用に役立つことになり、装飾表示を金属蒸着膜層としたものにあっては、この金属蒸着膜層をハーフ蒸着とすることにより、透明感と金属感の両方を現出させることができる。
【0026】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、第一の主たる構成に加えて、ボトル本体を透明な合成樹脂製とし、ボトル本体の少なくとも胴部の外周面に印刷層、塗装膜層又は金属蒸着膜層から選らばれる少なくとも一つの膜層を形成した膜層形成領域と、膜層の形成されていない非形成領域を有する構成とした、ものである。
【0027】
上記構成によれば、ボトル本体を透明な合成樹脂製としているので、膜層形成領域と光の透過が可能な非形成領域の組み合せにより、外殻体やボトル本体のプリズム効果に加えてさらに多様な加飾性、表示機能を現出させることが可能となる。
【0028】
ここで、印刷層はシルク印刷法等の各種の印刷方法から、塗装膜層はスプレー法あるいはデッピング法等から、金属蒸着膜層は真空蒸着法やスパッタリング法等から適宜、選択することができる。
また、ホットスタンプ法により印刷層や金属蒸着膜層を形成することもできる。
また、例えば着色塗装膜層に金属蒸着膜層をハーフ蒸着する等、複数の膜層を形成することにより、より繊細で深みのある加飾態様とすることもできる。
【0029】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、上記ボトル本体を透明な合成樹脂製とし、外周面に膜層形成領域と非形成領域を有する構成に加えて、膜層形成領域と非形成領域により装飾表示を現出した、ものである。
【0030】
上記構成によれば、膜層形成領域と光の透過が可能な非形成領域の組み合せにより、多様な模様を現出したり、非形成領域により図案化した文字を現出させる等、外郭体やボトル本体のプリズム効果に加えてさらに多様に、装飾表示機能を現出させることができる。
【0031】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、上記ボトル本体を透明な合成樹脂製とし、外周面に膜層形成領域と非形成領域を有する構成に加えて、膜層形成領域と非形成領域により規則性を有するパターンを形成した、ものである。
【0032】
上記構成によれば、外殻体やボトル本体のプリズム効果に加えて、さらに非形成領域を通してボトル本体の外周面の対向する位置に形成された規則性を有するパターン間による光の干渉効果により、見る方向により大きく変化するようなモアレ状の3次元的な視覚効果が現出する構成とすることができる。
【0033】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、上記ボトルを透明な合成樹脂製とし、外周面に膜層形成領域と非形成領域を有する構成に加えて、非形成領域を透視窓とした、ものである。
【0034】
上記構成によれば、透視窓より内容液の残量を確認することができ」る。
また、ボトル本体の外周面の全領域に塗装膜層や金属蒸着膜層等から成る膜層形成領域を形成して遮光性を付与すると共に、非形成領域を利用して透視窓とし、この透視窓により内容液の残量が確認できるようにした遮光性のボトルを提供することができる。
【0035】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、上記ボトルを透明な合成樹脂製とし、外周面に膜層形成領域と非形成領域を有する構成に加えて、膜層形成領域においてレーザー光により部分的に膜層を除去し、この除去部分を非形成領域とした、ものである。
【0036】
非形成領域を形成する方法としては、ボトル本体の外周面の非形成領域とする部分をマスキングした状態で印刷、塗装あるいは蒸着する方法、あるいはまず印刷、塗装あるいは蒸着によりベタ状に膜層を形成し、その後レーザー光により部分的に膜層を除去する方法があるが、
レーザー光により部分的に膜層を除去する方法によれば、予め記憶したコンピュータに連動して、YAGレーザー光等のレーザー光により膜層形成領域において部分的に膜層を加熱、分解、蒸散、昇華して除去し、複雑あるいは繊細な模様状に非形成領域を形成することができ、これにより高品位な加飾効果を現出させることができる。
また、ボトル本体の胴部が円筒状あるいは角形筒状であっても、その形状によらず、レーザー光を外周面に沿って照射することにより複雑あるいは繊細な模様状に非形成領域を形成することができる。
【0037】
