説明

吐出ポンプ

【課題】吐出量のバラツキを低減すると共に、不用意な外力により内容物が吐出されることを防止した吐出ポンプを提供すること。
【解決手段】ステム15に中心軸線O回りで回動可能に被着され、内部にステム15内を通って吐出された内容物が貯留される貯留室34が設けられた押下頭部12と、押下頭部12の径方向外方に配置されたネジキャップ11と、を備え、押下頭部12の周面には、周方向に沿って案内溝部35が設けられ、ネジキャップ11の周面には、案内溝部35に沿って案内されて押下頭部12を上下動させる案内凸部24が設けられ、案内溝部35が、押下頭部12の中心軸線O回りの回動に伴い、ネジキャップ11に対して押下頭部12をステム15と共に基準高さよりも下方に向けて移動させる第1案内溝部36と、第1案内溝部36と周方向で連続して設けられて押下頭部12を基準高さまで上方に移動させる第2案内溝部37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吐出ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体内に収容されている内容物を外部に取り出す容器として、スポイト付容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスポイト付容器は、容器本体と、容器本体の口部に着脱自在に装着されたスポイト付キャップとを備えている。そして、スポイト付キャップに設けられて合成樹脂など形成された弾性ドームを指などで摘み、弾性ドームが弾性復帰する際にスポイト内を負圧にすることで、容器本体内の内容物がスポイト内に吸い上げられる。
【特許文献1】実開平3−93456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のスポイト付容器においても、以下の課題が残されている。すなわち、弾性ドームを摘む際の力によってスポイト本体内への内容物の吸上量にバラツキが発生するという問題がある。また、不用意に弾性ドームに外力が加わった際にも内容物が吸い上げられるという問題がある。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、吐出量のバラツキを低減すると共に、不用意な外力により内容物が吐出されることを防止した吐出ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の吐出ポンプは、内容物を収容した容器内に配置されたシリンダと、該シリンダの上端から上方付勢状態で押し込み可能に起立されたステムと、前記シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面及び前記ステムの内周面それぞれに対して液密に摺接する筒状のピストンと、を備え、前記ステムを前記シリンダ内に押し込むことで、前記ピストンが前記ステムにより押圧されて前記シリンダ内で下方に摺動し、前記容器内から前記シリンダ内に供給された内容物が前記ステム内を通って吐出される吐出ポンプにおいて、前記ステムに上下方向に沿う回動軸回りで回動可能に被着され、内部に前記ステム内を通って吐出された内容物が貯留される貯留室が設けられた押下頭部と、該押下頭部の径方向外方に配置された固定筒と、を備え、前記固定筒及び前記押下頭部のいずれか一方の周面には、周方向に沿って案内溝部が設けられ、前記固定筒及び前記押下頭部のいずれか他方の周面には、前記案内溝部に沿って案内されて前記押下頭部を上下動させる案内凸部が設けられ、前記案内溝部が、前記押下頭部の前記回動軸回りの回動に伴い、前記固定筒に対して該押下頭部を前記ステムと共に基準高さよりも下方に向けて移動させる第1案内溝部と、該第1案内溝部と周方向で連続して設けられて該押下頭部を前記基準高さまで上方に移動させる第2案内溝部とを備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、押下頭部を回動軸回りで回動させることによってステムをシリンダ内に押し込むため、貯留室内への内容物の吐出量のバラツキが低減され、不用意な外力により内容物を吐出することが防止される。すなわち、押下頭部を回動軸回りで回動させると、案内凸部が第1案内溝部に沿って案内され、押下頭部が基準高さよりも下方に押し下げられる。そして、ステムは、押下頭部と共に上方付勢状態に抗して下方に押し下げられる。このため、ステムの押し下げ量が安定する。したがって、貯留室内への内容物の吐出量が安定する。
【0007】
また、本発明の吐出ポンプは、前記第1案内溝部による前記押下頭部の単位回動角当たりの上下方向の移動量が、前記第2案内溝部による単位回動角当たりの上下方向の移動量よりも小さいことが好ましい。
この発明では、押下頭部を逆方向で回動させた際の回動抵抗が大きくなるため、回動方向を容易に認識できるようになる。すなわち、回動軸回りの一方向で回動させたとき、第1案内溝部は、押下頭部を下方に移動させ、第2案内溝部は、押下頭部を上方に移動させる。しかし、回動軸回りの逆方向で回動させると、第2案内溝部は、押下頭部を下方に移動させることとなる。押下頭部の回動抵抗は、ステムが上方付勢されていることから、単位回動角当たりの押下頭部の上方への移動量が大きいほど大きくなる。そのため、押下頭部が、回動軸回りの逆方向で回動しにくくなる。
