説明

吊り上げ搬送装置

【課題】 把持できる箇所が限定されている長尺物であっても確実に把持して搬送することができるようにする。
【解決手段】 長尺物10の一端側L1を把持し得る第1把持機構27と、長尺物10の重心G10を跨いだ他端側L2を把持し得る第2把持機構29と、第1把持機構27と第2把持機構29とが接続され、第1把持機構27と第2把持機構29とをそれぞれ左右方向に移動させる位置調整機構55を有するハンガ52と、ハンガ52と接続され、ハンガ52を上下方向に移動させるホイスト51と、ホイスト51を有して左右方向に移動するクラブトロリ50とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物を吊り上げて搬送するのに用いて好適な、吊り上げ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場内で車両用のフレームなどの長尺物を移動するような場合には、把持装置によってフレームを把持し、クレーン装置によって吊り上げて移動する手法がとられる場合が一般的である。
この一般的な手法について図16を用いて説明すると、クレーン装置200は図16中紙面奥行方向に所定間隔毎に設けられた複数組の支柱201,201と、クレーンガータ202と、電動ホイスト203とから主に構成されている。
【0003】
このうち、クレーンガータ202は、その両端が一対の支柱201,201の上端に設けられたレール204,204上に載置され、図16中、紙面奥行き方向に移動することができるようになっている。
また、電動ホイスト203は、クレーンガータ202の上に設けられ、クレーンガータ202の長手方向(即ち図16中、左右方向)に移動することができ、また、この電動ホイスト203から下方に伸びるワイヤ205を巻き取ったり送り出したりすることができるようになっている。また、ワイヤ205の先端には、長尺物102を把持するトング(把持装置)101が接続されている。
【0004】
そして、この把持装置101を介して吊り上げられる長尺物102を把持するとともに吊り上げて、電動ホイスト203を移動させることにより、長尺物102をワイヤ205によって左右方向に搬送することができ、また、電動ホイスト203のワイヤ205を巻き取り/送り出しにより長尺物102を上下方向に移動させることができ、さらに、クレーンガータ202を奥行き方向に移動させることにより長尺物102を奥行方向に搬送することができるようになっている。
【0005】
なお、この把持装置101に関する技術の一例としては、以下の特許文献1の技術が挙げられ、以下、この特許文献1による把持装置101を図17に示して簡単に説明する。
この把持装置101は、一対の把持アーム111,112と、吊り上げバー113とから主に構成されており、このうち、一方の把持アーム111は連結バー111cにより所定幅にて連結されたアーム111aと111bから構成され、他方の把持アーム112は連結バー112cにより所定幅にて連結されたアーム112aと112bとから構成されている。
【0006】
また、一方のアーム111a,111bの先端には爪部113a,113bが形成されるとともに、他方のアーム112a,112bの先端にも図示しない爪部が形成されている。
そして、これらの把持アーム111,112は枢支部115a,115bにおいて揺動可能に接続され、これにより、把持アーム111,112は枢支部115a,115bを中心に開閉自在の構成となっている。そして、長尺物102に対して把持アーム111,112を挟持させると、爪部113a,113bおよび図示しない爪部がそれぞれ長尺物102の下面に入り込み、長尺物102を把持することができるようになっている。
【特許文献1】特開平9−52689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、長尺物は、図16や図17に示される長尺物102のように、重心近傍に何も障害物がなく把持アーム111,112が容易に把持できるような物ばかりではない。例えば図18に示すように、把持アーム111,112が長尺物の重心近傍を把持できないような長尺物を把持して吊り上げるような場合もありえる。
この図18に示す長尺物121は、トラックやバスなどの大型車両のフレーム121であって、このフレーム121にはフロントサスペンション122とリアサスペンション123が既に取り付けられており、このうち、リアサスペンション123はフレーム121の重心G121に近接して設けられている。
【0008】
したがって、特許文献1の把持装置101を用いてこのフレーム121を搬送しようとしたとしても、従来の把持装置101の把持アーム111,112ではフレーム重心G121を跨いだ両側でフレーム121を把持することはできない。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、把持できる箇所が限定されている長尺物であっても確実に把持して搬送することができる、吊り上げ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の吊り上げ搬送装置(請求項1)は、長尺物を吊り上げて搬送する、吊り上げ搬送装置であって、該長尺物の一端側を把持し得る第1把持機構と、該長尺物の重心を跨いだ他端側を把持し得る第2把持機構と、該第1把持機構と該第2把持機構とを接続し、該第1把持機構と該第2把持機構とをそれぞれ左右方向に移動させる位置調整機構を有するハンガと、該ハンガと接続され、該ハンガを上下方向に移動させるホイストと、該ホイストを有して左右方向に移動するクラブトロリとによって構成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項1記載の内容において、該クラブトロリは、該ハンガの上下方向の移動を許容しながら水平方向の揺れを規制する揺れ規制部材を有していることを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項1または2記載の内容において、該第1把持機構および該第2把持機構は、それぞれ、該長尺物の下端の一方を支持しうる第1爪部を有する第1アームと、該長尺物の下端の他方を支持しうる第2爪部を有する第2アームと、該第1アームと該第2アームとを回動可能に接続する枢着部と、該第1アームと該第2アームとの回動を選択的に規制するロック機構とが設けられ、該第1把持機構および該第2把持機構にそれぞれ備えられた該