説明

同軸用避雷装置

【課題】 避雷素子の劣化状態を迅速かつ確実に検出することができ、それが許容できる範囲か否かを判断でき、コスト面や取付スペース的な面においても有効な同軸用避雷装置を提供する。
【解決手段】 避雷素子が内蔵された金属製筐体13の一端にアンテナ等が接続される第一の同軸コネクタ14を設けると共に、金属製筐体13の他端に無線通信機器が接続される第二の同軸コネクタ15を設けた同軸用避雷器11を備え、金属製筐体13の避雷素子と対応する部位に形成された透孔を介して避雷素子に対向配置され、避雷素子への雷サージ侵入を放電による発光状態で検出する受光素子18と、その受光素子18の出力に基づいて避雷素子への雷サージの侵入回数を点灯回数でカウント表示する発光素子19,20とを実装した配線基板21を収容した絶縁性ケース22を、同軸用避雷器11の金属製筐体13に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルを接続する同軸コネクタを有し、その同軸ケーブルから侵入する雷サージに対する保護用避雷素子を内蔵させた同軸用避雷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無線設備やTV共聴設備などでは、アンテナ等から侵入する雷サージに対して無線装置やTV装置などの無線通信機器を保護するため、アンテナ等に接続された同軸ケーブルを同軸用避雷器を介して無線通信機器に取り付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された同軸用避雷器は、避雷素子としてギャップ型避雷素子(以下、単に避雷素子と称す)が内蔵された金属製筐体の両端に一対の同軸コネクタを有し、一方の同軸コネクタをアンテナ等に至る同軸ケーブルに接続すると共に、他方の同軸コネクタを無線通信機器の端子部に接続するものである。金属製筐体内の避雷素子は、同軸コネクタの中心導体と外部導体である金属製筐体との間に接続され、その金属製筐体が接地されている。
【0004】
この避雷素子は、セラミック製容器の両端に一対の電極を設け、ガスが封入された容器内部にギャップを形成した構造を有する。このような構造を有する避雷素子を備えた同軸用避雷器では、アンテナ等から同軸ケーブルを介して侵入する雷サージを、避雷素子の放電により吸収することで無線通信機器を雷サージから保護するようにしている。
【0005】
前述の無線設備やTV共聴設備などで使用される周波数は、数10MHzから数GHz程度の広帯域である。無線設備やTV共聴設備などでは、このような周波数で通信が行われているため、高周波信号に用いる同軸用避雷器では、信号波形の歪みが発生しないように金属製筐体に内蔵する避雷素子として、静電容量の小さい避雷素子を使用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−242354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の特許文献1に開示された同軸用避雷器で使用される避雷素子は、仕様値以上の雷サージにより劣化する場合がある。また、仕様値未満の雷サージであっても、避雷素子に侵入した雷サージの大きさや回数によってその避雷素子の放電開始電圧の特性が徐々に劣化してしまう場合がある。
【0008】
避雷素子の劣化により動作開始電圧は高くなるが、通信状態は正常であるため、無線通信機器からの異常検出が行えず、同軸用避雷器の避雷素子が劣化していることを検出することができない。そのため、避雷素子による保護機能が失われた状態で無線通信機器が運用されることになり、同軸用避雷器に雷サージが侵入しても無線通信機器を保護することが困難となり、その損傷のおそれが極めて大きくなる。
【0009】
以上のように仕様値以上の雷サージで避雷素子が劣化する場合や、仕様値未満の雷サージにより避雷素子の放電開始電圧が劣化した場合、このような避雷素子の劣化の有無を同軸用避雷器の外部から目視で確認することが極めて困難であるというのが現状であった。
【0010】
近年、同軸用避雷器について、雷サージに対して無線通信装置を有効に保護していることを目視で確認できる機能を備えていることが要求されている。同様に、避雷素子の劣化状態を速やかに検出することができ、それが実質的に故障したとみなせる状態に至る前に避雷素子を交換する時期を推定できる機能についても要求されている。
【0011】
このような要求に対して、同軸用避雷器における避雷素子の劣化状態を速やかに検出することができ、それが許容できる範囲か否かを判断できるようにするためには、雷サージの侵入の有無や大きさを常時監視する必要がある。この雷サージの侵入を常時監視するためには、同軸用避雷器の接地線にサージカウンタ等を取り付けることが考えられる。
