説明

合板及び化粧合板

【課題】本発明は、寸法安定性の高い合板及び当該合板を用いた化粧合板を提供する。
【解決手段】木質薄板を積層してなる合板であって、
(1)隣接する木質薄板どうしはいずれも接着されており、
(2)少なくとも最上層及び最下層の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着されている、
ことを特徴とする合板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性の高い、合板及び化粧合板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木質基材上に化粧シートを積層してなる建材用化粧材が知られている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂からなる不透明な基材シート上に、装飾層、ポリオレフィン系樹脂からなる透明オレフィン系樹脂層を順次積層してなる化粧シートを木質基材上に積層してなる建材用化粧材が開示されている。
【0003】
前記建材用化粧材における木質基材としては、従来、広葉樹のラワンが多用されている。良質な原木から採取されたラワン材を木質基材として用いた建材用化粧材は、耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター等が優れている。
【0004】
しかしながら、近年、天然資源の窮乏、木材伐採制限等により良質な原木が入手し難く、材料不足が進んでいる。この問題は、特にラワン等の広葉樹にとって深刻である。よって、上記一枚板の木質基材の代替として、木質薄板を積層して得られる合板を使用することが提案されている。
【0005】
合板原料としては、木質系廃材、MDF(中密度繊維板)等も使用できるため、合板は比較的確保し易いという長所がある。しかしながら、合板は、同厚みの一枚板と比較して、経時的に反り・ねじれが生じ易い。これは、合板を構成する木質薄板の種類(辺材、芯材等の種類)により密度、含水率等が異なるためである。
【0006】
経時的な反り・ねじれの発生が抑制された合板を開発できれば、低コストで一枚板と同程度の特性が得られる点で有利である。よって、このような寸法安定性の高い合板及び当該合板を用いた化粧合板の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−120331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、寸法安定性の高い合板及び化粧合板を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の接着材層を有する合板が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の合板及び化粧合板に関する。
【0010】
1.木質薄板を積層してなる合板であって、
(1)隣接する木質薄板どうしはいずれも接着されており、
(2)少なくとも最上層及び最下層の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着されている、
ことを特徴とする合板。
2.前記繊維質材料が、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和
紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の合板。
3.前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ダップ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1又は2に記載の合板。
4.前記木質薄板の材質が、植林材、針葉樹及び雑木材からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜3のいずれかに記載の合板。
5.合板表面に、熱可塑性樹脂を含む表面保護層をさらに有する、上記項1〜4のいずれかに記載の合板。
6.合板表面に、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む表面保護層をさらに有する、上記項1〜4のいずれかに記載の合板。
7.上記項1〜6のいずれかに記載の合板に化粧シートを積層してなる化粧合板。

以下、本発明合板及び化粧合板について詳細に説明する。
【0011】
1.合板
本発明合板は、木質薄板を積層してなる合板であって、
(1)隣接する木質薄板どうしはいずれも接着されており、
(2)少なくとも最上層及び最下層の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着されている、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明合板は、上記特徴を有する故に、寸法安定性が高い。従って、本発明合板に化粧シートを積層して化粧合板として用いる場合には、反り・ねじれの発生が抑制されており、高品質な化粧合板となる。
【0013】
木質薄板の材質は特に限定されない。例えば、針葉樹、広葉樹等の原木(杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー、ポプラ等)から作製した薄板、MDF(中密度繊維板)、HDF(高密度繊維板)、植林材(早成材)、雑木材(MLH)などが挙げられる。
【0014】
本発明合板は、寸法安定性の問題から従来使用が困難であった植林材、針葉樹、雑木材、MDF、HDF等(特に植林材、針葉樹、雑木材)も木質薄板として使用できる点で有用性が高い。
【0015】
木質薄板の個々の厚みは限定的ではないが、0.5〜4mm程度が好ましく、0.5〜3mm程度がより好ましい。
【0016】
木質薄板の積層数は限定的ではないが、3〜7枚程度が好ましく、5〜7枚程度がより好ましい。これらの複数の木質薄板を構成する樹種は、同一でも異なっていてもよい。
【0017】
合板全体の厚みは限定的ではないが、3〜15cm程度が好ましい。
【0018】
本発明合板において、木質薄板どうしはいずれも接着されている。そして、少なくとも最上層及び最下層の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、
それぞれ隣接する木質薄板と接着されている。
【0019】
