説明

含ハロゲン化合物、液晶組成物及び電気光学表示素子

【課題】ネマチック液晶材料に混合して、低粘度で、高い屈折率の異方性(Δn)、高い誘電率の異方性(Δε)および高NI点(幅広いネマチック相)を有する液晶組成物を形成し得る新規液晶材料の提供。
【解決手段】化合物No.1:4−プロピル−3’−フルオロ−4”−(パーフルオロアリルオキシ)−1,1’:4’,1”−ターフェニル、化合物No.2:1−〔(4’−プロピル−2’,6’−フルオロフェニル)ジフルオロメトキシ〕−3,5−ジフルオロ−4−(パーフルオロアリルオキシ)ベンゼン、化合物No.3:4−プロピル−3,5,3’−トリフルオロ−4”−(パーフルオロアリルオキシ)−1,1”:4’,1”−ターフェニル、化合物No.4:4−プロピル−3,5−ジフルオロ−3’−クロロ−4”−(パーフルオロアリロキシ)−1,1’:4’,1”−ターフェニル、で代表される含ハロゲン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ハロゲン化合物に関するものである。また、該含ハロゲン化合物を含有する液晶組成物に関するものである。さらに液晶セルに該液晶組成物を封入してなる電気光学表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)や誘電率異方性(Δε)を利用した液晶表示素子はこれまで多数作られており、時計を始め電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンタ−、コンピュ−タ−、テレビ等に広く利用され、需要も年々高くなってきている。液晶化合物には個体相と液体相の中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別されるが、そのうち表示素子用にはネマチック相が現在最も広く利用されている。また、液晶表示に応用されている方式のうち、表示方式としてはこれまでに多数のものが提案されており、例えば動的散乱型(DS型)、ゲスト・ホスト型(GH型)、ねじれネマチック型(TN型)、超ねじれネマチック型(STN型)、薄膜トランジスター型(TFT型)及び強誘電性液晶(FLC)等が知られており、駆動方式としてはスタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式及び2周波駆動方式等が知られている。
【0003】
一般に誘電率の異方性(Δε)(以下単に「Δε」ということがある)が正の液晶組成物を用いる電界効果型液晶表示装置のしきい値電圧は、組成物のΔεの平方根に反比例することが知られている。特に近年、ツイストネマチック(TN)液晶素子はバッテリー駆動式が主流になり、特にしきい値の低い液晶材料が要求されており、そのためには、大きな正のΔεを有する液晶材料が重要になる。
【0004】
4−(p−アルキルシクロヘキシル)ベンゾニトリル等のニトリル化合物は大きなΔεを有することからTN液晶素子あるいはスーパーツイストネマチック(STN)素子用の液晶材料として用いられていた。しかしながら、これらのニトリル化合物はイオン性の不純物を抱き込みやすいため、高い抵抗率(1012Ωcm以上)の要求されるアクティブマトリックス駆動には用いることができなかった。そのため、高い抵抗率を有し、Δεの大きな液晶材料が求められている。
【0005】
また、液晶組成物の粘度は液晶の応答速度に対し影響し、低粘度のもの程その応答が速い。従って、液晶組成物の配合剤としては、低粘度であるものが好ましい。
【0006】
また、NI点は、液晶状態を示す温度範囲に影響するもので、NI点が高くなると高温においても液晶状態を示すことになる。
【0007】
末端基としてフルオロアルキル(オキシ)基を有する化合物が正の誘電異方性を有し、かつイオン性不純物を含みにくいため、特に、アクティブマトリックス駆動方式に求められる、高低効率、高い電圧保持率(VHR)、低いイオン密度などを発現する液晶材料として知られており、これまでにもフルオロアルキル(オキシ)基を導入することが試みられており、例えば、特開昭55−72143号公報、特開昭55−40660号公報、特開昭61−197563号公報、特開昭56−12322号公報、特開昭58−154532号公報、特開昭58−177939号公報、特開昭58−210045号公報、特開昭59−78129号公報、特表平6−500343号公報等には、フルオロアルキル基を有する化合物が種種提案されており、また、特表平1−503145号公報には、フルオロアルキル基を有する化合物を使用した電気光学表示素子が提案されており、さらに、特表平3−502942号公報、特開平10−67989号公報などには、フロオロアルキル(オキシ)基を有する化合物などを使用したアクティブマトリックス液晶表示体が提案されている。
しかしながら、これらに具体的に記載されているフルオロアルキル基を有する化合物では、低粘度、幅広いネマチック相を有するという点において未だ満足できるものではなかった。
【0008】
また、国際公開2004/058676号公報には、パーフルオロアルキルオキシ化合物が提案されているが、ここに具体的に記載された化合物では、狭セルでの高速応答性や低電圧駆動といった要求に十分に満足できるような、高い液晶上限温度(NI点)を有しながら、高い屈折率の異方性(Δn)、高い誘電率の異方性(Δε)を有する材料が提供できていないという欠点があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、ネマチック液晶材料に混合して、低粘度で、高い屈折率の異方性(Δn)、高い誘電率の異方性(Δε)および高NI点(幅広いネマチック相)を有する液晶組成物を形成し得る新規液晶材料を提供することにある。
【0010】
【特許文献1】特開昭55−72143号公報
【特許文献2】特開昭55−40660号公報
【特許文献3】特開昭61−197563号公報
【特許文献4】特開昭56−12322号公報
【特許文献5】特開昭58−154532号公報
【特許文献6】特開昭58−177939号公報
【特許文献7】特開昭58−210045号公報
【特許文献8】特開昭59−78129号公報
【特許文献9】特表平6−500343号公報
【特許文献10】特表平1−503145号公報
【特許文献11】特表平3−502942号公報
【特許文献12】特開平10−67989号公報
【特許文献13】特開平10−140157号公報
【特許文献14】国際公開2004/058676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ラテラル位にハロゲン原子を有する特定の含ハロゲン化合物が、ネマチック液晶組成物に配合することで液晶温度範囲を狭めることなく、高いΔε及び高いΔnを提供することのできる材料あることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0013】
【化1】

