説明

合焦位置調整方法、合焦位置調整装置、およびレーザー加工装置

【課題】表面に凹凸構造が存在する基板において、凹部に設けられたストリートにおける合焦状態を適切に調整することができる方法を提供する。
【解決手段】複数の単位遮光領域を一方向に等間隔に配列してなる第1遮光パターンとこれに直交する第2遮光パターンとを有する十字状の遮光パターンを、光軸に対して傾斜させて配置し、第1遮光パターンの複数の単位遮光領域のそれぞれの結像位置が異なる高さ位置となり、第2遮光パターンが一の高さ位置で結像するように、遮光パターンをストリートの一の格子点を中心とする十字状領域を投影範囲として投影する。格子点を画像中央に合致させて投影範囲を含む領域を撮像した撮像画像に基づいて第1遮光パターンのコントラストが最大となる位置を特定し、最大コントラスト位置と格子点位置との距離に基づいて合焦手段の合焦位置を調整することにより合焦対象領域を合焦状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置などの加工装置における加工位置の特定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLED用のサファイア基板など、半導体層(機能層)や電極パターンなどが表面上に形成された母基板を分割して個片化(チップ化)するためのスクライブ工程を、レーザー光照射により行う場合、母基板のアライメントやレーザー照射による加工が正確に行われるようにするために、母基板のスクライブ対象位置(以下、ストリートとも称する)の表面高さを調整する必要がある。仮に、ストリートの高さ位置が想定された位置からずれていた場合、照射するレーザー光の焦点位置が想定位置からずれてしまうために、レーザー光の照射エネルギーが有効に利用されず、所望のスクライビングが行えないという不具合が生じてしまうことになる。このような表面高さの特定および調整に利用可能な種々の技術がすでに公知である(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)。
【0003】
また、ストリートの基板面内におけるアライメントを好適に行える技術も既に公知である(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−87378号公報
【特許文献2】特開平11−183784号公報
【特許文献3】特許第3749142号公報
【特許文献4】特開2009−022994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ないし特許文献3に開示された技術はいずれも、光軸に対して傾斜した姿勢で配置された(あるいはステップ状に設けられた)パターンを対象物に投影した状態で、当該パターンを含む対象物の像において当該パターンのコントラストが最大となる位置をその像における合焦位置(合焦点位置)として特定し、その結果に基づいて、対象物表面の高さ位置を調整するものである。
【0006】
概略的には、まず、対象物の表面が、これを観察する光学系の対物レンズの合焦位置にあり、かつ、観察像においてパターンの投影像のコントラストが最大となる位置(最大コントラスト位置)が画像中央に位置している場合、対象物の表面が基準位置(基準高さ)にあるとされる。すると、観察像において投影像の最大コントラスト位置が中央から外れている場合、対象物表面の高さ位置が基準位置からずれていることになる。このとき、観察像において最大コントラスト位置が画像中央位置に一致するように対象物の高さ位置を違えると、対象物表面の高さ位置が基準位置に一致した状態が実現される。これはすなわち、パターンの投影像のコントラストの分布状態を利用して、対象物の表面が合焦位置に合致するように、つまりは、対象物表面と光を照射する対物レンズとの距離が一定に保たれるように、対象物表面の高さ位置を調整していることになる。
【0007】
レーザー光を照射して対象物表面を加工する場合であれば、母基板表面の高さ位置を上述のように調整して、常に、光学系によって定まる一定距離だけ対物レンズから離れた高さ位置に保つようにするとともに、レーザー光の出射源を対物レンズ位置に対して一定の位置に設定することで、レーザー光の照射条件を常に一定に保ったレーザー加工が可能となる。
【0008】
なお、パターンの投影像において最大コントラスト位置が特定された状態においては、対象物の高さを調整する代わりに、最大コントラスト位置と画像中央位置との距離に応じて対物レンズの高さ位置を調整するようにしてもよい。このようにした場合も、対象物の表面と対物レンズとの距離は一定値に調整されることになるので、相対的に見れば、対象物表面の高さ位置が調整されたことになる。
【0009】
なお、本明細書においては、説明の簡単のため、以降、対物レンズの高さ位置を調整する場合も含め、単に、対象物の高さ位置を調整する、あるいは、対象物の高さ位置を特定する、などという場合がある。
【0010】
一方で、近年のLEDは、生産量UPのために小チップサイズ化が進んでいる。また、輝度UPのために、レーザー加工プロセスにおいて生じる加工変質領域を最小限にすることが求められている。つまりは、より高い加工精度でより微細なチップを切り出すことが求められている。
【0011】
ところが、LED用の母基板においては、ストリートは基板表面に格子状に設定されるものの、その幅はせいぜい数十μm程度である。また、ストリート以外の箇所には半導体層などが形成されるため、ストリートとそれ以外の箇所との間には、3〜5μm以上の高さの差があることが少なくない。つまりは、LED用の母基板の表面には、少なくとも格子状のストリートを含む部分が狭小な凹部(最下部)となった凹凸構造が形成されている。これをチップ化するには、該ストリートの高さ位置を正確に特定したうえで、レーザー光を照射することが求められる。
【0012】
上述した特許文献1ないし特許文献3に開示された手法はいずれも、表面が一様に平坦なものを対象とするに過ぎず、LED用の母基板のチップ化に際してそれらの手法を単に適用したとしても、狭小な凹部として設けられるストリートの高さ位置を調整することは困難である。
【0013】
しかも、LED用の母基板として好適に用いられるサファイア基板の場合、基板面内の高さ分布がSi基板ほどは均一でなく、また、半導体層の形成過程で反りが生じている。すなわち、サファイア基板が用いられている場合、この点からも、特許文献1ないし特許文献3に開示された手法を適用したストリートの高さ位置の調整は難しい。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、表面に凹凸構造が存在する基板において、凹部に設けられたストリートにおける合焦状態を適切に調整することができる方法、これを実現する装置、およびこれを備えたレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、観察対象物において格子状に存在する合焦対象領域が合焦状態になるように観察光学系に備わる合焦手段の合焦位置を調整する方法であって、前記観察対象物を所定の保持手段に保持させる保持工程と、複数の単位遮光領域を第1の方向に等間隔に配列してなる第1遮光パターンと、前記第1の方向に直交する第2の方向に設けられた第2遮光パターンとを有する十字状の遮光パターンを、前記合焦対象領域の一の格子点を中心とする十字状領域を投影範囲として投影するパターン投影工程と、前記遮光パターンが投影された状態で、前記一の格子点を画像中央に合致させて前記投影範囲を含む領域を前記観察光学系に備わる撮像手段にて撮像する撮像工程と、前記撮像画像に基づいて前記第1遮光パターンのコントラストが最大となる最大コントラスト位置を特定する最大コントラスト位置特定工程と、前記合焦手段の合焦位置を調整する合焦位置調整工程と、を備え、前記パターン投影工程においては、前記遮光パターンを前記観察光学系の光軸に対して傾斜させて配置し、前記第1遮光パターンの複数の単位遮光領域のそれぞれの結像位置が異なる高さ位置となり、前記第2遮光パターンが一の高さ位置で結像するように、前記遮光パターンを前記十字状領域に投影し、前記合焦位置調整工程が、前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置が特定できる場合に、前記最大コントラスト位置と前記一の格子点の位置との距離に基づいて前記合焦手段の合焦位置を調整することにより前記合焦対象領域を合焦状態とする、第1合焦位置調整工程と、前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置を特定できない場合に、前記撮像手段に前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えた複数の撮像画像を撮像させ、得られた前記複数の撮像画像に基づいて前記合焦手段の配置距離に対する前記第2遮光パターンのコントラスト変化を特定し、前記コントラスト変化の極大位置を前記合焦対象領域が合焦状態となる前記合焦手段の配置位置と決定して前記合焦手段の合焦位置を前記極大位置に一致させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする、第2合焦位置調整工程と、を選択的に行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の合焦位置調整方法であって、前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置を特定できないものの、前記一の格子点の位置からみて前記最大コントラスト位置の存在する方向であるコントラスト増大方向が特定出来る場合には、前記コントラスト増大方向に相当する向きにおいて所定距離だけ前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えたうえで、前記撮像工程と、前記最大コントラスト位置特定工程と、前記合焦位置調整工程とを繰り返し、前記最大コントラスト増大方向が特定できない場合には、前記第2合焦位置調整工程を行う、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の合焦位置調整方法であって、前記最大コントラスト位置特定工程においては、前記第1遮光パターンが投影された撮像画像における前記複数の単位遮光領域の配列方向に沿った画素列ごとの明度プロファイルを積算した積算明度プロファイルに基づいて、前記最大コントラスト位置を特定する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、観察対象物を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記観察対象物に対する配置位置を違えることによって合焦位置を可変可能な合焦手段と、前記合焦手段を通じて前記観察対象物を撮像可能な撮像手段と、を備える観察光学系と、を有する観察装置に備わり、前記観察対象物において格子状に存在する合焦対象領域が合焦状態になるように前記合焦手段の合焦位置を調整する合焦位置調整装置であって、複数の単位遮光領域を第1の方向に等間隔に配列してなる第1遮光パターンと、前記第1の方向に直交する第2の方向に設けられた第2遮光パターンとを有する十字状の遮光パターンを、前記合焦対象領域の一の格子点を中心とする十字状領域を投影範囲として投影するパターン投影手段と、前記遮光パターンを前記十字状領域に投影させ、かつ、前記一の格子点を画像中央に合致させた状態で、前記撮像手段によって撮像された、前記投影範囲を含む領域の撮像画像に基づいて、前記第1遮光パターンのコントラストが最大となる最大コントラスト位置を特定する最大コントラスト位置特定手段と、前記最大コントラスト位置特定手段における特定結果に基づいて前記合焦手段に合焦位置を