【0008】
また、本発明の吐出ポンプは、前記押下頭部と係合し、前記貯留室と外部とを連通する取出口が形成された係合頭部を備え、前記固定筒の周面には、第1係合部が設けられ、前記係合頭部の周面には、前記押下頭部が前記基準高さにあるときに前記第1係合部と係合して該押下頭部の回動を規制する第2係合部が設けられていることが好ましい。
この発明では、押下頭部が基準高さにあるときに、押下頭部の回動が係合頭部と共に規制されて回動開始位置を容易に認識できるようになり、吐出量がより安定する。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかる吐出ポンプによれば、押下頭部を回動軸回りで回動させることによってステムをシリンダ内に押し込むため、内容物の吐出量が安定すると共に、不用意な外力によって内容物が吐出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による吐出ポンプの第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0011】
本実施形態における吐出ポンプ1は、図1に示すように、容器2内に収容された内容物を吐出するためのポンプであって、容器2の口部に取り付けられている。そして、吐出ポンプ1は、ネジキャップ(固定筒)11と、押下頭部12と、係合頭部13と、シリンダ14と、ステム15と、ピストン16と、コイルスプリング17と、弁部材18とを備えている。ここで、容器2から見て係合頭部13側を上方、その反対側を下方とする。また、図1における符号Oは、吐出ポンプ1の中心軸線(回動軸)Oを示している。
【0012】
ネジキャップ11は、外周面に雄ネジ部が形成された口部に螺着されるキャップ体である。ネジキャップ11は、内筒部21と、中筒部22と、外筒部23とを備えている。
内筒部21は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、下端がシリンダ14の後述する固定フランジ部51aと当接している。そして、内筒部21の上端部には、径方向内方に向けて突出する案内凸部24が設けられている。案内凸部24は、径方向から見たときにほぼ円形をなしている。
【0013】
中筒部22は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、内筒部21よりも径方向外方に配置されている。そして、中筒部22の下端部には、口部に形成された雄ネジ部と螺合する雌ネジ部22Aが形成されている。また、中筒部22の内周面における中心軸線O方向の中央部には、径方向内方に突出して内筒部21の下端に連設される接続部25が全周にわたって形成されている。
【0014】
外筒部23は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、中筒部22よりも径方向外方に配置されている。また、外筒部23の上端は、中筒部22の上端に連設されている。そして、外筒部23は、下端に向かうにしたがって径方向外方に膨出している。さらに、外筒部23の外周面には、オーバーキャップ26が着脱自在に被着されている。
【0015】
押下頭部12は、図1及び図2に示すように、中心軸線Oに沿うほぼ有底円筒状をなし、ステム15の後述する上ステム61の上端に被着されている。また、押下頭部12は、底面部31と、周面部32と、底面部31から垂下される垂下部33とを備えている。そして、押下頭部12には、底面部31及び周面部32によって貯留室34が形成されている。
底面部31には、ほぼ円形をなし、ステム15の上端開口部と連通する流通口31aが形成されている。流通口31aの径は、貯留室34内に内容物を貯留した状態であって押下頭部12及び係合頭部13を中心軸線O回りで回動させない状態において、内容物の表面張力によって内容物が流通口31aから下方に向けて漏洩しない程度となっている。
【0016】
周面部32は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなしている。そして、周面部32の外周面には、径方向外方に向けて突出する係合フランジ部32aが全周にわたって形成されている。係合フランジ部32aには、一対の切欠部32bが中心軸線Oを介して径方向で対向するように形成されている。
また、周面部32の外周面には、図1から図3に示すように、案内溝部35が全周にわたって形成されている。
【0017】
案内溝部35は、案内凸部24と係合し、案内凸部24を案内溝部35に沿って案内する。そして、案内溝部35は、図3に示すように、周面部32における外周面の展開図において、周方向で連続して形成された2対の第1及び第2案内溝部36、37を有する。
