説明

吐出容器

【課題】外容器の胴部を把持したときに内容物が不用意に吐出される不具合が発生しにくい吐出容器を提供することを目的とする。
【解決手段】スクイズ変形可能で復元自在な胴部21aを有する外容器24の内側に可撓性を有する内容器25が収納された二重容器2と、二重容器の口部20に装着され、内容器内の内容物を吐出する吐出口78が形成された吐出キャップ3と、が備えられ、吐出口と内容器の内側とを連通する連通路11に、連通路を閉塞する開閉自在な閉塞手段50が設けられた吐出容器において、外容器と内容器の間に形成される中間空間13と外部とを連通し、中間空間に外気を流入させる外気流入路12が形成され、外気流入路中に、中間空間の内圧が陽圧になった際に閉鎖状態を維持し、中間空間の内圧が陰圧になると開けられる逆止弁10が設けられ、逆止弁の弁体62が着座する弁座部54が、中間空間の内圧上昇に伴い弾性変形可能な弾性体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出容器として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、二重容器の口部に吐出キャップが装着された構成が知られている。上記した二重容器は、スクイズ変形可能で復元自在な胴部を有する外層(外容器)の内周面に可撓性を有する内層(内容器)が剥離可能に積層されたデラミボトルである。また、上記した吐出キャップは、内容器の内側に収容された内容物を吐出するノズルを有するノズルキャップであり、ノズルの下端部の内側には、ノズルを閉塞する開閉自在な逆止弁状の閉塞手段が設けられている。また、上記した吐出容器には、内層と外層の間の層間空間(中間空間)に外気を流入させるための外気流入路が形成されている。この外気流入路は、外層の口部に形成された空気孔と、外層の口部外周面と吐出キャップの周壁部内周面との間に形成された隙間と、吐出キャップの周壁部に形成された空気孔と、からなる。そして、上記した吐出キャップの周壁部の内周面には、前記した後者の空気孔を開閉する弁体(逆止弁)が設けられている。
【0003】
上記した従来の吐出容器によれば、二重容器の胴部をスクイズ変形させると、上記した弁体が閉じられて空気孔が閉塞されているので、内層が外層と共に減容変形する。そして、この減容変形に伴い内層の内圧が加圧されて陽圧となり、その内層の内圧によって閉塞手段が開けられてノズルが開放される。その結果、内層の内側に収容された内容物がノズルを通って吐出される。そして、内容物が吐出されることで内層の内圧が大気圧まで低下すると閉塞手段が閉じられ、ノズルが閉塞されて内層が密封される。その後、上記したスクイズ変形を解除すると、外層の胴部が復元変形する。このとき、内層が密封されているため、内層の減容形状が保持される。このため、内層と外層との間に形成される層間空間の内圧が減圧されて陰圧となり、上記した弁体が開けられて空気孔が開放される。これにより、上記した層間空間の陰圧によって外気が吸引され、外気流入路を通って層間空間に外気が流入する。この状態で再度、二重容器の胴部をスクイズ変形させると、外層の変形によって層間空間の内圧が加圧されて陽圧となり、その層間空間の内圧によって内層が減容変形する。このように、内容物の減少と共に内層が収縮するため、内容物の保存性を高めることができ、また、内容物の残量が少なくなっても良好な吐出操作が維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−59131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、環境問題などに対する配慮から外層を薄肉化して二重容器を軽量化する要望がある。
しかしながら、外層を薄肉化すると外層が変形しやすくなるため、上記した従来の吐出容器で外層を薄肉化すると、吐出容器を把持したときに外層が容易にスクイズ変形し、不用意に内容物が吐出(飛散)するおそれがある。すなわち、上記した従来の吐出容器では、弁体が閉じられると層間空間の空気の逃げ場が無く、外層の胴部の変形量がそのまま内層を減容変形させる加圧として影響するため、外層の胴部がスクイズ変形すると直ちに内層の内圧が加圧される。したがって、吐出容器を把持したときに、内層の内圧が加圧されて内容物が不用意に吐出する不具合が発生しやすい。