説明

吐出容器

【課題】未使用状態における内容物の漏出を防止し易い吐出容器を提供すること。
【解決手段】内容器10及び吸気孔12が形成された外容器11を有する二重容器2と、該二重容器の口部2aに装着された吐出体3と、吐出体を開閉するヒンジキャップ5と、を備え、吐出体が、連通開口45が形成された天壁部42を有し、ヒンジキャップの開閉操作に伴って上下動させられる可動体40と、可動体の上下動に伴って連通開口と内容器の内部との連通及びその遮断を切り替える吐出弁体50と、を備え、天壁部の上面には被覆体60が被覆され、該被覆体が連通開口を囲繞し且つ周方向の一部分が容器軸Oを挟んでヒンジ部4とは反対側の位置で開口した固着部を介して固着され、被覆体のうちの非固着部が連通開口をシールし、外気流入路内46には外気の流入を許容し且つ外部への外気の流出を阻止する逆止弁75が設けられている吐出容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液状の内容物が収容される吐出容器において、天壁部上に設けられたフィルム部材の変形を利用して内容物の吐出及びその遮断を切り替える容器が知られている(特許文献1参照)。
この容器によれば、フィルム部材が天壁部に形成された流出開口を通じて流出してきた内容物に押圧されて変形し、フィルム部材において流出開口上に密接している密接部分が天壁部から離反して上側に浮き上がった状態となり、内容物をこの浮き上がった部分を通じて吐出口から外部に吐出することができる。
その後、流出を停止してフィルム部材に付与されていた押圧力を解除すると、前記浮き上がっていた部分が元の状態に戻って天壁部に再度密接するので、流出開口を再びシールして容器の密閉性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−198300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の容器では、製品輸送時、流通時や保管時等の未使用状態において、フィルム部材が例えば内容物に押圧される等して変形する恐れがあり、それにより内容物が漏出されてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、未使用状態における内容物の漏出を防止し易い吐出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る吐出容器は、内容物が収容されると共に可撓性を具備する内容器、及び該内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成された弾性変形可能な外容器を有する二重容器と、該二重容器の口部に装着され、前記内容器の内部に連通する連通開口を通して前記内容物を吐出可能な吐出体と、該吐出体を開閉するヒンジキャップと、を備え、前記吐出体が、前記連通開口が形成された天壁部を有すると共に、前記ヒンジキャップの開閉操作に伴って上下動させられる可動体と、該可動体の上下動に伴って前記連通開口と前記内容器の内部との連通及びその遮断を切り替える吐出弁体と、を備え、前記天壁部の上面には、前記連通開口を覆う被覆体が被覆され、該被覆体が、前記連通開口を囲繞すると共に、周方向の一部分が容器軸を挟んでヒンジ部とは反対側の位置で開口した固着部を介して前記天壁部の上面に固着され、前記被覆体のうちの前記固着部の内側に位置する非固着部が、前記天壁部の上面に離間可能に密接して前記連通開口をシールし、前記吸気孔と外部とを連通する外気流入路内には、外部から前記内容器と前記外容器との間への外気の流入を許容し、且つ前記内容器と前記外容器との間から外部への外気の流出を阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ヒンジキャップが吐出体を覆っている未使用状態では、吐出弁体が内容器の内部と連通開口との連通を遮断していると共に、天壁部の上面に被覆された被覆体の非固着部が連通開口をシールしている。そのため、未使用状態において、内容器の密閉性を確保することができ、内容物が連通開口から不意に流出して外部に漏出してしまうことを抑制することができる。
【0008】