【0012】
通常、無線設備やTV共聴設備などで使用される同軸用避雷器は多数個に亘り、それら多数個の同軸用避雷器に対して共通する接地線に1個のサージカウンタを取り付けた場合、多数個の同軸用避雷器のうちのどの同軸用避雷器の避雷素子が劣化しているのかを検出することが困難である。
【0013】
このことから、同軸用避雷器における避雷素子の劣化状態を正確に特定するためには、1個の同軸用避雷器に対して1個のサージカウンタが必要となる。その場合、無線設備やTV共聴設備などで使用される多数個の同軸用避雷器のそれぞれにサージカウンタを取り付けることになるため、コスト面や取付スペース的な面でサージカウンタを取り付けることが現実的に困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、避雷素子の劣化状態を迅速かつ確実に検出することができ、それが許容できる範囲か否かを判断でき、コスト面や取付スペース的な面においても有効な同軸用避雷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明に係る同軸用避雷装置は、避雷素子が内蔵された金属製筐体の両端に一対の同軸コネクタを設けた同軸用避雷器を備え、金属製筐体の避雷素子と対応する部位に形成された透孔を介して避雷素子に対向配置され、避雷素子への雷サージ侵入を検出するサージ検出部と、サージ検出部の出力に基づいて避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示する表示部とを実装した配線基板を収容した絶縁性ケースを、避雷器の金属製筐体に装着したことを特徴とする。
【0016】
本発明では、サージ検出部および表示部を実装した配線基板を収容した絶縁性ケースを避雷器の金属製筐体に装着したことにより、避雷素子への雷サージ侵入をサージ検出部で検出し、そのサージ検出部の出力に基づいて避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示部で表示することで、避雷素子の劣化状態を迅速かつ確実に目視で確認することができる。また、絶縁性ケースを避雷器の金属製筐体に装着するだけの構造であるため、コスト面や取付スペース的な面においても有効で、コスト低減およびコンパクト化が図れる。さらに、サージ検出部および表示部を実装した配線基板が絶縁性ケースに収納されているため、金属製筐体に流れる雷サージから保護されて損傷のおそれが極めて小さい。
【0017】
本発明における避雷素子は、セラミック製容器の内部にギャップが形成されたギャップ型避雷素子であることが有効である。このように避雷素子として静電容量の小さいギャップ型避雷素子を使用すれば、無線設備やTV共聴設備などで高周波信号を用いる同軸用避雷器において信号波形に悪影響を与えることなく、アンテナ等から同軸ケーブルを介して侵入する雷サージを、ギャップ型避雷素子の放電により吸収することで無線通信機器を雷サージから保護することができる。
【0018】
本発明におけるサージ検出部は、ギャップ型避雷素子への雷サージ侵入を、ギャップ型避雷素子の放電による容器の発光状態で検出する受光素子である構造が望ましい。例えば、前述のように避雷素子としてギャップ型避雷素子を使用した場合、雷サージ侵入によるギャップ型避雷素子の放電で容器が発光状態となる。このギャップ型避雷素子における容器の発光状態を受光素子で検出することにより、ギャップ型避雷素子への雷サージ侵入を容易に確認することができる。
【0019】
本発明における表示部は、避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示する表示器を有していることが望ましい。このように表示器を使用すれば、避雷素子への雷サージの侵入履歴としてその侵入の有無を容易に表示することができる。
【0020】
本発明における表示部は複数個の表示器で構成され、その表示器のそれぞれは表示状態の視認可能な方向が異なるように配線基板上に配置されている構造が望ましい。このようにすれば、同軸用避雷器の取付状態に左右されることなく、複数個の表示器のうち、いずれかの表示器の表示状態を確実に目視することができる。
【0021】
本発明における表示部は、避雷素子への雷サージの侵入回数をカウント表示する表示器を有していることが望ましい。このようにすれば、避雷素子への雷サージの侵入履歴としてその侵入の有無だけでなく、侵入回数をカウント表示することで、避雷素子の劣化状態を検出することができ、それが許容できる範囲か否かを判断することもできる。
【0022】
本発明における絶縁性ケースは、樹脂製であることが望ましい。このようにすれば、絶縁性ケースを低コストで容易に製作することができる。また、配線基板を雷サージから容易に防護することができる。