例えば、木質薄板の積層枚数が2枚又は3枚の場合には、全ての木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着される。木質薄板の積層枚数が4枚の場合には、最上段と最下段の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着される。そして、上から2段目の木質薄板と下から2段目の木質薄板とは、前記熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して接着されていてもよく、その他の公知の接着剤により接着されていてもよい。以下、積層枚数が増加した場合も同様であり、少なくとも最上層及び最下層の木質薄板が熱可塑性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介してそれぞれ隣接する木質薄板と接着されていればよく、合板芯材に相当する木質薄板どうしは、前記接着材層を介した接着に限定されず、公知の接着剤により接着されていてもよい。なお、本発明では、全ての木質薄板は、前記接着材層を介して接着されていることが好ましい。全ての木質薄板を、前記接着材層を介して接着する場合には、合板芯材の寸法安定性も確保できる点で好ましい。
【0020】
前記接着材層を構成する熱硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ダップ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を混合して使用できる。
【0021】
前記接着材層を構成する繊維質材料も特に限定されないが、例えば、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布(スパンボンドも含む)、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、などが挙げられる。その他、5)草木、竹等の植物繊維をほぐしたもの、又はこれらの植物繊維をシート状に加工したもの、6)炭素繊維、なども使用できる。
【0022】
上記の繊維質材料の中でも、ポリエステル、ガラス及びケブラーの少なくとも1種が好ましい。即ち、ポリエステル不織布、ポリエステル織物、ポリエステルチョップドファイバー;ガラス不織布、ガラス繊維、ガラスチョップドファイバー;ケブラー織物等が好ましい。
【0023】
前記接着材層は、例えば、シート状の繊維質材料(例えば、紙)の表裏両面に接着材層形成用組成物(熱可塑性樹脂、溶剤等を含む組成物)を塗布したものを2枚の木質薄板で挟んだ後、樹脂成分を硬化させる方法、シート状の繊維質材料に接着材層形成用組成物を含浸したものを2枚の木質薄板で挟んだ後、樹脂成分を硬化させる方法、チョップドファイバーと接着材層形成用組成物との混練物を木質薄板の接着面に塗布し、木質薄板どうしを接合後、樹脂成分を硬化させる方法等により形成できる。
【0024】
前記接着材層の厚みは限定的ではないが、重量換算(硬化時)して50〜500g/m程度が好ましく、50〜200g/m程度がより好ましい。
【0025】
前記接着材層を介さない場合に用いる、その他公知の接着剤としては特に限定されない。例えば、樹脂を主材とする公知の接着剤が使用できる。例えば、樹脂を含む1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が使用できる。この中でも、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも1種が好ましい。その他、2液型接着剤(特に2液硬化型ウレタン系接着剤)も好適である。
【0026】
合板は、例えば、木質薄板の間に前記接着材層形成用組成物及びその他の接着剤を所定部位に塗布後、積層体全体をプレスすることにより容易に作製できる。プレス時には、適宜加熱することができる。プレス条件、加熱条件等は、木質薄板、熱可塑性樹脂等の種類に応じて適宜設定できる。
【0027】
本発明合板は、合板表面に表面保護層をさらに有してもよい。表面保護層を有する場合には、例えば、合板表面に落下物が生じた場合でも、凹みの程度を抑制することができる。表面保護層の形成面は特に限定されないが、例えば、合板のおもて面(化粧合板作製時に化粧シートを積層する面)が好ましい。
【0028】
表面保護層は、熱硬化性樹脂を含む公知の表面保護層でもよく、熱可塑性樹脂と繊維質材料とを含む表面保護層(前記接着材層と同成分)であってもよい。表面保護層の形成方法は限定的ではないが、例えば、熱可塑性樹脂と溶剤との混合物、又は繊維質材料と前記接着材層形成用組成物との混合物により合板表面の所望部分を被覆後、樹脂成分を硬化させることにより容易に形成できる。
【0029】
表面保護層の厚みは限定されないが、5〜200μm程度が好ましい。
【0030】
2.化粧合板
本発明化粧合板は、前記合板に化粧シートを積層してなる。
【0031】
化粧シートの種類は特に限定されず、化粧合板の用途に応じて適宜選択できる。
【0032】
例えば、化粧シートとしては、基材シート上に、ベタインキ層、柄インキ層、接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層及び表面保護層を順に積層してなるものが挙げられる。
【0033】
以下、上記化粧シートについて説明する。
【0034】
基材シートは、薄紙,上質紙,クラフト紙,和紙,チタン紙,樹脂含浸紙,紙間強化紙等の紙、木質繊維,ガラス繊維,石綿,ポリエステル繊維,ビニロン繊維,レーヨン繊維等の繊維からなる織布や不織布、あるいは、ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアクリル,ポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン等の合成樹脂製シートなどの1種又は2種以上の積層体を用いることができ、その厚さとしては概ね20〜600μmが適当である。また、上記した化粧シート用の基材シートは適宜、顔料等を添加して着色してもよいし、必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。
【0035】
絵柄層は、柄インキ層及びベタインキ層から構成される。これらは、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。柄インキ層としては、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、ベタインキ層としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。この実施形態では、柄インキ層及びベタインキ層の両方が設けられるが、いずれか一方の構成であってもよい。
