説明

同種抗原の特定方法、ならびに癌治療および移植へのその使用

【課題】 同種抗原を特定し特徴づけることであり、固形臓器移植のGVT、GVHDおよび拒絶におけるそれらの役割を明らかにすることである。
【解決手段】 GVHDおよびGVT免疫応答の誘導に関係する機能的に異質なタンパク質抗原グループを規定する一般化された方法を初めて記述するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の概要
本発明は、移植片対腫瘍(GVT)反応および/または移植片対宿主病(GVHD)をもた
らす広義の同種抗原に関する新しい概念を与えるものである。これまで未解決な技術的問
題である同種抗原の新しい特定方法は、免疫療法における新しい戦略も必要とする。
【0002】
現在、HLA結合タンパク質の分析は、対応するアミノ酸配列が既知である同種抗原を
用いて行うことができるので、本発明によって、腫瘍細胞のみを認識する反応性−反応性
T細胞(reactive−reactive T cells)を、GVHDを媒介するT細胞から分離することも
可能である。新しい技術によって規定される抗原は、癌および移植関連疾患の診断および
ワクチン接種に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
大部分の腫瘍が、免疫応答の潜在的標的とみなすことができる、場合によっては変化し
た自己タンパク質を多量に発現することが当分野で知られている。また、免疫系細胞(cel
lular arm of the immune system)(Tリンパ球)は実験モデルおよびヒト対象中の癌細胞
を認識可能であるが、それにもかかわらず腫瘍は次第に成長することが判明している。
【0004】
このパラドックスを説明する1つの仮説は、腫瘍を有する宿主において、Tリンパ球が
適切に機能していないというものである。別の仮説は、腫瘍が抗原提示機構をダウンレギ
ュレートすることができ、したがって、Tリンパ球に認識されなくなるというものである
。したがって、過剰発現されたタンパク質、または変化したタンパク質が、腫瘍反応性細
胞障害性Tリンパ球(CTL)を刺激し、腫瘍成長の免疫監視機構の一助となり得るかどう
かは依然として不明である。また、腫瘍タンパク質のほとんどは、広範に発現されるタン
パク質であり、自己T細胞レパートリーから特異的CTLを削除するのを媒介している可
能性が高い。自己反応性T細胞は、通常、抗原によって誘導されるアポトーシスまたはネ
ガティブ選択によって、成長の未成熟段階で消滅する。抗原に加えて、ネガティブ選択は
、(APC)に由来する異なるセットの共刺激シグナルによって調整することができ(MacKi
nnon等、Br.J.Haematol.2000、110:12〜17)、自己抗原に対して耐性を有する免疫系が形
成される。これらの好ましくない知見にもかかわらず、腫瘍ワクチン接種が有効であり、
現在の治療手法の欠点を克服する治療を可能にするという興味や期待は計り知れない。
【0005】
放射線療法および骨髄移植(BMT)と併用される化学療法は、一部の代謝疾患および造
血性疾患に対して過去20〜30年にわたって研究され、高用量の化学療法および照射を用い
て白血病細胞を根絶しても、ほんの部分的な治療効果しか得られないことが判明した。多
数の臨床観察によって、さらに、(ドナーT細胞)免疫応答が、残余の癌細胞の除去、特に
BMTを主体とする療法のその後の長期の成功に実質的に寄与しているという信じられな
い(over-convincing)証拠が提供されている。遡及的には、BMTにおける標準的な治療
戦略は、さらに極めて高用量の化学療法および放射線療法の潜在的抗癌能力を過大評価し
、BMTによって誘導される同種のドナーリンパ球によって媒介される免疫療法の効力を
過小評価したものであった。
【0006】
同種骨髄移植(同種BMT)による、造血性障害(白血病)の治療後に見られる臨床成果は
、治療免疫療法の基本を大いに実行したものである。
【0007】
同種という用語は、ドナーとレシピエントが異なる個体である状況を記述するのに使用
され、ドナーとレシピエントが一卵生双生児であって、それらの遺伝子構成が同じために
同一の組織タイプを有する同系という用語と対比される。自家移植片は個体から取り出さ
れ、プロセスの後半に彼女または彼の自己細胞が戻される。しかし、これは、厳密に言う
と、免疫性の移植障害が存在しないので移植ではない。
【0008】
同種ドナーには2種類のタイプがある。すなわち、血縁のある、通常は同胞ドナーと、
血縁のない、通常は極めて大きなボランティアプールから見つけ出され患者と同じ組織タ
イプに合致したドナーである。
【0009】
同種移植は、血縁ドナーからの移植であろうと非血縁ドナーからの移植であろうと、レ
シピエントによって提供された幹細胞の免疫拒絶(宿主対移植片効果)およびレシピエント
の組織に対するドナーの免疫細胞による免疫反応(移植片対宿主病)の恐れがある点で、同
系移植とも自家移植とも異なる。
【0010】
免疫拒絶は、通常、移植前のレシピエントの免疫系を抑制する集中治療(コンディショ
ニング)によって防止される。コンディショニングの方式は、移植センターおよび関係す
る悪性腫瘍によって変わる。例えば、白血病の治療では、患者に、高用量のシクロホスフ
ァミドと放射線全身照射の併用を含む骨髄破壊的コンディショニングをBMT前に実施す
る。移植後には、急性発作および患者組織の損傷(injure)を防止するために、メトトレキ
セート、グルココルチコイドホルモン(ステロイド)、シクロスポリンまたはそのマイクロ
エマルジョン(ネオーラル(登録商標))、タクロリムス(プログラフ(登録商標))およびミコ
フェノール酸モフェチル(セルセプト(登録商標))を含めた免疫抑制薬物を限られた期間投
与して免疫反応を抑える。制御された免疫抑制に加えて、支持療法を改善することによっ
て、コンディショニングの毒性およびBMT後の免疫反応が実質的に低下した。しかし、
重度の合併症が中咽頭、消化管、肝臓、肺、皮膚、腎臓、尿路および神経系において依然
として発生しており、したがって、同種BMTは、医学的に適合した若年患者に限られる

【0011】
当分野では、血液の癌は、高用量の化学療法−照射コンディショニングのみでは必ずし
も根絶できず、同種BMTも必要であることが一般に認められている。したがって、従来
の同種BMT主体の療法は、多くのヒト血液悪性腫瘍の標準的治療プロトコルとなってお
り、あらゆる免疫療法の基本となり、「治癒」の可能性を提供している。
【0012】
同種BMTのドナーは、その主要組織適合複合体(MHC)分子、すなわちヒト白血球抗
原(HLA)の発現に従って選択される。HLAのタイプは遺伝的に決まっている。したが
って、個体のHLAタイプは、その両親からの遺伝である。移植において特に重要と考え
られるクラスターには、HLA−A、HLA−BおよびHLA−DRの3種類の主要な遺
伝子がある。各個体は、HLAクラスター中の遺伝子の各々の2個のコピーを持っている
。また、多数の対立遺伝子バージョンが、HLA遺伝子の各々に対応する。
【0013】
理想的な6対6の一致を得るためには、2人が、その2個のHLA−A、HLA−B、
およびHLA−DR遺伝子の各々において同じ対立遺伝子を持たねばならず、親と子供の
HLAが一致する確率は1/200である。
【0014】
HLAの一致した血縁がおらず、検索を実行する時間があるときには、非血縁ドナーが
通常考慮される。任意の2人の非血縁個体が6個のHLA遺伝子すべてについて一致する
確率は100万分の1である。HLAシステムの多型、民族的背景、および診断年齢の中央
値から、HLA適合血縁ドナーからの移植は、現在、新たに診断された患者の15〜60%で
可能である。別のドナーには、不適合度の小さい血縁、HLA適合非血縁ボランティアな
どがある。適合または一部不適合な適切な非血縁ドナーが見出される確率は、今や世界中
で470万人を超えるドナーを含む登録者ネットワークが拡大し、さらに胎児臍帯血などの
他のソースを利用することによって増大した。
【0015】
骨髄移植は、骨髄、血液または胎児臍帯血から得ることができる造血幹細胞から主とし
てなる。造血幹細胞は、通常、骨髄から吸引される。別の手順は、顆粒球コロニー刺激因
子(G−CSF)を用いてドナーを3〜5日間治療して、幹細胞および前駆細胞を髄から血
液に移すものである。次いで、適切な細胞を白血球除去輸血によってドナーから採取する

【0016】
新生児の胎盤および臍帯に含まれる血液は、新しい幹細胞源として登場した。臍帯血は
、多数の幹細胞を含み、一部の患者ではBMTまたは成人の血液幹細胞移植よりも有利で
あり、適合する非血縁骨髄幹細胞ドナーが見つからない場合に考慮することができる。臍
帯血を利用する利点の1つは、レシピエントとの組織適合が完全である必要がないことで
ある。
【0017】
上述したようにあらかじめコンディショニングされた患者に、幹細胞試料を移植する。
移植後2〜5週間で、提供された細胞の移植は、患者の血液中に正常な白血球が出現する
ことによって明白になる。移植した幹細胞によって骨髄機能が回復するまで、赤血球およ
び血小板を定期的に注入する。造血性が回復するまでの時間は、血液幹細胞を用いた方が
骨髄細胞を用いた場合よりも短い。新しいキメラ免疫細胞の一部は、宿主を異物と認識し
、移植片対白血病効果を引き起こす。以後、これを移植片対腫瘍(GVT)活性と称する。
これは、通常、移植片対宿主病(GVHD)を伴う。GVHD反応は、ドナーの免疫細胞、
特にTリンパ球が、宿主細胞が自己とは異なることを認識したときに生じる。
【0018】
同種BMTによって引き起こされるGVHDは、GVTと密接に関係する免疫機能であ
り、移植細胞がレシピエント中に出現し始めるとすぐに起こり得る。両方のタイプの免疫
応答は、遺伝的に同一でない細胞を認識するT細胞によって媒介される。これは、慢性骨
髄性白血病(CML)の治療において、一卵生双生児間の移植が、適合同胞間の移植よりも
成功しないことが多いという歴史的発見を説明することができるものである(Gale等、Ann
.Intern.Med.1994、120:646〜652)。幹細胞移植の場合、ドナー細胞はレシピエントの組
織の細胞に違いがないかどうか注意深く検査し、重大な変化を見つけるとその細胞を攻撃
する。移植後の初期段階では、例えば、患者由来の残留APCが存在し、多型遺伝子に基
づく違いがないかどうかドナー由来のT細胞によって調べられる。提供されたT細胞が、
異質な抗原を提示する宿主細胞(基本的にはすべての免疫細胞)を認識すると、細胞障害性
応答が惹起される。T細胞応答が、恐るべきGVHDまたは有益なGVTのどちらになる
かは、遺伝的に顕在化した差が、癌組織または癌臓器に属する細胞中に存在するか、ある
いはより悪いことに、皮膚、関節、肺、肝臓、腎臓などの本質的に疾患のない臓器の一部
であるかによって決まる。罹患した臓器の重要性に応じて、GVHDは、単なる小さな発
疹から、生命にかかわる病気まで重篤度が変わる。一般に、同種BMTはやや粗雑な手法
であり、移植に関係した罹患率および死亡率が高い。最近報告された集計によれば、死亡
危険率は20〜41%であり、強力な免疫抑制薬が利用可能であるにもかかわらず、治療患者
の最高70%が依然としてGVHDに罹っている。したがって、疾患促進プロセスの原因で
ある同種抗原の広範な特定、ならびに闘病(disease-fighting option)に有用な同種抗原
を規定することは本発明の中心的な態様である。
【0019】
それでも、BMTに基づく免疫療法によって、最高70%の患者は移植後に白血病に罹ら
ず生存している(Clift等、Haematol.1997、10:319〜336)。しかし、60%を超えるCML
患者は、疾患の状態、高齢、または適切なドナーの欠如のために同種BMTを受けていな
い。
【0020】
BMTおよび/または幹細胞移植は、第一完全寛解またはその後における急性骨髄性白
血病(AML)、AML早期再発または寛解導入不能、第一完全寛解またはその後における
急性リンパ性白血病(ALL)、早期再発または寛解導入不能なALL、CML、脊髄形成
異常、再生不良性貧血、ホジキン病感受性再発および抵抗性再発、活動的なリンパ腫感受
性再発および抵抗性再発、ならびに軽度のリンパ腫に対する容認された治療選択肢である