また、本発明の第一の発明の別の構成は、第一の主たる構成に加えて、ボトル本体の胴部の胴部稜線を、外殻体の外殻体稜線間の平坦面に対向させた、ものである。
【0038】
胴部稜線を外殻体稜線間の平坦面に対向させたものにあっては、見える稜線の数が多くなり、その分、稜線が発揮するクリスタル装飾感が複雑化する。
【0039】
本発明の第二の主たる構成は、合成樹脂製ブロー成形品であるボトル本体の、下端を底部で塞いだ多角筒状の胴部をインサート材として、この胴部と底部を覆って透明な合成樹脂により外殻体を射出成形したボトルの成形方法であって、射出金型に保持されたボトル本体内に冷却エアを循環供給して、ボトル本体内温度を、このボトル本体の成形樹脂材料のガラス転移点以下に保持した状態で、外殻体の成形樹脂材料を計量充填する、ことにある。
【0040】
インサート材であるボトル本体は、冷却エアの循環供給により、成形樹脂材料のガラス転移点以下の温度に冷却されているので、熱変形し難い状態となっており、このため射出された外殻体の成形樹脂材料の熱によりボトル本体が加熱されても、安定して自己形状を保持して、ボトル本体を潰し変形させることがない。
【0041】
また、外殻体の成形樹脂材料は、計量充填状態で射出されるので、冷却されているインサート材であるボトル本体を潰し変形させるほどに強い樹脂圧を作用させることがなく、ボトル本体の潰れ変形の発生を確実に阻止している。
【0042】
ボトル本体内への供給物体は、空気であるので、成形された製品が濡れたり、また金型装置が濡れたりすることがない。
【0043】
本発明の第二の発明の別の構成は、第二の主たる構成に加えて、底部をゲート口に対向させたボトル本体内の底部間近から、冷却エアを供給する、ものである。
【0044】
底部をゲート口に対向させたボトル本体内の底部間近から、冷却エアを供給するものにあっては、射出された外殻体の成形樹脂材料がぶつかって、最も熱影響が強く作用する底部部分に対して、冷却エアの冷却作用を確実に作用させることができる。
【0045】
また、本発明の第二の発明の別の構成は、第二の主たる構成に加えて、冷却エアを供給するエアーピンの先端を、ボトル本体の底部に当接させた、ものである。
【0046】
冷却エアを供給するエアーピンの先端を、ボトル本体の底部に当接させたものにあっては、射出された外殻体の成形樹脂材料の射出圧が直接作用するボトル本体の底部を、エアーピンが機械的に支えることになる。

【発明の効果】
【0047】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の第一の主たる構成にあっては、ボトルの胴部部分は全体的に立体感のある光学的な装飾効果を現出し、この光学的な装飾効果は複雑で変化に富んだクリスタル装飾感を現出するので、優れた光学的な装飾効果を得ることができる。
【0048】
外殻体の外周面の多角形状を、ボトル本体の胴部の多角形状よりも角数を多くしたものにあっては、きめ細かいクリスタル感が現出されるので、より変化に富んだクリスタル装飾感を得ることができる。
【0049】
ボトル本体の外周面に装飾表示を施したものにあっては、装飾表示が奥行きのある状態で表示されると共に、装飾表示が多重に表示されるので、装飾表示による装飾効果が立体的で変化に富んだものとなる。
【0050】
装飾表示を、ボトル本体の胴部の外周面の一部に施した印刷層としたものにあっては、見る角度のわずかな違いにより、表示状態が切り換わり変化することになるので、変化に富んだ装飾効果を得ることができる。
【0051】
装飾表示を、金属蒸着膜層としたものにあっては、装飾表示が発揮する輝き装飾が、複雑化するので、装飾効果の変化をより高めることができる。
【0052】
ボトル本体を、透明な合成樹脂製としたものにあっては、ボトル全体が透明となり、内容物を透視できると共に、ボトル本体の肉厚も立体感を現出する光学的作用に役立つことになるので、得られる光学的効果が大きくなり、深みのある光学装飾を得ることができ、金属蒸着膜層をハーフ蒸着とした場合には、深みのある金属感装飾を得ることができる。
【0053】
ボトル本体を透明な合成樹脂製とし、外周面に膜層形成領域と非形成領域を有する構成としたものにあっては、ボトル本体を透明な合成樹脂製としているので、膜層形成領域と光の透過が可能な非形成領域の組み合せにより、外殻体やボトル本体のプリズム効果に加えてさらに多様な加飾性、表示機能を現出させることができる。
