説明

同期台車

【課題】本発明は、車両に対して希望する位置に同期台車を配置して、その同期台車をコンベヤと同期走行させられるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る同期台車20は、車両を載せて搬送するコンベヤ10と同期して走行可能に構成されており、部品箱29を載せるテーブル25を備える同期台車であって、コンベヤ10に吸着可能に構成された吸着部材31と、吸着部材31をコンベヤに対する吸着位置と、コンベヤから離れた格納位置間で移動可能に支持する吸着部材支持機構30と、部品箱29がテーブル25から離れることで、吸着部材31を格納位置から吸着位置まで移動させ、部品箱29がテーブル25に載せられることで、吸着部材31を吸着位置から格納位置まで移動させる吸着部材移動機構40,50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を載せて搬送するコンベヤと同期して走行可能に構成された同期台車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記同期台車に関連する技術が特許文献1に記載されている。
車両組立ラインでは、図8に示すように、スラットコンベヤ110上に車両Wを載せて搬送し、順次部品を組付けることが行なわれている。このときに、組付け作業の効率化の観点から前記コンベヤ110と同期して部品等を搬送する同期台車100を走行させることが行なわれている。
特許文献1に記載の技術では、同期台車100は、図8に示すように、コンベヤ110上の車両Wに対して水平に延びるアーム102を備えており、このアーム102を車両Wの車輪等に掛けることで、同期台車100をコンベヤ110と同期して走行させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アーム102をコンベヤ110上の車両Wの車輪等に掛けることで、同期台車100をコンベヤ110と共に走行させる方法では、車両Wに対する同期台車100の位置が決まってしまう。このため、例えば、車種毎に組付け作業場所が異なる場合には、同期台車100が作業場所から離れることがあり、具合が悪い。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両に対して希望する位置に同期台車を配置して、その同期台車をコンベヤと同期走行させられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両を載せて搬送するコンベヤと同期して走行可能に構成されており、部品箱を載せるテーブルを備える同期台車であって、前記コンベヤに吸着可能に構成された吸着部材と、前記吸着部材を前記コンベヤに対する吸着位置と、前記コンベヤから離れた格納位置間で移動可能に支持する吸着部材支持機構と、前記部品箱が前記テーブルから離れることで、前記吸着部材を前記格納位置から前記吸着位置まで移動させ、前記部品箱が前記テーブルに載せられることで、前記吸着部材を前記吸着位置から前記格納位置まで移動させる吸着部材移動機構とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、吸着部材移動機構は、部品箱がテーブルから離れることで、吸着部材を格納位置から吸着位置まで移動させることができる。即ち、作業者が部品箱を持つことで、その部品箱がテーブルから離れると、吸着部材が吸着位置まで移動してコンベヤに吸着され、同期台車がコンベヤに連結される。このように、同期台車をコンベヤ上の車両に連結する構成ではないため、車種に係わらず同期台車を車両に対して希望する位置に配置して、コンベヤに連結できるようになる。
そして、作業者が部品箱を持ってコンベヤ上の車両に乗り込んでいる間、同期台車はそのコンベヤと同期して走行するようになる。
また、吸着部材移動機構は、部品箱がテーブルに載せられることで、吸着部材を吸着位置から格納位置まで移動させることができる。即ち、作業者が作業後、部品箱をテーブル上に戻すことで、吸着部材が吸着位置から格納位置まで戻されて、同期台車とコンベヤとの連結が解除される。
【0008】