ロック機構を連動させる連動機構が備えられていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項3記載の内容において、該ロック機構は、該第1アームに設けられた突起部と、該第2アームに一端部が枢着されるとともに他端部が該連動機構と接続され該突起部と係合しうる係合部を有するロッキングバーとから構成され、該突起部および該係合部は、該第1爪部と該第2爪部との相対距離が所定距離になると、該係合部に該突起部が係合するように形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項3記載の内容において、該連動機構は、作業者によって操作される操作レバーと、該操作レバーに接続され該操作レバーの操作に応じて回動するシャフト部材と、該第1把持機構と該第2把持機構とにそなえられた該ロッキングレバーと該シャフト部材との間に介装され該シャフト部材の回動に応じて該ロッキングレバーを回動させるリンク部材とを備えて構成されていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項3〜5いずれか1項に記載の内容において、該第1アームおよび第2アームは、それぞれ、該長尺物の上端と当接する点である当接点を挟んだ該ハンガとの接続側の重心と該当接点との間の水平距離が、該当接点を挟んだ他方側の重心と該当接点との水平距離よりも長く設定されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項1〜6いずれか1項に記載の内容において、該位置調整機構は、該ハンガに備えられた第1ボールネジおよび第2ボールネジと、該第1ボールネジおよび該第2ボールネジを回転させるボールネジモータと、該第1ボールネジと螺合されるとともに該第1機構を懸架する第1スライダと、該第2ボールネジと螺合されるとともに該第2機構を懸架する第2スライダとを有することを特徴としている。
【0015】
また、請求項8記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項1〜7いずれか1項に記載の内容において、該クラブトロリの移動方向と直交する方向に移動可能なクレーンガータを備え、該クラブトロリが、該クレーンガータ上に備えられていることを特徴としている。
また、請求項9記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項1〜8いずれか1項に記載の内容において、該長尺物は、車両用フレームであることを特徴としている。
【0016】
また、請求項10記載の本発明の吊り上げ搬送装置は、請求項9記載の内容において、該車両用フレームの重心近傍には、サスペンション機構がそなえられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吊り上げ搬送装置によれば、第1把持機構と第2把持機構とがそれぞれが独立して移動できるので、把持できる箇所が限定されている長尺物であっても確実に把持して搬送することができる。また、第1把持機構と第2把持機構とによって長尺物が把持された後は、クラブトロリを移動させることで搬送することが可能となるので、第1把持機構と第2把持機構とをそれぞれ独立して操作する手間を省くことができる。(請求項1)
また、第1把持機構と第2把持機構とによって把持されて搬送される長尺物が水平方向に揺れることを防止して、確実に長尺物を搬送することができる。(請求項2)
また、連動機構を操作するだけで、第1把持機構のロック機構と第2把持機構のロック機構とを同時に操作することが可能となるので、作業性を大いに向上させることができる。(請求項3)
また、第1または第2把持機構の第1爪部と第2爪部との間の距離が所定距離になると、ロック機構の突起部とロッキングバーの係合部とが係合することによって第1アームと第2アームとの間の回動が規制され、第1爪部と第2爪部との間の距離を所定距離としたまま維持することができ、第1または第2把持機構による長尺物の把持の解除を容易に行なうことができる。(請求項4)
また、作業者は、操作レバーを操作するだけで、第1把持機構および第2把持機構のそれぞれにそなえられたロック機構の各ロッキングレバーを同時に回動させることができるので、第1および第2把持機構における第1アームと第2アームとの間の相対回動を容易に規制したり解除したりすることができる。(請求項5)
また、第1または第2把持機構を下方へ移動させると、第1アームおよび第2アームはそれぞれ長尺物の上端と当接するが、このとき、第1爪部と第2爪部との間が自動的に広がるようにすることができるので、作業性を大いに向上させることができる。(請求項6)
また、第1把持機構と第2把持機構とをそれぞれ独立して精度よく移動させることができるので、長尺物の把持可能箇所を第1把持機構および第2把持機構により確実に把持させることができる。(請求項7)
また、長尺物をあらゆる方向、即ち、前後左右上下方向へ搬送することができる。(請求項8)
また、長尺物が車両用フレームである場合であっても、確実に把持することができる。(請求項9)
また、車両用フレームの重心近傍にサスペンション機構がそなえられた場合であっても、第1把持機構および第2把持機構がそれぞれ適切な位置で車両用フレームを把持することができる。(請求項10)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置について説明すると、図1はその全体構成を示す模式図、図2はその位置調節機構を示す模式図、図3はその第1把持機構を示す模式的な図2のX1−X1矢視断面図、図4はその第1把持機構が開放状態にある場合を示す模式図、図5および図6はその第1把持機構の重心を説明する模式図、図7はその連動機構の要部構成を示す模式的な上面図、図8はその連動機構の要部構成を示す模式的な図7のX2−X2矢視断面図、図9はその連動機構の要部構成を示す模式的な正面図、図10はその連動機構の要部構成を示す模式的な斜視図、図11〜図15はそれぞれその作用を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、クレーン装置20は、図1中紙面奥行方向に所定間隔毎に設けられた複数組の支柱21,21と、クレーンガータ22と、クラブトロリ50と、ホイスト51と、ハンガ52と、第1把持機構27と、第2把持機構29とから主に構成されている。
