説明

同一のN末端を有する塩基性繊維芽細胞増殖因子の高レベル発現

【課題】異なるN末端アミノ酸配列を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子のどの種も実質的に含んでいない、N末端にアミノ酸配列Ala−Gly−Ser−を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子を提供すること。
【解決手段】上記課題は、異なるN末端アミノ酸配列を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子のどの種も実質的に含んでいない、N末端にアミノ酸配列Ala−Gly−Ser−を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子およびその組成物を提供することにより達成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、増殖因子の組み換え生産の分野に関する。特に、本発明は、同一のN末端を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子の生産に関する。本発明は、同一のN末端を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子の高レベルな発現および回収の手段および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)は、毛細管内皮細胞を含む広範囲な細胞型において強力なマイトジェン活性を発現するタンパク質である。ウシの下垂体由来のbFGFの完全なアミノ酸配列が決定されている(Esch,F.ら、Proc Natl Acad Sci(USA)(1985)82:6507)。ヒトbFGFをコードするクローニングされたDNA配列は単離され、そのアミノ酸配列のヒトタンパク質の131−、146−および154−アミノ酸形態は決定されている(1987年3月26日にWO 87/01728として公開されているPCT出願 US86/01879、Abraham,J.ら、Science(1986)233:545、Abraham,J.ら、The EMBO Journal(1986)5:2523)。クローニングされたDNA配列を分析すると、可能な開始メチオニンコドンが、bFGFの154−アミノ酸形態のコーディング配列のすぐ上流側に存在することが示され、このことは、(i)この遺伝子からの一次翻訳産物の長さが155個の残基で、
(ii)154−アミノ酸形態が、開始メチオニンの翻訳後除去によって得られることを示している。次いで、Florkiewicz、R.およびSommer,A.(Proc Natl Acad Sci(USA)(1989)86:3978−3981)およびPrats,H.ら、(Proc Natl Acad Sci(USA)(1989)86:1836−1840)は、155−残基一次翻訳産物のメチオニン開始コドンの上流側に存在するロイシンコドンにおける、代替翻訳開始の結果として生産され得る、より長い形態のbFGFの存在を報告した。
【0003】
部分的には、毛細管内皮細胞における強力なマイトジェン活性のために、bFGFは、血管形成、すなわち新しい毛細血管を形成する工程を促進する。従って、bFGFは、創傷が適切に治癒する場合の、新しい毛細血管床の形成が必要であるときに、創傷治癒剤として非常に有用である。
【0004】
ヒトbFGFをコードする、単離されクローニングされたDNA配列を入手することによって、組み換えDNA技術を用いて、これらの配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞においてタンパク質を発現し、そのタンパク質を臨床的使用のために回収することが可能になった。N末端メチオニンをプロセシングし得る原核および真核宿主において、ヒトbFGFおよびウシの等価物の155−残基一次翻訳産物を発現させることにより、微小不均一性のN末端を有するタンパク質が生産されることが観察されている(例えば、Barr、Philip J.ら、J Biol Chem(1988)263(31):16471を参照のこと)。E.coliにおいてヒトbFGFの155−残基一次翻訳産物を発現させると、約70/30の比で、混合N末端配列Ala−Ala−Gly−Ser−Ile−/Ala−Gly−Ser−Ile−を有するタンパク質が回収されることを一貫して観察してきた。この微小不均一性は、分子の生物活性に影響を与えないようであるが、一般に、臨床用には、同一の物質、すなわち、分子間で実質的に同一のN末端配列を有するタンパク質を得ることが望まれると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、異なるN末端アミノ酸配列を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子のどの種も実質的に含んでいない、N末端にアミノ酸配列Ala−Gly−Ser−を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、N末端メチオニン残基が翻訳後欠失される宿主細胞内で、該N末端メチオニンの直後の2個のアラニン残基のうち少なくとも1個がない、哺乳類の塩基性繊維芽増殖因子の前駆体型の155アミノ酸をコードするDNA配列を発現する、工程;および該N末端メチオニン残基のない発現されたタンパク質を回収する、工程;を包含する、同一のN末端を有する塩基性繊維芽増殖因子を生産する方法が提供される。
【0007】
1つの実施態様では、上記発現されるDNAコーディング配列は、N末端メチオニン残基の直後にある2個のアラニン残基の1個が欠失されたヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子の前駆体型の155アミノ酸をコードする配列を含有する。
【0008】
好ましい実施態様では、上記発現されるDNAコーディング配列は、塩基7から9のアラニン(GCC)コドンを除いた図1のコーディング配列を含有する。
【0009】
別の好ましい実施態様では、上記発現されるDNAコーディング配列は、図2のコーディング配列である。
【0010】
別の実施態様では、上記塩基性繊維芽細胞増殖因子は、宿主細胞によって発現された全タンパク質の少なくとも10%のレベルで発現される。
【0011】
本発明によれば、同一N末端を有する塩基性繊維芽細胞増殖因子を発現するためのベクターであって、該N末端メチオニン残基の直後にある2個のアラニン残基の1個がない、哺乳類の塩基性繊維芽細胞増殖因子の前駆体型の155アミノ酸をコードするDNA配列を含有し、該DNA配列が、宿主細胞内でその発現を導き得る調節配列に作動可能に連結されている、ベクターが提供される。
【0012】
1つの実施態様では、上記塩基性繊維芽細胞増殖因子をコードするDNA配列は、N末端メチオニン残基の直後にある2個のアラニン残基の1個が欠失された、ヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子の前駆体型の155アミノ酸をコードする配列を含有する。
【0013】
好ましい実施態様では、上記増殖因子のアミノ酸配列をコードするDNA配列は、塩基7から9のアラニン(GCC)コドンを除いた図1のコーディング配列を含有する。
【0014】
別の好ましい実施態様では、上記増殖因子のアミノ酸配列をコードするDNA配列は、図2のコーディング配列を含有する。
【0015】
なお別の好ましい実施態様では、上記調節配列は、trpプロモーター−オペレーター配列を含有する。
【0016】
本発明によれば、上記のベクターで形質転換された、宿主細胞が提供される。
【0017】
1つの実施態様では、上記細胞はE.coli細胞である。
【0018】
好ましい実施態様では、上記宿主細胞はE.coliB細胞である。
【0019】