請求項2の発明によると、吸着部材移動機構は、途中位置が上下回動可能な状態で支点部に支持されており、一端が前記テーブルの開口から上方に突出可能に構成され、他端に操作部が設けられている天秤状部材と、その天秤状部材の操作部の昇降動作を前記吸着部材に伝達する伝達機構とを有しており、前記部品箱が前記テーブルから離れることで、前記天秤状部材の他端の前記操作部が下降して一端が前記テーブルの開口から上方に突出し、その操作部の下降動作が前記伝達機構を介して前記吸着部材を前記格納位置から前記吸着位置まで移動させ、前記部品箱が前記テーブルに載せられて、その部品箱の重量により前記天秤状部材の一端が押し下げられると、他端の前記操作部が上昇し、その操作部の上昇動作が前記伝達機構を介して前記吸着部材を前記吸着位置から前記格納位置まで移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、吸着部材移動機構は、部品箱の重量を利用して天秤状部材の操作部を昇降させ、その操作部の昇降動作により伝達機構を介して吸着部材を吸着位置と格納位置間で移動させる構成である。このため、同期台車とコンベヤとを連結、あるいは連結を解除する際に特別な駆動源が不要になる。
請求項3の発明によると、天秤状部材の他端に設けられた操作部は滑車であり、伝達機構は、ワイヤと、そのワイヤの一端を引き止める引き止め部材とを備えており、前記ワイヤの途中位置が前記滑車に掛けられて、そのワイヤの他端が前記吸着部材に連結されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明によると、天秤状部材と部品箱とが複数組設けられており、ワイヤの途中位置が各々の滑車に掛けられていることを特徴とする。
このため、同期台車が複数種類の車種に対応可能となる。
請求項5の発明によると、吸着部材は鉄に対するマグネットの吸着力を利用して、前記コンベヤに吸着される構成であることを特徴とする。
このため、吸着部材を低コストで製作できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、車両の位置に係わらず同期台車をコンベヤに連結し、そのコンベヤと同期して走行させられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る同期台車の全体斜視図である。
【図2】前記同期台車の吸着部材の格納位置を表す斜視図である。
【図3】前記同期台車の天秤状部材と伝達機構を表す模式正面図である。
【図4】前記同期台車の吸着部材の吸着位置を表す斜視図である。
【図5】コンベヤ上の車両と同期台車との位置関係の一例を表す側面図である。
【図6】同期台車の動作を表す模式正面図(A図)、同期台車の動作を表す模式側面図(B図)である。
【図7】同期台車の動作を表す模式正面図(A図、B図)、同期台車の動作を表す模式側面図(C図)である。
【図8】従来の同期台車の動作を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図7に基づいて本発明の実施形態1に係る同期台車について説明する。本実施形態に係る同期台車は、車両組立ラインにおいて車両を搬送するコンベヤと同期して走行可能な台車である。
なお、図中の前後左右及び上下は、コンベヤの前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車両組立ラインの概要について>
同期台車20について説明する前に、先ず、車両組立ラインの概要について簡単に説明する。
車両組立ラインは、図6(B)、図7(C)等に示すように、車両Wを載せて定速で搬送する鋼鉄製のスラットコンベヤ10(以下、コンベヤ10という)を備えている。そして、コンベヤ10を挟んで両側に一段高い状態で作業床12が設けられている。さらに、前記作業床12上には、コンベヤ10に沿って同期台車20が走行するためのレール14(図1等参照)が設置されている。
【0015】
<同期台車20の概要について>
同期台車20は、コンベヤ10と同期して走行する部品等の搬送台車であり、図1等に示すように、箱状に構成された台車フレーム22と、台車フレーム22の下面四隅に設けられた車輪23と、台車フレーム22の上面に水平に設けられたテーブル25とを備えている。