このうち、クレーンガータ22は、その両端が一対の支柱21,21の上端に設けられたレール25,25上に載置され、図1中紙面奥行き方向(前後方向)に移動することができるようになっている。
【0020】
また、クラブトロリ50は、クレーンガータ22の上に設けられ、走行用モータ53によってクレーンガータ22上を長手方向(即ち、図1中左右方向;矢印A参照)に移動することができるようになっている。また、このクラブトロリ50には、ハンガ52の上下方向の移動を許容しながら左右方向および前後方向(即ち、水平方向)の揺れを規制する揺れ防止マスト(揺れ規制部材)54,54が下方へ延在して備えられている。
【0021】
ホイスト51は、下方に伸びるワイヤ26,26を巻き上げたり送り出したりするものである。また、このワイヤ26,26の下端にはハンガ52が接続され、さらに、このハンガ52には、長尺物(ここでは車両用フレーム10;後述する)の一部をそれぞれ把持する第1把持機構27および第2把持機構29がワイヤ27A,29Aによって吊り下げられている。
【0022】
したがって、ホイスト51が左右方向(図1中矢印A参照)に移動することによってハンガ52を介して第1把持機構27および第2把持機構29が左右方向に移動でき、また、ホイスト51が図中矢印Bで示すようにワイヤ26,26を巻き取ったり送り出したりすることによってハンガ52を介して第1把持機構27および第2把持機構29を上下方向に移動できるようになっている。
【0023】
ハンガ52は、クレーンガータ22の長手方向と同じ方向に延在するI型断面の部材であって、ローラ52a,52aを介してクラブトロリ50の揺れ防止マスト54,54に挟持されている。これにより、ハンガ52は、水平方向の揺れが防止されつつ、ホイスト51のワイヤ26,26の巻上げもしくは送り出しによる上下方向の移動が許容されるようになっている。
【0024】
また、このハンガ52には、図1中矢印Cで示すように、ハンガ52の長手方向(即ち、左右方向)に第1把持機構27および第2把持機構29をそれぞれ移動させることができる位置調整機構55が備えられている。
この位置調整機構55は、図2に示すように、第1ボールネジ56,第2ボールネジ57,ボールネジモータ58(図3に図示),第1スライダ61,第2スライダ62とから主に構成されている。
【0025】
このうち、第1および第2ボールネジ56,57は、ハンガ52の左右方向の軸心C1の近傍から両側にそれぞれ延在し、ハンガ52の下面52cにおいて回転可能に固定されている。
また、ボールネジモータ58は、ハンガ52の軸心C1近傍でその裏面52d側に設けられ、図3に示すように、チェーン58A,58Bを介して第1および第2ボールネジ56,57と接続され、第1および第2ボールネジ56,57を回転駆動するものである。
【0026】
また、第1スライダ61は、第1把持機構27を懸架し第1ボールネジ56と螺合されて第1ボールネジ56の軸線方向に移動するものであり、また、第2スライダ62は、第2把持機構29を懸架し第2ボールネジ57と螺合されて第2ボールネジ56の軸線方向に移動するものである。なお、これらの第1スライダ61および第2スライダ62は、それぞれ、ローラ61a,62aがハンガ52のつば部52a上を転動することで、図2中左右方向へ移動可能に懸架されている。
【0027】
また、第1ボールネジ56と第2ボールネジ57とのねじ溝は、互いに逆巻きとなるように螺旋状に形成されている。したがって、ボールネジモータ58が回転すると、第1および第2ボールネジ56,57とは共に同じ方向へ回転するものの、第1および第2ボールネジ56,57のそれぞれと螺合した第1および第2スライダ61,62は、ハンガ52の左右方向の軸心C1を中心として、互いに反対方向へ移動するようになっている(図2中矢印D,D参照)。なお、ボールネジモータ58の回転方向および回転速度は、ボールネジモータ58と接続された操作スイッチ(図示略)により作業者が適宜調節することができるようになっている。
【0028】
このようにして、第1スライダ61に懸架された第1把持機構27および第2スライダ62に懸架された第2把持機構29が、それぞれ、好ましい位置に移動するように調節することができるようになっている。
また、本実施形態における車両用フレーム10は、図1に示すように、その一端側(図中左端側であって、車両用フレームの先端から重心G10の間;符号L1参照)にフロントサスペンション機構11が取り付けられ、重心G10を跨いだ他端側(図中右端側であって、車両用フレームの後端から重心G10の間;符号L2参照)にリアサスペンション機構(サスペンション機構)12が取り付けられている。そして、このリアサスペンション機構12は、重心G10に近接した位置に設けられている。
【0029】
この場合、第2把持機構29が車両用フレーム10を他端側L2で把持できるスペース(把持可能箇所)は、車両用フレーム10の後端近傍(図1中符号E参照)しか残されていない。
このように、車両用フレーム10の一端側L1における把持可能箇所と、他端側L2における把持可能箇所とが離れているような場合であっても、クラブトロリ50の位置をクレーンガータ22上で調節するとともに、第1スライダ61と第2スライダ62との距離を位置調節機構55により自由に調節することで、車両用フレーム10の一端側L1における把持可能箇所を第1把持機構27が確実に把持することができるようにするとともに、他端側L2における把持可能箇所を第2把持機構29が確実に把持することができるようになっている。
【0030】
そして、第1把持機構27および第2把持機構29によって車両用フレーム10が把持された後、ホイスト51によってワイヤ26,26が巻き上げられることで車両用フレーム10を上方へ吊り上げることができる。その後、クラブトロリ50をクレーンガータ22上で移動させることで吊り上げた車両用フレーム10を左右方向(クレーンガータ22の長手方向)に搬送することができ、さらに、クレーンガータ22を移動させることで吊り上げた車両用フレーム10を前後方向(図1中紙面奥行き方向)に移動させて搬送することができるようになっている。
【0031】
ここで、第1把持機構27および第2把持機構29について説明する。なお、これらの第1把持機構27と第2把持機構29とは同様の機構であるので、ここでは第1把持機構27のみを例にとって説明する。
図3に示すように、この第1把持機構27は、第1アーム31、第2アーム32およびワイヤ33,34から主に構成されている。
【0032】
