説明

吊り下げ式揮散剤用容器

【課題】衣類等とともにバーに吊り下げられた状態でも揮散剤の残量の確認が行いやすく、容器の姿勢を簡単に変位させることができる揮散剤用容器を提案する。
【解決手段】本発明の吊り下げ式揮散剤用容器は、2つの筐体1aを向かい合わせにしてその相互間に防虫シートPの収納空間Sを形成する容器本体1を有し、容器本体1を吊り下げるフック2を備え、容器本体1の輪郭形状を形作る周壁部1cに、周壁部1cに沿って伸延する環状溝部Mを設け、フック2に、環状溝部Mに抜け止め保持されフック2を環状溝部Mに沿って移動可能なスライダー2aと、揮散剤である防虫シートPの残量表示用インジケータIを収容するインジケータケース3とを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散剤を収容し、洋服ダンスやクローゼット等のバーに吊り下げて使用する吊り下げ式揮散剤用容器に関するものであり、特に、衣類等とともにバーに吊り下げられた状態でも揮散剤の残量の確認が行いやすい上、使い勝手にも優れる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
吊り下げ式揮散剤用容器としては、例えば、衣類用の防虫剤容器があり、容器内側に収容する揮散剤として防虫効果のある薬剤を含浸させたシート(防虫シート)を用いるとともに、上部に一体連結したフックで洋服ダンスやクローゼット等のバーに衣類等とともに直接吊り下げられるようにした、吊り下げ式防虫剤容器が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の容器によれば、薬剤の収容スペースを狭めて容器を偏平状にできるので、衣類等の収納スペースを犠牲にすることなく使用することができる。
【0003】
一方、上記容器は、防虫シートの残量(寿命)を表示するためのインジケータも併せて収容しているが、洋服ダンス等に吊り下げられた状態では隣り合う衣類等が邪魔になって直接視認することができず、容器をバーから取り外したり、吊り下げられた衣類等を横にずらしたりする必要があり、面倒な作業が不可避であった。
【0004】
また、上記容器は、吊り下げた際に衣類等の邪魔にならないように、一般には上下方向の寸法を短くした横型となっているが、洋服ダンスのタイプや使用状況等によっては縦型で使用したいとの要望もあった。このような要望に対し、例えば特許文献2に記載のように、フックと容器本体とを別体で設け、容器本体の短片から長辺に亘ってL字状となるスライド部(溝)に、フックに設けた一対の係止部をそれぞれ外側から嵌め込んで、容器本体を横姿勢から縦姿勢に変位できるようにした容器も知られているが、衣類等をバーに吊り下げる際に、容器から外側に飛出しているフックの係止部と引っかかる懸念があり、未だ使い勝手の点で改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−333943号公報
【特許文献2】特開2007−97512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洋服ダンスやクローゼット等のバーに吊り下げて使用する吊り下げ式揮散剤用容器に関し、衣類等とともにバーに吊り下げられた状態でも揮散剤の残量の確認が行いやすく、様々な使用状況に応じて姿勢を変位させることができる上、十分な強度も兼ね備える使い勝手に優れた揮散剤用容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2つの筐体を向かい合わせにしてその相互間に揮散剤の収納空間を形成する容器本体を有し、該容器本体をフックによって吊り下げる吊り下げ式揮散剤用容器であって、
前記容器本体の輪郭形状を形作る周壁部に、該周壁部に沿って伸延する環状溝部を設け、
前記フックに、該環状溝部に抜け止め保持され該フックを該環状溝部に沿って移動可能なスライダーと、前記揮散剤の残量表示用インジケータを収容するインジケータケースとを設けたことを特徴とする吊り下げ式揮散剤用容器である。
【0008】
前記環状溝部は、それぞれの筐体の縁部に設けられた凹部を相互に突き合わせて形成されたものであり、
前記スライダーは、それぞれの筐体の相互間に位置し前記フックを固定保持するベースと、該ベースから前記環状溝部に向けて突設して該スライダーを抜け止め不能、かつ、移動可能に保持する摺動片とからなることが望ましい。