本発明によれば、N末端にアミノ酸配列Ala−Gly−Ser−を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子であって、異なるN末端アミノ酸配列を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子のどの種も実質的に含んでいない、ヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子が提供される。
【0020】
1つの実施態様では、上記のヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子は、図1のアミノ酸位3のAlaで始まる153アミノ酸配列を有する。
【0021】
(発明の要旨)
本発明は、実質的に同一のN末端を有するヒトbFGFの高レベルな発現の方法および手段を提供する。「実質的に同一」とは、Edman分解法による配列分析によって、bFGFが、95%、好ましくは98%より多くの、同一N末端を有する物質を含むことが示されることを意味する。本発明は、ヒトbFGFの155−アミノ酸一次翻訳産物のN末端メチオニン残基の直後にある2つのアラニン残基の1つをコードするコドンが欠失すると、N末端が同一のヒトbFGFタンパク質が発現および回収されるという発見に基づいている。特にN末端メチオニンの翻訳後プロセシングに次いで、同一なN末端配列Ala−Gly−Ser−を有する長さが153個のアミノ酸のヒトbFGFが生産される。さらに、以下の実施例3および5におけるE.coli発現ベクターを用いて、Alaが欠失した配列が発現すると、その発現レベルは、Alaを欠失していない対応のタンパク質配列の発現レベルよりもおよそ50%から100%高くなることが発見されている。
【0022】
従って、本発明により同一のN末端を有するヒトbFGFを生産する方法が提供され、該方法は、N末端メチオニンを翻訳後除去し得る宿主細胞において、N末端メチオニンの直後に存在する2つのアラニン残基のうちの1つの残基のコドンが欠失している、ヒトbFGFの155−アミノ酸形態のアミノ酸配列をコードするDNA配列を発現する工程と、そのタンパク質を回収する工程と、を包含する。また、同一のN末端を有するヒト塩基性FGFの高レベルな発現および回収のためのベクターが提供される。このベクターは、ヒトbFGFの155−アミノ酸形態をコードするDNA配列を含み、このDNA配列からは、N末端メチオニンの直後にある2つのアラニンのうちの1つのアラニンのコドンが欠失しており、該DNA配列は、宿主細胞においてその発現を方向づけ得る制御配列に、作動可能なように連結される。さらに、N末端配列Ala−Gly−Ser−を有するヒトbFGF配列の153個のアミノ酸を有する同一のタンパク質を含むヒトbFGF組成物が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、異なるN末端アミノ酸配列を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子のどの種も実質的に含んでいない、N末端にアミノ酸配列Ala−Gly−Ser−を有するヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒトbFGFの155−アミノ酸前駆体をコードし、N末端メチオニンのすぐ後ろの2つのアラニン残基のうち1つのアラニン残基のコドンを欠失しているDNA配列を使用する。以下では、ヒトbFGFをコードし改変された形を、一次翻訳産物がN末端配列Met−Ala−Gly−Ser−を有することを示すために「bFGF(MAGS)」と表す。このヒトbFGFおよびウシbFGFの155−残基形態のアミノ酸配列を、図1Aおよび図1Bにそれぞれ示す。図1Aおよび図1Bに示されるDNA配列は、ここに参考として援用されているPCT公報第WO 87/01728号に記載のように
決定された、天然のコーディング配列である。これらの配列のいずれかが、部位特異的変異誘発(Zoller,M.J.,およびSmith,M.,Nucleic Acids Res(1982)10:6487およびAdelman,J.P.ら.,DNA(1983)2:183)によって改変され得、N末端メチオニンのすぐ後のアラニン残基の1つを欠いたヒトbFGFの類似体をコードするDNAを生産する。周知のDNAコードの変性により、他のDNA配列がN末端アラニン残基の1つを欠く所望のヒトbFGF配列をコードする場合は、そのDNA配列が使用し得ることが理解される。好適な実施態様においては、アラニン残基を有しないヒトbFGFをコードするDNA配列が提供される。このような実施態様では、アラニン残基を欠くヒトbFGFをコードしているDNA配列が提供され、そこでは分子のN末端部をコードするDNAの実質的な部分が、天然のDNA配列と比較するとG+C含有量が減少しているように改変される。
【0025】
所望するならば、bFGF(MAGS)をコードするDNA配列全体は、重複する合成オリゴヌクレオチドを連結することによって合成的に生産され、このように連結されて所望のDNA配列全体を形成する。個々のオリゴヌクレオチドは、Edge,ら,Nature(1981)292:756およびDuckworth,ら,Nucleic Acids Res(1981)9:1691に記載のホスホトリエステル法またはBeaucage,S.L.およびCaruthers,M.H.,Tet Letts(1981)22:1859およびMatteucci,M.D.およびCaruthers,M.H.,J Am
Chem Soc(1981)103:3185に記載のホスホルアミダイト法によって調製し得、市販で入手可能な自動オリゴヌクレオチド合成機によっても調製し得る。このアプローチはかなりの長さの遺伝子全体を合成するために効果的に用いられている。
【0026】
好ましくは、bFGF(MAGS)をコードするDNA配列は、ヒトbFGFの155−アミノ酸前駆体全長をコードするDNA配列のN末端アラニンコドンの1つを取り除くための、部位特異的変異誘発によって生産される。部位特異的変異誘発は、上記Zoller,M.J.およびSmith,M.および上記Adelman,J.P.に開示されている工程を用いて行ない得る。変異誘発は、ヒトbFGFの155−アミノ酸形態をコードする一本鎖DNA(バクテリオファージM13の誘導体に含まれる)上で、限定された誤対合を除き所望する変異(即ち、ATG出発(メチオニン)コドンのすぐ後ろのアラニンコドンの1つを欠失)を示す一本鎖DNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して行なわれる。
【0027】
オリゴヌクレオチドプライマーの大きさは、変異が誘発される遺伝子領域ヘプライマーが安定してハイブリダイズする必要性および現在使用可能なオリゴヌクレオチド合成法の限界により決定される。オリゴヌクレオチド特異性の変異において用いられるオリゴヌクレオチドをデザインする際に考慮されるべき事柄(例えば、変異部位をはさむ部分の長さ、全体の長さ)は、Smith,MおよびGillam,S.によるGenetic Engineering:Principles and Methods,Plenum
Press(1981)3:1−32に記載されている。一般的に、オリゴヌクレオチドの全体の長さは、変異部位からの5’および3’伸長部がDNAポリメラーゼのエキソヌレアーゼ活性による変異の修正を回避するのに充分な長さであり、変異部位において、安定かつ固有のハイブリダイゼーションを最適に行えるものである。本発明にしたがって変異誘発に用いられるオリゴヌクレオチドは、通常、約18から約45の塩基を有し、好ましくは約23から約27の塩基を有する。それらは変化したまたは欠失したコドンの3’側に少なくとも約9個の塩基を有する。
【0028】
アラニン残基の1つのコドンを欠く合成ヌクレオチドプライマーは、155−アミノ酸bFGFをコードするDNA配列の鎖がクローニングされたM13、fd、またはφX1