また、膜層形成領域と非形成領域により規則性を有するパターンを形成したものにあってはボトル本体の外周面の対向する位置に形成された規則性を有するパターン間による光の干渉効果により、見る方向により大きく変化するようなモアレ状の3次元的な視覚効果が現出させることができる。
また、レーザー光により膜層形成領域において部分的に膜層を除去して非形成領域を形成したものにあっては、ボトル本体の胴部が円筒状あるいは角形筒状であっても、その形状によらず、レーザー光を外周面に沿って照射することにより複雑、あるいは繊細な模様状に非形成領域を形成することができる。
【0054】
胴部稜線を外殻体稜線間の平坦面に対向させたものにあっては、稜線が発揮するクリスタル装飾感が複雑化するので、変化に富んだクリスタル装飾を得ることができる。
【0055】
本発明の第二の主たる構成にあっては、射出された外殻体の成形樹脂材料の熱によりボトル本体が加熱されても、安定して自己形状を保持して、曲がり変形や潰れ変形を引き起こすことがなく、またインサート材であるボトル本体に、このボトル本体を潰れ変形させるほどの樹脂圧が作用しないので、潰れ変形の発生が確実に阻止され、これによりインサート成形処理を適正に行うことができる。
【0056】
また、ボトル本体内への供給物体は、エアであるので、成形された製品が濡れたり、また金型装置が濡れたりすることがなく、供給流体の取扱い処理がきわめて簡単となる。
【0057】
底部をゲート口に対向させたボトル本体内の底部間近から、冷却エアを供給するものにあっては、底部部分に対して、冷却エアの冷却作用を確実に作用させることができるので、このボトル本体の底部部分の不正な熱変形の発生を、確実に抑えることができる。
【0058】
冷却エアを供給するエアーピンの先端を、ボトル本体の底部に当接させたものにあっては、ボトル本体の底部を、エアーピンが機械的に支えることになるので、外殻体の成形樹脂材料の射出圧による、底部部分の潰れ変形発生を充分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例を示す、全体外観斜視図である。
【図2】図1実施例の図3中A−A線に沿った不規則な全体縦断面図である。
【図3】図1実施例の、平断面図である。
【図4】ボトル本体と外殻体の他の組合せ例の平断面図である。
【図5】ボトル本体と外殻体のさらに他の組合せ例の平断面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す正面図である。
【図7】図6の実施例で使用するボトル本体の正面図である。
【図8】本発明方法の説明に供する、成形前の金型構成図である。
【図9】本発明方法の説明に供する、成形後の金型構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0061】
図1は、本発明による合成樹脂製のボトル1の、第1実施例を示す全体外観斜視図であり、図2は、図3に示した平断面図のA−A線に沿って切断矢視した、ボトル本体2を不規則破断した全体縦断面図で、PETにより2軸延伸ブロー成形されたボトル本体2と、このボトル本体2の胴部3と底部6をインサート材として、透明樹脂材料で射出成形された外殻体10とから構成されている。
【0062】
ボトル本体2は、下端を底部6で塞いだ四角筒状のやや肉厚な胴部3の上端に、幅の狭い段状の肩部7を介して高さの低い首筒部8を起立設し、この首筒部8の上端に、縮径して外周面に螺条を刻設して、図示省略したネジキャップで開閉される口筒部9を連設して構成されている。
【0063】
胴部3の外周面には胴部稜線4が形成されているが、この胴部稜線4を避けた平坦面部分の一部に、印刷層として印刷成形された装飾表示5が施されている。
【0064】
外殻体10は、その外周面形状を、ボトル本体2の胴部3よりも角数の多い正多角形状としており、透明なアクリル樹脂やPET樹脂等の熱可塑性樹脂により肉厚に成形されている。なお、ボトル本体2および外殻体10共に、その成形樹脂材料が特定されることはなく、要求される特性を発揮できる樹脂材料を、自由に選択使用することができるのは云うまでもない。
【0065】
胴部3に施された装飾表示5は、外殻体10の光学的作用により、奥行きのある立体感に富んだ状態で観察されることになるが、この装飾表示5が部分的であると共にボトル本体2が透明である場合には、装飾表示5は、浮いて位置する状態で見えることになり、より深みのある装飾効果を現出することになる。
【0066】