【0009】
前記容器本体を、ポリエチレンテレフタレートで構成し、前記フックを、ポリプロピレン又はポリエチレンで構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
揮散剤を収納する容器本体に、この容器本体の輪郭形状を形作る周壁部に沿って伸延する環状溝部を設け、容器本体を吊り下げるフックに、環状溝部に抜け止め保持されフックを環状溝部に沿って移動可能なスライダーと、揮散剤の残量表示用インジケータを収容するインジケータケースとを設けたので、使用状況に応じて容器本体の姿勢を自由に変位させることができる。更に衣類等とともに吊り下げられた状態でも、衣類等に対してインジケータが上部に配置されることになるので、揮散剤の残量の確認が行いやすくなる。
【0011】
環状溝部を、それぞれの筐体の縁部に設けられた凹部を相互に突き合わせて形成し、スライダーに、それぞれの筐体の相互間に配置されフックを固定保持するベースと、ベースから環状溝部に向けて突設してスライダーを抜け止め不能、かつ、移動可能に保持する摺動片とを設ける場合は、フックを容器の幅内で保持して省スペース化が図れるとともに、フックの係止部が露出していないので、衣類等を吊り下げる際に誤って容器を破損させてしまう恐れがない。
【0012】
容器本体を、ポリエチレンテレフタレートで構成し、フックを、揮散剤に含浸させた薬剤(例えばピレスロイド)が吸収されにくいポリエチレンテレフタレートの作用によって、防虫効果を十分に発揮することができるだけでなく、機械的強度に優れるポリプロピレン又はポリエチレンの作用により、フックの強度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従う吊り下げ式揮散剤用容器の一形態である、吊り下げ式防虫剤用容器につき、(a)は2つの筐体のうちの一方の筐体とフックとを、筐体の凹部にフックの摺動片を係合させた状態で示した平面図であり、(b)は(a)のA−Aに沿う断面図である。
【図2】図1に示す吊り下げ式防虫剤容器につき、(a)は他方の筐体の平面図であり、(b)は(a)のB−Bに沿う断面図である。
【図3】図1、2に示す2つの筐体を向かい合わせに結合させて、その一部を容器の中央に沿う断面で示した、部分断面側面図である。
【図4】図1に示す吊り下げ式防虫剤容器につき、フックが筐体の長辺側に位置する姿勢を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である、吊り下げ式防虫剤用容器をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う吊り下げ式揮散剤用容器の一形態である、吊り下げ式防虫剤用容器につき、(a)は2つの筐体のうちの一方の筐体とフックとを、筐体の凹部にフックの摺動片を係合させた状態で示した平面図であり、(b)は(a)のA−Aに沿う断面図であり、図2は、図1に示す吊り下げ式防虫剤容器につき、(a)は他方の筐体の平面図であり、(b)は(a)のB−Bに沿う断面図であり、図3は、図1、2に示す2つの筐体を向かい合わせに結合させて、その一部を容器の中央に沿う断面で示した、部分断面側面図であり、図4は、図1に示す吊り下げ式防虫剤容器につき、フックが筐体の長辺側に位置する姿勢を示す平面図である。
【0015】
図1(a)において、1aは、容器本体1を構成する2つの筐体のうちの一方の筐体である。図示の例で筐体1aは矩形状となっている。ここで、図2(a)に示す他方の筐体は、図1(a)に示す一方の筐体1aと同一形状であり、図1(a)の筐体1aを上下逆さまにして配置したものである。
このように、容器本体1を2つの筐体1aを同一形状とし、向かい合わせに結合させる構成とすることにより、筐体の成形における成形金型を複数用意することがないので、生産効率を向上できると共に、製造コストを削減することができる。
【0016】
