説明

合成繊維用処理剤及び合成繊維の処理方法

【課題】
有機リン酸エステル化合物を含有することなく、一層の高速化が進められる近年において特に強い要望であるところのウェブの均一性及びコイルフォームに優れていること、またローラー捲付きの発生、スカムの発生及び糸欠点の発生を防止できること、以上を同時に満足させることができる合成繊維用処理剤及び合成繊維の処理方法を提供する。
【解決手段】
合成繊維用処理剤として、特定のサルフェート型アニオン界面活性剤を45〜85質量%、特定の含窒素界面活性剤を1〜30質量%、特定のノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機シリコーンを1〜10質量%含有し、且つこれらを合計で95質量%以上含有するものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成繊維用処理剤及び合成繊維の処理方法に関する。近年、合成繊維の紡績や合成繊維を用いる乾式不織布の製造等においては一層の高速化が進められており、これに適応する合成繊維用処理剤として有機リン酸エステル化合物を主成分とするものが多用されるようになっている。ところが、有機リン酸エステル化合物は、河川、湖沼、港湾等における富栄養化の原因物質の一つになることが問題とされ、合成繊維用処理剤においてもかかる問題のないものへの速やかな転換が要求されるようになっている。本発明は有機リン酸エステル化合物を含有することなく近年の高速化に適応できる合成繊維用処理剤及びこれを用いる合成繊維の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機リン酸エステル化合物を含有しない合成繊維用処理剤として各種が知られており(例えば非特許文献1〜3参照)、なかでもサルフェート型アニオン界面活性剤を主成分とする合成繊維用処理剤としては、1)アルキルサルフェート塩と共にエーテル型ノニオン界面活性剤やエステル型ノニオン活性剤を含有するもの(例えば特許文献1〜4参照)、2)アルキルサルフェート塩と共に第四級アンモニウム塩を含有するもの(例えば特許文献5及び6参照)等が知られている。
【0003】
しかし、有機リン酸エステル化合物を含有しない従来の合成繊維用処理剤にはいずれも、一層の高速化が進められる近年において特に強い要望であるところのウェブの均一性及びコイルフォームに優れていること、またローラー捲付きの発生、スカムの発生及び糸欠点の発生を防止できること、以上を同時に満足させることができないという問題がある。
【非特許文献1】繊維(1967年,第19巻,233頁−237頁)
【非特許文献2】繊維(1981年,第33巻,321頁−329頁)
【非特許文献3】化繊月報(1980年,7月号,16頁−22頁)
【特許文献1】特開昭48−28794号公報
【特許文献2】特開昭48−33193号公報
【特許文献3】特開昭58−65071号公報
【特許文献4】特公昭41−12078号公報
【特許文献5】特開昭49−1894号公報
【特許文献6】特開昭62−282074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、有機リン酸エステル化合物を含有することなく、一層の高速化が進められる近年において特に強い要望であるところのウェブの均一性及びコイルフォームに優れていること、またローラー捲付きの発生、スカムの発生及び糸欠点の発生を防止できること、以上を同時に満足させることができる合成繊維用処理剤及びこれを用いる合成繊維の処理方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、上記の課題を解決するべく研究した結果、特定のサルフェート型アニオン界面活性剤を主成分として含有し、更に特定の含窒素界面活性剤、特定のノニオン界面活性剤及び有機シリコーンを各々所定割合で含有する合成繊維用処理剤が正しく好適であること、またかかる合成繊維用処理剤を水性液となし、該水性液を合成繊維に対し合成繊維用処理剤として所定量となるよう付着させる処理方法が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のサルフェート型アニオン界面活性剤を45〜85質量%、下記の含窒素界面活性剤を1〜30質量%、下記のノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機シリコーンを1〜10質量%含有し、且つこれらを合計で95質量%以上含有することを特徴とする合成繊維用処理剤に係る。
【0007】
サルフェート型アニオン界面活性剤:下記の化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤及び下記の化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
化1及び化2において、
,R:炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基(但し、全ての直鎖飽和脂肪族炭化水素基中における炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪族炭化水素基の割合が80質量%以上となる炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基)
,M:リチウム原子、ナトリウム原子又はカリウム原子
A:合計1〜7個の炭素数2又は3のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレンジオールから全ての水酸基を除いた残基
【0011】
含窒素界面活性剤:イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤、アミノエーテル型ノニオン界面活性剤及びアンモニウム塩型カチオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
【0012】
ノニオン界面活性剤:エーテル型ノニオン界面活性剤及びエステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
【0013】
また本発明は、前記の本発明に係る合成繊維用処理剤を0.1〜15質量%の水性液となし、該水性液を合成繊維に対し該合成繊維用処理剤として0.1〜0.5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法に係る。
【0014】
