説明

合成樹脂製積層容器

【課題】十分な耐内容物性を確保しつつ、耐熱性が高められた合成樹脂製積層容器を提供する。
【解決手段】本発明は、射出成形又は圧縮成形された基材層2に少なくとも1つの被覆層3を積層してなるプリフォームから成形された合成樹脂製のカップ状積層容器1であって、プリフォームは、被覆層3をインサート品として基材層2と共に射出成形又は圧縮成形されたもの、或いは、当該被覆層3が基材層2に接着されたものであり、かつ、基材層2が、ポリプロピレンからなる一方、被覆層3が、容器1の内層として配置されていると共に、ポリエチレンからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形又は圧縮成形された基材層に少なくとも1つの被覆層を積層してなるプリフォームから成形された合成樹脂製積層容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層容器には、底部に対して複数の側面部を展開させたインナーフィルムラベルを用い、各々の側面部を折り曲げて形作られたものをインサート品として、金型内に被覆層としてセットしたのち、基材層を構成する樹脂材料を注入することにより、金型内で成形されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−18090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の積層容器によれば、基材層として、耐熱温度が高いポリプロピレンからなるものを使用できるため、耐熱性に優れた積層容器を提供できる。
【0005】
また、上述の積層容器によれば、基材層の内側に配置されるインナーフィルムラベルとしても、ポリエチレンからなるものを使用できるため、耐内容物性にも優れる。
【0006】
しかしながら、こうした従来の積層容器は、インナーフィルムラベルの合わせ面に隙間が生じると、十分な耐内容物性を確保しつつ耐熱性を高めることができないことから、依然として改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、十分な耐内容物性を確保しつつ耐熱性が高められた合成樹脂製積層容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、射出成形又は圧縮成形された基材層に少なくとも1つの被覆層を積層してなるプリフォームから成形された合成樹脂製積層容器であって、
当該プリフォームは、被覆層をインサート品として基材層と共に射出成形又は圧縮成形されたもの、或いは、当該被覆層が基材層に接着されたものであり、かつ、
基材層が、ポリプロピレンからなる一方、
被覆層が、容器の内層として配置された、ポリエチレンからなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、被覆層が、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物からなり、基材層と接する第1層と、この第1層に被覆されるポリエチレンからなる第2層との積層構造としてなるものとすることができる。
【0010】
また、本発明によれば、前記被覆層に、少なくとも1つのバリア層を内在させることができる。バリア層としては、ガスバリア性(酸素、二酸化炭素、水蒸気など)、透明性、剛性、耐熱性、耐内容物(薬品)性、加飾性など、必要とする種々の物性によって、その組み合わせを選択することができる。例えば、水蒸気バリア性を目的としてポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂など)を選択し、ガスバリア性を必要とする場合には、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、ナイロン樹脂、ポリグリコール酸(PGA)樹脂などを被覆層に使用することができる。
【0011】
また、本発明によれば、被覆層を構成するポリエチレンとしては、ポリプロピレンに対して接着性を有するものを採用することができる。こうしたポリエチレンとしては、例えば、接着性を有する変性ポリエチレン、詳細には、酸変性されたポリエチレン、更に詳細には、カルボキシル基変性ポリエチレンやマレイン酸変性ポリエチレンが挙げられる。
【0012】
さらに、接着性を有する変性ポリエチレンを第1層とし、これにポリエチレンからなる第2層を積層してもよい。この場合、前記第1層及び第2層間にバリア層を配置することもできる。
【0013】
また、本発明に係る合成樹脂製積層容器としては、上述のプリフォームを熱成形したもので構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、射出成形又は圧縮成形された基材層に少なくとも1つの被覆層を積層してなるプリフォームを用いて成形された合成樹脂製積層容器であって、当該プリフォームとして、被覆層をインサート品として基材層と共に射出成形又は圧縮成形されたもの、或いは、当該被覆層が基材層に接着されたものを用いたことで、被覆層によって基材層が連続的に被覆される。
【0015】
従って、本発明によれば、当該被覆層には、基材層に通じる隙間が存在しないことになるため、ポリプロピレンからなる基材層側では、耐熱性を高めることができると同時に、ポリエチレンからなる被覆層側での耐内容物性は、被覆層が配置された部分の基材層全体に亘って向上する。
【0016】
即ち、本発明によれば、十分な耐内容物性を確保しつつ耐熱性が高められた合成樹脂製積層容器を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、被覆層を、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物からなり、基材層と接する第1層と、この第1層に被覆されるポリエチレンからなる第2層との積層構造としてなるものとすれば、基材層での耐熱性と被覆層での耐内容物性との両立を図りながら、同材質同士の相性により、強固な接着が可能になる。