【0014】
また、本発明は、下記一般式(I−1)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0015】
【化2】

(式中、R1、A1、Z1、Z2、X1〜X3、X5〜X7及びnは、上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは、単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基中一部の水素原子は、ハロゲン原子又はシアノ基によって置換されていても良い。)
【0016】
また、本発明は、下記一般式(I−2)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0017】
【化3】

(式中、nは、0又は1を示し、X1〜X3及びX5〜X7は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1及びZ2は、上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(I−1)における場合と同一である。)
【0018】
また、本発明は、下記一般式(I−2(a))で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0019】
【化4】

(式中、nは、0又は1を示し、X2’、X3’及びX5’は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(I−1)における場合と同一である。)
【0020】
また、本発明は、下記一般式(I−2(b))で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0021】
【化5】

(式中、nは、0又は1を示し、X2’、X3’,X5’ 及びX6’は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(I−1)における場合と同一である。)
【0022】
また、本発明は、上記含ハロゲン化合物を含有する液晶組成物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0023】
また、本発明は、液晶セルに上記液晶組成物を封入してなる電気光学表示素子を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の含ハロゲン化合物は、ネマチック液晶組成物に配合することで液晶温度範囲を狭めることなく、高いΔε、高いΔnを提供することのできるであり、本発明の含ハロゲン化合物を含有して得られる液晶組成物は、あらゆる表示方式およびあらゆる駆動方式の電気光学素子用の液晶材料として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の含ハロゲン化合物、液晶組成物及び電気光学表示素子について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0026】
前記一般式(I)において、R1は、R0、R0O、R0OCO又はR0COOを表し、R0で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロメチル、パーフルオロビニル、パーフルオロアリル、イソプロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、2−ブチルメチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、1−メチルペンチルなどがあげられる。
【0027】
前記一般式(I)のA1の具体例としては、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3−クロロ−1,4−フェニレン、3−シアノ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピラゾリン−2,5−ジイル、ピリダジン−2,5−ジイル、1,4−シクロへキシレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ジオキサン−2,5−ジイル、ジチオキサン−2,5−ジイル2,6−ナフチレン、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルなどがあげられる。
【0028】
前記一般式(I)において、Yで表されるハロゲン化されたアルキル基としては、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−モノフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、モノフルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、パーフルオロプロピル等があげられ、ハロゲン化されたアルケニル基としては、モノフルオロビニル、ジフルオロビニル、パーフルオロビニル、トリフルオロアリル、パーフルオロアリル、パーフルオロアリルオキシメチル、パーフルオロアリルオキシモノフルオロメチルが等があげられ、ハロゲン化されたアルコキシ基としては、モノフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−モノフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、1,2,2−トリフルオロエトキシ、パーフルオロエトキシ、モノフルオロプロピルオキシ、ジフルオロプロピルオキシ、トリフルオロプロピルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ等があげられ、ハロゲン化されたアルケニルオキシ基としては、モノフルオロビニルオキシ、ジフルオロビニルオキシ、パーフルオロビニルオキシ、トリフルオロアリルオキシ、パーフルオロアリルオキシがあげられる。これらの中でも、Yが下記一般式(II)で表される基が好ましい。
【0029】
【化6】