【0036】
絵柄層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができる。本
発明では、環境問題、被印刷面との接着性等を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合したものである。なお、ワイピングインキについても、上記で説明した絵柄層に用いるインキと同じインキで形成することができる。
【0037】
透明性樹脂層は、透明性のものであれば限定されない。透明性樹脂層としては、例えば熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。
【0038】
具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0039】
透明性樹脂層は、必要に応じて着色されていてもよい。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、前記の着色半透明層で挙げられた顔料又は染料を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
【0040】
透明性樹脂層には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えば、ゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0041】
表面保護層は、化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当である。特に、表面硬度が硬く、生産性に優れるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることがより好ましい。
【0042】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0043】
上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加される。
【0044】
上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、上記した熱硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。上記溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μmが適当であり、好ましくは15〜25μmとすればよい。
【0045】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、例えば、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、特に
紫外線、電子線等を用いることが望ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度の波長域を使用することができる。また、電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、一般に100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keVのものを使用することができる。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度とすればよい。
【0046】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。
【0047】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度とすればよい。
【0048】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すればよい。この場合の溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μmとすればよく、より好ましくは15〜25μmとすればよい。
【0049】
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、より一層耐擦傷性、耐摩耗性を付与する場合には、必要に応じて無機充填材を配合することができる。例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0050】
無機充填材の使用量は限定的ではないが、通常は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度とすればよい。
【0051】
各層の積層は、通常の手順で実施すればよい。例えば、着色した基材シートの一方の面にインキ層(ベタインキ層、柄インキ層)を順に印刷により形成し、さらに前記絵柄層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤で形成した接着剤層を介して透明性樹脂層を公知のドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、透明性樹脂層の全面にプライマー層を設け、その上に表面保護層を形成すればよい。
【0052】
そして、必要に応じて表面保護層側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成することができる。凹凸模様は、加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができる。前記凹凸模様としては、例えば導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0053】
本発明合板に化粧シートを積層する場合には、公知の接着剤を使用できる。
【発明の効果】
【0054】
本発明合板は、少なくとも最上層及び最下層の木質薄板が前記特定の接着材層を介して接着されているため、合板の反り・ねじれが抑制されている(寸法安定性が高い)。木質薄板の全てが前記接着材層を介して接着されている場合には、特に寸法安定性が高い。
【0055】
本発明合板は、従来、寸法安定性の問題により使用が困難であった木質薄板についても、木質薄板として使用できる。例えば、植林材、針葉樹、雑木材等である。
【0056】