次に内容物を吐出させる場合には、まずヒンジキャップをヒンジ部回りに回転させる開操作を行う。すると、この開操作に伴って可動体が上昇移動すると共に、該上昇移動に伴って吐出弁体が内容器の内部と連通開口との連通の遮断を解除する。そして、ヒンジキャップを開操作した後、例えば外容器を径方向の内側に向けて押し込んで二重容器を押圧することで、内容器の内圧を上昇させることができ、内容物を連通開口から流出させることができる。すると、連通開口から流出する内容物によって被覆体が押圧され、被覆体のうちの非固着部が天壁部の上面から離間して上側に凸となるドーム状に膨出する。これにより、被覆体と天壁部との間に連通開口に連通する流路が画成されると共に、固着部の開口部分に外側に向けて開口された吐出口が画成される。
【0009】
従って、連通開口から流出した内容物を、上記流路を通じて上記吐出口から外部に吐出することができる。しかも、固着部の開口部分は容器軸を挟んでヒンジ部とは反対側に位置しているので、ヒンジキャップの反対側に吐出口を画成させることができ、ヒンジキャップに邪魔されずに内容物を吐出することができる。
【0010】
その後、二重容器の押圧を停止したり解除したりして、連通開口からの内容物の流出を停止させると、被覆体に付与されていた内容物からの押圧力が解除され、天壁部の上面から離間していた被覆体の非固着部が元の状態に復元されて天壁部の上面に密接する。これにより、上記吐出口及び上記流路が閉塞されると共に連通開口がシールされて、内容器の密閉性を再び確保することができる。
【0011】
なお、内容物を吐出させる際、上述のように二重容器を押圧することに代えて、二重容器を傾けることで内容物を吐出させたり、又は傾けながら二重容器を径方向の内側に向けて押圧することで内容物を吐出させたりしても良い。これらの場合、内容物の吐出を停止させるためには、二重容器を元の正立姿勢に戻せば良い。
【0012】
ところで、内容物の吐出を終了した後、ヒンジキャップをヒンジ部回りに回転させる閉操作を行うと、該閉操作に伴って可動体が下降移動し、該下降移動に伴って吐出弁体が内容器の内部と連通開口との連通を再び遮断する。これにより、内容器の密閉性をより一層確保することができ、被覆体による連通開口のシールと相まって、内容物が連通開口から不意に流出して外部に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0013】
(2)上記本発明に係る吐出容器において、前記天壁部が、前記固着部の開口位置から前記連通開口に向かうに従い漸次下方に傾斜していても良い。
【0014】
この場合には、内容物の吐出を停止した際に、被覆体と天壁部との間に画成される上記流路内の内容物が天壁部の傾斜によって連通開口にスムーズに戻り易いので、内容物の液切れを良くすることができると共に、内容物の液垂れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吐出容器によれば、未使用状態における内容物の漏出を抑制することができ、製品信頼性を高めることができる。
加えて、吐出弁体による内容器の内部と連通開口との連通及びその遮断を、ヒンジキャップの開閉操作に伴う可動体の上下動によって容易に切り替えることができるので、内容物の漏出を抑制しつつ、吐出操作の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る吐出容器の実施形態を示す縦断面図であって、前後方向に沿って断面視した図である。
【図2】本発明に係る吐出容器の実施形態を示す縦断面図であって、左右方向に沿って断面視した図である。
【図3】図1に示す状態からヒンジキャップを開操作した状態での上面図である。
【図4】図1に示す吐出容器を構成する吐出弁体を矢印A側から見た下面図である。
【図5】図1に示す吐出容器を構成する逆止弁周辺の拡大断面図である。
【図6】図1に示す状態からヒンジキャップを開操作させた後、内容物を吐出している状態を示す図である。
【図7】図6に示す状態から内容物の吐出を停止させた後の状態を示す図である。
【図8】内容物の吐出後、外気が逆止弁を通過しながら流入している状態を示す逆止弁周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る吐出容器の実施形態について、図面を参照して説明する。
(吐出容器の構成)
本実施形態の吐出容器1は、図1及び図2に示すように、図示しない液体状の内容物が収容される二重容器2と、この二重容器2の口部2aに装着され、後述する連通開口45を通して内容物を吐出可能な吐出体3と、この吐出体3にヒンジ部4を介して装着され、該吐出体3を開閉するヒンジキャップ5と、を備えている。
【0018】