(Bは、単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基中一部の水素原子は、ハロゲン原子又はシアノ基によって置換されていても良い。)
【0030】
また、前記一般式(II)において、Bで表されるアルキレン基としては、メチレン、モノフルオロメチレン、ジフルオロメチレン、エチレン、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、パーフルオロエチレンが挙げられる。
【0031】
本発明の前記一般式(I)として表される化合物の具体例としては、下記化合物などがあげられるが、これらの化合物に限定されるものではない。尚、R1は前記一般式(I)におけるR1と同様である。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
これらの化合物の中でも、下記一般式(I−1)で表される化合物は、上限温度を下げることなく、高いΔnと高いΔεを提供しうる化合物であるため好ましい。
【0042】
【化16】

(式中、R1、A1、Z1、Z2、X1〜X3、X5〜X7、n及びBは上記一般式(I)における場合と同一である。)
【0043】
また、これらの化合物の中でも、下記一般式(I−2)で表される化合物は、上限温度を下げることなく、高いΔnと高いΔεを提供しうる化合物であるため好ましい。
【0044】
【化17】

(式中、nは0又は1を示し、X1〜X3及びX5〜X7は水素原子又はフッ素原子を表し、R1、Z2及びBは上記一般式(I)における場合と同一である。)
【0045】
また、これらの化合物の中でも、下記一般式(I−2(a))に該当する化合物は、上限温度を下げることなく、高いΔnと高いΔεを提供しうる化合物であるため好ましい。
【0046】
【化18】

(式中、nは0又は1を示し、X2’、X3’及びX5’は水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【0047】
また、これらの化合物の中でも、下記一般式(I−2(b))に該当する化合物は、低回転粘性係数(γ1)を有し、高いΔεを提供しうる化合物であるため好ましい。
【0048】
【化19】

(式中、nは0又は1を示し、X2’、X3’,X5’ 及びX6’は水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【0049】
本発明の含ハロゲン化合物は、その製造方法によって制限を受けるものではないが、例えば本発明の含ハロゲン化合物は、その製造方法によって制限を受けるものではないが、例えば、Yが、−OCF2CF=CF2である化合物は、下記反応式に従って製造することができる。これ以外の化合物についてもこれに順ずる方法によって製造することができる。
尚、下記パーフルオロ化合物におけるXは、ヨウ素原子、臭素原子、モノフルオロスルホン酸等を表す。
【0050】
【化20】

【0051】
ここで、上記反応に使用される塩基(BASE)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属酸化物;水素化リチウム、水素化ナトリウム等の金属水素化物;トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N´−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビスシクロ(5.4.0)ウンデセン−1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノエチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)等のアミン等が挙げられる。
また、上記反応に使用される溶媒(solv.)としては、トルエン、N,N−ジメチルホ
ルムアミド(DMF)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチルアミン等が挙げられる。
上記〔化20〕の反応式中に示されるヒドロキシ化合物及びパーフルオロ化合物の使用量は、質量比(前者/後者)で好ましくは20/1〜1/20、さらに好ましくは1/1〜1/10の範囲である。
上記塩基の使用量は、ヒドロキシ化合物に対して、好ましくは0.1〜5.0モル%、さらに好ましくは1.0〜2.0モル%である。
上記溶媒の使用量は、任意の量とすることができるが、好ましくは、ヒドロキシ化合物とパーフルオロ化合物との総量100質量部に対して、10〜500質量部の範囲で適宜使用する。
【0052】
本発明の含ハロゲン化合物は、液晶化合物として有用なものであり、従来既知の液晶化合物もしくは液晶類似化合物、またはそれらの混合物(母液晶)を配合することによって液晶組成物を構成するものである。
上記母液晶としては、例えば、下記一般式(III)で表される化合物またはこれらの混合物があげられる。
また、本発明の含ハロゲン化合物の上記液晶組成物中の含有量は、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0053】
【化21】

(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表し、あるいはこれらはハロゲン原子、シアノ基などで置換されていてもよく、Y2は、シアノ基、ハロゲン原子、又はRで表される基を示し、Y1、Y3及びY4は水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基を示し、Z3およびZ4は各々独立に直接結合手、−CO−O−、−O−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−CH=CHCH2O−、−CF2O−、−OCF2−または−C≡C−を示し、pは0、1または2を示し、環A5、A6およびA7は各々独立にベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピリミジン環またはジオキサン環を示す。)
【0054】
上記一般式(III)で表される化合物の具体例としては、下記の各化合物などがあげられる。尚、各化合物におけるR、Y1、Y2、Y3およびY4は、上記一般式(I)におけるものと同じ意味である。
【0055】
【化22】

【0056】
また、本発明の液晶組成物には、公知のカイラル剤を併用することができる。カイラル剤としては、例えば、下記の一般式(IV)又は(V)で表される化合物などがあげられる。
【0057】
【化23】