調整させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする合焦位置調整処理手段と、を備え、前記パターン投影手段は、前記遮光パターンを前記観察光学系の光軸に対して傾斜させて配置し、前記第1遮光パターンの複数の単位遮光領域のそれぞれの結像位置が異なる高さ位置となり、前記第2遮光パターンが一の高さ位置で結像するように、前記遮光パターンを前記十字状領域に投影し、前記合焦位置調整処理手段は、前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置が特定できる場合には、前記最大コントラスト位置と前記一の格子点の位置との距離に基づいて前記合焦手段の合焦位置を調整させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする第1調整処理を行い、前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置を特定できない場合には、前記撮像手段に前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えた複数の撮像画像を撮像させ、得られた前記複数の撮像画像に基づいて前記合焦手段の配置距離に対する前記第2遮光パターンのコントラスト変化を特定し、前記コントラスト変化の極大位置を前記合焦対象領域が合焦状態となる前記合焦手段の配置位置と決定して前記合焦手段の合焦位置を前記極大位置に一致させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする第2調整処理を行う、ことを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4に記載の合焦位置調整装置であって、前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置を特定できないものの、前記一の格子点の位置からみて前記最大コントラスト位置の存在する方向であるコントラスト増大方向が特定出来る場合には、前記コントラスト増大方向に相当する向きにおいて所定距離だけ前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えさせたうえで、前記撮像手段による前記投影範囲を含む領域の撮像と、前記最大コントラスト位置特定手段による前記最大コントラスト位置の特定と、前記合焦位置調整処理手段による処理とを繰り返し、前記最大コントラスト増大方向が特定できない場合には、前記合焦位置調整処理手段による前記第2調整処理を行う、ことを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載の合焦位置調整装置であって、前記最大コントラスト位置特定手段においては、前記第1遮光パターンが投影された撮像画像における前記複数の単位遮光領域の配列方向に沿った画素列ごとの明度プロファイルを積算した積算明度プロファイルに基づいて、前記最大コントラスト位置を特定する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、被加工物に対してレーザー光を照射して加工を行うレーザー加工装置であって、レーザー光を照射する光源と、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の合焦位置調整装置と、を備え、前記保持手段が前記レーザー光の照射領域と前記観察光学系による観察領域との間および前記レーザー光の前記照射領域内において移動可能に設けられており、前記合焦位置調整装置において特定された格子点の合焦位置に基づいて前記レーザー光の焦点位置を設定したうえで、前記合焦対象領域にレーザー光を照射することにより、前記合焦対象領域を加工対象領域とするレーザー加工を行う、ことを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、前記観察対象物が、それぞれが同一形状を有する複数の単位要素からなる繰り返しパターンが表面に形成されてなる被加工物であり、前記合焦対象領域の姿勢に基づいて、所定の基準方向に対する前記繰り返しパターンの第1の傾き角度を特定し、前記保持手段に前記第1の傾き角度が打ち消されるように前記被加工物を回転させる粗調整処理手段と、前記基準方向に平行な直線上において最も離間して存在する2つの格子点を結ぶ直線が、前記基準方向に対してなす角度を前記繰り返しパターンの第3の傾き角度として特定し、前記保持手段に前記第3の傾き角度が打ち消されるように前記被加工物を回転させる微調整処理手段と、前記被加工物の外形形状と前記合焦対象領域の配置ピッチとに基づいて、前記被加工物における前記レーザー光による加工位置を特定する加工位置特定手段と、をさらに備える。
【0023】
請求項9の発明は、請求項7または請求項8に記載のレーザー加工装置であって、前記加工対象領域におけるストリート高さの変位分布を測定する変位測定手段、をさらに備え、前記合焦位置調整装置において特定された格子点の合焦位置と前記変位測定手段によって得られた変位分布とに基づいて前記レーザー光の焦点位置を設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1ないし請求項6の発明によれば、ストリートが凹部として設けられている基板であっても、ストリートを合焦対象領域とすることで、ストリートの高さの理想位置からのずれ量を特定し、かつ、ストリートの格子点位置を正確に合焦状態とすることができる。
【0025】
請求項7ないし請求項9の発明によれば、ストリートを正確に合焦状態とすることで、焦点位置をストリートの高さ位置に応じて適切に設定した状態でレーザー光をストリートに照射することができるので、レーザー光によるストリートの加工精度が向上する。
【0026】
特に、請求項8の発明によれば、まず被加工物の姿勢を厳密に調整し、その後の回転が不要な状態とした上で、加工位置(加工ストローク)の特定を行うので、高い加工位置精度のもとでレーザー加工を行うことができる。
【0027】
特に、請求項9の発明によれば、被加工物におけるストリートの高さ分布を迅速に把握することができるので、レーザー光の焦点位置プロファイルを迅速に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施の形態に係る合焦位置調整装置1の構成を模式的に示す図である。
【図2】パターンマスク82を模式的に示す図である。
【図3】撮像素子87による撮像画像例である。
【図4】図3において撮像対象となっている基板Sの、ストリートSTの格子点C付近の様子を模式的に示す斜視図である。
【図5】合焦位置調整装置1における合焦状態の調整の概略的な手順を示す図である。
【図6】第1画像処理の詳細な処理の流れを示す図である。
【図7】第1処理対象領域ROI1を例示する図である。
【図8】明度プロファイルの取得について説明するための図である。
【図9】第1処理対象領域ROI1についての部分撮像画像と明度プロファイルとの対応関係を示す図である。
【図10】積算明度プロファイルF(x)を例示する図である。
【図11】図10に示す積算明度プロファイルF(x)についてFFT処理を行った結果を示す図である。
【図12】積算明度プロファイルF(x)に対し、図11のピークPK1にて表される周期成分を用いたバンドパスフィルタを適用することで得られた周期判別済みプロファイルF1(x)を示す図である。
【図13】図12に示した周期判別済みプロファイルF1(x)に基づいて求められた、微分二乗プロファイルg(x)および導関数プロファイルG(x)を示す図である。
【図14】最大コントラスト位置が特定できない場合の撮像画像を例示する図である。
【図15】第2画像処理の詳細な処理の流れを示す図である。
【図16】第2処理対象領域ROI2を例示する図である。
【図17】AF評価値プロファイルH(z)を例示する図である。
【図18】図17に示したAF評価値プロファイルH(z)のA部近傍の拡大図である。
【図19】第2の実施の形態に係るレーザー加工装置100の構成を模式的に示す図である。
【図20】撮像視野F1〜F3の関係を例示する図である。
【図21】基板Sに対してレーザー加工を行う場合の処理の流れを示す図である。
【図22】粗調整処理の詳細な流れを示す図である。
【図23】微調整処理の詳細な流れを示す図である。
【図24】加工位置特定処理の詳細な流れを示す図である。
【図25】撮像画像IM9を例示する図である。
【図26】ストリート高さの計測箇所について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施の形態>
<合焦位置調整装置>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る合焦位置調整装置1の構成を模式的に示す図である。合焦位置調整装置1は、それぞれが同一形状を有する単位要素の繰り返しパターンが表面に2次元的に形成されており、少なくとも格子状のストリートSTを含む部分が凹部(最下部)となった凹凸構造を表面に有する基板Sについて、当該ストリートSTの交点位置(格子点位置)を合焦状態とする装置である。
【0030】
基板Sとしては、例えば、表面のストリートST以外の箇所において半導体層(機能層)や電極パターンなどからなる凸部SCが形成された、LED用の母基板などが当てはまる。ただし、合焦位置調整装置1は、表面が一様な基板の当該表面における高さ位置の調整にも利用可能なものである。
【0031】
合焦位置調整装置1は、水平面内においてXY2軸方向に移動自在なXYステージ2と、XYステージ2の上に設けられ、水平面内の任意の位置において回転自在なθステージ3と、θステージ3の上に設けられ、基板Sを固定する(保持する)吸着チャック4とから構成されるステージ5を備える。なお、本実施の形態においては、原則として、XYステージ2の一方の動作方向をX軸方向(図1において図面視右方向を正方向とする)とし、これに直交する方向をY軸方向(図1において図面視上方向を正方向とする)とし、鉛直方向をZ軸方向とする右手形のXYZ座標系を考え、このXYZ座標系に基づく説明を行うものとする。このXYZ座標系を機械座標系と称することがある。また、XY平面内でのX軸方向を基準とする角度を考えるときは全て、反時計回りが正の向きであるとして説明を行うものとする。
【0032】
吸着チャック4への基板Sの固定は、周囲をリング7で保持した粘着性の固定シート6の上に基板Sを貼り付け、リング7の端縁で位置決めしつつ固定シート6を吸着チャック4によって吸引固定することによって行われる。好ましくは、基板Sは、リング7の中心O(図20参照)と基板Sの中心とが概ね一致するように固定される。
【0033】
レーザー加工装置100においては、基板Sを吸着チャック4にて吸着固定した状態で、XYステージ2を動作させることで、水平面内における基板Sの並行移動が実現され、θステージ3を動作させることで、水平面内における基板Sの回転移動が実現される。すなわち、XYステージ2の移動とθステージ3の移動とを適宜に組み合わせることで、基板Sを水平面内にて任意の位置および姿勢にて保持することができる。
【0034】
また、合焦位置調整装置1は、遮光パターンPT(図2参照)を基板Sに投影しこれを撮像するための光学系(観察光学系)8を備えている。光学系8は、基板Sに対する照射光L1を発光する光源部81と、遮光パターンPTが設けられ、光軸AX1に対し傾斜させて配置されたパターンマスク82と、第1結像レンズ83と、ビームスプリッタ84と、対物レンズ85と、第2結像レンズ86と、例えばCCDカメラなどからなる撮像素子87とを主として備えている。なお、光学系8においては、パターンマスク82と基板Sの表面とが、概ね、光学的に共役な配置関係となるように、各部の配置が定められてなる。また、対物レンズ85には、その鉛直方向における配置位置を調節することによってステージ5に配置された基板Sの合焦位置(合焦高さ)を調整可能なZ軸調節機構85mを備えている。すなわち、本実施の形態に係る合焦位置調整装置1においては、Z軸調節機構85mを含む対物レンズ85が直接の合焦手段となる。
