説明

吐出器

【課題】導入路内に液体が残存するのを抑制する。
【解決手段】ヘッド部15内に形成された導入路14は、上下方向に交差する方向に沿って延在し、その一端側に形成された開口部がノズル孔13とされ、ヘッド部15内には、上下方向に延在しかつ導入路14に連通する連通孔21が形成され、この連通孔21内には、上下方向に摺動する内筒部材23が設けられ、これらのヘッド部15と内筒部材23との間に、ヘッド部15を内筒部材23に対して上方に付勢する第1弾性部材24が設けられ、内筒部材23の上端開口縁23cには、この上端開口縁23cにおいて導入路14内の他端側に位置する部分から、この内筒部材23の上端開口部を開口させた状態で跨いで、導入路14内の一端側に至る蓋板35が延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吐出器として、従来から例えば下記特許文献1に示されるような、容器本体の口部に取り付けられた状態でヘッド部を押し下げて液用シリンダ内の液体を圧縮することにより、この液体を、ヘッド部の内部に形成された導入路に移送してノズル孔から吐出する構成が知られている。
【特許文献1】国際公開第92/08657号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の吐出器では、ノズル孔から液体を吐出した後、ヘッド部の押し下げを解除したときに、導入路内に液体が残存することがあった。この場合、再度ヘッド部を押し下げるまでの間に、導入路内に残存した液体が、例えば固化したり、あるいはノズル孔から外部に垂れ落ちたりするおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、導入路内に液体が残存するのを抑制することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の吐出器は、ノズル孔に連通した導入路が内部に形成されたヘッド部が備えられ、容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げることにより、容器本体内の液体を、前記導入路を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、前記導入路は、上下方向に交差する方向に沿って延在し、その一端側に形成された開口部が前記ノズル孔とされ、前記ヘッド部内には、上下方向に延在しかつ前記導入路に連通する連通孔が形成され、この連通孔内には、上下方向に摺動する内筒部材が設けられ、これらのヘッド部と内筒部材との間に、前記ヘッド部を内筒部材に対して上方に付勢する第1弾性部材が設けられ、前記内筒部材の上端開口縁には、この上端開口縁において前記導入路内の他端側に位置する部分から、この内筒部材の上端開口部を開口させた状態で跨いで、前記導入路内の一端側に至る蓋板が延設され、この蓋板は、前記ヘッド部を押し下げる前の待機状態で前記導入路における連通孔の開口部を閉塞し、かつ前記ヘッド部を内筒部材に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、前記導入路内を上下方向に移動させられる構成とされたことを特徴とする。
この発明では、ヘッド部を押し下げる前の待機状態で導入路における連通孔の開口部を閉塞し、かつヘッド部を内筒部材に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、導入路内を上下方向に移動させられる蓋板が設けられているので、ヘッド部を押し下げて液体をノズル孔から吐出したときに、導入路内に液体が残存していても、この押し下げを解除したときに、導入路内に残存した液体が、蓋板と導入路の内面との間に挟まれてノズル孔から排出されることになり、導入路内に液体が残存するのを抑制することができる。
さらに、ヘッド部を押し下げる前の待機状態では、蓋板が導入路における連通孔の開口部を閉塞しているので、液体を吐出した後の待機状態が長期にわたっても、内筒部材の内側の液体が例えば固化したり変質したりするのを抑制することもできる。
【0006】
ここで、前記蓋板には、導入路における連通孔の開口部に着脱可能に嵌合する嵌合凸部が形成されてもよい。
この場合、蓋板に前記嵌合凸部が形成されているので、ヘッド部を押し下げる前の待機状態が長期にわたっても、内筒部材の内側の液体が例えば固化したり変質したりするのを確実に抑制することができる。
【0007】
また、前記内筒部材の上端開口縁と前記蓋板との間の上下方向における隙間が、前記導入路の他端側から一端側に向かうに従い漸次大きくなってもよい。