【0021】
移植片対宿主反応は、ドナーの免疫細胞、特にTリンパ球が、宿主細胞が自己と異なる
ことを感知したときに生じる。この相違には、HLAタイピングでは検出されない多種多
様なタンパク質が関与することもあり、あるいはこの反応を生じずには移植できないHL
Aタイプのわずかな相違であることもある。この相違は、HLAタイピングおよび適合に
使用されるコドン以外の対応するHLA分子の個々のコドンにおける多型がより限定され
ていることを反映している。一卵生双生児を除いて、移植が成功する十分な類似度をHL
A試験が示していてさえも、ある種の不適合が存在することが知られている。HLAタイ
ピング方法は、経験的に重要であるとスクリーニングされた多型を網羅しているに過ぎな
い。HLA配列決定からより多くの情報が入手されるようになり、新しい対立遺伝子変異
体が続けて発見されており、その一部は異物と認識され得る。ドナーとレシピエントの性
が異なるときにも変化が歴然となる。要約すると、GVHDなどの免疫反応の重篤度は、
患者の細胞によって提示される、患者とドナー間の分子的に規定されたタンパク質の相違
のタイプおよび程度によって決まる。
【0022】
GVT活性は、CML患者において最も研究されており、ドナー免疫細胞(CTL)によ
る残留腫瘍細胞の認識と根絶が、長期にわたる分子寛解をもたらすのに必須であると考え
られる。CMLにおける免疫調節機序に対するさらなる見識は、移植片のT細胞枯渇後に
再発のリスクが高くなるという観察から得られている。再発のリスクは、GVHDの非存
在下でも高くなる(Goldman等、Ann.Intern.Med.1988、108:806〜814;Horowitz等、Bloo
d 1990、75:555〜562)。さらに、同系双生児のBMTは、適合した同胞のBMTよりも
有効性がはるかに低い。総合すると、これらの知見は、腫瘍細胞のT細胞認識が治療効果
に必須であることを示している。
【0023】
見かけ上成功した移植後に疾患が再発するときには、完全寛解を、免疫抑制薬の中止、
あるいはより強力には、追加のドナーTリンパ球注入によって達成することができる。し
たがって、同種BMTに関係するGVT効果は、免疫系がヒトの癌を治癒させることがで
きる最も決定的な証拠であり、強力な抗白血病効果がレシピエントに導入された細胞障害
性T細胞によってもたらされることを重要視しなければならない。
【0024】
ドナーTリンパ球は、再発性の白血病細胞をGVT効果によって破壊し、おそらく、同
種移植におけるCD4+とCD8+の両方の亜集団のT細胞が、この現象の一因となってい
る。CD4+T細胞は、抗体性免疫応答または細胞性免疫応答に対するヘルパー機能を有
することが多く、MHCクラスII拘束性である。CD8+T細胞は、細胞障害性機能を有
することが多く、通常はMHCクラスI拘束性である。関連する抗原(腫瘍によって発現
される抗原、レシピエントの組織適合性抗原、またはその両方)はまだ特定されておらず
、関与する抗原を特定し規定することが本発明の目的である。
【0025】
T細胞を枯渇させる移植が、CMLの再発のリスクを伴うことは注目される(Goldman等
、Ann.Intern.Med.1988、108:806〜814;Horowitz等、Blood、1990,75:555〜562)。上
述したように、抗白血病効果は、ドナーリンパ球注入(DLI)を実施したときに、同種B
MTによって得ることができる。この状況において、DLIは、永続性のある分子的寛解
を最高70%の症例で回復させることができる。しかし、DLIは、移植片対宿主反応に起
因するかなりの毒性を伴うことがある。移植片対宿主反応は、移植片対白血病効果を伴う
ことが多く、骨髄形成不全および/または全身的なGVHDによる死亡率は症例の50〜90
%にのぼる(S.MacKinnon、Br.J.Haematol.2000,110:12〜17)。
【0026】
「在来の」同種BMTプロトコルの毒性に関係する欠点を克服するために、ミコフェノ
ール酸モフェチル(セルセプト(登録商標))およびシクロスポリンと最小限に毒性を抑えた
低用量全身照射との併用による免疫抑制を含むコンディショニングモデルが示された。し
かし、コンディショニングが厳密さに欠けたため、顕しい移植片対宿主反応が観察された
。注入前に移植片からT細胞を枯渇させることによって、この状況においてGVHDを防
止することができる。改変されたタイプの移植手順は、「ミニ移植」と呼ばれることもあ
り、現在、これらの観察結果に基づいて開発されている。移植片拒絶の危険および高い再
発率は、ほんの一部のT細胞を移植片に残すことによって回避することができる。末梢血
液試料由来のCD34+細胞のポジティブ選択によって、T細胞が約1000分の1になる。芽
細胞(committed stem cell)と多能性幹細胞を含むこれらの精製されたCD34+細胞は同種
移植に適している。CMLにおいては、漸増用量のT細胞を投与して、GVHD問題をあ
る程度回避し(MacKinnon等、Blood、1995、86:1261〜1268)、同時にGVT効果を増強さ
せている。
【0027】
要約すると、将来の同種移植手法は、T細胞枯渇ミニ移植と、移植後の適度の免疫抑制
とを併用して、移植片拒絶およびGVHDを制御するものを含むであろう。これは、同種
移植の急性毒性を劇的に低下させ、したがって、同種BMTを、これまで不適当であった
患者、主として外来患者に実施できると期待される。この将来の開発は、様々なヒト悪性
腫瘍の治療に対する同種免疫療法に基づく戦略を容易にすると期待される。
【0028】
自己と非自己の免疫識別に関係する研究活動の大部分は、多型性の高いMHC分子、特
にヒトHLA分子およびマウスH−2抗原に焦点が絞られている。しかし、BMTのほと
んどの症例において、ドナーは、HLAタイプがレシピエントのHLAにほぼまたは完全
に適合しているという基準によって選択されていることに留意しなければならない。HL
A適合ドナーにおいては、GVHDおよびGVTの原因は、HLAとは異なる多型分子に
関係すると推定されている。したがって、BMTにおけるGVHDおよびGVT免疫応答
の分子的原因を解明しようとする最近の研究は、特異的Tリンパ球による反応を利用する
ものであり、CTLは、レシピエントのHLAクラスIによって提示される抗原由来のペ
プチドを認識する。これらのT細胞は単離され、同種抗原を特定するのに使用される。ド
ナーとレシピエントのHLA以外の多型抗原の相違が、Tリンパ球によるGVTおよびG
VHDの発症に関連していると考えられることが判明した。したがって、GVHDおよび
GVT免疫応答を理解する鍵は、どの抗原が関与しているかを理解することである。同種
免疫応答の分野における研究は、前述した側面を考慮して、他の重要な分子、いわゆる「
副」組織適合抗原(mHAg)を特定する方向に向かっている。これらの極めて多様なタン
パク質が多数あることが、抗原の複雑で多様な生物学的機能と組み合わさって、これまで
完全な特徴づけの試みを頓挫させている。
【0029】
定義によれば、mHAgは、免疫応答を誘発させることができ(Lewalle等、Br.J.Haema
tol.1996、92:587〜594)、特異的HLA分子に結合したペプチドとしてT細胞免疫系に
対して提示される。したがって、T細胞のみがそれらを容易に認識することができ、mH
Agは、白血病および同種BMT後の自己抗原に対するCTL反応性を誘導する重要な役
割を果たしていると推測されている。残念ながら、これまでに特定された数少ないmHA
gのほとんどは、白血病特異的ではなく、正常組織によっても同様に発現される。既知の
mHAgが関連する組織発現は、利用可能な試薬がないために明らかになっていない。し
かし、CTLを用いた機能分析によれば、多くのmHAgが組織限定的分布を有し、した
がって、ある種の組織にのみ拒絶のリスクがあり得る。また、BMTにおいては、mHA
gによって誘導されるGVHDの臨床像は、全身性エリテマトーデス、強皮症などのいく
つかの自己免疫疾患に類似しており、慢性GVHDの症状が自己免疫様であることを示唆
しているという所見は興味深い。
【0030】
定義によれば、mHAgは、ヒト6番染色体のHLA領域以外でコードされるが、それ
にもかかわらず顕著な免疫応答を誘発することができる。GVHDの機序がまだ完全には
解明されていないにもかかわらず、患者のmHAgに特異的なドナー由来のCTLが、T
リンパ球による(皮膚、腸、肝臓、肺および関節を含めて)主要な標的臓器に対する細胞障
害性反応と、その結果出現する、重度の症例においては致命的になり得るGVHDにおい
て重要な役割を果たしていることは良く知られている。GVHDの機序は相当に調査され
ているものの、GVTの誘導におけるmHAgの役割はさほど明確になっていない。これ
は、完全なmHAgスペクトルのうちごく少数の抗原しか特定され分析されておらず、現
在利用可能な技術が、抗原を包括的に認識する有効な方法を欠いているためと考えられる
。数値。一方、抗原は、治癒効果または有害作用を媒介する原因になるCTLクローンを
単離しその特徴を明らかにするために必須である。したがって、治療上のBMT手法は、
関与する免疫応答の特異性に関して経験則のままである。患者および移植者(transplante
ur)は、通常、上述したように大多数の患者に極めて良好に働く治療結果にもっぱら注目
する。
【0031】
ヒトにおいては、特定が厄介ではあるが、GVHDの誘導に関係するmHAgが示唆さ
れている。しかし、それらの総数および複雑さは依然として不明である。マウスにおいて
実施された遺伝子実験によって多数のmHAgが示されたが、ほんの数個の遺伝子しか特
定されていない。ヒトにおいては、特定のmHAgと反応性があるTリンパ球クローンが
、遺伝子連鎖解析と組み合わせて、単一の患者における2個の異なる遺伝子座を特定する
ために利用された。各遺伝子座は、HLA−B7によってT細胞クローンに対して提示さ
れる抗原をコードしている。この技術は、T細胞応答をin vivoで誘発可能なヒトのmH
Agの数を大雑把に数えるために提案された。これらのT細胞応答が臨床のGVHDと相
関するかはまだ不明である(Gubarev等、Exp.Hematol.1998、10:976〜81)。
【0032】
どのような特性がタンパク質をヒトmHAgとして適格なものにするのかより完全な像
を描くために、ヒト系から入手可能な情報を、これまでにさらにmHAgが特定されてい
るマウス系から収集されたデータで補完することは役に立つ。これらのタンパク質のヒト
相同体は、ヒトの同種反応性CTLによって認識されることが判明し、マウスでも同様で
あった。したがって、例えば、GVHD患者に由来する単離CTLクローンを用いて、よ
り多くのmHAg(表1AおよびB)が応答標的として特定された。このクローンの助けを
借りて、対応するmHAgに由来するペプチド成分(HLA結合ペプチド)およびその認識
に関与する特異的T細胞クローンを分析することが可能になった。
【0033】
ヒトの皮膚外植モデルは、急性GVHDの正確な指標として提案された手法であって、
mHAgのさらなる相違を検出するのに有用となり得る手法である。このモデルは、77%
の症例でGVHDの結果を予測するのに使用された。宿主反応性Tヘルパー細胞、CTL
前駆体頻度分析などの他の分析も、HLAが同一である同胞BMT後の急性GVHDの発
生を予測するのに役立った(Dickinson、Transplantation、1998、66:857〜63)。
【0034】
T細胞受容体アルファ鎖可変領域レパートリーおよびT細胞受容体ベータ鎖可変領域レ
パートリーの分析によって、T細胞受容体がBMT後初期(6〜7週)において誤用された
ことが明らかになり、T細胞が、mHAgなどの同種抗原に応じて拡大し、変化したレパ
ートリーが、子供において胸腺依存経路を介したT細胞の再生によって最終的に常態に戻
ることが示唆された(Matsutani等、Br.J.Haematol、2000、109:759〜769)。
【0035】
最も初期に特定されたmHAgの1つは、SMCY遺伝子によってコードされ、精子形
成において役割を果たし得るH−Y抗原であった(Meadows等、Immunity、1997、6:273
〜281;Wang等、Science、1995、269:1588〜1590)。H−Y抗原は、女性レシピエントに
よるHLAが適合した男性の臓器および骨髄移植片の拒絶をもたらし、女性から男性への
移植において、特に、女性ドナーが過去に妊娠したことがある場合にGVHDを高度に発
症することがある。一方、DFFRY(Vogt等、Blood、2000、95:1100〜1105)およびU
TY遺伝子が別のH−Y抗原源として特定された(国際公開第97/05168号、国際公開第007
7046号)。
【0036】
GVHDを誘発させる別の抗原、すなわち、HA−1、HA−2、H−4、H−5およ
びH−8タンパク質ファミリーが、重度のGVHDレシピエントにおける遡及研究によっ
て特定された(Mutis等、Nat.Med.1999、5:839〜842)。
【0037】
HA−1抗原は、HLA−A*0201拘束性CTLを利用して特定され、KIAA022
3遺伝子の対立遺伝子に由来するノナペプチドとして化学的に特徴づけられた。cDNA
レベルでは、HA−1遺伝子座は、2個のヌクレオチドが異なる2個の対立遺伝子HA−
1HとHA−1Rを有し、その結果単一のアミノ酸が置換される(den Haan等、Science、
1998、279:1054〜1057;Arostequi等、Tissue Antigens、2000、56:69〜76)。HA−1
ペプチド配列をコードするコスミドDNAを単離し配列を決定することによって、HA−
1対立遺伝子が、2個のエキソンによってコードされ、両方のセットがイントロン配列を
含むことが判明した。対立遺伝子特異的プライマーと共通プライマーからなる2個の異な
るプライマーセットを用いたゲノムDNAタイピングによって、CTLおよびRT−PC
RによるmHAg分類とすべての場合で相関する24個のHLA−A*0201陽性個体からな
る3つのファミリーが明らかになった。将来的には、HA−1対立遺伝子に対する前向き
なゲノムタイピングは、ドナーの選択を改善し、HA−1誘導GVHDのリスクが高いH
LA−A*0201陽性レシピエントを特定するのに役立ち得る(Wilke等、Tissue-Antigens
、1998、52:312〜317;国際公開第9905313号)。ヒトHA−2抗原は、クラスIミオシン
由来の9量体HLA結合ペプチドである(Goulmy等、米国特許第5770201号)。
【0038】
mHAgのHA−1およびHA−2の発現は、白血病細胞および白血病細胞前駆体を含
めて、主に造血性組織に限られていることが指摘された(Mutis等、Blood、1999、93、233
6〜2341)。これらは、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは肝臓細胞では発現されない。こ
れは、mHAgのHA−1およびHA−2に特異的なCTLが、ドナー由来の造血性細胞
のHLA−A*0201拘束性死滅(restricted killing)を媒介する理由を説明し得るもので
ある。
【0039】
HB−1は、HLA適合BMTによる治療を受けたB細胞ALL(B−ALL)患者にお
いて、ドナー由来のCTL反応性を誘導する別のmHAgとして記述された。HB−1遺
伝子によってコードされるペプチドEEKRGSLHVWは、HLA−B44に関連する
CTLによって認識された(Dolstra等、J.Exp.Med.1999、189:301〜308)。さらに詳細な
分析によって、HB−1遺伝子の多型が、このペプチドの8位においてHisからTyr
への単一アミノ酸交換を起こすことが判明した。このアミノ酸置換は、HB−1特異的C
TLによる認識にとって重大な意味を持つ。B−ALL細胞による多型HB−1抗原の限
定的な発現、およびペプチドを含む樹状細胞を用いたHB−1特異的CTLのin vitroで
の産生能力によって、GVHDを惹起するリスクなしにB−ALL細胞に免疫系を特異的
に標的とする機会をもたらすことが提案された。
【0040】
GVHDと相関する別の抗原はCD31である。様々なCD31 cDNAの配列を直接決
定することによって、タンパク質の125位における単一アミノ酸変化が存在することが判
明した。これら2個の対立遺伝子のほかに多型は見られなかった(Behar等、N.Engl.J.Med
.1996、334:286〜291)。対応するHLA提示エピトープは、CTLによって認識される
単一アミノ酸変化と良好な相関を示した。
【0041】
HA−1、HA−2および他のmHAgに関する上述の知見は、特異的T細胞が選択的
に腫瘍細胞をin vivoで攻撃し、造血幹細胞と繊維芽細胞によって発現されるmHAgを
識別でき、前者のみを死滅させることができることを示唆している。in vitroで「白血病
反応性」にされたドナーT細胞を用いて治療を受けた患者において完全寛解を誘導できる
ことは興味深い(Falkenburg等、Blood、1999、94:1201〜1208)。しかし、GVHD誘導
抗原とGVT誘導抗原を識別する分子的根拠は依然として未知であり、現在、mHAg由
来のHLA結合ペプチドを特定し、それらを生化学構造が既知であるタンパク質と相関さ
せる直接的な手法はない。また、mHAgと考えられるタンパク質の機能または数につい
てはほとんどわかっていない。mHAg遺伝子変異の頻度およびマウス系統間の異なるm
HAgの数を調べることによって、mHAgの総数が430〜720遺伝子と推定された。しか
し、これらの試験のいくつかは、皮膚樹状細胞によってmHAgペプチドが提示されるた
めに極めて感受性の高い皮膚移植片拒絶モデルを用いて実施されたことに留意されたい。
造血系などの他の臓器に由来する樹状細胞は、抗原を違ったように提示することがあり、
したがって、はるかに少ないmHAgが得られる。このタイプの手法に基づいて、80個の
範囲内の異なるタンパク質が推定された。
【0042】
Clave等(J.Immunother.1999、22:1〜6)は、白血病細胞に対するGVT反応の標的抗原
を特定することを目的とした研究において、骨髄性白血病において過剰発現される原発性
顆粒タンパク質であるプロテイナーゼ3の多型を検出した。この研究は、10人の血液系疾
患患者およびそれらのHLA同一骨髄ドナーで実施された。この酵素は、ミエロイド系細
胞において発現されるが、CML(Molldrem等、Blood、1997、90:2529〜2534;Dengler
等、Brit.J.Haematol.1995、89:250〜257)を含めた骨髄性白血病において過剰発現され
、プロテイナーゼ3由来のペプチドであるPR1に特異的なCTLは、CML細胞を効率
的に溶解させる(Molldrem等、Blood、1997、90:2529〜2534)。循環PR1特異的CTL
が、同種BMTによる治療を受けた患者を含めていく人かのCML患者において検出され
、それが存在すると、予後は良好である(Molldrem等、Nat.Med.2000、6:1018〜1023)。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)一本鎖コンホメーション多型アッセイと、その後のPCR
産物の配列の直接決定によって、7個の一塩基多型が発見された。そのうちの1個は、そ
のアミノ酸配列の119位にあるイソロイシンまたはバリンのどちらかをコードしている。
アミノ酸115〜124の多型部位にまたがるペプチドは、HLA−A2分子にin vitroで結合
することが判明した。23人のHLA−A2骨髄性白血病患者およびそれらのHLA同一ド
ナーを、その多型についてスクリーニングした。そのドナーには存在しない少なくとも1
個の対立遺伝子を有する4人の評価患者群では再発は見られなかったのに対し、残りの15
人の評価患者のうち7人が再発した。これらのデータは、プロテイナーゼ3の対立遺伝子
の違いに対するT細胞応答が、急性および慢性骨髄性白血病における白血病特異的養子T
細胞治療を設計する基礎として使用できる可能性を支持するものである。
【0043】
要約すると、新しいmHAg候補タンパク質を特定する現在の手法は、GVHDに主に
関係する単離CTLおよび/またはHLA溶出(HLA−eluted)ペプチドの特定に主に基
づいており、ほんのわずかであるが、これらの抗原が、対応するタンパク質によって規定
されている。
【0044】
マウスおよびヒトに対して文献から収集したmHAgのリストを表1Aに示す。より予
測可能でより速くmHAgを特定する明確な戦略がこれまでなく、したがって、利用可能
な手法によって特徴づけられる新しいヒトmHAgの候補遺伝子は、徐々にしか現れてい
ない。さらに新しいmHAgまたは候補タンパク質に、より容易に行き着くことができる
技術は当該技術分野にはない。それらは、おそらく、様々な細胞のハウスキーピング機能
に関与するタンパク質に由来する分子断片の多様で難解なグループであり、一般に、コー
ドする遺伝子座の位置は未知である。mHAgの一部は、体中の様々な組織において広範
に発現されると考えられるのに対し、別のmHAgは、組織分布が限られている。これま
でのところ、それらの分析は、抗白血病反応性に関係していないが、生命にかかわるGV
HDとほぼ独占的に関連している。これは、現在利用可能な技術が、GVHDに関係する
mHAgを特定することに大きく偏り、疾患を予防するmHAg、例えば、GVT反応を
誘導するmHAgは散発的にしか提案されていないためである。
【0045】
GVHDおよびGVT免疫応答の特徴づけのためのすべての試験で、関与する抗原が、
対応するタンパク質配列における単一アミノ酸変化をもたらすまれなDNA突然変異によ
って生じる限定された多型のmHAgであるという驚くべき観察結果になることは興味深
い。また、これらのアミノ酸変化が、GVT反応またはGVHDを引き起こすために、H
LAクラスIによって提示されなければならないことは明白である。GVHDに関与する
いくつかの同種T細胞クローンが単離され、HLA提示ペプチドの単一アミノ酸交換を特
異的に認識することが判明した。
【0046】
白血病、リンパ腫および骨髄腫は、骨髄およびリンパ組織において発生する癌である。
これらの疾患は、造血系に由来する単一細胞のDNAの後天的(遺伝ではなく)遺伝子損傷
に起因し、この損傷は白血病クローンに転化され、次いで連続的に増殖する。この無制限
の増殖は、体による健康な血球の産生を妨害し、それによって体は基本的な生理学的機能
を発揮することができず、感染に対して体自体を保護することができなくなる。
【0047】
米国において、1999年に推定107,900人が白血病、リンパ腫および骨髄腫と診断され、
これは米国で毎年診断される癌の11%を占める。推定で合計632,000人のアメリカ人が、
現在、白血病、リンパ腫および骨髄腫に罹患している。ヨーロッパでの数値も米国と極め
て似ている。白血病、リンパ腫および骨髄腫により推定60,500人が毎年亡くなっている。
白血病およびリンパ腫は、35歳未満の若い女性および若い男性において第1位の致死的癌
である。
【0048】
慢性初期には、CMLは、bcr-abl癌遺伝子を生成するt(9;22)染色体の転座(フィラ
デルフィア染色体、Ph)を特徴とする。キメラ遺伝子の産物は、ST1571などの合成阻
害剤の標的である常時活性型チロシンキナーゼである。他のタイプの腫瘍患者と比較して
、CML患者は、慢性期には免疫系はまだ比較的無傷である。Bcr-ablペプチドは、他の
未知の疾患関連抗原とともに、HLA分子によって提示され、T細胞によって認識される
ことが現在次第に明らかになってきた。融合タンパク質による患者の直接免疫化が、臨床
現場において自然免疫または移植によって誘導される免疫を高める同種BMTの潜在能力
を研究するのに使用された。初期の治験から、このようなワクチン接種が安全であること
が判明したが、免疫抗原に対して特異的T細胞応答を示す患者もいた(Pinilla-lbarz等、
Blood、2000、95:1781〜1787)。
【0049】
急性白血病は、患者の細胞遺伝学的プロファイルから演繹的に推論されるリスクプロフ
ァイルに従って治療(化学療法、BMTおよび放射)を組むことが依然として極めて困難で
ある。BMTは化学療法のみではうまくいかない患者に残されたものである。これらの破
壊的な疾患の治癒を進めるために、臨床レベル、細胞レベルおよび分子レベルでの白血病
の生物学、特に、免疫療法戦略を設計するための疾患関連抗原の分子的定義を理解するこ
とは、関連する白血病クローンを根絶するのに最も重要な目的である。
【0050】
腎細胞癌(RCC)はすべての癌死の約5%を占める。症状が出たときには、50%を超え
る患者は局所的に進行した転移性疾患をすでに発症しており、5年生存率は20%未満であ
る。多種多様な治療様式による多数の試験でもほんのわずかしか進歩していない。単一薬
剤も併用療法も20%以上の応答割合を一貫して示したものはない。インターロイキン−2
およびインターフェロン−アルファを主体とする療法は、進行した疾患を治療するために
最も一般的に使用され、10%〜20%の範囲で低いが再現性のある応答割合を示し、永続性
のある応答は5%以下である(Nanus、Curr.Oncol.Rep.2000、2:417〜22)。
【0051】
RCCは、サイトカインまたはインターフェロンを主体とする免疫療法に対して感受性
が高いので、自己腫瘍細胞を排除するのに特異的T細胞が関与していると考えるのに十分
な理由がある(Schendel等、J.Mol.Med.1997、75:400〜413)。最近、腫瘍特異的T細胞が
、IFN−ガンマ捕捉アッセイによって、ヒトRCCを浸潤させるリンパ球から単離され
た(Becker等、Nat.Med.2001、7:1159〜1162)。しかし、RCC抗原およびその対応する
クラスI提示ペプチドに関する知識が不十分なため、RCCのインターフェロン−アルフ
ァ免疫療法におけるT細胞の役割はあまり理解されていない。
【0052】
RCCの免疫療法に有用であり得る新しい抗原の特定は依然として優先度が高い。RC
Cにおいて関連する抗原を特定する方法は転写レベルならびにタンパク質発現レベルで記
述されている。二次元ゲル電気泳動(2−DE)および銀染色による非癌性腎臓とRCCの
プロテアーゼの比較によって、著しく異なるタンパク質パターン(RCCの約800スポット
と正常腎臓の約1400スポット)が明らかになった。2−DE免疫ブロットによって、RC
C患者から得られた血清と再現性良く反応するが健康なドナーから得られた血清とは再現
性良く反応しない5個のRCC特異的スポットが明らかになった。これらの抗原のうち2
個は、予備的な2−DEによって単離され、平滑筋細胞において主に発現される機能が未
知なアクチン結合タンパク質である平滑筋タンパク質22−アルファ(SM22−アルファ)と
して特定された。in situハイブリダイゼーションによって、SM22−アルファは、悪性
細胞においては発現されないが、腫瘍間質の間葉細胞では発現されることが明らかになっ
た。第2の抗原は、腎臓では通常発現されないアイソフォームの炭酸脱水酵素Iである。
異なるアイソフォーム(CAXII)が、血清学的発現クローニングによって、一部のRC
Cにおいて過剰発現される抗原として以前に特定されたことは興味深い。組換えCAIま
たはSM22−アルファに対する抗体が、それぞれ11人中3人または11人中5人のRCC患
者から得られた血清中に検出されたのに対し、13人の健常人から得られた血清は反応しな
かった。結論として、血清学的方法はプロテオーム分析において有用なツールとなり、腎
臓腫瘍関連抗原の特定の一助となり得る。しかし、関連するRCC抗原を特定することが
依然として求められており、特に癌に対するワクチン接種におけるこれらの抗原の関連性
は明らかにされなければならない。
【0053】
このRCCの状況は、一方で178個のエピトープに対応する合計60個の異なるタンパク
質抗原が規定されている様々な他の固形腫瘍疾患の状況とよく似ている。多数のこれらの
抗原、および対応するT細胞エピトープが、免疫応答を改善する様々なワクチン接種プロ
トコル、アジュバント処方および細胞ベースの提示システムに使用されている。しかし、
関係するプロトコルおよび抗原とは無関係に、得られる結果は、極めて類似しており、臨
床反応なしにT細胞が活性化される。したがって、ワクチンは、そのうち治療において重
要な役割を果たすであろうが、臨床試験において認められる免疫応答は、まだ大幅な延命
効果には至っていない。
【0054】
上述したように、白血病に対する同種BMTの免疫療法としての潜在的可能性は、同時
に、酵素欠損障害、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血などの他の疾患でも調査された
。これは、主に、臨床体験を積み重ねることによって可能となり、同種BMT手法は、R
CCなどの転移性固形腫瘍の免疫療法にも同様に使用できることが明白になった。最近出
版された研究(Childs等、N.Engl.J.Med.2000、343:750〜758)では、非骨髄破壊的同種幹
細胞移植が、従来のサイトカイン治療がうまくいかなかった患者において、転移性RCC
を持続的に軽減させるために適用された。試験に参加した19人の患者のうち10人(53%)が
、測定可能な応答を示し、3人の患者は完全な持続性応答を示した。これらの結果は有望
であり、類似の治療戦略を他の転移性腫瘍に対して使用することを奨励するはずであるが
、Childs等によって使用された手順は、一部の患者における腫瘍の軽減が重度のGVHD
を伴うので、完全に満足のいくものではない。この治療を受けた後に2人の患者が死亡し
た。この手順は、合併症を最小限に抑え、その効力を向上させるさらなる改善が必要であ
るが、原理証明はすでに手許にある。すなわち、同種T細胞は、腎癌細胞を根絶させるこ
とができ、ドナーリンパ球は、非骨髄破壊的コンディショニング後、宿主内に生存するこ
とができる。しかし、この試験のより一般的な意味は、同種BMTを固形腫瘍の治療に拡
張可能なことである。RCCなどの固形腫瘍の治療における将来の進展は、GVHD応答
のない、より安全でより制御された抗腫瘍免疫療法を確立できるかどうかにかかっている

【0055】
骨髄移植は、腎臓、心臓、肝臓、肺などの固形臓器の移植とともに多数の態様を共有す
る。臓器移植(organ transfer)も、いくつかの病態では依然として最適な治療である。よ
り優れた免疫抑制剤の開発における最近の進歩によって、同種移植の短期生存が改善され
たが、免疫学的拒絶反応は、依然として長期生存に対する障害となっている。ドナー臓器
と患者の不適合、すなわちmHAg不適合が、固形臓器の生着に影響を及ぼし、GVHD
を促進することを示す証拠がかなり蓄積された。したがって、長期の移植片生着を経験す
る患者は、依然として予後が悪く、40%の腎臓しか10年を超えて生着しない。これらの移
植片の最終的な損失におけるmHAg不適合の役割は不明であり、考察の対象である。し
たがって、臓器移植、特に腎移植は、同種BMTおよび対立遺伝子特異的同種抗原の特定
から利益を得ることができる別の適用例である。
【0056】
マサチューセッツ総合病院において、Cosimi等はドナーからの骨髄をレシピエントに与
えた後に移植腎臓を移植し、それによって患者にT細胞キメラ現象状態を作ることができ
ることを考察している(N.Engl.J.Med. 2002、346:2089〜92)。理論的には、ドナーリン
パ球は、ドナー臓器からの抗原とともに胸腺に移行し、新しい腎臓に対する寛容性をもた
らす。さらに未来指向のシナリオにおいては、この寛容性誘導プロセスを、本発明によっ
て特定され、調製され、送達される適切な腎臓同種抗原を用いたワクチン接種によって支
援することができる。将来の治療の中間形態は、腎移植に加えて同種BMT移植を含むこ
とができ、両方の移植片は同じドナーから得られる。
【0057】
一塩基多型(SNP)は、2個のDNA配列間の不一致として定義され(Stoneking、Natu
re、2001、409:821〜822)、挿入、欠失、または優先的に、本明細書で使用される、アミ
ノ酸変化をもたらす一塩基変化などの一塩基変化の結果として生じるある集団のゲノム中
の遺伝子配列の変化を意味する。SNPは、ある遺伝子に対する異なるメンデルの対立遺
伝子として現れる。遺伝子座は、分岐が起こる部位である。
【0058】
本発明において理解されるヌクレオチド塩基変化は、ゲノムのコード部分に関係し、別
のアミノ酸を対応するタンパク質中に組み込む結果となる。アミノ酸交換は、前記アミノ
酸の翻訳後修飾、例えば、グリコシル化に影響を及ぼし得る。したがって、SNPは、集
団において2個以上の遺伝的に決定された別の配列または対立遺伝子が出現することを意
味し、集団のメンバー間で現れる核酸配列、(例えば、転写、プロセシング、翻訳、運搬
、タンパク質プロセシング、輸送を含めた)遺伝子発現、DNA合成、発現タンパク質、
他の遺伝子産物、または生化学経路もしくは翻訳後修飾の産物における差として現れ、検
出することができる。
【0059】
当分野で存在するSNPは、タンパク質機能の変化に関係して主に考察されている。し
かし、30億のDNA塩基の中から機能的に関連するSNPを見つけ出し、それらを有用な
機能が知られていない数百万のSNPから識別することは大変な課題であり、ポストゲノ
ム研究の主要な難題の1つである。機能的に関連するSNP情報の作成は徐々にではある
が継続して進み、ヒトSNPの総数および個々の遺伝子の割り当てに関する全体的な情報
が、米国、ヨーロッパ諸国、日本および中国において樹立されたSNPデータを収集し利
用するdbSNP、CGAP、HGBASE、JST、Go!Polyなど様々なデータ
ベースから利用可能である。Celeraのような会社は、SNPを特定するツールを作製し販
売しており、2002年の終わりまでに作成されるヒトゲノムのSNPに基づく連鎖地図を手
にするはずである。Celera−SNPデータベースは、40または50個体からのDNA配列に
基づき、その情報を用いてSNPを探し出す。これらのデータにアクセスすると、特異的
遺伝子に対する割り当てが可能になり、疾患に関連するSNPの予測が将来可能になるは
ずである。
【0060】
抗原提示は、2個の異なる経路、すなわち外因性HLAクラスIIおよび内因性HLAク
ラスI経路に基づく。クラスI分子は、HLA−A、BおよびC遺伝子座によってコード
され、主にCD8+細胞障害性T細胞を活性化すると考えられる。HLAクラスII分子は
、DR、DPおよびDQ遺伝子座によってコードされ、主にヘルパー細胞と細胞障害性細
胞の両方のCD4+T細胞を活性化する。
【0061】
「正常」個体は、通常A、BおよびCの3グループの各々から2個の計6個のHLAク
ラスI分子を有する。それに対応して、すべての個体は、やはりDP、DQおよびDRの
3グループの各々から2個の独自のHLAクラスII分子を有する。A、B、Cグループお
よびDP、DQ、DRグループの各々は、さらにいくつかのサブグループに分類される。
すべての遺伝子産物は高度に多型である。したがって、様々な個体が、他の個体のHLA
分子とは異なる別のHLA分子を発現する。これが、移植においてHLA適合臓器ドナー
を見つけることが困難な理由である。免疫生物学におけるHLA分子の遺伝的変異の重要
性は、免疫応答遺伝子としてのそれらの役割を反映したものである。それらのペプチド結
合能力を通して、ある種のHLA分子の有無によって個体のペプチドエピトープ応答能力
が決まる。その結果、HLA分子によって、疾患に対する抵抗または罹病性が決定される