また、胴部3に施された装飾表示5が、胴部3の外周面全域を覆う金属蒸着膜層である場合には、外殻体稜線11を有する外殻体10のクリスタル作用により、装飾表示5の発揮する輝きが強調され、これによりボトル1の外観をきらびやかなものとする。
【0067】
同様に、装飾表示5としての金属蒸着膜層をハーフ蒸着とすると共に、ボトル本体2を透明とした場合は、金属感と透明感とクリスタル感とが組合された独特の光学的装飾感が現出される。
【0068】
胴部3の胴部稜線4と外殻体10の外殻体稜線11との位置関係は、図1および図3そして図5に示した例の場合、胴部稜線4の全てが外殻体10の平坦面に対向しているのに対して、図4に示した実施形態例の場合、胴部稜線4の全てが外殻体稜線11に重なって位置している。
【0069】
胴部稜線4と外殻体稜線11の位置関係において、両稜線を放射方向に一致させない図1および図3そして図5に示した例の場合、ボトル1の殆どの姿勢で多くの稜線が見えることになり、これによりボトル1の外観に充分なクリスタル作用が発揮されることになる。
【0070】
特に、ボトル本体2を透明とした場合には、外殻体10だけではなくボトル本体2もクリスタル作用を発揮するので、発揮されるクリスタル装飾効果は、より深みのあるものとなる。
【0071】
例えば、図1に示すように、胴部3の外周面の一部に施された装飾表示5は、外殻体10の二つの隣接した平坦面部分で、離れた状態で別々に見える場合があり、これにより装飾表示5による装飾が、深みがあり且つ変化に富んだものとなる。
【0072】
これは、外殻体10の二つの隣接した平坦面部分が、装飾表示5の施された胴部3の単一の平坦面部分に対して傾斜角度が異なり、このため装飾表示5からの透過光の屈折程度が異なるためである。
【0073】
次に、図6は本発明の第2実施例の正面図であり、図7は図6のボトル1に使用されているボトル本体2の正面図である。
本実施例のボトル1の形状は図1〜3に示される第1実施例のボトル1と同じ形状であり、ボトル本体2と外殻体10は共に透明な合成樹脂製である。
【0074】
ボトル本体2の外周面は、金属蒸着膜層を形成した膜層形成領域A(図中黒あるいは灰色で塗りつぶした領域)と、膜層が形成されていない非形成領域Bの組み合せにより加飾されている。
さらに詳述すると、口筒部9、肩部7、底部6の底面は全面的に金属蒸着膜層が形成された膜層形成領域Aとなっており、正方形筒状の胴部3の周壁では膜層形成領域Aと非形成領域Bが斜めストライプ状に交互に整列配置され、全体として規則性を有するパターンを形成し、図7に見られるように、図中正面側の非形成領域Bfを透して、背面側の膜層形成領域Abからの反射光や、非形成領域Bbからの透過光が観察される。
【0075】
上記したような、膜層形成領域Aと非形成領域Bの形成は次のようなレーザー光を利用した工程で形成することがでる。
(1)まず、ボトル本体2の外周面の全域に、真空蒸着法により金属蒸着膜層を形成し全面を膜層形成領域Aとする。
(2)次に、非形成領域Bの形状(本実施例では斜めストライプ状の形状)を予め記憶したコンピュータに連動して、YAGレーザー光により金属蒸着膜層上を走査し、この金属蒸着膜層を加熱、昇華して除去し非形成領域Bを形成する。
【0076】
上記のようなレーザー光を利用した工程によればさらに繊細な模様も高品位に実現することができる。
また、ボトル本体の胴部が円筒状等で外周面が湾曲したものであっても、あるいは本実施例のように角形筒状であっても、その形状によらず、レーザー光を外周面に沿って照射することにより複雑、あるいは繊細な模様状に非形成領域を形成することができる。
【0077】
そして、上記したようなボトル本体2をインサート材として成形した図7に示される本実施例のボトル1では、外殻体10によるプリズム効果、上記したボトル本体2の正面側の非形成領域Bfを透して観察される背面側の膜層形成領域Abからの反射光や非形成領域Bbからの透過光による効果、さらにはボトル本体2の正面側の膜層形成領域Afと非形成領域Bfによるパターンと、背面側の膜層形成領域Abと非形成領域Bbによるパターンとの光学的な干渉効果も相俟って、見る方向により大きく変化する、今までいない光学的な加飾効果が現出される。
【0078】
ここで、膜層形成領域Aは上記のような金属蒸着膜層に限定されるものではなく、加飾目的に応じて、印刷層、塗装膜層とすることもでき、ホットスタンプ法により印刷層や金属蒸着膜層を形成することもできる。
また、例えば着色塗装膜層に金属蒸着膜層をハーフ蒸着する等、複数の膜層を形成することにより、より繊細で深みのある加飾態様とすることもできる。