【0023】
本発明における絶縁性ケースは、箱型形状を有する金属製筐体に対して抱持するような形状を有し、金属製筐体に着脱可能とした構造が望ましい。このようにすれば、絶縁性ケースを破損することなく、同軸用避雷器の取り付けを容易に行うことができる。また、配線基板の交換等のメンテナンスが容易に行える。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、金属製筐体の避雷素子と対応する部位に形成された透孔を介して避雷素子に対向配置され、避雷素子への雷サージ侵入を検出するサージ検出部と、そのサージ検出部の出力に基づいて避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示する表示部とを実装した配線基板を収容した絶縁性ケースを、避雷器の金属製筐体に装着したことにより、避雷素子への雷サージ侵入をサージ検出部で検出し、そのサージ検出部の出力に基づいて避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示部で表示することで、避雷素子の劣化状態を迅速かつ確実に目視で確認することができる。また、絶縁性ケースを金属製筐体に装着するだけの構造であるため、コスト面や取付スペース的な面においても有効で、コスト低減およびコンパクト化が図れ、信頼性の高い同軸用避雷装置が提供できてその実用的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態で、(A)は同軸用避雷装置の全体構成を示す正面図、(B)は(A)の左側面図、(C)は(A)の右側面図である。
【図2】(A)は図1の同軸用避雷装置から絶縁性ケースを取り外した同軸用避雷器を示す正面図、(B)は(A)の左側面図、(C)は(A)の右側面図である。
【図3】(A)は図1の絶縁性ケースを示す正面図、(B)は(A)の左側面図、(C)は(A)の右側面図である。
【図4】(A)は図1(A)の同軸用避雷装置で絶縁性ケースを断面とした拡大正面図、(B)は図1(B)の同軸用避雷装置で絶縁性ケースを断面とした拡大左側面図である。
【図5】図1の同軸用避雷装置で電池を電源として使用する場合の回路構成を示す回路図である。
【図6】図1の同軸用避雷装置における発光素子によるカウント表示を説明するための波形図である。
【図7】(A)は図1(A)の同軸用避雷装置の取り付け状態を示す説明図、(B)は図1(B)の同軸用避雷装置の取り付け状態を示す説明図である。
【図8】図1の同軸用避雷装置で専用のDC電源ユニットを電源として使用する場合の回路構成を示す回路図である。
【図9】複数個の同軸用避雷装置を連結した取り付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る同軸用避雷装置の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、例えば数10MHzから数GHz程度の広帯域で通信が行われる無線設備やTV共聴設備などにおいて、アンテナ等から侵入する雷サージに対して無線装置やTV装置などの無線通信機器を保護するため、アンテナ等に接続された同軸ケーブルと無線通信機器との間に取り付けられる同軸用避雷装置を例示する。
【0027】
図1(A)〜(C)に示す同軸用避雷装置は、図2(A)〜(C)に示す同軸用避雷器11に図3(A)〜(C)に示すカウンタ部12を装着した構造を具備し、このカウンタ部12により雷サージの侵入回数をカウントする機能を同軸用避雷器11に一体化したものである。
【0028】
同軸用避雷器11は、図2(A)〜(C)に示すように、直方体の箱型形状を有する金属製筐体13の両端に一対の同軸コネクタ14,15を設けた構造、つまり、金属製筐体13の一端にアンテナ等に至る同軸ケーブルが接続される第一の同軸コネクタ14を設けると共に、その金属製筐体13の他端に無線通信機器が接続される第二の同軸コネクタ15を設けた構造を具備する。その金属製筐体13には、避雷素子として静電容量の小さいギャップ型避雷素子16(以下、単に避雷素子と称す)が内蔵されている。この避雷素子16は、同軸コネクタ14,15の中心導体と外部導体である金属製筐体13との間に接続され、その金属製筐体13が接地端子17を介して接地されている(図5参照)。
【0029】
この避雷素子16は、セラミック製容器の両端に一対の電極を設け、ガスが封入された容器内部にギャップを形成した構造を有する。このような構造を有する避雷素子16を備えた同軸用避雷器11では、アンテナ等から同軸ケーブルを介して侵入する雷サージを、避雷素子16の放電により吸収することで無線通信機器を雷サージから保護する。このような静電容量の小さい避雷素子16を使用することにより、無線設備やTV共聴設備などで高周波信号を用いる同軸用避雷器11において、信号波形に悪影響を与えることなく、雷サージに対する無線通信機器の保護が安定する。