【0035】
加えて、合焦位置調整装置1は、上述の各部の動作の制御を担うほか、後述する基板Sの合焦位置調整に係る処理を担う制御部10と、合焦位置調整装置1の動作を制御するプログラム20pや、撮像素子87によって得られる撮像画像データや合焦状態におけるストリートSTの高さや対物レンズ85の配置位置等を含む合焦データその他の種々のデータなどを記憶する記憶部20と、撮像画像や合焦位置調整処理における処理過程において生成される種々のプロファイルなどを表示可能なモニタ30とをさらに備える。
【0036】
制御部10は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものであり、記憶部20に記憶されているプログラム20pが該コンピュータに読み込まれ実行されることにより、種々の構成要素が制御部10の機能的構成要素として実現される。
【0037】
具体的には、制御部10は、XYステージ2とθステージ3の駆動を制御する駆動制御部11と、光学系8による撮像を制御する撮像制御部12と、合焦位置調整処理を担う合焦処理部13と、吸着チャック4による吸着動作を制御する吸着制御部14とを、主として備える。
【0038】
記憶部20は、ROMやRAMおよびハードディスクなどの記憶媒体によって実現される。なお、記憶部20は、制御部10を実現するコンピュータの構成要素によって実現される態様であってもよいし、ハードディスクの場合など、該コンピュータとは別体に設けられる態様であってもよい。
【0039】
このような構成を有する合焦位置調整装置1においては、光源部81から発せられてパターンマスク82を通過した照射光L1が、第1結像レンズ83を経てビームスプリッタ84により反射され、さらに対物レンズ85によって集光されてステージ5の上に固定された基板Sに照射される。基板Sからの反射光L2は、対物レンズ85を経た後、ビームスプリッタ84を透過し、第2結像レンズ86を経て撮像素子87で受光される。撮像素子87においては、基板Sに遮光パターンPTが投影された像が撮像される。さらに、係る投影像を合焦処理部13にて画像処理することで得られる遮光パターンPTの明度分布(コントラスト分布)に基づいて対物レンズ85を移動させることにより、合焦位置の調整を好適に行えるようになっている。パターンマスク82の構成およびこれを用いた合焦位置の調整についての詳細は後述する。
【0040】
<パターンマスク>
図2は、パターンマスク82を模式的に示す図である。パターンマスク82は、例えばガラスなどからなる透明板の一主面であるパターン形成面82sに、クロムマスクなどによって遮光パターンPTを形成したものである。遮光パターンPTは、中心が白抜き(非遮光部)となった矩形領域RE0を中心として、図面視上下方向においては複数の第1単位遮光領域RE1が等間隔に配列してなる第1遮光パターンPT1が、図面視左右方向においては複数の第2単位遮光領域RE2が等間隔に配列してなる第2遮光パターンPT2が、それぞれ設けられたものである。すなわち、遮光パターンPTは概略、十字状をなしているといえる。なお、図2における第1単位遮光領域RE1および第2単位遮光領域RE2の配置個数はあくまで例示であって、実際には、さらに多数の第1単位遮光領域RE1および第2単位遮光領域RE2が配置される。
【0041】
図1に示すように、パターンマスク82は、照射光L1の光軸AX1上において、パターン形成面82sが該光軸AX1に垂直な軸に対して角度αだけ傾斜する姿勢で配置される。より詳細には、第1遮光パターンPT1の配列方向AR1が光軸AX1に垂直な軸に対して角度αをなすように配置される。換言すれば、第1遮光パターンPT1の配列方向AR1の延長線上にあるパターンマスク82の一端部82aがより光源部81から遠ざかり、該一端部82aと対向する他端部82bがより光源部81に近づくように配置される。ただし、角度αは、パターンマスク82から光源部81に向かう向きを基準とし、反時計回りの向きが正の値となるように定められる。具体的には、角度αは鋭角とされるが、60°とするのが好適な一例である。
【0042】
加えて、本実施の形態においては、基板Sの表面において格子状に設けられたストリートSTの格子点位置に矩形領域RE0が投影され、かつ第1遮光パターンPT1と第2遮光パターンPT2とがそれぞれ、該格子点位置において互いに直交するストリートSTに投影されるように、パターンマスク82が配置される。それゆえ、ストリートSTが対物レンズ85の合焦位置から著しくずれているような場合を除き、撮像素子87においては、格子点位置を中心に十字状をなすストリートSTに、十字状の遮光パターンPTが投影された像が得られる。
【0043】
パターンマスク82の遮光パターンPTにおいて、第1遮光パターンPT1の配列方向AR1における明暗部の繰り返しピッチ(第1単位遮光領域RE1の配列方向AR1におけるサイズと、隣り合う第1単位遮光領域RE1の間の間隔)D1は、光学系8における結像倍率をMとし、要求される合焦位置精度をdzとしたとき、次の(1)式に基づいて定められる。
【0044】
(0<)D1≦dz/M2sinα ・・・・・(1)
なお、撮像素子87おいて得られる像においては、係るピッチD1のもと、コントラストの強い第1単位遮光領域RE1が4〜5個観察されるのが、好ましい。
【0045】
一方、第1単位遮光領域RE1の配列方向AR1に垂直な方向のサイズW1は、遮光パターンPTが重ね合わされた像においてそれぞれのcがストリートSTからはみ出ることのない範囲でなるべく大きな値として定められればよい。
【0046】
なお、第2遮光パターンPT2を構成する第2単位遮光領域RE2の配列方向AR2における明暗部のピッチD2については、ピッチD1と同程度であってもよいが、ピッチD1よりも大きい値として設定されていてもよい。また、第2単位遮光領域RE2の配列方向AR2に垂直な方向のサイズW2については、遮光パターンPTが重ね合わされた像においてそれぞれの第2単位遮光領域RE2がストリートSTからはみ出ることのない範囲で定められればよい。
【0047】
例えば、ストリートSTの幅が30μmである場合、ピッチD1、D2は5μm、サイズW1は10μm、サイズW2は5μmに定められるのが好適な一例である。
【0048】
なお、第1単位遮光領域RE1および第2単位遮光領域RE2が矩形であることは必須の態様ではないが、後述する画像処理における情報量の確保という意味においては、矩形領域として形成されるのが好ましい。この場合、第1単位遮光領域RE1については、配列方向AR1に直交する方向に長手方向を有するように形成されるのが好ましい。
【0049】
<パターン投影像と合焦位置との関係>
合焦位置調整装置1における合焦位置の調整手法について説明するに先立って、本実施の形態に係る合焦位置調整装置1における、遮光パターンPTの投影像と合焦位置との関係について説明する。
【0050】
上述のように、光学系8においては、パターンマスク82が、第1遮光パターンPT1の配列方向AR1が光軸AX1に垂直な軸に対して角度αをなすように配置されるので、個々の第1単位遮光領域RE1の高さ方向(Z軸方向)における結像位置は異なる。そのため、基板Sをある高さ位置に配置し、かつ対物レンズ85を該基板Sから所定距離だけ離間させた状態で遮光パターンPTの投影像を観察(撮像)した場合、結像位置が基板Sの高さ位置に近い第1単位遮光領域RE1ほど明瞭に観察され、結像位置が当該高さ位置から遠くなるほど、第1単位遮光領域RE1の像はぼやけていくことになる。すなわち、基板SのストリートSTにおける第1遮光パターンPT1の投影像のコントラストには分布が生じる。また、ストリートSTの高さ位置が異なると、あるいは、ストリートSTと対物レンズ85との距離が異なると、係るコントラストの分布は異なるものとなる。
【0051】
図3は、撮像素子87による撮像画像例である。図4は、図3の各撮像画像において撮像対象となっている基板Sの、ストリートSTの格子点C付近の様子を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、基板Sにおいては、2本のストリートSTが直交して格子点Cをなすとともに、ストリートSTの周囲に凸部SCが形成されている。また、ストリートSTの幅は30μmである。また、第1遮光パターンPT1におけるピッチD1および第2遮光パターンPT2におけるピッチD2はいずれも5μmに設定されている。第1単位遮光領域RE1の配列方向AR1に垂直な方向におけるサイズは10μmに設定されている。第2単位遮光領域RE2の配列方向AR2に垂直な方向におけるサイズは5μmに設定されている。撮像素子87の視野サイズは0.45mm×0.45mmとしている。
【0052】
図3(a)は、ストリートSTの高さが対物レンズ85の合焦位置に一致している(合焦高さとなっている)場合の撮像画像IM1である。これに対して、図3(b)は、図3(a)の場合よりもストリートSTの位置が高い場合の撮像画像IM2である。
【0053】
図3(a)の撮像画像IM1の場合、第1遮光パターンPT1の像は、遮光パターンPTの中央に存在する矩形領域RE0の近傍が最もコントラストが高く明瞭であり、個々の第1単位遮光領域RE1とそれらの間との周期的な明暗が明確に確認される一方で、矩形領域RE0から離れて行くにつれてコントラストが低くぼやけた状態となっていっている。なお、第2遮光パターンPT2については、全ての第2単位遮光領域RE2の像が高いコントラストで得られている。これは、第2遮光パターンPT2の場合、パターンマスク82の傾斜とは無関係に、全ての第2単位遮光領域RE2が矩形領域RE0と同じ結像位置にて結像するように設けられているからである。
【0054】
一方、図3(b)の撮像画像IM2の場合、第1遮光パターンPT1の像のコントラストが最も高い位置が、画像内において中央よりもやや上にずれている。また、第2遮光パターンPT2は全てがコントラストの弱いぼやけた状態となっている。これらは、ストリートSTの高さ位置が図3(a)の場合よりも高いために、第1遮光パターンPT1の投影像にてコントラストが最大となる部分が、合焦位置から当該高さ位置までずれたことによるものである。
【0055】
このことは、ストリートSTの高さが合焦位置よりも上方にずれている場合に第1遮光パターンPT1の最大コントラスト位置が画像面内において上方にシフトすることを意味している。逆に、合焦位置が下方にずれている場合は、最大コントラスト位置が画像面内において下方にシフトする。
【0056】
この関係を用いると、ステージ5に載置された基板SのストリートSTの高さ位置(より厳密には格子点Cの高さ位置)が基板S作製時の狙いの位置である理想位置にあるとき(規定通りの位置にあるとき)に第1遮光パターンPT1の投影像の最大コントラスト位置が撮像画像の中央に合致するようにパターンマスク82を配置しておけば、ストリートSTの高さが不明な基板Sをステージ5に配置し、該ストリートSTに対して遮光パターンPTを投影させた場合、ストリートSTの実際の高さ位置と理想位置との差に応じて、第1遮光パターンPT1の投影像の最大コントラスト位置が撮像画像の中央からずれることになる。よって、最大コントラスト位置と画像中央とのずれ量(面内ずれ量)がわかれば、ストリートSTの高さ位置の誤差を特定することができる。さらには、実際のストリートSTの高さ位置が合焦位置となるように、対物レンズ85の配置を調整することが可能となる。
【0057】
<合焦状態の調整手順>
