説明

吐出部用維持回復装置および画像形成装置

【課題】キャリッジとこれに対向する部材との対向間隔を一定に維持できるようにして対向部材との密着性や清掃性の向上を図ることができる構成を備えた維持回復装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド2Aと、該ヘッド2Aを搭載して記録紙の搬送方向と直角な方向に往復移動するキャリッジ2と、前記ヘッド2Aを保湿するためのキャップ3Aおよび吸引用キャップ3Bさらにはワイパーブレード3C1などの、キャリッジ2を変位させる力を生起する部材3Cとを備え、キャリッジ2の移動経路内に配置されている維持回復装置3において、キャリッジ2がキャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3C1と対向する位置に移動した際にキャリッジ2を、その往復移動方向と直角な方向に相当する、ヘッド2とキャップ3A,3Bあるいはワイパーブレード3Cとが対向する方向でキャリッジ2の移動を規制するキャリッジ移動規制手段13を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出部用維持回復装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、液滴ノズルの維持回復時での位置規定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ装置や複写装置あるいはプロッタさらにはこれら機能を併せ持つ複合機などの画像形成装置の一つに、インク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式によるインクジェット記録装置がある。
【0003】
この液体吐出記録方式のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する)を行ない、その型式として、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本発明における液体吐出記録方式の画像形成装置としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体を対象として、インクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0005】
さらに、本発明の説明に用いるインクとは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、樹脂、薬品、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いられているものが含まれる。
【0006】
また、本発明で挙げる用紙とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0007】
この液体吐出記録方式の画像形成装置は、製本や各種印刷物を少量生産する為に使用される設備型のインクジェットプリンターの場合、高速で駆動させる為、サーマル型またピエゾ型のインクジェットヘッドを多数個配置し、紙搬送方向に対し直角方向の駆動(キャリッジ駆動)を持たず、紙搬送のみで画像を形成することができるようになっている。
【0008】
この種のインクジェット記録装置は、高速かつ低騒音であり、記録媒体の種類に制約が少なく、カラー化も容易であるなどの利点があることから、現在広く普及している。
【0009】
しかし、インクジェット記録装置では、微細なノズルからインク滴を吐出することから、停止時にインクが乾燥しやすく、またインクでノズル面が濡れてノズル面に紙粉等の粉塵が付着しやすく、さらにノズルから空気が入ることがあるなどの問題があり、これらに起因して不吐出となったり吐出方向が曲がったり液滴サイズが小さくなったりしてインク液滴の吐出不良が発生し、画像にドット抜けや白筋などを生じて画像品質が低下する不具合があった。
【0010】
このような不具合の発生を防止する構成として、小型のインクジェットプリンターの場合では、記録ヘッド内の増粘インクを除去したり、非記録時に記録ヘッドを保護するためのキャップを有した維持回復装置を用いることが知られている。
維持回復装置では、記録ヘッドの保湿のために用いられるキャップが確実に記録ヘッドに密着していないと、記録ヘッドの保湿機能が果たせない。
そこで、従来、維持回復装置に用いられる記録ヘッドとキャップとの密着を得るための構成として記録ヘッド側をキャップに向けて圧接させる構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、紙厚に応じて記録ヘッドと記録紙との対向間隔を調整する調整機構に備えられている位置調整用の圧接レバーが圧接バネによりガイドレールを押圧する力を利用して、記録ヘッドがキャップへ当接する際の両者間の当接圧を得てキャップに記録ヘッドの吐出のズルを密着させる構成が開示されている。