【0018】
また、本発明によれば、被覆層に、少なくとも1つのバリア層を内在させれば、ガスバリア性や水蒸気バリア性に代表される様々なバリア性を併せて向上させることができる。
さらに、被覆層を構成するポリエチレンとして、ポリプロピレンに対して接着性を有するものを単層、或いは基材層に隣接する層として採用すれば、より強固な接着が可能になる。
【0019】
また、本発明である合成樹脂製積層容器として、プリフォームを熱成形したものを採用すれば、被覆層によって基材層を連続的に確実に被覆させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一形態である、カップ状積層容器を示す斜視図である。
【図2】同形態の軸線Oを含む平面として、同形態を示した縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ、同形態のプリフォームの成形方法を例示する斜視図及び、プリフォームの各形態を例示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0022】
1は、本発明の一形態である、カップ状の積層容器(以下、「カップ容器」)である。カップ容器1は、射出成形又は圧縮成形された基材層2に被覆層3を積層してなるプリフォームから成形された合成樹脂製の積層容器である。
【0023】
基材層2は、ポリプロプレンからなり、胴部2aの下端を閉じる底部2bと共に、この底部2bと対向する位置に胴部2a内側に通じる口部2cを形作る。口部2cは、胴部2aの上端を開放させるように形作られ、この口部2cの周りから外方に突出する環状のフランジ2dが一体に設けられている。
【0024】
なお、基材層2として使用されるポリプロピレンとしては、ポリプロピレンを主体とするものであればよく、例えば、ポリプロピレンとポリエチレン、或いは他の樹脂との共重合体樹脂やブレンド樹脂、積層体などである。
【0025】
被覆層3は、基材層2の内側に配置されている。被覆層3は、基材層2と共に延伸させてなるものとすることができる。被覆層3を基材層2と共に延伸させるに際しては、二軸延伸ブロー成形に代表されるブロー成形や熱成形が挙げられる。このような成形に用いられるプリフォームは、後述のとおり、射出成形又は圧縮成形を基本として、基材層2又は被覆層3のいずれか一方をインサート品としたインサート成形や、基材層2及び被覆層3を個別に成形した後、それらを接着や溶着等による後加工で固着する方法が挙げられる。
【0026】
なお、図中には、被覆層3における基材層2の胴部2a、底部2b、口部2c及びフランジ2dに対応する部分をそれぞれ、胴部3a、底部3b、口部3c及びフランジ3dとして示す。なお、本形態では、インサート成形を前提としているところから、被覆層3のフランジ3dにおける外周縁3eが、図に示すように、基材層2のフランジ2dにおける外周縁2eに覆われているが、本発明に従えば、被覆層3のフランジ3dの外周縁3eを露出させるように成形されてなるものとすることもできる。
【0027】
また、本発明に従えば、被覆層3は、基材層2の胴部2a及び底部2bの全面に亘って隙間の無いように連続的に被覆されてなるものであればよいが、好適には、本形態の如く、胴部2aの上端を越えてフランジ2dに至るまで隙間の無いように連続的に被覆されてなるものとする。
【0028】
また、被覆層3は、ポリエチレン(PE)からなる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。また、ポリエチレンを主体とする樹脂であれば、他の樹脂との共重合体やブレンド樹脂を採用してもよい。但し、本発明に従えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂やナイロン樹脂等に代表されるガスバリア性樹脂を中間層とし、接着層を介して該中間層の両面にポリエチレン樹脂を配置した積層構成などによって被覆層を形成することもできる。
【0029】
本形態に係るカップ容器1は、上述のとおり、プリフォームを熱成形することで形作られる。カップ容器1の成形に用いられるプリフォームは、例えば、図3(a)に示すように、被覆層3及び基材層2を予め別体のシート状の部材として設け、被覆層3を後加工で基材層2に接着又は溶着し、或いは、図3(b),(c)に示すように、予め成形されたシート状の被覆層3をインサート品として基材層2と共に射出成形又は圧縮成形する。
【0030】
また、かかるプリフォームは、図3(b)に示すような平坦なプリフォームP1は勿論、図3(c)に示すように、中心が凹んで湾曲したプリフォームP2でもよい。本発明に係るプリフォームとしては平板状のプリフォームを使用することが好ましい。ここで、「平板状」とは、平面視の直径(最大幅)に比較して、厚み方向の寸法が小さいものを意味する。より好ましくは、厚み方向の寸法を前記最大幅の半分以下とする。
【0031】
なお、図3(b),(c)に示すプリフォームP1(P2)は、被覆層3をインサート品として基材層2と共に射出成形又は圧縮成形するものを前提としているところから、被覆層3の外周縁が基材層2で覆われている。
また、本形態では、プリフォームを円盤状に形作っているが、矩形状やその他の形状に形作ることも可能である。
【0032】
プリフォームを熱成形(サーモフォーミング)してカップ容器1を成形する方法としては、例えば、プリフォームP1(P2)を加熱軟化させ、金型とプリフォームP1(P2)の隙間を真空にして当該プリフォームP1(P2)を金型に密着加工する真空成形や、プリフォームの内面側からプラグや圧力流体によって、プリフォームを金型に密着加工する圧空成形、或いは、これらを組み合わせた真空圧空成形などが挙げられる。
【0033】
