吐水装置
【課題】 本発明の目的は、洗浄水がノズルを通過する際の圧力損失を低減させることで、低水圧地域においても十分な流量を安定して得ることができ、快適に使用できる吐水装置を提供することにある。
【解決手段】 洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、を備え、前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置が提供される。
【解決手段】 洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、を備え、前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水方向(吐水軌跡)を変化させながら吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流入室に組み込まれたノズルが入水状態において、前記開口部の中心軸に対して傾斜した姿勢で前記中心軸周りに公転可能に構成し、流入室内で揺動しながら、広範囲に吐水するものがある。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3518542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された吐水装置では、少ない流量でも広範囲に吐水でき快適で大変使い勝手のよい吐水装置となっている。一方さらに、特に低水圧地域でも十分な性能を発揮できるようにしたいという要望がある。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、洗浄水がノズルを通過する際の圧力損失を低減させることで、低水圧地域においても、より多くの流量を安定して得ることができ、快適に使用できる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、を備え、前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、流入室に組み込まれたノズルが入水状態において、前記開口部の中心軸に対して傾斜した姿勢で前記中心軸周りに公転可能に構成し、流入室内で揺動しながら、広範囲に吐水する吐水装置において、低水圧地域においてもより多くの流量が安定して得られる吐水装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図を示す。
本実施形態に係る吐水装置は、主として、ガイド部材1と、筒体20とを備えている。
【0008】
ガイド部材1は、球体部2の内部に貫通孔が形成された構造を有する。球体部2の内部には、球体部2の直径方向に延びる旋回室(流入室)3が形成されている。旋回室3の軸方向の一端部には、旋回室3の内部及び外部に通じる開口部4が設けられている。開口部4の内径寸法は旋回室3の内径寸法より小さく、開口部4はその中心軸を旋回室3の中心軸と一致させている。旋回室3の軸方向の他端部側の径外方には流入孔5が形成されている。流入孔5は、旋回室3の内部及び球体部2の外部に通じている。ガイド部材1の外部から流入孔5に導かれた洗浄水は、流入孔5を介して旋回室3に対して接線方向から流入し、旋回室3の内部には洗浄水の旋回流が形成される。開口部4はガイド部材1の外部に対して開放され、旋回室3の他端側の開口は封止部材6によって閉塞されている。
【0009】
筒体20は、縮径部21と大径部22とを有する概略ボトル形状に形成され、筒体20の内部に通水路23が設けられている。大径部22の外径寸法は旋回室3の内径寸法より小さく、大径部22は旋回室3の内部に収容されている。その大径部22に一体に設けられた縮径部21の外径寸法は開口部4の内径寸法より小さく、縮径部21は開口部4を貫通して、その先端が球体部2の外部に突出している。
【0010】
図1に示すように、筒体20と旋回室3とが互いの中心軸を一致させた状態では、縮径部21の外周面と開口部4の内壁面との間に隙間が形成され、さらに大径部22の外周面と旋回室3の内壁面との間にも隙間が形成される。筒体20は、ガイド部材1に対して固定されておらず、自由に自転したり、揺動を行う首振り公転することが可能となっている。
【0011】
筒体20の軸方向の両端は開口され、大径部22側の開口25から筒体20内部に流入した洗浄水は、筒体20内部を軸方向に流れて、縮径部21側の開口から筒体20の外部に流出可能である。また、筒体20の大径部22の周面(側面)には、周方向に等間隔で間欠的に配置された複数の貫通孔24が形成され、旋回室3内に流入した洗浄水は、それら貫通孔24を介しても筒体20の内部に導かれて縮径部21の先端から流出可能である。
【0012】
次に本発明の実施形態の一例として、筒体20の詳細を図2(a)に示す。また図中A-A断面図を図下に示す。本実施形態では、筒体20に設けられた貫通孔24は、筒体20外周面側から、貫通孔24の中心を通過する軸C4に向かって開口することで、筒体20の外周面側開口面26の面積が、筒体内部側開口面27の面積より大きくなるように設けられている。
【0013】
さらに、本実施形態では、貫通孔24は、横断面視扇形をしており、その中心角は90°であり、筒体20外周面上に90°間隔で配置されている。また、比較例として、筒体20の外周面側開口面26と、筒体20の内部側開口面27の面積が、等しい場合の例を図2(b)に示す。また図中B-B断面図を図下に示す。
