説明

同方向に回転駆動可能な2軸押出機用の駆動装置

【課題】同方向に回転駆動可能な2軸押出機用の駆動装置を提供する。
【解決手段】同方向に駆動可能な2軸押出機5用の駆動装置4は、差動重畳ギア駆動機構6と下流の動力分割ギア駆動機構7とを備える。2つの重畳ギア駆動機構入力軸8、10は、2つの異なる駆動モータ2、3を介して回転駆動可能である。駆動モータ2、3の駆動力は、差動重畳ギア駆動機構6を用いて重畳され、動力分割ギア駆動機構7を用いて2つの動力分割ギア駆動機構出力軸42、43に分配される。動力分割ギア駆動機構出力軸42、43により、2軸押出機5の2つのスクリュー軸52、53が回転駆動される。駆動装置4により、高い駆動力を伝達し、スクリュー軸52、53の速度を広い速度範囲にわたり適合させることが可能になる。差動重畳ギア駆動機構6により、低い径方向加速力が保証され、かかる径方向加速力は、アキシャルベアリングにより実質的に吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文(プリアンブル部分、所謂おいて部分)に記載の同方向に回転駆動可能な2軸押出機用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、15000kWよりも大きい動力を伝達するとともに押出機のスクリュー軸の速度を広範囲にわたり適合させることを可能にする2軸押出機用の駆動装置を開示している。このため、駆動装置は、主駆動モータおよび補助駆動モータにより回転駆動可能な2つの入力軸を有する遊星ギア駆動機構を備える。遊星ギア駆動機構は、2つの駆動モータの出力動力を重畳させる役割を果たす。遊星ギア駆動機構の下流に配置された動力分割ギア駆動機構が、駆動モータの重畳された合計動力を、押出機のスクリュー軸に接続された2つの出力軸に均一に分配する。この駆動装置を動作させる1つの可能性には、主駆動モータを定速で動作させるとともに、この速度を速度調整可能な補助駆動モータの速度に重畳させ、スクリュー軸の速度を補助駆動モータの速度を介して適合させる、というものがある。この駆動装置の不利益は、工業目的で要求されるスクリュー軸の速度がますます増加しつつあり、その結果、遊星ギア駆動機構に作用する径方向加速力が高まるので、ベアリングに対する負荷が増加する、という点である。この負荷の増加により駆動装置の寿命に負の影響が及ぼされるので、ベアリングの特殊な設計が要求され、次いでその結果、駆動装置の設計がより複雑なものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第19736549C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンパクトかつ高剛性な設計を保証しつつ比較的高いスクリュー軸速度を達成可能な汎用型の駆動装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特長を有する駆動装置により達成される。重畳ギア駆動機構は、遊星重畳ギア駆動機構ではなく差動重畳ギア駆動機構として設計されているため、遊星重畳ギア駆動機構の設計よりも高剛性かつコンパクトな設計となり、従って、この駆動装置により駆動される2軸押出機でより高いスクリュー軸速度を達成することが可能になる。独国特許発明第19736549C2号明細書から既知の駆動装置では、遊星ギアのラジアルベアリングが、遊星ギアが関連付けられたサンギア周りに回転することにより生じる高い加速力を受ける、ということが見出されている。遊星ギアに対応する差動重畳ギア駆動機構における傘歯車は90°回転されているので、加速力はそれらのアキシャルベアリングに作用し、従って、ラジアルベアリングに対する負荷が低減される。さらにその上、遊星ギアに対応する差動重畳ギア駆動機構の傘歯車は、サンギアに対応するより短距離にある傘歯車の回転軸心周りに回転し、その結果、遊星ギアに対応する傘歯車に作用するラジアル方向の加速力が低減され、それにより、遊星ギア駆動機構よりもコンパクトな設計を有する高剛性かつ低摩耗の差動重畳ギア駆動機構が達成される。
【0006】
請求項2に記載の駆動装置によれば、差動重畳ギア駆動機構の単純かつ高剛性な設計が保証される。少なくとも1つの重畳傘歯車は、既知の駆動装置における遊星ギアに対応する。
【0007】