(式中、R6およびR7はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニル基を表し、これらはエーテル基によって中断されていてもよく、ハロゲン原子、シアノ基により置換されていても良く、あるいは不飽和結合を有していても良い。A8、A9およびA10はそれぞれ独立して1,4−フェニレン、trans−1,4−シクロヘキセン、2−または3−フルオロ−1,4−フェニレンあるいは1,4−シクロヘキセニレンを表し、これらはハロゲン原子、シアノ基により置換されていても良い。Z5およびZ6はそれぞれ独立して−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−(CH24−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−OCH(CH3)CH2CH(CH3)O−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−CFHCFH−または単結合を表し、qは0、1または2を表す。ただし、少なくとも1個以上の不斉炭素原子を有する。)
【0058】
【化24】

(式中、R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有することのできるアリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基などがあげられ、これら基中の水素原子はハロゲン原子に置き換えられていても良く、エチレン基はエテニレン基またはエチニレン基により置き換えられても良い。R9は、アルキル基またはアルケニル基を表す。B1は、唯一つの二重結合を他の環とは共有することなく有する縮合環、あるいはこれはアルキル基、アルコキシ基で置換されていても良い。)
【0059】
上記カイラル剤の具体例としては、下記の化合物などがあげられる。
【0060】
【化25】

【0061】
また、例えば、特開昭63−175095号公報、特開平1−242542号公報、特開平1−258635号公報、特開平6−200251号公報、特開2002−308833号公報などに提案されているカイラル剤も使用できる。
【0062】
これらのカイラル剤は、単独で使用することもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。その場合には、らせんのねじれ方向が異なるものの組み合わせでもねじれ方向が同じものの組み合わせでも良い。また、例えば、特開平7−258641号公報に提案されているように、コレステリック相の旋回能の温度依存性を正とするものとコレステリック相の旋回能の温度依存性を負とするものとを組みああわせることもできる。
これらカイラル剤の種類及び濃度を変えることでピッチを0.2μ〜300μの範囲で調整して使用することができる。またこれらのカイラル剤の使用量は、要求されるピッチにより適宜調製される。
【0063】
また、本発明の液晶組成物には、長期に渡って光や熱に対して優れた安定性を付与する目的で、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系、オキザニリド系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤;フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤などを添加することもできる。
【0064】
また、本発明の液晶組成物には、帯電防止効果を得るため界面活性剤等を添加することもできる。該化合物としては、例えば、特開昭59−4676号、特開平4−36384号公報、特開平4−180993号公報、特開平11−212070号公報、特開平8−337779号公報、特開平9−67577号公報、特開2003−342580号公報等に提案された化合物などがあげられる。
【0065】
本発明の液晶組成物は、液晶セルに封入されて、種々の電気光学表示素子を構成することができる。電気光学表示素子としては、例えば、動的散乱型(DS)、ゲスト・ホスト型(GH)、ねじれネマチック型(TN)、超ねじれネマチック型(STN)、薄膜トランジスター型(TFT)、薄膜ダイオード型(TFD)、強誘電液晶型(FLC)、反強誘電液晶型(AFLC)、高分子分散液晶型(PD)、垂直配向(VA)、インプレーンスイッチング(IPS)、コレステリックネマチック相転移型などの種種の表示モードが適応され、また、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、2周波駆動方式などの種種の駆動方式が適用される。
【0066】
本発明の液晶組成物を用いてなる電気光学表示素子は、時計、電卓をはじめ、測定器、自動車用計器、複写機、カメラ、OA機器、携帯用パソコン、携帯電話などの用途に使用することができる。また、それ以外の用途、例えば、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等にも用いることができるが、特にその特性からカラー携帯電話用途に好適に使用される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではない。
【0068】
<実施例1>4−プロピル−3’−フルオロ−4”−(パーフルオロアリルオキシ)−1,1’:4’,1”−ターフェニル〔化合物No.1〕の合成方法
【0069】
【化26】