第1案内溝部36は、周方向の一方向に向かうにしたがって周面部32の外周面に沿って上方に向かうように形成されている。また、第1案内溝部36は、案内凸部24と係合することにより、一端部において押下頭部12を上下方向における基準高さに位置させて(図3の位置A1)、他端部において押下頭部12を上下方向において基準高さよりも下方の押下高さに位置させる(図3の位置A2)。
【0018】
したがって、第1案内溝部36は、押下頭部12を中心軸線O回り(図2に示す矢印R1方向)で回動させた際、案内凸部24を周面部32に対して上方に向けて案内する。ここで、ネジキャップ11が容器2の口部に螺着、固定されているため、案内凸部24が第1案内溝部36に沿って上方に向けて案内されると、押下頭部12が下方に向けて押し下げられる。
【0019】
第2案内溝部37は、周方向において第1案内溝部36と連続して形成されており、周方向の一方向に向かうにしたがって周面部32の外周面に沿って下方に向かうように形成されている。また、第2案内溝部37は、案内凸部24と係合することによって第1案内溝部36の他端部に接続される一端部において押下頭部12を押下高さに位置させ(図3の位置A2)、他端部において押下頭部12を基準高さに位置させる(図3の位置A3)。
【0020】
したがって、第2案内溝部37は、押下頭部12を中心軸線O回り(図2に示す矢印R1方向)で回動させた際、案内凸部24を周面部32に対して下方に向けて案内する。ここで、上述と同様に、ネジキャップ11が容器2に固定されているため、案内凸部24が第2案内溝部37に沿って下方に向けて案内されると、押下頭部12が上方に向けて押し上げられる。
また、第2案内溝部37の周面部32の外周面に沿った周方向における水平方向に対する傾斜角度は、第1案内溝部36における傾斜角度よりも大きくなっている。すなわち、第2案内溝部37による案内凸部24の単位回動角当たりの上方向の移動量は、第1案内溝部36による単位回動角当たりの下方向の移動量よりも大きくなっている。
【0021】
また、2対の第1及び第2案内溝部36、37は、周方向において一方の対における第2案内溝部37と連続して他方の対を構成する第1案内溝部36が形成され、他方の対における第2案内溝部37と連続して一方の対を構成する第1案内溝部36が形成されている。
垂下部33は、図1に示すように、ほぼ円筒状をなしており、内周面がステム15の後述する上ステム61の外周面と接触することで押下頭部12が上ステム61と嵌合している。
【0022】
係合頭部13は、図1及び図2に示すように、中心軸線Oに沿うほぼ有底円筒状をなし、押下頭部12に被着されている。そして、係合頭部13は、天壁部41と、周壁部42とを備えている。
天壁部41は、ほぼ円形をなしており、中央部に上方に向けて半球状に膨出するように形成された膨出部41aを有している。この膨出部41aの中央には、貯留室34と外部とを連通する取出口41bが形成されている。
また、天壁部41の下面には、押下頭部12の周面部32の上端部を挟持する一対の挟持筒部41c、41dが形成されている。
周壁部42は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなしている。そして、周壁部42の内周面には、径方向内方に向けて突出して一対の切欠部32bそれぞれと係合する一対の係合突条部42aが中心軸線Oを介して径方向で対向するように形成されている。係合突条部42aは、周壁部42の内周面において上下方向の全長にわたって形成されている。このため、押下頭部12及び係合頭部13は、共に中心軸線O回りで回動する。
【0023】
シリンダ14は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状の部材であり、容器2内に配置されている。そして、シリンダ14は、上方から順に、大径部51と、小径部52と、テーパ部53と、チューブ接続部54とを備えている。
大径部51は、ネジキャップ11内からネジキャップ11の下方に向けて突出している。そして、大径部51の上端には、径方向外方に突出する固定フランジ部51aが全周にわたって形成されている。固定フランジ部51aは、ネジキャップ11の接続部25の下面に固定されている。
小径部52は、大径部51の下端に連続して形成されており、大径部51よりも小径となっている。
【0024】
テーパ部53は、小径部52の下端に連続して形成されており、下方に向かうにしたがってテーパ状に縮径されている。また、シリンダ14の下部の内周面には、コイルスプリング17の下端を支持する台座部55が形成されている。
チューブ接続部54は、テーパ部53の下端に連続して形成されており、容器2内の液体を吸引するためチューブ56が接続される。
【0025】
ステム15は、上ステム61と、下ステム62とを備えている。