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、外容器の胴部を把持したときに内容物が不用意に吐出される不具合が発生しにくい吐出容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出容器は、スクイズ変形可能で復元自在な胴部を有する外容器の内側に可撓性を有する内容器が収納された二重容器と、該二重容器の口部に装着され、前記内容器の内側に収容された内容物を吐出する吐出口が形成された吐出キャップと、が備えられ、前記吐出口と前記内容器の内側とを連通する連通路に、該連通路を閉塞する開閉自在な閉塞手段が設けられており、前記二重容器のスクイズ変形によって前記内容器が減容されて該内容器の内圧が陽圧となり、該内容器の内圧によって前記閉塞手段が開放されて前記連通路を通って前記内容物が吐出される吐出容器において、前記外容器と前記内容器との間に形成される中間空間と外部とを連通し、前記中間空間に外気を流入させる外気流入路が形成されており、該外気流入路中に、前記中間空間の内圧が陽圧になった際には閉鎖状態が維持され、前記中間空間の内圧が陰圧になると開けられる逆止弁が設けられており、該逆止弁の弁体が着座する弁座部が、前記中間空間の内圧上昇に伴い弾性変形可能な弾性体からなることを特徴としている。
【0008】
この本発明に係る吐出容器では、内容器の内側に収容された内容物を吐出させる際、二重容器の胴部をスクイズ変形させる。これにより、内容器が外容器とともに変形して減容される。そして、この減容変形に伴い内容器の内圧が加圧されて陽圧となり、その内容器の内圧(陽圧)によって閉塞手段が開けられて連通路が開放される。その結果、内容器の内側に収容された内容物が連通路を通って吐出口から吐出される。そして、内容物が吐出されることで内容器の内圧が大気圧まで低下すると閉塞手段が閉じられ、連通路が閉塞されて内容器が密封される。その後、上記したスクイズ変形を解除すると、外容器の胴部が復元変形する。このとき、内容器の減容形状が保持されるので、外容器と内容器との間に中間空間が形成されると共に、その中間空間の内圧が減圧されて陰圧となり、この中間空間の内圧(陰圧)によって逆止弁の弁体が弁座部から離間して逆止弁が開けられ、外気流入路が開放される。これにより、上記した中間空間の内圧(陰圧)によって外気が吸引され、外気流入路を通って中間空間に外気が流入する。そして、外気が流入することで中間空間の内圧が大気圧まで上昇すると、逆止弁の弁体が弁座部に着座して逆止弁が閉鎖される。この状態で再度、二重容器の胴部をスクイズ変形させると、逆止弁の閉鎖状態が維持され、外気流入路が閉塞されているので、中間空間の内圧が加圧されて陽圧となり、その中間空間の内圧(陽圧)によって内容器が減容変形する。つまり、通常状態(大気圧)では、前記逆止弁が閉じられている。
【0009】
また、本発明に係る吐出容器では、二重容器(外容器)の胴部を把持したときに外容器の胴部がスクイズ変形したとしても、弁座部が弾性変形して中間空間の空気が外気流入路内に逃がされるため、閉鎖手段が開けられず、内容物が吐出されない。すなわち、外容器の胴部を把持して当該胴部に予期せぬスクイズ変形(小さな変形量)が生じたとき、中間空間の内圧が外気流入路を介して弁座部に作用して当該弁座部が弾性変形し、逆止弁によって密閉された空間の容積が密閉状態のまま増大(膨張)し、上記した胴部のスクイズ変形量が弁座部の弾性変形によって吸収される。これにより、中間空間の内圧上昇が抑えられ、内容器に作用する加圧が抑えられ、その結果、内容器の内圧上昇が抑えられ、閉塞手段が開けられることが防止される。
【0010】
また、本発明に係る吐出容器は、前記弁座部が、前記外気流入路の内壁面に突設されて先端部が変位自在な板部からなることが好ましい。
【0011】
これにより、弁座部が大きく弾性変形可能となる。よって、外容器の胴部を把持して当該胴部がスクイズ変形したとき、弁座部が大きく弾性変形可能であるので、中間空間の空気が外気流入路内に十分に逃がされ、中間空間の内圧上昇が確実に抑えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る吐出容器によれば、外容器の胴部を把持したときに外容器の胴部がスクイズ変形したとしても、弁座部が弾性変形することで、中間空間の内圧上昇が抑えられ、閉塞手段が開けられることが防止されるので、内容物が不用意に吐出される不具合が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出容器の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための吐出容器の吐出時の縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための吐出容器の吐出後の縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための吐出容器の把持した時の縦断面図である。