テーブル25には、幅方向(左右方向)における中央位置に前後に延びる角形の開口25hが形成されており、その開口25hが前側可動テーブル26と後側可動テーブル27とによって塞がれるようになっている。前側可動テーブル26は、その前側可動テーブル26の前端部がヒンジ機構26zによってテーブル25の前端部に連結されている。これにより、前側可動テーブル26は、テーブル25の開口25hを塞ぐ水平位置と、前記開口25hを開く傾斜位置(図1参照)との間で上下回動可能となる。後側可動テーブル27は、その後側可動テーブル27の後端部がヒンジ機構27zによってテーブル25の後端部に連結されている。これにより、後側可動テーブル27は、テーブル25の開口25hを塞ぐ水平位置と、前記開口25hを開く傾斜位置との間で上下回動可能となる。
そして、前側可動テーブル26上に第1部品箱28(図3参照)が載せられるようになっており、後側可動テーブル27上に第2部品箱29が載せられるようになっている。
【0016】
<吸着部材31及び吸着部材支持機構30について>
同期台車20の台車フレーム22の下部左側面中央には、同期台車20をコンベヤ10と連結し、あるいは連結を解除する際に使用される吸着部材31及び吸着部材支持機構30が設けられている。
吸着部材31は、図4等に示すように、角形をした板状のゴム磁石であり、例えば、フェライト磁石の粉末をゴムに混ぜて固めたものである。吸着部材31は、固定板32によって吸着部材支持機構30の回動アーム33の先端に固定されている。そして、コンベヤ10の上面に面接触した状態で、そのコンベヤ10の上面に吸着される。また、コンベヤ10の上面に対して直角方向に一定の力で引っ張られることにより、そのコンベヤ10の上面から剥がれるように構成されている。
【0017】
吸着部材支持機構30は、吸着部材31をコンベヤ10の上面に面接触する吸着位置と、コンベヤ10から離れた格納位置との間で移動できるように支持する機構である。吸着部材支持機構30は、図4に示すように、台車フレーム22に固定された一対の逆L字形アーム35,35を備えている。逆L字形アーム35は、台車フレーム22から左方向に突出する横棒部35yと、その横棒部35yの先端から下方に延びる縦棒部35xとから逆L字形に形成されている。そして、逆L字形アーム35の縦棒部35xの先端がコンベヤ10の上面とほぼ同じ高さ位置になるように、その縦棒部35xの長さ寸法が設定されている。一対の逆L字形アーム35は、前後方向に一定間隔で平行に配置されており、それらの逆L字形アーム35の先端位置(縦棒部35xの先端位置)に、前述の回動アーム33の基端部が挟まれた状態で上下回動可能な状態で連結されている。即ち、回動アーム33は、図4に示すように、一対の逆L字形アーム35の縦棒部35xに対して直角な水平位置まで回動することで、その回動アーム33の先端に固定された吸着部材31がコンベヤ10の上面に面接触するようになる。また、回動アーム33が水平位置から上方に回動することで、吸着部材31がコンベヤ10の上面から直角方向に離れるようになる。そして、回動アーム33が起立する位置まで上方に回動した状態で、その回動アーム33が一対の逆L字形アーム35の間に格納される(図2参照)。
即ち、回動アーム33が水平位置になる位置が本発明の吸着位置に相当し、回動アーム33が起立する位置が本発明の格納位置に相当する。
また、一対の逆L字形アーム35の縦棒部35x間には、図4に示すように、その上部位置に、後記するナイロンワイヤ51を下から受けるための回転自在なワイヤ受けローラ37が水平に支持されている。
【0018】
<吸着部材移動機構40について>
同期台車20は、吸着部材31を吸着位置と格納位置間で移動させる吸着部材移動機構40を有している。吸着部材移動機構40は、第1部品箱28、あるいは第2部品箱29がテーブル25から離れたり、載せられたりする動作を受けて、吸着部材31を格納位置と吸着位置間で移動させる機構である。吸着部材移動機構40は、二組の天秤状部材41,42と、それらの天秤状部材41,42の動きを吸着部材支持機構30の回動アーム33及び吸着部材31に伝達する伝達機構50とから構成されている。