次に、本実施形態に係る吐水装置の水圧と流量の測定方法について説明する。
【0014】
図3は、本実施形態に係る吐水装置にかかる水圧Pと吐水流量Qの測定装置の概要図である。図3に示すように吐水装置の下流流路に水圧計と流量計を設置し、吐水装置にかかる水圧Pと、それに応じた吐水流量Qを計測した。以下、この水圧と吐水流量の関係をPQ特性とする。
【0015】
PQ特性図を図4に示す。PQ特性図に示すように、筒体20外周面上に設けた貫通孔の開口面積の関係が、筒体20の外周面側開口面積を筒体内部側開口面積より大きくなるように設けることで、一定流量を吐水させるために必要な水圧が低減していることがわかる。
【0016】
例えば流量3L/min吐水するために必要な水圧で比較すると、図2(b)に示す形状では約0.08[MPa]であるのに対し、図2(a)に示す形状では、約0.07[MPa]であり、約0.01[MPa]筒体20を通過することで生じる圧力損失が低減していることがわかる。
【0017】
次に、本実施形態に係る吐水装置の動作および吐水流の動き(軌跡)について説明する。
図6は、前述した旋回室3及びこの内部に収容された筒体20(の大径部22)を平面方向から見た模式図であり、図5におけるAA−AA断面に対応する。
【0018】
図示しない配管等から導かれた洗浄水(湯も含む)は、ガイド部材1に形成された流入孔5を介して、断面形状略円形状の旋回室3に対して接線方向からその内部に流入し、これにより、旋回室3の中心軸C2のまわりに旋回した洗浄水の流れが旋回室3の内部に形成される。
【0019】
旋回室3の内部に収容された筒体20(の大径部22)は、上記旋回流の力を受けることで、図3に示すように旋回室3の中心軸C2に対して傾きながら、例えば図6において矢印Aで示す方向に旋回室3の中心軸C2のまわりに公転する。図5に示すように、筒体20の縮径部21の一部が開口部4に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が旋回室3のガイド面3aに接触することで、旋回室3の中心軸C2に対する筒体20のそれ以上の傾きが規制される。
【0020】
本明細書において、旋回室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに公転することを「首振り公転」と称する。すなわち、旋回室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに公転すると、筒体20は、縮径部21が開口部4と接触する部分近傍を中心にして縮径部21の先端が首を振っているように揺動する。
【0021】
筒体20が首振り公転しているとき、縮径部21の外周面の一部が開口部4の内壁面に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が旋回室3のガイド面3aに接触しているため、それら接触部分に生じる動摩擦力が筒体20に作用する。この動摩擦力により、筒体20は開口部4やガイド面3aとの接触部位を変えずにそのまま接触した状態で旋回室3内をすべって移動していくのではなく、開口部4の内壁面やガイド面3aを転がりながら首振り公転をする。筒体20が開口部4の内壁面やガイド面3aを転がるということは、筒体20が自身の中心軸C1のまわりに自転するということである。
【0022】
すなわち、筒体20は自身の中心軸C1のまわりに自転しつつ、旋回室3の中心軸C2のまわりに首振り公転する。旋回室3の中心軸C2のまわりの筒体20の公転方向(図6において矢印A方向)は、旋回室3に形成される旋回流の旋回方向と同方向であり、筒体20の自身の中心軸C1のまわりの自転方向(図6において矢印B方向)は公転方向Aとは逆方向である。尚、この自転に関しては、接触面の動摩擦係数や、筒体20の大径部22の材質、形状や、流入孔5からの流入速度や、旋回室3と大径部22との隙間、などで自転方向や自転数を制御することができる。
【0023】
旋回室3に流入した洗浄水の一部は、筒体20の大径部22側の端部の開口25および側面に形成された貫通孔24から筒体20の内部に流入して、筒体20の軸方向を縮径部21の先端に向かって流れる。
【0024】
このようにして、縮頚部21を通過した洗浄水は筒体20の先端から吐水される。その際、筒体20は首振り公転と自転とを組み合わせた動きをするため、筒体20から吐水された洗浄水も首振り公転と自転とを組み合わせた動きとなる。
【0025】
その吐水軌跡を図7に模式的に示す。なお、図7において、吐水装置は、可動部分である筒体20のみを図示し、旋回室3が形成されたガイド部材1は図示を省略している。
【0026】
筒体20の先端から吐水される洗浄水は、筒体20の首振り公転により、吐水方向を変化させながら吐水される。結果、筒体20の先端より吐水された洗浄水は、図7において点線で示すように螺旋状に拡大していく軌跡を描く。
【0027】
図8に本発明の他の実施形態を図示する。
図8に示す実施形態では、貫通孔の形状を丸型、または楕円形状としたものである。本実施形態においても、貫通孔は、筒体20の外周面と、筒体20内部の貫通孔開口面積の関係が、筒体20の外周面側開口面積を筒体内部側開口面積より大きくなるように設けられており、図2(a)に示した形状の貫通孔と同様に、筒体を通過する際の圧力損失が低減される。