このうち、第1アーム31および第2アーム32は、共にかぎ形の部材であって、左右対称に配設され、枢軸(枢着部)37によって回動可能に連結されている。
また、これらの第1アーム31および第2アーム32の上端31a,32aはそれぞれワイヤ33,34の一端33a,34aに接続され、さらに、このワイヤ33,34の他端33b,34bは第1スライダ61に接続されている。また、第1アーム31は、車両フレーム10下端の一方を支持しうる第1爪部31bを有するとともに、第2アーム32は、車両フレーム10下端の一方を支持しうる第2爪部32bを有している。
【0033】
また、第1および第2アーム31,32の側面には操作グリップ31c,32cがそれぞれ固着されており、作業者がこれらの操作グリップ31c,32cを把持することで車両用フレーム10に対する第1把持機構27の位置を容易に微調整できるようになっている。
ここで、この第1アーム31の重量バランスについて説明すると、ホイスト51によりワイヤ26,26が送り出されることによってハンガ52が下方へ移動すると、図4に示すように、第1把持機構27の第1および第2アーム31,32は、車両用フレーム10の上端と当接する。なお、この車両用フレーム10の上端と当接しうる点を当接点P1,P2という。
【0034】
そして、図5に示すように、第1アーム31は、当接点P1を挟んでハンガ52との接続された側(即ち、第1アーム31の上端側31a)の重心G11と当接点P1との間の水平距離L6が、当接点P1を挟んでハンガ52との接続されていない側(即ち、第1アーム31の第1爪部31b側)の重心G12と当接点P1との間の水平距離L7よりも長くなるように(即ち、L6>L7となるように)形成されている。
【0035】
同様に、図6に示すように、第2アーム32も、車両用フレーム10の上端と当接しうる当接点P2を挟んだ第2アーム32の上端側32aの重心G13と当接点P2との間の水平距離L8が、当接点P2を挟んだ第2アーム32の第2爪部32b側の重心G14と当接点P2との間の水平距離L9よりも長くなるように(即ち、L8>L9となるように)形成されている。
【0036】
したがって、ホイスト51がワイヤ26,26を送り出すことによって、ハンガ52が下方へ移動し、第1および第2アーム31,32がそれぞれ車両フレーム10の上端に当接すると、第1アーム31には当接点P1を中心とした時計方向のモーメント(図5中矢印M1参照)が生じるとともに、第2アーム32にも、当接点P2を中心とした反時計方向のモーメント(図6中矢印M2参照)が生じ、第1把持機構27および第2把持機構29は自動的に開放状態となるようになっている。なお、ここで、「開放状態」とは、第1アーム31の第1爪部31bと第2アーム32の第2爪部32bとの距離L3が、把持しようとしている車両用フレーム10の幅よりも広い所定の距離LOPEN以上に大きくなった場合をいう。
【0037】
また、この第1把持機構27には第1ロック機構(ロック機構)93が設けられ、同様に、第2把持機構29には第2ロック機構(ロック機構)94が設けられており、これらの第1および第2ロック機構93,94によって第1および第2把持機構27,29をそれぞれ開放状態のまま保持することができるようになっている。ここで、この第1ロック機構93について説明するが、第1把持機構27に設けられている第1ロック機構93と第2把持機構29に設けられている第2ロック機構94とは、共に同じ構成であるので、ここでは、第1把持機構27に設けられた第1ロック機構93について説明する。
【0038】
図3に示すように、この第1ロック機構93は、第1アーム31の上端31a近傍に設けられた突起部64と、第2アーム32に一端65aが枢着されるとともに他端65b側が連動機構66(後述する)と接続されたロッキングバー65とから構成されている。
このうち、ロッキングバー65には、突起部64と係合しうる係合部65cと、突起部64と当接し第1アーム31と第2アーム32とが回動することに伴って突起部64が摺動する摺動部65dとが形成されている。また、係合部65cおよび突起部64は、図4に示すように、第1爪部31bと第2爪部32bとの相対距離L3が所定距離LOPENになる(即ち、L3=LOPENが成立する)と、係合部65cに突起部64が自動的に係合する位置にそれぞれ形成されている。そして、この係合部65cと突起部64とが係合することにより、第1把持機構27を開放状態のまま保持できるようになっている。
【0039】
なお、係合部65cと突起部64とが係合しておらず、第1アーム31と第2アーム32とがそれぞれ自由に回動できる状態を「自由状態」といい、開放状態と自由状態との切り替えは、連動機構66を介して作業者によって行なわれるようになっている。
この連動機構66は、第1把持機構27および第2把持機構29にそれぞれ備えられた第1および第2ロック機構93,94を互いに連動させるものであって、図2に示すように、操作レバー71と、第1および第2シャフト部材(シャフト部材)72,73と、第1および第2連動スライダ82,83と、第1および第2ロッド部材74,75とから主に構成されている。
【0040】
このうち、操作レバー71は、図7および図8に示すように、第1および第2シャフト部材72,73に対してコネクタ76を介して接続され、図8中矢印Fに示すように、第1および第2シャフト部材72,73の軸心C2中心として自由端側が上下方向へ回動できるようになっている。
また、図9に示すように、コネクタ76には下方へ突出した突出部77が設けられ、さらに、この突出部77の両側には、第1および第2シャフト部材72,73の軸心C2と平行にピン部材95,96が突設され、このピン部材95,96が、第1および第2シャフト部材72,73に接続された下部アーム79,80の後側にそれぞれ当接するようになっている。
【0041】
したがって、操作レバー71が作業者によって押し上げられると、ピン部材95,96の軸心C3〜第1および第2シャフト部材72,73の軸心(即ち、操作レバー71の回動中心軸)C2の距離L10と操作レバー71に入力された作業者の力FOPEとの積算(即ち、L10×FOPE)によって生じるモーメントによって第1および第2シャフト部材72,73を回転させることができるようになっている。
【0042】
また、図7中矢印Gで示すように、第1および第2シャフト部材72,73と直交し上下方向に伸びるコネクタ76の軸心C4を中心として、操作レバー71は回動することができるようになっている。