第1天秤状部材41は、図3に示すように、前後方向に延びる棒状部材であり、その第1天秤状部材41の途中位置が台車フレーム22の天井部中央に設けられた支点部43によって上下回動可能な状態で支持されている。第1天秤状部材41の前端位置には開口25hを通して前側可動テーブル26を押し上げられるように構成された押圧ローラ41rが取付けられており、その第1天秤状部材41の後端位置に滑車41kが取付けられている。そして、第1天秤状部材41の押圧ローラ41rから支点部43までの距離が支点部43から滑車41kまでの距離よりも小さく設定されている。このため、前側可動テーブル26に第1部品箱28の重量が加わらなくなると(第1部品箱28が離れると)、第1天秤状部材41は自重で支点部43を中心に図3において右回動し、押圧ローラ41rが前側可動テーブル26を押し上げ、滑車41kが下限位置まで下降するようになる。
また、第1部品箱28が前側可動テーブル26に載せられると、第1部品箱28の重量で第1天秤状部材41の押圧ローラ41rが押し下げられ、第1天秤状部材41が支点部43を中心に左回動して滑車41kが上限位置まで上昇する。
【0019】
第2天秤状部材42は、同じく前後に延びる棒状部材であり、その第2天秤状部材42の途中位置が前記支点部43に上下回動可能な状態で支持されている。第2天秤状部材42の後端位置には開口25hを通して後側可動テーブル27を押し上げられるように構成された押圧ローラ42rが取付けられており、その第2天秤状部材42の前端位置に滑車42kが取付けられている。そして、第2天秤状部材42の押圧ローラ42rから支点部43までの距離が支点部43から滑車42kまでの距離よりも小さく設定されている。このため、後側可動テーブル27に第2部品箱29の重量が加わらなくなると、第2天秤状部材42は自重で支点部43を中心に図3において左回動し、押圧ローラ42rが後側可動テーブル27を押し上げ、滑車42kが下限位置まで下降するようになる。
また、第2部品箱29が後側可動テーブル27に載せられると、第2部品箱29の重量で第2天秤状部材42の押圧ローラ42rが押し下げられ、第2天秤状部材42が支点部43を中心に右回動して滑車42kが上限位置まで上昇する。
【0020】
伝達機構50は、二組の天秤状部材41,42の滑車41k,42kの昇降動作を回動アーム33等に伝達する機構であり、図3に示すように、引き止め金具51sと、ナイロンワイヤ51と、中央滑車53と、ワイヤガイド55等から構成されている。中央滑車53は、台車フレーム22の床部中央に設けられており、その中央滑車53の中心軸が左右方向に延びるように位置決めされた状態で軸受53aに支持されている。ナイロンワイヤ51は、そのナイロンワイヤ51の一端が引き止め金具51sによって台車フレーム22の床部前端に固定されている。そして、ナイロンワイヤ51の途中位置が第2天秤状部材42の滑車42kに上方から掛けられ、中央滑車53に下方から掛けられ、さらに、第1天秤状部材41の滑車41kに上方から掛けられている。そして、ナイロンワイヤ51の他端側がワイヤガイド55に通された後、図4に示すように、吸着部材支持機構30の逆L字形アーム35のワイヤ受けローラ37に掛けられ、さらに、そのナイロンワイヤ51の先端が引き止め金具51uによって回動アーム33の先端に固定されている。なお、ワイヤガイド55には、ナイロンワイヤ51が弛まないように長さ調整を行う長さ調整機構55c(図4参照)が設けられている。
【0021】
<同期台車20の動作について>
次に、図6、図7等に基づいて、同期台車20の動作について説明する。
図6に示すように、同期台車20の前側可動テーブル26上に第1部品箱28、後側可動テーブル27上に第2部品箱29が載せられている状態では、両天秤状部材41,42はそれぞれ第1部品箱28、第2部品箱29の重量を受けている。即ち、第1天秤状部材41の押圧ローラ41rが第1部品箱28の重量で押し下げられて、その第1天秤状部材41の滑車41kが上限位置まで上昇している。同様に、第2天秤状部材42の押圧ローラ42rが第2部品箱29の重量で押し下げられて、その第2天秤状部材42の滑車42kが上限位置まで上昇している。これにより、伝達機構50のナイロンワイヤ51が第1天秤状部材41の滑車41k、第2天秤状部材42の滑車42kによって引き上げられ、吸着部材支持機構30の回動アーム33がナイロンワイヤ51の引っ張り力で起立している。即ち、吸着部材31は格納位置に保持されて、同期台車20とコンベヤ10との連結が解除されている。
