説明

吊り具付きボトル

【課題】容易且つ低コストで製造できると共に内部の洗浄性に優れる吊り具付きボトルを提供すること。
【解決手段】有底略筒状体の一方端に輸液セット(4)への接続部(21)が設けられたボトル本体(2)と、接続部(21)が下向きとなるようにボトル本体(2)を吊す吊り具(3)とを備える吊り具付きボトル(1)において、吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に巻き付けることでボトル本体(2)に固定保持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊り具付きボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場で患者の体内に液体(体液、栄養分、血液または薬剤等の輸液)を投与する手段の一つに輸液セットがある。輸液セットは、液体導入針と点滴筒と気泡除去器とこれらの間に接続される液体移送チューブなどからなる。輸液セットにおける液体導入針は、一般には吊り具付きボトルの接続部に接続され、この吊り具付きボトルから上記液体の供給を受けるようになっている。吊り具付きボトルは、スタンドなどにおけるフックに吊り下げられて使用される。
【0003】
上記吊り具付きボトルは、例えば、略筒状体の一端が閉塞され且つ他端に輸液セットへの接続部が形成されたボトル本体と、接続部が下向きとなるようにボトル本体をフック等の吊材に吊す吊り具とを備える。以前より、このような吊り具付きボトルに関する特許・実用新案が多く出願されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、ボトルのプリフォームを射出成形するときに、その外底面にフック状や環状の吊り具を一体に射出成形し、その吊り具を付けたままプリフォームを延伸ブロー成形して吊り具付きボトルに仕上げる技術を開示している。
【0005】
特許文献2は、輸液ボトルの底部の凹部内に嵌合取着される基部と、ハンガーに引っ掛けるフック部と、このフック部を倒伏させた状態で基部に対して起立可能に接続するヒンジ部と、フック部を起立させた際にフック部の所定部と係合して当該フック部を起立状態に維持するロック部とを備える技術を開示している。
【特許文献1】特開2003−191318号公報
【特許文献2】特開平7−88152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によると、ボトル本体と吊り具とが一体成型されているため、吊り具の付け忘れや使用中の脱落が無くなるという点では優れるが、吊り具を一体に射出成形するための専用の装置及び工程が必要となり、製品となるボトルのコストアップを招く。また、吊り具は、ボトルの底部における凹み部分に形成されるため、ボトル内部(収液空間)の一部に角部や狭部が生じ、輸液充填前におけるボトル内部の洗浄性が良くない。
【0007】
特許文献2の記載の技術によると、フック部が輸液ボトルの底部から突出する虞がないので、製造ラインでフック部が引っ掛って、製造ラインが停止したり、輸液ボトルをテーブルに載置した際に安定性が悪くなったりする畏れがない点では優れるが、部品点数が多く且つ構造も複雑であることから、製品となるボトルのコストアップを招く。また、特許文献1に記載の技術と同様に、ボトルの底部における凹み部分に吊り具が形成されるため、ボトル内部の一部に角部や狭部が生じ、輸液充填前におけるボトル内部の洗浄性が良くない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、容易且つ低コストで製造できると共に内部の洗浄性に優れる吊り具付きボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の本発明により達成される。なお「特許請求の範囲」及びこの「課題を解決するための手段」の欄において各構成要素に付した括弧書きの符号は、後述する実
施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0010】
請求項1の発明は、有底略筒状体の一方端に輸液セット(4)への接続部(21)が設けられたボトル本体(2)と、接続部(21)が下向きとなるようにボトル本体(2)を吊す吊り具(3)とを備える吊り具付きボトル(1)において、吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に巻き付けることでボトル本体(2)に固定保持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によると、吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に巻き付けることでボトル本体(2)に固定保持されている。これら吊り具(3)及びボトル本体(2)は、従来と同様に、それぞれを製造する専用の装置や工程が必要であるものの、吊り具(3)とボトル本体(2)とを一体にしたプリフォームを射出成形する場合に比べると、極めて簡単な装置及び工程で済む。これにより、製品となる吊り具付きボトル(1)のコストアップを抑えることができる。