先ず、本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、単に本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、詳しくは以下に説明するように、サルフェート型アニオン界面活性剤、含窒素界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び有機シリコーンを含有して成るものである。本発明の処理剤に供するサルフェート型アニオン界面活性剤としては、1)化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤、2)化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤、3)これらの任意の混合物が挙げられる。
【0015】
化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤において、化1中のRは、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等の炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基であって、全ての直鎖飽和脂肪族炭化水素基中におけるヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基に相当する炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪族炭化水素基の割合が80質量%以上となる炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基である。これは例えば、化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤が、化1中のRがテトラデシル基に相当する炭素数14の直鎖飽和脂肪族炭化水素基である場合のものと、化1中のRがオクタデシル基に相当する炭素数18の直鎖飽和脂肪族炭化水素基である場合のものとの混合物である場合、かかる混合物中においてテトラデシル基とオクタデシル基との合計量の80質量%以上がオクタデシル基であることを意味する。化1中のRは以上説明したような条件付きの直鎖飽和脂肪族炭化水素基であるが、化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤としては、化1中のRに相当する全てが炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪族炭化水素基である場合のものが好ましい。化1中のMは、リチウム原子、ナトリウム原子又はカリウム原子であるが、なかでもナトリウム原子が好ましい。
【0016】
化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤において、化2中のRは、化1中のRについて前記したことと同じである。また化2中のMは化1中のMについて前記したことと同じである。化2中のAは、合計1〜7個の炭素数2又は3のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレンジオールから全ての水酸基を除いた残基であるが、なかでも合計2〜5個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。化2中のAの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジオール等の(ポリ)オキシアルキレンジオールから全ての水酸基を除いた残基が挙げられる。
【0017】
本発明の処理剤においては、サルフェート型アニオン界面活性剤として、化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤を単独で用いる場合が好ましい。
【0018】
本発明の処理剤に供する含窒素界面活性剤としては、1)イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤、2)アミノエーテル型ノニオン界面活性剤、3)アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、4)これらの任意の混合物が挙げられる。
【0019】
イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤としては、これが特に制限されるというものではないが、イミダゾリニウム環の2位の置換基が炭素数11〜18の直鎖脂肪族炭化水素基であって、アニオン基がメチルスルファート基、エチルスルファート基である場合のものが好ましい。かかるイミダゾリニウム型カチオン界面活性剤としては、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ドデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−トリデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−テトラデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘキサデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘプタデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘプタデセニル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ドデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−トリデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−テトラデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ヘキサデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ヘプタデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ヘプタデセニル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−エチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−エチル−2−トリデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−エチル−2−ペンタデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−エチル−2−ヘプタデシル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−メチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート等が挙げられるが、なかでも1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘプタデセニル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート、1−(2−アセチルアミノエチル)−1−メチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファートが好ましい。