【0022】
次に、第1部品箱28に対応する車種の車両Wが搬送されて、その車両Wと同期台車20とが、例えば、図5に示す位置関係となったときに、作業者が、図7(A)に示すように、第1部品箱28を前側可動テーブル26上から取ると、第1部品箱28の重量が第1天秤状部材41の押圧ローラ41rに加わらなくなる。これにより、第1天秤状部材41は自重で支点部43を中心に右回動し、滑車41kが下限位置まで下降する。この結果、滑車41kが下降する分だけナイロンワイヤ51が緩み、そのナイロンワイヤ51の緩みにより吸着部材支持機構30の回動アーム33が自重で水平位置まで回動する。そして、回動アーム33の先端に固定されている吸着部材31がコンベヤ10の上面に吸着する。これにより、同期台車20とコンベヤ10とが連結され、同期台車20はコンベヤ10と同期して走行するようになる。したがって、作業者がコンベヤ10上の車両Wに乗り込んで作業している間、同期台車20は車両Wと共に移動するようになる。
【0023】
そして、作業が終了し、作業者が第1部品箱28を前側可動テーブル26上に戻すと、前述のように、第1天秤状部材41の押圧ローラ41rが第1部品箱28の重量で押し下げられて、その第1天秤状部材41の滑車41kが上限位置まで上昇する。これにより、伝達機構50のナイロンワイヤ51が第1天秤状部材41の滑車41kによって引き上げられ、吸着部材支持機構30の回動アーム33がナイロンワイヤ51によって引っ張られる。即ち、コンベヤ10の上面に対して吸着部材31が直角方向に引っ張られて、そのコンベヤ10の上面から剥がされる。そして、吸着部材31と回動アーム33とが格納位置に保持される。これにより、同期台車20とコンベヤ10との連結が解除される。
ここで、第2部品箱29に対応する車種の車両Wが搬送されて、作業者が、図7(B)に示すように、第2部品箱29を後側可動テーブル27上から取った場合にも、第2天秤状部材42が動作して上記したように同期台車20とコンベヤ10とが連結される。そして、第2部品箱29が後側可動テーブル27上に戻された状態で、同期台車20とコンベヤ10との連結が解除される。
【0024】
<本実施形態に係る同期台車20の長所について>
本実施形態に係る同期台車20によると、吸着部材移動機構40は、部品箱28,29がテーブル25から離れることで、吸着部材31を格納位置から吸着位置まで移動させることができる。即ち、作業者が部品箱28,29を持つことで、その部品箱28,29がテーブル25から離れると、吸着部材31が吸着位置まで移動してコンベヤ10に吸着され、同期台車20がコンベヤ10に連結される。このように、同期台車20をコンベヤ10上の車両Wに連結する構成ではないため、車種に係わらず同期台車20を車両Wに対して希望する位置に配置して、コンベヤ10に連結できるようになる。
そして、作業者が部品箱28,29を持ってコンベヤ10上の車両Wに乗り込んでいる間、同期台車20はそのコンベヤ10と同期して走行するようになる。
また、吸着部材移動機構40は、部品箱28,29がテーブル25に載せられることで、吸着部材31を吸着位置から格納位置まで移動させることができる。即ち、作業者が作業後、部品箱28,29をテーブル25上に戻すことで、吸着部材31が吸着位置から格納位置まで戻されて、同期台車20とコンベヤ10との連結が解除される。
【0025】
また、吸着部材移動機構40は、部品箱28,29の重量を利用して天秤状部材41,42を動作させ、滑車41k,42kを昇降させてナイロンワイヤ51を引っ張ったり、緩めたりすることで、吸着部材31を吸着位置と格納位置間で移動させる構成である。このため、同期台車20とコンベヤ10とを連結、あるいは連結を解除する際に特別な駆動源が不要になる。
また、吸着部材31は鉄に対するマグネットの吸着力を利用して、コンベヤ10に吸着される構成であるため、吸着部材31を低コストで製作できる。
【0026】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、可動テーブル26,27と天秤状部材41,42とを二セット設け、第1部品箱28と第2部品箱29とを載せられるようにした同期台車20を例示した。しかし、可動テーブルと天秤状部材とを一セットにし、部品箱を一つ載せる構成の同期台車も可能であるし、可動テーブルと天秤状部材等を三セット以上にすることも可能である。