請求項3に記載の駆動装置によれば、重畳ギア駆動機構入力軸の一方または重畳ギア駆動機構出力軸をそれぞれ差動ケージに単純かつ高剛性な方法で連結することが可能になる。平歯車は、高いトルクおよび/または速度の伝達を可能にするため、これは、ギアが平歯車であれば特に当てはまる。
【0008】
請求項4に記載の駆動装置によれば、重畳された動力がいくつかの重畳傘歯車に均一に分配され、その結果、それに対応して重畳傘歯車が受ける負荷がより低くなるため、差動重畳ギア駆動機構の剛性が増加する。
【0009】
請求項5または6に記載の駆動装置によれば、差動重畳ギア駆動機構に対する駆動モータまたは動力分割ギア駆動機構の柔軟な構成が提供される。
【0010】
請求項7に記載の駆動装置によれば、速度を増加または低下させることなく2つの駆動モータの入力動力を重畳させることが可能になる。
【0011】
請求項8に記載の駆動装置によれば、速度とトルクとの両方の目標とする調整が保証される。ギアが駆動モータの一方または重畳ギア駆動機構入力軸の一方に連結されていれば、調整ギア駆動機構は減速ギア駆動機構として作用し、それにより、差動ケージの速度はギアの速度よりも低くなる。ギアが重畳ギア駆動機構出力軸に連結されていれば、重畳ギア駆動機構出力軸の速度を要求に応じて増加または低下させることができる。
【0012】
請求項9に記載の駆動装置によれば、ギアに連結された駆動モータの速度を単純な方法で低下させることが可能になる。このため、調整ギア駆動機構は、関連付けられた駆動モータの比較的高い速度をスクリュー軸の所望される速度に適合させる減速ギア駆動機構として作用する。
【0013】
請求項10に記載の駆動装置によれば、重畳ギア駆動機構入力軸の一方を介して傘歯車の一方に連結された駆動モータの速度が減速される。これにより、駆動モータの比較的高い速度をスクリュー軸の所望される速度に適合させることが可能になる。さらにその上、動力伝達が高トルクかつ低速で行われるのであれば、差動重畳ギア駆動機構の負荷容量および寿命が増加する。減速ギア駆動機構を平歯車駆動機構として設計することにより、剛性がさらに増加する。
【0014】
請求項11に記載の駆動装置によれば、差動重畳ギア駆動機構と動力分割ギア駆動機構との間で速度を低下させることが可能になる。これにより、重畳ギア駆動機構出力軸における比較的高い速度をスクリュー軸の所望される速度に適合させることが可能になる。減速ギア駆動機構を平歯車駆動機構として設計することにより、剛性がさらに増加する。
【0015】
請求項12に記載の駆動装置によれば、動力分割ギア駆動機構の極めて単純な設計が提供される。さらにその上、1以外のギア比および減速ギア比が考えられるため、動力分割ギア駆動機構により速度とトルクとの両方の調整が可能になる。動力分割ギアは、好ましくは平歯車であり、それにより、動力分割ギア駆動機構の高い剛性が保証される。
【0016】
請求項13に記載の駆動装置によれば、動力分割ギア駆動機構により減速が提供される。
【0017】
請求項14に記載の駆動装置によれば、動力分割ギア駆動機構のコンパクトな設計が保証される。
【0018】
本発明による駆動装置のため、請求項15に記載の2軸押出機装置は、特に2軸押出機を比較的高いスクリュー軸の速度で動作させるのであれば、高剛性かつコンパクトなものになる。
【0019】
本発明のさらなる特長、利点、および詳細は、いくつかの実施形態の以下の説明から明らかになろう。図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態による駆動装置を備える2軸押出機装置の概略図である。
【図2】図1の駆動装置の差動重畳ギア駆動機構の概略図である。
【図3】図1の駆動装置の動力分割ギア駆動機構の概略図である。
【図4】第2の実施形態による駆動装置の差動重畳ギア駆動機構の概略図である。
【図5】第3の実施形態による駆動装置の差動重畳ギア駆動機構の概略図である。
【図6】第4の実施形態による駆動装置の動力分割ギア駆動機構の概略図である。
【図7】減速ギア駆動機構が図1の駆動装置の上流に配置された、第5の実施形態による2軸押出機装置の概略図である。
【図8】減速ギア駆動機構が図1の差動重畳ギア駆動機構と動力分割ギア駆動機構との間に配置された、第6の実施形態による2軸押出機装置の概略図である。
【図9】第7の実施形態による駆動装置を備える2軸押出機装置の概略図である。
【図10】減速ギア駆動機構が図9の駆動装置の上流に配置された、第8の実施形態による2軸押出機装置の概略図である。