【0012】
また、吊り具(3)は、ボトル本体(2)の底部における凹み部分に設けるのでなく、ボトル本体(2)の胴部に巻き付けることで設ける。これにより、ボトル本体(2)及びその内部をシンプルな形状にすることができ、輸液充填前における洗浄の際に洗浄液を隈なく内部に行きわたらせることができると共に滞留も極めて少なく、洗浄性が良い。併せて不良品の発生率も減少する。また、部品点数が少なく且つ構造も簡単であることからも、コストアップを抑えることができる。また、複雑な形状でないボトル本体(2)を成型した後に、輸液充填の工程を経て、最後に吊り具(3)を装着することができるため、ボトル本体(2)専用の製造工場に製造依頼することなく医薬品製造工場でも製造が可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、ボトル本体(2)における胴部は括れ部(23)を有し、吊り具(3)はこの括れ部(23)に巻き付けられて固定保持されている。
【0014】
請求項2の発明によると、吊り具(3)は括れ部(23)に巻き付けられて固定保持されているので、吊り具(3)がボトル本体(2)の中心軸(J1)に平行な方向に位置ズレすることが防止される。また、医療現場での使用中に、ボトル本体(2)が落下することが防止される。
【0015】
請求項3の発明では、吊り具(3)は、ボトル本体(2)の胴部に巻き付けられた熱収縮性のシュリンクフィルム(30)を、加熱収縮させることによりボトル本体(2)の胴部に密着保持させて形成される。
【0016】
請求項3の発明によると、吊り具(3)の形成に熱収縮性のシュリンクフィルム(30)を利用することにより、吊り具(3)の形成に必要な専用の装置及び工程の簡易化を図ることができ、且つ吊り具付きボトル(1)の構造の簡略化を図ることができる。
【0017】
請求項4の発明では、吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に沿って傾倒可能に設けられる。
【0018】
請求項4の発明によると、吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に沿って傾倒可能である。例えば粘着テープ部材(34)等の保持手段を用いて、吊り部(32)の傾倒状態を保持することにより、複数本の吊り具付きボトル(1)を箱詰めする時の効率アップを図ることができる。その理由は、吊り具(3)の出っ張り部分が無くなるため、これが引っ掛って箱詰めや取出し作業の障害となる畏れがなくなるからである。また、医療現場における看護師の操作性向上にも寄与する。例えば、医療現場では、一般に看護師は、輸液の充填された複数の吊り具付きボトル(1)を、それぞれ台車に載せて病室に運搬する。看護師が、患者に対応する輸液の吊り具付きボトル(1)を台車から取り出す際に、吊り具(3)の傾倒状態が保持してあることにより、取出し作業の障害となる畏れがなくなる。請求項4の発明では、簡単な構造で出っ張り部分を無くすことができるため、製品となる吊り具付きボトル(1)のコストアップを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、容易且つ低コストで製造できると共に内部の洗浄性に優れる吊り具付きボトルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る吊り具付きボトル1の外観斜視図、図2はボトル本体2の正面と側面の2面図、図3はボトル本体2への吊り具3の装着手順を示す図、図4は吊り具付きボトル1の使用状態を示す図、図5は箱詰め時等における吊り具付きボトル1の状態を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る吊り具付きボトル1は、ボトル本体2と吊り具3とを備える。
【0022】
ボトル本体2は、有底の扁平円筒形状を成し、頭部に輸液セット4への接続部21を備える。また、ボトル本体2の中心軸J1方向に沿った底部22側の位置には、括れ部23を備える。括れ部23は、図2に示すように、ボトル本体2の中心軸J1方向に沿って所定幅Wを有し且つ外周面の全周に亘って所定深さDで凹む凹溝により形成される。このようなボトル本体2は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の合成樹脂の射出成形品であるプリフォーム、またはこれらの合成樹脂を溶融したパリスンをブロー成形することにより得られ、内部の残液が視認できるように無色透明体または無色半透明体とされる。また、内部の減液に伴いボトル本体2が潰れる、可撓性を有する。このような性質は、上記PE,PP以外の材質でも得ることができるが、少なくとも輸液中にその材質の構成成分が溶け出さないことが条件とされる。