本実施の形態に係る合焦位置調整装置1においては、合焦処理部13の作用により、上述したような、第1遮光パターンPT1の投影像の最大コントラスト位置のずれを利用したストリートST(の格子点C)の高さ位置の特定、および、格子点Cの位置を合焦位置とする合焦状態の調整が可能である。図5は、合焦位置調整装置1における合焦状態の調整の概略的な手順を示す図である。
【0058】
まず、吸着チャック4を用いてステージ5に基板Sを載置固定する(ステップS1)。そして、基板SのストリートST上に十字状をなしている遮光パターンPTを投影する(ステップS2)。当然ながら、基板Sの載置は、少なくとも撮像素子87で撮像される範囲において遮光パターンPTがストリートST上にきちんと投影される程度の面内精度にて、なされる必要がある。なお、以降の処理に先立ち、基板Sの精密なアライメント(面内アライメント)が行われる態様であってもよい。あるいは、ストリート高さの調整と面内アライメントとを連続する一連の過程の中で行う態様であってもよい。後者については後述する。
【0059】
遮光パターンPTが投影されると、撮像素子87による撮像を行う(ステップS3)。このとき対物レンズ85は、ストリートSTの格子点Cについて理想位置が合焦位置となるように配置されるのが好ましいが、当該位置からずれて配置されている態様であってもよい。例えば、同一の構成を有する複数枚の基板Sについて連続してストリートSTの合焦位置の調整を行う場合であれば、前回の調整の際に最終的に配置された位置にそのまま配置されている態様であってもよい。また、撮像素子87の撮像視野は、一辺が0.4mm〜0.5mm程度の矩形形状として設定するのが好ましい。
【0060】
係る撮像によって得られる撮像画像データは、記憶部20に記憶される。撮像画像データは、画素位置を示す座標値と当該画素位置における明度を示す階調値とのデータセットであるビットマップ形式のデータである。なお、合焦位置調整に用いられる撮像画像データを特に、合焦位置調整用データDPと称する。
【0061】
合焦位置調整用データDPが得られると、撮像画像のうち第1遮光パターンPT1が投影された部分のみを処理対象とする画像処理(第1画像処理)を行う(ステップS4)。図6は、第1画像処理の詳細な処理の流れを示す図である。
【0062】
まず、得られた撮像画像において、第1遮光パターンPT1の投影範囲のみを第1処理対象領域ROI1として設定し(ステップS41)、合焦位置調整用データDPから、第1処理対象領域ROI1に属するデータセットのみを抽出する。図7は、ある撮像画像IM3における第1処理対象領域ROI1を例示する図である。第1処理対象領域ROI1は、第1遮光パターンPT1の投影部分を全て含む配列方向AR1に沿った幅W1の帯状の領域である。
【0063】
次に、第1処理対象領域ROI1において配列方向AR1に沿う個々の画素列に着目し、抽出したデータセットに基づいて、それぞれの画素列についての画素位置と明度との関係を明度プロファイルして取得する(ステップS42)。図8は、係る明度プロファイルの取得について説明するための図である。図8においては、N個の画素列(画素列1〜画素列N)が配列方向AR1に沿って存在しているとし、画素列iの明度プロファイル(画素位置xiにおける明度値)をf(xi)と表す。
【0064】
図9は、第1処理対象領域ROI1についての部分撮像画像と明度プロファイルとの対応関係を示す図である。図9(a)が第1処理対象領域ROI1についての部分撮像画像IM4であり、図9(b)が明度プロファイルf(xi)を表している。なお、図9(a)においては図面視上下方向に画像が伸長されている。図9(b)においては、複数の明度プロファイルf(xi)を重ね合わせて図示している。いずれも横軸は画素位置xを表している。また、図9(b)の縦軸は明度である。
【0065】
図9(a)に示す部分撮像画像IM4においては、周期的かつ明瞭な明暗(コントラスト)のある部分(画素位置番号300〜400の部分)が存在する。係る部分に最大コントラスト位置が含まれていることになる。また、図9(b)においては、係る周期的な明暗に対応した周期的なピーク群が確認される。なお、明度だけをみれば、係るピーク群と同等の値を示す部分も存在するが、これらはあくまでノイズであり、最大コントラスト位置の特定にあたっては不要である。
【0066】
次に、個々の明度プロファイルf(xi)を、配列方向AR1に垂直な方向について積算する(ステップS43)。N個の画素列についての積算明度プロファイル(画素位置xにおける積算明度値)F(x)は、次の(2)式にて表される。
【0067】
【数1】

【0068】
図10は、積算明度プロファイルF(x)を例示する図である。係る積算明度プロファイルF(x)を求めるのは、個々の画素列の明度プロファイルf(xi)に含まれる、基板Sの汚れ等に起因したノイズ成分を相殺して、解析に用いるプロファイルのS/N比を高めるためである。なお、積算明度プロファイルに代えて、画素位置における平均明度値を表す平均明度プロファイルを用いる態様であってもよい。
【0069】
積算明度プロファイルF(x)が得られると、次に周波数解析するためにこれを高速フーリエ変換処理(FFT処理)する(ステップS44)。そして、係る周波数解析結果に基づき周期判別を行う(ステップS45)。具体的には、FFT処理結果から周期的なピーク群の周期成分を特定し、続いて、積算明度プロファイルF(x)に対し該周期成分を通すバンドパスフィルタを適用する。
【0070】
図11は、図10に示す積算明度プロファイルF(x)についてFFT処理を行った結果を示す図である。図11のピークPK1が、図10の積算明度プロファイルF(x)に表れたピーク群の周期成分、すなわち、図9(a)にみられた周期的な明暗部分の周期成分に対応する。図12は、積算明度プロファイルF(x)に対し、図11のピークPK1にて表される周期成分を用いたバンドパスフィルタを適用することで得られた周期判別済みプロファイルF1(x)を示す図である。
【0071】
周期判別済みプロファイルF1(x)が得られると、これを微分し、さらに2乗して、微分二乗プロファイルg(x)={F1'(x)}2を得る(ステップS46)。そして、g(x)についてガウスの導関数を求め、これによって得られる導関数プロファイルG(x)={g(x+1)−g(x−1)}2のピークを与える画素位置を、最大コントラスト位置を表す画素位置として特定する(ステップS47)。
【0072】
図13は、図12に示した周期判別済みプロファイルF1(x)に基づいて求められた、微分二乗プロファイルg(x)および導関数プロファイルG(x)を示す図である。図13に示す導関数プロファイルG(x)において極大ピークPK2を与える画素位置を、x=xpであるとすると、該画素位置x=xpが、ステップS3にて得られた撮像画像におけるストリートST上での最大コントラスト位置として特定されることになる。
【0073】
図5に戻り、このようにして最大コントラスト位置が特定されると(ステップS5でYES)、図9に示した第1処理対象領域ROI1の配列方向AR1における中央画素位置x=x0と、最大コントラスト位置x=xpとの差分値Δx=xp−x0の値に基づいて、ストリートSTの格子点Cの理想位置からのずれ量であるストリート高さずれ量ΔZ1を算出する(ステップS6)。ストリート高さずれ量ΔZ1は、次の(3)式で求められる。
【0074】
ΔZ1=Δx・M・tanα ・・・・・(3)
なお、ΔZ1が負のときは、格子点Cの位置が理想位置よりも低く、ΔZ1が正のときは、格子点Cの位置が理想位置よりも高くなっている。
【0075】
ストリート高さずれ量ΔZ1が求まれば、実際の対物レンズ85の高さ位置Z’と、格子点Cの理想位置が合焦位置となるときの対物レンズ85の高さ位置Z0とから、格子点Cを合焦位置とするための対物レンズ85の移動量ΔZが、次の式から求められる。
【0076】
ΔZ=(Z0+ΔZ1)−Z’ ・・・・・(4)
(4)式に従い合焦位置を調整することで、格子点Cが合焦状態とされる(ステップS7)。なお、合焦位置等の情報は、合焦データDFとして記憶部20に記憶される。
【0077】
以上が、合焦位置の調整の原則的な手順となる。
【0078】
ただし、ステップS3における撮像を行う際の、対物レンズ85の配置位置とストリートSTの高さ位置との関係によっては、得られた撮像画像に基づいてステップS4における(より詳細にはステップS41〜S47における)第1画像処理を行ったとしても、最大コントラスト位置x=xpが特定できないことがある(ステップS5でNO)。
【0079】
図14は、このような場合の撮像画像を例示する図である。図14(a)では第1遮光パターンPT1の明暗部が画像上端部に差し掛かっている撮像画像IM5を示しており、図14(b)では第1遮光パターンPT1の明暗部が画像下端部に差し掛かっている撮像画像IM6を示している。また、図14(c)では第1遮光パターンPT1自体が明瞭に確認されない撮像画像IM7を示している。これらの撮像画像の場合、仮に導関数プロファイルG(x)が得られたとしても、極点を有していないか、あるいは、導関数プロファイルG(x)の導出自体が全く行えないこととなる。これは例えば、積算明度プロファイルF(x)をFFT処理した結果においてピークPK1が検出されないことや、周期判別済みプロファイルF1(x)や導関数プロファイルG(x)が画素位置端部において単調増加又は単調減少することなどから判定される態様であってもよいし、撮像画像自体に基づいて判定される場合であってもよい。
【0080】
このような場合、撮像処理が1回目であり(ステップS8でYES)、かつ、コントラスト増大方向が判定可能であれば(ステップS9でYES)、対物レンズ85の位置(Z軸高さ)を該コントラスト増大方向へシフトさせて(ステップS10)、再度、撮像と第1画像処理とを繰り返すようにする(ステップS3〜S4)。なお、このときの対物レンズ85の位置のシフト量は、撮像画像における第1遮光パターンPT1の配列方向AR1の範囲をΔXmとするときに、(ΔXm・M・tanα)/2とするのが好ましい。
【0081】
ここで、コントラスト増大方向とは、撮像画像において、画像中央から第1遮光パターンPT1の明暗部が存在する位置へと向かう向きを指し示している。例えば、図14(a)および(b)に示した撮像画像IM5、IM6の場合であれば、それぞれ、図面視上方向、図面視下方向がコントラスト増大方向と特定される。あるいは、撮像画像ではなく、積算明度プロファイルF(x)や、導出が可能な場合であれば、周期判別済みプロファイルF1(x)における振幅変化や導関数プロファイルG(x)における増加もしくは減少の様子からコントラスト増大方向を判定することも可能である。
【0082】
一方、図14(c)に示した撮像画像IM7の場合、第1遮光パターンPT1の明暗部を特定することができず、コントラスト増大方向を判定することができない(ステップS9でNO)。これは、ストリートSTの格子点Cの位置における合焦状態を実現するために、対物レンズ85の位置をZ軸上下方向のいずれに移動させればよいかが、撮像画像から判別できないことを意味している。
【0083】
このような場合は、第2遮光パターンPT2を利用した画像処理(第2画像処理)を行う(ステップS10)。また、2回目の撮像処理の後においても、最大コントラスト位置が特定できない場合(ステップS5でNOかつステップS8でNO)も同様とする。
【0084】
図15は、第2画像処理の詳細な処理の流れを示す図である。まず、対物レンズ85の位置(Z軸高さ)を順次に違えつつ、複数箇所において撮像を行う(ステップS111)。なお、Z軸高さは等ピッチで違える態様でよいが、画像変化の様子に応じてZ軸高さのピッチを可変とする態様であってもよい。
【0085】