このように、プリフォームP1(P2)を延伸成形することによって、被覆層3が基材層2を連続的に覆ったカップ状容器1が得られる。なお、被覆層3としては、延伸前の厚さが500μm以下のもの、好適には、100μm以下のものが挙げられるが、上述の如く、被覆層3を基材層2と共に延伸させてなるものとすれば、被覆層3の厚さを極めて薄くすることができる。
【0034】
プリフォームの形状は、例えば、平板状、試験管状、試験管状よりも底深さが浅い皿状のもの等が挙げられる。試験管状や皿状の場合は、インサート品を予め、その形状に加工してから、金型内にインサートすることが好ましいが、樹脂圧で延伸することもできる。
【0035】
本形態の如く、射出成形又は圧縮成形された基材層2に少なくとも1つの被覆層3を積層してなるプリフォームP1(P2)を用いて成形された合成樹脂製積層容器において、当該プリフォームP1(P2)として、被覆層3をインサート品として基材層2と共に射出成形又は圧縮成形されたもの、或いは、当該被覆層3が基材層2に接着されたものを用いれば、被覆層3によって基材層2が連続的に被覆される。
【0036】
従って、本形態によれば、当該被覆層3には、基材層2に通じる隙間が存在しないことになるため、ポリプロピレンからなる基材層2側では、耐熱性を高めることができると同時に、ポリエチレンからなる被覆層3側での耐内容物性は、被覆層3が配置された基材層2全体に亘って向上する。
【0037】
即ち、本形態によれば、十分な耐内容物性を確保しつつ耐熱性が高められた合成樹脂製の積層カップ状容器を提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、被覆層3を構成するポリエチレンとして、基材層2に隣接する層にポリプロピレンに対して接着性を有するものを採用すれば、より強固な接着が可能になる。こうしたポリエチレンとしては、例えば、ポリプロピレンに対する接着性を有する変性ポリエチレン、詳細には、酸変性されたポリエチレン、更に詳細には、カルボキシル基変性ポリエチレンやマレイン酸変性ポリエチレンが挙げられる。
【0039】
また、上述のとおり、被覆層3に、少なくとも1つのバリア層を内在させれば、ガスバリア性や水蒸気バリア性に代表される様々なバリア性を併せて向上させることができる。
【0040】
また、本形態のように、カップ状容器1として、プリフォームP1(P2)を熱成形したものを採用すれば、被覆層3によって基材層2を連続的に確実に被覆させることができる。
【0041】
上述したところは、本発明の一形態を示したものに過ぎず、特許請求の範囲内において、様々の変更を加えることができる。例えば、本発明に従えば、他の基材層として、胴部の上側に肩部を形成すると共に、この肩部に繋がる筒状部の内側を開放させて口部を形作るボトル状のもの等も挙げられる。なお、この場合も、被覆層は、胴部及び底部の全面に亘って隙間の無いように連続的に被覆されてなるものであるが、肩部から口部に至るまで連続的に被覆されてなるものとすることもできる。
【0042】
また、基材層2及び被覆層3は、単層に限定されるものではなく、それぞれ積層とすることもできる。
【0043】
更に、本発明に従えば、積層容器としての層構成は、上述した形態のように、基材層2と被覆層3との少なくとも二層であればよい。このため、本発明に従う積層容器は、三層以上の層構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、食品(飲料)用容器、薬品用容器及び化粧料用容器と、その内容物は問わない。また、容器の形状についても、カップ状やボトル状に限定されることなく、様々な形状のものに採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 カップ状積層容器
2 基材層
2a 胴部
2b 底部
2c 口部
2d フランジ
2e フランジ外周縁
3 被覆層
3a 胴部
3b 底部
3c 口部
3d フランジ
3e フランジ外周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形又は圧縮成形された基材層に少なくとも1つの被覆層を積層してなるプリフォームから成形された合成樹脂製積層容器であって、
当該プリフォームは、被覆層をインサート品として基材層と共に射出成形又は圧縮成形されたもの、或いは、当該被覆層が基材層に接着されたものであり、かつ、
基材層が、ポリプロピレンからなる一方、
被覆層が、容器の内層として配置された、ポリエチレンからなることを特徴とする合成樹脂製積層容器。
【請求項2】
請求項1において、被覆層が、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物からなり、基材層と接する第1層と、この第1層に被覆されるポリエチレンからなる第2層との積層構造としてなることを特徴とする合成樹脂製積層容器。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記被覆層は、少なくとも1つのバリア層が内在するものであることを特徴とする合成樹脂製積層容器。
【請求項4】
請求項1において、被覆層を構成するポリエチレンは、接着性を有する変性ポリエチレンであることを特徴とする合成樹脂製積層容器。
【請求項5】
請求項4において、被覆層が、接着性を有する変性ポリエチレンからなり、基材層と接する第1層と、この第1層に被覆されるポリエチレンからなる第2層との積層構造としてなることを特徴とする合成樹脂製積層容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の合成樹脂製積層容器は、前記プリフォームを熱成形したものであることを特徴とする合成樹脂製積層容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213385(P2011−213385A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83583(P2010−83583)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】