また、非形成領域Bの形成方法としては、レーザーにより膜層を除去する方法の他にも、膜層を形成する際に非形成領域Bとなる部分をマスキングする方法を採用することもできる。
また、ボトル本体2をインサート材とした外殻体10の成形に際し、金属蒸着膜層等の膜層が影響を受けるような場合には、必要に応じてクリアコート層で膜層を被覆して保護層とすることもできる。
【0079】
また、上記実施例ではボトル本体2の胴部3の正方形筒状の外周面全域に膜層形成領域Aと非形成領域Bにより斜めストライプ状の模様を形成するような構成としたが、たとえば、一つの面を略全体的に膜層形成領域Aとし、非形成領域Bにより製品名を図案化した文字を現出させるような加飾態様とすることができ、膜層形成領域Aと非形成領域Bにより、模様だけでなく表示機能も併せて発揮させることもできる。
【0080】
次に、図8と図9は、ボトル1をインサート成形する射出金型12の構成例と、ボトル1の成形手順例を説明する図で、射出金型12は、コア金型部13とキャビティ金型部16とから構成されている。
【0081】
ボトル本体2は、コア金型部12のボトル本体保持部14に取付けられ、取付けられたボトル本体2にはエアーピン15を挿入組付けされ、このボトル本体2を取付けたコア金型部13に、ゲート口17を有するキャビティ金型部16を、ゲート口17が、コア金型部12に取付けたボトル本体2の底部6に対向するように組付けて、コア金型部13に取付けられたボトル本体2の胴部3の周囲に、外殻体10を成形するためのキャビティを形成する。
【0082】
エアーピン15は、その先端を、コア金型部13に取付けられたボトル本体2の底部6に当接させる、もしくは近接させるまで挿入され、その先端部に冷却エアaの噴出孔を開口させている。
【0083】
コア金型部13に取付けられたボトル本体2には、エアーピン15を介して冷却エアaが循環供給されるが、この冷却エアaは、冷却器により冷たくした空気を使用しても良いし、射出される成形樹脂材料よりも温度の低い常温空気を使用しても良い。
【0084】
この冷却エアaのボトル本体2への循環供給は、外殻体10の成形樹脂材料の射出に先立って、もしくは射出と同時に行うが、ボトル本体2に対する冷却エアaの冷却作用が発揮されるのには、ある程度の時間の経過が必要であることから、成形樹脂材料の射出に先立って行うのが望ましい。
【0085】
図9に示した射出成形状態時には、射出される成形樹脂材料の熱および射出圧が、ボトル本体2の底部6に直接的に作用するが、この底部6付近は冷却エアaの作用により確実かつ充分に冷却されているので、成形樹脂材料の熱により熱変形することがない。
【0086】
また、図8および図9に示した実施形態例にあっては、エアーピン15の先端が、ボトル本体2の底部6に当接もしくは近接して、この底部6を機械的に支えるので、成形樹脂材料の射出圧により底部6が押し上げ変形されることが、確実に抑制される。
【0087】
射出される成形樹脂材料は、インサート材であるボトル本体2の胴部3と底部6の外表面に形成されたキャビティに、このキャビティの容積に合わせて計量充填される。
【0088】
このため、外殻体10の射出成形時に、ボトル本体2の胴部3には、この胴部3を潰し変形させるほどの樹脂圧が加わらず、このためボトル本体2を潰し変形させることなく、外殻体10の射出成形が、安全に行われることになる。
【0089】
なお、循環供給される冷却エアaは、加熱されたボトル本体2を膨らまし変形させない範囲で加圧状態としても良く、この場合には外殻体10の成形性を高めるために射出圧を多少高めることが可能となる。
【0090】
また、図示実施形態例の場合、ボトル本体2の底部6が、内方に湾曲陥没した壁構造となっているが、底部6の壁構造を限定されることはなく、外方に湾曲膨出する壁構造であっても良いことは、云うまでもない。

【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明のインサート成形技術は、インサート成形製品のクリスタル装飾効果を効果的に高めるものであり、かつ成形後の後処理に要する作業を殆ど要することがないものであり、新規なインサート成形品を得る技術として、幅広い利用展開が期待できる。

【符号の説明】
【0092】
1 ;ボトル
2 ;ボトル本体
3 ;胴部
4 ;胴部稜線
5 ;装飾表示
6 ;底部
7 ;肩部
8 ;首筒部
9 ;口筒部
10;外殻体