【図5】本発明の変形例を説明するための吐出容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る吐出容器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、図1に示す一点鎖線Oは、二重容器2の口部20の中心軸線を示しており、以下、単に「軸線O」と記す。また、軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、軸線O回りの方向を「周方向」とする。さらに、本実施の形態では、二重容器2における口部20側(図1における上側)を「上方」とし、その反対側(図1における下側)、つまり二重容器2の図示せぬ底部側を「下方」とする。
【0015】
図1に示す吐出容器1の概略構成としては、ボトル状の二重容器2と、二重容器2の口部20に装着された吐出キャップ3と、二重容器2の口部20の内側に嵌合された中栓4と、中栓4の立上げ筒部43に嵌合された弁座部材5と、中栓4のフランジ部42の上に載置された弁部材6と、を備えている。
【0016】
二重容器2は、軸方向に延在する筒状の胴部21と、その胴部21の上端部に設けられた環状の肩部22と、肩部22の内縁から上向きに突設された筒状の嵌合部23と、嵌合部23の上端部から立設された円筒形状の口部20と、を備えている。
また、二重容器2は、外層24(外容器)と内層25(内容器)とが剥離可能に積層された二層構造の積層剥離ボトル(デラミボトル)であり共押出し成形した二層構造のパリソンをブロー成形することで形成される。
【0017】
上記した外層24は、例えばポリエチレン樹脂などからなる外装体であり、この外層24の胴部21aは、スクイズ変形可能で、且つ復元自在となっている。また、外層24の口部20aには、口部20aの外周面から内周面にかけて貫通した複数の空気孔27が形成されている。この空気孔27は、外層24と内層25の間の層間空間13(中間空間)と、外層24の口部20aの外周面と後述する吐出キャップ3の周壁部71の内周面との間の隙間空間14と、を連通する連通孔であり、複数の空気孔27は、周方向に均等に配設(本実施形態では一対を対向配置)されている。また、外層24の口部20aの外周面には、吐出キャップ3を螺着させるための雄ねじ26が形成されている。
【0018】
上記した内層25は、外層24の内側に収納されていると共に内容物を収容する可撓性を有する内装体であり、外層24の樹脂に対して非相溶性の例えばナイロン樹脂などからなる。この内層25は、外層24の内周面に剥離可能に積層されている。
【0019】
吐出キャップ3は、二重容器2の口部20に被着されたキャップ本体7と、そのキャップ本体7に形成された吐出口78を覆うオーバーキャップ8と、を備えている。このキャップ本体7とオーバーキャップ8はヒンジ30を介して連結されており、キャップ本体7とオーバーキャップ8とは一体に形成されている。
【0020】
キャップ本体7は、二重容器2の口部20の上方に配設された天壁部70と、天壁部70の外縁から垂下された周壁部71と、天壁部70の中央部分から垂下された嵌合筒72と、天壁部70の中央部分から立設されたノズル筒73と、を備えている。
【0021】
天壁部70は、軸線Oに対して垂直に配設された円環状の板状部であり、この天壁部70の上面の中央部(内周部)には、上方に突出した段差部70aが形成されている。また、天壁部70には、天壁部70の上面から下面にかけて貫通した複数の空気孔74が形成されている。これら複数の空気孔74は、上記した段差部70aの外縁部分にそれぞれ配設されていると共に周方向に均等に配設されている。
【0022】
周壁部71は、軸線Oを共通軸にして二重容器2の口部20と同軸上に配設された略円筒形状の筒部であり、口部20の外周に周設されている。この周壁部71の内周面には、上記した外層24の雄ねじ26に螺合される雌ねじ75が形成されている。また、周壁部71の下端部には、上記した嵌合部23の外周に嵌合されて全周に亘ってシール(気密状態)するシール部76が設けられている。また、周壁部71の上端部には、内径が段差状に縮径された縮径部77が設けられている。