【図11】減速ギア駆動機構が図9の差動重畳ギア駆動機構と動力分割ギア駆動機構との間に配置された、第9の実施形態による2軸押出機装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施形態を以下で説明する。2軸押出機装置1は、主駆動モータ2と補助駆動モータ3とを備え、それらにより2軸押出機5が駆動装置4を介して同じ方向に回転駆動される。
【0022】
駆動装置4は、差動重畳ギア駆動機構6と下流の動力分割ギア駆動機構7とを備える。差動重畳ギア駆動機構6は、カップリング9を介して主駆動モータ2に連結された第1の重畳駆動機構入力軸8を備える。差動重畳ギア駆動機構6は、さらに、第2のカップリング11を介して補助駆動モータ3に連結された第2の重畳駆動機構入力軸10を備える。
【0023】
入力軸8は、ラジアルベアリング12を介してギア駆動機構ハウジング13に装着され、主駆動モータ2により第1の回転軸心14周りに回転駆動可能である。さらにその上、入力軸8は、ラジアルベアリング16により回転可能に装着されるように差動ケージ15を通過し、入力軸8の自由端は、第1の傘歯車17に接続されている。差動ケージ15は、第1の回転軸心14周りに回転可能である。
【0024】
入力軸10は、ラジアルベアリング18を介してギア駆動機構ハウジング13に装着されるとともに、平歯車として設計されたギア19に接続されている。ギア19は、差動ケージ15の周囲上に配置された歯付きシステム20を介して差動ケージ15と係合し、補助駆動モータ3により第1の回転軸心14に対して平行な第2の回転軸心21周りに回転駆動可能である。歯付きシステム20は、差動ケージ15の入力軸8に面する側に配置されている。ギア19および歯付きシステム20は、ギア比が1であるかまたはギア比もしくは減速ギア比がそれぞれ1以外であってもよい調整ギア駆動機構22を形成する。調整ギア駆動機構22により、第1の回転軸心14周りの差動ケージ15の速度が第2の回転軸心21周りのギア19の速度よりも低くなるように、速度が特に調整される。
【0025】
駆動モータ2および3の入力動力を重畳させるため、差動重畳ギア駆動機構6は、4つの重畳傘歯車23を備え、それらのうち2つだけを図2に示す。重畳傘歯車23は、回転角度90°の回転対称パターンで第1の回転軸心14周りに配置されるとともに、関連付けられた軸24に装着されている。重畳傘歯車23または関連付けられた軸24は、それぞれ、それぞれのラジアルベアリング25およびアキシャルベアリング26により、それぞれの第3の回転軸心27周りに回転可能に差動ケージ15の周囲に装着されている。第3の回転軸心27は、各々、第1の回転軸心14に対して垂直である。
【0026】
重畳傘歯車23は、第1の傘歯車17を、重畳ギア駆動機構出力軸29に接続された第2の傘歯車28に連結している。第2の傘歯車28は、第1の傘歯車17に対向して配置されるとともに第1の回転軸心14と同心であり、それにより、第2の傘歯車28と関連付けられた重畳ギア駆動機構出力軸29との両方が、第1の回転軸心14周りに回転駆動可能である。入力軸8に対応して、出力軸29は、ラジアルベアリング30および31を介して差動ケージ15およびギア駆動機構ハウジング13に回転可能に装着されている。
【0027】
差動重畳ギア駆動機構6は、第1の傘歯車17と第2の傘歯車28との間ならびに重畳傘歯車23と第2の傘歯車28との間の両方のギア比の絶対値が1である。これは、入力軸8の速度が出力軸29に1:1の比で伝達され、第1の回転軸心14周りの差動ケージ15の速度が出力軸29に1:1の比で伝達される、ということを意味する。
【0028】
出力軸29は、ラジアルベアリング33およびアキシャルベアリング34を介してギア駆動機構ハウジング35に第1の回転軸心14周りに回転可能に装着された動力分割ギア駆動機構入力軸32に接続されている。入力軸32は、出力軸29とワンピース構造で形成してもよい。
【0029】
入力軸32の自由端には、関連付けられた外歯システム37を有する平歯車の形態の第1の動力分割ギア36が配置されている。第1の動力分割ギア36は、関連付けられた外歯システム40、41を各々設けられた平歯車の形態の2つの第2の動力分割ギア38、39と係合している。第2の動力分割ギア38、39は、関連付けられた回転軸心44、45の周りに回転可能に装着された関連付けられた動力分割ギア駆動機構出力軸42、43に装着されている。回転軸心44、45は、第1の回転軸心14に対して平行である。出力軸42、43は、関連付けられたラジアルベアリング46、47およびアキシャルベアリング48、49を介してギア駆動機構ハウジング35に装着されている。