【0020】
またアミノエーテル型ノニオン界面活性剤としては、これも特に制限されるというものではないが、炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、且つ炭素数2又は3のオキシアルキレン基の繰り返し数が1〜50の(ポリ)オキシアルキレン基を有するアミノエーテル型ノニオン界面活性剤が好ましい。かかるアミノエーテル型ノニオン界面活性剤としては、1)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)デシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)トリデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エイコシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドコシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)デシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ドデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)トリデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)テトラデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ヘキサデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)オクタデシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)エイコシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ドコシルアミン等のN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アルキルアミン、2)N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]オクチルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]デシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]ドデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]トリデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]テトラデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]ヘキサデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]オクタデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]エイコシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]ドコシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]オクチルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]デシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]ドデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]トリデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]テトラデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]ヘキサデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]オクタデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]エイコシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)]ドコシルアミン等のN,N−ビス[ポリ(オキシアルキレン)]アルキルアミン等が挙げられるが、なかでもN,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]ドデシルアミン、N,N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]オクタデシルアミンが好ましい。
【0021】
更にアンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、公知のものを適用できる。これには例えば、テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリプロピルエチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソオクチルエチルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジブテニルジエチルアンモニウム塩、ジメチルジオレイルアンモニウム塩、トリメチルオレイルアンモニウム塩、トリブチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジ(ヒドロキシエチル)ジプロピルアンモニウム塩、トリ(ヒドロキシエチル)オクチルアンモニウム塩、トリ(ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウム塩、(オクタノイルアミノプロピル)ジメチルエチルアンモニウム塩、(ドテカノイルアミノプロピル)ジメチルエチルアンモニウム塩、(ヘキサデカノイルアミノプロピル)ジメチルエチルアンモニウム塩、(オクタデカノイルアミノプロピル)ジメチルエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