【0011】
しかし、この構成では、キャリッジに相当する記録ヘッドに対して、キャップやワイパから受ける力よりも強いバネ力を用いないと、記録ヘッドの挙動が不安定となり、キャップとの密着状態が維持できなくなる。このため、キャップとの密着性を確保するには、バネの構造が大型化する虞がある。
【0012】
また、ガイドレールに対する記録ヘッドの圧接位置が前後両側ではなく片側のみであるために、圧接バネの付勢により圧接されていない記録ヘッドの箇所がガイドレールから浮き上がることもあり、この場合にはキャップとの密着性が保持できなくなる虞がある。このような密着性に影響する記録ヘッドの浮き上がりは、記録ヘッドとワイパーブレードとの適正な接触状態が維持できなくなり、正常に清掃することができなくなる虞もある。
【0013】
一方、上述した記録ヘッドの浮き上がりなどの挙動が不安定となるのを防止するために、記録ヘッド、いわゆる、キャリッジをキャップの動きに連動させてロックするようにした構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2には、維持回復機構側に設けた凸部が上昇した際にキャリッジ側に設けられている凹部に嵌合させることにより、維持回復機構のキャップがキャリッジ側に移動する際にキャリッジが不用意にガイドレールの長手方向へ移動するのを防止する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2に開示されている構成では、維持回復機構のキャップ上昇に応じてキャリッジ側がガイドレールの長手方向に移動しないようにロックが行われるようになっているが、ガイドレールの長手方向に対する直交方向に相当する、キャリッジとキャップとの対向間隔を一定に維持するようにはなっていない。
【0015】
従って、特許文献2に開示された構成を用いた場合、キャリッジとキャップとの対向間隔に関して、自由に変化できる状態となっていると、特許文献1に開示されているように、維持回復機構に装備されているワイパーブレードからの力をキャリッジが受けた場合にキャリッジがワイパーブレードから遠ざかる虞があり、キャリッジに対する正常な清掃ができないだけでなく、キャップと接触した際の力によって浮き上がるとキャップとの密着性を保障できなくなる虞がある。
【0016】
本発明の目的は、前記従来の維持回復装置における問題に鑑み、キャリッジとこれに対向する部材との対向間隔を一定に維持できるようにして対向部材との密着性や清掃性の向上を図ることができる構成を備えた維持回復装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を達成するため本発明は次の構成よりなる。
(1)液滴吐出ヘッドと、
前記ヘッドを搭載して記録紙の搬送方向と直角な走査方向に往復移動するキャリッジと、前記ヘッドを保湿または吸引するキャップおよび前記ヘッドの清掃を行うワイパーブレードを含み、前記キャリッジに対して該キャリッジの走査方向と直交方向に変位する力を与える部材とを備え、
前記キャリッジが前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材と対向する位置に移動した際に、前記キャリッジを、前記走査方向と直交する方向に相当する、前記ヘッドと前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材とが対向する方向における前記キャリッジの移動を規制するキャリッジ移動規制手段を備えたことを特徴とする吐出部用維持回復装置。
【0018】
(2)前記キャリッジ移動規制手段は、前記キャリッジに設けられている嵌合部に対して係脱可能な規制手段が用いられ、該規制手段は、前記キャリッジが前記キャップと対向する位置で前記嵌合部に係合することにより該キャリッジが前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材から離れる方向に移動するのを阻止して前記キャリッジと前記キャップとの対向間隔を一定に維持することを特徴とする(1)記載の吐出部用維持回復装置。
【0019】
(3)前記キャリッジ移動規制手段は、前記キャリッジおいて前記対向間隔方向に複数設けられている嵌合部と、該嵌合部に対して係脱可能な規制手段とを備え、前記規制手段は、前記キャリッジを用いて印字される記録紙の厚さに応じて前記嵌合部に対する嵌合位置が選択されることを特徴とする(1)または(2)に記載の吐出部用維持回復装置。
【0020】