この場合、内筒部材の上端開口縁と蓋板との間の上下方向における隙間が、導入路の他端側から一端側に向かうに従い漸次大きくなっているので、ノズル孔から液体を吐出する際に、内筒部材の内側から導入路へ十分な量の液体を流入させ、しかもこの液体をスムーズにノズル孔に向けて流動させることが可能になり、蓋板を設けたことによってノズル孔からの液体の吐出量が少なくなるのを防ぐことができる。
【0008】
さらに、前記ヘッド部に連係した液用ピストンと、内部をこの液用ピストンが上下方向に摺動する液用シリンダと、が備えられ、容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げて液用シリンダ内の液体を圧縮することにより、この液体を、前記導入路に移送して前記ノズル孔から吐出する構成とされてもよい。
【0009】
また、前記液用シリンダ内に、このシリンダの下端開口部に着座および離反可能な弁体が設けられるとともに、この弁体と前記液用ピストンとの間に、液用ピストンを上方に付勢する第2弾性部材が設けられ、この第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも上方付勢力が大きくてもよい。
この場合、第2弾性部材が、第1弾性部材よりも上方付勢力が大きくなっているので、ヘッド部を押し下げたときに、まず、第1弾性部材を上下方向に圧縮変形させて内筒部材の内側と導入路内とを連通させ、その後に、第2弾性部材を上下方向に圧縮変形させて液用シリンダ内の液体を圧縮し、この液体を内筒部材の内側を通して導入路に移送することが可能になり、吐出器を無理なくスムーズに動作させることができる。
【0010】
さらに、前記ヘッド部に連係した空気用ピストンが内部を上下方向に摺動する空気用シリンダと、前記液用シリンダからの液体と空気用シリンダからの空気とが合流する気液混合室と、前記導入路と気液混合室との間に設置された発泡部材と、を備え、容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げて液用シリンダ内の液体および空気用シリンダ内の空気を圧縮することにより、これらの液体および空気を、気液混合室に移送して合流させ発泡部材を通して発泡させた後に、前記導入路を通過させて前記ノズル孔から吐出する構成とされてもよい。
この場合、吐出器がいわゆるフォーマポンプとなっており、内筒部材から導入路内に移送される液体が泡状となっているため、特に導入路内に液体が残存し易くなっているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることになる。
さらにこの場合、前述のようにヘッド部を押し下げる前の待機状態で蓋板が導入路における連通孔の開口部を閉塞しているので、発泡部材に付着した液体が固化して、液体を発泡させにくくなるのを防ぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る吐出器によれば、導入路内に液体が残存するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。この実施形態に係る吐出ポンプ(吐出器)10には、内部を液用ピストン11が上下方向に摺動する液用シリンダ12と、ノズル孔13に連通した導入路14が形成されるとともに、液用ピストン11に連係しこのピストン11を駆動させるポンプヘッド(ヘッド部)15と、が備えられている。
【0013】
さらに、本実施形態では、吐出ポンプ10には、ポンプヘッド15に連係した空気用ピストン16が内部を上下方向に摺動する空気用シリンダ17と、液用シリンダ12からの液体と空気用シリンダ17からの空気とが合流する気液混合室18と、導入路14と気液混合室18との間に設置された発泡部材19と、が備えられ、この吐出ポンプ10を、図示されない容器本体の口部に取り付けた状態でポンプヘッド15を押し下げて液用シリンダ12内の液体および空気用シリンダ17内の空気を圧縮することにより、これらの液体および空気を、気液混合室18に移送して合流させ発泡部材19を通して発泡させた後に、導入路14を通過させてノズル孔13から吐出するようになっている。
【0014】
なお、以上の液用ピストン11、液用シリンダ12、ポンプヘッド15、空気用ピストン16、空気用シリンダ17および発泡部材19は全て、筒状体とされるとともに、共通軸上に位置させられて吐出ポンプ10に備えられている。以下、この共通軸を吐出ポンプ10の中心軸線Oという。