【0030】
動力分割ギア駆動機構出力軸42、43は、関連付けられた接続部50、51を介して2軸押出機5のスクリュー軸52、53に接続されている。
【0031】
差動重畳ギア駆動機構6は、主駆動モータ2および補助駆動モータ3の駆動力を重畳させる役割を果たす。2軸押出機装置1の1つの動作モードには、主駆動モータ2を定速で動作させるとともに、補助駆動モータ3を調整された速度で動作させる、というものがある。差動重畳ギア駆動機構6のギア比は1であるので、主駆動モータ2の速度およびトルクは、入力軸8から出力軸29に伝達されたときも変化しない。補助駆動モータ3の速度およびトルクは、調整ギア駆動機構22のギア比または減速ギア比に依存して入力軸10から出力軸29に伝達され、主駆動モータ2の速度およびトルクに重畳される。差動ケージ15の回転により、重畳傘歯車23は径方向加速力を受けるが、かかる径方向加速力は、アキシャルベアリング26により実質的に吸収される。重畳傘歯車23は遊星重畳ギア駆動機構の遊星ギアと比較して90°回転されているので、ラジアルベアリング25に対する負荷は遊星重畳ギア駆動機構と比較して低減される。さらにその上、第1の回転軸心14からの重畳傘歯車23の距離は、対応する回転軸心からの遊星重畳ギア駆動機構の遊星ギアの比較可能な距離よりも短く、その結果、アキシャルベアリング26により吸収される加速力は比較的小さい。これにより、遊星重畳ギア駆動機構と比較して、ベアリング25、26に対する負荷は実質的に同じである一方、出力軸29において達成される速度は高くなる。さらにその上、差動重畳ギア駆動機構6の設計は、遊星重畳ギア駆動機構の設計よりもコンパクトなものになる。
【0032】
重畳された入力動力は、入力軸32から第1の動力分割ギア36を介してそれぞれ第2の動力分割ギア38、39または関連付けられた出力軸42、43に均一に分配され、出力軸42、43を同じ方向に回転させる。動力分割ギア駆動機構7は、単純かつコンパクトな設計を有し、動力分割ギア36、38、および39により、出力軸42、43における、従ってスクリュー軸52、53におけるトルクおよび速度を、それぞれ所望されるギア比または減速ギア比に依存して適合させることが可能になる。
【0033】
図4を参照して、本発明の第2の実施形態を以下で説明する。第1の実施形態とは対照的に、歯付きシステム20aは、差動ケージ15aの入力軸8から離れた側に配置されている。これにより、駆動モータ2および3を、差動重畳ギア駆動機構6aまたは駆動装置4aのそれぞれ反対側に配置することが可能になる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、第1の実施形態を参照する。
【0034】
図5を参照して、本発明の第3の実施形態を以下で説明する。第2の実施形態とは対照的に、入力軸10は第2の傘歯車28に接続され、出力軸29はギア19に接続されている。一方では、これにより、駆動モータ2および3を、差動重畳ギア駆動機構6bまたは駆動装置4bのそれぞれ反対側に配置することが可能になる。入力軸8および10は、第1の回転軸心14周りに回転駆動可能である。出力軸29は、ギア19において配置され、第1の回転軸心14周りに回転する差動ケージ15bにより第2の回転軸心21周りに回転駆動される。従って、動力分割ギア駆動機構7は、差動重畳ギア駆動機構6bに対して回転軸心14および21の距離だけオフセットされる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0035】
図6を参照して、本発明の第4の実施形態を以下で説明する。前述の実施形態とは対照的に、第1の動力分割ギア36cは、内歯システム37cを有する中空ギアである。第2の動力分割ギア38、39は、それらの外歯システム40、41が内歯システム37cと係合した状態で中空ギア36cの内側に配置されている。これにより、駆動装置4cまたは動力分割ギア駆動機構7cそれぞれのよりコンパクトな設計が提供される。差動重畳ギア駆動機構6、6a、6bの設計に依存して、中空ギア36cは、回転軸心14または回転軸心21周りに回転駆動可能である。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0036】