(4)前記キャリッジ移動規制手段に有する規制手段は、前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材の昇降駆動源と同一駆動源により前記嵌合部に対する係脱駆動が行われる構成であることを特徴とする(1)乃至(3)のうちの一つに記載の吐出部用維持回復装置。
【0021】
(5)(1)乃至(4)のうちの一つに記載の吐出部用維持回復装置を用いる液滴吐出部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャリッジ側に設けられている嵌合部に対して係脱可能な規制手段を備えたキャリッジ移動規制手段を用いることにより、嵌合部と規制手段とが係合されることでキャップの昇降方向に沿ったキャリッジの移動が規制され、キャリッジとキャップとの対向間隔が変化するのを防止することができる。これにより、対向間隔が変化してしまうことが原因するキャップの密着性を確保して保湿性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による維持回復装置を備えたインクジェット記録装置の一例を説明するための模式図である。
【図2】キャリッジのガイド機構を示す斜視図である。
【図3】図2に示したガイド機構を対象としたキャリッジに発生する問題点を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施例による維持回復装置の要部構成を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の別実施例による維持回復装置の要部構成を説明するための斜視図である。
【図6】図5に示した要部構成の一態様を説明するための斜視図である。
【図7】図4に示した実施例の要部変形例を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の他の実施例による維持回復装置の要部構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示す実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による維持回復装置を用いる画像形成装置の一つである、インクジェット記録装置の構成を説明するための模式図である。
図1においてインクジェット記録装置1は、被記録材として用いられる記録紙の搬送方向(副走査方向)と交差する方向を主走査方向とするシリアルスキャン方式によるものであり、複数の液滴吐出ヘッドとして用いられる記録ヘッド2Aを備えて主走査方向に延長されたガイドレール1Aに沿って往復動可能なキャリッジ2と、保湿キャップ3Aと吸引キャップ3Bそしてワイパーブレード3C1およびインク回収路3C1を備えたメンテナンス装置3Cを備えた維持回復装置3とを主要部として備えることにより記録装置エンジン部が構成されている。
【0025】
なお、図1において、符号4Aは、廃液タンク4に連通する廃液導入路であり、符号5は給紙装置6から給送される記録紙を搬送する搬送ベルトであり、符号7はインク回収容器、そして符号8は、図示しない給液ポンプを介して記録ヘッド2Aに向けインクを供給するインクカートリッジであり、符号9はスキャナーである。
【0026】
維持回復装置3では、キャリッジ2が対向すると、記録ヘッド2Aに対し、図において上側に移動することで接近して各キャップ3A、3Bあるいはクリーニングブレード3C1をそれぞれ対面させて、保湿維持、増粘インクの除去および拭き取り作業が行われる。
乾燥して増粘したインクは吸引ポンプ3B1による吸引力によって吸引キャップ3Bにより吸引されると廃液タンク4の廃液導入路4Aに向けて排出チューブ3B2を介して排出される。
【0027】
図2は、キャリッジ2の支持構造を示す図であり、同図においてキャリッジ2は、従来用いられていたロッド状のガイド部材に変えて縦断面係数を大きくし、かつ板金加工によるコスト低下を図る目的で、チャンネル状に折り曲げ加工されたレール状のガイド部材10によりその長手方向に沿って摺動可能に設けられている。
【0028】
図3において、ガイド部材10とキャリッジ2におけるガイド部材10に近い位置との間には、弦巻バネ11が掛けられており、キャリッジ2を、図において下方、つまり記録ヘッド2Aが記録紙の紙面に向かう方向の押圧付勢が行われている。
キャリッジ2には、図示しないが、記録紙の厚さに応じて記録ヘッド2Aと記録紙表面との間の距離を切り換えるための高さ調整機構が設けられており、封筒などの厚手の記録材とこれ以下の厚さを有する普通紙などの記録材とに応じて記録ヘッド2Aの高さを調整できるようになっている。高さ調整を行えることで、液滴の着弾位置がずれた場合に像がぼけるような不具合が発生するのを防止できる。
【0029】