【0062】
HLAクラスII発現は、APCに限定される。これは、病原体によって産生される抗原
を内部に取り込み処理するAPC(マクロファージ、樹状細胞またはB細胞)に遭遇した場
合には局所的に活性化されるヘルパーTリンパ球の機能と一致している。
【0063】
MHC(HLA)クラスI分子は、体のあらゆる有核細胞上で発現され、ウイルスおよび
他の細胞内病原体に対する主要な免疫防御機構の一部である。これらは、クラスI鎖(H
LA−A、−B、−C)と可溶性β2ミクログロブリンのヘテロダイマーとして構築され、
細胞内で抗原プロセシングによって産生されるペプチドに結合し、これらのペプチドを、
T細胞受容体を介してCTLによって認識され得る細胞表面に運搬する。
【0064】
クラスIとクラスII経路はまったく別個のものではない。例えば、樹状細胞、およびあ
る種の拡張マクロファージは、細胞外タンパク質をどん食(飲食)し、続いてそれらをMH
CクラスIとして提示できることが知られている。外来性抗原もクラスI経路に進入でき
ることが実証された(Rock等、Immunol.Today、1996、17:131〜137)。これは、特別な投
与経路によって、例えば抗原を酸化鉄ビーズと結合させることによって実施することがで
き、中心的機序と考えられる。というのは、同じAPC上でMHCクラスIとクラスIIが
同時に発現して3細胞タイプのクラスター形成を誘発することが重要だからである。この
3細胞タイプの相互作用クラスターは、Mitchison等(Eur.J.Immunol、1987、17:1579〜8
3)によって提案され、その後他の著者によっても提案された。彼らは、同じAPC上での
クラスIとクラスIIエピトープの同時提示が重要であることを示した。最近記述されたC
TL活性化機序によれば(Lanzavecchia、Nature、1998、393:413〜414、Matzinger、Nat
.Med.1999:616〜617)、MHCクラスIIによる専門のAPC提示抗原はTヘルパー細胞に
よって認識される。これは、(Tヘルパー細胞上のCD40リガンドとAPC上のCD40の
相互作用によって媒介されて)APCを活性化させ、APCがCTLを直接刺激すること
が可能になり、それによって、CTLが活性化される。
【0065】
異質なMHCクラスII拘束性Tヘルパー細胞エピトープを自己抗原に挿入すると、非改
変自己抗原に対する強い交差反応性抗体応答を誘導可能な抗原が産生されることがこれま
でに実証されている(出願人の国際公開第95/05849号(特許文献1)を参照)。自己抗体誘導は、挿入された異質なエピトープによって誘導される特異的T細胞の助けによって引き起こされることが示され、改変自己抗原は、適切なアジュバントの助けによって、MHCクラスI拘束性自己エピトープに対する強いCTL応答を誘導できると予想される。したがって、国際公開第95/05849号に記載された技術によって、MHCとして提示されるエピトープを有する細胞内および他の細胞関連抗原に対するワクチン接種戦略を提供するようにすることもできる。
【0066】
最も頻繁に出現するクラスI対立遺伝子(HLA−A1、−A2、−A3、−A11、−
A24、−B7)に対するHLA結合モチーフ、ならびにいくつかの主要なクラスII分子に
対するHLA結合モチーフが報告されている(Rammensee等、Immunogenet.1995;41:178
〜228;Ruppert等、Cell、1993;74:929〜937;Kubo等、J.Immunol.1994;152:3913〜3
924、Kondo等、Immunogenet.1997;45:249〜258;Southwoodなど、J.Immunol.1998、160
:3363〜3373;Geluk等、J.Immunol.1994;152:5742〜5748)。結合モチーフは、ペプチ
ドの限定された位置において、あるタイプのアミノ酸、例えば大きな疎水性または正に帯
電した側鎖基を有するアミノ酸を必要とする特徴を有し、その結果、HLA結合溝のポケ
ットに適合する範囲が狭くなる。この結果と、結合溝内のペプチド長さが8〜10アミノ酸
に制限されることを考慮すると、HLAクラスI分子の1タイプに結合しているペプチド
が、別のタイプにも結合することはまったく起こりそうにない。したがって、例えば、と
もにクラスIジェンダーに属するHLA−A1とHLA−A2サブグループに対するペプ
チド結合モチーフが、HLA−A1とHLA−B1分子に対するモチーフと同様に異なる
可能性が高い。
【0067】
同じ理由で、正確に同じアミノ酸配列が、異なるクラスII分子の結合溝内に位置する見
込みはない。HLAクラスII分子の場合、ペプチドの結合配列はより長いことがあり、通
常、10〜16アミノ酸を含むことが判明し、そのいくつかは、片方または両方の末端におい
て、HLA溝に対する結合モチーフの一部ではない。
【0068】
いくつかのHLAクラスIおよびクラスII分子の異なるペプチド結合モチーフの重複が
起こり得る。少なくとも2個の異なるHLA分子に対する結合配列に重複があるペプチド
は、「ネステッド(nested)T細胞エピトープ」を含むと言われる。「ネステッドエピトー
プペプチド」に含まれる様々なエピトープが、APCによるペプチドのプロセシングによ
って形成され、その後、異なるHLA分子を介してT細胞に提示され得る。ヒトにおいて
個体のHLA分子は多様であることから、入れ子エピトープを含むペプチドは、1タイプ
のHLA分子に結合することしかできないペプチドよりも一般的なワクチンとして有用で
ある。
【0069】
個体の有効なワクチン接種は、患者の少なくとも1タイプのHLAクラスIおよび/ま
たはクラスII分子が、その完全長でまたは患者自身のAPCによってプロセシングを受け
た後にワクチンペプチドに結合することができる場合にのみ達成され得る。
【0070】
集団の大多数に対する一般的なワクチンとしてのペプチドの有用性は、その完全長でま
たはAPCによってプロセシングを受けた後に結合可能である異なるHLA分子の数とと
もに増加する。これらのモチーフを有し、様々なHLA分子に結合する抗原関連ペプチド
セットを特定することによって、T細胞エピトープ主体の腫瘍免疫療法を開発するために
ヒト集団の大多数(>80%)を適用範囲にすることができる。
【0071】
遺伝子の対立遺伝子バージョンによってコードされたタンパク質に由来するペプチドを
ワクチンまたは抗癌剤として使用して、抗腫瘍CD4+および/またはCD8+T細胞を産
生するために、当該突然変異体タンパク質を検討し、できればAPCによってより短いペ
プチドにプロセシングされた後に、T細胞を刺激できるペプチドを特定する必要がある。
【0072】
一般に、腫瘍は、腫瘍細胞中に存在する遺伝的変化に関して極めて不均質である。これ
は、癌ワクチンの潜在的な治療効果と予防能力の両方が、ワクチンがT細胞免疫を誘導す
ることができる標的の数とともに増加することを意味する。複数標的ワクチンは、治療を
逃れた原発性腫瘍の変異体によって新しい腫瘍が形成されるリスクも低下させるはずであ
る。
【0073】
HLAクラスI分子上でのT細胞エピトープ(ペプチド断片)の提示が、細胞認識の機能
だけでなく、腫瘍細胞および同種抗原を有する他の細胞を特異的T細胞によって調べ死滅
させるために必須であることは明白である。
【0074】
より詳細に述べると、エピトープを産生するためには、対応するタンパク質を、プロテ
アソームによって、特異的C末端アミノ酸を有するペプチドに切断しなければならない。
切断された断片は、いわゆるTAP分子(抗原プロセシングに関連するトランスポーター)
によって小胞体に運搬されなければならず、そこで、断片が適切なHLA結合モチーフを
含むときにはHLA結合が生成される。したがって、適切なHLA結合モチーフを含む免
疫療法の標的ペプチド候補が、正しいC末端アミノ酸でプロテアソームによって切断され
ることが必要である。タンパク質候補の適切なプロテアソーム切断を実験的に測定するた
めに、精製細胞の20Sプロテアソームを用いたin vitroでの切断アッセイ(4〜24時間)が
開発され、質量分析法によるペプチド分析と併用された。このような実験の結果は、プロ
テアソーム消化と結合試験との併用が免疫療法のための標的ペプチド候補を規定するのに
有用であることを示している。専門家には、疾患関連タンパク質の一般的な切断性を評価
するために開発された予測アルゴリズムであるPAProC(http://www.paproc.de)が有
益なことがある。
【0075】
始めに指摘したように、多数のCTLエピトープがこれまでに特定され、それらはある
位置において好ましい長さおよびアミノ酸組成を有する共通モチーフを有する。予測可能
なモチーフを使用して、所与のタンパク質のアミノ酸配列をCTLエピトープに翻訳する
コンピュータプログラムが設計された。MHCクラスIリガンドおよびCTLエピトープ
の予測を研究している免疫学者には、http://syfpeithi.bmi-heidelberg.com)のSYFP
EITHIまたはhttp://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/HLA bind/のBIMASを使用する
ことが特に有用である。
【0076】
in vivoでのT細胞応答調査は、極めて多量の非特異的細胞の中から抗原特異的T細胞
を特定することが困難であるため限定されたものになり得る。この困難は、主として、T
細胞受容体(TCR)とその天然リガンド、すなわちHLA−ペプチド複合体との相互作用
の親和性が低いためである。4量体技術として知られるHLA−ペプチド複合体の多量体
化は、TCR−HLA相互作用の全親和性を、このような複合体をT細胞のエピトープ特
異的検出用試薬として使用することができる程度に増加させることによって、これらの技
術的問題を克服することができる。
【0077】
可溶性HLAクラスII−ペプチド複合体の生成は、おそらくはクラスIIペプチド結合溝
の構造がより複雑なためにそれほど十分には確立されていない。昆虫細胞におけるin viv
oでの発現およびリフォールディング、ならびに共有結合ペプチドエピトープの使用は、
これらの技術的問題を克服する有望な手法である。
【0078】
4量体染色は極めてエピトープ特異的であり、極めて小さな集団でさえこの技術を用い
て生体外で直接特定することができる。正確な頻度分析に加えて、これらの試薬によって
、単一細胞レベルでのエピトープ特異的T細胞集団の詳細な表現型および機能の特徴づけ
、例えば表面マーカーの発現、サイトカインプロファイルの決定、およびTCRレパート
リー分析が可能である。4量体HLA−ペプチド複合体の結合動力学は、それらのリガン
ドに対するエピトープ特異的T細胞の相対的親和性を測定する有用なツールと考えられる
。基本的識見および4量体によって可能となったT細胞性免疫応答の定量に加えて、この
技術は、同種BMTにおいて、GVHDに関与する自己反応性T細胞を排除するためにも
使用することができる。
【0079】
しかし既知の予測プログラムを利用したCTLエピトープの理論的予測は既知の抗原に
しか実施できない。したがって、防御T細胞によって認識されるエピトープを有するタン
パク質を特定することは、ワクチン開発の中心的課題である。T細胞によって認識される
ペプチドが、クラス1分子から溶出して産生される場合、ペプチド主体のワクチンのさら
なる開発は時間のかかるプロジェクトになり得る。癌関連タンパク質抗原およびGVHD
関連タンパク質抗原の予測に関する前記間隙を埋めることが本発明の目的である。
【0080】
本願の特別の目的は、mHAgなどの同種抗原を特定し特徴づけることであり、固形臓
器移植のGVT、GVHDおよび拒絶におけるそれらの役割を明らかにすることである。
【0081】
このために、本発明者らは、同種抗原およびそれに対する免疫応答を特定し、特徴づけ
る新規な手法を開発する。他の関連する主題は、同種抗原およびmHAgをコードする遺
伝子座および対立遺伝子の特定、ならびに関与するmHAg抗原/mHAg遺伝子座およ
び対立遺伝子の総数を決定する技術の改善などであるが、これらだけに限定されない。免
疫優性mHAg抗原/mHAgの特定には、抗原ペプチド、治療および疾患におけるそれ
らの役割、相対的存在比とのそれらの関連性、HLAに対するペプチドの親和性、ならび
に細胞障害性T細胞作用の誘導の評価が含まれる。また、in vitroでのペプチド免疫機能
のin vivoでの相関現象を検討して、in vitroで特定された免疫優性ペプチドが同様にin
vivoで機能するかどうかを明らかにすることができる。様々な同種抗原またはmHAgの
相対組織発現、およびそれらの示差的な組織分布の移植片拒絶に対する影響を、同様に検
討することができる。
【0082】
この包括的な情報を使用して、BMT後に認められるGVT反応を促進する手法を明ら
かにし、移植片生着を改善する。本願を支持する研究範囲は、以下の広範な対象域および
調査の具体的実施例を含むが、これらだけに限定されない。本実施例は、指示的なもので
はなく、依然としてさらに調査されている領域を例示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】国際公開第95/05849号パンフレット
【非特許文献】
【0084】
【非特許文献1】Sidransky、Science、278、1997、1054〜1058
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0085】
発明の概要
本発明は、癌患者において発現される、一部はすでに知られ、残りはまだ知られていな
い一塩基多型(SNP)をコードする様々な遺伝子の驚くべき発見を含む。本発明のより一
般的な態様は、これまでmHAgとして要約された、GVHDおよびGVT免疫応答の誘
導に関係する機能的に異質なタンパク質抗原グループを規定する一般化された方法を初め
て記述するものである。前記mHAgは、一般化された特定スキームにこれまで利用され
ていない同種抗原グループに属する。本発明によれば、同種抗原グループを、GVHDを
起こす同種抗原とGVTをもたらす同種抗原とに分けるのに役立つ汎用的な方法が確立さ
れた。また、遺伝子中のコーディングSNPから生じる単一アミノ酸不一致対立遺伝子変
異体が癌細胞によって提示され、前記抗原が、HLA分子として(ドナー)同種反応性T細
胞によって認識されて、前記細胞が破壊されることも特許請求する。
【0086】
遺伝子中のコーディングSNPは、タンパク質における単一アミノ酸交換であり、所与
の個体に受け継がれ、特有のものである。移植患者あるいは治療上の理由のために非同質
遺伝子個体群(non-syngen)ドナーからの骨髄移植または幹細胞移行が予定されている患者
は、SNPによってコードされた単一アミノ酸交換をもたらす遺伝子産物、および前記T
細胞エピトープに特異的な同種反応性T細胞に関してキメラ状態にある。結果として、遺
伝子産物は、ドナー由来の(宿主の)免疫系によって認識され、その結果、診断、モニタリ
ングおよび治療の基礎を形成する。
【0087】
手短に述べると、本発明は、GVTおよびまたはGVHDをもたらす広義の同種抗原に
関する新しい概念を与えるものである。本発明の主目的は、T細胞を刺激するのに使用す
ることができる、癌細胞によって産生され提示される単一アミノ酸交換によるタンパク質
のペプチド断片に対応するペプチドを得ることである。本発明における単一アミノ酸置換
の分子的基礎は、正常タンパク質における単一の保存的アミノ酸置換を含めた対立遺伝子
差に基づくことを指摘しておくことは注目に値する。BMTを必要とする個体、またはす
でにBMTを受けた個体が、所与のタンパク質における前記アミノ酸交換を有するかどう
かを判定することは本発明の一部である。また、前記タンパク質が、癌組織または正常組
織を代表する細胞において主におよびまたは選択的に発現されるかどうかを明らかにする
ことも本発明の一態様である。
【0088】
本発明の別の目的は、標的細胞上に現れた前記単一アミノ酸の違いを認識するドナー由
来のT細胞を決定し、必要に応じて単離することである。前記T細胞は、癌細胞に特異的
であることが判明して治療に使用できることもあり、あるいは遍在するタンパク質抗原に
特異的であることが判明し、したがってGVHDの刺激物質として特定されることもある