そして、図10に示すように、ハンガ52には第1段部81aおよび第2段部81bが形成されたホルダ81が設けられており、操作レバー71を第1段部81a又は第2段部81bのうちのいずれか一方に載置することができるようになっている。
【0043】
このホルダ81は、その上端部はハンガ52の上面に溶接され、また、下端部は第1段部81aと第2段部81bとから形成されており、より詳しくは、第1段部81aと第2段部81bとのうち、その左下方側に第1段部81aが形成されると共に、その右上方側に第2段部81bが形成されている。
そして、第1段部81aに操作レバー71を載置することによって、第1および第2ロック機構93,94が作動するようにすることができ、一方、第2保持部81bに操作レバー71を載置することによって、第1および第2ロック機構93,94が作動しないようにすることができるようになっている。
【0044】
なお、第1または第2ロック機構93,94が「作動する」とは、ロッキングレバー65の係合部65cと突起部64とが係合することによって第1または第2把持機構27,29が開放状態のまま保持されることを許容することをいい、一方、第1または第2ロック機構93,94が「作動しない」とは、ロッキングレバー65の係合部65cと突起部64との係合を禁止することによって第1または第2把持機構27,29が開放状態のまま保持されることを許容しない(即ち、自由状態を維持する)ことをいう。
【0045】
また、第1および第2シャフト部材72,73は、操作レバー71の回動に応じて回動する部材であって、図7に示すように、操作レバー71に対してコネクタ76を介して接続されている。
また、図2に示すように、第1シャフト部材72は、ハンガ52の左右方向の軸心C1近傍から左側の端部近傍に亘って延在しており、軸心C1近傍から僅かに左側へオフセットしてハンガ52の前面52bに固定された軸受け部材84と、ハンガ52の左側端部近傍でハンガ52の前面52bに固定された軸受け部材85とによって回転可能に支持されている。一方、第2シャフト部材73は、ハンガ52の軸心C1の近傍から右側の端部近傍へ亘って延在しており、軸心C1近傍から僅かに右側へオフセットしてハンガ52の前面52bに固定された軸受け部材86と、ハンガ52の右側端部近傍でハンガ52の前面52bに固定された軸受け部材87とによって回転可能に支持されている。
【0046】
また、第1シャフト部材72は、コネクタ76の近傍および軸受け部材84,85に支持される部分においては、その外形が円形となるように形成されているが、ハンガ52の軸心C1近傍の軸受け部材84と左側の軸受け部材85との間においては外形が四角形となるように形成されている。同様に、第2シャフト部材73も、コネクタ76の近傍および軸受け部材86,87に支持される部分においては、その外形が円形となるように形成されているが、ハンガ52の軸心C1近傍の軸受け部材86と右側の軸受け部材87との間においては、その外形が四角形となるように形成されている。
【0047】
また、この第1シャフト部材72において、外形が四角形に形成された部分を第1摺動部72aといい、この第1摺動部72aは第1連動スライダ82に形成された四角形の穴部と嵌合され、第1連動スライダ82が摺動できるようになっている。同様に、第2シャフト部材73において、外形が四角形に形成された部分を第2摺動部73aといい、この第2摺動部73aは第2連動スライダ83に形成された四角形の穴と嵌合され、第2連動スライダ83が摺動できるようになっている。
【0048】
また、図3に示すように、第1連動スライダ82にはL型に形成されたパイプ材である第1L型部材88の一端部が接続されるとともに、他端部が棒状のパイプ材である第1ロッド部材74と回動可能に接続されている。同様に、図2に示すように、第2連動スライダ83にはL型に形成されたパイプ材である第2L型部材89の一端部が接続されるとともに、他端部が棒状のパイプ材である第2ロッド部材75と回動可能に接続されている。また、第1ロッド部材74の下端部は第1把持機構27における第1ロック機構93のロッキングバー65に接続されている。同様に、図2に示すように、第2ロッド部材75の下端部は第2把持機構29における第2ロック機構94のロッキングバー65に接続されている。
【0049】
なお、第1連動スライダ82,第1L型部材88および第1ロッド部材74からなる構成要素を第1リンク部材(リンク部材)91といい、また、第2連動スライダ83,第2L型部材89および第2ロッド部材75からなる構成要素を第2リンク部材(リンク部材)92という。
そして、第1および第2シャフト部材72,73が操作レバー71の回動に伴って回転すると、第1および第2シャフト部材72,73に嵌合した第1および第2連動スライダ82,83もこの回転に追従して、第1および第2シャフト部材72,73の軸心C2周りに回動するようになっている。これにより、第1および第2スライダ82,83の第1および第2L型部材88,89にそれぞれ接続された第1および第2ロッド部材74,75が、図3中矢印Hで示すように上下方向に変位するようになっている。
【0050】
そして、第1および第2シャフト部材72,73、第1および第2連動スライダ82,83の軸心C2周りの回転運動を、第1および第2ロッド部材74,75の上下方向の直線運動へ変換してロッキングバー65に伝達することができるようになっている。
なお、第1および第2連動スライダ82,83を左右に移動させるための駆動源は特に設けられていないが、第1および第2L型部材88,89と第1および第2ロッド部材74,75とを介して、第1および第2連動スライダ82,83は、それぞれ、第1把持機構27と第2把持機構29とに接続されているので、位置調整機構55により第1および第2スライダ61,62を介して第1および第2把持機構27,29が移動すると、この移動に追従して第1および第2連動スライダ82,83も第1および第2シャフト部材72,73に沿ってそれぞれ移動することができるようになっている。
【0051】
本実施形態に係る吊り上げ搬送装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図11に示すように、フロントサスペンション機構11とリアサスペンション機構12とが組み付けられた車両用フレーム10が地上で支持台41,41に載置され、この車両用フレーム10を搬送する場合、まず、走行用モータ53を作動させてクレーンガータ22の左端で待機しているクラブトロリ50を、図12に示すように、右側へ移動させる。