【0070】
フェノール体(1)26.7g(116ミリモル)、トリエチルアミン12.91g(128ミリモル)、トルエン130gを仕込み、冷却し、1〜10℃にコントロールしながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物34.36g(122ミリモル)を1時間かけて滴下し、1〜10℃にコントロールしながら1時間反応させた。そこに希塩酸を滴下し、油水分離後、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、減圧濃縮し、トリフレート体(2)〔茶色液体〕41.3g(収率98%)を得た。
【0071】
トリフレート体(2)41.31g(114ミリモル)、ボロン酸体(3)19.06g(125ミリモル)、炭酸水素ナトリウム38.30g(456ミリモル)、リチウムクロライド14.50g(342ミリモル)、1,4−ジオキサン110ml、水110mlを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら、Pd[PPh3]2Cl2錯体0.800g(1.14ミリモル)を仕込み、さらに室温にて20分攪拌し、80℃に昇温して3時間反応させた。その後冷却して、トルエン110mlを仕込み、不溶物をろ過後、油水分離、水洗を3回行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、シリカゲルを仕込み、30分攪拌、ろ過、減圧濃縮して茶色固体42.05gを得た。これを酢酸エチル110gで再結晶し、ターフェニルアニソール体(4)の黄色固体27.66g(収率62%)を得た。
【0072】
ターフェニルアニソール体(4)27.65g(86.3ミリモル)、ヨウ化水素酸55質量%水溶液30.11g(129ミリモル)、酢酸140gを仕込み、105℃で4時間反応させた後、更に110℃で3時間反応させた。その後冷却し、水を加え、ろ過し、得られた結晶をさらに水洗した。この結晶にトルエンを添加し、還流脱水後冷却し、フェノール体(5)の淡赤色結晶24.4g(収率92%)を得た。
【0073】
フェノール体(5)24.51g(80ミリモル)、トリエチルアミン9.71g(96ミリモル)、トルエン105mlを仕込み、攪拌冷却、4〜10℃でパーフルオロアリルフルオロサルファイト21.6g(92ミリモル)をゆっくり滴下後、同温で1時間反応させた。その後、水を入れ、油水分離、水洗を3回行い、無水硫酸ナトリウムで脱水後、白色固体52.04gを得た。これをシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン)精製し、無色固体を得た。この後、酢酸エチル/メタノール混合溶媒で晶析し、更にヘキサンで晶析し、無色固体21.5g(収率62%、純度99.9%)を得た。
【0074】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0075】
〔IR〕
2963cm-1、2936cm-1、2874cm-1、1794cm-1、1620cm-1、1551cm-1、1524cm-1、1489cm-1、1427cm-1、1389cm-1、1315cm-1、1223cm-1、1153cm-1、1092cm-1、1065cm-1、1011cm-1、895cm-1、876cm-1、791cm-1、667cm-1、586cm-1、544cm-1、521cm-1、475cm-1、422cm-1
1H−NMR〕
7.7−7.1(m、11H)、2.8−2.5(t、2H)、1.8−1.4(m、2H),1.1−0.9(t,3H)
【0076】
相転移温度(℃)は以下の通りであった。
【化27】

【0077】
<実施例2>1−〔(4’−プロピル−2’,6’−フロオロフェニル)ジフロオロメトキシ〕−3,5−ジフロオロ−4−(パーフルオロアリルオキシ)ベンゼン〔化合物No.2〕の合成方法
【0078】
【化28】

【0079】
1,3−ジフルオロ−5−プロピルベンゼン(1)14.99g(96ミリモル)、テトラヒドロフラン75mlを窒素気流下にて仕込み、−55℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/2.67モル/Lヘキサン溶液39.55ml(106ミリモル)を15分かけて滴下し、1時間反応後、−62℃まで冷却し、ジフルオロジブロモメタン24.17g(115ミリモル)をテトラヒドロフラン10mlに溶解して得られる溶液を15分かけて滴下し、その後1時間反応させた。室温に戻し、水15mlを添加し、反応終了とした。反応液にヘキサンおよび水を加え、油水分離し、水洗を3回行った。その後、無水硫酸マグネシウムで脱水後、減圧濃縮し、茶色液体24.7g得た。これにヘキサン及びシリカゲルを加え、1時間攪拌、ろ過、濃縮し、CF2Br体(2)のオレンジ液体23.7g(収率56%)を得た。
【0080】
フェノール体(3)14.45g(61.2ミリモル)、水酸化ナトリウム3.01g(93%、70ミリモル)、ジメチルイミダゾリジノン70gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温し、1時間反応後、CF2Br体(2)23.74g(58.3ミリモル)を5分間かけて滴下し、その後80℃で2時間反応させた。その後冷却し、希塩酸を滴下し、トルエンを加えて油水分離、水洗を2回行い、飽和食塩水で3回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで脱水、ろ過、減圧濃縮し、茶色液体32gを得た。これをシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン)精製し、CF2O体(4)の黄色液体18.35g(純度96%、収率71%)を得た。
【0081】
CF2O体(4)18.35g(40ミリモル)、Pd/C 1.84g(パラジウム5%)、テトラヒドロフラン60mlを仕込み、窒素置換、室温で5時間反応後、セライトろ過、減圧濃縮後、橙色固体15.6gを得た。これをヘキサンで晶析し、フェノール体(5)の淡黄色結晶10.9g(収率78%)を得た。
【0082】
フェノール体(5)10.89g(31.1ミリモル)、トリエチルアミン3.52g(37.3ミリモル)、トルエン45mlを仕込み、攪拌しながら3℃まで冷却し、パーフルオロアリルフルオロサルファイト8.40g(35.8ミリモル)を50分かけて滴下後、同温で1時間反応させた。その後、水を入れ、油水分離後、水洗を3回行い、無水硫酸ナトリウムで脱水後、黄色液体14.53gを得た。これをシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン)精製し、無色液体11.73gを得た。この後、メタノールで晶析、蒸留、更にメタノール晶析し、無色液体9.1g(収率61%、純度99.9%)
【0083】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0084】
〔IR〕
3105cm-1、2966cm-1、2939cm-1、2878cm-1、1790cm-1、1643cm-1、1612cm-1、1582cm-1、1508cm-1、1447cm-1、1385cm-1、1319cm-1、1296cm-1、1227cm-1、1204cm-1、1150cm-1、1111cm-1、1018cm-1、872cm-1、845cm-1、799cm-1、748cm-1、714cm-1、691cm-1、664cm-1、629cm-1、563cm-1、521cm-1
1H−NMR〕
7.0−6.6(m、4H)、2.8−2.5(t、2H)、1.8−1.4(m、2H),1.1−0.9(t,3H)
【0085】
<実施例3>4−プロピル−3,5,3’−トリフルオロ−4”−(パーフルオロアリルオキシ)−1,1’:4’,1”−ターフェニル〔化合物No.3〕の合成方法
【0086】
【化29】