74のような一本鎖ファージにハイブリダイズされる。ファージが遺伝子のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを有し得ることが好ましい。ファージがアンチセンス鎖を有する場合は、プライマーは、欠失するアラニンを指定するコドンの欠失を除いて、変異する領域のコーディング配列と同一である。ファージがセンス鎖を有する場合は、プライマーは、欠失するアラニン残基をコードするものと相補的であるトリプレットの欠失を除いて、変異する領域のコーディング配列と相補的である。
【0029】
ハイブリダイゼーションにおいて使用し得る条件は、上記Smith,MおよびGillam,S.によって記載されている。一般に、温度は、約0℃から70℃の間の範囲であり、さらに一般的には約10℃から50℃である。ハイブリダイゼーションの後、プライマーは、DNAポリメラーゼI(Klenowフラグメント)、T DNAポリメラーゼ、または他の適切なDNAポリメラーゼとの反応により、ファージDNA上で伸長される。得られたdsDNAは、TリガーゼのようなDNAリガーゼで閉環dsDNAに変換される。一本鎖領域を有するDNA分子は、S1エンドヌクレアーゼ処理により破壊し得る。あるいは、部分的二本鎖の調製物は、リガーゼまたはS1の処理を施さずに直接的に使用し得る。
【0030】
得られた全部または一部が二本鎖になったDNAは、ファージを保持する宿主バクテリア中に形質転換される。形質転換されたバクテリアの培養物は寒天表面にプレートされ、ファージを有する個々の細胞からのプラーク形成を可能にする。
【0031】
理論的には、新しいプラークの50%は、一本鎖に変異形を有するファージであり;50%はオリジナルの配列を有している。得られたプラークは、レプリカとしてニトロセルロースフィルターまたは他の支持膜の上へ載せられた後、洗浄され、変性され、その後キナーゼ処理した合成プライマーとハイブリダイズされる。洗浄は、正確なマッチの結合は起こるが、オリジナル鎖とのミスマッチが起きるのは防がれるのに充分な温度で実施される。その後、プローブとハイブリダイズするプラークは取り出され、培養され、そしてDNAが回収される。
【0032】
さらに、本発明の範囲内には、アミノ酸配列におけるさらなる変化がN末端Met−Ala−Gly−Ser−の下流で起こるアラニンを欠失したヒトbFGFの155−アミノ酸配列形態の生産が含まれる。ここに参考として援用されているPCT公報第WO89/00198号は、bFGFの多くの類似体を開示しており、これらの類似体は天然のbFGF配列のアミノ酸残基が分子特性において効果的な変化を起こすために他のアミノ酸で置換されている。特に、このPCT公報では、へパリン結合領域におけるアミノ酸残基が、155残基一次翻訳産物の128から138までの位置で、中性または陰性に荷電したアミノ酸残基によって置換されている類似対を開示している。さらに、1つ以上の天然のシステイン残基、好ましくは、155−残基一次翻訳産物の78から96位が、中性アミノ酸残基で置換されている類似体も開示されている。これらのアミノ酸置換物はいずれも、本発明のアラニン欠失物と共同させ得る。本発明の範囲から特別に除外されるのは、PCT WO89/00198に開示されているbFGFのN末端が短くなったものである。N末端がMet−Ala−Gly−Ser−であるその下流のアミノ酸配列の改変は、PCT WO 89/0198に開示されているDNAの部位特異的変異により行なわれ得、この変異は、アラニンコドンを欠失する変異の前または後のいずれかで行なわれ得る。
【0033】
ヒトbFGF(MAGS)に対応するヒト以外の哺乳類のbFGFもまた、本発明によって提供し得る。例えば、ウシbFGFの155−残基前駆体のアミノ酸配列は、ヒト前駆体タンパク質とアミノ酸が2つ異なる。即ち、ウシタンパク質は、121位にThrではなくSerを有しており、137位にSerではなくProを有している(155−ア
ミノ酸配列に基づくナンバーリングシステムによる)。このように、ヒトbFGF(MAGS)に対応するウシタンパク質をコードするDNA配列は、図2のDNA配列の変異によって調製し得、120番および136番のアミノ酸残基に対応するコドンを変える。これは、各コドンにおいて1個のヌクレオチドの変異により達成される。
【0034】
bFGF(MAGS)をコードするDNA配列を、適切な発現ベクターに挿入し、宿主細胞内のコーディング配列の発現を指示できる制御配列に作動可能なように結合する。「制御配列」とは、コーディング配列に適切に結合された場合に、その配列をそれが適合する宿主内において発現させる能力を有するDNA配列を示す。そのような制御配列は、少なくとも原核細胞および真核細胞の両方の宿主内のプロモーターを含み、そして任意にオペレーター配列、エンハンサーおよび転写終止シグナルを含む。特定の宿主において発現を行なう際に必要または有用なさらなる因子が使用し得る。「作動可能なように結合した」とは、成分が通常の機能を果たすように配置された並列形態を示す。このように、コーディング配列に作動可能なように結合した制御配列は、コーディング配列の発現を行なうことができる。当業者に周知のように、発現ベクターもまた、使用される宿主細胞内で機能する複製起点を有し得る。好ましくはベクターは、ベクターを有する宿主細胞の同定および選択を可能にする抗生物質耐性の遺伝子のような表現型マーカーも含有する。
【0035】
発現ベクターは、適切な宿主細胞を形質転換するために使用される。原核および真核の両方の宿主が使用し得る。原核細胞としては非常に頻繁に、E.coliの種々の株により代表される。しかし、他の微生物株も使用し得る。E.coliは、ヒトbFGFの155−残基前駆体形態のN末端メチオニン残基を翻訳後プロセシングする能力を有する。E.coliの有用な株としては、例えば、MC1061、DH1、RR1、C600hfl、K803、HB101、JA221、JM101、JM103、およびBを含み、E.coli Bが好ましい宿主である。プラスミドベクターとしては、複製領域、選択可能なマーカーおよび宿主に適合する種由来の制御配列を含むものが使用される;例えばE.coliは、典型的には2つのSalmonella種、およびBolivarら,Gene(1977)2:95による1つのE.coli株から得られたプラスミド部分を組み合わせて得られたプラスミドである、pBR322由来のベクターを用いて形質変換される。pBR322は、アンピシリンとテトラサイクリン耐性の遺伝子を有し、所望されるベクターを構築する際に維持または破壊し得る、複数の選択可能なマーカーを提供する。本明細書で定義される、リボソーム結合部位配列と共に、任意にオペレーターを有し、転写を開始するためのプロモーターを含む一般的に用いられる原核細胞の制御配列には、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーターシステム(Changら,Nature(1977)198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーターシステム(Goeddelら,Nucleic Acids Res(1980)8:4057)、N遺伝子リボソーム結合部位を有するラムダ由来のPプロモーター(Shimatakeら,Nature(1981)292:128)、およびtrp−lac(trc)プロモーターシステム(Amann,E.およびBrosius,J.,Gene(1985)40:183)のような一般的に使用されるプロモーターを含む。
【0036】
細菌に加えて、酵母またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような真核細胞もまた、宿主として使用し得る。当業者にとっては、種々の真核宿主との組み合わせに有用な制御配列、複製起点、マーカーなどは周知である。
【0037】
bFGF(MAGS)のコーディング配列を含む発現ベクターを、宿主細胞を形質転換するために使用する。使用する宿主細胞に依存して、その細胞に適切な標準的技術を用いて形質転換を行なう。Cohen,S.N.,Proc Natl Acad Sci(USA)(1972)69:2110に記載の塩化カルシウムを使用したカルシウム処理
またはManiatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)Cold Spring harbor Press,254ページおよびHanahan,D.,J Mol Biol(1983)166:557−580に記載のRbCl法が、原核細胞または実質的に細胞壁バリアを有する他の細胞に使用し得る。そのような細胞壁を持たない哺乳類の細胞には、Grahamおよびvan der Eb,Virology(1978)52:546のリン酸カルシウム沈澱法が使用し得、任意にWigler,M.ら、Cell(1979)16:777−785によって改変された方法が使用し得る。酵母への形質転換は、Beggs,J.D.,Nature(1978)275:104−109またはHinnen,A.,ら,Proc Natl Acad Sci(USA)(1978)75:1929の方法により実施し得る。
【0038】
bFGF(MAGS)発現ベクターを有する形質転換体は、ベクター構築の際組み込まれる特定の表現型マーカーに依存して、周知の技術によって同定し得る。即ち、アンピシリンのような抗生物質の存在下での成長によって同定する。制限酵素分析またはジデオキシ法による配列決定のような種々の周知技術は、正しいベクター構築を確認するために使用し得る。
【0039】
bFGF(MAGS)の発現は、特定のベクター構築と使用する宿主細胞に大きく依存し、当業者には容易に理解される条件下で行ない得る。ベクターが、trpプロモーターのような誘導プロモーターの制御下にbFGF(MAGS)のDNA配列を有する場合には、形質転換された宿主細胞を適切な成長媒体に植菌し、至適密度まで増殖するように使用し得;制御プロモーターからのbFGF(MAGS)の発現は、その後、適切なインデューサー(例えばtrpプロモーターの場合は、3−β−インドールアクリル酸)の付加によって誘導し得る。発現したbFGF(MAGS)は、天然源からのbFGFの精製技術で使用される周知の技術により回収し得る。好適な精製工程においては、発現したタンパク質を含む形質転換体を、機械的または化学的に溶解し、タンパク質を放出させる。DNaseおよびRNaseで処理した後に、反応物を遠心し、上清を市販で入手可能なヘパリン−セファロースカラム(Pharmacia,Inc.)上に負荷する。カラムを塩濃度が約1.0Mまたはそれ以下のNaCl緩衝液で洗浄した後、このbFGF(MAGS)は2.0M NaClカラムから溶出し得る。所望されれば、ヘパリン−セファロースクロマトグラフィー段階は、繰り返し得、あるいはS/P SephadexまたはMono S樹脂上でのイオン交換クロマトグラフィーのような他の周知のタンパク質精製段階と組み合わし得る。工業規模の生産においては、最終の形態中にわずかな量のヘパリンも含むことは好ましくないため、ヘパリン−セファロースクロマトグラフィーよりも銅キレートアフィニティクロマトグラフィーが好ましい。
【0040】
極めて驚くべきことに、bFGF(MAGS)がE.coli Bで発現するとき、その発現レベルは、同一の宿主ベクターシステムおよび同一の発現条件を用いた対応する野生型(突然変異していない)ヒトbFGFの発現よりも、50%から100%大きいオーダーであることが見い出された。特に、本発明の方法は、bFGF(MAGS)を、宿主細胞により発現させたタンパク質全体の少なくとも10%のレベルで発現させる。さらにN末端アミノ酸分析によると、E.coli BでのbFGF(MAGS)発現により、実質的に同一のN末端を有する最終タンパク質産物が得られることが示され、即ち、このタンパク質をEdman分解法でN末端分析すると、bFGFの95%以上、好ましくは98%以上が同一N末端を有することが示される。E.coliのような原核細胞宿主は、bFGFのATG出発コドンによりコードされたN末端メチオニン残基を除去できることが分かっている。従って、本発明の方法によって、N末端配列がAla−Gly−Ser−の153アミノ酸残基を有するbFGFが回収される。
【0041】
本発明により得られるbFGF(MAGS)は、N末端配列がAla−Ala−Gly−Ser−であるか、または混合N末端を有し、対応するbFGFと同一の有用性を有している。このbFGF(MAGS)は、創傷の治癒を促進するために有用である。精製bFGF(MAGS)は一般に、外傷を負った組織に血管新生および治癒を促すために、局所的に適用される。適切な基質としては、火傷、皮膚潰瘍、形成手術のような外科的剥離、または治療を要するその他の創傷部位がある。bFGF(MAGS)の適用は治癒を促すので、感染の危険性も減少させる。
【0042】
bFGF(MAGS)が新規の血管新生を促進する有用性がある適応症は、骨折、靱帯および腱の修復、腱炎、および滑液包炎などの筋骨格系の症状;火傷、切傷、裂傷、床ずれなどの皮膚症状、および糖尿病のような治癒の遅い潰瘍;および虚血および心筋梗塞下にある組織修復が含まれる。
【0043】
組み換え的に生産されたbFGF(MAGS)の、入手可能な賦形剤およびキャリアを用いた調合剤は、当業者に周知の標準的方法により調製される。このタンパク質は、外用水薬、ゲル、制御放出システムの一部、または所望されれば抗生物質のようなさらなる活性成分を含めた軟膏として調合し得る。
【0044】
表面的な部位に最適である局所用投与では、標準的な局所用調合剤は、例えば、患部表面1cmあたりに0.1−100μgのbFGF(MAGS)が使用される。そのような溶液は、患部へ1度のみかあるいは、2から4週間(または不十分な治療条件ではこれよりも長い期間)の間に1日2回まで投与する。調合剤中のbFGF(MAGS)および他の成分の濃度は、もちろん、創傷の種類と重篤度および患者の体質に依存する。投与量は、傷跡が残らないようにするために経時的に少なくし得る。例えば、3度の火傷のような最もひどい傷は、bFGF(MAGS)を100μg/cmの投与量で治療し得るが、治療開始後、投与量は傷が治るに従い次第に約0.1μg/cmまたはそれ以下にまで下げ得る。キャリアとしてBSAを使用するFGFの局所用調合剤は、Franklin,J.D.ら,Plastic and Reconstruc Surg(1979)64:766−770に開示されている。
【0045】
骨および深部軟組織(表面ではない)の修復には、投与は局所的であるが、注射または直接インプラントした患部の周辺にゆっくりとした放出形態で投与することが好ましい。骨の損傷のような症状では手術が必要になり得、従ってインプランテーションが直接的に適用となる。ゆっくりとした放出形態は、Hydron(Langer,R.,ら.,Nature(1976)263:797−799)またはElvax 40P(Dopont)(Murray,J.B.,ら,In Vitro(1983)19:743−747)のようにポリマー中に調合し得る。他の徐放システムは、Hsieh,D.S.T.,ら,J Pharm Sci(1983)72:17−22)によって提案され、および特に表皮増殖因子のための調合剤は、本発明では好ましくないが、Buckley,A.,ら,Proc Natl Acad Sci(USA)(1985)82:7340−7344によって提案されている。
【0046】
徐放送達の局所的投与では、調合剤中のbFGF(MAGS)の濃度は、症状の性質や重篤度およびポリマーからのbFGF(MAGS)の放出速度を含めた多くの要素に依存する。一般に調合は、Buckleyら(上記Proc Natl Acad Sci(USA))に記載のように、組織濃度の約10倍の一定な局所的濃度を有するように組み立てられる。組織でのbFGF濃度5−50ng/g湿重量に基づき(60ng/g湿重量であるEGFと比較し得る)、1時間当り50−5000ngのFGF放出が受容可能である。もちろん、初期濃度は傷の重篤度に依存する。
【0047】