【0089】
本発明によって規定されるペプチドの一部は、広範な組織分布を有することが判明し、
GVHDの誘導物質であり、したがって、免疫寛容の誘導に使用することができる。これ
に対し、排他的に発現すると規定されたペプチドは、GVT反応を刺激し、疾患の特異的
免疫療法に有用である。
【0090】
本発明の別の主目的は、T細胞免疫に基づく癌治療を開発することである。T細胞免疫
は、細胞障害性T細胞応答を誘導し、免疫寛容を解消するために、患者において、同種B
MTによって、かつ/またはそれ自身のT細胞もしくはドナーT細胞をin vivoもしくはi
n vitroで本発明によるペプチドを用いて刺激することによって誘導することができる。
【0091】
本発明の別の主目的は、本発明のペプチドに対応するペプチドのみに、またはそれに一
部基づいて、癌の発症を防止しまたは根絶させるワクチンを開発することである。これは
、単一のヌクレオチドが変化した遺伝子および単一アミノ酸置換ペプチドを含む細胞に対
するT細胞細胞障害作用を生じ活性化させることによって行われる。
【0092】
ワクチン接種の別の態様は、本発明のGVHD誘導ペプチドに対応するペプチドを使用
して、単一のヌクレオチドが変化した遺伝子および単一アミノ酸置換ペプチドを含む細胞
を認識するT細胞に対する寛容性を誘導することに関係する。
【0093】
本発明の別の主目的は、本発明による少なくとも1個以上のペプチドを投与することを
含む、このような治療または予防を必要とするヒト個体に特異的に適応される抗癌治療ま
たは予防を設計することである。
【0094】
本発明によれば、単一アミノ酸置換タンパク質の正常組織発現は、GVHDの予防およ
び治療に関係するのに対し、選択された臓器および/または癌細胞特異的発現あるいは疾
患関連発現は、治療上のT細胞応答に関係する。本発明のこの態様によれば、レシピエン
ト由来の試料と比較して、ドナー由来の試料中のアミノ酸置換タンパク質に関する差を求
めることが特に有用である。本発明によって分析され、正常組織発現と相関するドナー−
レシピエント差は、BMT後のGVHDの優れた指標である。一方、本発明によって分析
され、癌組織、臓器および細胞における疾患関連発現と相関するドナー−レシピエント差
は、同種BMT後の有益なGVT反応性の優れた予測変数である。
【0095】
本発明によって特定され、癌細胞中のSNPをコードする遺伝子に起因する単一アミノ
酸置換タンパク質の断片に対応するペプチドグループは、単離T細胞の産生に使用できる
だけではない。さらに、前記ペプチドは、上述したように、患者において、SNPを有す
る遺伝子を含む癌細胞を死滅させるT細胞反応性を誘導するのに使用することができる。
【0096】
本発明によって規定されるアミノ酸不一致ペプチドは、少なくとも8アミノ酸長であり
、それらの完全長で、またはAPCによるプロセシング後に、ヒト癌患者の疾患関連細胞
によって産生されるSNP相関遺伝子産物またはその断片に対応する。本発明によるペプ
チドは、a)少なくとも8アミノ酸長であり、癌細胞遺伝子中の前記コーディングSNP
から生じる単一アミノ酸置換タンパク質の断片であり、b)前記遺伝子によってコードさ
れたタンパク質配列の一部として単一アミノ酸置換を含み、c)その完全長で、またはA
PCによるプロセシング後に、T細胞応答を誘導することを特徴とする。
【0097】
本発明のペプチドは、好ましくは、8〜25、9〜20、9〜16、8〜12または20〜25アミ
ノ酸を含む。これらは、例えば、9、12、13、16または21アミノ酸を含むことができる。
【0098】
本発明のペプチドは、少なくとも9アミノ酸長、例えば9〜18アミノ酸長であることが
最も好ましいが、APC固有のプロセシングが起こり得るために、これよりも長いペプチ
ドも同様に、HLA複合ペプチドを産生するのに適している。したがって、1個または複
数の単一アミノ酸置換を有するタンパク質のアミノ酸配列全体を、それが8アミノ酸以上
を含む場合には、本発明によるペプチドまたはタンパク質として使用することができる。
このようなポリペプチドをコードするDNA分子を、本発明のペプチドを発現し提示する
ために同様に使用することができることは特記される。
【0099】
本発明によって特定されるペプチドを本発明による組成物および方法に使用可能である
かどうかを判断するために、以下のステップを実施すべきである。
【0100】
1)前記細胞において選択的に発現され、または過剰発現される癌細胞特異的遺伝子を
特定する。前記遺伝子が、遺伝子産物中のアミノ酸交換をコードする対立遺伝子特異的単
一ヌクレオチドに関して多型であるかどうか分析する。
【0101】
こうして特定されたペプチドが癌の治療または予防、あるいはGVHD予防に有用であ
るかどうかを、遺伝子の選択的または広範な発現プロファイルから判断する。
【0102】
2)不一致単一アミノ酸であるペプチドの多型部分が、その完全長で、またはHLAク
ラス1T細胞エピトープの定義に一致するより短い断片として、T細胞を刺激するために
必要かどうかを判断する。
【0103】
場合によっては、さらなるステップを以下のとおり追加することができる。
【0104】
3)様々な主要HLAクラスIおよび/またはHLAクラスII分子の入れ子(ネステッド
)エピトープを含むペプチドを明らかにし、これらのペプチドを使用してT細胞を刺激ま
たは抑制する。
【0105】
要約すると、タンパク質の断片であり、T細胞エピトープまたはその誘導体であって、
同種反応性に本質的に関係する機能的または免疫学的諸特性を有する、SNPによってコ
ードされたペプチドを特定することが本発明の基本的な態様である。ここで、免疫学的差
は、前記T細胞エピトープ内のSNPによってコードされた1個または複数の単一アミノ
酸変化によって決定される。また、専門家に既知の確立された標準方法を用いて、mHA
g、GVHD抗原、GVT抗原および宿主対移植片抗原と関連する、同種免疫応答を誘導
する新しい関連同種抗原を特定することが現在可能であることが本発明の一態様である。
本明細書に記載する方法およびペプチドに基づいて、タンパク質の単一アミノ酸対立遺伝
子バージョンをコードする遺伝子中で、同種抗原、特にSNPをスクリーニングするのに
使用することができる遺伝子プローブまたはプライマーを作製することができる。また、
本発明は、(a)対象から適切な核酸試料を採取し、(b)ステップ(a)で得られた核酸試料が
、SNPによって規定される同種抗原をコードする核酸であるかどうか、または核酸から
誘導されるかどうかを明らかにし、それによって対象が、SNPによって規定される同種
抗原遺伝子の一方または他方の対立遺伝子バージョンを有するかどうかを判断することに
よって、多型遺伝子に対する対象の対立遺伝子状態を明らかにする方法を提供する。
【0106】
本発明は、単一アミノ酸交換をもたらすSNPの一方の対立遺伝子バージョンをコード
する核酸内に存在する一連のヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることが可能な、
少なくとも15ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド、ならびに他方の対立遺伝子をコードす
る核酸にハイブリダイズせずに、別のアミノ酸交換をコードする(他方の対立遺伝子バー
ジョン)核酸内に存在する一連のヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることが可能
な、少なくとも15ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドも提供する。
【0107】
本発明は、対象が、癌治療に対して同種BMTから利益を得ることができるかどうかを
判定する方法も提供する。この方法は、(a)対象から適切な核酸試料を採取するステップ
と、(b)ステップ(a)で得られた核酸試料が、1個および/または他の対立遺伝子タンパク
質バージョンをコードする核酸であるかどうか、あるいは核酸から誘導されるかどうかを
明らかにし、それによって対象がGVHDまたはGVT反応の素因を有するかどうかを判
断するステップとを含む。
【0108】
本発明の特定の態様は、前記SNPによってコードされた対立遺伝子タンパク質変異体
の選択的組織発現および分布に関係し、本明細書に記載するペプチドを使用して、癌およ
び/またはGVHDなどの疾患と闘うのに必要な選択的治療薬を生成することができる。
本発明によって特定される同種抗原を用いて患者、または実際にはドナーの免疫応答を高
めることによって、免疫療法の改善に大きく寄与することができる。患者に防御免疫を与
えるために、本発明に記載した有効量の1個または複数のポリペプチドをアジュバントと
ともに投与することが必要な場合もある。この分野の専門家は、選択した免疫化プロトコ
ルに従ってこの免疫応答増幅剤(amplifier)を選択する。
【0109】
また、本発明は、少なくとも1個の本発明のポリペプチド、またはそのようなポリペプ
チドをコードするDNA分子、および生理的に許容される担体を含む医薬組成物を提供す
る。本発明は、少なくとも1個の本発明のポリペプチドおよび非特異的免疫応答増幅剤を
含むワクチン、ならびにそのようなポリペプチドをコードする少なくとも1個のDNA配
列および非特異的免疫応答増幅剤を含むワクチンも提供する。
【0110】
本発明は、さらに、一方および/または他方の対立遺伝子タンパク質バージョンをコー
ドする単離核酸、あるいは有効量の1個および/または他の対立遺伝子タンパク質バージ
ョンおよび薬剤的に許容される担体を導入し、それによってGVHDおよびまたは癌に罹
患しやすい対象を治療する、GVHDまたはGVT反応の素因を有する対象を治療する方
法も提供する。
【0111】
本発明は、同種幹細胞または骨髄移植を受けた後に対象に癌が残留しているかどうかを
判定する方法も提供する。この方法は、(a)患者の血球から適切な核酸試料を採取するス
テップと、(b)ステップ(a)で得られた核酸試料が、患者自身が受け継いだ対立遺伝子タン
パク質バージョンまたはドナー対立遺伝子変異体をコードする核酸であるかどうか、ある
いはその核酸に由来するかどうかを判定し、それによって対象に癌が残留しているかどう
かを判定するステップとを含む。
【0112】
本発明は、さらに、一方および/または他方の対立遺伝子バージョン、あるいはタンパ
ク質自体をコードする単離核酸を有効量導入することによって、癌患者を治療する方法も
提供する。
【0113】
本発明は、さらに、対象においてそれ自体を調節することができない細胞を抑制するこ
とができる化学物質を特定する方法も提供する。この方法は、(a)タンパク質の一方およ
び/または他方の対立遺伝子変異体と化学物質とが結合できる条件下で、タンパク質の一
方および/または他方の対立遺伝子変異体を化学物質と接触させるステップと、(b)タン
パク質の一方および/または他方の対立遺伝子変異体に対する化学物質の特異的結合を検
出するステップと、(c)化学物質がタンパク質の一方および/または他方の対立遺伝子変
異体を阻害するかどうかを判定し、それ自体を調節することができない細胞を抑制するこ
とができる化学物質を特定するステップとを含む。
【0114】
本発明は、さらに、癌を抑制可能な化学物質、タンパク質の一方および/または他方の
対立遺伝子変異体をコードする単離核酸を阻害可能なアンチセンス分子、あるいはタンパ
ク質の精製対立遺伝子変異体を癌治療に有効な量含み、また、有効な医薬担体を必要に応
じて含む医薬組成物も提供する。
【0115】
本発明は、さらに、上で特定された医薬組成物の有効量を投与することを含む、癌患者
を治療する方法も提供する。
【0116】
本発明は、さらに、タンパク質の一方および/または他方のヒト対立遺伝子バージョン
をコードする単離核酸を含む遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物も提供する。
【0117】
本発明の別の態様においては、SNPによって規定される患者またはドナーの同種抗原
遺伝子の一方または他方の対立遺伝子バージョンを検出する方法および診断キットを提供
する。第1の実施形態においては、この方法は、患者またはドナーの皮膚細胞またはリン
パ球を1個または複数の上記ポリペプチドと接触させるステップと、患者の皮膚またはド
ナーの皮膚における免疫応答を検出するステップとを含む。増殖または細胞障害性応答の
分析などのリンパ球活性化を評価するために使用される間接的な方法も同様に使用するこ
とができる。第2の実施形態においては、この方法は、生物学的試料を少なくとも1個の
上記ポリペプチドと接触させるステップと、試料中のポリペプチドに結合する抗体の存在
を検出し、それによって生物学的試料における同種反応性を検出するステップとを含む。
適切な生物学的試料としては、全血、痰、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、尿などがある。
【0118】
ポリペプチドを患者またはドナーの選択された細胞と接触させるのに十分な装置と組み
合わせた、1個または複数の上記ポリペプチドを含む診断キットを提供する。本発明は、
検出試薬と組み合わせた1個または複数の本発明のポリペプチドを含む診断キットも提供
する。
【0119】
さらに別の態様においては、本発明は、SNPによって規定されたポリペプチドの個々
の対立遺伝子バージョンに結合するポリクローナルおよびモノクローナルの両方の抗体、
ならびに患者または健康なドナーにおける同種抗原の検出にそれを使用する方法を提供す
る。
【0120】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照し
て明らかになるはずである。本明細書に開示したすべての参考文献を、各々を個々に援用
したように参照によりそれら全体を援用する。
【0121】
発明の詳細な説明
本発明は、癌治療および移植一般に同種抗原を使用する新しい概念を導入する。同種抗
原およびそれらのT細胞認識の定義は、共通の自己タンパク質に由来するT細胞エピトー
プによって単一アミノ酸交換を含むペプチドとして与えられ、SNPによって規定された
T細胞エピトープの特異的対立遺伝子変異体がドナーでは発現しないが、レシピエントで
は疾患関連細胞のHLAクラスI分子を介して発現し提示される場合、前記交換はコーデ
ィングSNPによって規定される。
【0122】
癌細胞上の自己抗原を認識する腫瘍関連CTLが存在することは珍しいことではないの
で、腫瘍に対するT細胞免疫は、先に指摘したように、自然に起こる。しかし、ますます
多くの抗原およびT細胞エピトープがあらゆるカテゴリーの腫瘍において標的であること
が公表されるものの、治療上のT細胞応答は、通常、必要な最大応答が不足している。こ
れは、感染、免疫化および腫瘍抗原に応答可能な機能的T細胞レパートリーが、自己抗原
に対する免疫寛容を樹立し維持する機序によって形成されているからである。この状態を
克服する1つの方法は、本願で提案するHLA適合個体のT細胞レパートリーを使用する
ことである。
【0123】
正常組織に対する自己免疫攻撃の予防には、T細胞レパートリーの胸腺依存選択プロセ
ス中に、自己抗原に対して高い親和性を有するT細胞受容体を発現するT細胞を除去する
必要があることが一般に知られている。また、自己抗原に対する無応答性を樹立する胸腺
以外の他の機序が記述され、両方のシステムが、自己に対する寛容性を誘導すると考えら
れる。多数の実験が、腫瘍抗原が成熟T細胞に遭遇すると、免疫学的無視(immunological
ignorance)、アネルギーまたは物理的欠失(physical deletion)のために、寛容性が誘導
されることが多いことを示している(Pardoll、1998、Nature Med.、4:525〜531、(Stav
eley等、1998)。寛容性の誘導は、腫瘍の免疫回避の原因になることさえあり、最終的に
、in vitroおよびin vivoでの治療上の腫瘍特異的T細胞応答を生じさせる現在使用して
いる方法がなぜ信頼できないように見えるかの理由となる。したがって、当分野で既知の
数百個のT細胞エピトープに対応する60個以上の腫瘍抗原のほとんどが、ヒトにおける治
療上の持続的な抗腫瘍免疫応答を誘導するのに有用でなかったことは意外ではない。
【0124】
自己抗原に先天的な一般的限界を克服するためには、患者の寛容性の状態を変えること
が必要である。これは、現在、寛容性をもたらす機序についての知識が不十分なために不
可能である。
【0125】
本発明では、現行の癌ワクチン接種戦略のこの一般的な弱点を、過去に患者の自己抗原
に曝されたことによって欠損または寛容化されなかった細胞障害性T細胞集団を用いて克
服する。このようなT細胞は、HLA適合ドナーを通して利用可能であり、同種BMT、
または臍帯血もしくは動態化された(mobilized)血液幹細胞に基づく類似の治療を以前に
受けたレシピエントではすでに存在する。
【0126】
同種BMTは、免疫寛容を無効にすることができる確立された方法ではあるが、同種B
MTおよびまたは同種の幹細胞移植が、残余の疾患を一掃するのに役立つT細胞主体の免
疫療法治療の基礎であることは別の知見である。同種応答の分子的背景が、ある程度明ら
かにされた。重要な知見の1つは、同種BMTを受けた患者が、この治療を利用しなかっ
た患者よりも状態がはるかに良いことである。このT細胞による方法を用いた成果および
治癒率は、癌の免疫療法において見られる最も印象的な結果の1つであり、本願は、この
強力な機序に基づいている。
【0127】
臓器移植に関係するある種の条件下では、ドナーは、彼自身の免疫細胞に対する多型ア
ミノ酸不一致T細胞エピトープを提示し、これは、血液幹細胞系を以前に交換しないこと
に留意されたい。
【0128】
同種抗原を、本発明による種の抗原性ペチズ(petides)またはタンパク質の対立遺伝子
変異体として特定する一般的方法は、単一アミノ酸交換を検出する必要がある。この一般
的方法は、
(i)障害に関係する組織、臓器またはそのサブセットにおいて独占的に発現または過剰
発現されるタンパク質またはペプチドを規定するステップと、
(ii)前記種の1個または複数のDNAライブラリーを含むデータベースを、前記規定さ
れたペプチドもしくはタンパク質またはそのサブセットについてスクリーニングするステ
ップと、
(iii)コード領域に少なくとも1個の単一核多型(single nucleic polymorphism)を含む
DNA配列によってコードされた対立遺伝子ペプチド/タンパク質変異体、発現産物また
はその断片のアミノ酸交換を特定し選択するステップと、
(iv)前記多型を含むアミノ酸残基を含むT細胞エピトープ(9量体〜16量体)エピトープ
を作製するステップと、
(v)MHCタンパク質複合体に結合する前記エピトープを特定するステップとを含む。
【0129】
組織、臓器、または患部組織を代表する細胞において独占的に発現または過剰発現され
る多型アミノ酸不一致ペプチドは、その各々が異なる疾患関連タンパク質に特異的である
、タンパク質の対立遺伝子変異体を表す1個または複数の不一致アミノ酸の発現により特
徴づけられる。前記複数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも4
、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも
10個である。
【0130】
本発明によるアミノ酸不一致同種抗原は、AML、ALL、CML、ホジキン病、リン
パ腫、脊髄形成異常、再生不良性貧血、腎細胞癌、GVHD、宿主対移植片疾患などの複
数のヒト疾患に特異的である。
【0131】
疾患に無関係な組織において発現され、HLAタンパク質と複合体を形成するタンパク
質の対立遺伝子変異体の単一不一致アミノ酸は、GVHD誘導抗原と考えられる。
【0132】
これらのペプチドを患者にワクチンとして導入すると、レシピエントのHLA分子およ
びドナー由来のAPCが(以前の同種BMTから生じた)ドナー由来のT細胞に対して抗原
を提示する状態になる。ドナーT細胞は、ドナー血液幹細胞から増殖させ分化させても、
あるいはドナーから直接採取し、レシピエントに導入してもよい(ドナーリンパ球注入(D
LI)として一般に知られている手順)。これらのT細胞は、患者において、HLAとして
提示される抗原と遭遇すると容易に活性化される。あるいは、生体外でT細胞を刺激し患
者に導入することも、活性化細胞障害性T細胞を産生する別の方法となり得る。一方、例
えば寛容性の誘導に関係する病態は、患者の自己T細胞の適切な活性化を必要とする。
【0133】
本発明は、同種BMTを主体とする治療プロトコルの分子的基礎を提供し、現在適用さ
れているが、現時点でより予測可能でより低毒性の方法で実施しているプロトコルによる
ものと類似した、またはそれよりも優れた治療免疫応答を誘導する抗原ペプチドおよび免
疫療法プロトコルを規定する。HLA適合ドナーのT細胞レパートリーを利用することに
よって免疫寛容を回避することが本発明の重要な要素である。同種BMTによってすでに
示されたように、T細胞応答は、GVHDおよびGVT反応の一部を形成する主要な不適
合HLAタイプ以外の抗原に対するものである。
【0134】
疾患関連タンパク質における保存的単一アミノ酸交換の分析は、遺伝的に受け継がれた
多型の一般的原理に基づき、多型タンパク質の状態に関して患者およびドナーの試験が必
要である。本発明によるコーディングSNP同種抗原の定義は、各個体がメンデルの法則
に従って、遺伝子の一方または他方または両方のコーディングSNP変異体を有し、タン
パク質の所与の位置における一方または他方のアミノ酸を特徴とする一方または他方また
は両方の多型アミノ酸不一致タンパク質変異体を発現できることである。
【0135】
アミノ酸不一致同種抗原の対立遺伝子バージョンの診断は、変化したアミノ酸を含む発
現産物、またはHLAと複合化され単一アミノ酸置換を有する発現産物の断片の分析によ
って、あるいは対象から単離された生物学的試料をSNP改変核酸部分に特異的に結合す
る薬剤と接触させることによって実施することができる。ここで、SNPを含む核酸分子
は、患部組織または臓器の細胞中で優先的にまたは単独で発現される。分析を実施するた
めに、専門家は、コーディング単一核酸分子、相補的核酸、またはその断片を含む核酸分
子からなる薬剤を調製し、標的遺伝子とのハイブリダイゼーション試験を実施する。ある
いは、発現産物中の単一アミノ酸置換対立遺伝子変異体に結合する抗体も同様に使用する
ことができる。HLA分子とアミノ酸不一致対立遺伝子変異体の断片との複合体に結合す
る抗体薬剤も同様に使用することができる。選択した方法によれば、疾患関連組織または
臓器または細胞に由来する試料を用いて、SNP改変核酸分子の分析を実施することが特
に有用である。タンパク質中の適切な治療に関係する単一不一致アミノ酸の診断および選
択は、ドナーとレシピエントに対して同時に優先的に実施され、HLAタイピングなどの
他の分子診断と容易に併用することができる。不適合を試験する強力なツールは、DNA
アレイ形式でアッセイをアレンジすることによって作製することができる。
【0136】
また、本発明によれば、特定のドナーに由来する免疫細胞、すなわち前記アミノ酸にお
ける不適合ドナーからの特異的CTLは、レシピエントにおいて所与のペプチド位置にあ
るアミノ酸変異体を認識することができ、前記ペプチドを提示する前記細胞の標的に対し
て細胞障害性応答を誘導することができる。
【0137】
本発明によれば、いくつかの新しい抗原が検討されており、記述され、同種BMTおよ
びGVTをさらに改良するのに使用できるだけでなく、患者を治療するのにも使用できる
。レシピエント自身のT細胞レパートリーは、SNPによってコードされたアミノ酸であ
る相同発現対立遺伝子バージョンに関してそれぞれ欠失して寛容であることが判明したの
で、HLA適合ドナーのレパートリーは、HLAクラスI分子としてT細胞エピトープを
特異的に認識し、提示細胞を死滅させるCTLを異常に含む。これらのいわゆる同種拘束
性CTLは、特異的SNPによって規定されたペプチドの不適合対立遺伝子バージョンを
発現する腫瘍細胞を選択的に死滅させる。SNPによって規定されたT細胞エピトープが
、限定された組織、臓器または腫瘍特異的発現パターンでタンパク質を提示する場合、腫
瘍治療および他の病態一般の治療に本発明を適用することが想定される(envisible)。多
数の選択的に発現される腫瘍抗原が文献に記載されているので、本発明の教示が、腫瘍ま
たは組織または臓器または細胞特異的に発現されると記述されているあらゆるタンパク質
またはDNA配列に適用されることは当業者には明白である。
【0138】
白血病、リンパ腫および骨髄腫の造血性起源、含まれる疾患細胞のクローン起源、およ
びCDクラスタータンパク質(CD-clustered proteins)の限定された発現パターンは、新
しい概念を実証するために特に有利である。白血病血球とCDクラスタータンパク質とし
て知られるタンパク質の両方は、血液形成系、例えば血液幹細胞から生じる。このため、
白血病、リンパ腫および骨髄腫は、本発明を利用して評価され治療される特に適切な疾患
である。白血病、リンパ腫および骨髄腫治療を特に有望なものにしている別の態様は、同
種BMTによって、患者の完全な骨髄幹細胞由来の造血系がドナー血液由来の幹細胞また
は骨髄幹細胞で置換され、次いで、関与するリンパ球を含めた将来のすべての血球が作ら
れるという事実である。
【0139】
癌起源の疾患の中でも、白血病は、本発明による治療に好ましい疾患グループであり、
このグループの中でも、CML患者は治療を受けると最も効果が期待される。一方、AM
LおよびALLの治療は、第2の選択であるが、リンパ腫よりは好ましい。非血液系疾患
のなかでも、RCCは第1の治療標的であり、メラノーマは本発明によって治療されるも
う1つの疾患である。
【0140】
本発明によれば、本発明者らは、同様に、まだ未開拓な固有の抗原分子可変性を用いて
、同種抗原に対する新しい一般化されたキャラクタリゼーション方式を教示し、新しい同
種抗原を規定し、GVHDの回避とGVT反応の強化に関して同種抗原に関係する免疫応
答を精査する。本発明は、必要を満たし、有効な抗癌ワクチンを開発するのに不可欠であ
り、レシピエントにおける骨髄および固形臓器移植片の長期の移植片生着、癌の診断など
関係する利点を提供する。
【0141】
本発明の特定の実施形態は、単一アミノ酸交換をコードする遺伝子の対立遺伝子変異体
、およびより一般的な同種抗原の特定に関係する。前記方法は、
a)所与の組織、臓器または疾患を引き起こす細胞タイプにおいて選択的に発現され、ま
たは過剰発現され、正常な疾患に関係しない組織または臓器においては一般にさほどまた
はまったく発現されない、関連遺伝子および対応するタンパク質のスクリーニング。
【0142】
b)a)によってあらかじめ選択された遺伝子を、既知のSNPについてスクリーニングす
る。ここで、個々の遺伝子のコーディング単一ヌクレオチド変化は、パブリックドメイン
で現在アクセス可能であり、または市販されている1個または複数のSNPデータベース
から直接得ることができる。
【0143】
c)a)によってあらかじめ選択された、DNAデータベースに既知のSNP相関がない遺
伝子を、相同DNA配列を比較し、BLASTなどのアラインメントプログラムを用いて
遺伝子およびタンパク質多型に代表的な可変位置を検出することによってスクリーニング
する。
【0144】
d)所望の遺伝子を網羅するEST配列/タンパク質配列のアラインメントなどの間接的
な方法の実施による、未知のSNPを有する多型遺伝子の特定。ここで、様々なESTデ
ータベースは、同一の配列ストレッチ、重複または部分的に同一なDNA配列ストレッチ
に関する配列情報の重複性をもたらし、配列アラインメント技術および対応する遺伝子の
注釈(annotation)を用いてSNPを特定することが可能である。
【0145】
e)方法a〜d)によってあらかじめスクリーニングされた遺伝子およびまたはタンパク質
を有する疾患関連SNPを、それらの臓器およびまたは組織分布を測定することによって
検証する。
【0146】
f)完全長で、またはそれよりも短いペプチド断片として特定されたペプチドが、T細胞
を刺激し、異なる主要なHLAクラスIおよびまたはHLAクラスII分子に対してT細胞
エピトープまたは入れ子エピトープを含むペプチドを配置し、対応するペプチドを使用し
てT細胞を刺激または抑制することができるかどうかを判定する。
【0147】
本発明で想定される診断適用例は、癌およびまたはBMT、幹細胞および臓器移植であ
るが、これらだけに限定されない。
【0148】
適切なドナーまたはレシピエントを検出可能な様々な技術を、さらに詳細に示す特異的
核酸配列の増幅またはタンパク質もしくはペプチドに基づいて使用することができる。
【0149】
一実施形態によれば、本発明は、前記対立遺伝子、特に個々の遺伝子の対立遺伝子のc
DNAまたはゲノム核酸中の多型ヌクレオチドの検出を含み、試料中のCDクラスター抗
原の対立遺伝子を分類する方法に関係する。
【0150】
優先的な実施形態においては、前記分類方法は、ゲノムのDNAタイピング方法である
。あるいは、前記方法を、cDNAタイピング方法とすることもできる。
【0151】
a)試料中のゲノムポリ核酸を少なくとも一対のプライマーと接触させ、それによって前
記プライマー対が、前記対立遺伝子中の多型ヌクレオチドを含むフランキング領域に特異
的にハイブリダイズし、増幅反応を実施するステップ。
【0152】
b)前記少なくとも一対のプライマーの各々について、ステップa)で増幅産物が形成され
たかどうかを検出するステップ。
【0153】
c)ステップb)の結果から前記試料中に存在するSNP対立遺伝子を推測するステップ。
【0154】
好ましい実施形態によれば、本発明は、上述した方法に関係し、さらに、SNPによっ
て規定された同種抗原の前記対立遺伝子がドナー対立遺伝子とレシピエント対立遺伝子で
異なることを特徴とする。
【0155】
ヒトゲノムのSNP可変性によれば、所与の個体は、彼の両親から受け継いだ所与の遺
伝子の2個のコピーを有する。これらのコピーは、受け継いだ対立遺伝子の異なる対また
は類似の対であってもよく、したがって、専門家は、mRNAをテンプレートとして用い
たRT−PCR、またはゲノムDNAをテンプレートとして用いた標準PCRを常法に従
って使用して、SNPによってコードされた本発明の対立遺伝子アミノ酸変異体を診断で
きることを理解する。
【0156】
正常な遺伝プログラムを有する血球、または血液癌細胞の場合に見られるような異常な
発現パターンを有する血球はすべて、それらの細胞表面上に正常な白血球によって発現さ
れる一般的な様々な分子を有する。白血球細胞表面の系列マーカーおよび追加の分化マー
カーは、常法に従って抗白血球モノクローナル抗体を用いて検出され、抗原は、それらを
分化(CD)抗原のクラスターに割り当てることによって系統的に命名される。このシステ
ムに関するいくつかの情報源が、インターネットで利用可能である。関係者のための好ま
しいウェブサイドは、
http://www.vetmed.wsu.edu/tkp/Search.asp
である。
【0157】
白血球表面分子の正式名称の広く受け容れられている規準、および血液幹細胞が血液癌
細胞を含めたすべての血球の共通した起源を形成しているという事実によって、CD抗原
は、本発明による理想的な候補抗原になっている。また、同種幹細胞移植を必要とする患
者において、レシピエントの完全に独自の免疫および血球系は除去する必要があることか
ら、異常な血球系であるすべての細胞は、新しい造血系を構築する過程全体を通してドナ
ー由来の幹細胞系で最終的に置換される。この点で、CD抗原は、単一「器官」であり、
本発明の発明概念を実施するのに極めて役に立つ。
【0158】
本発明は、現行のCD系で利用可能な数百の既知の白血球タンパク質の中から、あるタ
イプの血液由来の癌に最も代表的なものを選択する方法を教示する。特異的CD抗原、お
よび疾患とそれらとの相関は、当分野の専門家によって例として与えられ、認められ、使
用されている。あらかじめ定義されたCDタンパク質の分析は、白血病およびリンパ腫を
診断し、段階づける現在の基礎を成している。しかし、主として、本発明は、本願に記載
するあらかじめ選択された白血球抗原に限定されず、さらにあらゆる組織、または選択的
に発現されるタンパク質もしくはタンパク質グループも同様に想定できることを理解する
ことは重要である。
【0159】
この点で、本発明は、可溶性同種抗原の多型部分を特徴づけ、コーディングSNPによ
って分子レベルで規定される免疫原性アミノ酸交換を含むCDタンパク質を提供する。疾
患に典型的であり、アミノ酸交換を含む同種抗原として適格な前記CDタンパク質を表2
にまとめた。本願で与える一般的な教示によって、当業者は、当分野で既知の同種抗原、
または当分野ではまだ開示されていない、もしくは本明細書には記載されていない追加の
新しい同種抗原を規定することができ、したがって、本発明は、表2〜5の選択された同
種抗原およびT細胞エピトープに限定されない。
【0160】
一実施形態においては、本発明によって規定される可溶性同種抗原は、すでに同種移植
された患者において免疫応答を誘導する。第2の実施形態においては、抗原は、HLA−
分子として提示されると、細胞溶解作用を引き起こす。免疫化および細胞溶解の誘導に特
に有用なアミノ酸配列を、表3〜5に列挙した配列およびそれらの変異体からなる群から
選択することができる。しかし、先に述べたように、同種抗原のプロセシングは、in viv
oで極めて変わりやすく、交換を示すアミノ酸のN末端およびまたはC末端の伸長は、列
挙した配列からかなり変わり得る。当分野の専門家は、HLA可変性を解析し、その可変
性をHLA結合ペプチドレベルおよびHLA結合ペプチド予測レベルで相関させる方法を
知っている。
【0161】
別の実施形態においては、本発明によって規定される可溶性同種抗原は、患者において
免疫寛容の誘導に必須な免疫応答を誘導する。免疫寛容の誘導は、多型として定義される
、肺、肝臓、腸、関節など様々な組織および臓器で広範に発現される抗原関連GVHDに
特に有用である。免疫化および寛容性の誘導に特に有用なアミノ酸配列を、表1A、Bに
列挙したmHAg配列および表6に列挙したHLA配列およびそれらの変異体からなる群
から選択することができる。HLA抗原は、当分野で既知であり、同種免疫反応をもたら
す主要な抗原として定義される。また、分子内の抗原性ストレッチは十分に記録されてお
り、様々な種類の検出薬剤が利用可能である。それにもかかわらず、本発明は、HLA分
子を記載している。それは、表6に列挙したエピトープは、一般にHLA分子の適合に使
用される超可変抗原領域の外側のタンパク質領域から選択されたからである。したがって
、これらの抗原は、本発明によって規定されるSNPによってコードされたアミノ酸交換
とみなされる。T細胞エピトープは、一般に、幹細胞および臓器移植に関係するGVHD
を防止するのに使用される。
【0162】
別の実施形態においては、免疫原性アミノ酸交換を含む同種抗原は、本発明のポリペプ
チド、とりわけ、単離核酸分子をコードするDNA配列、これらの分子を含む発現ベクタ
ー、およびこれらの分子で形質転換された宿主細胞、またはこれらの分子を形質移入した
宿主細胞を特徴とする。
【0163】
本発明は、単離タンパク質、ペプチド、ならびにこれらのタンパク質およびペプチドに
対する抗体、ならびにこれらのタンパク質およびペプチドを認識するCTLも提供する。
上述の機能的断片を含めた断片および変異体も提供する。さらに上述の分子を含むキット
も提供する。上述のものを、1個または複数の癌関連同種抗原の発現を特徴とする病態の
診断、モニタリング、研究または治療に使用することができる。本発明以前には、mHA
g関連遺伝子などの少数の同種抗原遺伝子しかこれまでに特定されていなかった。
【0164】
別の態様においては、本発明は、本発明による第1およびまたは第2のT細胞エピトー
プ、あるいは、本発明によるポリペプチドおよび既知の腫瘍抗原、または本発明のエピト
ープを免疫原性にする異質なエピトープを含む融合タンパク質を提供する。
【0165】
本発明は、単一の材料、複数の異なる材料、さらには大きなパネルの材料、および材料
の組合せを使用するものである。例えば、SNPを含む単一の遺伝子、前記遺伝子によっ
てコードされた単一のタンパク質、その単一の機能的断片、それに対する単一の抗体など
を、本発明の方法および産物に使用することができる。同様に、対、グループ、さらにこ
れらの材料のパネル、場合によっては他の癌関連同種抗原遺伝子およびまたは遺伝子産物
または従来の腫瘍抗原を、診断、モニタリングおよび治療に使用することができる。対、
グループまたはパネルは、2、3、4、5もしくはそれ以上の遺伝子、遺伝子産物、その
断片、またはこのような材料を認識する薬剤を含むことができる。複数のこのような材料
は、SNPによってコードされた改変遺伝子産物を発現する細胞をモニタリングし、分類
し、その特性を明らかにし、診断するのに有用なだけでなく、そのような材料の多くは治
療に使用することもできる。
【0166】
この例は、そのような遺伝子を発現している、または将来発現する細胞における癌の予
防または急性の予防、発症の遅延、寛解などへの複数のこのような材料の使用である。遺
伝子、遺伝子産物、ならびにこれらの遺伝子および遺伝子産物を認識するあらゆる材料、
およびそのすべての組合せを、本発明によって使用するために試験し、特定することがで
きる。このようなすべての組合せを列挙することはあまりにも冗長すぎ、当業者は、特に
本明細書の教示を考慮し、状況に応じて最も適切な組合せを容易に決定することができる