【0015】
図示の例では、ポンプヘッド15内には、前記中心軸線O方向(上下方向)に沿って延在し、かつ導入路14に開口する連通孔21が形成されている。
ここで、ポンプヘッド15は、外筒15aと、この外筒15aの内側に配置された内筒15bと、上下方向に交差する方向に沿って延在し、外筒15aおよび内筒15bそれぞれの上端開口部を閉塞する吐出筒15cと、を備え、これら15a〜15cが一体に形成された概略構成となっている。そして、内筒15bの内側が前述の連通孔21となっている。
吐出筒15cは、その一端部が外筒15aよりも径方向外方に突出して設けられている。また、この吐出筒15cは、一端側が外部に向けて開口し他端側が閉塞した筒状体となっており、このうち一端側の開口部が前記ノズル孔13とされるとともに、この吐出筒15cの内部が前記導入路14となっている。
【0016】
そして、本実施形態では、連通孔21内に、上下方向に摺動して導入路14内に進退可能な内筒部材23が設けられている。この内筒部材23は、上側が小径部23a、下側が大径部23bになっていて、小径部23aが連通孔21に上下摺動可能に嵌合され、大径部23bは、ポンプヘッド15における内筒15bの下端よりも下方に位置している。そして、この大径部23bの上端外表面とポンプヘッド15における内筒15bの下端との間に、ポンプヘッド15を内筒部材23に対して上方に付勢する第1コイルスプリング(第1弾性部材)24が設けられている。
【0017】
また、内筒部材23の上端開口縁23cには、この上端開口縁23cにおいて導入路14内の他端側に位置する部分から、この内筒部材23の上端開口部を開口させた状態で跨いで、導入路14内の一端側に至る蓋板35が延設されている。
この蓋板35は、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で導入路14における連通孔21の開口部を閉塞し、かつポンプヘッド15を内筒部材23に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、導入路14内を上下方向に摺動するようになっている。
【0018】
なお、蓋板35の平面視形状は導入路14の横断面視形状と同形同大となっている。また、導入路14の流路断面は矩形状とされるとともに、蓋板35の表裏面は、導入路14において、連通孔21が開口する下面、およびこの下面に上下方向で対向する上面と平行になっており、ポンプヘッド15を内筒部材23に対して押し下げたとき、またはこの押し下げを解除したときに、蓋板35の表面若しくは裏面は、その全域が同時かつ一様に、導入路14の上面若しくは下面に当接するようになっている。
【0019】
さらに、本実施形態では、蓋板35の裏面には、導入路14における連通孔21の開口部に着脱可能に嵌合する嵌合凸部35aが形成されている。なお、この嵌合凸部35aは、内筒部材23の上端開口縁23cにおいて、導入路14の他端側に位置する部分に連結され、この部分よりも導入路14の一端側に位置する部分と嵌合凸部35aの間には、上下方向の隙間が形成されている。
【0020】
また、内筒部材23の上端開口縁23cと蓋板35との間の上下方向における隙間は、導入路14の他端側から一端側に向かうに従い漸次大きくなっている。図示の例では、蓋板35が、導入路14の他端側から一端側に向かうに従い漸次、内筒部材23の上端開口縁23cに対して上方に向けて傾斜している。さらに、この内筒部材23の上端開口縁23cにおいて導入路14の一端側に位置する部分は、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で、導入路14の前記下面よりも下方に位置している。
【0021】
この内筒部材23における小径部23aの内側には、上方に前記発泡部材19が設けられ、下方にステム22の上端部22aが嵌合されている。
発泡部材19は、筒状のケーシング19aと、ケーシング19a内に装着された2つの発泡エレメント19bとを備えている。ケーシング19aは上側が大径部19c、下側が小径部19dになっていて、大径部19cは内筒部材23の内側に挿入固定され、小径部19dはステム22の上端部22aの内側に挿入されている。小径部19dの外周面にはその下端から上方に延びて大径部19cの底部外表面に至りさらにその径方向外方に向けて延在して開口した複数の溝bが形成されている。
【0022】
さらに、ケーシング19a内において下側に配された発泡エレメント19bでは筒体の下側開口面に網19eが張設されており、ケーシング19a内において上側に配された発泡エレメント19bでは筒体の上側開口面に網19eが張設されている。