【0052】
次に、図13に示すように、位置調整機構55により、第1把持機構27が車両用フレーム10の一端側L1において把持できる位置に移動するとともに、第2把持機構29が他端側L2において把持できる位置に移動する。
つまり、位置調整機構55の駆動源であるボールネジモータ58を一方向へ回転させることによって、第1および第2スライダ61,62をそれぞれハンガ52の軸心C1側から両端側へ同じ距離だけ同じ速度で移動させる。なお、第1および第2スライダ61,62を、ハンガ52の軸心C1側へ移動させたい場合には、ボールネジモータ58を他方向へ回転させればよい。
【0053】
このとき、第1および第2L型部材88,89と第1および第2ロッド部材74,75とを介して、連動機構66の第1および第2連動スライダ82,83は、それぞれ、第1および第2把持機構27,29に接続されているので、位置調整機構55により第1および第2把持機構27,29の左右方向の位置が調節されると、第1および第2連動スライダ82,83も第1および第2把持機構27,29の移動に追従してハンガ52の長手方向にそれぞれ移動する。
【0054】
その後、図14に示すように、ホイスト51からワイヤ26,26が送り出されることによりハンガ52が下降し、そして、第1把持機構27および第2把持機構29もハンガ52の下降に伴って下降する。なお、このとき、第1および第2把持機構27,29は、第1および第2ロック機構93,94により開放状態としておく。また、第1および第2ロック機構93,94を作動させて第1および第2把持機構27,29を開放状態としたままにするには、ロッキングレバー65の係合部65cと突起部64とが係合する際に、連動機構66の操作レバー71が第1段部81aに載置されていればよい(図10参照)。
【0055】
そして、第1および第2把持機構27,29の第1および第2アーム31,32を車両用フレーム10の上端と当接させ、その後、作業者が連動機構66の操作レバー71の自由端を上方へ持ち上げると、第1および第2シャフト部材72,73が回動することによって、第1および第2連動スライダ82,83も第1および第2シャフト部材72,73の回動に追従する。
【0056】
さらに、第1および第2連動スライダ82,83が回動することによって、第1および第2連動スライダ82,83に対して第1および第2リンク部材91,92を介して接続された第1および第2ロック機構93,94のロッキングレバー65,65が回動する。これにより、第1および第2ロック機構93,94の作動が解除され、第1および第2把持機構27,29は自由状態となる。
【0057】
その後、図15に示すように、ホイスト51によりワイヤ26,26が巻き取られることによりハンガ52が上昇し、そして、第1把持機構27および第2把持機構29もハンガ52の上昇に伴って上昇する。
このとき、図4に示すように、第1アーム31の上端部31aと第2アーム32の上端部32aとが上方へ吊り上げられることにより、第1爪部31bおよび第2爪部32bの距離L3が狭まるように、第1および第2アーム32は枢軸37を中心にそれぞれ逆方向へ相対的に回転する。
【0058】
つまり、第1および第2ロック機構93,94による第1および第2把持機構27,29のロックを解除し、その後、ホイスト51によってワイヤ26,26を巻き上げるだけで、第1および第2把持機構27,29は自動的に車両用フレーム10を把持する。
その後、吊り上げた車両用フレーム10を図15中、紙面奥行方向へ搬送する場合にはクレーンガータ22を奥行方向へ移動させればよく、また、吊り上げた車両用フレーム10を図15中左右方向へ搬送したい場合には、クラブトロリ50をクレーンガータ22上で左右方向へ移動させればよい。
【0059】
このとき、ワイヤ26,26によって懸架されているハンガ52は、ローラ52a,52aを介して揺れ防止マスト54,54に挟持されているので、上下方向の動きが許容されつつ、水平方向の動きが規制されており、クレーンガータ22が移動した場合であっても、クラブトロリ50が移動した場合であっても、水平方向へ揺れることがなく、ホイスト51のワイヤ26,26の巻き取り/送り出しによるハンガ52の上下動は自由に行なうことができる。
【0060】
なお、ハンガ52と第1把持機構27とを接続するワイヤ27Aおよびハンガ52と第2把持機構29とを接続するワイヤ29Aは、ホイスト51とハンガ52とを接続するワイヤ26,26に比べてその長さが短く、ワイヤ27A,29Aによる揺れは実作業においては無視できる程度である。
一方、第1および第2把持機構27,29によって把持されている車両用フレーム10を第1および第2把持機構27,29から取り外す場合には、操作レバー71を図10に示すように、第1段部81aに載置して第1および第2ロック機構93,94を作動させ、第1および第2把持機構27,29を開放状態としたまま維持できるようにしておき、その後、ホイスト51によりワイヤ26,26を送り出して車両用フレーム10を治具41,41に載置する。
【0061】
すると、図5に示すように、第1アーム31には当接点P1を中心としたモーメントM1が発生し、また、第2アーム32には、図6に示すように、当接点P2を中心としたモーメントM2が発生する。なお、これらのモーメントM1,M2は第1および第2アーム31,32の重量バランスによって生じることは上述したとおりである。
そして、これらのモーメントM1,M2により、第1アーム31と第2アーム32とは枢軸37を中心に回動し、第1爪部31bと第2爪部32bとの相対距離L3が大きくなっていく。このとき、第1および第2ロック機構93,94のロッキングバー65の摺動部65dは突起部64と摺動し、その後、相対距離L3が所定距離LOPENと等しくなると、図4に示すように、突起部64が係合部65cと自動的に係合し、第1および第2アーム31,32との相対回転が規制され、第1および第2把持機構27,29が開放状態で固定される。
【0062】