11;外殻体稜線
12;射出金型
13;コア金型部
14;ボトル本体保持部
15;エアーピン
16;キャビティ金型部
17;ゲート口
A(Af、Ab);膜層形成領域
B(Bf、Bb);非形成領域
a ;冷却エア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端を底部で塞いだ多角筒状の胴部の上端に、口筒部を連設した合成樹脂製ブロー成形品であるボトル本体と、該ボトル本体の胴部と底部をインサート材として、該胴部と底部を覆って射出成形された透明な合成樹脂製の外殻体とから構成され、該外殻体の外周面形状を、前記胴部と異なる角数の多角形状とした合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
外殻体の外周面の多角形状を、ボトル本体の胴部の多角形状よりも角数を多くした請求項1に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項3】
ボトル本体の胴部の外周面に、装飾表示を施した請求項1または2に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項4】
装飾表示を、胴部の外周面の一部に施した印刷層とした請求項3に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項5】
装飾表示を、胴部の外周面全域に施した金属蒸着膜層とした請求項3に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項6】
ボトル本体を、透明な合成樹脂製とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項7】
ボトル本体を透明な合成樹脂製とし、該ボトル本体の少なくとも胴部の外周面に印刷層、塗装膜層又は金属蒸着膜層から選らばれる少なくとも一つの膜層を形成した膜層形成領域と、該膜層の形成されていない非形成領域を有する構成とした請求項1または2記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項8】
膜層形成領域と非形成領域により装飾表示を現出するようにした請求項7記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項9】
膜層形成領域と非形成領域により規則性を有するパターンを形成した請求項7記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項10】
非形成領域を透視窓とした請求項7記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項11】
膜層形成領域においてレーザー光により部分的に膜層を除去し、該除去部分を非形成領域とした請求項7記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項12】
ボトル本体の胴部の胴部稜線を、外殻体の外殻体稜線間の平坦面に対向させた請求項1〜11のいずれか1項に記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項13】
合成樹脂製ブロー成形品であるボトル本体の、下端を底部で塞いだ多角筒状の胴部をインサート材として、該胴部と底部を覆って透明な合成樹脂により外殻体を射出成形したボトル成形方法であって、射出金型に保持されたボトル本体内に冷却エアを循環供給して、前記ボトル本体内温度を、該ボトル本体の成形樹脂材料のガラス転移点以下に保持した状態で、前記外殻体の成形樹脂材料を計量充填する合成樹脂製ボトルの成形方法。
【請求項14】
底部をゲート口に対向させたボトル本体内の底部間近から、冷却エアを供給する請求項13に記載の合成樹脂製ボトルの成形方法。
【請求項15】
冷却エアを供給するエアピンの先端を、ボトル本体の底部に当接させた請求項13または14に記載の合成樹脂製ボトルの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−222057(P2010−222057A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129250(P2009−129250)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】