また、ステム22は、ポンプヘッド15および内筒部材23それぞれの下端開口面から下方に突出している。ここで、内筒部材23における小径部23aの内周面において、ステム22の上端部22aが嵌合された部分には、上下方向に延在し、かつ下方に開口した複数の縦溝aが形成されている。これらの縦溝aは、ステム22の上端開口縁を跨いで、発泡部材19のケーシング19aに形成された複数の溝bに連通している。
【0023】
液用ピストン11は、ステム22の内側に設けられており、その上側が小径部11a、下側が大径部11bとなっていて、小径部11aがステム22の内側に液密状態で挿入固定され、大径部11bはステム22の下端開口面から下方に突出し、かつその外周面がステム22の外周面とほぼ面一となっている。
ここで、ステム22の内周面において、液用ピストン11と発泡部材19との間に位置する部分に、径方向内方に向けて円環状の弁座22bが突設されており、この弁座22bに着座および離反可能に球状の液吐出弁22dが設けられている。そして、ステム22の内部において、発泡部材19の小径部19dの下端と、弁座22bの上面との間の空間が前記気液混合室18となっている。
【0024】
空気用ピストン16は、多段筒状の外筒16aと、この外筒16aの内側に配置された内筒16bと、内筒16bの外周面に嵌合されて外筒16aと内筒16bとの間の隙間を開閉する弁体16cと、を備えている。このうち、内筒16bの内側に、ステム22において前記上端部22aに下方で連なる部分が上下摺動可能に挿入されている。さらに、空気用ピストン16における内筒16bの上端部外周面が、この上端と内筒部材23の内面との間に上下方向の隙間Xをあけた状態で、内筒部材23における大径部23bの下端部内周面に上下摺動可能に嵌合されている。
【0025】
ここで、前記隙間Xには、内筒部材23の内周面に形成された前記縦溝aが開口している。また、ステム22の外周面において、空気用ピストン16における内筒16bの内周面が上下摺動する部分には、上下方向に延在し、かつ前記隙間Xに開口する複数の縦溝cが形成されている。
この縦溝c、内筒部材23の小径部23aに形成された前記縦溝a、発泡部材19のケーシング19aに形成された前記溝b、および前記隙間Xによって、空気用シリンダ17と気液混合室18とを連通する空気通路34が構成されている。
【0026】
さらに、ステム22の外周面において、前記複数の縦溝cそれぞれの下端が位置する部分には、その全周にわたって突状部22cが突設されており、この突状部22cの上面に、図1に示されるようなポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で、空気用ピストン16における内筒16bの下端が当接することにより、空気用シリンダ17における空気通路34の開口部を塞いで、空気用シリンダ17の内部と気液混合室18との連通を遮断するようになっている。また、ポンプヘッド15を押し下げたときに、突状部22cの下面が、空気用シリンダ17内の底面において液用シリンダ12の開口周縁部に当接することにより、この押し下げが規制できるようになっている。
【0027】
なお、ポンプヘッド15の外筒15aは、筒状の装着キャップ33内に上下動自在に挿入されている。この装着キャップ33の内周面には雌ねじ部が形成されており、この雌ねじ部が図示されない容器本体の口部に螺着することにより、この吐出ポンプ10が容器本体に取り付けられるようになっている。
【0028】
ここで、液用シリンダ12および空気用シリンダ17は一体に形成されており、このうち空気用シリンダ17は有底筒状に形成され、その底面に筒状の液用シリンダ12が、その内部と空気用シリンダ17の内部とが連通した状態で連結された概略構成となっている。そして、空気用シリンダ17の上端開口部における外周面が、装着キャップ33の内周面に嵌合している。
【0029】
また、内筒部材23の内側に嵌合されたステム22は、空気用シリンダ17の内部を上下方向に貫いて液用シリンダ12内に上下動可能に嵌合されている。さらに、液用ピストン11の大径部11bは液用シリンダ12の内周面に液密状態で上下摺動可能に嵌合されている。
また、空気用ピストン16の外筒16aの下端部を構成する大径部16dが、空気用シリンダ17の内周面に気密状態で上下摺動可能に嵌合されている。
【0030】