図7を参照して、本発明の第5の実施形態を以下で説明する。第1の実施形態とは対照的に、平歯車駆動機構の形態の減速ギア駆動機構54が、主駆動モータ2と差動重畳ギア駆動機構6との間に配置されている。駆動装置4dの減速ギア駆動機構54は、カップリング9を介して主駆動モータ2に連結された駆動ギア55を備える。駆動ギア55は、入力軸8に接続された出力ギア56と係合している。減速ギア駆動機構54は、主駆動モータ2の速度を低下させ、その結果、スクリュー軸52、53の速度がはるかに低くなる。それに対応して、減速ギア駆動機構の形態の調整ギア駆動機構22は、補助駆動モータ3の速度を低下させる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0037】
図8を参照して、本発明の第6の実施形態を以下で説明する。第5の実施形態とは対照的に、駆動装置4eの減速ギア駆動機構54eは、差動重畳ギア駆動機構6と動力分割ギア駆動機構7との間に配置されている。このため、駆動ギア55は出力軸29に接続され、出力ギア56は入力軸32に接続されている。従って、出力軸29の速度と比較して、入力軸32の速度は減速ギア比により低下し、その結果、スクリュー軸52、53の速度が比較的低くなる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0038】
図9を参照して、本発明の第7の実施形態を以下で説明する。駆動装置4fの動力分割ギア駆動機構7fの設計は、独国特許発明第19736549C2号明細書に記載の動力分割ギア駆動機構に対応している。入力軸32fは、連続的なものであり、スクリュー軸52に接続された出力軸42fを同時に形成している。入力軸32fは、出力軸29とワンピース構造で形成してもよいし、出力軸29に接続された別の軸を形成してもよい。出力軸42fは、第1の回転軸心14周りに回転駆動可能である。動力分割ギア駆動機構7fは、差動重畳ギア駆動機構6に面する側で関連付けられたギア59、60に接続された2つの分岐軸57、58を備える。ギア59、60は、入力軸32fの差動重畳ギア駆動機構6に面する端部に配置された中心ギア61と係合している。分岐軸57、58は、関連付けられたラジアルベアリング62、63を介してギア駆動機構ハウジング35に回転可能に装着されている。2軸押出機5の1つに面する端部において、分岐軸57、58は、ギア66と係合しているギア64、65に接続され、かかるギア66は、動力分割ギア駆動機構出力軸43fに装着されている。出力軸43fは、ラジアルベアリング47およびアキシャルベアリング49を介してギア駆動機構ハウジング35に回転可能に装着されている。分岐軸57、58により、出力軸29または入力軸32fそれぞれにおいて重畳された駆動力が、出力軸42fおよび43fに均一に分配され、動力分割ギア駆動機構7fのギア比が1となる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0039】
図10を参照して、本発明の第8の実施形態を以下で説明する。第7の実施形態とは対照的に、第5の実施形態に対応する減速ギア駆動機構54gは、主駆動モータ2と差動重畳ギア駆動機構6との間に配置されている。従って、駆動装置4gにより、主駆動モータ2の速度を低下させることが可能になり、その結果、スクリュー軸52、53の速度が比較的低くなる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0040】
図11を参照して、本発明の第9の実施形態を以下で説明する。第7の実施形態とは対照的に、第6の実施形態に対応する減速ギア駆動機構54hは、差動重畳ギア駆動機構6と動力分割ギア駆動機構7hとの間に配置されている。駆動装置4hにより、入力軸32hまたは出力軸42h、43hそれぞれの速度を、減速ギア駆動機構54hの減速ギア比により低下させることが可能になる。本実施形態の動作原理に関するさらなる詳細については、前述の実施形態を参照する。
【0041】
原理的に、差動重畳ギア駆動機構6、6a、6b、動力分割ギア駆動機構7、7c、7f、7g、7h、および減速ギア駆動機構54、54e、54g、54hは、互いにランダムに組み合わせることができる。動力分割ギア駆動機構7、7c、調整ギア駆動機構22、および減速ギア駆動機構54、54e、54g、および54hそれぞれのギア比または減速ギア比は、要求に応じて選択することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 2軸押出機装置