さらに図9に本発明の他の実施形態について図示する。
【0028】
本実施形態では、筒体20の通水路は、筒体20の自らの中心軸C1に対して傾斜しているため、筒体20自身の自転により、その自転方向と同じb方向に、図10において実線で示されるような円状の軌跡を描いて移動する吐水流が形成される。ここで、筒体20の通水路は、筒体20の中心軸C1に対して傾いていることから、筒体20の先端部吐水口28の径よりも大きな円を描くように吐水流は移動する。
【0029】
また、本実施形態では、筒体20の、旋回室3の中心軸C2のまわりの首振り公転により、図10において点線で示すように比較的狭い範囲を移動する吐水流が形成される。筒体20とガイド面3aによって規制される公転角より、筒体20の通水路の傾斜で決定される自転角の方が大きく設定されており、これにより、この首振り公転により形成される吐水流は、自転により形成される吐水流の移動範囲より狭い範囲を、自転により形成される吐水流の移動方向bとは反対方向のa方向に、b方向の移動よりも高速に移動する。したがって、吐水流は全体として、比較的狭い範囲を図10において矢印a方向に高速に移動しつつ、その移動範囲よりも大きな範囲をa方向とは逆方向のb方向にゆっくりと移動する。
【0030】
また、筒体20が傾いた際に自転を行うためには、少なくとも縮径部21の外周面と開口部4の内壁面とが接触すればよいが、自転をより確実に行わせるためには、大径部22も旋回室3の内壁面(ガイド面3a)に接触するようにし、筒体20とガイド部材1との接触部の摩擦力がより大きくなるようにすることが望ましい。
【0031】
なお、本発明の吐水装置は、浴室やシャワーブースにおけるシャワー装置として用いる以外にも、例えば、洗浄機能付き便器などにも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図。
【図2】同実施形態に係る吐水装置における流入室内部に収容された筒体と、筒体に設けられた貫通孔形状を平面方向から見た模式図。
【図3】PQ特性測定装置の概略図である。
【図4】本発明の実施形態を用いた場合と、別形態の場合のPQ特性を示す図である。
【図5】図1と同様の模式断面図であり、筒体が旋回室の中心軸に対して傾いた状態を示す。
【図6】同実施形態に係る吐水装置における旋回室及びこの内部に収容された筒体の大径部を平面方向から見た模式図。
【図7】同実施形態に係る吐水装置から吐水される吐水流の挙動を説明するための模式図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る吐水装置(筒体のみ)を例示する模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る吐水装置を例示する模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る吐水装置から吐水される吐水流の挙動を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ガイド部材
3 流入室
4 開口部
5 洗浄水の流入孔
20 筒体
21 縮径部
22 大径部
23 通水路
24 貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水方向(吐水軌跡)を変化させながら吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流入室に組み込まれたノズルが入水状態において、前記開口部の中心軸に対して傾斜した姿勢で前記中心軸周りに公転可能に構成し、流入室内で揺動しながら、広範囲に吐水するものがある。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3518542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された吐水装置では、少ない流量でも広範囲に吐水でき快適で大変使い勝手のよい吐水装置となっている。一方さらに、特に低水圧地域でも十分な性能を発揮できるようにしたいという要望がある。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、洗浄水がノズルを通過する際の圧力損失を低減させることで、低水圧地域においても、より多くの流量を安定して得ることができ、快適に使用できる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、を備え、前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、流入室に組み込まれたノズルが入水状態において、前記開口部の中心軸に対して傾斜した姿勢で前記中心軸周りに公転可能に構成し、流入室内で揺動しながら、広範囲に吐水する吐水装置において、低水圧地域においてもより多くの流量が安定して得られる吐水装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図を示す。
本実施形態に係る吐水装置は、主として、ガイド部材1と、筒体20とを備えている。
【0008】