この状態で、ホイスト51によりワイヤ26,26を巻き上げることによって、ハンガ52を上昇させるとともに、第1および第2把持機構27,29も上昇させると、第1および第2把持機構27,29はその自重によって第1爪部31bと第2爪部32bとの距離L3が短くなるように第1アーム31と第2アーム32とは相対的に回転しようとするものの、ロック機構93,94が作動することによってこの相対回転が規制されているため、第1および第2把持機構27,29は車両用フレーム10を把持することなくそのまま上昇し、車両用フレーム10を第1および第2把持機構27,29から取り外すことができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る本発明によれば、第1把持機構27と第2把持機構29とがそれぞれが独立して移動できるので、把持できる箇所が限定されている車両用フレーム10であっても確実に把持して搬送することができる。
また、第1把持機構27と第2把持機構29とによって車両用フレーム10が把持された後は、クラブトロリ50を移動させることで搬送することが可能となるので、第1把持機構27と第2把持機構29とをそれぞれ独立して移動させる手間を省くことができる。
【0064】
また、第1把持機構27と第2把持機構29とによって把持される車両用フレーム10が水平方向に揺れることを防止しながら、確実に車両用フレーム10を搬送することができる。
また、連動機構66を操作するだけで、第1把持機構27のロック機構93と第2把持機構29のロック機構94とを同時に操作することが可能となるので、作業性を大いに向上させることができる。
【0065】
また、第1または第2把持機構27,29の第1爪部31bと第2爪部32bとの間の距離L3が所定距離LOPENになると、ロック機構93,94の突起部64とロッキングバー65の係合部64cとが係合することによって第1アーム31と第2アーム32との間の回動が規制され、第1爪部31bと第2爪部32bとの間の距離L3を所定距離LOPENとしたまま維持することができ、第1または第2把持機構27,29による車両用フレーム10の把持の解除を容易に行なうことが可能となる。
【0066】
また、作業者は、操作レバー71を操作するだけで、第1把持機構27および第2把持機構29のそれぞれにそなえられたロック機構93,94の各ロッキングレバー65を同時に回動させることができるので、第1および第2把持機構27,29における第1アーム31と第2アーム32との間の相対的な回動を、容易に規制したり解除したりすることができる。
【0067】
また、第1および第2把持機構27,29を下方へ移動させると、第1アーム31および第2アーム32はそれぞれ車両用フレーム10の上端と当接するが、このとき、第1爪部31bと第2爪部32bとの間が自動的に広がるようにすることができるので、作業性を大いに向上させることができる。
また、第1および第2把持機構27,29をそれぞれ独立して精度よく移動させることができるので、高い精度で、車両用フレーム10において限られた把持可能箇所を第1および第2把持機構27,29に把持させることができる。
【0068】
また、第1および第2把持機構27,29によって把持された車両用フレーム10を、ホイスト51によるワイヤ26,26の巻き上げ/送り出しによって上下方向に、クラブトロリ50を移動させることによって左右方向に、そして、クレーンガータ22を前後(奥行き)方向に移動させることができる。
また、車両用フレーム10には、サスペンション機構11,12など、さまざまな部品が取り付けられているため、車両用フレーム10を吊り上げて搬送する場合には、この車両用フレーム10を把持できる箇所(把持可能箇所)が必然的に限られてしまうが、このような場合であっても、第1把持機構27と第2把持機構29とが、それぞれ限られた車両用フレーム10の把持可能箇所を把持することによって、確実に車両用フレーム10を吊り上げ、そして、搬送することが可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態においては、第1ボールねじ56と第2ボールネジ57とは、これらの第1および第2ボールネジ56,57に共通のボールネジモータ58によって駆動される構成とした場合を説明したが、このような構成に限定するものではなく、第1ボールネジ56と第2ボールネジ57とで個別のモータを設けるようにしてもよい。これにより、第1把持機構27と第2把持機構29とを完全に独立して移動させることができる。
【0070】
また、上述の実施形態においては、車両用フレーム10の重心G10の近傍には、サスペンション機構12がそなえられている場合を例にとって説明したが、このようなサスペンション機構12の他に、例えば、ブレーキホース,各種のブラケット,グリースタンク,クロスメンバ用のリベットなどの部品が備えられている場合であっても、本発明によれば、第1把持機構および第2把持機構が、上記のような部品類の設けられていない適切な位置で、それぞれ車両用フレームを把持することができることは言うまでもない
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の位置調節機構を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の第1把持機構を示す模式的な図2のX1−X1矢視断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の第1把持機構が開放状態にある場合を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の第1把持機構の重心を説明するための模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の第1把持機構の重心を説明するための模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の連動機構の要部構成を示す模式的な上面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の連動機構の要部構成を示す模式的な図7のX2−X2矢視断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の連動機構の要部構成を示す模式的な正面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の連動機構の要部構成を示す模式的な斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の作用を説明するための模式図であって、吊り上げ準備状態を示す。
【図12】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の作用を説明するための模式図であって、吊り上げ準備状態を示す。