筐体1aは、基部1bを備えており、基部1bの全周を取り囲む周壁部1cによって凹部空間を形成している。筐体1aは、図1(b)に示すように、基部1bから凹部空間に向けて突出する大爪部1dを、筐体1aの短辺に沿う向きに対向させて設けるとともに、図2(b)に示すように、基部1bから内向きに突出する小爪部1eを、筐体1aの短辺に沿う向きに対向させて設け、図1(a)、図2(a)に示すように、1つの筐体1aに、大爪部1dと小爪部1eとを各一対ずつ設けたものである。これにより各筐体1aを向かい合わせにして組み合わせると、大爪部1dと小爪部1eとが係合して、図3に示す収納空間Sが形成され、この収納空間Sに、図1(a)にハッチングを付して示す揮散剤、ここに示す吊り下げ式防虫剤用容器の例では防虫シートPが収納される。なお揮散剤としては、他にも芳香剤や消臭剤等各種のものが適用可能であり、使用目体に応じ上記防虫シートPに代えて、これら芳香剤シートや消臭剤シート等を適用することができる。
【0017】
基部1bは、その表裏を貫通して収納空間Sと外界とを連通させた揮散孔1fを備えている。図示の例では矩形状の孔を6個設ける場合を示しているが、孔の形状や個数は、適宜変更することができる。また基部1bは、収納空間Sに向けて突出する先細りの支持部1gを備えていて(図示の例では6個)、防虫シートPを基部1bから隙間をあけて支持することができる。
【0018】
また周壁部1cの内側には、環状の内側壁部1hが形成されていて、周壁部1cと内側壁部1hとの相互間には、環状の凹部1iが形成されている。これにより、各筐体1aを向かい合わせにして凹部1iを相互に突き合わせると、図3に示すように断面方向での形状が「T」字状となる環状溝部Mが形成される。
【0019】
図1において、2は、容器本体1を例えば洋服ダンスやクローゼット等のバーに吊り下げるフックである。フック2は、バーの直径に対応する円弧の一部を切り欠いた形状となっている。またフック2は、容器本体1の環状溝部Mに抜け止め保持されてフック2を環状溝部Mに沿って移動することができるスライダー2aを備えている。図3に示すようにスライダー2aは、2つの筐体1aの相互間に位置しフック2を固定保持するベース2a(図示の例ではベース2aに直接フック2を形成している)と、ベース2aから環状溝部Mに向けて両外側に突設する摺動片2aとを備えていて、「T」字状の環状溝部Mにはまり込んでいる。これによりスライダー2aは、環状溝部Mに抜け止め不能、かつ、移動可能に保持されている。さらにスライダー2aに、環状溝部Mの外周側でベース2aから両外側に突設するガイドリブ2aを設ける場合は、スライダー2aの姿勢が安定するので、より摺動しやすくすることができる。
【0020】
また図示の例でフック2は、その外周部に沿う補強リブ2bを備えており、吊り下げ時にフック2に作用する力に対して強度を確保している。
【0021】
図1において、3は、揮散剤の残量(寿命)表示用のインジケータ、図示の例では防虫シートPの残量(寿命)表示用インジケータI(図1(a)にハッチングを付して示す)を収容するインジケータケースである。インジケータケース3は、フック2の背面部でベース2aと連結する基体3aと、基体3aとヒンジ3bを介して連結する蓋体3cとからなる。基体3a及び蓋体3cは、それぞれの基部3a、3cを取り囲んで立ち上がる環状の周壁部3a、3cによって、その内側に凹部空間を形成している。また周壁部3aの内側には、その外壁が周壁部3cの内壁に対応するサイズとなる環状のリブ3aが設けられている。これにより、蓋体3cをヒンジ3bに沿って折り曲げると、基体3a及び蓋体3cの内側にインジケータIを収容する内部空間が形成されるとともに、周壁部3cと環状リブ3aが嵌合して蓋体3cを閉姿勢に維持することができる。この場合、基部3a、3cのそれぞれから内部空間へ向けて突設するインジケータI用の支持リブを設ける場合には、インジケータIを、基体3aと蓋体3cとの合わせ面付近で安定して保持することができる。
【0022】
また基体3a及び蓋体3cは、基部3a、3cを表裏において貫通させた窓孔3a、3cを有していて、窓孔3a、3cを通してインジケータIの表示状況を確認することができる。
【0023】
上記のように構成される吊り下げ式防虫剤容器を組み立てるにあたっては、一方の筐体1a及びフック2を、図1(a)に示すように筐体1aの凹部1iにフック2の摺動片2aを係合させておき、さらに防虫シートPを筐体1aに載置した状態で、図2(a)に示す他方の筐体1aを、一方の筐体1aと向かい合わせにして突き合わせる。これにより、大爪部1dと小爪部1eとが係合して、防虫シートPを容器本体1に収納することができる。またインジケータIを基体3aに載置しておき、蓋体3cをヒンジ3bに沿って折り曲げることで、インジケータIをインジケータケース3に収容することができる。