【0030】
カウンタ部12は、図1(A)〜(C)、図3(A)〜(C)および図4(A)(B)に示すように、同軸用避雷器11の金属製筐体13に内蔵された避雷素子16への雷サージ侵入を検出するサージ検出部である受光素子18(フォトトランジスタやフォトダイオード)と、その受光素子18の出力に基づいて避雷素子16への雷サージの侵入回数をカウント表示する表示部である発光素子19,20(LED)とを実装した配線基板21を絶縁性ケース22に収容した構造を具備する。
【0031】
なお、サージ検出部としては、前述のフォトトランジスタやフォトダイオードの受光素子18以外に、雷サージが通過する時の磁界の変化を検出するホール効果素子や磁気抵抗効果素子などを使用することも可能である。その場合、避雷素子16を流れる雷サージを磁界変化で検出することによって、その雷サージの侵入を容易かつ確実に検出することができる。
【0032】
また、表示部としては、前述の発光素子19,20(LED)以外に、7セグメント表示素子などの表示器を使用することが可能である。この表示部は、避雷素子16への雷サージの侵入履歴として雷サージの侵入の有無を表示したり、あるいは、雷サージの侵入の有無だけでなく、侵入回数をカウント表示することで、避雷素子16の劣化状態を検出することができ、それが許容できる範囲か否かを判断することができる。
【0033】
この配線基板21には、前述の受光素子18および発光素子19,20の他に、二つの接続コネクタ23,24、制御素子25(CPU)およびテストスイッチ26が実装されている。二つの接続コネクタ23,24は、発光素子19,20によるカウント信号を外部に出力するためのものである。また、テストスイッチ26は、発光素子19,20のカウント動作をテストおよびリセットするためのものである。なお、この実施形態では、配線基板21の表面側に、発光素子19,20、制御素子25、接続コネクタ23,24およびテストスイッチ26が配置され、配線基板21の裏面側に、受光素子18が配置されている。
【0034】
この配線基板21を収容する絶縁性ケース22は、低コストで容易に製作することができるように樹脂製とし、箱型形状を有する金属製筐体13に対して抱持するような門型形状を有する〔図3(B)(C)参照〕。前述の配線基板21は、その表面側を外側に、かつ、裏面側を内側(同軸用避雷器11の金属製筐体13側)にして絶縁性ケース22の側部に形成された内部空間27に収容されている〔図4(A)(B)参照〕。
【0035】
この絶縁性ケース22は、配線基板21の表面側に実装された発光素子19,20、接続コネクタ23,24およびテストスイッチ26と対応する部位に開口窓28〜31が形成され〔図1(A)〜(C)参照〕、また、配線基板21の裏面側に実装された受光素子18と対応する部位に開口窓32が形成されている〔図4(B)参照〕。このように発光素子19,20、接続コネクタ23,24およびテストスイッチ26と受光素子18が外部に露呈した状態となっている。これにより、発光素子19,20の点灯が容易に確認でき、また、接続コネクタ23,24での接続およびテストスイッチ26の操作が容易となり、さらに、受光素子18の動作が確実となるようにしている。
【0036】
この絶縁性ケース22を同軸用避雷器11の金属製筐体13に嵌め込み、ねじ止め等の固定手段で装着することによりカウンタ部12を同軸用避雷器11に一体的に構成している〔図1(A)〜(C)参照〕。また、ねじ止め等の固定手段を解除することにより、このカウンタ部12は、絶縁性ケース22を金属製筐体13から分離可能な構造となっている〔図2(A)〜(C)および図3(A)〜(C)参照〕。このような着脱構造とすることにより、配線基板21の交換等のメンテナンスが容易に行える。また、絶縁性ケース22を金属製筐体13に装着するだけの構造であるため、コスト面や取付スペース的な面においても有効で、コスト低減およびコンパクト化が図れる。さらに、サージ検出部および表示部を実装した配線基板21が絶縁性ケース22に収納されているため、金属製筐体13に流れる雷サージから防護されて損傷のおそれが極めて小さい。
【0037】
さらに、同軸用避雷器11の同軸コネクタ14,15と同軸ケーブルおよび無線通信機器との接続を、絶縁性ケース22を金属製筐体13から取り外した状態で行えば、同軸コネクタ14,15の接続作業時に応力が絶縁性ケース22に作用することがないので、絶縁性ケース22を破損することなく、同軸用避雷器11の取り付けを確実に行うことができる。この同軸用避雷器11の取り付け後に、絶縁性ケース22を金属製筐体13に装着すれば、同軸用避雷装置を構成することができる。