【図13】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の作用を説明するための模式図であって、吊り上げ準備状態を示す。
【図14】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の作用を説明するための模式図であって、吊り上げ準備状態を示す。
【図15】本発明の一実施形態に係る吊り上げ搬送装置の作用を説明するための模式図であって、吊り上げ搬送状態を示す。
【図16】従来の吊り上げ搬送装置を示す模式的な斜視図である。
【図17】従来の吊り上げ搬送装置の一例を示す模式的な斜視図である。
【図18】従来の吊り上げ搬送装置を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 車両用フレーム(長尺物)
12 リアサスペンション機構(サスペンション機構)
22 クレーンガータ
27 第1把持機構
29 第2把持機構、
31 第1アーム
31b 第1爪部
32 第2アーム
32b 第2爪部
37 枢着部(枢軸)
50 クラブトロリ
51 ホイスト
52 ハンガ
54 揺れ防止マスト(揺れ規制部材)
55 位置調整機構
56 第1ボールネジ
57 第2ボールネジ
58 ボールネジモータ
61 第1スライダ
62 第2スライダ
64 突起部
65 ロッキングバー
65c 係合部
66 連動機構
71 操作レバー
72 第1シャフト部材(シャフト部材)
73 第2シャフト部材(シャフト部材)
74 第1ロッド部材(リンク部材)
75 第2ロッド部材(リンク部材)
82 第1連動スライダ(リンク部材)
83 第2連動スライダ(リンク部材)
88 第1L型部材(リンク部材)
89 第2L型部材(リンク部材)
91,92 リンク部材
93 第1ロック機構(ロック機構)
94 第2ロック機構(ロック機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物を吊り上げて搬送する、吊り上げ搬送装置であって、
該長尺物の一端側を把持し得る第1把持機構と、
該長尺物の重心を跨いだ他端側を把持し得る第2把持機構と、
該第1把持機構と該第2把持機構とを接続し、該第1把持機構と該第2把持機構とをそれぞれ左右方向に移動させる位置調整機構を有するハンガと、
該ハンガと接続され、該ハンガを上下方向に移動させるホイストと、
該ホイストを有して左右方向に移動するクラブトロリとによって構成されている
ことを特徴とする、吊り上げ搬送装置。
【請求項2】
該クラブトロリは、該ハンガの上下方向の移動を許容しながら水平方向の揺れを規制する揺れ規制部材を有している
ことを特徴とする、請求項1記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項3】
該第1把持機構および該第2把持機構は、それぞれ、
該長尺物の下端の一方を支持しうる第1爪部を有する第1アームと、
該長尺物の下端の他方を支持しうる第2爪部を有する第2アームと、
該第1アームと該第2アームとを回動可能に接続する枢着部と、
該第1アームと該第2アームとの回動を選択的に規制するロック機構とが設けられ、
該第1把持機構および該第2把持機構にそれぞれ備えられた該ロック機構を連動させる連動機構が備えられている
ことを特徴とする、請求項1または2記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項4】
該ロック機構は、
該第1アームに設けられた突起部と、
該第2アームに一端部が枢着されるとともに他端部が該連動機構と接続され該突起部と係合しうる係合部を有するロッキングバーとから構成され、
該突起部および該係合部は、該第1爪部と該第2爪部との相対距離が所定距離になると、該係合部に該突起部が係合するように形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項5】
該連動機構は、
作業者によって操作される操作レバーと、
該操作レバーに接続され該操作レバーの操作に応じて回動するシャフト部材と、
該第1把持機構と該第2把持機構とにそなえられた該ロッキングレバーと該シャフト部材との間に介装され該シャフト部材の回動に応じて該ロッキングレバーを回動させるリンク部材とを備えて構成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項6】
該第1アームおよび第2アームは、それぞれ、
該長尺物の上端と当接する点である当接点を挟んだ該ハンガとの接続側の重心と該当接点との間の水平距離が、該当接点を挟んだ他方側の重心と該当接点との水平距離よりも長く設定されている
ことを特徴とする、請求項3〜5いずれか1項に記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項7】
該位置調整機構は、
該ハンガに備えられた第1ボールネジおよび第2ボールネジと、
該第1ボールネジおよび該第2ボールネジを回転させるボールネジモータと、
該第1ボールネジと螺合されるとともに該第1把持機構を懸架する第1スライダと、
該第2ボールネジと螺合されるとともに該第2把持機構を懸架する第2スライダとを有する
ことを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項8】
該クラブトロリの移動方向と直交する方向に移動可能なクレーンガータを備え、
該クラブトロリが、該クレーンガータ上に備えられている
ことを特徴とする、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項9】
該長尺物は、車両用フレームである
ことを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載の吊り上げ搬送装置。
【請求項10】
該車両用フレームの重心近傍には、サスペンション機構がそなえられている
ことを特徴とする、請求項9記載の吊り上げ搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−143366(P2006−143366A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333554(P2004−333554)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】