次に、得られたそれぞれの撮像画像において、第2遮光パターンPT2の投影範囲のみを第2処理対象領域ROI2として設定し(ステップS112)、それぞれの合焦位置調整用データDPから、第2処理対象領域ROI2に属するデータセットのみを抽出する。図16は、ある撮像画像IM8における第2処理対象領域ROI2を例示する図である。そして、それぞれの撮像画像について、抽出したデータセットに基づき、AF評価値を算出する(ステップS113)。ここで、AF評価値とは、それぞれの撮像画像の第2処理対象領域ROI2についてのコントラスト差を表す値である。AF評価値の算出には、公知の手法を適用可能である。最も単純には、第2処理対象領域ROI2における明度の最大値と最小値との差分値をAF評価値とすることができる。あるいは、明度値の度数分布などに基づく統計的処理を行って、AF評価値を求める態様であってもよい。
【0086】
それぞれの撮像画像について、AF評価値が求まると、それぞれの画像を撮像した対物レンズ85のZ軸高さzと当該撮像画像のAF評価値との関係をAF評価値プロファイルH(z)として取得し、そのピークを与える座標位置を、ストリートSTの格子点Cが合焦状態となるときの対物レンズ85の高さ位置(合焦高さ位置)として特定する(ステップS114)。
【0087】
図17は、AF評価値プロファイルH(z)を例示する図である。図18は、図17に示したAF評価値プロファイルH(z)のA部近傍の拡大図である。図17に示すようなAF評価値プロファイルH(z)が得られると、図18に示すように、AF評価値プロファイルH(z)においてAF評価値が最大となるz軸高さの近傍の数個(例えば5個)のデータ点を用いて、曲線近似により、AF評価値プロファイルH(z)の近似曲線h(z)を求める。そして、近似曲線h(z)において極大ピークPK3を与えるZ軸高さをz=zpとするとき、該Z軸高さz=zpを、格子点Cについての合焦高さ位置として特定する。
【0088】
この結果に基づき、対物レンズ85のZ軸高さがz=zpに調整されることで、ストリートSTの格子点Cが合焦状態に調整されたことになる(ステップS7)。なお、この場合、格子点Cの理想位置が合焦位置となるときの対物レンズ85の高さ位置が上述のようにZ0であるとすると、zp−Z0がストリート高さずれ量となる。
【0089】
以上、説明したように、本実施の形態に係る合焦位置調整装置1によれば、基板に設けられた、格子点位置を中心に十字状をなすストリートに対して、十字状の遮光パターンを、ストリートに合致するように、かつ、一方向について傾斜させて投影し、そのときの投影像における最大コントラスト位置とストリートの格子点位置とのずれ量に基づいて、ストリートの高さの理想位置からのずれ量を特定し、かつ、格子点位置を正確に合焦状態とすることができる。これにより、ストリートが凹部として設けられている基板であっても、ストリートの高さの理想位置からのずれ量を特定し、かつ、ストリートの格子点位置を正確に合焦状態とすることができる。
【0090】
また、対物レンズ位置が合焦位置から大きくずれているような場合には、対物レンズ位置を違えて撮像した複数の投影像から、十字状の遮光パターンの傾斜していない側の像のコントラスト変化に基づいて、ストリートの格子点位置を合焦状態とすることができる。
【0091】
これらにより、基板表面においてストリートが凹部として存在する場合であっても、その高さ位置を正確に合焦状態とすることができる。
【0092】
<第2の実施の形態>
<レーザー加工装置>
本実施の形態においては、第1の実施の形態において説明した合焦位置調整装置1が組み込まれたレーザー加工装置100について説明する。図19は、本実施の形態に係るレーザー加工装置100の構成を模式的に示す図である。
【0093】
レーザー加工装置100は、基板SのストリートSTに対してレーザー光LBを照射することによって、ストリートSTのスクライブ加工を行う装置である。
【0094】
レーザー加工装置100は、第1の実施の形態において合焦位置調整装置1に備わっていたステージ5について、そのXYステージ2をX軸方向に動作させることによって、矢印AR11にて示すように、第1撮像位置P1と、第2撮像位置P2と、第3撮像位置P3と、変位計測位置P4と、加工位置P5との間で自在に移動させることができるようになっている。第1撮像位置P1には第1撮像手段101が、第2撮像位置P2には第2撮像手段102が、第3撮像位置P3には第3撮像手段103が、変位計測位置P4には変位センサ104がそれぞれ備わっている。
【0095】
なお、本実施の形態においても、XYステージ2の一方の動作方向をX軸方向(図19において図面視右方向を正方向とする)とし、これに直交する方向をY軸方向(図19において図面視上方向を正方向とする)とし、鉛直方向をZ軸方向とする右手形のXYZ座標系を設定する。図19においては、第1ないし第3撮像位置P1〜P3、変位計測位置P4、および加工位置P5が一方向に(X軸方向に)配列させられてなるが、これは、図示の都合上のものであって、レーザー加工装置100におけるこれらの配置関係はこれに限られるものではない。
【0096】
第2撮像手段102は、合焦位置調整装置1の光学系8に相当する。すなわち、ステージ5が第2撮像位置P2に位置しているときに、第2撮像手段102とステージ5とが、第1の実施の形態に係る合焦位置調整装置1を構成する。
【0097】
なお、ステージ5の水平面内の並進動作はXYステージ2のみで行われるので、レーザー加工装置100においては、所定位置に一の原点を定めた上で上述の機械座標系を用いることでステージ5の位置を一義的に特定することが可能である。しかし、後述する種々の処理においては、ステージ5が第1ないし第3撮像位置P1〜P3、変位計測位置P4、および加工位置P5のいずれにあるときも、ステージ5の同一位置が同一座標で表される方が便利である。従って、レーザー加工装置100においては、係る関係がそれぞれの位置で成り立つように、第1ないし第3撮像位置P1〜P3、変位計測位置P4、および加工位置P5のそれぞれに対応する原点位置が定められて、機械座標系からの座標変換がなされるものとする。これは、例えば、ステージ5にリング7が保持されるときのリング中心を、第1ないし第3撮像位置P1〜P3、変位計測位置P4、および加工位置P5における原点位置とすることで実現される。このように定めることで、ステージ5が第1撮像位置P1にあるときに(a,b、0)なる座標で表される位置は、ステージ5が第2撮像位置P2、第3撮像位置P3、変位、加工位置P5のいずれにあるときでも、(a,b、0)なる座標で表される位置として認識されることになる。ただし、いずれの座標系をとるときでも座標軸の方向は変わらないため、本実施の形態においては、説明の簡単のため、それぞれの座標系を区別することなくX軸、Y軸などと呼ぶものとする。
【0098】
さらに、レーザー加工装置100は、露光手段105を備える。露光手段105は、レーザー光源105aと対物レンズ105bとを備え、ステージ2が加工位置P5にあるときに、レーザー光源105aからレーザー光LBを出射し、これを対物レンズ105bで集光することによって、ステージ2上の基板Sの所定位置にレーザー光を照射することができるようになっている。レーザー加工装置100においては、ステージ5を移動させつつ露光手段105からレーザー光LBを基板Sに照射することによって、基板Sへのレーザー加工が行えるようになっている。なお、露光手段105は、公知のレーザー加工装置に備わる露光手段によって構成可能である。例えば、YAGレーザーなどをレーザー光LBとして用いることが出来る。
【0099】
加えて、レーザー加工装置100は、上述の各部の動作の制御を担うほか、後述する基板Sの傾き調整(アライメント)や加工位置の特定に係る処理を担う制御部110と、レーザー加工装置100の動作を制御するプログラム120pや制御部110において行われる処理の際に必要となる種々のデータを記憶する記憶部120とをさらに備える。
【0100】
制御部110は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものであり、記憶部120に記憶されているプログラム120pが該コンピュータに読み込まれ実行されることにより、レーザー加工装置100の種々の構成要素が制御部110の機能的構成要素として実現される。制御部110は、第1の実施の形態に係る合焦位置調整装置1の制御部10を含んで構成される。
【0101】
記憶部120は、ROMやRAMおよびハードディスクなどの記憶媒体によって実現される。記憶部120は、合焦位置調整装置1の記憶部20と兼用される態様であってよい。また、記憶部120は、制御部110を実現するコンピュータの構成要素によって実現される態様であってもよいし、ハードディスクの場合など、該コンピュータとは別体に設けられる態様であってもよい。また、プログラム120pは、合焦位置調整装置1のプログラム20pを含んで構成される。
【0102】
制御部110は、機能的構成要素として、XYステージ2とθステージ3の駆動を制御する駆動制御部11と、第1ないし第3撮像手段101〜103による撮像を制御する(光学系8による撮像を制御する撮像制御部12を兼ねる)撮像制御部112と、合焦位置調整処理を担う合焦処理部13と、吸着チャック4による吸着動作を制御する吸着制御部14と、基板Sのアライメントに際して基板Sの傾きを大まかに調整する粗調整処理を担う粗調整処理部115と、同じくアライメントに際して基板Sの傾きを精密に調整する微調整処理を担う微調整処理部116と、被加工物における加工位置を特定する加工位置特定処理を担う加工位置特定処理部117と、露光手段105の露光処理を制御する露光制御部118とを、主として備える。
【0103】
なお、粗調整処理部115によって行われる粗調整処理とは、基板Sについて規定されるある特定方向(例えば基板Sの表面に形成されているあるストリートSTの方向)をX軸方向と概ね一致させることによって、基板Sの傾きを解消する処理である。また、微調整処理部116によって行われる微調整処理とは、粗調整された基板Sについて、その傾きをより厳密に解消する処理である。
【0104】
また、加工位置特定処理部117によって行われる加工位置特定処理は、粗調整処理および微調整処理を経ることで傾きが解消された基板Sを対象として、レーザー光の照射範囲を特定する処理である。具体的には、基板Sに設けられたストリートSTを加工するにあたって、個々のストリートSTの存在範囲を加工位置として特定する。
【0105】
記憶部120には、合焦位置調整用データDPに加えて、微調整処理などに用いる基準画像データDRや、加工位置の特定に際し参照される相対位置情報DIなどのデータが記憶される。
【0106】
基準画像データDRは、基板Sが、横方向がX軸方向と一致し、縦方向がY軸方向と一致する姿勢を有する場合の、格子点Cを含む単位矩形領域(繰り返しの基準となる領域)についての画像データである。
【0107】
相対位置情報DIは、ストリートSTの格子点Cの1つである基準格子点C0(後述)と、パターンマッチングで特定される単位要素上の点との座標差や、ストリートSTのピッチpなど、加工位置特定に際し必要な情報を記述したものである。
【0108】
本実施の形態においては、粗調整処理と微調整処理と合焦位置調整処理とを行った上で、加工位置特定処理を行うようにすることで、高さを含めたストリートSTの存在位置、つまりは加工位置を正確に特定することができるようになっている。これにより、基板Sにおいて凹部に備わるストリートSTに対して、精度の高いレーザー加工が実現される。
【0109】
<撮像手段>
次に、第1ないし第3撮像手段101〜103について、より詳細に説明する。第1ないし第3撮像手段は、いずれもCCDカメラもしくはCMOSカメラなどによって実現される点では共通するが、それぞれ以下のような特徴を有している。
【0110】