【0167】
以下の考察から明らかなように、本発明は、治療、診断、モニタリングおよび研究目的
も含めて、in vivoおよびin vitroでの用途を有する。本発明の一態様は、例えば、この
ような遺伝子産物の発現を定量することによって、本発明によって特定されたいくつかの
遺伝子を発現する細胞をフィンガープリントする能力である。このようなフィンガープリ
ントは、例えば、癌治療用の動物モデルにおいてGVTおよびGVHDの効果を予測する
ために特徴的なものである。細胞をスクリーニングして、このような細胞が本発明によっ
て特定されたSNP改変遺伝子を発現するかどうかを判定することもできる。
【0168】
本発明は、一態様においては、コーディングSNPを含む核酸分子によってコードされ
た、治療に関連する同種抗原および癌関連抗原を診断する方法である。この方法は、患者
から単離された生物学的試料を、コーディングSNPを含む核酸分子、その発現産物、ま
たはMHC分子、好ましくはHLA、分子と複合化されたその発現産物断片に特異的に結
合する薬剤と接触させるステップを含む。ここで、コーディングSNPによって規定され
る分子を、核酸分子の形で表1〜6に列挙された同種抗原から選択し、薬剤と、コーディ
ングSNPを含む核酸分子、その発現産物、またはその発現産物の断片との相互作用を明
らかにするために使用することができる。
【0169】
別の態様は、コーディングSNPを含む核酸分子によってコードされた、治療に関連し
癌に関連する同種抗原を診断する方法である。この方法は、BMTの適切なドナーとみな
される対象から単離された生物学的試料を、コーディングSNPを含む核酸分子、その発
現産物、またはMHC分子、好ましくはHLA、分子と複合化されたその発現産物断片に
特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、薬剤と、コーディングSNPを含む核酸
分子、その発現産物、またはその発現産物の断片との相互作用が明らかにするステップを
含み、ここで、コーディングSNPを含む核酸分子は、核酸分子の形で表1〜6に列挙さ
れた同種抗原から選択される。別の実施形態においては、コーディングSNPまたはその
ペプチド断片を含む核酸分子を、抗体を用いて検出することができる。MHC分子、好ま
しくはHLA、分子と複合化された単一アミノ酸改変発現産物の断片は、抗体を用いて検
出することができ、あるいは、HLA複合化ペプチドを、細胞の診断および活性化または
阻害に直接使用することができる。
【0170】
障害は、コーディングSNP改変遺伝子を含む複数の癌関連抗原前駆体の発現を特徴と
することがある。したがって、診断方法は、(本明細書に開示された少なくとも1個の癌
関連抗原前駆体を含めた)抗原前駆体を含む異なるヒト癌関連SNPにその各々が特異的
である複数の薬剤の使用を含むことができる。ここで、前記複数の薬剤は、少なくとも2
、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくと
も8、少なくとも9、または少なくとも10個のこのような薬剤である。上記実施形態の各
々において、薬剤は、本明細書に開示された腎臓および血液由来の癌関連抗原前駆体を含
めたヒト疾患優先的癌関連抗原前駆体に特異的であり得る。
【0171】
本発明は、別の態様においては、表1〜6に列挙した同種抗原から選択されるSNPを
含む核酸分子によってコードされるタンパク質の発現を特徴とする病気の軽減、進行また
は発症を判定する方法である。この方法は、その病気に罹った対象または罹患の疑いがあ
る対象から得られた試料を、前記病気の軽減、進行または発症の判定因子(determination
)として、(i)タンパク質、(ii)そのタンパク質に由来するペプチド、(iii)そのタンパク
質またはペプチドに選択的に結合する抗体、および(iv)そのタンパク質に由来するペプチ
ドとMHC/HLA分子の複合体に特異的な細胞溶解性T細胞、からなる群から選択され
るパラメータについてモニタリングするステップを含む。一実施形態においては、試料は
、体液、体からの浸出液、または組織である。別の実施形態においては、モニタリングス
テップは、試料を、(a)(i)のタンパク質または(ii)のペプチドに選択的に結合する抗体、
(b)(iii)の抗体に結合するタンパク質またはペプチド、および(c)(iv)のペプチドとMH
C分子の複合体を提示する細胞、からなる群から選択される検出可能な薬剤と接触させる
ステップを含む。好ましい実施形態においては、抗体、タンパク質、ペプチドまたは細胞
は、放射性標識、酵素などの検出可能な分子で標識されている。好ましい実施形態におけ
る試料は、ペプチドについて評価される。
【0172】
さらに別の実施形態においては、タンパク質は複数のタンパク質であり、パラメータは
複数のパラメータであり、複数のパラメータの各々は異なる複数のタンパク質に特異的で
ある。
【0173】
本発明は、別の態様においては、ヒト対象用医薬製剤である。医薬製剤は、対象に投与
するとHLA分子とコーディングSNP改変ヒト癌関連同種抗原との複合体の存在を選択
的に高める薬剤、および薬剤的に許容される担体を含む。ここで、ヒト癌関連同種抗原は
、表1〜6に列挙した同種抗原から選択されるコーディングSNPを有する核酸分子を含
む核酸分子によってコードされるヒト癌関連同種抗原前駆体の断片である。
【0174】
一実施形態においては、核酸分子は、表1〜6に列挙した本発明の同種抗原を含む核酸
分子である。一実施形態における薬剤は、対象において、HLA分子と、異なるSNPに
よってコードされたヒト癌関連同種抗原との複合体をその各々が選択的に富化する複数の
薬剤を含む。この複数は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個または少な
くとも5個の異なるこのような薬剤であることが好ましい。別の実施形態においては、薬
剤は、(1)ヒト癌関連同種抗原、またはその機能的変異体を含む単離ポリペプチド、(2)
この単離ポリペプチドまたはその機能変異体を発現するためのプロモーターに作動可能に
結合した単離核酸、(3)この単離ポリペプチドまたはその機能変異体を発現する宿主細胞
、および(4)このポリペプチドまたはその機能変異体とHLA分子の単離複合体、からな
る群から選択される。薬剤は、単離ポリペプチドを発現する細胞とすることができる。
【0175】
一実施形態においては、薬剤は、ヒト癌関連同種抗原またはその機能的変異体を含む単
離ポリペプチドを発現する細胞である。別の実施形態においては、薬剤は、ヒト癌関連同
種抗原またはその機能的変異体を含む単離ポリペプチドを発現する細胞であって、この細
胞は、このポリペプチドに結合するHLA分子を発現する。この細胞は、ポリペプチドお
よびHLA分子の一方または両方を組換え変異体として発現することができる。好ましい
実施形態においては、この細胞は非増殖性である。
【0176】
さらに別の実施形態においては、薬剤は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくと
も4個、または少なくとも5個の異なるポリペプチドであり、それぞれ異なるヒト癌関連
同種抗原またはその機能変異体である。
【0177】
他の実施形態においては、薬剤は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個
、または少なくとも5個の、アミノ酸変化を代表する異なるこのようなポリペプチドに選
択的に結合する複数の異なる薬剤である。上述の実施形態の各々においては、薬剤は抗体
とすることができる。別の態様においては、本発明は、本発明の上述の組成の薬剤と治療
薬または診断薬との複合物で構成される組成物(composition of matter)である。この複
合物は、この薬剤と、抗悪性腫瘍薬である治療薬または診断薬の複合物であることが好ま
しい。
【0178】
本発明は、別の態様においては、医薬組成物であり、表2〜6から選択される単離核酸
分子、および薬剤的に許容される担体を含む。一実施形態においては、単離核酸分子は、
表3およびまたは4から選択される1個の分子である。別の実施形態においては、単離核
酸分子は、異なる癌関連同種抗原を含む2個の異なるポリペプチドをコードする少なくと
も2個の単離核酸分子を含む。この医薬組成物は、単離核酸分子に作動可能に結合したプ
ロモーターを有する発現ベクターも含むことが好ましい。別の実施形態においては、この
医薬組成物は、単離された組換え核酸分子を発現する宿主細胞も含む。本発明の別の態様
によれば、医薬組成物が提供される。この医薬組成物は、単一の同種抗原を表す表2〜6
から選択される単離ポリペプチド、および薬剤的に許容される担体を含む。一実施形態に
おいては、この単離ポリペプチドは、同種抗原である。別の実施形態においては、この単
離ポリペプチドは、それぞれが本明細書に開示されたSNP改変遺伝子によってコードさ
れる異なる癌関連同種抗原を含む少なくとも2個の異なるタンパク質である。ある実施形
態においては、本明細書に記載される医薬組成物の各々はアジュバントも含む。
【0179】
別の実施形態においては、表2〜6から選択される断片は、少なくとも、8ヌクレオチ
ド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチ
ド、20、ヌクレオチド、22ヌクレオチド、24ヌクレオチド、26ヌクレオチド、28ヌクレオ
チド、ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオ
チド、1000ヌクレオチド、およびこれらの間のあらゆる整数長のサイズである。さらに別
の実施形態においては、分子は、ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合するポリペプチ
ドまたはその断片をコードする。本発明の別の態様は、プロモーターに作動可能に結合し
た上述の本発明の単離核酸分子を含む発現ベクターである。一態様によれば、本発明は、
プロモーターに作動可能に結合した核酸を含む発現ベクターである。ここで、この核酸は
SNP改変分子である。別の態様においては、本発明は、SNP改変分子、およびMHC
分子、好ましくはHLA分子をコードする核酸を含む発現ベクターである。さらに別の態
様においては、本発明は、上述の本発明の発現ベクターで形質転換された、またはこの発
現ベクターを形質移入した宿主細胞である。別の態様においては、本発明は、プロモータ
ーに作動可能に結合した上述の本発明の単離核酸分子を含む発現ベクター、またはプロモ
ーターに作動可能に結合した、SNP改変分子である核酸を含み、HLAをコードする核
酸をさらに含む発現ベクターで形質転換された、またはこれらの発現ベクターを形質移入
した宿主細胞である。
【0180】
別の態様においては、本明細書に記載する核酸、およびそれによってコードされるポリ
ペプチドを調製する方法を提供する。一部の実施形態においては、これらの方法は、宿主
細胞を培養するステップと、宿主細胞または培地から核酸またはポリペプチドを単離する
ステップとを含む。別の実施形態においては、これらの方法は、ウサギ網状赤血球または
コムギ胚芽抽出物の無細胞転写およびまたは翻訳溶解物などの核酸の転写およびまたは翻
訳用の非細胞系を用意するステップを含む。しかし、本発明によるタンパク質産生に利用
可能な最も進んだ系は、Roche Diagnosticsによって供給される「細胞工場(cell factory
)」システムを利用したものである。本発明の別の態様においては、これらの方法は、核
酸または発現ベクターを非細胞系に導入するステップと、核酸の転写または翻訳に十分な
条件下でこの系をインキュベートするステップと、非細胞系から転写された核酸または翻
訳されたポリペプチドを単離するステップとを含む。本発明の別の態様によれば、上述し
た本発明の単離核酸分子によってコードされる単離ポリペプチドが提供される。本発明は
、免疫原性である、表1〜6に列挙した分子から選択されるポリペプチドの断片も含む。
一実施形態においては、この断片、またはこの断片の一部は、HLAまたはヒト抗体に結
合する。本発明は、別の態様においては、HLAまたはヒト抗体に結合する、またはその
一部がHLAまたはヒト抗体に結合するヒト癌関連抗原前駆体の単離断片を含む。ここで
、この前駆体は、表1〜6にまとめて列挙した分子から選択されるコーディングSNPを
含む核酸分子によってコードされる。一実施形態においては、この断片は、HLAとの複
合体の一部である。別の実施形態においては、この断片は、8〜12アミノ酸長である。別
の実施形態においては、本発明は、ヒトゲノムに独特な配列を表すのに十分な長さのポリ
ペプチド断片を含み、ヒト癌関連抗原前駆体であるポリペプチドを特定する単離ポリペプ
チドを含む。本発明の別の態様によれば、癌関連同種抗原前駆体の発現の存在を検出する
キットが提供される。このキットは、遺伝子の両方の対立遺伝子バージョンに代表的な一
対の単離核酸分子を含む。
【0181】
本発明によって想定される別の手法においては、免疫細胞は、同種抗原の免疫原性アミ
ノ酸交換を表す表2〜5から選択される列挙された分子から選択されるペプチドを用いた
リンパ球の培養によってin vitroで産生することができる。ここで、対立遺伝子バージョ
ンは、患者の腫瘍細胞によって発現されるバージョンに対応する。このような手順による
同種抗原を使用することによって、同種反応性腫瘍特異的T細胞の集団をそのまま残して
、単一アミノ酸変化を含む単一抗原を認識するドナー細胞障害性T細胞およびヘルパーT
細胞を、予期される宿主の組織適合性抗原に対するT細胞の反応を防止する方法によって
、in vitroで産生することができる。組織適合性同胞がいる患者にもいない患者にも使用
できる別の手法は、骨髄を切除することなく、本発明によって規定されるGVHD誘導同
種抗原に対する免疫抑制を引き起こす、十分我慢のできる(well-tolerated)コンディショ
ニング療法を含む。
【0182】
これらの手順は、固形腫瘍、固形臓器移植を含めた他の適応症に対して非骨髄破壊的幹
細胞移植を使用した最近報告された臨床試験をかなり改善することができる。この手法を
、例えば癌治療に使用するときには、レシピエントが拒絶しないT細胞枯渇造血幹細胞を
レシピエントに与え、続いて、同種抗原認識に関して慎重に刺激されたドナーT細胞(ま
たは腫瘍特異的T細胞)を徐々に多量に投与する。この手法を通して、T細胞の抗腫瘍反
応性を高めるために、生体外(ex vivo)またはその場(in situ)で同種抗原を表2〜5から
選択したペプチドで免疫原性アミノ酸交換したHLA結合ペプチドを利用して、ドナーT
細胞を増やすことが特に有用である。養子免疫治療目的に十分な数のCTLを得ることが
でき、要するに、これによって、GVHDを誘導するリスクを最小限に抑えて、BMT後
に再発した白血病を治療する新規療法が可能になる。
【0183】
単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子などの当分野で既知の自殺遺伝子を挿入
することによって、(単一アミノ酸改変を認識する)同種抗原特異的ドナーリンパ球をin v
itroで操作することも可能である。これによって、医師は、抑制されていない移植片対宿
主病の患者において注入されたリンパ球を破壊することが可能になる。
【0184】
別の手法は、腫瘍細胞上のみで想定される単一アミノ酸改変抗原に対するドナーT細胞
の初回抗原刺激のために、GVHDを増悪することなくGVT活性を増加させる、レシピ
エント限定単一アミノ酸改変癌同種抗原ワクチンを用いた、同種BMTドナーの移植前の
免疫化を含む。要約すると、本発明は、BMTおよび他の移植関連処置に関係する毒性お
よび死亡率を回避するのに役立つ。
【0185】
同種抗原によるワクチン接種を必要とする状況は、腫瘍の苦しみが少ないことと、腫瘍
の苦しみがより大きい場合には腫瘍特異的T細胞を用いた養子移入とによって優先的に特
徴づけられる。しかし、腫瘍CTLエピトープを含むワクチンによる免疫化の結果は、エ
ピトープ送達様式に大きく左右される。驚くべきことに、MHCクラスI結合ペプチドを
用いたワクチン接種は、免疫ではなく、腫瘍の成長促進に関連するCTL寛容性を引き起
こす恐れがある。これらの結果は、GVHD誘導同種抗原に対する寛容性を惹起するワク
チン接種の可能性を示唆している。一方、寛容性が惹起されるのを防止するために、AP
Cの調節は、免疫化に対する応答性を高める有望な戦略である(Sotomayor、1999)。同種
抗原を用いた有用な免疫化プロトコルの詳細な説明を、本発明の実験の部分に開示する。
【0186】
HLA遺伝子型同一移植のレシピエントに関して、同種抗原の不一致は、本発明によっ
て、SNPによってコードされたアミノ酸交換を有するものと定義される。SNPによっ
て規定された同種抗原遺伝子座のゲノムは、対立遺伝子特異的PCR法によって特定する
ことができる。ドナーとレシピエントの相違は、一般に、2個の異なるプライマーセット
によって分析される。各プライマーセットは、対立遺伝子特異的プライマーと共通のプラ
イマーからなり、両方のプライマーセットはイントロン配列を含むことができる。
【0187】
予測される対立遺伝子特異的産物は、すべての場合で、生化学的方法、CTLによる抗
体、またはRT−PCRによって検出される、SNPによってコードされたアミノ酸交換
と相関し得る。本発明を通して示すように、SNPによってコードされる新しい別の同種
抗原の特定は、SNPによってコードされた同種抗原対立遺伝子の有望なゲノムタイピン
グとして使用することができ、ドナー選択を改善し、BMTレシピエントのGVHDのリ
スクが高いか低いかを判定し、GVTの改善されたBMTレシピエントを特定する。この
目的に従うSNPは、配列特異的方法で、ハイブリダイゼーション、プライマー伸長法、
またはDNA連結手法を用いて検出することができる。当業者は、下記適切な手法を選択
し、個々の手法に特有の標準操作手順に従って抗原分析を実施する。
【0188】
1.ハイブリダイゼーション手法は、完全に一致するときにのみ標的配列にハイブリダ
イズする2個の対立遺伝子特異的プローブを基にしている。最適化されたアッセイ条件で
は、一塩基不一致は、対立遺伝子プローブが標的配列にアニールされるのを防止するのに
十分なほどハイブリダイゼーションを不安定化する。対立遺伝子特異的プローブを固体担
体に固定すると、標識標的DNA試料が捕捉され、未結合標的の洗浄除去後に標識を検出
することによって、ハイブリダイゼーション現象を可視化できる。
【0189】
2.プライマー伸長法は、別の極めて堅牢な対立遺伝子識別機序である。これは、極め
て適応性が高く、最少のプライマー/プローブしか必要としない。プローブ設計およびア
ッセイの最適化は、通常極めて簡単明瞭である。テンプレートDNAの配列に相補的な特
定のデオキシリボヌクレオシドを取り込むDNAポリメラーゼの能力に基づいたプライマ
ー伸長手法には多数の種類があるが、2つのカテゴリーにグループ分けすることができる