ここで、液用ピストン11および液用シリンダ12の内部には、上端部が中空逆円錐状の上部弁体27とされ、下端部が液用シリンダ12内の下端開口部に着座および離反可能な下部弁体25とされた柱状の弁部材26が設けられている。また、液用ピストン11と下部弁体25との間には、液用ピストン11を上方に付勢する第2コイルスプリング(第2弾性部材)32が配置されている。この第2コイルスプリング32は、内筒部材23の大径部23bとポンプヘッド15の内筒15bとの間に設けられた第1コイルスプリング(第1弾性部材)24よりも上方付勢力、つまりばね定数が大きくなっている。
なお、液用シリンダ12の下端外表面には接続筒12aが垂設されている。
【0031】
そして、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態では、上部弁体27は液用ピストン11の上端開口面上に配置され、液用シリンダ12の内部とステム22の内部において上部弁体27の上方に位置する部分とを遮断し、かつ下部弁体25は液用シリンダ12内の下端開口部から離反している。
【0032】
以上のように構成された吐出ポンプ10は、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態では、図1に示されるように、ステム22の突状部22cの上面に、空気用ピストン16における内筒16bの下端が当接し、かつポンプヘッド15の下端と空気用ピストン16の外面との間に上下方向の隙間が設けられている。さらに本実施形態では、内筒部材23の蓋板35が、導入路14における連通孔21の開口部を閉塞している。
【0033】
この状態から、ポンプヘッド15を押し下げると、内筒部材23、ステム22および液用ピストン11は前述の待機状態のまま移動せず、さらに第2コイルスプリング32は上下方向に圧縮変形せず、第1コイルスプリング24が上下方向に圧縮変形させられつつポンプヘッド15だけが下方に移動する。この過程において、蓋板35の表面が導入路14の上面に当接するまで、この蓋板35の両側面が導入路14の両側面に摺接しつつ、導入路14内に内筒部材23が進入する。これにより、内筒部材23の上端開口縁23cと蓋板35の裏面との間の隙間が、導入路14内に位置させられ、この隙間を通して、導入路14と内筒部材23の内部とが連通する(図2)。
【0034】
この状態からさらにポンプヘッド15を押し下げると、内筒部材23も下方に押し下げられ、これらのポンプヘッド15および内筒部材23それぞれの下端が空気用ピストン16における外筒16aの外面に当接するまで、発泡部材19、ステム22、液用ピストン11が下方に移動させられる。
【0035】
この際、空気用ピストン16は前述の待機状態のまま移動せず、この空気用ピストン16における内筒16bの下端と、ステム22の突状部22cとの間に隙間が形成され、また、空気用ピストン16における内筒16bの上端と内筒部材23の内面との間の隙間Xは小さくなるものの消滅しないので、空気通路34を通して空気用シリンダ17内と気液混合室18内とが連通する。
さらにこの際、液用ピストン11の下方への移動に伴い、下部弁体25も下方に移動させられ、この下部弁体25が液用シリンダ12の下端開口部に着座して閉塞する。
【0036】
そして、さらにポンプヘッド15を押し下げると、空気用ピストン16も、弁体16cが外筒16aと内筒16bとの間の隙間を閉塞した状態で下方に移動させられることにより、空気用シリンダ17内において空気用ピストン16の下方に位置する下室内の空気が圧縮させられる。これにより、この下室内の空気が、空気用ピストン16における内筒16bの下端とステム22の突状部22cとの間の隙間から空気通路34内に流入して気液混合室18に移送される。
【0037】
さらにこの際、液用シリンダ12内の下端開口部を下部弁体25で閉塞した状態で、第2コイルスプリング32を圧縮変形させつつ、液用ピストン11を下方に移動させて、上部弁体27を液用シリンダ12の上端開口部から離す。そして、液用シリンダ12内の液圧を、ステム22の弁座22bに着座している液吐出弁22dに作用させてこの液吐出弁22dを弁座22bから離反させることにより、液用シリンダ12内の液体を気液混合室18内に移送させる。
【0038】
以上より、気液混合室18内で液体および空気を合流させ、発泡部材19を通過させて液体を発泡させた後に、ポンプヘッド15の導入路14内を通過させて、ノズル孔13から泡状の液体を吐出させる。
なお、ポンプヘッド15は、突状部22cの下面が、空気用シリンダ17内の底面において液用シリンダ12の開口周縁部に当接するまで押し下げられる。
【0039】