【0023】
嵌合筒72は、天壁部70の内縁から垂下されて後述する弁座部材5の筒部51の内側に嵌合された筒部である。この嵌合筒72は、周壁部71の内側に配設されていると共に軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設されている。
ノズル筒73は、天壁部70の内縁から立設された筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設されている。このノズル筒73は、上記した嵌合筒72に連通されており、ノズル筒73の上端は、内層25内に収容された内容物を吐出する吐出口78となっている。
【0024】
オーバーキャップ8は、ノズル筒73の上方に配設された天壁部80と、天壁部80の外縁から垂下された周壁部81と、天壁部80の中央部分から垂下された封止栓82と、を備えている。
【0025】
天壁部80は、軸線Oに対して垂直に配設された平板状の板部である。
周壁部81は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設された略円筒形状の筒部であり、周壁部81の下端部は、キャップ本体7の天壁部70の外縁部に脱着可能に嵌合されている。また、周壁部81の下端部とキャップ本体7の天壁部70の外縁部とがヒンジ30を介して連結されており、周壁部81の下端部のうち、ヒンジ30の径方向反対側の位置に、オーバーキャップ8を開閉操作するための摘み部83が設けられている。
【0026】
封止栓82は、天壁部80の中央部の下面から垂下された筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設されている。この封止栓82は、上記したノズル筒73の上端部の内側に嵌合されており、これにより、ノズル筒73の上端部(吐出口78)がシールされている。
【0027】
中栓4は、二重容器2の口部20の内側に配設された底壁部40と、底壁部40の外縁から立設された周壁部41と、周壁部41の上端部から径方向外側に突出したフランジ部42と、底壁部40の上面に立設された立上げ筒部43と、を備えている。
【0028】
底壁部40は、軸線Oに対して垂直に配設された平板状の板部である。この底壁部40の中央部分には、上下に貫通した連通口44が形成されている。この連通口44は、底壁部40の上面から上方に向けて突出した筒部であり、立上げ筒部43の内側に配設されていると共に軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設されている。
【0029】
周壁部41は、軸線Oを共通軸にして口部20と同軸上に配設された円筒形状の筒部であり、口部20の内側に嵌合されている。
立上げ筒部43は、円筒形状の筒部であり、周壁部41の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして周壁部41と同軸上に配設されている。
【0030】
フランジ部42は、周壁部41の上端部に沿って全周に亘って円環状に形成されており、口部20の上端面に載置されている。このフランジ部42には、周壁部41と立上げ筒部43との間に形成された内部空間15と上記した隙間空間14とを連通する複数の凹溝45が形成されている。この凹溝45は、フランジ部42の上面の内縁からフランジ部42の外周面にかけて延在されており、複数の凹溝45は、周方向に均等に配設されている。
【0031】
なお、上記したキャップ本体7の空気孔74、内部空間15、凹溝45、隙間空間14及び外層24の空気孔27によって、上記した層間空間13に外気を流入させるための外気流入路12が形成されている。この外気流入路12は、キャップ本体7の天壁部70の上方の空間と層間空間13とを連通する連通路であり、オーバーキャップ8が開けられることで外部に向けて開放される。
【0032】
弁座部材5は、上記した外気流入路12を開閉する逆止弁10の弁座部54を備えた部材であり、その概略構成としては、軸方向に延在する筒部51と、筒部51の外周面に突設された弁座部54と、を備えている。
筒部51は、軸線Oを共通軸にして上記した立上げ筒部43及び嵌合筒72と同軸上に配設され、立上げ筒部43の内側に嵌合されている。また、この筒部51の上端部の内側に、上記した嵌合筒72が嵌合されている。
【0033】