上記各構成品は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、吐出容器1の正立状態において容器軸Oに沿う方向を上下方向、上下方向に沿ったヒンジキャップ5側を上側、その反対側を下側という。また、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。更に、径方向のうち、ヒンジ部4を通る方向を前後方向といい、この前後方向に沿って容器軸Oに対してヒンジ部4が位置する方向を後側或いは後方といい、その反対側を前側或いは前方という。
【0019】
二重容器2は、内容物が収容されると共に可撓性を具備する内容器(内層)10と、内容器10との間に外気を吸入する吸気孔12が形成された弾性変形可能な外容器(外層)11と、を有しており、図示の例では外容器11に対して内容器10が剥離可能に積層されたデラミボトル(積層剥離型容器)とされている。
二重容器2の口部2aは、内容器10の口部10aと外容器11の口部11aとが積層された構成とされ、上側に位置する上筒部13と、上筒部13の下側に位置し該上筒部13よりも大径に形成された中間筒部14と、中間筒部14の下側に位置し上筒部13と略同径に形成された下筒部15と、を有する三段筒状に形成されている。
【0020】
上筒部13のうち、外容器11の口部11aで構成された部分の外周面には第1ねじ部16が全周に亘って形成されていると共に、この第1ねじ部16の下側に、外容器11と内容器10との間に外気を吸入させる上記吸気孔12が周方向に間隔を開けて複数形成(図示の例では一対を対向配置している)されている。なお、第1ねじ部16において、吸気孔12と周方向の位置が一致する部分には、上下方向に延びる縦溝17(第1ねじ部16も縦断している)が形成されている。
【0021】
吐出体3は、二重容器2の口部2aに装着されると共に該口部2a上に配設された内装部20と、二重容器2の口部2aに装着されると共に該口部2a及び内装部20を径方向の外側から囲繞する外装部30と、該外装部30に上下動可能に装着されると共に内装部20及び外装部30の上方に配設された吐出ヘッド(可動体)40と、吐出ヘッド40の上下動に伴って連通開口45と内容器10の内部との連通及びその遮断を切り替える吐出弁体50と、を備えている。
【0022】
内装部20は、二重容器2の口部2aの内側に嵌合された第1シール筒部21と、第1シール筒部21の上端部から径方向の外側に向けて突設され二重容器2の口部2a上に配設された環状の外フランジ部22と、外フランジ部22の外周縁部から下方に向けて延設され二重容器2の口部2aの外側に嵌合された第2シール筒部23と、第1シール筒部21の下端部から径方向の内側に向けて突設された環状の内フランジ部24と、内フランジ部24の内周縁部から上方に向けて延設されたガイド筒部25と、を備えている。
なお、これら第1シール筒部21、外フランジ部22、第2シール筒部23、内フランジ部24及びガイド筒部25は、容器軸Oと同軸に配設されている。また、ガイド筒部25は第1シール筒部21の略2倍程度の高さとされている。
【0023】
外装部30は、上下両方向に開口する筒状に形成され、その内周面には二重容器2の口部2aに形成された第1ねじ部16に螺合された第2ねじ部31が形成されている。外装部30の上端部のうち後方側に位置する部分には、上方に向けて連結壁32が突設されている。この連結壁32は、平面視円弧状に形成されており、その上端部側の外周面にはヒンジキャップ5を開閉可能に連結する上記ヒンジ部4が形成されている。
【0024】
外装部30の上端側の外周面には、図1から図3に示すように、上記連結壁32が形成されている部分を除いてヒンジキャップ5の下端部が嵌合する段部33が形成されている。また、外装部30の上端部及び連結壁32の内周面には、径方向の内側に向けて突設され、内装部20の外フランジ部22上に配設されると共に内フランジ部24の上方を覆う環状の頂壁部34が連設されている。この頂壁部34には、内周縁部から上方に向けて突設された装着筒部35が連設されおり、内装部20のガイド筒部25に対して径方向の外側から接している。
【0025】
外装部30において第2ねじ部31よりも下側に位置する下端部は、二重容器2の口部2aの中間筒部14に気密状態で外嵌しており、外装部30の下側を通した吸気孔12と吐出容器1の外部との連通を遮断している。内装部20の第2シール筒部23及び外フランジ部22には、これら吸気孔12及び縦溝17に連通する連通溝36が連続的に形成されている。この際、連通溝36は、吸気孔12と周方向の位置が一致する部分に形成されていることが好ましいが、一致していなくても構わない。