本発明の処理剤においては、含窒素界面活性剤として、イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤を単独で用いる場合、アミノエーテル型ノニオン界面活性剤を単独で用いる場合、及びイミダゾリニウム型カチオン界面活性剤とアミノエーテル型ノニオン界面活性剤とを混合で用いる場合が好ましい。
【0023】
本発明の処理剤に供するノニオン界面活性剤としては、1)エーテル型ノニオン界面活性剤、2)エステル型ノニオン界面活性剤、3)これらの任意の混合物が挙げられる。
【0024】
エーテル型ノニオン界面活性剤としては、公知のものを適用できる。これには例えば、いずれも分子中にオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられるが、なかでもオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位の数が合計1〜50個であって、アルキル基及びアルケニル基の炭素数が8〜22であるものが好ましい。またエステル型ノニオン界面活性剤としては、これも公知のものを適用できる。これには例えば、1)いずれも分子中にオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する、ポリオキシアルキレン飽和脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン不飽和脂肪酸エステル、ひまし油やヤシ油等の動植物油脂のアルキレンオキサイド付加物等のエステル型ノニオン界面活性剤、2)ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等の多価アルコール部分エステル型ノニオン界面活性剤等が挙げられるが、なかでもオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位の数が合計5〜50のポリオキシアルキレン基を有するエステル型ノニオン界面活性剤が好ましい。以上説明したエーテル型ノニオン界面活性剤及びエステル型ノニオン界面活性剤は、単独で用いることも、又は混合で用いることもできる。
【0025】
本発明の処理剤に供する有機シリコーンとしては、公知のものが適用できるが、なかでも30℃の動粘度が2.0×10−4〜2.0×10−2/sの線状ポリオルガノシロキサンが好ましい。これには例えば、線状ポリジメチルシロキサン、変性基を有する線状ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、この場合の変性基としては、エチル基、フェニル基、アミノ基を有するアルキル基、ポリオキシアルキレン基を有するアルキル基、ω−アルコキシポリオキシアルキレンを有するアルキル基等が挙げられるが、なかでも線状ポリジメチルシロキサンと、変性基としてアミノ基を有するアルキル基を有するアミノ変性線状ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0026】
本発明の処理剤は、以上説明したサルフェート型アニオン界面活性剤、含窒素界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び有機シリコーンを含有するものであって、該サルフェート型アニオン界面活性剤を45〜85質量%、該含窒素界面活性剤を1〜30質量%、該ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び該有機シリコーンを1〜10質量%含有し、且つこれらを合計で95質量%以上含有するものであるが、該サルフェート型アニオン界面活性剤を50〜80質量%、該含窒素界面活性剤を3〜20質量%、該ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び該有機シリコーンを2〜10質量%含有し、且つこれらを合計で97質量%以上含有するものが好ましく、該サルフェート型アニオン界面活性剤を55〜75質量%、該含窒素界面活性剤を5〜10質量%、該ノニオン界面活性剤を12〜30質量%及び該有機シリコーンを3〜10質量%含有し、且つこれらを合計で100質量%含有するものがより好ましい。
【0027】
本発明の処理剤は、他の成分を合計で5質量%未満含有することができる。かかる他の成分としては、1)アルキルスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩、エステルスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸塩、2)パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ベヘニン酸ステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ミリシル等の、脂肪族モノカルボン酸と脂肪族1価アルコールとから得られるエステル化合物、3)鉱物系のモンタンワックス、石油系のパラフィンワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明に係る合成繊維の処理方法(以下、単に本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、以上説明した本発明の処理剤を0.1〜15質量%の水性液となし、該水性液を合成繊維に対し該処理剤として0.1〜0.5質量%となるように付着させる処理方法である。付着方法としては、浸漬法、スプレー法、ローラー法等が挙げられ、また付着工程としては、紡糸工程、延伸工程、熱処理工程、捲縮工程、紡績工程、これらの各工程の相互間等が挙げられる。本発明の処理剤を付着させた合成繊維は、通常付着処理直後に、60〜100℃で、10〜15分間の乾燥工程に供される。
【0029】
本発明の処理方法に適用される合成繊維としては、1)エチレンテレフタレ一卜を主材とするポリエステル系繊維、2)ポリアクリロニトリル、モダアクリル等のアクリル系繊維、3)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられるが、なかでもポリエステル系繊維に適用する場合に効果の発現が高い。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した本発明には、有機リン酸エステル化合物を含有することなく、一層の高速化が進められる近年において特に強い要望であるところのウェブの均一性及びコイルフォームに優れていること、またローラー捲付きの発生、スカムの発生及び糸欠点の発生を防止できること、以上を同時に満足させることができるという効果がある。
【0031】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0032】
試験区分1(合成繊維用処理剤の水性液の調製)