【0023】
ボトル本体2の外周面には中心軸J1の方向に順次、残液量を示す数字m及びマークMが、金型成形などにより形成されている。これら数字m及びマークMは、吊り具付きボトル1を逆さにして吊り部32をフック51に吊したときに(図4参照)、ボトル本体2の内部に入っている液量を示す位置に形成されている。中心軸J1は鉛直軸J0に対して傾くので、その状態での残液量を予め測定しておき、その残液量に応じた数字としてある。隣合うマークM間の距離が中心軸J1の方向に沿って等間隔でないのは、内部の減液に伴いボトル本体2が潰れることによる容積変化を計算に入れているためである。なお、一つの数字mに対応するマークMの数を、そのときの液面LSに平行となる位置に複数形成してもよい。
【0024】
このように構成されたボトル本体2は、吊り具3を装着する前に、外部及び内部の洗浄がなされた後、目的に応じた輸液が充填される。
【0025】
吊り具3は、ボトル本体2の括れ部23に密着して巻き付けられた固定保持部31と、固定保持部31と一体的に形成された吊り部32とからなる。固定保持部31は、括れ部23の外径と同一内径の筒状フィルム体からなる。吊り部32は、括れ部23の短軸方向の一外方に伸びるように立設した有孔フィルム体であり、所定のフック付きスタンド5におけるフック51(図4参照)に吊すための吊り孔33を備える。なお、吊り部32を、括れ部23の短軸方向の一外方だけでなく、両外方に伸びるように設けて、2点で吊る形態とすることもできる。また、括れ部23の長軸方向の一外方または両外方に伸びるように設けてもよい。2点で吊る形態とする場合には、2つの吊り部32は、ボトル本体2の水平断面中心を対称中心とした2つの位置に設けることが好ましく、その位置は任意としてよい。
【0026】
このような吊り具3は、図3(A)に示すように、ポリスチレン等の熱収縮性プラスチックを材料とした帯状のシュリンクフィルム30により製作される。なお、シュリンクフィルム30は、ボトル本体2に密着する形態をとるため、これを通して内部の残液が視認できるように無色透明体とされることが好ましい。
【0027】
ボトル本体2への吊り具3の装着手順について説明する。まず、帯状のシュリンクフィルム30をボトル本体2の外径よりも若干大きめの略筒状に成型し、両端部における内側面領域30a同士を所定幅の重ねシロで重ね合わせる(図3(B)参照)。次いで、この重ねシロを熱溶着または接着剤などにより接着し、不要な重ねシロはカットし、その後、吊り孔33を穿孔する。この段階で、固定保持部31と吊り部32とが一体的に形成された略筒状の吊り具3が完成する(図3(C)参照)。次いで、この略筒状の吊り具3をボトル本体2における括れ部23に嵌挿する(図3(D)参照)。その際に、吊り部32が広面(つまり短軸方向に互いに対向する面のうちの一面)に直立するように嵌挿する。嵌挿後、略筒状の吊り具3にスチームまたは熱風などを吹き付けて熱収縮させることで括れ部23の外表面に密着保持させる(図3(E)参照)。
【0028】
輸液を充填した吊り具付きボトル1は、医療現場では図4に示すように、吊り具付きボトル1を逆さにして吊した状態、つまり底部22を上にした状態で吊り部32を所定のフック付きスタンド5におけるフック51に吊し、接続部21に輸液セット4を接続して使用される。吊り具付きボトル1内の輸液は、液体導入針41、液体移送チューブ45、点滴筒42及び気泡除去器43を介して、注入針44へ導かれる。
【0029】
本発明に係る吊り具付きボトル1によると、吊り具3は、吊り部32と固定保持部31とからなる。吊り部32と固定保持部31とは一体的に形成されている。固定保持部31は、ボトル本体2における胴部に巻き付けることでボトル本体2に固定保持される。これら吊り具3及びボトル本体2は、従来と同様に、それぞれを製造する専用の装置や工程が必要であるものの、吊り具3とボトル本体2とを一体にしたプリフォームを射出成形する場合に比べると、極めて簡単な装置及び工程で済む。これにより、製品となる吊り具付きボトル1のコストアップを抑えることができる。
【0030】
また、吊り具3は、ボトル本体2の底部における凹み部分に設けるのでなく、ボトル本体2の胴部に巻き付けることで設ける。これにより、ボトル本体2及びその内部をシンプルな形状にすることができ、輸液充填前における洗浄の際に洗浄液を隈なく内部に行きわたらせることができると共に滞留も極めて少なく、洗浄性が良い。併せて不良品の発生率も減少する。また、部品点数が少なく且つ構造も簡単であることからも、コストアップを抑えることができる。また、複雑な形状でないボトル本体2を成型した後に、輸液充填の工程を経て、最後に吊り具3を装着することができるため、ボトル本体2専用の製造工場に製造依頼することなく医薬品製造工場でも製造が可能となる。