なお、外装部30の頂壁部34や内装部20の内フランジ部24等で画成された環状空間は、上記連通溝36に連通する内部空間E1として機能する。
【0026】
ところで、上記装着筒部35は周方向で高さが異なっており、図示の例では後方側に位置する部分が最も低く、その他の部分が後方側に位置する部分よりも上方に突出している。具体的には、装着筒部35のうち後方側に位置する部分の高さは、内装部20のガイド筒部25と略同じ高さとされ、装着筒部35のうちその他の部分の高さは、ガイド筒部25よりも上方に突出している。
そして、装着筒部35のうち後方側に位置する部分における内周面には、上記内部空間E1に連通する凹リブ状の縦溝35aが形成されている。一方、装着筒部35のうち後方側に位置する部分以外の部分には、径方向の外側に向けて第1凸リブ35bが突設されている。
【0027】
吐出ヘッド40は、ヒンジキャップ5の開閉操作に伴って上下動させられる部材であって、内装部20のガイド筒部25の内側に上下摺動可能に嵌合された吐出筒部41と、吐出筒部41の上端部に連設され、該吐出筒部41の上方開口部を塞ぐ天壁部42と、吐出筒部41から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部43と、フランジ部43の外周縁部から下方に向けて延設され、外装部30の装着筒部35を径方向の外側から囲繞して該装着筒部35に上下摺動可能に外嵌された嵌合筒部44と、を備えている。
【0028】
天壁部42は、図1から図3に示すように、吐出筒部41の全周に亘って径方向の外側に突出していると共に、平面視略D字状で且つ凹曲面状に形成されているうえ、容器軸Oに対して傾斜している。具体的にこの天壁部42は、ヒンジ部4が位置する後方側よりも前方側が上方に位置するように上向き傾斜している。
【0029】
なお、吐出ヘッド40は外装部30に対して周方向に位置決めがされた状態で装着されており、天壁部42の前方部42a側が容器軸Oを挟んで外装部30に形成されたヒンジ部4とは反対側に向くように位置決めされている。
【0030】
天壁部42の前方部42a側は、前後方向及び容器軸Oに対してそれぞれ直交する左右方向に沿って略平行に延びる外形形状とされている。これに対して、天壁部42の後方部42b側は平面視半円形状に形成されている。これにより、天壁部42全体としては上記したように平面視略D字状に形成されている。
【0031】
また、天壁部42は、上記左右方向に沿って中央から外側に向かうに従い漸次せり上がって縦断面視弓形状に湾曲している。そして、この天壁部42には、後述する連通路Rを介して内容器10の内部に連通する上記連通開口45が形成されている。
この際、連通開口45は天壁部42のうちで左右方向における最も窪んだ最深部に容器軸Oと同軸上に形成されている。なお、図示の例では、連通開口45が吐出筒部41の内径と同径とされた平面視円形状に形成されている場合を例にしているが、吐出筒部41の内径よりも小さい開口としても構わない。
【0032】
嵌合筒部44の下端部には、図1及び図2に示すように、径方向の内側に向けて第2凸リブ44aが環状に突設されており、吐出ヘッド40が上昇移動した際(図6参照)に、該第2凸リブ44aが外装部30の装着筒部35に形成された第1凸リブ35bに対して下側から係合される。これにより、吐出ヘッド40はそれ以上の上昇移動が規制される。
【0033】
ところで、吐出ヘッド40が上昇端まで移動した際、外装部30の装着筒部35のうち後方側に位置する部分と第2凸リブ44aとの間には、外部に連通する隙間が画成される。そのため、吐出ヘッド40が上昇端まで移動した際、二重容器2の口部2aに形成された吸気孔12は、縦溝17、連通溝36、内部空間E1及び縦溝35aからなる外気流入路46を通して外部に連通することとなる。
なお、上記第2凸リブ44aに間欠部を設けたり、装着筒部35にスリットを形成したり、或いは第2凸リブ44aと装着筒部35との間に隙間を設けたりする等の手段によって、後述する外気の流入を許容するようにしても良い。
【0034】
また、吐出ヘッド40の吐出筒部41の内側は、上記連通開口45に連通する連通路Rして機能する。また、この吐出筒部41の内周面において天壁部42の前方部42a側に位置する部分には、連通開口45から流出した内容物を内容器10内に戻し易くしたり、内容物の流出を促したりするための縦溝41aが、連通開口45から容器軸O方向の略中間部に亘って形成されている。