また、本実施形態では、吸着部材31に永久磁石を使用する例を示したが、電磁石を使用することも可能であるし、負圧を利用して吸着する方式を利用することも可能である。
また、本実施形態では、部品箱28,29の重量を利用して天秤状部材41,42を動作させ、滑車41k,42kを昇降させてナイロンワイヤ51を引っ張ったり、緩めたりすることで、吸着部材31を吸着位置と格納位置間で移動させる例を示した。しかし、テーブル25上に部品箱28,29の有無を検出する重量センサ等を設置し、その重量センサ等の信号に基づいてモータを駆動させて吸着部材31を吸着位置と格納位置間で移動させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0027】
10・・・・コンベヤ(スラットコンベヤ)
20・・・・同期台車
25・・・・テーブル
25h・・・開口
28・・・・第1部品箱
29・・・・第2部品箱
30・・・・吸着部材支持機構
31・・・・吸着部材
40・・・・吸着部材移動機構
41・・・・第1天秤状部材
41k・・・滑車(操作部)
42・・・・第2天秤状部材
42k・・・滑車(操作部)
43・・・・支点部
51・・・・ナイロンワイヤ(ワイヤ)
W・・・・・車両


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を載せて搬送するコンベヤと同期して走行可能に構成されており、部品箱を載せるテーブルを備える同期台車であって、
前記コンベヤに吸着可能に構成された吸着部材と、
前記吸着部材を前記コンベヤに対する吸着位置と、前記コンベヤから離れた格納位置間で移動可能に支持する吸着部材支持機構と、
前記部品箱が前記テーブルから離れることで、前記吸着部材を前記格納位置から前記吸着位置まで移動させ、前記部品箱が前記テーブルに載せられることで、前記吸着部材を前記吸着位置から前記格納位置まで移動させる吸着部材移動機構とを有することを特徴とする同期台車。
【請求項2】
請求項1に記載された同期台車であって、
前記吸着部材移動機構は、
途中位置が上下回動可能な状態で支点部に支持されており、一端が前記テーブルの開口から上方に突出可能に構成され、他端に操作部が設けられている天秤状部材と、その天秤状部材の操作部の昇降動作を前記吸着部材に伝達する伝達機構とを有しており、
前記部品箱が前記テーブルから離れることで、前記天秤状部材の他端の前記操作部が下降して一端が前記テーブルの開口から上方に突出し、その操作部の下降動作が前記伝達機構を介して前記吸着部材を前記格納位置から前記吸着位置まで移動させ、
前記部品箱が前記テーブルに載せられて、その部品箱の重量により前記天秤状部材の一端が押し下げられると、他端の前記操作部が上昇し、その操作部の上昇動作が前記伝達機構を介して前記吸着部材を前記吸着位置から前記格納位置まで移動させることを特徴とする同期台車。
【請求項3】
請求項2に記載された同期台車であって、
前記天秤状部材の他端に設けられた操作部は滑車であり、
前記伝達機構は、ワイヤと、そのワイヤの一端を引き止める引き止め部材とを備えており、
前記ワイヤの途中位置が前記滑車に掛けられて、そのワイヤの他端が前記吸着部材に連結されていることを特徴とする同期台車。
【請求項4】
請求項3に記載された同期台車であって、
前記天秤状部材と部品箱とが複数組設けられており、
前記ワイヤの途中位置が各々の滑車に掛けられる構成であることを特徴とする同期台車。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された同期台車であって、
前記吸着部材は鉄に対するマグネットの吸着力を利用して、前記コンベヤに吸着される構成であることを特徴とする同期台車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−35354(P2012−35354A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176122(P2010−176122)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】