【0031】
吊り具付きボトル1は、フック51に吊したときに、中心軸J1が鉛直線から傾いて保持されるが、その状態での残液量を予め測定しておき、その残液量に応じた数字m、マークMが形成されているため、残液量を知ることができる。
【0032】
複数本の吊り具付きボトル1を箱詰めする時には、図5に示すように、吊り部32がボトル本体2の胴部外周面に沿って傾倒するように吊り部32の付け根部分321を折り曲げ、吊り部32の端部を粘着テープ材34により固定保持部31に仮留めすることで、出っ張り部分を無くすことができる。これにより、吊り部32が引っ掛って箱詰めや取出し作業の障害となる畏れがなくなる。また、吊り部32の端部を上記のように仮留めすることは、医療現場における看護師の操作性向上にも寄与する。例えば、医療現場では、一般に看護師は、輸液の充填された複数の吊り具付きボトル1を、それぞれ底部22を下側にした状態で台車に載せて病室に運搬する。看護師が、患者に対応する輸液の吊り具付きボトル1を台車から取り出す際に、吊り部32の傾倒状態が保持してあることにより、取出し作業の障害となる畏れがなくなる。
【0033】
なお、括れ部23の外周面に、周方向に沿ったリング状溝を中心軸J1の方向に複数本形成したり、中心軸J1の方向に沿った棒状溝を周方向に複数本形成したり、複数の凹部を設けたディンプル加工を施したり、非平滑面加工したりすることで、括れ部23への吊り具3の固定保持性を高め、吊り具3の抜け落ちや位置ズレを皆無とすることができる。また、括れ部23における上下の径大部の各径は、互いに異なるようにしてもよい。或いは、底部22の側のみが径大となるように段差を付けるだけの形態としてもよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。即ち、吊り具付きボトル1の全体または一部の構造、形状、寸法、材質、個数などは、本発明の趣旨に沿って種々変更することができる。例えば、吊り具付きボトル1は、無色透明体または無色半透明体としたが、有色透明体としてもよい。また、ボトル本体2は、有底の扁平円筒形状としたが、有底の円筒形状や多角筒形状としてもよい。ボトル本体2への吊り具3の装着手法についても種々な形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る吊り具付きボトルの外観斜視図である。
【図2】ボトル本体の正面と側面の2面図である。
【図3】ボトル本体への吊り具の装着手順を示す図である。
【図4】吊り具付きボトルの使用状態を示す図である。
【図5】箱詰め時等における吊り具付きボトルの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 吊り具付きボトル
2 ボトル本体
3 吊り具
4 輸液セット
21 接続部
23 括れ部
30 シュリンクフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底略筒状体の一方端に輸液セット(4)への接続部(21)が設けられたボトル本体(2)と、接続部(21)が下向きとなるようにボトル本体(2)を吊す吊り具(3)とを備える吊り具付きボトル(1)において、
吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に巻き付けることでボトル本体(2)に固定保持されていることを特徴とする吊り具付きボトル。
【請求項2】
ボトル本体(2)における胴部は括れ部(23)を有し、吊り具(3)はこの括れ部(23)に巻き付けられて固定保持されている請求項1に記載の吊り具付きボトル。
【請求項3】
吊り具(3)は、ボトル本体(2)の胴部に巻き付けられた熱収縮性のシュリンクフィルム(30)を、加熱収縮させることによりボトル本体(2)の胴部に密着保持させた請求項1または請求項2に記載の吊り具付きボトル。
【請求項4】
吊り具(3)は、ボトル本体(2)における胴部に沿って傾倒可能に設けられた請求項1から請求項3のいずれかに記載の吊り具付きボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−285331(P2009−285331A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143318(P2008−143318)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】