【0035】
上記のように構成された吐出ヘッド40の吐出筒部41には、図1から図3に示すように、径方向の外側に向かって一対の被係合突起47が突設されている。これら被係合突起47は、容器軸Oを挟んで左右方向に並ぶように配置され、天壁部42よりも径方向の外側に突出するように形成されていると共に、その外形は側面視四角形状に形成されている。
【0036】
上述した吐出ヘッド40の天壁部42の上面には、可撓性の被覆体60が被覆されており、天壁部42に形成された連通開口45を覆っている。
この被覆体60は、図3に示すように、天壁部42の外周縁に沿った形状に形成されており、天壁部42を全面に亘って被覆していると共に該天壁部42の上面に固着部61を介して固着されている。この固着部61は、連通開口45を径方向の外側から囲繞していると共に天壁部42の前方部42a側の中央において開口している。そのため、被覆体60は、天壁部42の前方部42a側における中央部分を除いて天壁部42の外周縁に沿って該天壁部42の上面に固着されている。
これにより、天壁部42の前方部42a側には、固着部61が開口して被覆体60と天壁部42とが固着されていない部分が形成され、その部分(固着部61の開口部分)が吐出口62とされている。つまり、この吐出口62は容器軸Oを挟んでヒンジ部4とは反対側に位置している。
【0037】
また、被覆体60は、天壁部42の湾曲に倣って湾曲されており、該被覆体60のうちの上記固着部61の内側に位置する部分が非固着部63とされ、天壁部42の上面に密接されている。これにより、連通開口45が非固着部63によってシールされ、内容器10の密閉性が確保されている。被覆体60の非固着部63は、天壁部42の上面から離間する方向に例えば弾性的に膨出(反転変形)することで、天壁部42の上面から離間可能とされている。つまり、被覆体60の非固着部63は、連通開口45を開閉自在にシールしている。
【0038】
なお、天壁部42の上面に対する被覆体60の固着方法としては、例えば接着用シーラントや接着剤等による接着や、熱溶着等の溶着が考えられる。また、被覆体60としては、破れ難い一般的なフィルム(伸縮性の有無に関係なく適用可能である)や、可撓性を有する樹脂製シート或いは金属箔等が挙げられ、層構成としても単層や積層のものが挙げられる。
【0039】
吐出弁体50は、図1及び図2に示すように、容器軸Oと同軸に配設された有頂筒状に形成されており、下端部が内装部20の内フランジ部24と略高さを一致させた状態でガイド筒部25の内側に配置されている。そして、吐出弁体50の下端部は、図1、図2及び図4に示すように、径方向の外側に延びると共に周方向に間隔を開けて複数配設されたブリッジ部51を介して内装部20の内フランジ部24の内周縁部に連結されている。なお、周方向に隣り合うブリッジ部51間は、吐出開口52とされている。
【0040】
そして、吐出ヘッド40の吐出筒部41の下端部は、この吐出弁体50の筒体50aと内装部20のガイド筒部25との間に液密に且つ着脱自在に嵌め込まれて嵌合している。そのため、上記吐出開口52を通じた連通路Rと内容器10の内部との連通は遮断されている、一方、吐出ヘッド40が上昇移動した際(図6参照)には、吐出筒部41の下端部が吐出弁体50から離間するので、上記吐出開口52を通じて連通路Rと内容器10の内部とが連通する。
このように、吐出弁体50を利用して、吐出ヘッド40の上下動に伴って内容器10の内部と連通開口45との連通及びその遮断を切り替えることが可能とされている。
【0041】
図1、図2及び図5に示すように、上記外気流入路46を構成する内部空間E1内には、弁部材70が配設されている。この弁部材70は、内装部20のガイド筒部25に外嵌された環状の弁筒部71と、弁筒部71から径方向の外側に向けて環状に突設され、外周縁部72aが外装部30の頂壁部34の下面に段付き状に突設された環状の弁座73に全周に亘って当接する弁本体72と、を備えている。
【0042】
弁筒部71の上端部は、外装部30の頂壁部34に接していると共に、縦溝35aに連通する横溝71aが周方向に間隔を開けて複数形成されている。これにより、横溝71aを通じて縦溝35aと内部空間E1とが連通している。弁本体72は、弾性変形によって外周縁部72aが上記弁座73に当接、離間可能とされており、これにより横溝71aを開閉自在に閉塞している。