上ステム61は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、ネジキャップ11の天壁部41から上方に向けて突設されている。そして、上ステム61は、ネジキャップ11の内筒部21内に挿通されている。また、上ステム61の下部は、シリンダ14の上端部の内側に嵌合されたリング状部材63内に挿入されている。このため、ステム15の中心軸線O方向上方への移動が規制される。
【0026】
下ステム62は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、上ステム61と直列に連結されてシリンダ14内に配置されている。
下ステム62の下部には、内容物を流通させるためのステム開口部62aが形成されている。また、下ステム62の下端部には、径方向外方に突出して上面にピストン16の下端が当接される外フランジ部62bが全周にわたって形成されている。そして、下ステム62の下端部には、径方向内方に向けて突出して弁部材18の外周面と摺接する内フランジ部62cが全周にわたって形成されている。
【0027】
ピストン16は、中心軸線Oに沿って延設されたほぼ円筒状をなし、シリンダ14の内側に配置されている。そして、ピストン16の上端部には、全周にわたって環状凹部16aが形成されている。この環状凹部16aには、上ステム61の下端部が挿入されている。
【0028】
コイルスプリング17は、ピストン16を上方に向けて付勢する付勢部材である。コイルスプリング17は、中心軸線Oに沿って延設されており、シリンダ14内に配置されている。また、コイルスプリング17は、下ステム62の外フランジ部62bとシリンダ14の台座部55との間に介装されている。
【0029】
弁部材18は、ほぼ棒状をなしており、シリンダ14の下端部を閉塞している。弁部材18の中間部は、コイルスプリング17内に挿通されている。弁部材18の上端部は、下ステム62の下端部に挿入されている。そして、弁部材18の下端部は、拡径されており、シリンダ14のテーパ部53における内周面の下端部に対して着脱可能となっている。
【0030】
次に、以上のような構成の吐出ポンプ1による内容物の取り出し方法について説明する。容器2の口部に吐出ポンプ1のネジキャップ11を螺着した状態において、係合頭部13を図2に示す矢印R1方向に回動させると、係合頭部13が押下頭部12と係合しているため、係合頭部13と共に押下頭部12が矢印R1方向に回動する。
そして、押下頭部12及び係合頭部13を回動させると、ネジキャップ11の案内凸部24が第1案内溝部36の一端部から他端部に向けて第1案内溝部36に沿って案内される。このとき、第1案内溝部36が押下頭部12の回動に伴って案内凸部24を上方に向けて案内するため、ネジキャップ11が口部に螺着、固定されていることから、押下頭部12が上述した基準高さから押下高さに向けて下方に押し下げられる。
【0031】
これにより、ステム15は、コイルスプリング17による上方付勢力に抗して下方に押し込まれる。このとき、ピストン16に対して上ステム61が摺動しながら、ステム15は、下方に移動する。そのため、下ステム62の外フランジ部62bがピストン16の下端から離間し、外フランジ部62bの上面とピストン16の下端との間に間隙が形成される。
【0032】
ステム15をシリンダ14内に押し込んでいくと、上ステム61の下端がピストン16の環状凹部16aの底部に当接する。ここで、押下頭部12及び係合頭部13をさらに回動させると、押下頭部12は、第1案内溝部36に沿って案内凸部24が摺動によって下方にさらに押し下げられる。このため、ピストン16は、上ステム61により押圧される。これにより、ピストン16がシリンダ14の内周面に沿って摺動しながら、ピストン16がステム15や押下頭部12と共に下方に移動する。このとき、弁部材18の下端部がシリンダ14のテーパ部53における下端部の内周面に着座されており、テーパ部53の下端が閉塞されている。そのため、ピストン16が下方に移動することによってシリンダ14内が加圧される。
【0033】
これにより、シリンダ14の内容物が、下ステム62の外周面と大径部51の内周面との間隙から下ステム62の外フランジ部62bの上方へ流通する。さらに、外フランジ部62bの上面とピストン16の下端との間と、下ステム62のステム開口部62aとを通って下ステム62内に流入する。そして、下ステム62内の内容物は、下ステム62内及び上ステム61内を流通して貯留室34に貯留される。このとき、案内凸部24は、第1案内溝部36の他端部に案内されている(図3における位置A2)。
【0034】
次に、押下頭部12及び係合頭部13をさらに回動させると、案内凸部24が第2案内溝部37の一端部から他端部に向けて第2案内溝部37に沿って案内される。第2案内溝部37が押下頭部12の回動に伴って案内凸部24を下方に向けて案内するため、押下頭部12が上述した押下高さから基準高さに向けて上方に押し上げられる。
ここで、押下頭部12が上方付勢されているため、案内凸部24が周面部32に対して下方に向けて容易に摺動する。このため、コイルスプリング17の付勢によりステム15が上方に移動する。
【0035】