このような構成を対象として、本発明が解決しようとする問題点を説明すると次の通りである。
前記弦巻バネ11は、普通紙などの薄手の記録材を対象として、記録ヘッド2Aを適正な位置に押圧付勢するようになっており、厚手の記録材を対象とした場合には、薄手の記録材よりも記録紙表面との間の距離が大きくされるようになっている。このため、キャリッジ2は、記録紙表面に対して上下方向、つまり、記録紙表面に対して接離できる方向で変位可能であることから、接離する方向に対応する昇降方向でガタを有する構成となっている。
【0030】
従って、通常、薄手の記録材を対象とした記録紙表面との間の距離が得られるように弦巻バネ11により押圧付勢されているものの、例えば、図3において矢印で示すように、キャップ3A、3Bおよびクリーニングブレード3C1が上昇して密着した際に生じる上昇方向の力を受けると、上述したガタの存在によって浮き上がる現象や、ガイド部材10により片側を支持されることで片持ち梁状の支持構造をなすキャリッジ2がガイド部材10の支持位置を支点として傾く現象が発生する。
【0031】
このような現象は、記録ヘッド2Aとキャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3Cとの接触が不安定となる結果を招き、キャップによる吸引が不良状態となってノズルダウンを起こしたり、ワイパーブレード3Cの接触角が所望の値にならなくなることでノズル面の清掃が正常に行えなくなる虞がある。
【0032】
以上のような問題に対して本発明では、図4乃至8の構成を用いることにより解決することができるようになっている。以下、この構成について説明する。
図4には、前記問題を解決するための一実施例が示されており、同図において、キャリッジ2の往復動方向に対応する壁面の一方には、孔で構成された嵌合部12が設けられており、この嵌合部12に対向する位置には、嵌合部12に対して係脱可能な規制手段13が設けられている。
【0033】
規制手段13は、キャリッジ2の往復動方向と直角な方向に軸方向を有する駆動モータ14により駆動されるスパイラルギヤ15に噛み合う歯部を有する往復動可能な規制ロッド13Aで構成されており、駆動モータ14の回転方向および回転量を設定することにより、嵌合部12に対して係脱できるようになっている。
【0034】
規制手段13が嵌合部12に嵌合する時期は、キャリッジ2が維持回復装置3に対向したときであり、嵌合部12に嵌合することにより、キャリッジ2の上下方向の動きをなくしてキャップ3A、3Bおよびワイパーブレード3C1と記録ヘッド2Aとの対向間隔を一定に維持するようになっている。
【0035】
本実施例は以上のような構成であるから、キャリッジ2が維持回復装置3と対向する位置に移動すると、維持回復装置3では、キャリッジ2の位置を図示しない位置検知センサなどにより検知した時点で駆動モータ14を駆動して規制手段13が嵌合部12に係合する態位が設定される。
これにより、キャリッジ2は、上下方向での動きが止められた状態を維持することになるので、記録ヘッド2Aとキャップ3A、3Bおよびワイパーブレード3C1との対向間隔が一定に維持される。
また、これらキャップ3A、3Bおよびワイパーブレード3C1が接触した際の力を受けても、キャリッジ2が不用意に上昇しない状態に維持されて対向間隔が一定値に保たれる。
【0036】
本実施例においては、キャリッジ2に設けた嵌合部12と規制手段13との係合という簡単な構成により下方から上方に向けたキャリッジ2の不用意な上昇が防止できる。
このように、キャリッジ2の上昇変位が防止されていると、記録ヘッド2Aがキャップ3A、3Bおよびワイパーブレード3C1から受ける力によりこれら部材間での対向間隔が変化してしまうのを防ぐことが可能となる。この結果、記録ヘッド2Aに対するキャップ3A、3Bの密着性を確保して保湿性の維持さらには、ワイパープレード3C1の接触角を適正化して記録ヘッド2Aに有するノズルの清掃が確実に行えることになる。
【0037】
次に本発明の別実施例について説明する。
図5に示す実施例は、キャリッジ2の上昇変位をキャリッジ2の上面に対向する規制手段により阻止することを特徴としている。
図5において、キャリッジ2の上面の一部には、嵌合部としての切り欠き部2Bが形成されており、切り欠き部2Bに対向する位置には、規制手段130が配置されている。
【0038】
規制手段130は、駆動モータ14の出力軸に有する駆動ギヤ14Aに噛み合いながら駆動ギヤ14A周面を転動可能なアイドルギヤ15と同軸上に固定された卵形の偏心カム16で構成されている。
偏心カム16は、大径部先端が切り欠き部1Bに入り込める形状とされ、アイドルギヤ15の転動位置に応じて大径部先端が切り欠き部2Bと非係合状態となる態位と、図6に示すように、大径部先端が切り欠き部2Bに入り込む態位とを設定されるようになっている。