つまり、弁部材70及び弁座73は、外部から内容器10と外容器11との間への外気の流入を許容し、且つ内容器10と外容器11との間から外部への外気の流出を阻止する逆止弁75として機能する。なお、図示の例では、弁本体72の外周縁部72aは、上方に向けて凸の曲面状に形成されている。
【0043】
ヒンジキャップ5は、図1から図3に示すように、周壁部80と天板部81とで有頂筒状に形成されており、吐出体3を覆うように外装部30に装着されている。このヒンジキャップ5は、ヒンジ部4を介して外装部30に接続されており、ヒンジ部4回りに開閉することで外装部30に対して着脱される。なお、周壁部80の下端部が外装部30の段部33に嵌り込むことで、ヒンジキャップ5は安定した状態で装着される。
【0044】
周壁部80には、ヒンジ部4とは容器軸Oを挟んで径方向の反対側に位置する部分に、径方向外側に向けて突設する摘み片82が形成されており、この摘み片82を利用してヒンジキャップ5の開閉操作(特に開操作)を容易に行うことが可能とされている。
天板部81には、吐出ヘッド40に形成された被係合突起47に係合する一対の係合部83が、左右方向の外側から被係合突起47を挟み込むように配設されている。これらの係合部83は、天板部81から下方に向けて突設され、前後方向に平行な板片部83aと、板片部83aの下端部から径方向に内側に向けて突設され、被係合突起47に対して下方から係脱自在に係合する係合突起83bと、を備えている。
【0045】
(吐出容器の使用)
次に、上述したように構成された吐出容器1の使用について説明する。
はじめに、図1及び図2に示すように、ヒンジキャップ5が吐出体3の外装部30に装着された未使用状態においては、吐出弁体50によって内容器10の内部と連通開口45との連通が遮断されていると共に、天壁部42の上面に被覆された被覆体60の非固着部63が連通開口45をシールしている。そのため、未使用状態において、内容器10の密閉性を確保することができ、内容物が連通開口45から不意に流出して外部に漏出してしまうことを抑制することができる。
【0046】
次に、内容物の吐出を行う場合には、まずヒンジキャップ5をヒンジ部4回りに回転させる開操作を行って外装部30から離脱させる。すると、この開操作に伴って、天板部81に設けられた係合部83の係合突起83bが吐出ヘッド40の被係合突起47に下側から係合しながら係合部83が上昇移動することとなる。これにより、図6に示すように、吐出ヘッド40を構成する吐出筒部41の下端部が、吐出弁体50の筒体50aと内装部20のガイド筒部25との間から上方に抜け出して吐出弁体50から離間し、これにより内容器10の内部と連通開口45とが連通する。また、この過程において、係合部83の係合突起83bが、吐出ヘッド40の被係合突起47を下方から上方に乗り越えて、係合部83と吐出ヘッド40との係合が解除される。そのため、ヒンジキャップ5を大きく開操作することができる。
【0047】
また、吐出ヘッド40が上昇移動する際、吐出筒部41と内装部20のガイド筒部25とが互いに摺接し、ガイド筒部25が吐出ヘッド40の上昇移動をガイドするので、吐出ヘッド40が安定して上昇移動することとなる。また、上昇移動した吐出ヘッド40は、嵌合筒部44に形成された第2凸リブ44aが外装部30の装着筒部35の第1凸リブ35bに下側から係合することで、それ以上の上昇移動が規制される。
【0048】
そして、上記したようにヒンジキャップ5を離脱させた後、二重容器2を径方向の内側に向けて押し込んでスクイズ変形(圧搾)させ、内容器10の内圧を上昇させる。これにより、内容器10の内圧を上昇させることができるので、内容物を吐出開口52及び連通路Rを通じて連通開口45から流出させることができる。すると、連通開口45から流出する内容物によって被覆体60が押圧され、被覆体60の非固着部63が天壁部42の上面から離間する上側に向けて例えば反転変形して、上側に凸となるドーム状に膨出する。このため、被覆体60と天壁部42の上面との間に連通開口45に連通する流路R1が画成されると共に、固着部61の開口部分に外側に向けて開口された吐出口62が画成される。
【0049】
従って、連通開口45から流出した内容物を、上記流路R1を通じて上記吐出口62から吐出させることができる。しかも、ヒンジ部4とは径方向の反対側に吐出口62が画成されるので、ヒンジキャップ5に邪魔されずに内容物を吐出することができる。