弁座部54は、上記した層間空間13の内圧上昇に伴い弾性変形可能な弾性体であり、筒部51の外周面に突設されて先端部が変位自在な板部である。詳しく説明すると、弁座部54は、筒部51の外周面に沿って全周に亘って延設された円環状の板部である。この弁座部54の先端部は、キャップ本体7の天壁部70の下面から離間されており、弁座部54は、上向きに弾性的に撓み変形可能となっている。また、弁座部54は、立上げ筒部43の上方から立上げ筒部43の径方向外側に張り出されており、弁座部54の基端部は、立上げ筒部43の上端面で押さえられている。
【0034】
また、弁座部材5には、上記した吐出口78と内層25の内部とを連通する連通路11を閉塞する開閉自在な閉塞手段50が備えられている。この閉塞手段50は、筒部51の内側に配設されて上記した中栓4の連通口44を開閉する逆止弁状の弁構造であり、その概略構成としては、連通口44を閉塞する弁体52と、弁体52を弾性支持する複数の連結片53と、を備えている。なお、上記した連通路11は、内層25内の内容物を吐出口78まで流通させる流通路であり、上記したノズル筒73、嵌合筒72、筒部51及び連通口44によって形成されている。
【0035】
弁体52は、軸線Oに対して垂直に配設された平板状の板部であり、連通口44の上端面に離間可能に載置されている。
連結片53は、筒部51と弁体52との間に介装された弾性変形可能なブリッジであり、周方向に沿って延設され、一端が筒部51の下端部の内周面に連結され、他端が弁体52の外周面に連結されている。
【0036】
弁部材6は、上記した逆止弁10の弁体62を備えた環状部材であり、上記した中栓4のフランジ部42の上に載置されていると共にキャップ本体7の縮径部77に嵌合されている。詳しく説明すると、弁部材6は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に延在する筒部60と、その筒部60の下端部から径方向外側に突出されたフランジ部61と、筒部60の内周面から突設された弁体62と、を備えている。
【0037】
筒部60は、キャップ本体7の縮径部77の内側に嵌合されており、この筒部60の内周面は、中栓4の周壁部41の内周面と面一に形成されている。
フランジ部61は、筒部60の下端部に沿って全周に亘って延在した円環状の板部であり、キャップ本体7の縮径部77と中栓4のフランジ部42との間に挟み込まれている。
【0038】
弁体62は、上記した層間空間13の内圧上昇に伴い弾性変形可能な弾性体であり、筒部60の内周面から突設された板部である。詳しく説明すると、弁体62は、筒部60の内周面に沿って全周に亘って延設された円環状の板部であり、基端部(外縁部)を固定端にして上下方向に弾性的に撓み変形可能となっている。また、弁体62の先端部は、全周に亘って上記した弁座部54の下面に離間可能に当接(着座)されている。
【0039】
上記した弁体62及び弁座部54により、外気流入路12を開閉する逆止弁10が構成されている。この逆止弁10は、外気の流入を許容すると共に層間空間13内の気体の外部への流出を規制する弁機構であり、層間空間13の内圧が陽圧或いは大気圧のときに弁体62が弁座部54に着座して閉じられ、層間空間13の内圧が陰圧になると弁体62が弁座部54から離間して開けられる。
【0040】
次に、上記した構成からなる吐出容器1の作用について説明する。
【0041】
内層25の内側に収容された内容物を吐出させる際、図2に示すように、まず、オーバーキャップ8をヒンジ30回りに回動させてキャップ本体7の吐出口78を露出させる。次に、二重容器2の胴部21(外層24の胴部21a)をスクイズ変形させる。これにより、内層25が外層24とともに変形して減容され、この内層25の内圧が加圧されて陽圧となり、その内層25の内圧(陽圧)によって、閉塞手段50の連結片53が弾性変形して弁体52が連通口44の上端面から離間する。これにより、連通路11が開放され、内層25の内側に収容された内容物が連通路11を通って吐出口78から吐出される。そして、内容物が吐出されることで内層25の内圧が大気圧まで低下すると、上記した連結片53が復元変形し、弁体52が連通口44の上端面に着座する。これにより、連通路11が閉塞されて内層25が密封される。
【0042】