このとき、ステム15と共に弁部材18が上方に移動する。これにより、弁部材18の下端部がシリンダ14のテーパ部53の下端内周面から離間し、テーパ部53の下端が開放される。また、ステム15が上方に移動すると、下ステム62の外フランジ部62bの上面がピストン16の下端に当接したところで、ピストン16は外フランジ部62bによって上方に押圧される。これにより、ステム15と共にピストン16が上方に移動してステム15及びピストン16が元の位置に戻される。
【0036】
このように、ステム15及びピストン16それぞれが上方に移動することで、シリンダ14内が減圧となる。これにより、容器2内の内容物がシリンダ14内に吸い上げられ、シリンダ14内に内容物が供給される。すなわち、容器2内の内容物は、チューブ56内を流入し、開放されたシリンダ14のテーパ部53の下端からシリンダ14内に流入する。このとき、案内凸部24は、第2案内溝部37の他端部に案内されている。
【0037】
以上のように、押下頭部12及び係合頭部13を中心軸線O回りで回動させて押下頭部12を上下動させることにより、容器2内の内容物が貯留室34に貯留される。ここで、第2案内溝部37の周面部32の外周面に沿った周方向における水平方向に対する傾斜角度が、第1案内溝部36における傾斜角度よりも大きくなっている。そのため、押下頭部12及び係合頭部13を図2に示す矢印R1方向で回動させて案内凸部24を第1案内溝部36に沿って摺動させたときの回動抵抗が、矢印R1方向とは逆の矢印R2方向で回動させて案内凸部24を第2案内溝部37に沿って摺動させたときの回動抵抗よりも小さくなっている。したがって、押下頭部12が矢印R2方向で回動しない。
このようにして貯留室34に貯留された内容物は、係合頭部13に形成された取出口41bから取り出される。
【0038】
このような構成の吐出ポンプ1によれば、押下頭部12及び係合頭部13を中心軸線O回りで回動させることによってステム15をシリンダ14内に押し込むため、貯留室34内への内容物の吐出量が安定する。また、不用意な外力により内容物が吐出されなくなる。
そして、押下頭部12及び係合頭部13の回動方向を逆方向としたときの回動抵抗を大きくすることで、逆方向で押下頭部12及び係合頭部13が回動しなくなり、回動方向を容易に認識できるようになる。
【0039】
次に、本発明における吐出ポンプの第2の実施形態について説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図4及び図5においては、図1から図3と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0040】
本実施形態における吐出ポンプ100では、図4及び図5に示すように、ネジキャップ101の中筒部102の内周面に第1係合部103が形成され、係合頭部104の周壁部105の外周面に第2係合部106が形成されている。
第1係合部103は、図5に示すように、平面視において案内凸部24と周方向で対応する位置と、案内凸部24と径方向で中心軸線Oを介して対向する位置とに形成されている。また、第1係合部103は、図4及び図5に示すように、中筒部102の内周面において周方向で間隔をあけて形成された一対の第1係合凸部103a、103bを備えている。そして、第1係合凸部103a、103bは、中筒部102の内周面に径方向内方に向けて突出して形成されている。
【0041】
第2係合部106は、図5に示すように、平面視において2つの第1案内溝部36の一端部と周方向で対応する位置に形成されている。また、第2係合部106は、周壁部105の外周面の下端部において径方向外方に向けて突出して形成されている。
そして、第1及び第2係合部103、106が係合することにより、押下頭部12及び係合頭部104の中心軸線O回りの回動が規制される。
【0042】
以上のような構成の吐出ポンプ100では、ネジキャップ11を螺着した状態において、係合頭部104を回動させると、第1及び第2係合部103、106が係合しているため、押下頭部12及び係合頭部104の回動動作には、第2係合部106が回動方向前方に位置する第1係合凸部103aを乗り越えるまで、回動が規制されて回動抵抗が付与される。そして、第2係合部106が第1係合凸部103aを乗り越えて第1及び第2係合部103、106の係合状態が解除されると、上述した第1の実施形態と同様に押下頭部12及び係合頭部104が回動する。
押下頭部12及び係合頭部104をさらに回動させると、第2係合部106が第1係合凸部103aと当接するため、上述と同様に、押下頭部12及び係合頭部104の回動動作には、第2係合部106が回動方向前方に位置する第1係合凸部103bを乗り越えるまで、回動が規制されて回動抵抗が付与される。そして、第2係合部106が第1係合凸部103bを乗り越えると第1及び第2係合部103、106が係合する。
このように、押下頭部12及び係合頭部104を回動させると、第1及び第2係合部103、106が係合するたびに、回動抵抗が付与されることによる、いわゆるクリック感が得られる。