【0087】
窒素気流下、トリフレート体(1)5.5g(15.2ミリモル)、ボロン酸体(2)3.13g(16.7ミリモル)、炭酸水素ナトリウム5.09g(60.6ミリモル)、Pd[PPh3]2Cl2錯体0.106g(0.151ミリモル)リチウムクロライド1.93g(45.5ミリモル)、1,4−ジオキサン16g、水16gを仕込み、80℃に昇温して5.5時間反応させた。その後室温まで冷却して、希塩酸及び酢酸エチルを加え、油水分離した。飽和食塩水で5回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶媒し、黒白色粉末5.7gを得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)精製し、ターフェニルアニソール体(3)の白色粉末5.0g(収率91.9%)を得た。
【0088】
窒素気流下、ターフェニルアニソール体(3)5.0g(13.9ミリモル)、ヨウ化水素酸52質量%水溶液7.2g(29.1ミリモル)、酢酸23.9gを仕込み、攪拌しながら、105℃で4時間反応させた。その後冷却し、トルエン、酢酸エチルおよび水を加え、油水分離した。チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶媒を行い、黄白色粉末4.8gを得た。精製は、シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)にて行い、フェノール体(4)の白色粉末4.3g(収率89.9%)を得た。
【0089】
窒素気流下、フェノール体(4)4.3g(12.5ミリモル)、トリエチルアミン1.58g(15.6ミリモル)、トルエン13gを仕込み、攪拌冷却、15℃以下でパーフルオロアリルフルオロサルファイト3.23g(13.8ミリモル)をゆっくり滴下後、5℃で1時間反応させた。その後、水および酢酸エチルを加えて油水分離した。希塩酸を加えて分液後、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウム乾燥、脱溶媒を行い、黄白色粉末5.8gを得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/トルエン)精製し、エタノールによる晶析2回行い、白色結晶4.5g(収率75.8%、純度100%)を得た。
【0090】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0091】
〔IR〕
3444cm-1、2966cm-1、2936cm-1、2878cm-1、1913cm-1、1794cm-1、1624cm-1、1605cm-1、1493cm-1、1389cm-1、1323cm-1、1231cm-1、1207cm-1、1018cm-1、821cm-1、799cm-1
1H−NMR〕
7.7−7.1(m、9H)、2.8−2.5(t、2H)、1.9−1.4(m、2H),1.1−0.8(t,3H)
【0092】
相転移温度(℃)は以下の通りであった。
【化30】

【0093】
<実施例4>4−プロピル−3,5−ジフルオロ−3’−クロロ−4”−(パーフルオロアリルオキシ)−1,1’:4’,1”−ターフェニル〔化合物No.4〕の合成方法
【0094】
【化31】