本発明合板は、合板表面に表面保護層を有する場合には、落下物に対する耐凹み性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1で作製した合板の断面模式図である。
【図2】実施例3で作製した合板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0059】
実施例1
MLH材(広葉樹であるが、樹木種類を問わない仕様)をロータリーレースで裁断し、下記5枚の木質薄板を作製した。
【0060】
第1層用薄板:1.3mm
第2層用薄板:3.4mm
第3層用薄板:3.4mm
第4層用薄板:3.4mm
第5層用薄板:1.3mm
これらの薄板を130℃で乾燥し、含水率を10%以下とした。
【0061】
図1に示すように、下から第5層用薄板、フェノール含浸紙、第4層用薄板を積層後、スプレッターロールで両面に約15g/尺角のユリア系接着剤を塗布した第3層用薄板を積層した。次いで、その上に第2層用薄板を積層後、前記と同じフェノール含浸紙、第1層用薄板を積層した。
【0062】
次いで、積層体を130℃×10kgf/cm×7分間の条件で熱圧プレス処理し、合板を製造した。
【0063】
実施例2
樹種を針葉樹(カラ松)に変えた以外は、実施例1と同様にして合板を製造した。
【0064】
実施例3
針葉樹(カラ松)をロータリーレースで裁断し、下記5枚の木質薄板を作製した。
【0065】
第1層用薄板:1.3mm
第2層用薄板:3.4mm
第3層用薄板:3.4mm
第4層用薄板:3.4mm
第5層用薄板:1.3mm
これらの薄板を130℃で乾燥し、含水率を10%以下とした。
【0066】
図2に示すように、下から第5層用薄板、フェノール含浸紙、第4層用薄板を積層後、スプレッターロールで両面に約15g/尺角のユリア系接着剤を塗布した第3層用薄板を積層した。次いで、その上に第2層用薄板を積層後、前記と同じフェノール含浸紙、第1層用薄板を積層した。さらに、第1層用薄板の上に、前記と同じフェノール含浸紙を積層した。
【0067】
次いで、積層体を130℃×10kgf/cm×7分間の条件で熱圧プレス処理し、合板を製造した。
【0068】
実施例4
針葉樹(カラ松)をロータリーレースで裁断し、下記5枚の木質薄板を作製した。
【0069】
第1層用薄板:1.3mm
第2層用薄板:3.4mm
第3層用薄板:3.4mm
第4層用薄板:3.4mm
第5層用薄板:1.3mm
これらの薄板を130℃で乾燥し、含水率を10%以下とした。
【0070】
下から第5層用薄板、スプレッターロールで両面に約15g/尺角のユリア系接着剤を塗布した第4層用薄板を積層後、その上に第3層用薄板を置き、次いで、スプレッターロールで両面に約15g/尺角のユリア系接着剤を塗布した第2層用薄板を積層後、さらに第1層用薄板を積層した。即ち、熱硬化性樹脂を使用し、繊維質材料を使用せずに材料を積層した。
【0071】
次いで、積層体を130℃×10kgf/cm×7分間の条件で熱圧プレス処理し、合板を製造した。
【0072】
試験例1(外観評価)
実施例及び比較例で製造した合板の第1層側と、床材用化粧シート(0.16mm厚、大日本印刷株式会社製)とをPUR系(湿気硬化型)接着剤を約40g/m(硬化時)用いてラミネートした。
【0073】
得られた床用化粧材の外観評価を行った。外観評価は、床材用化粧シートが合板表面の影響をどの程度受けるかという観点から行った。
【0074】
合板表面の影響を殆ど受けず、貼り上がり品質が良いものは○と評価した。合板表面の影響を少し受けているものを△と評価した。合板表面の影響を大きく受けているものを×と評価した。
【0075】
試験例2(鉛筆硬度試験)
床用化粧材の鉛筆硬度を測定した。試験は、JIS K5400に従って行った。
【0076】
試験例3(反り試験)
床用化粧材(1尺×6尺)を、温度5℃、湿度30%で1週間放置後、更に温度40℃、湿度90%で1週間放置した。次いで、床用化粧材の反り・ねじれの有無を肉眼により確認した。
【0077】
反り・ねじれが認められないものを○と評価した。反り・ねじれが認められるものを×
と評価した。
【0078】
これらの試験結果を下記表1に示す。
【0079】
【表1】

表1の結果から明らかなように、本発明の化粧合板は、反り・ねじれの発生が防止されており、寸法安定性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質薄板を積層してなる合板であって、
(1)隣接する木質薄板どうしはいずれも接着されており、
(2)少なくとも最上層及び最下層の木質薄板は、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む接着材層を介して、それぞれ隣接する木質薄板と接着されている、
ことを特徴とする合板。
【請求項2】
前記繊維質材料が、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の合板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ダップ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の合板。
【請求項4】
前記木質薄板の材質が、植林材、針葉樹及び雑木材からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の合板。
【請求項5】
合板表面に、熱可塑性樹脂を含む表面保護層をさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の合板。
【請求項6】
合板表面に、熱硬化性樹脂と繊維質材料とを含む表面保護層をさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の合板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の合板に化粧シートを積層してなる化粧合板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201325(P2011−201325A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158003(P2011−158003)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2005−99914(P2005−99914)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】