【0190】
より詳細には、標的DNA中の多型塩基の同定は、対立遺伝子特異的ヌクレオチドを組
み込み、その後配列を決定することによって求められる。対立遺伝子特異的PCR手法を
用いて、PCRプライマーが標的DNA配列に対して完全に相補的である場合のみ、DN
Aポリメラーゼを使用して標的DNAを増幅させる。いくつかの独創的な方法が均質アッ
セイにおけるプライマー伸長法産物分析に考案された。これらの手法のほとんどは、新規
な類似の核酸(nucleic acid analogous)と、出発試薬とプライマー伸長法産物の物理的性
質の重要な差のモニタリングとの組合せである。対立遺伝子特異的PCR手法は、その3
'末端がテンプレートに対して完全に相補的であるときにのみプライマーを伸長させるD
NAポリメラーゼに依拠している。この条件が満たされたときに、PCR産物が産生され
る。PCR産物が産生されるかどうかを明らかにすることによって、標的DNA上の対立
遺伝子を推測することができる。いくつかの革新的手法が、ホモジニアスアッセイにおい
て特異的PCR産物の形成を検出するために利用された。一部は融解曲線分析に基づき、
一部は標的特異的プローブのハイブリダイゼーションに基づく。この手法の変形手法は、
対立遺伝子特異的プライマー伸長法である。ここでは、多型部位を含むPCR産物はテン
プレートとして働き、プライマー伸長プローブの3'末端は、対立遺伝子塩基からなる。
プライマーは、3'塩基が標的DNA中の対立遺伝子を補完する場合にのみ伸長される。
したがって、プライマー伸長現象をモニタリングすることによって、DNA試料中の対立
遺伝子を推測することができる。
【0191】
DNAリガーゼは、DNA分子中のニックを極めて特異的に補修する。2個の隣接する
オリゴヌクレオチドがDNAテンプレートにアニールされるときには、オリゴヌクレオチ
ドがその結合部においてテンプレートに完全に合致する場合にのみ連結される。したがっ
て、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、多型部位における塩基の特性を調べる。標
的DNA中の対立遺伝子を、連結が起きたかどうかを確認することによって推測すること
ができる。連結は、最も高いレベルの特異性を有し、すべての対立遺伝子識別機序の中で
一番最適化が容易であるが、最も遅い反応であり、最も多い改変プローブを必要とする。
しかし、一機序としての連結は、あらかじめPCRによって標的を増幅することなく、遺
伝子型を決定できる潜在的可能性がある。
【0192】
ポジティブな対立遺伝子反応産物は、産物が形成されたときに放出される光をモニター
することによって、または産物の質量を測定することによって、または電気的性質の変化
を検出することによって検出される。
【0193】
用語解説
以下の定義は、以後頻繁に使用するある用語の理解を容易にするためのものである。
【0194】
同種反応性は、T細胞によって特異的に認識される、個体間で異なる多型T細胞エピト
ープを記述するために使用される用語である。
【0195】
本明細書で使用する「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ、
単鎖、およびヒト化抗体、ならびにFabの産物を含めたFab断片、または他の免疫グ
ロブリン発現ライブラリーなどである。
【0196】
「CDタンパク質」は、細胞の正常な遺伝的プログラムによって、または異常な病的発
現パターンによって産生される系列特異的細胞表面マーカーである。CDタンパク質は、
一般に造血性起源に由来する細胞に割り当てられる。これらの細胞マーカーは、科学的コ
ンセンサスによって分化の群別化(CD)を規定する標準命名法に従って命名される。CD
タンパク質は、蛍光性標識、単一特異的免疫試薬、および細胞集団をカウントし分析する
フローサイトメーターを組み合わせたプロセスによって検出される。次いで、細胞を、サ
イズ、マーカー反応性、クローン性および比率によって分類する。この手順は、診断、予
後、残余の疾患評価、治療モニタリング、ならびに白血病、リンパ腫および関係する病態
のケースマネージメントにおいて臨床的に広く使用されており、当業者には周知である。
様々な組織および体液を分析することができる。解釈の質および臨床的有用性を確保する
ために、すべての細胞数測定データは、試料の微視的検査に照らして解釈される。
【0197】
癌マーカーの「免疫フェノタイピング」は、通常、2段階の染色手順を含む。第1段階
では、先に列挙したステップ抗原特異的ネズミmAbを細胞に添加する。mAbの結合を
、FITC複合抗マウスIg抗血清を用いた免疫蛍光技術によって評価する。抗原の分布
を、フローサイトメトリーおよびまたは光学顕微鏡によって分析する。免疫タイピングの
結果は、一般に試料受け入れ後24時間以内に入手でき、細胞数測定マーカー割合が提供さ
れる。関連があるときには、形態的およびマーカー発現レベル(強度)も評価し記述するこ
とができる。抗原発現強度は、継代間で異なることがあり、細胞培養条件に影響されるこ
とがある。
【0198】
「単離された」とは、その自然の状態から「人の力で」変えられたこと、すなわち、自
然に存在する場合、その本来の環境から変化または移動、あるいはその両方がされたこと
を意味する。この用語を本明細書で使用するところによると、例えば、生きている生物に
自然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、その自
然の状態で共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単
離されている」。さらに、形質転換、遺伝子操作または任意の他の組換え方法によって生
物に導入されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その生物の生死に関わらず、前
記生物中に依然として存在する場合であっても「単離されて」いる。
【0199】
「ポリヌクレオチド」は、一般に、任意のポリリボヌクレオチド(RNA)またはポリデ
オキシリボヌクレオチド(DNA)を意味する。これらは、無修飾でも、修飾RNAまたは
DNAでもよい。「ポリヌクレオチド」は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二
本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域の
混合物であるRNA、一本鎖であってもよいDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子
、より典型的には、二本鎖、または一本鎖領域と二本鎖領域の混合物などであるが、これ
らに限定されない。また、「ポリヌクレオチド」とは、RNAまたはDNAまたはRNA
とDNAの両方を含む三本鎖領域を意味する。「ポリヌクレオチド」という用語は、1個
または複数の修飾塩基を含むDNAまたはRNA、および安定性または他の理由で改変さ
れた骨格を有するDNAまたはRNAも含む。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基
、およびイノシンなどの異常な塩基である。様々な修飾をDNAおよびRNAに施すこと
ができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、一般に天然に存在する化学的、酵素的
または代謝的に修飾された形のポリヌクレオチド、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的
な化学的形態のDNAおよびRNAを含む。「ポリヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチ
ドと呼ばれることが多い比較的短鎖のポリヌクレオチドも含む。
【0200】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いに結合した
2個以上のアミノ酸、すなわち、ペプチドイソエステルを含む任意のポリペプチドを意味
する。「ポリペプチド」とは、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと一般に称す
る単鎖と、一般にタンパク質と称する長鎖の両方を意味する。ポリペプチドは、遺伝子に
よってコードされる20種類アミノ酸以外のアミノ酸も含むことができる。「ポリペプチド
」は、翻訳後プロセシングなどの自然のプロセス、または当分野で周知の化学修飾技術に
よって修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は、基本的な教科書、より詳細な
モノグラフ、ならびに膨大な研究文献に十分記載されている。修飾は、ペプチド骨格、ア
ミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含めたポリペプチドのあらゆる場
所で起こり得る。同じタイプの修飾が、所与のポリペプチドのいくつかの部位において、
程度が同じでも異なっても存在し得ることを理解されたい。また、所与のポリペプチドは
、多数のタイプの修飾を含むことができる。ポリペプチドは、ユビキチン結合の結果分枝
していてもよく、分枝を有しても有さなくてもよい環式であってもよい。環式、分枝およ
び分枝環式ポリペプチドは、翻訳後の自然プロセスから得ることができ、または合成方法
によって調製することができる。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル
化、アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合性結合、ヘム成分の共有結合性結合、ヌ
クレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合性結合、脂質または脂質誘導体の共有結
合性結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合性結合、架橋、環化、ジスルフィド結合
形成、脱メチル、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホ
ルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化
、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化
、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などの
タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、ユビキチン結合などがある(例えば、Pro
teins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T.E. Creighton, W.H. Freeman
and Company, New York, 1993; Wold, F., Post-translational Protein Modifications:
Perspectives and Prospects, 1-12, in Post-translational Covalent Modification o
f Proteins, B.C. Creighton, Ed., Academic Press, New York, 1983; Seifter et al.,
"Analysis for protein modifications and no protein cofactors", Meth Enzymol, 18
2, 626-646, 1990, およびRattan et al., "Protein Synthesis: Post-translational Mo
difications and Aging", Ann NY Acad Sci, 663, 48-62, 1992)。
【0201】
ポリペプチド配列の「断片」とは、基準配列よりも短いが、基準ポリペプチドと本質的
に同じ生物学的機能または活性を維持しているポリペプチド配列を意味する。ポリヌクレ
オチド配列の「断片」とは、基準遺伝子配列よりも短いポリヌクレオチド配列を意味する