先端部が切り欠き部2Bに入り込む時期は、キャリッジ2が維持回復装置3と対向する位置に移動してきた時とされている。
【0039】
本実施例においては、キャリッジ2が維持回復装置3のキャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3C1に対向すると、駆動モータ14が駆動されて偏心カム16が回転駆動され、大径部先端がキャリッジ2側の切り欠き部2Bに入り込む。これにより、キャリッジ2は、上方への移動を阻止され、記録ヘッド2Aとキャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3C1との対向間隔を一定に維持され、図4に示した実施例と同様に、キャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3C1が接触した際にも上昇しない上方への移動を阻止される。
本実施例においても、図3に示した実施例と同様な効果を得ることができる。
【0040】
次に、図4に示した実施例の要部変形例について説明する。
図7に示す構成は、記録紙の厚さに応じてキャリッジ2の上昇変位を規定する構成を備えていることを特徴としている。
つまり、キャリッジ2は、前述したように、記録紙の厚さに応じて記録ヘッドと記録紙表面との間の距離を調整できるようになっている。このため、図4に示した嵌合部12がキャリッジ2とキャップ3A、3Bおよびワイパーブレード3C1との対向間隔方向に複数、この場合には、薄手の記録紙に対応する位置と、符号12’で示すように、対向間隔が大きくなる厚手の記録紙に対応する位置とに設けられている。
【0041】
この構成においては、厚手の記録紙を対象とした印字作業中にキャリッジ2が維持回復装置3の位置に移動したときには、厚手の記録紙を対象とした対向間隔方向の位置のうちで、記録紙表面と記録ヘッド2Aとの対向距離が大きくなる位置に設定されている嵌合部12’に対して規制手段13が係合する。
【0042】
一方、薄手の記録紙を対象とした印字作業中にキャリッジ2が維持回復装置3の位置に移動したときには、薄手の記録紙を対象とした対向間隔方向の位置のうちで、記録紙表面と記録ヘッド2Aとの対向距離が狭くなる位置に設定されている嵌合部12に対して規制手段13が係合する。
【0043】
以上のような構成においては、キャリッジ2の間隔調整に応じたキャリッジ2の上昇変位を防止する構成として、特別な構造とすることなく、複数の嵌合部を設けるだけで済む。
【0044】
次に、本発明による維持回復装置のさらに他の実施例について説明する。
本実施例においては、維持回復装置3に装備されているメンテナンス装置3Cの昇降駆動源を規制手段の駆動源として流用することで同一駆動源を用いる点を特徴としている。
図8において、メンテナンス装置3Cの昇降駆動カム3Dを有する昇降軸17には、偏心カムで構成された規制手段駆動用カム18が一体化されて設けられている。
【0045】
一方、キャリッジ2側には、規制手段駆動用カム18の外周面が当接可能な勾配面19Aを有する規制手段19が主走査方向に往復動可能に設けられている。
規制手段19は、正面視形状が勾配面19Aを持つ三角形状とされ、頂部の一つ、つまり、キャリッジ2から遠い位置の頂部には、引っ張りバネ20の一端が掛け止められて、通常、キャリッジ2から遠ざかる向きに移動することができるようになっている。
【0046】
規制手段19の頂部のうちで、引っ張りバネ20の一端が掛け止められている頂部と対向する頂部、つまり、引っ張りバネ20が掛け止められている頂部から主走査方向に対向する頂部には、キャリッジ2に形成されている嵌合部2B(図8(B)参照)に係脱可能な係合ロッド19Bが一体化されている。
【0047】
ロッド19Bは、規制手段19が主走査方向に移動するのに連動して嵌合部2Bに対して係脱することができ、係脱動作は、規制手段駆動用カム18の外周面と規制手段19の勾配面19Aとの対向関係により設定されるようになっている。
【0048】
上述した規制手段駆動用カム18は、昇降軸17の回転位相において、メンテナンス装置3Cがキャリッジ2に接近する方向、つまり、図においては上昇する時に大径部先端が規制手段19の勾配面19Aに対向し、メンテナンス装置3Cがキャリッジ2から離れる向き、つまり図においては下降する時に小径部先端を規制手段19の勾配面19Aに対向させるようになっている。
このため、キャリッジ2が印字動作を行っているときには、メンテナンス装置3Cが動作態位にないので、メンテナンス装置3Cがキャリッジ2から離れている(下降している)ことにより、規制手段19が引っ張りバネ20により嵌合部2Bから離脱する位置に移動している。
【0049】