bFGF(MAGS)は、表皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF−αまたはTGF−β)、インシュリン様増殖因子(IGF−1およびIGF−2)、イアミン(Gly−His−Lys トリペプチド)および/または血小板由来の増殖因子(PDGF)などの他の増殖因子と共同して、および相乗的に、作用し得ることが予測される。さらに、特に骨の修復には、上皮小体のホルモンが骨の再吸収を速めるので、上皮小体ホルモンの拮抗薬と共同して作用し得る。そのため、本発明のbFGF(MAGS)が、上記の1つ以上の因子と組み合わせた同一の組成物により、または同一のプロトコールで投与される実施例は、本発明の組成物および投与のプロトコールの範囲に含まれ、こうして所望される組織修復はさらに効果的に達成される。
【0048】
bFGF(MAGS)は、神経突起生長、神経再生、および神経生存を促進するのに効果的であるため、アルツハイマー病およびパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、および一般的な神経システムの老化、および脊髄および末梢神経の損傷のようなある種の神経学的疾患の治療に有用であり得る。
【0049】
これらの適応のための薬剤投与は、好ましくは上記創傷治療に関連して述べたものと同じ形態でインプラントにより行われる。この薬剤は、移植療法のような細胞培養物のインプラントによって、即ち、移植する前に培養物を本発明のbFGF(MAGS)調製物で処理するか、または組み換えDNA技術によって細胞をbFGF(MAGS)産生化することにより、送達し得る。さらに、bFGF(MAGS)は、脊髄液に直接注射し得、または全身的に適用し得る。全身用調合剤は、一般に従来技術で知られており、緩衝液または生理食塩水またはその他の適切な賦形剤中の形態を含む。全身用調合剤の投与レベルは、上記の局所用調合剤に使用した濃度と同じ局所的濃度で作用組織へ送達し得る。組織培養または外植片維持には、0.1−10ng/mlの血清または培養培地が使用し得る。
【0050】
bFGF(MAGS)は、手術中に受けた傷組織の再形成および修復を助けるために特に有用である。この使用のために、bFGF(MAGS)は、外科用留め金として使用されるポリマー中に含ませることが有用であり得る。こうしてこのタンパク質は、この留め金を用いて行われる機械的縫合を生物学的に補い、組織の修復において「自然な」治癒工程を促進し助けることができる。
【0051】
さらに、ここで議論されているbFGF(MAGS)により与えられるもののような脈管形成刺激(angiogenic stimuli)は組織プラスミノーゲン活性因子(tPA)の放出、およびインビトロでの内皮細胞からのコラゲナーゼ放出(Gross,J.L.ら,Proc Natl Acad Sci(USA)(1983)80:2623)を生じさせる。そのため、本発明のbFGF(MAGS)もまた、これらの酵素に反応する症状の治療に有用である。急性の症状(心筋梗塞や心臓発作を伴う血塊の存在など)においては、血塊を溶かすためにtPAを多量に直接投与することが必要であり得るが、塞栓を形成する慢性的傾向の治療においては、血中に適切なレベルのtPAを保つためのbFGF(MAGS)投与が所望され得る。そのため、この適応には、筋肉内または皮下注射のような従来の方法を用いる薬剤の全身的投与が好ましい。
【0052】
以下の実施例は、本発明の実施をさらに示すことを意図するものであって、本発明の範囲をどのような点においても制限することを意図するものではない。出発物質として使用するウシbFGFをコードするcDNAは、初めにウシゲノムライブラリーをスクリーニングし、重要なプローブを得ることによって得られ、その後PCT公報 WO 87/01728に詳述されている別のDNAを回収する。しかし、この重要なプローブの配列、およびウシおよびヒトbFGFのコーディング領域の配列は周知であり、インビトロで化学的に構築し得るので、この工程を繰り返す必要はない。さらに、ヒトおよびウシbFGFの配列を有するバクテリオファージは、American Type Culture
Collectionに寄託されている。従って、下記の実施例において出発物質として使用されるbFGFのDNA配列は、種々の起源のものから入手可能である。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
(pTrp−233細菌発現プラスミドの構築)
A.合成トリプトファンオペロンプロモーターおよびオペレーター調節配列の構築
図3Aに示す10個のオリゴデオキシヌクレオチドを、ホスホトリエステル法によって合成し、精製した。1および10以外のオリゴデオキシヌクレオチド各々500ピコモルを、37℃で30分間、60 mM Tris−HCl、pH8、15mM DTT、10mM MgCl、[γ−32p]−ATP20μCiおよびポリヌクレオチドキナーゼ(P/L Biochemicals)20ユニットを含有する溶液20μl中で別々にリン酸化した。続いて、60 mM Tris−HCl、pH8、15 mM DTT、10 mM MgCl、1.5mM ATPおよび別のポリヌクレオチドキナーゼ20ユニットを含有する溶液10μlを添加し、その後、37℃で30分間、インキュベートした。インキュベートした後、試料を100℃で5分間、インキュベートした。オリゴデオキシヌクレオチド1および10の500ピコモルを、上記緩衝液からATPを除いた溶液30μl中で希釈した。
【0054】
二本鎖対を構築するオリゴデオキシヌクレオチド(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド1および2、3および4等、図3A)各々16.7ピコモルを混合し、90℃で2分間、インキュベートし、その後、ゆっくりと室温まで冷却した。その後、構築に、各々の対を他の二本鎖対と結合させ、フェノール/クロロホルムで抽出し、その後、エタノールで沈澱させた。得られたオリゴデオキシヌクレオチド対を、5 mM Tris−HCl、pH8、10 mM MgCl、20 mM DTTを含有する溶液30 μl中で再構築し、50℃で10分間熱した後、室温まで冷却し、その後、ATPを添加することにより、最終濃度0.5 mMを得た。T4 DNAリガーゼ800ユニットを添加し、得られた混合物を12.5℃で12−16時間インキュベートした。
【0055】
連結反応混合物をフェノール/クロロホルムを用いて抽出し、そのDNAをエタノールで沈澱させた。乾燥したDNAを、溶液30 μl中で再構築し、EcoRIおよびPstIを用いて37℃で1時間消化した。得られた混合物をフェノール/クロロホルムを用いて抽出し、エタノールで沈澱させた。その後、Laemmli,Nature(1970)227:680の方法に従って、8%ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動により、様々な二本鎖DNAセグメントを分離した。加湿ゲルオートラジオグラフィーによってDNA断片を視覚化し、長さで約100bpに相当するバンドを切出して、一晩溶出した。切出した合成DNA断片を、同様にEcoRIおよびPstIによって消化したプラスミドM13mp8またはM13mp9(Messing,J.およびVieira,J.,Gene(1982)19:269)に連結し、得られた物質をジデオキシヌクレオチド配列分析(Sanger,F.ら、Proc Natl Acad Sci(USA)(1977)74:5463)することにより、図3Aに示す設計配列を確認した。正しい配列を含有するM13誘導体をM13−trpと名付けた。M13−trp中の設計配列は、trpオペロンリーダーペプチドのリボソーム結合領域に加えて、プロモーター(−35および−10領域)およびトリプトファン(trp)オペロンのオペレーター領域を含有する(図3B)。図3Bに示す配列に類似の配列が、E.coli中における異種タンパク質の発現に有用であることが証明されている(Hallewell,R.A.、およびEmtage,S.,Gene(1980)9:27,Ikehara,M.ら、Proc Natl Acad Sci(USA)(1984)81:5956)。
【0056】
B.合成trpプロモーター/オペレーター含有プラスミド、pTrp−233の構築