【0050】
また、内容物の吐出を停止する際には、二重容器2の押圧を停止したり解除したりして、連通開口45からの内容物の流出を停止させる。これにより、被覆体60に付与されていた内容物からの押圧力が解除され、図7に示すように、天壁部42の上面から離間していた被覆体60の非固着部63が例えば弾性や内容器10の内圧(負圧)によって元の状態に復元されて天壁部42の上面に密接する。これにより、上記吐出口62及び流路R1が閉塞されると共に連通開口45がシールされて、内容器10の密閉性を再び確保することができる。
【0051】
特に、内容物の吐出を停止した際には、本実施形態の天壁部42が上向きに傾斜しており、前方部42a側が後方部42b側よりも上方に位置しているので、流路R1内の内容物が天壁部42の傾斜によって連通開口45にスムーズに戻リ易い。そのため、内容物の液切れを良くすることができると共に、吐出後の内容物の液垂れを抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態の二重容器2はデラミボトルであるので、内容物の吐出によって内容器10が減容変形し、内容器10と外容器11との間に負圧が発生する。すると、この負圧が吸気孔12を通して逆止弁75の弁本体72に作用することにより、該弁本体72の外周縁部72aが弁座73から離間し、外気流入路46を通して外部と吸気孔12とが連通される。そのため、図8の矢印に示すように、外部から外気流入路46に外気が流入され、この外気が吸気孔12から内容器10と外容器11との間に吸入される。
従って、吐出容器1から内容物を吐出した後は、図7に示すように、内容器10が外容器11から剥離して両者の間に隙間空間E2が画成される。そのため、内容器10を減容変形させたまま、外容器11をスムーズに復元変形させることができる。
【0053】
ところで、内容物の吐出を終了した後、ヒンジキャップ5をヒンジ部4回りに回転させる閉操作を行って再度吐出体3の外装部30に装着させる。すると、この閉操作に伴って、係合部83の係合突起83bが吐出ヘッド40の被係合突起47に上側から当接しながら係合部83が下降移動することで、吐出ヘッド40が下降移動することとなる。また、吐出ヘッド40の下降移動に伴って、吐出筒部41の下端部が吐出弁体50の筒体50aと内装部20のガイド筒部25との間に再び嵌り込み、吐出開口52を通じた内容器10の内部と連通路Rとの連通を遮断する。つまり、内容器10の内部と連通開口45との連通が再び遮断される。
これにより、内容器10の密閉性をより一層確保することができ、被覆体60による連通開口45のシールと相まって、内容物が連通開口45から不意に流出して外部に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0054】
また、ヒンジキャップ5の閉操作の過程において、係合部83の係合突起83bが吐出ヘッド40の被係合突起47を上方から下方に乗り越えて、係合突起83bが被係合突起47の下側に位置することなる。
なお、吐出ヘッド40が下降移動する際、上昇移動時と同様に、内装部20のガイド筒部25と吐出筒部41とが互いに摺接し、且つガイド筒部25が吐出ヘッド40の下降移動をガイドするので、吐出ヘッド40が安定して下降移動することとなる。
【0055】
上述したように、本実施形態の吐出容器1によれば、未使用状態における内容物の漏出を抑制することができ、製品信頼性を高めることができる。
しかも、吐出弁体50による内容器10の内部と連通開口45との連通及びその遮断を、ヒンジキャップ5の開閉操作に伴う吐出ヘッド40の上下動によって容易に切り替えることができるので、内容物の漏出を抑制しつつ、吐出操作の操作性を向上することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、二重容器2をスクイズ変形させることで内容物を吐出させたが、二重容器2を前方に向けて傾けて吐出口62を下方に向けた吐出姿勢とし、内容物の自重を利用して吐出させても構わない。この場合、内容物の吐出を停止させるには、二重容器2を元の正立姿勢に戻せばよい。更には、二重容器2を前方に向けて傾けながら、該二重容器2をスクイズ変形させることで内容物を吐出させても構わない。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、天壁部42の前方部42a側が後方部42b側よりも上側に位置するように、天壁部42が容器軸Oに対して傾斜していたが、容器軸Oに対して平行に形成しても構わないし、天壁部42の前方部42a側が後方部42b側よりも下側に位置するように傾斜していても構わない。更に、天壁部42を凹曲面状としたが、平坦面形状や凸曲面状としても構わない。