【0202】
「変異体」とは、基準ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その基本的
諸特性を維持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的なポリヌ
クレオチド変異体は、ヌクレオチド配列が基準ポリヌクレオチドとは異なる。変異体のヌ
クレオチド配列の変化は、基準ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのア
ミノ酸配列が変化したものでも変化していないものでもよい。ヌクレオチドの変化は、以
下に考察するように、基準配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸置換
、付加、欠失、融合および切断をもたらし得る。典型的なポリペプチド変異体は、アミノ
酸配列が基準ポリペプチドとは異なる。一般に、変化は、基準ポリペプチドと変異体の各
配列が、全体として極めて類似しており、多数の領域で同一であるように限定される。変
異体と基準ポリペプチドは、任意の組合せの1個または複数の置換、挿入および欠失によ
ってアミノ酸配列が異なる。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによって
コードされたものでも、コードされていないものでもよい。典型的な保存的置換は、Gl
y、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Th
r;Lys、Arg;ならびにPheおよびTyrである。ポリヌクレオチドまたはポリ
ペプチドの変異体は、対立遺伝子などの天然のものでも、天然には知られていない変異体
でもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非天然変異体は、突然変異誘発技術ま
たは直接合成によって調製することができる。変異体としては、1個または複数の翻訳後
修飾、例えばグリコシル化、リン酸化、メチル化、ADPリボシル化などを有するポリペ
プチドも含まれる。実施形態には、N末端アミノ酸のメチル化、セリンおよびトレオニン
のリン酸化、ならびにC末端グリシンの修飾も含まれる。
【0203】
「対立遺伝子」とは、ゲノム中の所与の遺伝子座にある2個以上の異なる遺伝子形態の
1つを意味する。哺乳動物は二倍体生物なので、遺伝子は2個あり、染色体の対を有する
。適合した姉妹染色体上の2個の遺伝子特定遺伝子座は、特徴となる1つの特定の形質を
制御し、対立遺伝子と呼ばれる。ヒトにおいては、染色体対は、異なる対立遺伝子を有す
ることができる。各遺伝子が異型接合的な状況で発現される場合、それらは共優性である
と言われ、2種類の異なる遺伝子産物または同種抗原が産生される。各遺伝子が同型接合
的な状況で発現される場合、産生される遺伝子産物は1種類のみである。
【0204】
各生物において1個または複数の遺伝子座における遺伝子の配列が同一でないとき、2
つ以上の個体(または系統)は互いに同種であるとされる。同種異系は、通常、関係する遺
伝子座に関して規定される。
【0205】
同種異系と考えられる種の各個体は、同種移植に対して免疫応答を引き起こす抗原性差
を示す。これらの抗原は、しばしば同種抗原と呼ばれる。
【0206】
「同種抗原」は、2グループの組織適合性遺伝子産物によって表される。これらは、主
要組織適合性抗原および副組織適合性抗原とされた。主要組織適合性抗原は、急性で、迅
速で、激しい移植片拒絶を刺激し、HLAクラスIおよびIIタンパク質によって表される
。副組織適合性抗原は、慢性で、緩やかな、より強度の低い反応を刺激し、機能的に異質
なタンパク質グループである。単一エピトープに対するモノクローナル抗体を産生するこ
とができ、血清学的組織分類を可能にする、様々なHLA抗原に特異的な異なるモノクロ
ーナル抗体のパネルが開発された。
【0207】
「多型」とは、集団内のゲノムの所与の位置におけるヌクレオチド配列(および、関連
がある場合には、コードされたポリペプチド配列)の変化を意味する。
【0208】
「一塩基多型」(SNP)は、ゲノム内の1つの塩基位置における、塩基変動の発生をい
う。SNPは、遺伝子内、またはゲノムの遺伝子間領域内に存在し得る。
【0209】
突然変異によって導入されたSNPを検出するために多数の方法が使用されている。例
えば、突然変異ras遺伝子の極めて高感度なアッセイ、および急性白血病における提示遺
伝子型(presentation genotype)および再発遺伝子型(relapse genotype)の研究へのその
応用が記述されている(Oncogene 9、1994、553〜563)。2種類の広範に使用されている
方法は、対立遺伝子特異的増幅(ASA)および突然変異体濃縮PCR(mutant-enriched P
CR)(ME−PCR)である。ASAプロセスの場合、少なくとも3個のプライマーが必要
である。共通プライマーがアッセイされる多型に対して逆方向に相補となるように使用さ
れる。この共通プライマーは、多型な塩基から50bpから1500bpの間で隔たったものと
できる。それ以外の2つ(またはそれ以上)のプライマーは、最後の3'塩基が、多型を構
成する2つ(またはそれ以上)の対立遺伝子の1つと一致するように変化している点を除い
て、互いに同一である。そして、それぞれ、共通プライマーおよび1つの対立遺伝子特異
的プライマーを使用して、2つ(またはそれ以上)のPCR反応を、サンプルDNAについ
て行う。特に白血病に関係する遺伝コーディングSNPを検出する場合、癌細胞一般にそ
れは当てはまるので、多量の正常細胞バックグラウンド中のわずかな割合のSNP含有細
胞に関する一般的な制限はない。一方、血球を分析するときには、104〜106個の不適
合タイプの対立遺伝子のバックグラウンド中で1個のSNP対立遺伝子を検出することは
、移植後の患者の再発性疾患を分析するときには役に立つことがある。SNPの検出に対
して極めて高感度で特異的なアッセイが記述されている(Sidransky、Science、278、1997
、1054〜1058(非特許文献1)、Ahrendt等、J.Natl.Cancer.Inst.91、1999、332〜339)。
【0210】
本発明に関する重要な態様は、このようなアッセイを、大規模なスクリーニングを可能
にする自動化されたハイスループット形式で実行する必要性であり得る(Dong等、J.Natl.
Cancer Inst.93、2001、858〜865、Ahlquist等、Gastroenterology、119、2000、1219〜1
227、Ahrendt等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96、1999、7382〜7387)。
【0211】
本明細書中で使用されている「スプライス変異体」は、同じゲノムDNA配列から一旦
転写され、ただし、択一的なRNAスプライシングを受けている、RNA分子から作製さ
れたcDNA分子をいう。択一的なRNAスプライシングは、一般には、イントロンを除
くために、一次RNA転写物がスプライシングを受ける際に生じ、それぞれ、異なるアミ
ノ酸配列をコードしてもよい、1つ以上のmRNA分子の産生を引き起こす。スプライス
変異体の用語はまた、上記のcDNA分子によってコードされるタンパク質をもいう。
【0212】
「同一性」および「類似度」は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌ
クレオチド配列の間における相互関係を反映しており、非常に類似する長さの配列を比較
することにより決定される。あるいは、より短い、限定された長さにわたって、決定して
もよく(所謂、局所的なアラインメント)、不ぞろいな長さの配列において、より好適であ
る。
【0213】
2個以上の配列の同一性および類似度を比較する方法は当分野で周知である。したがっ
て、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package、バージョン9.1中の利用可能なプロ
グラム(Devereux J等、Nuclei Acids Res、12、387〜395
好ましくは、BLOSUM62 アミノ酸置換行列(Henikoff S and Henikoff JG、Proc
.Nat.Acad.Sci.USA、89、10915〜10919、1992)を、比較の前に、ヌクレオチド配列をアミ
ノ酸配列に予め翻訳する場合をも含み、ポリペプチド配列の比較において使用する。
【0214】
基準となるポリヌクレオチド配列と比較した際、0.95の同一性指標を有するポリヌクレ
オチド配列は、既に記載したように、基準配列内の塩基100個毎に、平均して5個までが
、任意の組合せで、欠失、置換または挿入されていてもよい。同じことが、同一性指標の
他の値、例えば、0.96、0.97、0.98および0.99についても、必要に応じて変更して適用さ
れる。
【0215】
「融合タンパク質」は、2つの、関連しない、融合された遺伝子またはそのフラグメン
トによってコードされるタンパク質をいう。本発明による最も一般的な意味では、2個の
アミノ酸バージョンを含む少なくとも2個の同種抗原または断片を単一ポリペプチド中で
融合することができる。より具体的な例では、前記同種抗原それぞれのその断片を、免疫
グロブリンのFc部分と融合する。米国特許第5541087号、同5726044号には例が開示され
ている。Fc同種抗原の場合には、融合タンパク質の一部として免疫グロブリンFc領域
を採用することは、治療に使用するときに、Fc同種抗原または同種抗原断片を機能的に
発現させて、このような融合タンパク質の薬物動態学的諸特性を改善し、かつ免疫学的諸
特性を改善するのに有利である。いくつかの症例では、2量体Fc同種抗原の産生が特に
有利なことがある。Fc−DNA構築体は、5'から3'方向に、分泌カセット、すなわち
哺乳動物の細胞から、融合パートナーとしての免疫グロブリンFc領域断片をコードする
DNA、および同種抗原をコードするDNAまたはその断片の搬出を誘発するシグナル配
列を含む。いくつかの用途では、融合タンパク質の残部をそのまま残しながら機能的Fc
部分を突然変異させることによって固有の機能的諸特性(補体結合、Fc受容体結合)を変
えることができ、または発現後Fc部分を完全に除去できることが望ましい。
【0216】
(CDタンパク質などの)「組織特異的」発現マーカーは、白血病およびリンパ腫の診断
に日常的に使用され、また、固形腫瘍の診断において、従来の細胞学のみでは明瞭な結果
が得られないときに有用であることが判明している。造血性起源に由来する細胞は、一般
に系列マーカー(CDタンパク質)と呼ばれる、組織特異的遺伝子を最も多く発現する細胞
タイプの1つであることが当分野では知られている。系列細胞集団としては、単球、NK
細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、リンパ球(T細胞およびB細胞)、樹状細胞、
それらの前駆体などがある。ほとんどのヒト癌基準細胞系、特に白血病およびリンパ腫に
関係するヒト癌基準細胞系は、DSMZから入手可能である。したがって、特性の明らか
なモノクローナル抗体(mAb)のパネルを用いて行われるすべてのヒト癌細胞系上での組
織マーカーの発現に対する定型試験は一般的な技術である。一般に、これらの抗原の発現
パターンは、それが由来する細胞タイプの発現パターンを反映している。しかし、個々の
mAbによって検出されるタンパク質発現は、長期間にわたって必ずしも安定ではない。
したがって、所与の細胞系に対して報告されているすべてのマーカーが、必ずしもDSM
Z基準クローン上で発現されるわけではない。また、同じ抗原に対する異なるAbは、常
に同程度に結合して同等の染色強度をもたらすわけではない。したがって、報告された各
結果は異なることがあり、そのまま細胞系の同一性を疑うことはできない。
【0217】
組織特異性または腫瘍特異性は、異なって使用することができる命名法であり、ある種
の組織において他の組織よりも過剰発現される遺伝子または分子を意味し、あるいは1つ
の組織において発現されるが他の組織においては発現されない、組織に特有の遺伝子また
は分子を意味することができる。本発明によれば、両方の遺伝子カテゴリーは、SNPに
よってコードされる多型を含むので標的抗原とみなさなければならない。
【0218】
特許および特許出願に限らず、これらを含む、本明細書中で引用されている刊行物およ
び参考文献の全ては、十分に述べているように、個々の刊行物または参考文献を、参照し
て組み込むために、明示的かつ個別的に示唆されているように、その全部を、参照するこ
とで、本明細書中に組み込まれる。本出願が優先権を主張する特許出願はいずれも、先に
刊行物および参考文献に関して記載したと同様に、その全部を、参照することで、本明細
書中に組み込まれる。
【実施例】
【0219】
更なる実施例
実施例1
癌マーカー分析のための試料要件
CDタンパク質および癌マーカーは、蛍光標識された単一特異的免疫学的試薬(抗体)と
、細胞集団をカウントし分析するフローサイトメーターとを組み合わせた診断プロセスに
よって常法に従って検出される。次いで、細胞を、サイズ、マーカー反応性、クローン性
および比率によって分類する。個々の抗CD抗体および白血病/リンパ腫基準細胞系は、
ATCC、DSMZなどの基準細胞コレクションから容易に利用可能である。所望のパネ
ルの抗CD抗体を選択して、所望の白血病/リンパ腫免疫表現型を特徴づけ、選択し、D
SMZから入手可能な選択され標準化された白血病/リンパ腫基準細胞系と前記表現型を
必要に応じて比較する。この手順は、診断、予後、残余の疾患評価、治療モニタリング、
ならびに白血病、リンパ腫および関係する病態のケースマネージメントにおいて臨床的に
広く使用されており、当業者には周知である。CDタンパク質発現プロファイルの特徴が
明らかな基準抗CD抗体それぞれ基準白血病/リンパ腫細胞系が、例えば、DSMZ-Deutsch
e Sammlung von Microorganism und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Br
aunschweig、GERMANYから入手可能である。様々な組織および体液を分析することができ
る。解釈の質および臨床上の有用性を確保するために、すべての細胞数測定データは、試
料の微視的検査に照らして解釈される。
【0220】
血液:
ヘパリンナトリウム処理された(緑色のふた)管中の血液5〜7ml、およびEDTA(
紫色のふた)管中の血液5〜7ml。反転させて十分混合する。最適な結果を得るために
、試料は、24時間以内に受け取るべきである。試料を24時間以内に受け取ることができな
い場合、試料を室温で静置することができるが、血液塗沫標本は、EDTA血液から作製
され、試料とともに送付されなければならない。あるいは、ACD管(黄色のふた)7また
は10mlを、ACD管を取り出すのと同時に得られた白血球カウントおよび示差的血液カ
ウント(differential blood count)とともに提示することができる(別の管のカウントを
、ACDの希釈効果を回避するために用意しなければならない)。
【0221】
骨髄:
ヘパリンナトリウム処理シリンジ(試料1ml当たり約500USPのヘパリンナトリウム
)に吸引された骨髄1〜2ml。十分混合する。試料をヘパリンナトリウム処理管に移す
。骨髄の細胞が少ない(hypo cellulare)場合は、さらに試料を必要とすることがある。試
料は24時間以内に受け取るべきである。24時間以内に到着するように試料を発送すること
ができない場合は、試料を運搬媒体に入れるべきである(その場合でも、最初の抜き取り
には、ヘパリン処理シリンジが必要である)。
【0222】
組織:
組織生検を組織培地を含む無菌容器中に置く。試料は、生存度を確実に最適なものにす
るために24時間以内に受け取るべきである。生存度の検査は、組織から単離された細胞を
分析する前に実施する。
【0223】
実施例2
白血病関連組織マーカーの選択
白血病およびリンパ腫の免疫フェノタイピングは、生物学的系列および分化の段階に応
じて、血液、骨髄およびリンパ組織の細胞を特定し定量するために使用されるプロセスで
ある。使用される細胞マーカーは、CDタンパク質を定義する標準命名法に従って命名さ
れる。CDマーカータンパク質は、造血性起源の細胞による発現のために、本発明による
SNP分析を開始するのには好適である。白血病、リンパ腫などの血液系疾患の診断に関
連する細胞表面マーカーのリストを表2に示す。最終目標は、対応するタンパク質におけ
るアミノ酸の変化の原因になるこれらのCDタンパク質内の多型を特定することである。
【0224】
例えばB細胞系またはT細胞系に属し得る、リンパ系起源または骨髄起源の未分化白血
病細胞の分類は分析の第一段階であり、系列タイプ内の白血病細胞の細分類がこれに続く
ことがある。細胞表面マーカー発現に関する詳細な情報の収集は当分野で知られており、
実験設定を計画するのに使用される。より多くのマーカー、特に癌マーカーが、一般に、
発現プロファイリングによって解明されるにつれ、本手法に適切な癌の数は次第に増加し
ている。白血病プロファイルを規定するのに使用できる最も卓越したマーカーが本発明に
おいて試験され、リストが表2に与えられている。当分野の専門家は、血液由来の特定の
疾患を診断し治療するのに最適なこれらのCDマーカーを容易に選択することができる。
【0225】
以下の項に、特定の疾患を対象とする関連CDタンパク質プロファイルを要約する。特
定の疾患としては、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形
成症候群(MDS)および他の慢性の骨髄増殖性症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性
リンパ芽球性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫を含めたリンパ腫(ホジキ
ンまたは非ホジキン)、中程度のリンパ腫、核に切れ込みを有しない高度の小細胞型(smal
l non-cleaved cell)リンパ腫Bまたは高度のT細胞リンパ芽球性リンパ腫、未分化大細
胞型リンパ腫、外套細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、結節外疾患またはB症状を有す
るホジキンリンパ腫、大きい腫瘍、重度の再生不良性貧血などであるが、これらだけに限
定されない。
【0226】
あるプロファイルの異なるタンパク質であるいくつかのSNPの組合せは、本発明を疾
患の治療および診断に適用するときに特に有利である。
【0227】
推定上または既知の白血病細胞集団の急性白血病プロファイルは、T細胞マーカー(C
D2、CD3、CD4、CD5、CD7およびCD8)の分析に基づく。B細胞マーカー
は、好ましくはCD10、CD19、CD20、CD21、CD22およびCD24、ならびに骨髄/
単球マーカー(CD13、CD14、CD15およびCD33)である。有用であれば、さらにCD
23、37、38、39、40、72、73、74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79、C
D80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86などのB細胞マーカーを含め
ることができる。急性巨核芽球性白血病は、マーカーCD61、CD42およびCD41を使用
することによって検査することができる。成熟状態(非系列)は、CD34、HLA−DRお
よびCD10(CALLA)を用いて評価される。正当な理由があるときには、末端トランス
フェラーゼ(TdT)も別の試験として必要になることがあり、あるいは病理医が添加する
ことができる。
【0228】
慢性白血病プロファイルおよびリンパ腫プロファイルは、全T細胞集団の汎T細胞マー
カー:CD2、CD3、CD7、CD5の存在を分析することによって評価され、CD4
(Tヘルパー)およびCD8(T細胞障害性/抑制因子)亜集団の分析が規定通りに含まれる
。骨髄/単球マーカーとしては、CD14、CD15などがある。全B細胞集団は、B細胞マ
ーカーCD19およびCD20の発現を確認することによって絞り込むことができる。CD5
とCD20の同時発現は、新生物増殖と関連することが多い。CD41およびCD42は、芽球
発症におけるCMLの分化に対するものとすることができる。CD10(CALLA)、CD
22、CD23、CD38、CD45、FMC−1およびHLA−DRは、標準プロファイルに含
まれる。他のマーカーを、T細胞障害(CD1、CD30)、ホジキン病(CD15、CD30)、
または未分化(Ki−1)リンパ腫(CD30)を評価するために添加することができる。
【0229】
ヘアリー細胞白血病、前リンパ球性白血病、または外套細胞リンパ腫および白血病は、
慢性の白血病プロファイルおよびリンパ腫プロファイル(上述)と、毛様細胞マーカーCD
11c(補体受容体)、CD25(IL−2受容体)、CD103、および前リンパ球性毛様細胞マ
ーカーFMC−7の発現とを特徴とするB細胞疾患である。Bリンパ様マーカーCD23は
、慢性白血病と外套細胞リンパ腫の異なる診断でのCD5発現に関連して評価される。C
D23は、基礎的なリンパ腫プロファイルの一部である。
【0230】
未分化(Ki−1)リンパ腫およびホジキン病は、マーカーCD1、CD15およびCD30
(Ki−1)によって評価される。
【0231】
実施例3
DNAデータベースをスクリーニングすることによって特定された新しいSNP
SNPは、ヒトゲノムの対立遺伝子変化を表すDNAデータベースをスクリーニングす
ることによって特定される。ここで、DNA配列は、異なる個体に由来するものである。
スクリーニングは、EST、SNPまたはゲノムDNAデータを含めて様々なレベルで実
施することができる。しかし、これは、最終的には同じ結果をもたらす。直接のSNPス
クリーニングに有用なデータベースは、
http://www.jbic.or.jp
http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp
http://www.celera.com
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/
を含むデータベースグループから選択することができる。
【0232】
CDクラスタータンパク質中のSNPの特定を説明するために、多様な癌関連CDタン
パク質を表す様々なアミノ酸配列を、プログラムのデフォルトモード(翻訳DNAデータ
ベースに対するタンパク質配列)を用いたtblastn検索に適用した。スクリーニン
グには、アミノ酸交換に効果のないSNP(サイレントな突然変異)を除外することができ
るので、ヌクレオチド配列よりもタンパク質配列が特に有用である。データバンク検索を
、1個または複数の前記パブリックドメインSNPデータベースを使用して実施した。
【0233】
特定のCDタンパク質配列の様々なクローン間でcDNA配列の不一致(推定SNP)を
示す生成アラインメントを、以下の厳格な判定基準に従ってさらに処理した。
【0234】
(i)ゲノムDNAまたはEST(発現配列タグ)と、Xを含むCD配列とのアラインメン
トは配列決定誤差であり、無視されなければならない。
【0235】
(ii)ゲノムDNAクローンと、5'または3'末端に隣接する不一致を有するCD配列と
のアラインメントはエキソン/イントロン境界の指標であり、同様に無視されなければな
らない。
【0236】
(iii)ゲノムDNAまたはEST配列と、完全に適合したDNAによって包囲されたC
D配列との間のアラインメントの単一塩基差は、推定SNPに対する厳密な指標である。
【0237】
DNAレベルで特定されたSNPを、受託コードによって利用可能なタンパク質配列を
比較することによってさらに分析した。Tblastn検索によって、下記CD42の例で
示されたアラインメントが得られ、対応するゲノムクローン中に存在する推定SNPが特
定された。SNP分析に適用された関連タンパク質のリストを表2に示す。
【0238】
実施例4
CD42SNP変異体の分析
実施例3に記載した手順をより詳細に説明するために、CD42bタンパク質を例とし
て選択した。受託コード第P07359号として利用可能なタンパク質配列を、CD42bタン
パク質中の推定SNPのスクリーニングに適用した。
【0239】
tblastn検索によって、以下に示すアラインメントが得られ、受託番号AC032038
.2のゲノムクローン中に存在する2個の推定SNPが特定された。
【0240】
【表1】

CD42bのアミノ酸配列:
【0241】
【表2】

CD42b断片アラインメント:
対立遺伝子変異体であって、CD42bタンパク質中のアミノ酸交換を含む配列を太字
で示す。
【0242】
【表3】

マイナス鎖HSP:
【0243】
【表4】

実施例5
癌細胞系のHLAおよびSNPの試験
CDタンパク質発現プロファイル特性が明らかな、エプスタインバーウイルスによって
形質転換された白血病/リンパ腫細胞系は、例えばDSMZから入手可能であり、あるい
は患者から単離することができる。これらの細胞について、mAb BB7.2(または、Ame
rican Type Culture Collection、Manassas、VAを通して入手可能な他の抗体)を用いて免
疫蛍光によってHLA−A2の発現(または、他の所望のクラスI発現)を試験した。造血
性細胞および/または癌細胞の発現およびSNP状態を、ゲノムPCRによって試験した
。Poly(A)+RNAを、QickPrep Micro mRNA精製キット(Amersham Pharmacia Biotech、P
iscatawa、NJを用いて単離した。例えばCD42遺伝子(受託番号J02940)の細胞または組
織特異的発現および多型を検出する場合は、CD42のcDNAのそれぞれのPCRプライ
マー(5'−CAAGAGAACTCGCTGTATACA−3'および5'−AAGGGG
TGGTTTCGGGTATGT−3')対応塩基位置586〜607および塩基位置939〜960を
使用して、374塩基対PCR産物を得た。SNP検出を、続いてABI 310キャピラリー配列
決定装置を用いてPCR産物の配列を決定することによって実施した。
【0244】
実施例6
CD42b中のSNPコードHLA結合ペプチドの特定
DNAおよびタンパク質配列中のコーディングSNPの検索に加えて、適切なHLAク
ラスI結合モチーフの選択は、関連SNPを規定するための別の重要なステップである。
【0245】
より代表的ないくつかのHLAクラスI提示分子を選択した。SYVPEITHIアル
ゴリズムの使用は、表4に示すHLA結合ペプチドおよびスコアを予測するのに役立った
。8〜27のスコアは、HLAクラスI分子との結合に対する個々のペプチドの高い親和性
を示している。
【0246】
この分析の成果は、ペプチドの9残基のうち8個が一致したヒト配列である。両方のヒ
トペプチドを合成し、感作活性について試験した。まれに、1つを超えるアミノ酸不一致
を、9残基T細胞エピトープ内に認めることができる。
【0247】
実施例7
in vitro試験用HLA結合ペプチドの選択
SNP由来アミノ酸交換のin vitro試験の場合は、HLA−A2の既知の結合モチーフ
(HLA−A*02またはHLA−B51またはHLA−B62)を優先的に保有する9量体ペプ
チドを、同種抗原CD42の場合に述べたように、成熟タンパク質配列中で特定しなければ
ならない。
【0248】
一般に、HLA−A2結合T細胞エピトープの選択は、in vitroでの抗原提示試験に使
用することができる細胞系が当分野で存在するために、他よりも有利である。このような
細胞系は、なかでも、表面にHLA−A2を有するLCL.174(TAP欠失突然変異細胞
系)である。
【0249】
実施例8
HLA−A2結合ペプチドの単離
HLA−A2結合ペプチドを単離し、HLA−A2特異的抗体BB7.2、酸処理、限外
ろ過、およびHPLC分画を用いた標準手順に従って配列を決定した(Seeger等、Immunog
enetics、49:571〜576、1999、Falk等、Nature、351:290〜296、1991)。ペプチド含有H
PLC画分をプールし、約1010細胞からのペプチド抽出物に対応するアリコートをナノ
キャピラリーHPLC ESI MSによって分析した(Schirle等、Eur.J.Immunol.、30:
2216〜2225、2000)
実施例9
ペプチド合成
ペプチドをF−mocケミストリーによって合成した。F−mocケミストリーは、G.
A.Grant Synthetic Peptides:A User's Guide、W.H.Freeman and Co.(1992)に記載され
ている。ペプチドの同一性を、アミノ酸分析およびマトリックス支援レーザー脱離イオン
化質量分析法によって確認した。
【0250】
凍結乾燥ペプチドをDMSOに20mMで溶解し、等分して−80℃で保存した。ペプチド
を無血清培地で4mMに希釈し、所望の最終濃度で使用した。
【0251】
実施例10
合成HLA結合ペプチドのin vitro試験
HLA−A2分子に結合可能なSNP誘導単一アミノ酸変化を含むペプチドを、LCL.17
4系統のTAP欠失突然変異細胞表面でHLA−A2の発現を増加させることができるか
どうかの能力によって特定した。手短に述べると、LCL.174細胞を、RPMI 200μlと
ペプチド50μM中2×106細胞/ウェルで丸底96ウェルプレート中で培養し、37℃で終夜
インキュベートした。次いで、これらの細胞を、HLA−A2特異的mAb、BB7.2(AT
CC、Rockville、Md.)を用いて処理し、続いて、FITC複合ヤギ抗マウスIgGで染
色した。蛍光強度をフローサイトメトリーによって分析した。インフルエンザウイルスマ
トリックスM1タンパク質ペプチド、FluMP58は、既知のHLA−A2拘束性CT
Lエピトープであり、これを正の対照として使用した。B型肝炎ウイルスエンベロープ抗
原HBenvAg125ペプチドはHLA−A2に結合せず、これを負の対照として使用し
た。
【0252】
実施例11
抗原反応性細胞を特定するための4量体技術
多量体MHCクラスI/ペプチド複合体は、通常、細菌中で組換えβ2ミクログロブリ
ンおよび重鎖HLA分子が発現して生成される。重鎖は、突然変異して膜貫通領域が除去
され、C末端に特異的ビオチン化配列が付加される。精製されたタンパク質は、高濃度の
ペプチド/エピトープの存在下でin vitroで再び折り畳まれて、安定な可溶性HLAペプ
チド複合体を形成することができる。酵素によるビオチン化後、これらの複合体は、4個
のビオチン分子を結び付けるストレプトアビジンとともに多量化される。蛍光複合ストレ
プトアビジンを使用することによって、フローサイトメトリーによる染色細胞の可視化が
可能になる。
【0253】
MHCクラスI/ペプチド複合体を使用してT細胞を活性化する場合には、4量体技術
をサイトカイン分泌分析と併用して免疫応答をより詳細に試験することが役立ち得る。
【0254】
実施例12
CTLのin vitroでの刺激
末梢血単核球(PBMC)を、ヒトHLA−A2+対象から得たヘパリン処理末梢血液30
mlから、Ficoll-Hypaque(Sigma、St.Louis、Mo.)を用いた遠心分離によって調製した。
CD8+細胞は、抗CD8抗体で被覆された磁気マイクロビーズを用いて製造者の指示に
従って(Milteny Biotec、Auburn、Calif.)、新たに単離されたPBMCからポジティブ選択さ
れ、あるいは場合によっては、液体窒素で凍結させたPBMCからポジティブ選択される