・合成繊維用処理剤(実施例1)の水性液(P−1)の調製
硫酸オクタデシルオキシエチレン=ナトリウム(A−1)58部、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘプタデセニル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート(B−1)8部、オレイン酸(ポリオキシアルキレン)(m=9,n=9)(C−1)25部及び30℃の動粘度が3.5×10−4/sのポリジメチルシロキサン(D−1)9部に、水900部を加え、80℃に加温して撹拌し、合成繊維用処理剤(実施例1)を10%含有する水性液(P−1)を調製した。尚、mはオキシエチレン単位の数を意味し、またnはオキシプロピレン単位の数を意味していて、これらは以下同じ。
【0033】
・合成繊維用処理剤(実施例2〜11及び比較例1〜16)の水性液(P−2〜11及びR−1〜16)の調製
合成繊維用処理剤(実施例1)の水性液(P−1)と同様にして、合成繊維用処理剤(実施例2〜11及び比較例1〜16)を10%含有する水性液(P−2〜11及びR−1〜16)を調製した。以上で調製した各水性液中における各合成繊維用処理剤の内容を表1にまとめて示した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1において、
割合:%
A−1:硫酸オクタデシルオキシエチレン=ナトリウム
A−2:硫酸オクタデシルポリオキシエチレン(m=5)=ナトリウム
A−3:硫酸ヘキサデシルポリオキシエチレン(m=2)=ナトリウム
A−4:硫酸テトラデシルポリオキシエチレン(m=2)=ナトリウム
A−5:硫酸ドコシルポリオキシアルキレン(m=2,n=5)=ナトリウム
A−6:硫酸オクタデシル=ナトリウム
A−7:硫酸ヘキサデシル=カリウム
A−8:硫酸ヘキサデシル=リチウム
A−9:硫酸テトラデシル=カリウム
A−10:硫酸ドコシル=リチウム
【0036】
a−1:硫酸ドデシル=カリウム
a−2:硫酸テトラコシルポリオキシエチレン(m=4)=ナトリウム
a−3:硫酸ドデシルポリオキシエチレン(m=2)=ナトリウム
a−4:硫酸ドデシルポリオキシエチレン(m=3)=ジエタノールアミン
a−5:硫酸ドデシルポリオキシエチレン(m=3)=ナトリウム
【0037】
B−1:1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ヘプタデセニル−2−イミダゾリニウムエチルスルファート
B−2:1−(2−アセチルアミノエチル)−1−メチル−2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムメチルスルファート
B−3:N,N−ビス[ポリオキシエチレン(m=5)]ドデシルアミン
B−4:N,N−ビス[ポリオキシエチレン(m=15)]オクタデシルアミン
B−5:(オクタデカノイルアミノプロピル)ジメチルエチルアンモニウムエチルスルファート
B−6:(オクタデカノイルアミノエチル)ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム=クロリド
B−7:ジアルキルメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム=グリオキシラート
【0038】
C−1:オレイン酸(ポリオキシアルキレン)(m=9,n=9)
C−2:α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(m=10)
C−3:硬化ひまし油エチレンオキサイド付加物(硬化ひまし油1モル当たりエチレンオキサイドを30モル付加したもの)
C−4:パルミチン酸(ポリオキシエチレン)(m=10)
C−5:α−ノニルフェニル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(m=10)
C−6:ラウリン酸(ポリオキシエチレン)(m=9)
【0039】
D−1:30℃の粘度が3.5×10−4/sのポリジメチルシロキサン
D−2:30℃の粘度が1.0×10−2/sのポリジメチルシロキサン
D−3:30℃の粘度が6.0×10−3/s、アミノ当量が5000のアミノ変性ポリジメチルシロキサン
【0040】
E−1:融点が60℃のパラフィンワックス
E−2:ステアリン酸ステアリル
E−3:テトラデシルスルホン酸ナトリウム
E−4:ステアリン酸ナトリウム
E−5:グリセリンモノステアラート
E−6:ドデシルアルコール
【0041】
試験区分2(ポリエステルステープル繊維への合成繊維用処理剤の付着とその評価)
・ポリエステルステープル繊維への合成繊維用処理剤の付着
表1に記載した合成繊維用処理剤の水性液を希釈して合成繊維用処理剤の2%水性液を調製した。各水性液を、製綿工程で得られた繊度1.3×10−4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、スプレー給油法で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、合成繊維用処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維を得た。処理済みポリエステルステープル繊維への合成繊維用処理剤の付着量を表2にまとめて示した。
【0042】
・高速カード工程におけるウェブ均一性の評価
前記の処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、30℃×70%RHの雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)に供し、紡出速度=160m/分の条件で通過させた。紡出されたウェブの均一性を以下の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0043】
ウェブの均一性の評価基準
◎:斑が全くなく、均一であり、全く問題はない
○:僅かな斑が認められるが、問題にならない
△:斑が少し確認でき、やや問題である
×:斑が多く確認でき、問題である
【0044】
・高速練条工程におけるゴムローラーへの捲付き防止性、スカムの発生防止性及びコイルフォームの評価
前記の処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。このカードスライバーを30℃×70%RHの雰囲気下でPDF型練条機(石川製作所社製)に供し、紡出速度=700m/分の条件で5回繰り返して通過させた。PDF型練条機のゴムローラーへの捲付き回数、及びゴムローラー、レジューサー及びトランペットの各部分におけるスカムの発生程度、及び練条スライバーのコイルフォームを観察し、ゴムローラーへの捲付き防止性、スカムの発生防止性及びコイルフォームを以下の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0045】