2 主駆動モータ
3 補助駆動モータ
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h 駆動装置
5 2軸押出機
6、6a、6b 差動重畳ギア駆動機構
7、7c、7f、7h 動力分割ギア駆動機構
8 第1の重畳ギア駆動機構入力軸
9 カップリング
10 第2の重畳ギア駆動機構入力軸
11 第2のカップリング
12、16、18、25、30、31、33、46、47、62、63 ラジアルベアリング
13、35 ギア駆動機構ハウジング
14 第1の回転軸心
15、15a、15b 差動ケージ
17 第1の傘歯車
19、59、60、64、65、66 ギア
20、20a 歯付きシステム
21 第2の回転軸心
22 調整ギア駆動機構
23 重畳傘歯車
24 軸
26、34、48、49 アキシャルベアリング
27 第3の回転軸心
28 第2の傘歯車
29 重畳ギア駆動機構出力軸
32、32f、32h 動力分割ギア駆動機構入力軸
36、36c 第1の動力分割ギア
37、40、41 外歯システム
37c 内歯システム
38、39 第2の動力分割ギア
42、42f、42h、43、43h 動力分割ギア駆動機構出力軸
44、45 回転軸心
50、51 接続部
52、53 スクリュー軸
54、54e、54g、54h 減速ギア駆動機構
55 駆動ギア
56 出力ギア
57、58 分岐軸
61 中心ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの異なる駆動モータ(2、3)の駆動力を重畳させるための重畳ギア駆動機構(6;6a;6b)と、動力分割ギア駆動機構(7;7c;7f;7g;7h)とを備えて構成される、同じ方向に回転駆動可能な2軸押出機用の駆動装置であって、
前記重畳ギア駆動機構は、前記2つの異なる駆動モータ(2、3)により回転駆動可能な2つの重畳ギア駆動機構入力軸(8、10)と、重畳ギア駆動機構出力軸(29)とを備え、
前記動力分割ギア駆動機構(7;7c;7f;7g;7h)は、前記重畳ギア駆動機構出力軸(29)にて重畳された前記駆動力を分割するためのであり、2軸押出機(5)の2つのスクリュー軸(52、53)に連結可能な2つの動力分割ギア駆動機構出力軸(42、43;42f、43f;42g、43g;42h、43h)を備える、駆動装置において、
前記重畳ギア駆動機構(6;6a;6b)は、差動重畳ギア駆動機構であることを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
前記差動重畳ギア駆動機構(6;6a;6b)は、差動ケージ(15;15a;15b)と、第1の回転軸心(14)周りに回転可能に前記差動ケージ(15;15a;15b)に装着された第1の傘歯車(17)と、前記第1の傘歯車(17)に対向して配置されるとともに前記第1の回転軸心(14)周りに回転可能に前記差動ケージ(15;15a;15b)に装着された第2の傘歯車(28)と、少なくとも1つの重畳傘歯車(23)と、更なるギア(19)とを備えて構成され、
前記重畳傘歯車(23)は、前記第1の回転軸心(14)に対して垂直な第2の回転軸心(27)周りに回転可能に前記差動ケージ(15;15a;15b)に装着され、前記第1の傘歯車(17)を前記第2の傘歯車(28)と連結し、
前記更なるギア(19)は、前記差動ケージ(15;15a;15b)に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記更なるギア(19)は、前記差動ケージ(15;15a;15b)に配置された歯付きシステム(20;20a;20b)と係合し、特に平歯車であることを特徴とする、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記差動重畳ギア駆動機構(6;6a;6b)は、少なくとも2つの、特に少なくとも3つの、特に少なくとも4つの重畳傘歯車(23)を備えて構成され、これら重畳傘歯車は、それぞれの第2の回転軸心(27)周りに回転可能に前記差動ケージ(15;15a;15b)に装着され、回転対称パターンで前記第1の回転軸心(14)周りに配置されることを特徴とする、請求項2または3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1の傘歯車(17)と前記更なるギア(19)は、夫々、前記重畳ギア