その後、上記したスクイズ変形を解除すると、図3に示すように、外層24の胴部21aが復元変形する。このとき、内層25の減容形状が保持されるので、外層24と内層25との間に層間空間13が形成されると共に、その層間空間13の内圧が減圧されて陰圧となり、この層間空間13の内圧(陰圧)によって逆止弁10の弁体62が弁座部54から離間して逆止弁10が開けられ、外気流入路12が開放される。これにより、上記した層間空間13の内圧(陰圧)によって外気が吸引され、外気流入路12を通って層間空間13に外気が流入する。そして、外気が流入することで層間空間13の内圧が大気圧まで上昇すると、逆止弁10の弁体62が弁座部54に着座して逆止弁10が閉鎖される。このように、前記層間空間13に外気が導入された状態(外層24と内層25とが剥離された状態)で再度、外層24の胴部21aをスクイズ変形させると、逆止弁10の弁体62が弁座部54に着座して逆止弁10が閉じられた状態が維持され、外気流入路12が閉塞されたままになるので、層間空間13の内圧が加圧されて陽圧となり、その層間空間13の内圧(陽圧)によって内層25が減容変形する。そして、この減容変形に伴い内容物が前述の通り吐出される。
【0043】
また、上記した吐出容器1では、図4に示すように、外層24の胴部21aを把持したときに外層24の胴部21aが多少スクイズ変形したとしても、弁座部54が弾性変形して層間空間13の空気が外気流入路12内に逃がされるため、閉塞手段50が開かず、内層25内の内容物が吐出されない。すなわち、外層24の胴部21aを把持して当該胴部21aがスクイズ変形したとき、層間空間13の内圧が外気流入路12を介して弁座部54に作用して弁座部54が弾性変形し、逆止弁10によって密閉された空間が密閉状態のまま増大(膨張)し、上記した胴部21aのスクイズ変形量が弁座部54の弾性変形によって吸収される。これにより、層間空間13の内圧上昇が抑えられ、内層25に作用する加圧が抑えられ、その結果、内層25の内圧上昇が抑えられ、閉塞手段50が開けられることが防止される。
【0044】
また、上記した弁座部54が、筒部51の外周面から突設されて先端部が変位自在な板部からなるため、弁座部54が大きく弾性変形可能となる。よって、上述したように外層24の胴部21aを把持して当該胴部21aがスクイズ変形したとき、弁座部54が大きく弾性変形可能であるので、層間空間13の空気が外気流入路12内に十分に逃がされ、層間空間13の内圧上昇が確実に抑えられる。
【0045】
上述した吐出容器1によれば、外層24の胴部21aを把持した(持ち上げた)ときに生じる程度の小さい変形量で外層24の胴部21aがスクイズ変形したとしても、弁座部54が弾性変形することで、層間空間13の内圧上昇が抑えられ、閉塞手段50が開けられることが防止されるので、内容物が不用意に吐出される不具合が発生しにくい。
【0046】
また、弁座部54の先端部が変位自在であり、層間空間13の内圧上昇が確実に抑えられるので、内容物の不用意な吐出を確実に防止することができる。
【0047】
以上、本発明に係る吐出容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、逆止弁10の弁体62を備える弁部材6が備えられ、逆止弁10の弁座部54が弁座部材5に付設されているが、本発明は、逆止弁の弁体や弁座部が中栓4やキャップ本体7と一体に形成されていてもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、連通口44を閉塞する弁体52と、弁体52を弾性支持する連結片53と、を備えた閉塞手段50が備えられているが、本発明は他の閉塞手段を備えた構成であってもよい。
【0049】
例えば、図5に示すように、反転変形或いは膨出変形可能なフィルム93からなる閉塞手段150を備えた吐出容器101であってもよい。詳しく説明すると、キャップ本体7の天壁部70上に、内容物を注出するための注出部材9が装着されている。この注出部材9には、連通路11を介して内層25の内部に連通する連通開口91が形成された天壁部90と、その天壁部90の外縁から突出するリップ部92と、天壁部90の上面に被覆されて連通開口91を閉塞するフィルム93と、が備えられている。このフィルム93は、連通開口91を囲繞すると共にリップ部92の先端位置が開口した固着部を介して天壁部90の上面に固着されている。そして、フィルム93のうちの固着部の内側部分が天壁部90の上面に離間可能に密接されて連通開口91がシールされている。
【0050】