第1撮像手段101は、ステージ2が第1撮像位置P1にあるときに、ステージ2上の(実際には吸着チャック4上の、以下同様)基板Sを撮像対象とするように設けられてなる。第1撮像手段201は、粗調整処理に用いる画像を撮像するためのものである。
【0111】
第2撮像手段102は、ステージ2が第2撮像位置P2にあるときに、ステージ2上の基板Sを撮像対象とするように設けられてなる。第2撮像手段102は、微調整処理に用いる画像を撮像するためのものである。なお、第2撮像手段102は、第1の実施の形態に係る合焦位置調整装置1の光学系8を構成する。すなわち、第2撮像手段102は、合焦位置調整処理に用いる画像の撮像も行う。
【0112】
第3撮像手段103は、ステージ2が第3撮像位置P3にあるときに、ステージ2上の基板Sを撮像対象とするように設けられてなる。第3撮像手段103は、加工位置特定処理に用いる画像を撮像するためのものである。
【0113】
<アライメント処理と撮像視野の関係>
上述したように、基板Sは、リング7の中心Oと基板Sの中心とが概ね一致するように貼り付けられるが、一般には、繰り返しパターンをなす単位要素の一配列方向(つまりはストリートSTの方向)とX軸方向とはある角度θ0をなしている。そこで、基板Sを加工対象とする場合、レーザー加工装置100においてはまず、この角度θ0を打ち消すように、つまりは、ストリートSTの方向とX軸方向と合致するように、アライメント処理(粗調整処理および微調整処理)が行われる。このときには、第1の実施の形態で説明した合焦位置調整処理も併せて行われる。そのうえで、ストリートSTの位置と基板Sの外形とが正確に特定され、各ストリートSTの加工ストロークの始点位置と終点位置の決定、つまりは加工位置の決定がなされる。そして、決定された加工位置に対して、露光手段105によるレーザー光の照射、つまりはレーザー加工が行われる。
【0114】
レーザー加工装置100においては、アライメント処理、合焦位置調整処理、および加工位置特定処理に用いる第1ないし第3撮像手段101〜103の撮像視野F1〜F3が、少なくとも、次の(5)式の関係をみたすように定められてなる。
【0115】
撮像視野F2<撮像視野F1<基板Sのサイズ<撮像視野F3・・・(5)
図20は、第1撮像手段101の撮像視野F1と、第2撮像手段102の撮像視野F2と、第3撮像手段103の撮像視野F3との関係を例示する図である。図20に例示する各撮像手段の撮像視野のサイズは、(5)式を満たしている。なお、上述のように、それぞれの撮像手段は相異なる撮像位置で基板Sを撮像するように設けられてなるので、実際のレーザー加工装置100において、それぞれの撮像手段についての撮像視野F1〜F3が図20に示すような位置関係をとることはない。
【0116】
第1撮像手段101の撮像視野F1と第2撮像手段102の撮像視野とを基板Sのサイズよりも小さく設定するのは、基板Sの全体からすると比較的微小な範囲である、上述の粗調整や微調整に必要な範囲を、十分な解像度で撮像するためである。また、第1撮像手段101の撮像視野F1よりも第2撮像手段102の撮像視野F2の方が小さいのは、微調整処理の方が、より微小な箇所の画像を用いてパターンマッチングを行うためである。これに対して、第3撮像手段103の撮像視野を基板Sのサイズよりも大きく設定するのは、基板Sの形状を特定するうえで好適な解像度で基板Sを撮像するためである。
【0117】
さらに、第1および第2撮像手段101〜102の撮像視野F1〜F2は、上述の(5)式の要件に加えて、次の(6)式および(7)式の関係をみたすことが望ましい。
【0118】
単位要素1個分のサイズ<撮像視野F1≦単位要素複数個分のサイズ・・・(6)
単位要素1個分のサイズ<撮像視野F2<単位要素2個分のサイズ・・・(7)
上述したように、第1撮像手段101は、粗調整処理に用いる画像を撮像するためのものであるので、(6)式は、粗調整処理用の画像が、複数個の単位要素の像を含む画像であることを求める要件であるといえる。また、第2撮像手段102は、微調整処理に用いる画像を撮像するためのものであるので、(7)式は、微調整処理用の画像が、単位要素の像を1つのみ含む画像であることを求める要件であるといえる。
【0119】
別の見方をすれば、(5)式〜(7)式の関係は、後述する手順による加工位置の特定が好適に行えるように、レーザー加工装置100において加工対象とされる基板Sが少なくともみたすべき要件を定めるものである。すなわち、本実施の形態に係る加工位置特定方法の適用対象となりうる基板Sの要件を規定しているともいえる。
【0120】
例えば、基板Sが2インチ径のウエハと同程度のサイズを有する場合であって、単位要素が0.3mm角程度の大きさを有する場合であれば、第1撮像手段101の撮像視野F1を一辺が数mm程度の矩形形状とし、第2撮像手段102の撮像視野F2(撮像素子87の撮像視野)を一辺が0.4mm〜0.5mm程度の矩形形状とし、第3撮像手段103の撮像視野F3を一辺が120mm〜150mm程度の矩形形状とすれば、(5)式〜(7)式の関係をみたす。具体的には、撮像視野F1を4.8mm×3.6mmとし、撮像視野F2を0.45mm×0.45mmとし、撮像視野F3を120mm×120mmとするのが、(5)式〜(7)式の関係をみたす好適な一例である。
【0121】
このように、本実施の形態においては、加工位置特定に至るまでに必要となる種々の撮像画像の取得に際して、それぞれの撮像目的に最も適した撮像視野を有する撮像手段を用いるようにされてなる。これにより、後述する種々の処理が良好に行われることになるので、結果として高い精度での加工位置の特定が実現される。
【0122】
なお、第1ないし第3撮像手段101〜103を共通する撮像手段で実現することも原理的には可能である。しかしながら、通常は数十mm〜数百mm角程度の大きさを有する基板Sに対して、最大でも数mm程度の微細な間隔で加工を施すような場合、第3撮像手段103の撮像視野F3は基板S全体を捉えるために数十mm〜数百mm角程度の大きさが必要である一方、第1撮像手段101の撮像視野F1および第2撮像手段102の撮像視野F2はせいぜい数mm角程度であることが必要となる。それぞれの撮像手段に対して要求される解像度を一の撮像手段で全て好適に実現することは必ずしも容易ではなく、また、コスト面からも実際的ではない。
【0123】
<変位センサ>
変位センサ104は、変位計測位置P4に設けられている。変位センサ104は、対象物表面の変位を非接触にて計測するものである。本実施の形態においては、合焦位置調整装置1にて格子点Cの高さが特定された基板Sについて、該格子点C以外の部分におけるストリート高さの分布傾向を把握する目的で、変位センサによる計測を行う。
【0124】
変位センサ104としては、公知のものを適用可能である。レーザー式のものを用いるのが好適であるが、LED式、超音波式、あるいは渦電流式のものを用いる態様であってもよい。
【0125】
<レーザー加工に至るまでの処理手順>
図21は、基板SのストリートSTに対してレーザー光LBによるスクライブ加工を行う場合の、アライメント処理からレーザー加工処理に至るまでの処理の流れを示す図である。
【0126】
まず、基板Sをステージ5にセットする(ステップS201)。具体的には、周囲をリング7で保持した固定シート6の上に、パターン形成面が上面となるように基板Sを貼り付けたうえで、該固定シート6ごと吸着チャック4の上に載置し、吸着固定する。基板Sを貼り付ける際には、基板Sの中心位置がリング7の中心Oと概ね一致するように基板Sが保持されるのが望ましい。ただし、その際の位置決めは厳密である必要はなく、作業者が目視によって概ね一致していると確認できる程度の精度でよい。なお、レーザー加工装置100が種々の加工手法を実現可能に構成されている場合、基板Sのステージ5へのセットに先立って、適用する加工プランを選択する態様であってもよい。なお、係る加工プランの選択を、基板Sのアライメント後に行う態様であってもよい。
【0127】
基板Sがセットされると、ステージ5が第1撮像位置P1に配置され、粗調整処理部115の作用によって、粗調整処理が行われる(ステップS202)。図22は、粗調整処理の詳細な流れを示す図である。粗調整処理は、ストリートSTの傾きを特定し、その傾きに基づいて基板Sの傾きの解消を図る処理である。
【0128】
まず、粗調整処理部115からの実行指示に基づき、繰り返しパターンのうちリング7の中心Oを含む領域が第1撮像手段101によって撮像され、粗調整用撮像が取得される(ステップS202a)。
【0129】
粗調整用撮像が得られると、粗調整処理部115は、粗調整用撮像におけるストリートSTの傾きから、粗調整角度θcを決定する(ステップS202b)。
【0130】
粗調整角度θcが得られると、粗調整処理部115からの実行指示に基づき、駆動制御部11が、リング7の中心Oの位置を回転中心として、θステージ3を、ストリートSTの傾きが打ち消される方向に角度θcだけ回転させる(ステップS202c)。これにより、ストリートSTの傾きが概ね打ち消される。この回転を行うことで、基板Sの粗調整処理が完了したことになる。
【0131】
粗調整処理が完了すると、ステージ5が第2撮像位置P2に配置され、合焦処理部13の作用により、第1の実施の形態にて説明した合焦位置調整処理が、複数の格子点Cを対象に行われる(ステップS203)。ここで、処理対象となる格子点Cとしては、少なくとも、リング7の中心Oの近傍に位置する格子点C(これを基準格子点C0と称する)と、該基準格子点C0を通りX軸に平行なストリート上に位置する格子点Cであって、最左端および最右端にあるもの(それぞれ、左端格子点C1、右端格子点C2と称する)が選択される。それぞれの格子点Cについての合焦位置等の情報は、合焦データDFとして記憶部120(20)に記憶される。基準格子点C0、左端格子点C1、および右端格子点C2について合焦位置調整処理によりストリート高さが特定されたことで、基板Sについては、基板中央近傍においてX軸方向に延在する1つのストリートSTについて、その中央部と端部との高さ位置が特定されたことになる。
【0132】
なお、合焦位置調整処理を行う段階ではレーザー加工装置100によって基板Sの全体形状およびサイズは特定されていないので、左端格子点C1と右端格子点C2の位置は不明である。そこで、左端格子点C1と右端格子点C2に対する合焦位置調整処理は、それぞれの位置の特定とセットで行われることになる。係る位置特定には、種々の手法が適用可能である。たとえば、所定の開始位置からX軸方向に沿って撮像位置を移動させつつ、格子点C近傍についての撮像を順次にあるいは漸次に繰り返し、格子点Cと解される像が得られなくなった直前の撮像画像が、X軸方向左端およびX軸方向右端の単位要素についてものであると判断する態様であっても良いし、公知の最適探索法の技術を用いて左端格子点C1と右端格子点C2とを特定する態様であってもよい。
【0133】
合焦位置調整処理が終了すると、引き続いて微調整処理が行われる(ステップS204)。微調整処理は、左端格子点C1と右端格子点C2とを結ぶ直線の傾きを特定し、その傾きに基づいて基板Sの傾きの解消を図る処理である。図23は、微調整処理の詳細な流れを示す図である。
【0134】
微調整処理においては、まず、微調整処理部116からの実行指示に基づき、第2撮像手段102によって、左端格子点C1を含む領域と右端格子点C2を含む領域が撮像される(ステップS204a、S204b)。なお、合焦位置調整後にこれらの画像があらかじめ取得されている態様であってもよい。
【0135】
次に、微調整処理部116は、左端格子点C1の撮像画像と基準画像データDRとを用いたパターンマッチングにより、左端格子点C1における傾き調整基準位置を決定する(ステップS204c)。さらに、微調整処理部116は、右端格子点C2の撮像画像と基準画像データDRとを用いたパターンマッチングにより、右端格子点C2における傾き調整基準位置を決定する(ステップS204d)。