駆動機構入力軸(8、10)の一方に連結され、前記第2の傘歯車(28)は、前記重畳ギア駆動機構出力軸(29)に連結されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1と第2の傘歯車(17、28)は、夫々、前記重畳ギア駆動機構入力軸(8、10)の一方に連結され、前記更なるギア(19)は、前記重畳ギア駆動機構出力軸(29)に連結されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記差動重畳ギア駆動機構(6;6a;6b)は、前記第1の傘歯車(17)と前記第2の傘歯車(28)との間ならびに前記少なくとも1つの重畳傘歯車(23)と前記傘歯車(17、28)との間でギア比の絶対値が1であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記更なるギア(19)と前記歯付きシステム(20;20a;20b)は、ギア比が1とは異なる速度調整のための調整ギア駆動機構(22)を形成することを特徴とする、請求項3〜7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記更なるギア(19)は、前記重畳ギア駆動機構入力軸の一方(10)に連結され、前記差動ケージ(15;15a)の速度が前記更なるギア(19)の速度よりも低くなるように、前記調整ギア駆動機構(22)を用いて速度調整が行われることを特徴とする、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記重畳ギア駆動機構入力軸の一方(8)を介して前記第1の傘歯車(17)に連結され、前記駆動モータの一方(2)の速度を低下させるための少なくとも1つの減速ギア駆動機構(54;54g)であって、特に平歯車駆動機構である、減速ギア駆動機構(54;54g)を特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記差動重畳ギア駆動機構(6)と前記動力分割ギア駆動機構(7;7h)の間に配置された速度を低下させるための少なくとも1つの減速ギア駆動機構(54e;54h)であって、特に平歯車駆動機構である、減速ギア駆動機構(54e;54h)を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記動力分割ギア駆動機構(7;7c)は、第1の動力分割ギア(36;36c)を載置した動力分割ギア駆動機構入力軸(32)を備え、前記第1の動力分割ギア(36;36c)は、前記動力分割ギア駆動機構出力軸(42、43)に配置された2つの第2の動力分割ギア(38、39)に連結されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記第1の動力分割ギア(36)は、外歯システム(37)を有する平歯車であることを特徴とする、請求項12に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記第1の動力分割ギア(36c)は、内歯システム(37c)を有する中空ギアであることを特徴とする、請求項12に記載の駆動装置。
【請求項15】
2軸押出機装置であって:
− 請求項1〜14のいずれか一項に記載の駆動装置(4;4a〜4h)と;
− 前記駆動装置(4;4a〜4h)の第1の重畳ギア駆動機構入力軸(8)に連結された主駆動モータ(2)と;
− 前記駆動装置(4;4a〜4h)の第2の重畳ギア駆動機構入力軸(10)に連結された補助駆動モータ(3)と;
− 前記駆動装置(4;4a〜4h)の2つの動力分割ギア駆動機構出力軸(42、43;42f、43f;42g、43g;42h、43h)に連結されるとともに同じ方向に駆動可能なスクリュー軸(52、53)を有する2軸押出機(5)と;を備える、2軸押出機装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−987(P2012−987A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134086(P2011−134086)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(501164665)コペリオン ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】