その後、ポンプヘッド15の押し下げを解除すると、第1コイルスプリング24および第2コイルスプリング32の弾性復元力により前述の待機状態に戻ろうとするが、その過程において、内筒部材23における蓋板35の両側面が、ポンプヘッド15における導入路14の両側面に液密状態で摺接しつつ、蓋板35の表面が導入路14の上面から離れ、かつ蓋板35の裏面が導入路14の下面に接近して当接し、さらに蓋板35の嵌合凸部35aが、導入路14における連通孔21の開口部に嵌合する。
【0040】
これにより、ポンプヘッド15を押し下げた後この押し下げを解除する前に導入路14内に残存していた液体が、この押し下げを解除したときに、蓋板35の裏面と導入路14の下面との間に挟まれて、ノズル孔13から排出される。また、ポンプヘッド15の押し下げの解除の過程で、蓋板35の両側面が、導入路14の両側面に液密状態で摺接するので、前述のように導入路14内に残存していた液体が、蓋板35の裏面側から表面側に回り込むのが防止される。
なお、前述のようにポンプヘッド15の押し下げを解除すると、第2コイルスプリング32の弾性復元力によりステム22の突状部22cが空気用ピストン16の内筒16bに当接することによって、空気用ピストン16も上方に移動させられて、空気用シリンダ17の前記下室内が負圧状態となる。これにより、空気用ピストン16の弁体16cが開いて外筒16aと内筒16bとの間が連通することにより、この隙間を通して外気が前記下室内に流入する。
【0041】
以上説明したように本実施形態に係る吐出ポンプ10によれば、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で導入路14における連通孔21の開口部を閉塞し、かつポンプヘッド15を内筒部材23に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、導入路14内を上下方向に摺動する蓋板35が設けられているので、ポンプヘッド15を押し下げて液体をノズル孔13から吐出したときに、導入路14内に液体が残存していても、この押し下げを解除したときに、導入路14内に残存した液体が、蓋板35と導入路14の内面との間に挟まれてノズル孔13から排出されることになり、導入路14内に液体が残存するのを抑制することができる。
【0042】
さらに、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態では、蓋板35が導入路14における連通孔21の開口部を閉塞しているので、液体を吐出した後の待機状態が長期にわたっても、内筒部材23の内側の液体が例えば固化したり変質したりするのを抑制することもできる。特に、本実施形態では、蓋板35に嵌合凸部35aが形成されているので、このような作用効果が確実に奏されることになる。
【0043】
さらに、本実施形態では、内筒部材23の上端開口縁23cと蓋板35との間の上下方向における隙間が、導入路14の他端側から一端側に向かうに従い漸次大きくなっているので、ノズル孔13から液体を吐出する際に、内筒部材23の内側から導入路14へ十分な量の液体を流入させて、しかもこの液体をスムーズにノズル孔13に向けて流動させることが可能になり、蓋板35を設けたことによってノズル孔13からの液体の吐出量が少なくなるのを防ぐことができる。
【0044】
また、本実施形態では、第2コイルスプリング32が、第1コイルスプリング24よりも上方付勢力が大きくなっているので、ポンプヘッド15を押し下げたときに、まず、第1コイルスプリング24を上下方向に圧縮変形させて内筒部材23の内側と導入路14内とを連通させ、その後に、第2コイルスプリング32を上下方向に圧縮変形させて液用シリンダ12内の液体を圧縮し、この液体を内筒部材23の内側を通して導入路14に移送することが可能になり、吐出ポンプ10を無理なくスムーズに動作させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、吐出ポンプ10がいわゆるフォーマポンプとなっており、内筒部材23から導入路14内に移送される液体が泡状となっているため、特に導入路14内に液体が残存し易くなっているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることになる。
さらにこの場合、前述のようにポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で蓋板35が導入路14における連通孔21の開口部を閉塞しているので、発泡部材19の網19eに付着した液体が固化してこの網19eが目詰まりするのを防ぐことが可能になり、液体を発泡させにくくなるのを防ぐことが可能になる。