プラスミドpKK233−2(図4A;Amann,E.およびBrosius,J.,前出)を、NdeIを用いて完全に消化し、その後、Maniatisら、Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratories(1982),p.394の方法により、E.coli DNAポリマラーゼI、クレノウ断片(Boehringer−Mannheim,Inc.)5ユニットを用いて、末端を満たし、50 μMにdATP,dCTP,dGTPおよびTTPを添加した。得られた物質を25℃で20分間インキュベートした。フェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈澱に続いて、NdeIで消化したDNAを再連結させてE.coliに形質転換した(Nakamura,K.ら、J Mol Appl Genet(1982)1:289)。得られた、NdeI部位を欠いたプラスミドをpKK233−2−Nde(図4B)と命名した。
【0057】
プラスミドpKK233−2−Nde 20ナノグラムをEcoRIおよびPstIを用いて完全に消化し、その後、Maniatisら、前出、pp.133−134に従って、仔ウシの腸ホスファターゼ処理(Boehringer−Mannheim)を実施した。EcoRIおよびPstIを用いて、このファージの複製型(二本鎖DNA型)を消化することにより、M13−trpから合成trpプロモーター/オペレーター配列50ナノグラムを得、EcoRI−PstIを用いて消化したpKK233−2−Nde10ナノグラムと混合した。上記のようにT4 DNAリガーゼと連結した後、得られた混合物をE.coli JA221 1pp/I’lacIに形質転換した。形質転換体をスクリーニングすることにより、100 bp EcoRI−PstI合成trpプロモーター/オペレーターを含有するプラスミドDNAの存在をスクリーニングした。その後、適切なプラスミドを単離してpTrp−233と命名した。図4Cに、4.4−kbプラスミドpTrp−233のプラスミドマップを示す。
【0058】
(実施例2)
(プラスミドpTsF11の構築)
A.ヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子をコードするcDNA配列の構築
参考のため援用されるPCT公報WO 87/01728;Abraham,J.A.ら,Science(1986),前出;およびAbraham,J.A.ら、The EMBO Journal(1986),前出に記載されているように、ハイブリダイゼーションプローブをつくるために、クローンλBB2中に含有されたウシ塩基性FGF cDNAを用いることにより、塩基性FGFクローンを、ヒトcDNAおよびゲノムライブラリーから単離した。
【0059】
ウシ塩基性FGFとヒト塩基性FGFとの間には、155残基前駆体型に2つの、アミノ酸の違いがある:121位において、ウシのタンパク質はSerを有し、ヒトのタンパク質はThrを有すること;および137位において、ウシのタンパク質はProを有し、ヒトのタンパク質はSerを有することである。これらの違いは各々の場合において、その部位におけるアミノ酸用のコドンにおける、ひとつのヌクレオチドの違いに相当する。それゆえ、以下に述べるように、ヒトのタンパク質をコードするために、部位特異性変異誘発によって、ウシのcDNAを便宜的に修正し得る。実際、部位特異性変異誘発技術の標準的なものを用いることにより、これらのコドンを変更した。EcoRIを用いてλ
BB2クローン(ATCC NO.40196)を消化し、bFGFタンパク質をコードする配列にわたる1.4kbの領域を、M13mp8のEcoRI部位に連結した。そして、正しい方向に挿入物を有するファージを回収した。3個のオリゴヌクレオチド:「万能」プライマーである17−mer;コドン121においてコーディング配列を変更する変異誘発性の16−mer 5’−GAAATACACCAGTTGG−3’(配列番号11);コドン137において配列を変更する変異誘発性の17−mer 5’−ACTTGGATCCAAAACAG−3’(配列番号12)の存在下で1回目のインビトロ
変異誘発を実行した。その後、得られた、変異誘発されたファージを、プライマーで方向づけられた、2回目のインビトロ変異誘発にかけることにより、変異誘発性25−mer,5’TTTTACATGAAGCTTTATATTTCAG−3’(配列番号13)を用いて翻訳終止コドンから下流にHindIII部位34 bpを作成した。
【0060】
得られた、変異したDNAをジデオキシヌクレオチド配列分析(Sangerら、前出)によって配列分析することにより、所望の変異が起こったことを確認した。変異したM13ファージDNAの複製型からのHindIIIを用いて、FGFコーディング領域にわたる約640 bpの断片を切出し、HindIIIで消化したpUC13(Messing,J.,Methods Enzymol(1983)101:20)に連結することにより、中間プラスミドpJJ15−1を得た。
【0061】
B. N末端のための合成コーディング領域を有するヒトbFGF cDNAの構築
pJJ15−1中に含有されるコーディング領域の5’末端(最初の125bp)のG+C含有量を低下させるために、連続する配列の上にリストアップされている合成オリゴヌクレオチドを用いて、下に示されている配列を有する合成DNA断片を構築した。オリゴヌクレオチドを対にアニーリングし、その対を順に連結し、HindIIIで切断されたM13mp9に連結した。M13mp9にクローニングした合成135bp挿入物の配列を、ジデオキシ配列分析により確認した。合成断片を有するM13mp9ファージの複製型を、HindIIIを用いて消化し、135bp断片を単離した。この断片を、HindIIIで切断されたpUC9に連結した。その後、得られたプラスミドをNdeIおよびHhaIを用いて消化し、合成挿入物の126bpサブ断片を単離した。この126bpのNdeIからHhaIのサブ断片を、JJ15−1からの377bpのHhaIからHindIIIのDNA断片に結合した。上記377bpのHhaIからHindIIIのDNA断片は塩基性FGFコーディング配列のほぼ4分の3にわたり、この部分は、カルボキシ末端である。その後、得られた物質を、発現ベクターpTrp−233のNdeIおよびHindIII部位に連結することにより、プラスミドpTsF11(図5A,5B)を得た。
【0062】
【化1】

【0063】
(実施例3)
(bFGFのためのpTsF−9Δβgal発現ベクターの生成)
trpプロモーター/オペレーターの制御下でbFGFを発現させるためのコピー数の多い発現ベクターを、以下の方法で調製した。この方法を図5に示す。E.coli中で機能する複製起点(ori)、アンピシリン耐性遺伝子、lacプロモーター/オペレーター、およびポリリンカー領域を含有するプラスミドpUC9(図5D;Vieira,J.およびMessing,J.,Gene(1982)19:259)を、PvuI(New England Biolabs)およびEcoRI(New England
Biolabs)を用いて、製造会社の指示に従って、3.25時間消化した。
【0064】
同時に、上記のようにPvuIおよびEcoRIを用いて、pTsF11DNA(図5B)をインキュベートした。2つの制限酵素を用いた消化によって生成したpUC9およびpTsF11断片を、T4 DNAリガーゼの存在下で連結した。連結反応を、E.coli Bに形質転換した。形質転換体のアンピシリン耐性コロニーからのプラスミドDNAを、プラスミドサイズおよび制限分析によって分析することにより、プラスミドを単離した。このプラスミドにおいて、pTsF11の適当な断片(trpプロモーター/オペレーター領域、bFGFコーディング領域、転写終止配列、およびAmp遺伝子の5’末端半分を含有する約1.5kbのPvuI−EcoRI断片)を、図5Eに示す方向で、pUC9の約1.7kbのPvuI−EcoRI断片(複製起点およびAmp遺伝子の3’末端半分を含有する)に連結した。このプラスミドをpTsF−9と命名した。
【0065】
製造会社の指示に従って、PvuIIおよびEcoRIを用いてpTsF−9