【0136】
2つの傾き調整基準位置が特定されると、微調整処理部116は、両位置を通る直線の傾きから、微調整角度θfを決定する(ステップS204e)。具体的には、2つの傾き調整基準位置のX軸方向の座標差をXf、Y軸方向の座標差をYfとするとき、微調整角度θfは、次の(8)式によって求められる。
【0137】
θf=tan-1(Yf/Xf)・・・(8)
微調整角度θfが得られると、微調整処理部116からの実行指示に基づき、駆動制御部11が、リング7の中心Oを回転中心として、θステージ3を、ストリートSTの傾きが打ち消される方向に微調整角度θfだけ回転させる(ステップS204f)。この回転を行うことで、基板Sの微調整処理が完了したことになる。
【0138】
微調整処理においては、離間した2点を結ぶ直線の傾きを求めて調整を行うので、粗調整処理以上に厳密な調整が実現される。すなわち、微調整処理を行うことで、ストリートSTの方向がX軸方向にほぼ完全に合致した状態が実現される。すなわち、基板Sが水平面内において正確にアライメントされた状態が実現される。
【0139】
微調整処理が完了すると、引き続いて加工位置を特定する処理が行われる(ステップS205)。加工位置特定処理は、あるピッチで配置されてなる複数のストリートのそれぞれについての、始点位置および終点位置を特定する処理である。これはつまり、レーザー光を実際に照射する範囲を特定する処理である。図24は、加工位置特定処理の詳細な流れを示す図である。
【0140】
加工位置特定処理においては、まず、加工位置特定処理部117からの実行指示に基づき、基準格子点C0を含む領域が第2撮像手段102によって撮像され、続いて、加工位置特定処理部117の作用により、得られた撮像画像と基準画像データDRとを用いたパターンマッチングを行うことにより、基準格子点C0のY座標が特定される(ステップS205a)。
【0141】
基準格子点C0のY座標が特定されると、加工位置特定処理部117の作用により、そのY座標値と、記憶部120に相対位置情報DIとして記憶されているストリートSTのピッチpとに基づき、ストリートSTの存在する可能性のあるY座標(ストリート位置候補)を特定される(ステップS205b)。
【0142】
ストリート位置候補が特定されると、加工位置特定処理部117からの実行指示に基づき、第3撮像手段103によって基板Sの全体が撮像される(ステップS205c)。図25は、係る撮像によって得られる撮像画像IM9を例示する図である。
【0143】
撮像画像IM9が得られると、加工位置特定処理部117の作用により、当該撮像画像に基づいて、基板Sの外形形状が特定される(ステップS205d)。係る外形形状は、基板Sの外形つまりはエッジ部分に対応する位置の座標値の集合として規定される。外形形状の特定は、エッジ抽出等、公知の画像処理技術を用いて実現可能である。本実施の形態においては、この時点で初めて、基板Sの全体形状が特定されることになる。
【0144】
基板Sの外形形状が特定されると、加工位置特定処理部117は、この外形形状と、ストリート位置候補とから、基板SにおけるストリートSTの実際の存在範囲を加工位置(加工ストローク)として特定する(ステップS205e)。
【0145】
より具体的には、X軸方向について、基板Sのエッジ部分とストリート位置候補に相当する直線との2つの交点に挟まれた範囲が、加工位置として特定されることになる。図25に模式的に示す場合であれば、ストリート位置候補を表す直線V1、V2、V3についてそれぞれ、T1T2間、T3T4間、T5T6間が加工位置(加工ストローク)として特定されることになる。これにより、この時点でX軸に平行なストリートの存在範囲、つまりはレーザー光によるX軸方向についての加工位置が特定されたことになる。加工位置の情報は記憶部120に記憶される。
【0146】
係る加工位置決定処理においては、基板Sの外形位置が特定されていさえすればよく、基板Sがどのような形状をしているのかは無関係である。従って、オリフラ部分を除きほぼ円形をなしている基板Sのみならず、図25に例示するような不定形の基板Sについても、好適に加工位置を決定することができる。
【0147】
加工位置が決定されると、続いて、基板が固定されたステージ5が変位計測位置P4に配置され、変位センサ104によるストリート高さの計測(変位情報の取得)が行われる(ステップS206)。図26は、ストリート高さの計測箇所について説明するための図である。
【0148】
変位センサ104によるストリート高さの計測は、基準格子点C0を通るストリートSTを基準とし、該ストリートSTを含めてY軸方向に所定ピッチΔYずつ離間したストリートSTを対象に行う。この場合、必ずしも全てのストリートを対象に行う必要はない。すなわち、ピッチΔYはストリートSTのピッチpの複数倍であってよい。
【0149】
変位センサ104によるストリート高さの計測は、例えば、図26に走査線LNにて示すように、計測用プローブ(例えばレーザー光)を対象となるストリートSTの位置のみで往復走査させるのが好適な一例である。得られた計測値は記憶部120に記憶される。
【0150】
係る態様にて得られたストリートSTの変位情報と、先の合焦位置調整処理によって特定されていた格子点Cの合焦位置情報とから、基板S全体におけるストリート高さの分布を迅速に把握することが出来る。係る分布に基づいて、後段のレーザー加工に際してのレーザー光LBの焦点位置あるいは焦点位置プロファイルが決定される。
【0151】
なお、上述したように、合焦位置調整装置1の機能によってストリートSTの高さを特定することは可能であるが、これによって得られるのはあくまで局所的な高さ位置情報であるため、基板S全体の高さ分布を把握するには、多数の格子点Cにて合焦位置調整を行う必要がある。係る対応はスループットの観点で効率的ではないことから、本実施の形態では変位センサ104が用いられる。これにより焦点位置プロファイルを迅速に得ることができる。ただし、ストリートSTの平坦性が保証されている場合には、変位センサ104による計測を行わず、合焦位置調整装置1によって得られた格子点Cの合焦位置のみに基づいてレーザー光LBの焦点位置が定められる態様であってもよい。
【0152】
変位センサ104によるストリート高さの計測が終了すると、ステージ5が加工位置P5に配置され、レーザー光LBによるX軸方向についての加工が行われる(ステップS207)。すなわち、XYステージ2をX軸方向に移動させつつ、ストリート高さ分布に基づいて焦点位置(あるいは焦点位置プロファイル)が定められたレーザー光LBを、特定された加工位置(加工ストローク)に対して順次に照射することによって、X軸方向に延在するストリートSTに対するレーザー加工が順次に施されることになる。レーザー光LBの照射条件(波長、パルス幅、ピークパワー、XYステージ2の走査速度など)は、加工対象に応じて適宜に設定されればよい。
【0153】
本実施の形態の場合、レーザー光LBの照射は、ストリートSTがレーザー光LBの照射位置にあるときのみ行われるので、ストリートSTを外れて、あるいはさらに基板Sをはずれてレーザー光LBが照射されることはない。図25に示す場合であれば、T1T2間、T3T4間、T5T6間のみにレーザー光が照射されることになる。
【0154】
このようにして、X軸方向についてのレーザー加工が施されると、続いて、加工されずに残っているY軸方向のストリートSTに対するレーザー加工処理が行われる。Y軸方向のストリートSTの加工は、θステージ3を動作させることによって基板Sを水平面内で90°回転させた後、当該回転によってX軸方向に配置された未加工のストリートSTを対象として、図21に示す手順を繰り返すことによって行う。
【0155】
<加工位置特定の手順と加工精度との関係>
以上のような手順で加工位置の特定と加工とを行う場合、粗調整処理と微調整処理とによってあらかじめストリートSTの向きをX軸方向に厳密に合致させた後(被加工物の姿勢を厳密に調整した後)のステージ5の移動は、撮像位置の移動やレーザー照射位置の移動のためのXYステージ2の移動のみであり、当該ストリートSTについての加工が終了するまで、θステージ3を動作させることによって基板Sを回転させることがない。仮に、加工位置を特定した後に基板Sを回転させた場合には、平行シフト誤差や座標変換誤差に起因して、計算上の加工位置と実際のストリートの位置のずれが生じうるが、本実施形態に係る手順においては加工位置と特定された箇所から実際のストリートがずれることはない。
【0156】
また、基板Sの外形位置の特定のための基板Sの全体形状の撮像は、ストリートSTの向きをX軸方向に厳密に合致させた後の基板Sを対象に、つまりは、その後の回転が不要な基板Sを対象に行われるので、外形位置の特定や加工位置の特定に際して撮像画像を座標変換等する必要がない。すなわち、基板Sの外形位置が座標変換に伴う誤差を含むことがない。
【0157】
以上の点から、本実施の形態においては、加工位置を高い精度で決定することができる。また、回転中心のズレの補正の実施あるいは回転中心のズレが生じない装置構成のいずれも必要でないので、加工装置の製造コストを抑制しつつ、高い精度での加工位置の決定が実現される。
【0158】
さらにいえば、ストリートをX軸方向に合致させるための粗調整処理と微調整処理は、局所的な撮像画像の取得のみによって実現されることから、基板Sの形状に依存することなく行われる。また、ストリート位置候補として特定される直線群は、実際の基板Sの形状に無関係に決定される。基板の全体形状についての情報を与える撮像画像は、加工位置を特定する処理に用いられるのみであり、しかも係る処理は、加工位置候補とされたそれぞれの直線について基板Sの外形位置との交点を特定するという、外形位置の座標さえ特定されれば基板Sの全体形状自体には直接には関係しない処理であって、基板Sが不定形であるような場合でも良好に実施することができる処理である。よって、基板Sが不定形であるような場合であっても、高い精度で加工位置を特定することができる。
【0159】
また、上述の手順においては特に、X軸方向に平行なストリートのみを加工位置として特定しているので、レーザー光LBの照射に際してはXYステージ2のみを動作させて基板Sを水平移動させればよく、θステージ3を動作させることによる基板Sの回転移動は不要である。よって、特定された加工位置に忠実に、レーザー光を照射することができる。
【0160】
また、アライメント処理からレーザー加工に至る一連の工程の中で合焦位置調整処理を行うようにしているので、レーザー加工に際しては、照射するレーザー光を想定通りの焦点位置に照射することが出来る。これにより、レーザー光の照射エネルギーが有効に利用されるので、所望のスクライビングを確実に行うことができる。
【0161】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、それぞれが同一形状を有する単位要素の繰り返しパターンが表面に2次元的に形成されてなる基板において凹部に位置するストリートをレーザー加工する場合に、ストリートを正確に合焦状態したうえでレーザー加工を行うようにすることで、焦点位置をストリートの高さ位置に応じて適切に設定した状態でレーザー光をストリートに照射することができるので、エネルギー利用効率の高い加工を行うことができ、レーザー光によるストリートの加工精度が向上する。
【0162】
さらには、まず基板の姿勢を厳密に調整し、その後の回転が不要な状態とした上で、加工位置(加工ストローク)の特定を行うので、高い加工位置精度のもとでレーザー加工を行うことができる。
【0163】