ゴムローラーへの捲付き防止性の評価基準
◎:ゴムローラーへの捲付き回数が0〜4回
○:ゴムローラーへの捲付き回数が5〜9回
△:ゴムローラーへの捲付き回数が10〜14回
×:ゴムローラーへの捲付き回数が15回以上
【0046】
スカムの発生防止性の評価基準
◎:スカムがほとんど認められない
○:スカムが少し認められる
△:スカムが多く認められる
×:スカムが著しく多く認められる
【0047】
コイルフォームの評価基準
◎:優れている
○:良好である
△:不良である
×:著しく不良である
【0048】
・高速ワインダー工程における糸欠点数の評価
前記の処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。このカードスライバーを30℃×70%RHの雰囲気下でPDF型練条機(石川製作所製)及び粗紡機(豊田自動織機社製)に供して粗糸を得た。この粗糸を30℃×70%RHの雰囲気下でリング精紡機(豊田自動織機社製)に供し、スピンドル回転数=18000rpm、撚り数=775T/m、供給粗糸=0.59g/m、トータルドラフト=40倍の条件で2時間、50錘で運転した。得られたリング精紡糸を糸欠点検出器(計測器工業社製)を付設したワインダー(村田機械社製)に供し、30℃×70%RHの雰囲気下、糸速度=1000m/分の条件で巻き返しを実施した。糸欠点検出器の設定条件を以下に示した。ワインダー工程中に検出された100km当たりの糸欠点合計数に基づいて、糸欠点を以下の基準で判定した。結果を表2にまとめて示した。
【0049】
糸欠点検出器の設定条件
ネップ:400%、2mm
スラブ:120%、2.5cm
ショート・シック・プレイス:+90%、20cm
ロング・シック・プレイス:+40%、50cm
ショート・シン・プレイス:−75%、10cm
ロング・シン・プレイス:−40%、50cm
【0050】
糸欠点の評価基準
◎:糸欠点合計数が0〜29個
○:糸欠点合計数が30〜59個
△:糸欠点合計数が60〜89個
×:糸欠点合計数が90個以上
























【0051】
【表2】

【0052】
表2において、
付着量:ポリエステルステープル繊維に対する合成繊維用処理剤の付着量(%)
*:カードスライバーが得られず、評価できなかった

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のサルフェート型アニオン界面活性剤を45〜85質量%、下記の含窒素界面活性剤を1〜30質量%、下記のノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機シリコーンを1〜10質量%含有し、且つこれらを合計で95質量%以上含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
サルフェート型アニオン界面活性剤:下記の化1で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤及び下記の化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
【化1】

【化2】

{化1及び化2において、
,R:炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基(但し、全ての直鎖飽和脂肪族炭化水素基中における炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪族炭化水素基の割合が80質量%以上となる炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪族炭化水素基)
,M:リチウム原子、ナトリウム原子又はカリウム原子
A:合計1〜7個の炭素数2又は3のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレンジオールから全ての水酸基を除いた残基}
含窒素界面活性剤:イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤、アミノエーテル型ノニオン界面活性剤及びアンモニウム塩型カチオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
ノニオン界面活性剤:エーテル型ノニオン界面活性剤及びエステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる一つ又は二つ以上
【請求項2】
サルフェート型アニオン界面活性剤を50〜80質量%、含窒素界面活性剤を3〜20質量%、ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機シリコーンを2〜10質量%含有し、且つこれらを合計で97質量%以上含有する請求項1記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
サルフェート型アニオン界面活性剤を55〜75質量%、含窒素界面活性剤を5〜10質量%、ノニオン界面活性剤を12〜30質量%及び有機シリコーンを3〜10質量%含有し、且つこれらを合計で100質量%含有する請求項1記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
サルフェート型アニオン界面活性剤が化2で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤であり、含窒素界面活性剤がイミダゾリニウム型カチオン界面活性剤及び/又はアミノエーテル型ノニオン界面活性剤であって、有機シリコーンが30℃の動粘度が2.0×10−4〜2.0×10−2/sの線状ポリオルガノシロキサンである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
有機シリコーンがポリジメチルシロキサン及び/又はアミノ変性ポリジメチルシロキサンである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤を0.1〜15質量%の水性液となし、該水性液を合成繊維に対し該合成繊維用処理剤として0.1〜0.5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項7】
合成繊維がポリエステル系繊維である請求項6記載の合成繊維の処理方法。

【公開番号】特開2006−316375(P2006−316375A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140041(P2005−140041)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】