ガイド部材1は、球体部2の内部に貫通孔が形成された構造を有する。球体部2の内部には、球体部2の直径方向に延びる旋回室(流入室)3が形成されている。旋回室3の軸方向の一端部には、旋回室3の内部及び外部に通じる開口部4が設けられている。開口部4の内径寸法は旋回室3の内径寸法より小さく、開口部4はその中心軸を旋回室3の中心軸と一致させている。旋回室3の軸方向の他端部側の径外方には流入孔5が形成されている。流入孔5は、旋回室3の内部及び球体部2の外部に通じている。ガイド部材1の外部から流入孔5に導かれた洗浄水は、流入孔5を介して旋回室3に対して接線方向から流入し、旋回室3の内部には洗浄水の旋回流が形成される。開口部4はガイド部材1の外部に対して開放され、旋回室3の他端側の開口は封止部材6によって閉塞されている。
【0009】
筒体20は、縮径部21と大径部22とを有する概略ボトル形状に形成され、筒体20の内部に通水路23が設けられている。大径部22の外径寸法は旋回室3の内径寸法より小さく、大径部22は旋回室3の内部に収容されている。その大径部22に一体に設けられた縮径部21の外径寸法は開口部4の内径寸法より小さく、縮径部21は開口部4を貫通して、その先端が球体部2の外部に突出している。
【0010】
図1に示すように、筒体20と旋回室3とが互いの中心軸を一致させた状態では、縮径部21の外周面と開口部4の内壁面との間に隙間が形成され、さらに大径部22の外周面と旋回室3の内壁面との間にも隙間が形成される。筒体20は、ガイド部材1に対して固定されておらず、自由に自転したり、揺動を行う首振り公転することが可能となっている。
【0011】
筒体20の軸方向の両端は開口され、大径部22側の開口25から筒体20内部に流入した洗浄水は、筒体20内部を軸方向に流れて、縮径部21側の開口から筒体20の外部に流出可能である。また、筒体20の大径部22の周面(側面)には、周方向に等間隔で間欠的に配置された複数の貫通孔24が形成され、旋回室3内に流入した洗浄水は、それら貫通孔24を介しても筒体20の内部に導かれて縮径部21の先端から流出可能である。
【0012】
次に本発明の実施形態の一例として、筒体20の詳細を図2(a)に示す。また図中A-A断面図を図下に示す。本実施形態では、筒体20に設けられた貫通孔24は、筒体20外周面側から、貫通孔24の中心を通過する軸C4に向かって開口することで、筒体20の外周面側開口面26の面積が、筒体内部側開口面27の面積より大きくなるように設けられている。
【0013】
さらに、本実施形態では、貫通孔24は、横断面視扇形をしており、その中心角は90°であり、筒体20外周面上に90°間隔で配置されている。また、比較例として、筒体20の外周面側開口面26と、筒体20の内部側開口面27の面積が、等しい場合の例を図2(b)に示す。また図中B-B断面図を図下に示す。
次に、本実施形態に係る吐水装置の水圧と流量の測定方法について説明する。
【0014】
図3は、本実施形態に係る吐水装置にかかる水圧Pと吐水流量Qの測定装置の概要図である。図3に示すように吐水装置の下流流路に水圧計と流量計を設置し、吐水装置にかかる水圧Pと、それに応じた吐水流量Qを計測した。以下、この水圧と吐水流量の関係をPQ特性とする。
【0015】
PQ特性図を図4に示す。PQ特性図に示すように、筒体20外周面上に設けた貫通孔の開口面積の関係が、筒体20の外周面側開口面積を筒体内部側開口面積より大きくなるように設けることで、一定流量を吐水させるために必要な水圧が低減していることがわかる。
【0016】
例えば流量3L/min吐水するために必要な水圧で比較すると、図2(b)に示す形状では約0.08[MPa]であるのに対し、図2(a)に示す形状では、約0.07[MPa]であり、約0.01[MPa]筒体20を通過することで生じる圧力損失が低減していることがわかる。
【0017】
次に、本実施形態に係る吐水装置の動作および吐水流の動き(軌跡)について説明する。
図6は、前述した旋回室3及びこの内部に収容された筒体20(の大径部22)を平面方向から見た模式図であり、図5におけるAA−AA断面に対応する。
【0018】
図示しない配管等から導かれた洗浄水(湯も含む)は、ガイド部材1に形成された流入孔5を介して、断面形状略円形状の旋回室3に対して接線方向からその内部に流入し、これにより、旋回室3の中心軸C2のまわりに旋回した洗浄水の流れが旋回室3の内部に形成される。
【0019】
旋回室3の内部に収容された筒体20(の大径部22)は、上記旋回流の力を受けることで、図3に示すように旋回室3の中心軸C2に対して傾きながら、例えば図6において矢印Aで示す方向に旋回室3の中心軸C2のまわりに公転する。図5に示すように、筒体20の縮径部21の一部が開口部4に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が旋回室3のガイド面3aに接触することで、旋回室3の中心軸C2に対する筒体20のそれ以上の傾きが規制される。
【0020】
本明細書において、旋回室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに公転することを「首振り公転」と称する。すなわち、旋回室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに公転すると、筒体20は、縮径部21が開口部4と接触する部分近傍を中心にして縮径部21の先端が首を振っているように揺動する。