【0046】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、第1コイルスプリング24の上方付勢力を第2コイルスプリング32よりも小さくしたが、これに代えて例えば、第2コイルスプリング32の上方付勢力を第1コイルスプリング24よりも小さくしてもよいし、両コイルスプリング24、32の上方付勢力を同等にしてもよい。
【0047】
さらに、前記実施形態では、吐出ポンプ10として、ノズル孔13から泡状の液体を吐出するいわゆるフォーマポンプを示したが、これに代えて例えば、空気用ピストン16、空気用シリンダ17、気液混合室18、および発泡部材19等を有さず、液体を泡立たせずにノズル孔13から吐出するポンプにも適用可能である。
さらにまた、液用ピストン11および液用シリンダ12を有するポンプ式の吐出器に代えて、例えば液用ピストン11および液用シリンダ12を有さず、容器本体の口部に上方付勢状態で立設されるステムおよび開閉弁が備えられるとともに、ノズル孔に連通した導入路が内部に形成されたヘッド部が前記ステムに取り付けられ、容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部をステムとともに押し下げることにより、前記開閉弁を開き、容器本体内の液体を前記ノズル孔から吐出する、いわゆるエアゾール式の吐出器においても適用可能である。
また、前記実施形態では、第1、第2コイルスプリング24、32を示したが、これに代えて、例えば軟材質若しくは樹脂バネなどを、ポンプヘッド15若しくは内筒部材23と一体に形成してもよいし、あるいは別体として設けても良いし、ゴム部材等を設けるようにしてもよい。
【0048】
さらに、蓋板35および内筒部材23は、例えば合成樹脂等で一体に形成してもよいし、あるいはそれぞれを別体として形成しこれらを例えば接着してもよい。さらにまた、蓋板35は内筒部材23を形成する材質と同じ材質で形成してもよいし、あるいは内筒部材23よりも柔らかい材質、例えばエラストマー等のゴム状弾性体で形成してもよい。
【0049】
さらに、前記実施形態に代えて、導入路14の流路断面形状を円形状とし、また、蓋板35をゴム状弾性体からなる平面視長方形状の板状体とし、かつこの長方形状をなす短辺の長さを導入路14の内径と同等にすることによって、蓋板35において前記長方形状をなす長辺を有する両側部分を、ポンプヘッド15を押し下げる前後を問わず常に、導入路14の内周面に引っ掛けるようにしてもよい。
この場合、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態では、第1コイルスプリング24による内筒部材23に対するポンプヘッド15の上方付勢力により、蓋板35が下方に凸となるように湾曲させられて、導入路14の内面における下側半分の部分に当接し、また、ポンプヘッド15を内筒部材23に対して押し下げると、蓋板35が上方に凸となるように湾曲させられて、導入路14の内面における上側半分の部分に当接するようになる。
以上の構成においても、蓋板35は、ポンプヘッド15を押し下げる前の待機状態で導入路14における連通孔21の開口部を閉塞し、かつポンプヘッド15を内筒部材23に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、導入路14内を上下方向に移動させられて、前記実施形態と同様の作用効果が奏されることになる。
【0050】
また、ステム22および内筒部材23をそれぞれ別体とした構成を示したが、これらのステム22および内筒部材23を一体に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
導入路内に液体が残存するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出ポンプの待機状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す吐出ポンプにおいて、ポンプヘッドを押し下げ蓋板の表面と導入路の上面とを当接させて、導入路と内筒部材の内側とを連通させた状態を示す縦断面図である。
【図3】図1および図2に示す吐出ポンプにおいて、泡状の液体をノズル孔から吐出している状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 吐出ポンプ(吐出器)