【0095】
窒素気流下、トリフレート体(1)11.6g(29.2ミリモル)、ボロン酸体(2)6.3g(33.7ミリモル)、炭酸水素ナトリウム10.3g(123ミリモル)、Pd[PPh3]2Cl2錯体0.430g(0.612ミリモル)、リチウムクロライド3.89g(91.8ミリモル)、1,4−ジオキサン33ml、水33mlを仕込み、80℃に昇温して6.5時間反応させた。その後冷却して、トルエンを加えて油水分離した。水洗して硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶媒し、黒色液体12.0gを得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)精製し、ターフェニルアニソール体(3)の黄色透明液体10.5g(収率92.2%)を得た。
【0096】
窒素気流下、ターフェニルアニソール体(3)10.5g(27.0ミリモル)、ヨウ化水素酸52質量%水溶液8.6g(67.5ミリモル)、酢酸48.5gを仕込み、攪拌しながら、105℃で9時間反応させた。その後、酢酸エチルおよび水を加え油水分離した。チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶媒を行い、黄白色粉末10.6gを得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)精製し、フェノール体(4)の白色粉末9.6g(収率98%)を得た。
【0097】
窒素気流下、フェノール体(4)9.4g(26.0ミリモル)、トリエチルアミン3.29g(32.5ミリモル)、トルエン28mlを仕込み、攪拌冷却、5℃以下でパーフルオロアリルフルオロサルファイト6.9g(28.6ミリモル)をゆっくり滴下後、5℃で30分反応させた。その後、10%塩酸水溶液を加え分液後、水洗し、無水硫酸マグネシウム乾燥、脱溶媒を行い、白色粉末11.6gを得た。シリカゲルカラム(ヘキサン/トルエン)精製し、メタノール/エタノールによる晶析2回行い、白色結晶8.6g(収率67.3%、純度99.8%)を得た
【0098】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0099】
〔IR〕
3499cm-1、2963cm-1、2936cm-1、2874cm-1、1913cm-1、1794cm-1、1628cm-1、1601cm-1、1481cm-1、1435cm-1、1385cm-1、1319cm-1、1231cm-1、1204cm-1、1018cm-1、818cm-1
1H−NMR〕
7.8−7.0(m、9H)、2.7−2.5(t、2H)、1.9−1.4(m、2H),1.1−0.8(t,3H)
【0100】
相転移温度(℃)は以下の通りであった。
【化32】

【0101】
<実施例5>4−プロピル−2,3’,5’−トリフルオロ−4’−〔[4”−(パーフルオロアリルオキシ)−3,5−ジフルオロフェノキシ]ジフルオロメチル−1,1’−ビフェニル〔化合物No.5〕の合成方法
【0102】
【化33】

【0103】
窒素雰囲気下、ビフェニル体(1)13.3g(49.9ミリモル)、テトラヒドロフラン67mlを仕込み、−60℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/2.67モル/Lヘキサン溶液20.9ml(55.8ミリモル)を15分かけて滴下し、1時間反応後、−60℃以下でジフルオロジブロモメタン13.4g(63.6ミリモル)を滴下し、その後2時間反応させた。0℃まで昇温し、ヘキサンおよび水を添加し、攪拌分液した。飽和食塩水洗浄で中性を確認後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶剤を行い、茶色液体19.4g(収率81.1%)を得た。
【0104】
フェノール体(3)6.0g(25.0ミリモル)、水酸化ナトリウム1.17g(27.2ミリモル)、ジメチルイミダゾリジノン30gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温し、1.5時間反応後、CF2Br体(2)10.0g(20.9ミリモル)を滴下し、80℃で8.5時間反応させた。その後冷却し、トルエンおよび水を加え攪拌分液し、5%塩酸で洗浄、飽和食塩水洗浄で中和確認後、無水硫酸マグネシウムで脱水、脱溶媒行い、黄白色固体14.2gを得た。エタノール晶析を行い、CF2O体(4)の白色粉末6.2g(収率55.1%)を得た。
【0105】
CF2O体(4)6.1g(11.4ミリモル)、Pd/C 0.51g(パラジウム5%)、テトラヒドロフラン12.6gを仕込み、水素置換、室温で4.5時間反応後、セライトろ過、減圧濃縮後、茶白色固体5.2gを得た。これをシリカゲル(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)精製し、フェノール体(5)の白色粉末4.8g(収率94.9%、)を得た。
【0106】
窒素気流下、フェノール体(5)4.8g(10.8ミリモル)、トリエチルアミン1.31g(12.9ミリモル)、トルエン14gを仕込み、攪拌しながら−20℃まで冷却し、パーフルオロアリルフルオロサルファイト2.9g(11.9ミリモル)をゆっくり滴下後、0℃以下で1時間反応させた。その後、水を入れ、油水分離を行った。5%塩酸を加え分液後、水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、脱溶媒を行い、黄白色粉末を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/トルエン)精製し、エタノール晶析を行い、白色粉末4.6g(収率78.9%、純度99.9%)を得た。
【0107】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0108】
〔IR〕
3437cm-1、3101cm-1、2970cm-1、2939cm-1、2878cm-1、1790cm-1、1639cm-1、1582cm-1、1504cm-1、1454cm-1、1407cm-1、1385cm-1、1346cm-1、1304cm-1、1223cm-1、1169cm-1、1119cm-1、1084cm-1、1038cm-1、1014cm-1
1H−NMR〕
7.5−6.9(m、7H)、2.7−2.2(t、2H)、1.9−1.2(m、2H),1.1−0.8(t,3H)
【0109】
相転移温度(℃)は以下の通りであった。
【化34】