【0059】
また、逆止弁75は上記実施形態に示した構成に限られず、外部から内容器10と外容器11との間への外気の流入を許容し、且つ内容器10と外容器11との間から外部への外気の流出を阻止する構成であれば良い。
更に、上記実施形態では、内部空間E1内に逆止弁75が配設されているものとしたが、該逆止弁75の配置位置としては吸気孔12と外部とを連通する外気流入路46内に配設されていれば構わない。例えば、二重容器2の口部2aや吐出体3の外装部30に対して、逆止弁75を装着或いは一体に形成しても構わない。
【0060】
更に、上記実施形態において、弁本体72の外周縁部72aと外装部30の頂壁部34に形成された弁座73との間に、圧逃がし路を形成しても構わない。圧逃がし路としては、例えば弁座73に径方向に沿った凹状の横溝を形成する等の構成が挙げられる。
【0061】
この場合には、内容器10と外容器11との間に隙間空間E2が形成された状態で、例えば二重容器2を把持する等して外容器11が径方向の内側に僅かに押し込まれ、隙間空間E2の内圧が上昇しようとしても、圧逃がし路を通してこの内圧を外部に逃がすことができる。従って、内容器10の内圧が上昇するのを抑えることが可能になり、内容器10の内圧上昇によって内容物が連通開口45から予期せず流出してしまうことを抑制することができる。
一方、内容物の吐出のために二重容器2を押圧し、外容器11を径方向の内側に向けて大きく押し込む場合には、圧逃がし路を通して逃がすことができる圧力以上に隙間空間E2の内圧が上昇し、この内圧が内容器10に作用するため内容器10の内圧を確実に上昇させることができる。これにより、内容物を連通開口45から流出させて、吐出口62から確実に吐出させることができる。
【符号の説明】
【0062】
O…容器軸
1…吐出容器
2…二重容器
3…吐出体
4…ヒンジ部
5…ヒンジキャップ
10…内容器
11…外容器
12…吸気孔
40…吐出ヘッド(可動体)
42…吐出ヘッドの天壁部
45…連通開口
46…外気流入路
50…吐出弁体
60…被覆体
61…被覆体の固着部
63…被覆体の非固着部
75…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されると共に可撓性を具備する内容器、及び該内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成された弾性変形可能な外容器を有する二重容器と、
該二重容器の口部に装着され、前記内容器の内部に連通する連通開口を通して前記内容物を吐出可能な吐出体と、
該吐出体を開閉するヒンジキャップと、を備え、
前記吐出体は、
前記連通開口が形成された天壁部を有すると共に、前記ヒンジキャップの開閉操作に伴って上下動させられる可動体と、
該可動体の上下動に伴って前記連通開口と前記内容器の内部との連通及びその遮断を切り替える吐出弁体と、を備え、
前記天壁部の上面には、前記連通開口を覆う被覆体が被覆され、
該被覆体は、前記連通開口を囲繞すると共に、周方向の一部分が容器軸を挟んでヒンジ部とは反対側の位置で開口した固着部を介して前記天壁部の上面に固着され、
前記被覆体のうちの前記固着部の内側に位置する非固着部が、前記天壁部の上面に離間可能に密接して前記連通開口をシールし、
前記吸気孔と外部とを連通する外気流入路内には、外部から前記内容器と前記外容器との間への外気の流入を許容し、且つ前記内容器と前記外容器との間から外部への外気の流出を阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出容器において、
前記天壁部は、前記固着部の開口位置から前記連通開口に向かうに従い漸次下方に傾斜していることを特徴とする吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140146(P2012−140146A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293177(P2010−293177)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】