一方、メンテナンス装置3Cにキャリッジ2が対向した場合には、メンテナンス装置3Cがキャリッジ2に近づく(上昇する)。これにより、規制手段駆動用カム18は、大径部先端を規制手段19の勾配面19Aに対向させることになる。
このとき、規制手段19は、規制手段駆動用カム18の大径部先端に押し動かされる(図8(B)中、符号L1で示す位置から符号L2で示す位置に大径部先端が対向面を変化させた状態)。
これにより、引っ張りバネ20に抗して規制手段19のロッド19Bが嵌合部2Bに係合されることになる(図8(B)中、二点鎖線で示すように、符号P1の位置から符号P2の位置に移動した状態)。
【0050】
規制手段19のロッド19Bと嵌合部2Bとの係合による作用は、前述した実施例と同様に、キャリッジ2とメンテナンス装置3C側のキャップ3A、3Bあるいはワイパーブレード3C1との対向間隔を一定に維持するように、キャリッジ2の不用意な上昇変位を阻止するようになっている。
【0051】
以上の構成においては、嵌合部2Bに対する規制手段の係脱駆動源を特別に設ける必要がなく、構成の簡略化が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 インクジェット記録装置
2 キャリッジ
2A 記録ヘッド
2B 嵌合部として用いられる切り欠き部
3 維持回復装置
3A、3B キャップ
3C メンテナンス装置
3C1 ワイパーブレード
10 ガイド部材
12、12’ 嵌合部
13,19,130 規制手段
13A 規制ロッド
14 駆動モータ
15 アイドルギヤ
16 偏心カム
17 昇降軸
18 規制手段駆動用カム
19B ロッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2006−43893号公報
【特許文献2】特開2007−30271号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドと、
前記ヘッドを搭載して記録紙の搬送方向と直角な走査方向に往復移動するキャリッジと、前記ヘッドを保湿または吸引するキャップおよび前記ヘッドの清掃を行うワイパーブレードを含み、前記キャリッジに対して該キャリッジの走査方向と直交方向に変位する力を与える部材とを備え、
前記キャリッジが前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材と対向する位置に移動した際に、前記キャリッジを、前記走査方向と直交する方向に相当する、前記ヘッドと前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材とが対向する方向における前記キャリッジの移動を規制するキャリッジ移動規制手段を備えたことを特徴とする吐出部用維持回復装置。
【請求項2】
前記キャリッジ移動規制手段は、前記キャリッジに設けられている嵌合部に対して係脱可能な規制手段が用いられ、該規制手段は、前記キャリッジが前記キャップと対向する位置で前記嵌合部に係合することにより該キャリッジが前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材から離れる方向に移動するのを阻止して前記キャリッジと前記キャップとの対向間隔を一定に維持することを特徴とする請求項1記載の吐出部用維持回復装置。
【請求項3】
前記キャリッジ移動規制手段は、前記キャリッジおいて前記対向間隔方向に複数設けられている嵌合部と、該嵌合部に対して係脱可能な規制手段とを備え、前記規制手段は、前記キャリッジを用いて印字される記録紙の厚さに応じて前記嵌合部に対する嵌合位置が選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の吐出部用維持回復装置。
【請求項4】
前記キャリッジ移動規制手段に有する規制手段は、前記走査方向と直交方向への変位力を与える部材の昇降駆動源と同一駆動源により前記嵌合部に対する係脱駆動が行われる構成であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の吐出部用維持回復装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの一つに記載の吐出部用維持回復装置を用いる液滴吐出部を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121152(P2012−121152A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271357(P2010−271357)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】