【0021】
筒体20が首振り公転しているとき、縮径部21の外周面の一部が開口部4の内壁面に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が旋回室3のガイド面3aに接触しているため、それら接触部分に生じる動摩擦力が筒体20に作用する。この動摩擦力により、筒体20は開口部4やガイド面3aとの接触部位を変えずにそのまま接触した状態で旋回室3内をすべって移動していくのではなく、開口部4の内壁面やガイド面3aを転がりながら首振り公転をする。筒体20が開口部4の内壁面やガイド面3aを転がるということは、筒体20が自身の中心軸C1のまわりに自転するということである。
【0022】
すなわち、筒体20は自身の中心軸C1のまわりに自転しつつ、旋回室3の中心軸C2のまわりに首振り公転する。旋回室3の中心軸C2のまわりの筒体20の公転方向(図6において矢印A方向)は、旋回室3に形成される旋回流の旋回方向と同方向であり、筒体20の自身の中心軸C1のまわりの自転方向(図6において矢印B方向)は公転方向Aとは逆方向である。尚、この自転に関しては、接触面の動摩擦係数や、筒体20の大径部22の材質、形状や、流入孔5からの流入速度や、旋回室3と大径部22との隙間、などで自転方向や自転数を制御することができる。
【0023】
旋回室3に流入した洗浄水の一部は、筒体20の大径部22側の端部の開口25および側面に形成された貫通孔24から筒体20の内部に流入して、筒体20の軸方向を縮径部21の先端に向かって流れる。
【0024】
このようにして、縮頚部21を通過した洗浄水は筒体20の先端から吐水される。その際、筒体20は首振り公転と自転とを組み合わせた動きをするため、筒体20から吐水された洗浄水も首振り公転と自転とを組み合わせた動きとなる。
【0025】
その吐水軌跡を図7に模式的に示す。なお、図7において、吐水装置は、可動部分である筒体20のみを図示し、旋回室3が形成されたガイド部材1は図示を省略している。
【0026】
筒体20の先端から吐水される洗浄水は、筒体20の首振り公転により、吐水方向を変化させながら吐水される。結果、筒体20の先端より吐水された洗浄水は、図7において点線で示すように螺旋状に拡大していく軌跡を描く。
【0027】
図8に本発明の他の実施形態を図示する。
図8に示す実施形態では、貫通孔の形状を丸型、または楕円形状としたものである。本実施形態においても、貫通孔は、筒体20の外周面と、筒体20内部の貫通孔開口面積の関係が、筒体20の外周面側開口面積を筒体内部側開口面積より大きくなるように設けられており、図2(a)に示した形状の貫通孔と同様に、筒体を通過する際の圧力損失が低減される。
さらに図9に本発明の他の実施形態について図示する。
【0028】
本実施形態では、筒体20の通水路は、筒体20の自らの中心軸C1に対して傾斜しているため、筒体20自身の自転により、その自転方向と同じb方向に、図10において実線で示されるような円状の軌跡を描いて移動する吐水流が形成される。ここで、筒体20の通水路は、筒体20の中心軸C1に対して傾いていることから、筒体20の先端部吐水口28の径よりも大きな円を描くように吐水流は移動する。
【0029】
また、本実施形態では、筒体20の、旋回室3の中心軸C2のまわりの首振り公転により、図10において点線で示すように比較的狭い範囲を移動する吐水流が形成される。筒体20とガイド面3aによって規制される公転角より、筒体20の通水路の傾斜で決定される自転角の方が大きく設定されており、これにより、この首振り公転により形成される吐水流は、自転により形成される吐水流の移動範囲より狭い範囲を、自転により形成される吐水流の移動方向bとは反対方向のa方向に、b方向の移動よりも高速に移動する。したがって、吐水流は全体として、比較的狭い範囲を図10において矢印a方向に高速に移動しつつ、その移動範囲よりも大きな範囲をa方向とは逆方向のb方向にゆっくりと移動する。
【0030】
また、筒体20が傾いた際に自転を行うためには、少なくとも縮径部21の外周面と開口部4の内壁面とが接触すればよいが、自転をより確実に行わせるためには、大径部22も旋回室3の内壁面(ガイド面3a)に接触するようにし、筒体20とガイド部材1との接触部の摩擦力がより大きくなるようにすることが望ましい。
【0031】
なお、本発明の吐水装置は、浴室やシャワーブースにおけるシャワー装置として用いる以外にも、例えば、洗浄機能付き便器などにも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図。
【図2】同実施形態に係る吐水装置における流入室内部に収容された筒体と、筒体に設けられた貫通孔形状を平面方向から見た模式図。
【図3】PQ特性測定装置の概略図である。
【図4】本発明の実施形態を用いた場合と、別形態の場合のPQ特性を示す図である。
【図5】図1と同様の模式断面図であり、筒体が旋回室の中心軸に対して傾いた状態を示す。
【図6】同実施形態に係る吐水装置における旋回室及びこの内部に収容された筒体の大径部を平面方向から見た模式図。