DNAをインキュベートした。デオキシヌクレオシドトリホスフェートおよびDNAポリメラーゼIのクレノウ断片とともにDNAをインキュベートすることにより、EcoRIの開裂部位における突出部を満たした。T4 DNAリガーゼの存在下での平滑末端の連結により、DNAを再び円形にした。E.coli
Bをアンピシリン耐性に形質転換するために、連結反応を用いた。単一のコロニー形質転換体からのプラスミドDNAを、プラスミドサイズおよび制限分析によって分析することにより、図5FにおいてpTsF−9Δβgalと示されているプラスミドを単離した。満たしたEcoRI部位およびPvuII部位の平滑末端連結の結果、pTsF−9Δβgal中のEcoRI部位を回復させた。プラスミドpTsF−9Δβgalは、trpプロモーター/オペレーターの制御下のbFGFコーディング配列、アンピシリン耐性遺伝子およびE.coli中で機能する複製起点を含有する。
【0066】
(実施例4)
(bFGF(MAGS)をコードするDNA配列の生成)
pTsF11(trpプロモーター/オペレーター領域およびヒトのbFGFの155残基前駆体型をコードするDNAを含有する)の約590 bpのEcoRI−HindIIIDNA断片を、M13mp9のEcoRI−HindIII部位に連結することにより、プラスミドFGFt7910を構築した。FGFt7910の一本鎖DNAが単離されると、ZollerおよびSmith,前出に記載されているように、インビトロ変異誘発を実行した。上記インビトロ変異誘発は、ATG開始コドンによってコードされるメチオニンの直後の2つのアラニンのうちの1つのためのコドンを欠いた、bFGFのN末端の一部位をコーディングする合成オリゴヌクレオチドを用いて行った。この変異誘発の結果、以下に示すアラニン用のコドンのうちの1つが除去された。
【0067】
【化2】

【0068】
一本鎖DNA1μgを、リン酸化した変異誘発性のオリゴヌクレオチド5’−pGTATCACATATGGCTGGTTCTATC−3’(配列番号26)5ナノグラムおよびM13万能配列プライマー(P.L.Biochemicalsから購入した17 mer)1ナノグラムと、55℃で5から15分間、10 mM Tris−HCl pH7.5および10 mM MgClを含有する溶液0.01ml中でハイブリダイズした。反応液を室温まで冷却し、その後、デオキシヌクレオシドトリホスフェートdATP、dGTP、dCTPおよびTTP各々0.12 mM、DNAポリメラーゼI(Boe
hringer Mannheim)のクレノウ断片5ユニット、およびT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)20ユニットを含有する溶液0.01 mlを添加し、15℃で4−6時間インキュベートした。その後、反応液の一部(0.002 ml)を、競合するE.coli JM101細菌に添加し、37℃でL寒天皿上で一晩培養した。得られたM13プラークのDNAを、2つのニトロセルロースフィルターの各々に移し、80℃で減圧下で2時間焼成し、その後、42℃で2時間、プレハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートした。プレハイブリダイゼーション溶液は、6×SSC(1×SSCは150
mM NaCl,15 mMクエン酸ナトリウム,pH7.0である),0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、2×デンハルツ(Denhardt’s)(0.04%フィコール、0.04%ポリビニルピロリドン、0.04%ウシ血清アルブミン)、および変性サケ精子のDNA0.4mg/mlを含有する。その後、[γ−32P]−ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識された5’末端であった変異誘発性オリゴヌクレオチドを含有する新に調製したプレハイブリダイゼーション溶液を用いて、42℃で3時間、フィルターをインキュベートした。その後、フィルターを、4×SSCを用いて室温で15分間洗浄し、65℃で15分間一回洗浄し、室温でTMACl溶液(3Mテトラメチルアンモニウムクロライド、50 mM Tris−HCl、pH8.0、2 mM
EDTA、0.1%SDS)中で一回洗浄し、65℃でTMACl溶液中で一回洗浄し、その後、得られたフィルターを、X線フィルムを室温で一晩露光するために用いた。その後、X線フィルム上の暗い複写が陽性であるクローンを元の皿から取り出した。DNAを単離して、その後、ジデオキシ配列分析法によって、変異した配列を検出するために分析した。変異したM13クローンの複製型DNAを調製し、EcoRIおよびHindIIIを用いて消化し、変異した塩基性FGFをコードするDNA断片を、アガローゼゲル電気泳動によって単離した。この断片中の、bFGFコーディング領域の配列を図2に示す。
【0069】
(実施例5)
(bFGF(MAGS)のための発現ベクターの構築)
図6に示す方法に従って、bFGF(MAGS)をコードするDNA断片の挿入に適した発現ベクターを調製した。上記のプラスミドpTrp−233(図5A、図6A)を製造会社の指示に従ってEcoRIおよびPvuIを用いて消化し、trpプロモーター/オペレーターを含有する断片を単離した。同時に、EcoRIおよびPvuIを用いて、pUC9を消化し、複製起点を有する断片を単離した。単離した断片をT4 DNAの存在下で連結することにより、trpプロモーター/オペレーターおよびpTrp−233と複製起点とからのポリリンカー領域、lacプロモーター/オペレーターおよびpUC9からのポリリンカーを含有するプラスミドであるpTrp−9を生成した(図6C)。EcoRIおよびPvuIIを用いてpTrp−9を消化し、上記のように、DNAポリメラーゼI、クレノウ断片およびデオキシヌクレオシドトリホスフフェートを用いてEcoRI末端を満たした。T4 DNAリガーゼの存在下で平滑末端を連結することにより、DNAを再び円形にした。E.coli Bをアンピシリン耐性に形質転換するために、連結反応を用いた。単一コロニー形質転換体からのプラスミドDNAを、プラスミドサイズおよび制限分析によって分析することにより、pTsF−9Δβgal−GM−2(図6D)と示されたプラスミドを単離した。
【0070】
プラスミドpTsF−9Δβgal−GM−2を、製造会社の指示に従ってEcoRIおよびHindIIIを用いてインキュベートし、アンピシリン耐性遺伝子および複製起点を含有する大きな断片をアガローゼゲル上で単離した。その後、bFGF(MAGS)コーディング配列およびtrpプロモーター/オペレーターを含有するEcoRI−HindIII断片(実施例4)をT4 DNAリガーゼの存在下で、pTsF−9Δβga
l−GM−2の、単離した断片に連結した。競合するE.coli W3110細胞を形質転換するために連結を用い、その後、E.coli W3110細胞を、アンピシリン100 μg/mlを添加したL寒天皿上で一晩増殖させた。コロニーを選択して、アンピシリン100 μg/mlを添加したL肉汁中で増殖させ、その後、プラスミドDNAを細菌から単離して制限消化によって分析することにより、所望の構築を確認した。得られたプラスミドはpTsF−9Δβgal(MAGS)と命名されているが、これは、bFGFコーディング配列に代えてbFGF(MAGS)コーディング配列を含有する以外は、pTsF−9Δβgalと同一である。
【0071】
(実施例6)
(bFGFおよびbFGF(MAGS)の発現)