また、姿勢が厳密に調整された後の基板の局所位置の撮像画像に基づいてストリート位置候補を複数の直線群として決定した後に、基板S全体を撮像してその撮像画像から基板の外形位置を特定し、ストリート位置候補であるそれぞれの直線と外形位置との交点を求めることによって加工位置を特定するので、基板の全体形状自体に関係なく、加工位置を特定することができる。すなわち、不定形の基板であっても、好適に加工位置を特定することができる。
【符号の説明】
【0164】
1 合焦位置調整装置
3 θステージ
4 吸着チャック
5 ステージ
6 固定シート
7 リング
8 光学系
10、110 制御部
20、120 記憶部
81 光源部
82 パターンマスク
82a 一端部
82b 他端部
82s パターン形成面
83 第1結像レンズ
84 ビームスプリッタ
85 対物レンズ
85m Z軸調節機構
86 第2結像レンズ
87 撮像素子
100 レーザー加工装置
101 第1撮像手段
102 第2撮像手段
103 第3撮像手段
104 変位センサ
105 露光手段
105a レーザー光源
105b 対物レンズ
AX1 光軸
C 格子点
C0 基準格子点
C1 左端格子点
C2 右端格子点
L1 照射光
L2 反射光
LB レーザー光
P1 第1撮像位置
P2 第2撮像位置
P3 第3撮像位置
P4 変位計測位置
P5 加工位置
PT 遮光パターン
PT1 第1遮光パターン
PT2 第2遮光パターン
S 基板
ST ストリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物において格子状に存在する合焦対象領域が合焦状態になるように観察光学系に備わる合焦手段の合焦位置を調整する方法であって、
前記観察対象物を所定の保持手段に保持させる保持工程と、
複数の単位遮光領域を第1の方向に等間隔に配列してなる第1遮光パターンと、前記第1の方向に直交する第2の方向に設けられた第2遮光パターンとを有する十字状の遮光パターンを、前記合焦対象領域の一の格子点を中心とする十字状領域を投影範囲として投影するパターン投影工程と、
前記遮光パターンが投影された状態で、前記一の格子点を画像中央に合致させて前記投影範囲を含む領域を前記観察光学系に備わる撮像手段にて撮像する撮像工程と、
前記撮像画像に基づいて前記第1遮光パターンのコントラストが最大となる最大コントラスト位置を特定する最大コントラスト位置特定工程と、
前記合焦手段の合焦位置を調整する合焦位置調整工程と、
を備え、
前記パターン投影工程においては、前記遮光パターンを前記観察光学系の光軸に対して傾斜させて配置し、前記第1遮光パターンの複数の単位遮光領域のそれぞれの結像位置が異なる高さ位置となり、前記第2遮光パターンが一の高さ位置で結像するように、前記遮光パターンを前記十字状領域に投影し、
前記合焦位置調整工程が、
前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置が特定できる場合に、前記最大コントラスト位置と前記一の格子点の位置との距離に基づいて前記合焦手段の合焦位置を調整することにより前記合焦対象領域を合焦状態とする、第1合焦位置調整工程と、
前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置を特定できない場合に、前記撮像手段に前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えた複数の撮像画像を撮像させ、得られた前記複数の撮像画像に基づいて前記合焦手段の配置距離に対する前記第2遮光パターンのコントラスト変化を特定し、前記コントラスト変化の極大位置を前記合焦対象領域が合焦状態となる前記合焦手段の配置位置と決定して前記合焦手段の合焦位置を前記極大位置に一致させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする、第2合焦位置調整工程と、
を選択的に行うことを特徴とする合焦位置調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の合焦位置調整方法であって、
前記最大コントラスト位置特定工程において前記最大コントラスト位置を特定できないものの、前記一の格子点の位置からみて前記最大コントラスト位置の存在する方向であるコントラスト増大方向が特定出来る場合には、前記コントラスト増大方向に相当する向きにおいて所定距離だけ前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えたうえで、前記撮像工程と、前記最大コントラスト位置特定工程と、前記合焦位置調整工程とを繰り返し、
前記最大コントラスト増大方向が特定できない場合には、前記第2合焦位置調整工程を行う、
ことを特徴とする合焦位置調整方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の合焦位置調整方法であって、
前記最大コントラスト位置特定工程においては、
前記第1遮光パターンが投影された撮像画像における前記複数の単位遮光領域の配列方向に沿った画素列ごとの明度プロファイルを積算した積算明度プロファイルに基づいて、前記最大コントラスト位置を特定する、
ことを特徴とする合焦位置調整方法。
【請求項4】
観察対象物を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記観察対象物に対する配置位置を違えることによって合焦位置を可変可能な合焦手段と、
前記合焦手段を通じて前記観察対象物を撮像可能な撮像手段と、
を備える観察光学系と、
を有する観察装置に備わり、前記観察対象物において格子状に存在する合焦対象領域が合焦状態になるように前記合焦手段の合焦位置を調整する合焦位置調整装置であって、
複数の単位遮光領域を第1の方向に等間隔に配列してなる第1遮光パターンと、前記第1の方向に直交する第2の方向に設けられた第2遮光パターンとを有する十字状の遮光パターンを、前記合焦対象領域の一の格子点を中心とする十字状領域を投影範囲として投影するパターン投影手段と、
前記遮光パターンを前記十字状領域に投影させ、かつ、前記一の格子点を画像中央に合致させた状態で、前記撮像手段によって撮像された、前記投影範囲を含む領域の撮像画像に基づいて、前記第1遮光パターンのコントラストが最大となる最大コントラスト位置を特定する最大コントラスト位置特定手段と、
前記最大コントラスト位置特定手段における特定結果に基づいて前記合焦手段に合焦位置を調整させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする合焦位置調整処理手段と、
を備え、
前記パターン投影手段は、前記遮光パターンを前記観察光学系の光軸に対して傾斜させて配置し、前記第1遮光パターンの複数の単位遮光領域のそれぞれの結像位置が異なる高さ位置となり、前記第2遮光パターンが一の高さ位置で結像するように、前記遮光パターンを前記十字状領域に投影し、
前記合焦位置調整処理手段は、
前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置が特定できる場合には、前記最大コントラスト位置と前記一の格子点の位置との距離に基づいて前記合焦手段の合焦位置を調整させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする第1調整処理を行い、
前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置を特定できない場合には、前記撮像手段に前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えた複数の撮像画像を撮像させ、得られた前記複数の撮像画像に基づいて前記合焦手段の配置距離に対する前記第2遮光パターンのコントラスト変化を特定し、前記コントラスト変化の極大位置を前記合焦対象領域が合焦状態となる前記合焦手段の配置位置と決定して前記合焦手段の合焦位置を前記極大位置に一致させることにより前記合焦対象領域を合焦状態とする第2調整処理を行う、
ことを特徴とする合焦位置調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載の合焦位置調整装置であって、
前記最大コントラスト位置特定手段によって前記最大コントラスト位置を特定できないものの、前記一の格子点の位置からみて前記最大コントラスト位置の存在する方向であるコントラスト増大方向が特定出来る場合には、前記コントラスト増大方向に相当する向きにおいて所定距離だけ前記観察対象物に対する前記合焦手段の配置距離を違えさせたうえで、前記撮像手段による前記投影範囲を含む領域の撮像と、前記最大コントラスト位置特定手段による前記最大コントラスト位置の特定と、前記合焦位置調整処理手段による処理とを繰り返し、
前記最大コントラスト増大方向が特定できない場合には、前記合焦位置調整処理手段による前記第2調整処理を行う、
ことを特徴とする合焦位置調整装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の合焦位置調整装置であって、
前記最大コントラスト位置特定手段においては、
前記第1遮光パターンが投影された撮像画像における前記複数の単位遮光領域の配列方向に沿った画素列ごとの明度プロファイルを積算した積算明度プロファイルに基づいて、前記最大コントラスト位置を特定する、
ことを特徴とする合焦位置調整装置。
【請求項7】
被加工物に対してレーザー光を照射して加工を行うレーザー加工装置であって、
レーザー光を照射する光源と、
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の合焦位置調整装置と、
を備え、
前記保持手段が前記レーザー光の照射領域と前記観察光学系による観察領域との間および前記レーザー光の前記照射領域内において移動可能に設けられており、
前記合焦位置調整装置において特定された格子点の合焦位置に基づいて前記レーザー光の焦点位置を設定したうえで、前記合焦対象領域にレーザー光を照射することにより、前記合焦対象領域を加工対象領域とするレーザー加工を行う、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザー加工装置であって、
前記観察対象物が、それぞれが同一形状を有する複数の単位要素からなる繰り返しパターンが表面に形成されてなる被加工物であり、
前記加工対象領域の姿勢に基づいて、所定の基準方向に対する前記繰り返しパターンの第1の傾き角度を特定し、前記保持手段に前記第1の傾き角度が打ち消されるように前記被加工物を回転させる粗調整処理手段と、
前記基準方向に平行な直線上において最も離間して存在する2つの格子点を結ぶ直線が、前記基準方向に対してなす角度を前記繰り返しパターンの第3の傾き角度として特定し、前記保持手段に前記第3の傾き角度が打ち消されるように前記被加工物を回転させる微調整処理手段と、
前記被加工物の外形形状と前記加工対象領域の配置ピッチとに基づいて、前記被加工物における前記レーザー光による加工位置を特定する加工位置特定手段と、
をさらに備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のレーザー加工装置であって、
前記加工対象領域におけるストリート高さの変位分布を測定する変位測定手段、
をさらに備え、
前記合焦位置調整装置において特定された格子点の合焦位置と前記変位測定手段によって得られた変位分布とに基づいて前記レーザー光の焦点位置を設定する、
ことを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図14】
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【図16】
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