【図7】同実施形態に係る吐水装置から吐水される吐水流の挙動を説明するための模式図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る吐水装置(筒体のみ)を例示する模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る吐水装置を例示する模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る吐水装置から吐水される吐水流の挙動を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ガイド部材
3 流入室
4 開口部
5 洗浄水の流入孔
20 筒体
21 縮径部
22 大径部
23 通水路
24 貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、
前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、
を備え、
前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、
前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記筒体の貫通孔は、横断面視扇形をしていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置
【請求項3】
前記扇形の中心角度は90度であることを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、その中心が等間隔になるように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、その中心が90°毎に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項6】
前記筒体は、前記開口部より小径な縮径部を有し、前記縮径部の先端を前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項7】
前記筒体は、前記流入室に流入した洗浄水によって首振り公転することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項8】
前記筒体は、前記流入室に流入した洗浄水によって自身の中心軸のまわりに自転することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項9】
前記筒体の通水路の先端は、前記筒体自身の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の吐水装置
【請求項1】
洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部及び外部に通じて設けられた開口部とを有するガイド部材と、
前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記開口部から流出可能な通水路を有する筒体と、
を備え、
前記筒体は、その外周面上に、前記通水路に向けて洗浄水が流入可能な貫通孔を有し、
前記貫通孔は前記筒体外周面側と前記筒体内部側の貫通孔開口面積の関係を、前記筒体外周側開口面積を前記筒体内部側開口面積より大きく設けたことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記筒体の貫通孔は、横断面視扇形をしていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置
【請求項3】
前記扇形の中心角度は90度であることを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、その中心が等間隔になるように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、その中心が90°毎に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項6】
前記筒体は、前記開口部より小径な縮径部を有し、前記縮径部の先端を前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項7】
前記筒体は、前記流入室に流入した洗浄水によって首振り公転することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項8】
前記筒体は、前記流入室に流入した洗浄水によって自身の中心軸のまわりに自転することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項9】
前記筒体の通水路の先端は、前記筒体自身の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の吐水装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−69035(P2010−69035A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240297(P2008−240297)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]