【0255】
CD8+細胞を、無血清DMEMに再懸濁させ、48ウェルプレートの500μlアリコート
中で3×106細胞/ウェルで培養した。37℃、5%CO2で2時間後、繰り返し洗浄して
非接着細胞を除去し、接着単球(adherent monocytes)を50μMペプチドおよび5μg/m
lヒトβ2ミクログロブリン(Sigma、St.Louis、Mo.)とともに4時間インキュベートした
。無血清DMEMで洗浄後、rhlL−7(0.5ng/ml;R&D Systems、Minneapolis
、Minn.)を補充した10%ヒト血清を含むDMEM500μl中の1.5×106個のCD8+細胞
(フローサイトメトリーによる純度>90%)を各ウェルに補充した。
【0256】
rhlL−2を2日後に25U/mlで与え、その後、培地の半分を置換することによっ
て週に2回与えた。10日目に、CTL培養物を、照射(5000rad)自己LCLを用いて応答
者/刺激物質比5で再刺激した。あるいは、本発明によって規定される50μM HLA結
合ペプチドとともにインキュベートしたLCL.174細胞を使用して、HLA−A2+対象から
得られたCTL培養物を再刺激した。以下に記述するように、再刺激から1週間後にCT
Lアッセイを実施した。
【0257】
キャラクタリゼーション後、ペプチド刺激CTLを30%ヒト血清、10%DMSOおよび
60%DMEMからなる培地中で凍結させ保存することができ、次いで、解凍し再刺激して
さらに分析することができる。(インフルエンザウイルスマトリックスM1タンパク質に
由来する)ペプチドFluMP58を、ペプチド特異的CTLのin vitroでの刺激の正の対
照として使用した。
【0258】
実施例13
同種抗原特異的CTLの生体外での産生
好ましい同種抗原の対立遺伝子バージョンであるHLA結合ペプチドを使用し、特異的
CTLを単離することによってさらに特徴を明らかにすることができる。この手法の可能
性は、未感作アミノ酸不一致対立遺伝子陰性の健康な供血者から同種抗原特異的CTLを
生体外で産生することによって示された。合成ペプチドを間欠投与した樹状細胞をAPC
として使用して、自己または同種未感作CD8+T細胞を刺激することができる。次いで
、生体外で産生されたアミノ酸不一致特異的CTLを使用して、急性骨髄性白血病(AM
L)および急性リンパ性白血病(ALL)患者に由来する白血病細胞を効率的に溶解するこ
とができる。非造血細胞に対しては溶解反応性は検出されないはずである。十分な数のC
TLを養子免疫療法用に得ることができる。この技術が、本発明によって発見されたすべ
てのSNP規定同種抗原に制限なく適用可能であることは特記される。
【0259】
実施例14
51Cr放出細胞毒性試験:
これらのエフェクター細胞の細胞溶解活性は、標識標的細胞から同位体が放出されるこ
とによって測定される。細胞溶解活性は、クロム放出アッセイによって試験されることが
多いが、他の方法も利用可能である。クロム放出アッセイでは、放射性クロム(51Cr)で
標識された標的細胞を、活性化されたCTLと混合する。Na251CrO4の形の放射性ク
ロムは生細胞によって取り込まれ、細胞内でクロムが還元される。還元されたクロムが溶
解細胞から放出されるときには、他の細胞がそれを再利用することができず、そのため、
放出されたクロムの量は、エフェクター細胞の細胞溶解活性の良好な指標となる。原則的
には、任意のタイプの細胞を、CTL活性を測定するために標的として使用することがで
きるが、リンパ芽球、組織培養細胞、腫瘍細胞などの活性化された細胞が最適であること
が判明している。固有の死滅活性は、K562と呼ばれる基準細胞系の溶解によって測定さ
れる。この試験は、ドナーまたはレシピエント由来のLAK細胞または細胞障害性T細胞
クローン(エフェクター)の活性を測定するために使用される。LAK細胞またはT細胞ク
ローンは、HLAと同種抗原ペプチドの適切な組合せを発現する標的細胞を死滅させる。
【0260】
選択された同種異系T細胞エピトープを間欠投与した優先的な標的細胞系は、ヒトHL
A−A2陽性EBV−LCL細胞系である。また、豊富な白血病細胞系源がDSMZを通
して利用可能である。標的となる1×106個の細胞を5mlファルコンチューブに入れ
る。細胞を遠心分離し、Na252CrO4(高活性)10μl混合物を添加して再懸濁させ、37
℃で45分間インキュベートする。標識細胞をPBS/FBSで3回洗浄し、1ml培地に
再懸濁させカウントする。標識細胞を、必要になるまで氷上で保存する。試験には、濃度
5〜104細胞/mlの総容積5mlの各標的細胞タイプが必要であり、濃度を調節する。
【0261】
細胞障害性リンパ球(CTL)は、前駆体Tリンパ球から以下のようにして産生すること
ができる。1)アクセサリー細胞およびヘルパーT細胞の存在下での、「刺激物質」細胞
によって運ばれる抗原による特異的刺激、または2)インターロイキン−2とともにイン
キュベーションして4〜5日間にわたって誘導され、LAK細胞と称されるポリクローナ
ル活性化。好ましいエフェクター細胞を50mlファルコンチューブに移す。細胞を洗浄し
、再懸濁させ、濃度2.5×106細胞/mlに調節する。エフェクター細胞および標的細胞
は、4つの異なるエフェクター:標的比(50:1、25:1、12.5:1、6:1)で混合する
必要がある。各エフェクター:標的比は、3つ組で試験すべきである。連続希釈したエフ
ェクター細胞を、エフェクター細胞の総容積が希釈後に100μlになるようにプレート中
で調製する。次いで、標的細胞懸濁液100μlを添加した。ウェル当たりの標的細胞数を5
000とすべきである。自然に最大放出するように標的細胞のみを含む培地100μlのウェル
を含める。37℃、5%CO2で4時間プレートをインキュベートする。4時間後に回収し
、細胞毒性アッセイのガンマカウンターでカウントする。
【0262】
実施例14
ワクチンプロトコルA
多型タンパク質全体、または少なくともその多型ペプチド部分の形の選択したSNPコ
ード同種抗原を使用する。タンパク質およびペプチドの一部は免疫原性であるが、他のも
のは免疫原性を欠く。この欠如は、タンパク質またはペプチドを担体に結合させることに
よって最も容易に克服される。有用な担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KL
H)、ウシ血清アルブミン、BSA)、マイコバクテリウムボビスBCGまたはツベルクリ
ンの精製タンパク質誘導体、コレラ毒素サブユニットBなどである。結合は、任意の二官
能性架橋剤を用いて実施することができる。スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、
スベリン酸ジサクシミジル(Disuccimidyl Suberate)、グルタルアルデヒドなどのホモ二
官能性試薬も使用することができる。タンパク質またはペプチドの一方が架橋可能な基を
表面に持たないことが判明している場合、ヘテロ二官能性試薬の使用が有利なこともある
。m−マレイムドベンゾイル−N−ヒドロキシコハク酸イミド、スルホ−m−マレイムド
ベンゾイル−N−ヒドロキシコハク酸イミドなどのヘテロ二官能性試薬が当分野で既知の
他のヘテロ二官能性試薬であり、複合化される化合物の生化学的諸性質に従って選択する
ことができる。好ましい例における最適な抗原に複合化された担体はKLH−抗原複合体
であり、免疫アジュバントQS−21とともに優先的に使用することができる。さらなる抗
原処方には、ISCOM、MDP、マイコバクテリアボビスBCGまたは水酸化アルミニ
ウムが含まれる。サポニンまたはCpGオリゴヌクレオチドは、免疫応答を高めることが
でき、選択された配列または抗原複合体に有用であり得る。別の手順としては、選択した
抗原を用いた繰り返しのワクチン接種などがある。
【0263】
十分振とうした後、静脈内、腫瘍内、皮内、皮下または経口経路によってヒト対象に投
与される。投与は、好ましくは、0、7および14日にすべきである。場合によっては、B
細胞エピトープペプチドも含めることができ、追加免疫用途でも同様である。
【0264】
ワクチンプロトコルB
提案されるワクチン薬剤は、目的SNPコード同種抗原ペプチドをin vivoで発現可能
な、適切なDNA配列が挿入された複製プラスミドを有するネズミチフス菌の弱毒系統で
ある。本発明者らは、ベクターとして、それを無毒にするΔcrp−1およびΔcya突
然変異、および正常asdA遺伝子が内在プラスミド上に存在しないかぎりそれを成長で
きなくするΔasdA−1突然変異を有する弱毒化ネズミチフス菌種X 4072(Schodel等
、Infect.Immun.1994、62:1669〜1676)を提案する。しかし、他の安全な菌種を代わりに
使用することもできる。
【0265】
プラスミドpYANは、Nco I部位を有するように改変されたpYA292型である(S
chodel等、上記)。Nco I部位によって、目的とする異質なタンパク質またはペプチド
のAUGをインフレームでプラスミドに挿入することが可能になる。pYANは、抗生物
質耐性遺伝子を欠き、サルモネラ症状を示唆する徴候が出現した場合に抗生物質を使用す
ることが可能になる。
【0266】
pYANは、そのプラスミドを保持する細菌のみの生存を維持する正常なasda遺伝
子を有する。AUGをコードするDNA配列とそれに続くそのペプチドをコードする配列
が合成される。推奨用量は、小児では5×104コロニー形成単位、成人では5×105
ロニー形成単位である。
【0267】
成人の場合、細菌を重炭酸ナトリウム(NaHCO3 2gの蒸留水150ml溶液)とともに
投与する。胃酸を中和する溶液120mlを最初に飲むべきである。1分後、今度は細菌を
含む残りの炭酸水素塩溶液30mlを飲む。ワクチン接種前後90分間は飲食はできない。
【0268】
ワクチンプロトコルC
別法では、DNAを、D.Zhangなど(J.Infect.Dis.1997、176:1035〜1040)によって記載
されたワクチン接種プロトコルに類似のものなどの他のDNA送達技術によって送達する
ことができる。
【0269】
好ましい実施形態を上述したが、当業者は、本発明の範囲内で他の改変形態が可能であ
ることを理解されたい。例えば、大腸菌中でDNAを発現する代わりに、他の宿主用にD
NAを最適化し、それをこれらの宿主中で発現させることができる。
【0270】
また、特異的配列が特定されたが、本発明の技術を利用して、望ましいCTL活性化特
性を有する所望の8〜10量体よりも長いペプチドを挿入することができると考えられる。
したがって、特許請求の範囲は、本発明の全範囲を評価するために、最も広範に解釈され
るべきである。
【0271】
ワクチンプロトコルD
樹状細胞(DC)は、癌に対するワクチン接種用の生きているベクター(life vectors)
と考えられ、この処置の抗原を送達するのに特に有用である。
【0272】
より最近の臨床試験のほとんどは、CD14+前駆体(5、6)から生体外で産生されるD
C(いわゆる単球由来のDCまたはMo−DC)を用いて実施され、現在最高の標準(gold
standard)と考えられている(Thurner B等、J Exp Med.190:1669、1999;Schuler-Thurne
r B等、J Exp Med.195:1279、2002)。Mo−DCは、血液中の前駆体から数日で多量に(
1回のアフェレーシス当たり3〜5億個の成熟DC)再現性良く産生することができる(Fe
uerstein Bなど、J Immunol Methods.245:15〜29、2000)。Mo−DCの場合、成熟刺激
の選択が成功の鍵であり、具体的には、DCをリンパ様臓器に誘導するCCL19およびC
CL21に応答して移動するMo−DCを発現するCCR7を得るためにPGE2が成熟刺
激の一部でなければならない(Luft Tなど、blood.100:1362、2002;Scandella Eなど、B
lood.100:1354、2002)。DCを主成分とする対腫瘍ペプチドワクチンのGMP臨床産生を
可能にするDC調製方法が利用可能である。選択されたSNPコード同種抗原を有するペ
プチドを、DCのペプチドローディングに使用することができる。DCに抗原を入れる別
の手法は、所望の抗原をコードする裸のRNAをトランスフェクションまたはエレクトロ
ポレーションプロトコルによって取り込み(Van Tendeloo VF等、Blood.98:49、2001)、
続いて患者において抗原特異的T細胞をin vitroならびにin vivoで誘導することによっ
て実施することができる。
【0273】
DCには、最高20個のHLAクラスI拘束性T細胞エピトープおよび10個のHLAクラ
スII拘束性T細胞エピトープを入れることができ、DCは抗原特異的CTL応答を誘導す
る天然アジュバントとして作用する。
【0274】
4量体技術およびCTL頻度決定に加えて、生体外で実施されるELISPOT分析(実施例15
に記載する方法)を使用して、免疫応答をモニターすることができる。
【0275】
実施例15
免疫原性およびワクチン接種効力の評価
癌抗原を用いる臨床試験においては、最も重要な目標はそれらの免疫原性を求めること
である。これは、通常、サイトカイン、インターフェロンなどのリンパ球活性化の代理マ
ーカー、または抗体応答などの免疫反応の終点を測定することによって実施される。
【0276】
当分野の専門家に知られている標準アッセイは、(アロ)抗原特異的抗体応答が誘導され
るかどうかを判定する。これは、ワクチン投与前後の患者から得られた血清を用いて、細
胞または抗原ベースの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって実施される。自己白血病
細胞、または他の病原細胞、または単離抗原、特にそのアミノ酸交換を含む同種抗原は、
ELISAを設定するために好適な標的である。
【0277】
別の方法は、遅延型過敏(DTH)皮膚試験による免疫原性の評価である。すべての患者
は、ワクチン投与前後に、抗原、同種抗原、または照射された自己癌細胞の皮内注射を受
ける。硬化、および注射後48時間存在する紅斑の程度が測定される。また、DTH試験は
、免疫系細胞の流入があるかどうかを判定する免疫組織化学的分析にかける生検試料の収
集を含むことができる。
【0278】
癌特異的エフェクター細胞を特定する別の方法は、抗原と遭遇して産生された特異的活
性化T細胞を測定するのに有用な最近開発されたアッセイに基づく。活性化細胞は、サイ
トカインを放出することによって応答し、それらを測定するために抗サイトカイン抗体が
使用される。酵素結合イムノスポット(ELISPOT)アッセイとして知られる技術である。ELI
SPOTは、ドナーまたは患者のリンパ球のin vitroでの再刺激を高感度で実施し測定するこ
とができる。
【0279】
エフェクター細胞によって分泌されるサイトカインが定量され、それに加えてT細胞頻
度を測定するためにフローサイトメトリー分析を実施することができる。インフルエンザ
ウイルス(FLU)、サイトメガロウイルス(CMV)または破傷風トキソイド(TT)の基準
ペプチドまたはタンパク質を、系を標準化するために使用することができる。IL−4分
泌またはIFN−ガンマ分泌を検出することは、正常PBMC内の抗原特異的CD4+
らびにCD8+T細胞の指標となる。記憶型細胞(memory-type cells)は、CD27およびC
D28を発現するがCD57は発現しない。IL−2を用いて単離し増殖させた後、回収した
細胞は抗原特異的細胞毒性を示す。抗原特異的T細胞の頻度は、TTなどのまれにしか遭
遇しないほんの中程度の免疫原性抗原ではより低い(10.000〜1.000.000個に1個)が、持
続性のウイルスCMVでははるかに高い(血清陽性ドナーの100〜10.000個のPBMCに1
個)。これらの技術は、本発明によれば、癌に特異的なT細胞および同種抗原を分析し単
離するのに貴重なツールである。
【0280】
実施例16
同種活性化の測定
同種活性化T細胞の効力を列挙し測定する方法は、不活性細胞から活性細胞を区別する
ことを臨床的に含むことができる。
【0281】
XTTホルマザン還元アッセイは、同種活性化細胞の活性を非刺激対照と比較するのに
有益である。このアッセイは、生きている細胞がXTTを赤色−オレンジホルマザン色素
に還元する能力に基づいており、不活性細胞から活性細胞を区別するのにも役立つ。これ
は、実質的にあらゆる培地中の実質的にあらゆる細胞に使用することができる。有用な細
胞の範囲は、105から5×106/mLである。試薬は、96ウェルプレート、平底(ELISA
プレートではない)1mg/mL MTT(2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−ス
ルホ−フェニル−2H−テトラソリウム(tetrasolium)−5−カルボキシアニリニド(carb
oxanilinide)塩、Sigma)の(新しい)PBS溶液1.53mg/mL PMS(フッ化フェニルメ
タンスルホニル、Sigma)のPBS(凍結、保護されたロムライト(rom light))溶液である
。このアッセイは、細胞を含む培地100μlを96ウェルプレート中に2つ組または3つ組
で置くことによって実施される。培地100μLのみを対照として使用する。第1のカラム
はブランクのままにする。発生させるために、使用直前にPMSをXTTとプレミックス
し(5μg/ml XTT)、XTT 50μlを各ウェルに添加する。プレートを軽くたたい
て混合する。プレートを覆い、37℃で4時間インキュベートする。470nm(基準650nm)で
プレートをカウントする。
【0282】
実施例17
CD3/CD69またはCD3/FDA発現の分析のためのフローサイトメトリー
これは、同種混合リンパ球刺激後にTリンパ球活性化を分析するアッセイである。CD
69発現またはエステラーゼ活性は、サイトカイン分泌と相関し、Tリンパ球活性化の代理
指標として使用することができる。非刺激リンパ球は、その表面でCD69を発現せず、低
レベルの非特異的エステラーゼしか含まない。同種抗原または非特異的分裂促進因子によ
って活性化された後、CD69の発現が48時間以内(24時間でピーク)に出現する。エステラ
ーゼ活性は、刺激後まもなく増加し、数日間続く。すべての同種刺激リンパ球反応が同じ
動力学で進行するわけではなく、培養1、2および3日目に活性化を測定することが好ま
しい。
【0283】
ドナーおよび患者の細胞の試験試料を、少量の培養物中で0.5×106細胞/mlで2%
FCS−RPMI中で混合する。これらの培養物を5%CO2インキュベーター中で37℃
で試験するまで保持する。
【0284】
実施例18
細胞増殖アッセイ
DNAへの[3H]−チミジン取り込みを以下のとおり測定した。応答者のリンパ球を、
RPMI1640含有10%ウシ胎児血清、抗生物質(ストレプトマイシン/ペニシリン)お
よび5×10-5M 2−メルカプトエタノール中に100万細胞/mlで懸濁させる。これら
の細胞100μlを丸底マイクロタイタープレート(Costar)の3つ組ウェルに播種する。次
いで、同種抗原を含む刺激物質細胞を応答者細胞の調製と同じ方法で、ただし使用前に30
00 R(137Cs源)を照射して調製する。刺激物質細胞100μlを応答者細胞に添加し、混
合リンパ球培養物を37℃、5%CO2で7日間インキュベートする。その後、[3H]−チミ
ジン(0.5mCi/ml、ICN Pharmaceuticals、Costa Mesa、Calif.)10μlを各ウェル
に6時間添加する。次いで、マイクロタイタープレートをMASHハーベスターを用いて
収集し、収集したウェルを液体シンチレーションカウンターでカウントすることによって
、取り込まれたチミジンの量を求める。次いで、刺激インデックス(SI)を、混合リンパ
球培養物に取り込まれた[3H]−チミジンのcpmを対照(非刺激)培養に取り込まれた[3
H]−チミジンのcpmで割った比を計算することによって求める。アクリジンオレンジ
取り込みを、[3H]−チミジン取り込みの代わりに使用することができる。
【0285】
実施例19
腫瘍抗原の特定技術
血清学的クローニング手法(組換えcDNA発現クローニングによる腫瘍抗原の血清学
的分析)であるSEREXを、Salim等(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1995、92:11810〜1181
3)によって記載されたように実施することができる。また、参照により本明細書に援用す
る米国特許第5,698,396号を参照されたい。本願によれば、同種BMTを最近受けた患者
から得られた抗血清を使用して、患者の白血病細胞cDNAから構築された発現ライブラ
リーをスクリーニングすることによって、癌細胞中で発現される免疫原性タンパク質抗原
を特定する。そのようにして特定された抗原をコードするクローンは、その抗血清を採取
した患者において高力価の体液性免疫応答を誘発することが判明した。このような高力価
のIgG応答は、検出された抗原がヘルパーT細胞によって認識されることを意味し、同
種BMT後の患者を評価するのに特に役立ち得る。次いで、発現された腫瘍抗原を、HL
AクラスIおよびクラスIIモチーフの有無、およびCTLとの反応性についてスクリーニ
ングすることができる。SEREXは、一連の腫瘍タイプに適用され、いくつかの新規な
癌関連免疫原性遺伝子産物がクローン化された(Tiireci等、Mol.Med.Today、1997、3:3
42〜349;Sahin等、Curr.Opin.Immunol.1997、9:709〜716;Old等、J.Exp.Med.1998、187:
1163〜1167)。本願によれば、検出された抗原は、それらに対する抗体応答を欠くために
この方法によっては通常利用できない同種抗原に特異的に関係する。
【0286】
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ種の第1の個体と第2の個体との比較し、特定のタンパク質の異なる対立遺伝子変異体を特定して選択するex vivoの方法であって、該比較による差が前記個体の1つの特定の病状または疾患に演繹され、前記方法が以下のステップ、
(i)前記第1の個体および第2の個体の選択された組織または臓器の試料を得るステップと、
(ii)HLAタンパク質に結合し、SNPによってコードされる前記タンパク質の対立遺伝子変異体、その発現産物、またはその発現産物の断片の少なくとも1個の単一アミノ酸不一致の前記試料をスクリーニングするステップと、
(iii)前記個体のいずれか1つに発生するこのような不一致を選択するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記試料が患部組織に由来し、前記アミノ酸不一致が病状または疾患の個体においてのみ発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドまたはポリペプチドが、病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質にのみ結合する、あるいは病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質に好んで結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドまたはポリペプチドが細胞障害性Tリンパ球(CTL)によって認識される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
幹細胞移植を必要とする特定の病状または疾患の、進行、軽減または発症を判定するex vivoの方法であって、
(i)前記特定の病状または疾患に伴う特定のタンパク質の対立遺伝子の少なくとも1つの異なる単一アミノ酸不一致であり、HLAタンパク質に結合し、SNPによってコードされる単一アミノ酸不一致、その発現産物、またはその発現産物の断片のために疾患の個体および健常なドナーの選択された組織または臓器の試料をスクリーニングするステップと、
(ii)前記病状または疾患の個体のみに生じる前記単一アミノ酸不一致を特定して選択するステップと、
(iii)前記(ii)から選択されたアミノ酸不一致、前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドもしくはポリペプチド、または該ペプチドもしくはポリペプチドに選択的に結合する抗体を、同種移植の前および/または後の罹患した個体から得られた試料について測定するステップと、
(iv)前記単一アミノ酸不一致、前記ペプチドもしくはポリペプチド、または該抗体の存在の有無を測定して、特定の病状または疾患の、進行、軽減または発症を判定するステップと、
を含む方法。
【請求項6】
前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドまたはポリペプチドが、病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質にのみ結合する、あるいは病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質に好んで結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドまたはポリペプチドが、細胞障害性Tリンパ球(CTL)によって認識される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記病状または疾患が癌である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記癌が白血病である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ドナーからの造血幹細胞の同種移植を含む治療を行った個体の特定の病状または疾患の、進行、軽減、または発症を判定するex vivoの方法であって、
(i)病状または疾患の個体と、該病状または疾患の無いドナーとから、選択された組織または臓器の試料を得るステップと、
(ii)前記特定の病状または疾患に伴う特定のタンパク質の対立遺伝子の少なくとも1つの異なる単一アミノ酸不一致であり、HLAタンパク質に結合し、SNPによってコードされる単一アミノ酸不一致、その発現産物、またはその発現産物の断片のために前記試料をスクリーニングするステップと、
(iii)前記病状または疾患の個体のみに生じる前記単一アミノ酸不一致を特定して選択するステップと、
(iv)前記(iii)から選択されたアミノ酸不一致、前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドもしくはポリペプチド、または該ペプチドもしくはポリペプチドに選択的に結合する抗体を、同種移植の前および/または後の罹患した個体から得られた試料について測定するステップと、
(v)前記単一アミノ酸不一致、前記ペプチドもしくはポリペプチド、または該抗体の存在の有無を測定して、特定の病状または疾患の、進行、軽減または発症を判定するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドまたはポリペプチドが、病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質にのみ結合する、あるいは病状または疾患の個体の抗原提示細胞またはHLAタンパク質に好んで結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単一アミノ酸不一致を示すペプチドまたはポリペプチドが、細胞障害性Tリンパ球(CTL)によって認識される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記病状または疾患が癌である、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記癌が白血病である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患自体および疾患に関連するスクリーニングされる特異的タンパク質が、表2に示される組織マーカーからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
造血幹細胞の同種移植のための方法において用いられる、請求項10から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
癌、特に白血病の治療または診断において用いられる請求項10から15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
所与の種からの複数の目的とするタンパク質に以下のステップを含む方法を適用することにより、1つまたは複数の個体のSNPプロフィールを作製する方法であって、
(i)目的とするタンパク質もしくはペプチド、またはそのサブセットを規定するステップと、
(ii)前記種の少なくとも2個のDNAライブラリーであるデータベースを、前記規定されたペプチドもしくはタンパク質またはそのサブセットについてスクリーニングするステップと、
(iii)コード領域に少なくとも1個の単一核多型を含むDNA配列によってコードされた対立遺伝子ペプチド/タンパク質変異体、その発現産物またはその断片のアミノ酸交換を特定し選択するステップと、
(iv)前記多型を含むアミノ酸残基を含む8量体から25量体のエピトープを作製するステップと、
(v)MHCタンパク質に結合するそのようなエピトープを選択するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記SNPプロフィールが疾患に関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が癌である、請求項19に記載の方法。

【公開番号】特開2010−252806(P2010−252806A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165695(P2010−165695)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2004−513505(P2004−513505)の分割
【原出願日】平成15年6月13日(2003.6.13)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】