【0038】
この絶縁性ケース22を金属製筐体13に装着した状態では、金属製筐体13の避雷素子16と対応する部位には透孔33が形成されており〔図2(A)参照〕、絶縁性ケース22内の配線基板21上の受光素子18は、金属製筐体13の透孔33を介して避雷素子16と対向配置された状態となる。
【0039】
図5に示すように、金属製筐体13内にある避雷素子16が、同軸コネクタ14,15の中心導体と外部導体である金属製筐体13との間に接続され、その金属製筐体13が接地端子17を介して接地された同軸用避雷器11に対して、発光素子19,20、制御素子25、接続コネクタ23,24およびテストスイッチ26と受光素子18が実装された配線基板21を絶縁性ケース22に収容したカウンタ部12を装着した同軸用避雷装置において、カウンタ部12を電池34(ボタン電池)で駆動する場合、同図に示すような回路構成となる。
【0040】
この電池34を内部電源とする同軸用避雷装置では、同軸用避雷器11の避雷素子16への雷サージ侵入をカウンタ部12の受光素子18で検出する。つまり、避雷素子16への雷サージ侵入を、避雷素子16の放電による容器の発光状態で受光素子18により検出する。この受光素子18の出力に基づいて避雷素子16への雷サージの侵入回数を発光素子19,20でカウント表示する。以上のような受光素子18および発光素子19,20の動作を制御素子25により実行する。このようにして、避雷素子16の劣化状態を迅速かつ確実に目視で確認することができ、それが実質的に故障したとみなせる状態に至る前に避雷素子16を交換する時期を推定できる。
【0041】
この発光素子19,20によるカウント表示は、発光素子19,20の点灯回数により、以下のようにしている。図6に示すように、避雷素子16への雷サージの侵入回数が1回の場合、発光素子19,20を1回点灯させ、例えば3秒間消灯する状態を繰り返す発光パターンとする。また、雷サージの侵入回数が2回の場合、発光素子19,20を2回点灯させ、例えば3秒間消灯する状態を繰り返す発光パターンとする。さらに、雷サージの侵入回数が3回の場合、発光素子19,20を3回点灯させ、例えば3秒間消灯する状態を繰り返す発光パターンとする。このような点灯方式を採用することにより、小型の発光素子19,20で侵入回数を表示可能となり、表示部のコンパクト化が図れて絶縁性ケース22が大型になることはない。
【0042】
なお、図6に示すように、発光素子19,20の点灯時間T1、消灯時間T2(例えば3秒間)、点灯間隔時間T3については任意に設定可能である。また、この実施形態では、常時消灯状態の発光素子19,20が雷サージの侵入により点灯する場合について説明したが、逆に、常時点灯状態の発光素子が雷サージの侵入により消灯するように設定することも可能である。
【0043】
この同軸用避雷装置では、表示部を複数個(例えば2個)の発光素子19,20で構成している。その発光素子19,20のそれぞれは点灯状態の視認可能な方向が異なるように配線基板21上に配置されている。つまり、図3(A)(B)および図4(A)(B)に示すように、2個の発光素子19,20のうち、一方の発光素子19を同軸用避雷器11と直交する方向〔図4(B)の矢印M参照〕から視認可能なように配置し、他方の発光素子20を同軸用避雷器11と平行な方向〔図4(A)の矢印N参照〕から視認可能なように配置している。
【0044】
図7(A)に示すようにアンテナ等に接続された同軸ケーブル35と無線通信機器36と間で同軸用避雷装置を取り付けた状態では、一方の発光素子19の発光状態を同軸用避雷器11と直交する方向から目視確認することが可能である〔図3(A)および図4(A)参照〕。また、図7(B)に示すようにアンテナ等に接続された同軸ケーブル35と無線通信機器36と間で同軸用避雷装置を取り付けた状態では、他方の発光素子20の発光状態を同軸用避雷器11と平行な方向から目視確認することが可能である〔図3(B)および図4(B)参照〕。
【0045】
これにより、図7(A)(B)に示す同軸用避雷装置における二つの取り付け形態に対応することが可能となる。このように、同軸用避雷装置の取付状態に左右されることなく、複数個の発光素子19,20のうち、いずれかの発光素子19,20の点灯状態を確実に目視することができる。なお、発光素子19,20の個数は2個に限らず、その数は任意であり、また、発光素子19,20の位置も任意である。
【0046】