11 液用ピストン
12 液用シリンダ
13 ノズル孔
14 導入路
15 ポンプヘッド(ヘッド部)
16 空気用ピストン
17 空気用シリンダ
18 気液混合室
19 発泡部材
21 連通孔
23 内筒部材
23c 上端開口縁
24 第1コイルスプリング(第1弾性部材)
25 下部弁体(弁体)
32 第2コイルスプリング(第2弾性部材)
35 蓋板
35a 嵌合凸部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔に連通した導入路が内部に形成されたヘッド部が備えられ、容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げることにより、容器本体内の液体を、前記導入路を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、
前記導入路は、上下方向に交差する方向に沿って延在し、その一端側に形成された開口部が前記ノズル孔とされ、
前記ヘッド部内には、上下方向に延在しかつ前記導入路に連通する連通孔が形成され、この連通孔内には、上下方向に摺動する内筒部材が設けられ、これらのヘッド部と内筒部材との間に、前記ヘッド部を内筒部材に対して上方に付勢する第1弾性部材が設けられ、
前記内筒部材の上端開口縁には、この上端開口縁において前記導入路内の他端側に位置する部分から、この内筒部材の上端開口部を開口させた状態で跨いで、前記導入路内の一端側に至る蓋板が延設され、
この蓋板は、前記ヘッド部を押し下げる前の待機状態で前記導入路における連通孔の開口部を閉塞し、かつ前記ヘッド部を内筒部材に対して押し下げたとき、およびこの押し下げを解除したときに、前記導入路内を上下方向に移動させられる構成とされたことを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1記載の吐出器であって、
前記蓋板には、導入路における連通孔の開口部に着脱可能に嵌合する嵌合凸部が形成されていることを特徴とする吐出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吐出器であって、
前記内筒部材の上端開口縁と前記蓋板との間の上下方向における隙間が、前記導入路の他端側から一端側に向かうに従い漸次大きくなっていることを特徴とする吐出器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の吐出器であって、
前記ヘッド部に連係した液用ピストンと、内部をこの液用ピストンが上下方向に摺動する液用シリンダと、が備えられ、
容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げて液用シリンダ内の液体を圧縮することにより、この液体を、前記導入路に移送して前記ノズル孔から吐出する構成とされたことを特徴とする吐出器。
【請求項5】
請求項4記載の吐出器であって、
前記液用シリンダ内に、このシリンダの下端開口部に着座および離反可能な弁体が設けられるとともに、この弁体と前記液用ピストンとの間に、液用ピストンを上方に付勢する第2弾性部材が設けられ、この第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも上方付勢力が大きいことを特徴とする吐出器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の吐出器であって、
前記ヘッド部に連係した空気用ピストンが内部を上下方向に摺動する空気用シリンダと、
前記液用シリンダからの液体と空気用シリンダからの空気とが合流する気液混合室と、
前記導入路と気液混合室との間に設置された発泡部材と、を備え、
容器本体の口部に取り付けた状態で前記ヘッド部を押し下げて液用シリンダ内の液体および空気用シリンダ内の空気を圧縮することにより、これらの液体および空気を、気液混合室に移送して合流させ発泡部材を通して発泡させた後に、前記導入路を通過させて前記ノズル孔から吐出する構成とされたことを特徴とする吐出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−238154(P2008−238154A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161277(P2007−161277)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】