pTsF−9ΔβgalおよびpTsF−9Δβgal(MAGS)のプラスミドを別々にE.coliのB細胞に形質転換した。単コロニーを用いて培養物をL+amp培地に植え付けた後、30℃で5時間増殖させた。次にこれらの培養物を用いて発現培養物(0.5%のカサミノ酸(casamino acid)、0.4%のグルコース、2μg/mlのチアミン、0.1mMのCaCl、0.8mMのMgSO、および50μg/mlのアンピシリンを含有するM9塩に1から100倍に希釈したもの)を接種した。50μg/mlの3−β−インドールアクリル酸を添加して、trpプロモーターを誘導して、培養物を一夜30℃で増殖した。14から18時間後に、A550を測定して、1単位吸光度の細胞ペレットを100μlのSDS含有ポリアクリルアミドゲル負荷用緩衝液に再懸濁して、煮沸した。得た10μlの上清を15%のアルクリアミド−SDSゲルに負荷して、電気泳動にかけた。ゲルをクーマシーブルーで染色した。図7は、レーン1に分子量マーカーを伴った染色したゲルの写真である。レーン2および3に、pTsF−9Δβgal形質転換細胞の2つの培養物から抽出したタンパク質を負荷した。レーン4および5に、pTsF−9Δβgal(MAGS)形質転換細胞の2つの培養物から抽出したタンパク質を負荷した。レーン6は、bFGF標準を含有する。レーン4および5のbFGF(MAGS)に対応するバンドは、レーン2および3のbFGFに対応するバンドより視覚的に暗い。
【0072】
レーン2から5の、様々な種類のタンパク質の相対濃度をスキャニング濃度計により測定した。図8Aから8Dはレーン2から5のそれぞれの濃度をプロットしたものである。bFGFまたはbFGF(MAGS)のピークは矢印で示されている。全細胞タンパク質に比例して発現するbFGFまたはbFGF(MAGS)の量は、濃度計によるプロットのカーブの下の面積に基づいて各培養物について計算される。pTsF−9Δβgalで形質転換された2つの培養物(図8A−8B)の平均発現レベルは、全細胞タンパク質の6.7%であり、一方、pTsF−9Δβgal(MAGS)で形質転換された2つの培養物(図8C−8D)の平均発現レベルは、全細胞タンパク質の10.8%であった。
【0073】
(実施例7)
(bFGF(MAGS)のN末端配列の決定)
実施例6と同様の手順により、pTsF−9Δβgal(MAGS)で形質転換されたE.coliB細胞をカサミノ酸および50μg/mlのアンピシリンを含有するM9培地2リットルで増殖した。培養物を光学濃度が0.58(550nmで測定)になるまで増殖し、50μg/mlの3−β−インドールアクリル酸で誘導し、その後振盪させながら一夜30℃でインキュベートした。培養物を遠心分離機にかけ、細胞ペレットを、20mMのTris−HCl、pH7.5、5mMのEDTA、1mMのフェニルメチルスルフォニルフルオライド、および0,5mg/mlのリゾチーム含有溶液30mlに再懸濁した。氷の上に30分置いた後、上清に超音波をあてて細胞を破砕した。RNアーゼおよびDNアーゼを各100μg添加した。氷の上に30分置いた後、混合物を遠心分離機にかけ、上清を精製のため取り除いた。
【0074】
上清を、20mMのリン酸ナトリウムpH7、5mMのEDTAで平衡化したSP−セファデックスのカラム(2.5cm×2cm)に供した。カラムを、280nmでの吸光度が基準レベルに戻るまで同じ緩衝液で洗浄した。タンパク質を20mMのリン酸ナトリウムpH7、5mMのEDTA、500mMのNaClでカラムから溶離させた。
SP−セファデックスカラムから500mMのNaClをぬいて、20mMのTris−HCL、pH7.5、5mMのEDTA、600mMのNaClで平衡化したヘパリン−セファロースのカラム(2.5cm×2cm)に負荷した。カラムを、280nmでの吸光度が基準レベルに戻るまで同じ緩衝液で洗浄した。タンパク質を20mMのTris−HCl、pH7.5、5mMのEDTA、2MのNaClで溶離させた。
このようにして得られたbFGF(MAGS)を自動ガス相シークエネーターを用いてエドマン分解法によりN末端アミノ酸配列を分析した。多量のタンパク質をシークエネーターに負荷すると、極少量の、すなわち1〜2%の、N末端配列Gly−Ser−を有するタンパク質が検出され、残りは、N末端配列Ala−Gly−Serを有するタンパク質であった。bFGFをpTsF−9Δβgalで形質転換されたE.coliB細胞を用いて、本質的に同様の方法で生産して精製すると、得られたタンパク質は約70%のAla−Ala−Gly−Ser−および30%のAla−Gly−Ser−を含有する混合N末端配列を示した。

(配列表)

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】図1Aは、ヒトbFGFコードする単離された天然のcDNA配列、ならびに155−残基一次翻訳産物の推定アミノ酸配列を示す(配列番号1および配列番号2)。
【図1B】図lBは、ウシbFGFコードする単離された天然のcDNA配列、ならびに155−残基一次翻訳産物の推定アミノ酸配列を示す(配列番号3および配列番号4)。
【図2】図2は、bFGFをコードするDNA配列を示す(配列番号5および配列番号6)。このDNA配列は、図1Bのウシ配列の5’末端の部分(図示されているHhaI部位から上流)を、天然のウシ配列と比較してG+Cの含有量が少ない合成DNA配列と置き換え、N末端メチオニンの直後にある2つのアラニン残基のうちの1つの残基のコドンを欠失させ、図1Bのコドン121および137を、それぞれACCおよびTCCに変換させ、cDNA配列が(i)N末端アラニンの1つを欠失しているヒトbFGFをコードし、(ii)その5’および3’末端を、それぞれNdeI部位およびHindIII部位ではさまれるように、翻訳終止コドンの3’側にHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位を形成することによって、生産された。
【図3】図3は、本発明のDNA配列の制御発現に使用されるtrpプロモーター/オペレーター配列(B)(配列番号9および配列番号10)を結合することにより形成した、一連の合成オリゴデオキシヌクレオチド(A)(配列番号7および配列番号8)を示す。
【図4】図4は、ヒトbFGFをコードするDNA配列が挿入されてpTsF11を形成する、pTrp−233の構築を示す。
【図5A】図5Aは、ヒトbFGFの発現ベクターである、pTsF−9Δβgalの調製を模式的に示す。
【図5B】図5Bは、図5Aの続きである。
【図6】図6は、bFGF(MAGS)コーディング配列の挿入に適した発現ベクターである、pTsF−9Δβgal−GM−2の調製を模式的に示す。
【図7】図7は、クーマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲルの写真である。このゲル上では、ヒトbFGFをコードするDNA配列で形質転換されたE.coliの発現産物が、ヒトbFGFのアラニン欠失形態をコードする本発明のDNA配列で形質転換されたE.coliの発現産物に沿って電気泳動された。
【図8A】図8A、8B、8Cおよび8Dは、図7のSDS−PAGEゲルのレーン2から5におけるそれぞれのタンパク質の一連の走査デンシトメトリーによるプロットである。
【図8B】図8A、8B、8Cおよび8Dは、図7のSDS−PAGEゲルのレーン2から5におけるそれぞれのタンパク質の一連の走査デンシトメトリーによるプロットである。
【図8C】図8A、8B、8Cおよび8Dは、図7のSDS−PAGEゲルのレーン2から5におけるそれぞれのタンパク質の一連の走査デンシトメトリーによるプロットである。
【図8D】図8A、8B、8Cおよび8Dは、図7のSDS−PAGEゲルのレーン2から5におけるそれぞれのタンパク質の一連の走査デンシトメトリーによるプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、繊維芽増殖因子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公開番号】特開2008−156361(P2008−156361A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6217(P2008−6217)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2007−216528(P2007−216528)の分割
【原出願日】平成3年3月28日(1991.3.28)
【出願人】(593215117)サイオス インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】