【0024】
フック2は、摺動片2aが2つの筐体1aの凹部1iに係合しているので、環状溝部Mに沿って移動させることができる。このため本発明に従う容器は、図1〜3に示すように矩形状の容器の短辺側にフック2が配置される縦姿勢での吊り下げや、図4に示す、容器の長辺側にフック2が配置される横姿勢での吊り下げ、さらにはこれらの中間部にフック2が位置する任意の姿勢で容器を吊り下げ保持することができる。この場合、インジケータケース3は、隣接した吊り下げられる衣類等の上部に配置されることになり、しかも窓孔3a又は3cのいずれの窓孔からもインジケータIの表示状況を確認することができるので、防虫シートPの残量の確認が行いやすくなる。なお環状溝部M内に、溝幅を狭くする小突起を設ける場合は、小突起が突設する部位でフック2の移動を一時停止させることができるので、所期する姿勢での保持が容易となる。
【0025】
さらにフック2は、図3に示すように2つの筐体1aの合わせ面に形成される環状溝部Mに保持されて、容器本体1の幅内に収まるので、省スペース化を図ることができる。
【0026】
加えて、容器本体1を、ポリエチレンテレフタレートで構成する場合は、例えば防虫剤特有の臭いがなく、防虫効果の高いピレスロイドを含浸させた防虫シートPを使用する場合にも、ピレスロイドが吸収されにくいポリエチレンテレフタレートの作用によって、防虫効果を十分に発揮することができる。一方、フック2を、ポリプロピレン又はポリエチレンで構成する場合は、機械的強度に優れるポリプロピレン又はポリエチレンの作用により、フック2の強度を高めることができる。なお、ポリプロピレンやポリエチレンはヒンジ特性(繰り返し曲げに強い)にも優れているので、図示の例のように、フック2とインジケータケース3とを一体成型物とする場合は、インジケータケース3のヒンジ3bの機能を十分に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、衣類等とともにバーに吊り下げられた状態でも揮散剤の残量の確認が行いやすく、様々な使用状況に応じて姿勢を変位させることができる上、十分な強度も兼ね備える使い勝手に優れた揮散剤用容器を提供できる。
【符号の説明】
【0028】
1 容器本体
1a 筐体
1b 基部
1c 周壁部
1d 大爪部
1e 小爪部
1f 揮散孔
1g 支持部
1h 内側壁部
1i 凹部
2 フック
2a スライダー
2a ベース
2a 摺動片
2a ガイドリブ
2b 補強リブ
3 インジケータケース
3a 基体
3b ヒンジ
3c 蓋体
S 収納空間
P 防虫シート(揮散剤)
I インジケータ
M 環状溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの筐体を向かい合わせにしてその相互間に揮散剤の収納空間を形成する容器本体を有し、該容器本体をフックによって吊り下げる吊り下げ式揮散剤用容器であって、
前記容器本体の輪郭形状を形作る周壁部に、該周壁部に沿って伸延する環状溝部を設け、
前記フックに、該環状溝部に抜け止め保持され該フックを該環状溝部に沿って移動可能なスライダーと、前記揮散剤の残量表示用インジケータを収容するインジケータケースとを設けたことを特徴とする吊り下げ式揮散剤用容器。
【請求項2】
前記環状溝部は、それぞれの筐体の縁部に設けられた凹部を相互に突き合わせて形成されたものであり、
前記スライダーは、それぞれの筐体の相互間に位置し前記フックを固定保持するベースと、該ベースから前記環状溝部に向けて突設して該スライダーを抜け止め不能、かつ、移動可能に保持する摺動片とからなる請求項1に記載の吊り下げ式揮散剤用容器。
【請求項3】
前記容器本体を、ポリエチレンテレフタレートで構成し、前記フックを、ポリプロピレン又はポリエチレンで構成する請求項1又は2記載の吊り下げ式揮散剤用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158334(P2012−158334A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17055(P2011−17055)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】