上記した吐出容器101では、外層24の胴部21aをスクイズ変形させて内層25内の内容物を連通開口91から流出させると、連通開口91から流出する内容物によってフィルム93が押圧され、フィルム93のうちの固着部の内側部分が、天壁部90の上面から離間して上側に凸となるドーム状に膨出する。そして、フィルム93と天壁部90の上面との間に、連通開口91に連通する流路が形成されると共に、固着部の開口部分(リップ部92の先端部分)に、外部に向けて開口された吐出口94が形成される。その結果、連通開口91から流出した内容物が、上記した流路(フィルム93と天壁部90の上面との間の隙間)を通って上記した吐出口94から吐出される。また、外層24のスクイズ変形を解除して内容物の注出を停止すると、フィルム93に付与されていた内容物による押圧力が解除され、天壁部90の上面から離間したフィルム93が元の状態に復元されて天壁部90の上面に密接する。その結果、上記した吐出口94が閉塞されると共に連通開口91がフィルム93によってシールされ、内層25が密閉される。
【0051】
また、上記した実施の形態における二重容器2は、外層24と内層25とが剥離可能に積層された積層剥離容器であるが、本発明は、積層剥離容器に限定されるものではなく、例えば、外容器と内容器とが別体に形成された二重容器であってもよい。
【0052】
また、上記した実施の形態における外気流入路12は、キャップ本体7の天壁部70に形成された空気孔74と、中栓4の周壁部41と立上げ筒部43の間に形成された内部空間15と、中栓4のフランジ部42に形成された凹溝45と、二重容器2の口部20とキャップ本体7の周壁部71との間に形成された隙間空間14と、外層24の口部20aに形成された空気孔27と、からなるが、本発明は、他の構成の外気流入路であってもよい。例えば、キャップ本体7の周壁部71に空気孔が形成され、この空気孔と上記した隙間空間14と口部20aの空気孔27とからなる外気流入路であってもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、キャップ本体7と中栓4との間に逆止弁10が配設されているが、本発明における逆止弁の位置は適宜変更可能である。例えば、二重容器2の口部20とキャップ本体7の周壁部71との間に形成された隙間空間14に逆止弁が配設されていてもよい。この場合、逆止弁の弁体や弁座部を備えた弁部材を外層24の口部20aの外周に装着された構成であってもよく、或いは、逆止弁の弁体や弁座部が外層24の口部20aやキャップ本体7の周壁部71に一体に形成された構成であってもよい。
【0054】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、101 吐出容器
2 二重容器
3 吐出キャップ
10 逆止弁
11 連通路
12 外気流入路
13 層間空間(中間空間)
20 口部
21a 胴部
24 外層(外容器)
25 内層(内容器)
50、150 閉塞手段
54 弁座部
62 弁体
78 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイズ変形可能で復元自在な胴部を有する外容器の内側に可撓性を有する内容器が収納された二重容器と、
該二重容器の口部に装着され、前記内容器の内側に収容された内容物を吐出する吐出口が形成された吐出キャップと、
が備えられ、
前記吐出口と前記内容器の内側とを連通する連通路に、該連通路を閉塞する開閉自在な閉塞手段が設けられており、
前記二重容器のスクイズ変形によって前記内容器が減容されて該内容器の内圧が陽圧となり、該内容器の内圧によって前記閉塞手段が開放されて前記連通路を通って前記内容物が吐出される吐出容器において、
前記外容器と前記内容器との間に形成される中間空間と外部とを連通し、前記中間空間に外気を流入させる外気流入路が形成されており、
該外気流入路中に、前記中間空間の内圧が陽圧になった際には閉鎖状態が維持され、前記中間空間の内圧が陰圧になると開けられる逆止弁が設けられており、該逆止弁の弁体が着座する弁座部が、前記中間空間の内圧上昇に伴い弾性変形可能な弾性体からなることを特徴としている吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出容器において、
前記弁座部が、前記外気流入路の内壁面に突設されて先端部が変位自在な板部からなることを特徴とする吐出容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−230843(P2011−230843A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105783(P2010−105783)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】