前述の同軸用避雷装置では、電池34を内部電源とする場合について説明したが、図8に示すように専用のDC電源ユニット37を外部電源として使用することも可能である。このDC電源ユニット37は、電圧調整回路38、電圧変換回路39、トランス40、リレー回路41および接点出力端子42を有する。DC電源ユニット37では、交流電圧をトランス40で降圧した後に電圧変換回路39で直流電圧に変換し、電圧調整回路38で安定した直流電圧をカウンタ部12に供給する。また、カウンタ部12で得られた発光素子19,20の点灯回数、つまり、避雷素子16への雷サージの侵入回数などの情報は、リレー回路41を介して接点出力端子42から外部へ出力することが可能であり、これによりカウンタ部12の動作を遠隔監視することが容易となる。
【0047】
この場合、カウンタ部12の制御素子25をそのカウンタ部12とは別体のDC電源ユニット37で駆動することになる。このDC電源ユニット37は、二つの接続コネクタ23,24のうち、一方の接続コネクタ23を利用することにより制御素子25に接続される。なお、カウンタ部12の構成および動作については、図5に示す場合と同様であるため、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0048】
このようなDC電源ユニット37を使用すれば、図9に示すように、複数個(例えば3個)の同軸用避雷装置が設置されている場合に有効である。つまり、複数個の同軸用避雷装置の各カウンタ部12の接続コネクタ23,24を接続線43で繋ぎ、最終段の同軸用避雷装置のカウンタ部12の接続コネクタ23に前述のDC電源ユニット37を接続する。このようにすれば、複数個の同軸用避雷装置に対して各カウンタ部12を単一のDC電源ユニット37で駆動することができる。
【0049】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0050】
11 同軸用避雷器
13 金属製筐体
14 (第一の)同軸コネクタ
15 (第二の)同軸コネクタ
16 避雷素子(ギャップ型避雷素子)
18 サージ検出部(受光素子)
19,20 表示部(発光素子)
21 配線基板
22 絶縁性ケース
33 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避雷素子が内蔵された金属製筐体の両端に一対の同軸コネクタを設けた同軸用避雷器を備え、
前記金属製筐体の避雷素子と対応する部位に形成された透孔を介して前記避雷素子に対向配置され、前記避雷素子への雷サージ侵入を検出するサージ検出部と、前記サージ検出部の出力に基づいて前記避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示する表示部とを実装した配線基板を収容した絶縁性ケースを、前記避雷器の金属製筐体に装着したことを特徴とする同軸用避雷装置。
【請求項2】
前記避雷素子は、セラミック製容器の内部にギャップが形成されたギャップ型避雷素子である請求項1に記載の同軸用避雷装置。
【請求項3】
前記サージ検出部は、前記ギャップ型避雷素子への雷サージ侵入を、前記ギャップ型避雷素子の放電による容器の発光状態で検出する受光素子である請求項2に記載の同軸用避雷装置。
【請求項4】
前記表示部は、避雷素子への雷サージの侵入履歴を表示する表示器を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の同軸用避雷装置。
【請求項5】
前記表示部は複数個の表示器で構成され、前記表示器のそれぞれは表示状態の視認可能な方向が異なるように前記配線基板上に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の同軸用避雷装置。
【請求項6】
前記表示部は、避雷素子への雷サージの侵入回数をカウント表示する表示器を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の同軸用避雷装置。
【請求項7】
前記絶縁性ケースは、樹脂製である請求項1〜6のいずれか一項に記載の同軸用避雷装置。
【請求項8】
前記絶縁性ケースは、箱型形状を有する前記金属製筐体に対して抱持するような形状を有し、前記金属製筐体に着脱可能とした請求項1〜7のいずれか一項に記載の同軸用避雷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101866(P2013−101866A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245455(P2011−245455)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000123354)音羽電機工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】