【0110】
<実施例6>4−プロピル−3’,5’−ジフルオロ−4’−〔[4”−(パーフルオロアリルオキシ)−3,5−ジフルオロフェノキシ]ジフルオロメチル−1,1’−ビフェニル〔化合物No.6〕の合成方法
【0111】
【化35】

【0112】
窒素雰囲気下、フェノール体(1)21.5g(56.5ミリモル)、トリエチルアミン6.1g(60.54ミリモル)、トルエン112gを仕込み、攪拌しながら5℃まで冷却し、パーフルオロアリルフルオロサルファイト12.8g(55.5ミリモル)をゆっくり滴下後、5℃以下で1時間反応させた後、水洗処理を行った。シリカゲルカラム(展開溶媒ヘキサン)精製し、エタノール晶析を行い、白色粉末16.4g(収率59%、純度99.9%)を得た。
【0113】
得られた化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)及び1H−NMRにより目的物であると同定した。分析結果は各々以下の通りである。
【0114】
〔IR〕
3440cm-1、3086cm-1、2974cm-1、2939cm-1、2882cm-1、1917cm-1、1794cm-1、1643cm-1、1612cm-1、1562cm-1、1585cm-1、1504cm-1、1439cm-1、1393cm-1、1304cm-1、1219cm-1、1196cm-1、1134cm-1、1026cm-1、877cm-1、833cm-1、799cm-1、745cm-1
1H−NMR〕
7.6−6.8(m、8H)、2.8−2.5(t、2H)、1.9−1.4(m、2H),1.1−0.7(t,3H)
【0115】
相転移温度(℃)は以下の通りであった。
【化36】

【0116】
<比較例1>
下記の比較化合物1の相転移温度を示した。類似構造を有する本願発明の化合物No.6と異なり、液晶相を示さない。
【0117】
【化37】

【0118】
【化38】

【0119】
<比較例2>
下記の比較化合物2の相転移温度を示した。類似構造を有する本願発明の化合物No.3と異なり、冷却時にのみ液晶相を発現するモノトロピックな液晶化合物である。
【0120】
【化39】

【0121】
【化40】

【0122】
<実施例7及び比較例3>
下記に示した母液晶に対し、本願発明の化合物及び比較化合物を10質量%含有して液晶組成物を調整し、NT点、光学異方性(Δn)及び誘電率異方性(Δε)を測定した。その結果を〔表1〕に示した。
【0123】
【化41】

【0124】
【表1】

【0125】
実施例から明らかなように、本願発明の含ハロゲン化合物は、ネマチック液晶組成物に含有させることで、上限温度をほとんど下げることなく、高いΔnと高いΔεを提供しうる材料であり、本発明の含ハロゲン化合物を含有して得られる液晶組成物は、あらゆる表示方式およびあらゆる駆動方式の電気光学素子用の液晶材料として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(I)におけるYが下記部分構造式(II)で表されることを特徴とする請求項1記載の含ハロゲン化合物。
【化2】

(Bは、単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基中一部の水素原子は、ハロゲン原子又はシアノ基によって置換されていても良い。)
【請求項3】
下記一般式(I−1)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物。
【化3】

(式中、R1、A1、Z1、Z2、X1〜X3、X5〜X7及びnは、上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【請求項4】
下記一般式(I−2)で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物。
【化4】

(式中、nは、0又は1を示し、X1〜X3及びX5〜X7は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1及びZ2は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【請求項5】
下記一般式(I−2(a))で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物。
【化5】

(式中、nは、0又は1を示し、X2’、X3’及びX5’は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【請求項6】
下記一般式(I−2(b))で表されることを特徴とする含ハロゲン化合物。
【化6】

(式中、nは、0又は1を示し、X2’、X3’,X5’ 及びX6’は、水素原子又はフッ素原子を表し、R1は上記一般式(I)における場合と同一であり、Bは上記一般式(II)における場合と同一である。)
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の含ハロゲン化合物を含有する液晶組成物。
【請求項8】
液晶セルに請求項7記載の液晶組成物を封入してなる電気光学表示素子。

【公開番号】特開2007−277127(P2007−277127A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103672(P2006−103672)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】