【0043】
このような構成の吐出ポンプ100によれば、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏するが、第1及び第2係合部103、106が係合するたびに、押下頭部12及び係合頭部104の中心軸線O回りの回動が規制されて回動開始位置を容易に認識できるようになり、吐出量がより安定する。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、案内溝部は、2対の第1及び第2案内溝部を有しているが、第1及び第2案内溝部を一対のみ有する構成としてもよい。また、第1及び第2案内溝部の形状は、例えば図6に示すように、単位回動角当たりの押下頭部の移動量が第1及び第2案内溝部111、112で同等である構成の案内溝部113としてもよく、他の形状であってもよい。
また、内筒部に案内凸部を設けると共に周面部に案内溝部を設けているが、内筒部に案内溝部を設けると共に周面部に案内凸部を設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明によれば、吐出量のバラツキを低減すると共に、不用意な外力により内容物が吐出されることを防止した吐出ポンプに関して、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態における吐出ポンプを示す部分断面図である。
【図2】第1及び係合頭部を示す斜視図である。
【図3】周面部に形成された案内溝部を示す展開図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における吐出ポンプを示す部分拡大断面図である。
【図5】図4のA−A端面図である。
【図6】本発明を適用可能な他の案内溝部を示す展開図である。
【符号の説明】
【0047】
1,100 吐出ポンプ
2 容器
11,101 ネジキャップ(固定筒)
12 押下頭部
13,104 係合頭部
14 シリンダ
15 ステム
16 ピストン
24 案内凸部
34 貯留室
35,113 案内溝部
36,111 第1案内溝部
37,112 第2案内溝部
41b 取出口
103 第1係合部
106 第2係合部
O 中心軸線(回動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容した容器内に配置されたシリンダと、
該シリンダの上端から上方付勢状態で押し込み可能に起立されたステムと、
前記シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面及び前記ステムの内周面それぞれに対して液密に摺接する筒状のピストンと、を備え、
前記ステムを前記シリンダ内に押し込むことで、前記ピストンが前記ステムにより押圧されて前記シリンダ内で下方に摺動し、前記容器内から前記シリンダ内に供給された内容物が前記ステム内を通って吐出される吐出ポンプにおいて、
前記ステムに上下方向に沿う回動軸回りで回動可能に被着され、内部に前記ステム内を通って吐出された内容物が貯留される貯留室が設けられた押下頭部と、
該押下頭部の径方向外方に配置された固定筒と、を備え、
前記固定筒及び前記押下頭部のいずれか一方の周面には、周方向に沿って案内溝部が設けられ、
前記固定筒及び前記押下頭部のいずれか他方の周面には、前記案内溝部に沿って案内されて前記押下頭部を上下動させる案内凸部が設けられ、
前記案内溝部が、前記押下頭部の前記回動軸回りの回動に伴い、前記固定筒に対して該押下頭部を前記ステムと共に基準高さよりも下方に向けて移動させる第1案内溝部と、該第1案内溝部と周方向で連続して設けられて該押下頭部を前記基準高さまで上方に移動させる第2案内溝部とを備えることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
前記第1案内溝部による前記押下頭部の単位回動角当たりの上下方向の移動量が、前記第2案内溝部による単位回動角当たりの上下方向の移動量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の吐出ポンプ。
【請求項3】
前記押下頭部と係合し、前記貯留室と外部とを連通する取出口が形成された係合頭部を備え、
前記固定筒の周面には、第1係合部が設けられ、
前記係合頭部の周面には、前記押下頭部が前記基準高さにあるときに前記第1係合部と係合して該押下頭部の回動を規制する第2係合部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の吐出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−208779(P2009−208779A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50681(P2008−50681)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】