説明

含フッ素アシル化アミン及びその製造方法

【課題】半導体製造工程におけるクリーニングガス等として使用されているフッ化カルボニルを用いて、医薬中間体、農薬、Li2次電池用添加剤、機能材料等として有用な化合物を製造すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される含フッ素アシル化アミン。好ましくは、下記一般式(1)中、R1 がフェニル基、R2 が水素原子、R3 がn−ブチル基、R4 がフッ素原子又はメトキシル基である含フッ素アシル化アミン。この含フッ素アシル化アミンは、アルジミンとフッ化カルボニルとを、加圧下で、アミン系触媒の存在下に接触させることにより製造することができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物である含フッ素アシル化アミン及びその製造方法に関する。本発明の含フッ素アシル化アミンは、医薬中間体、農薬、Li2次電池用添加剤、機能材料等として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で用いられている成膜装置等において、該装置内に堆積した堆積物等をクリーニングするためのクリーニングガスとして、従来、CF 、C 等のパーフルオロカーボン(PFC)やNF 等が使用されている。しかし、これらのクリーニングガスは、地球温暖化係数が高く、地球温暖化防止の点から問題となっている。
そこで、近年、前記クリーニングガスとして、フッ化カルボニルが使用されつつある。フッ化カルボニルは、地球温暖化係数が低く、且つオゾン層破壊係数もゼロであり、クリーニングガスとしての性能も優れたものである。また、フッ化カルボニルは水スクラバーで容易に除害することができ、使用済みフッ化カルボニルは、有効利用されることなく、通常、除害して排出処分されている。
【0003】
フッ化カルボニルを用いた反応としては、ヘキサフルオロプロピレンエポキシドとフッ化カルボニルとを、ジアミノジフルオロメタン等の触媒の存在下に反応させて、アルコキシアシルフッ化物を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このアルコキシアシルフッ化物は、熱や活性な化学薬品に対して不活性なパーフルオロエーテルの原料として有用なものである。
イミンとフッ化カルボニルとの反応については、従来全く知られていない。またその生成物の合成化学的な利用は行われていない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,118,421号明細書
【特許文献2】米国特許第3,250,808号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体製造工程におけるクリーニングガス、ポリマー原料等として使用されているフッ化カルボニルを用いて、医薬中間体、農薬、Li2次電池用添加剤、機能材料等として有用な化合物を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表される含フッ素アシル化アミンを高収率かつ簡便に提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
【化1】

(式中、R1 、R2 及びR3 は、互いに独立していて、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基の何れかを示す。また、R4 は、フッ素原子又は−ORを示し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基の何れかを示す。また、R1 、R2 、R3 及びRのうちの任意の基が共同で環状構造を形成してもよい。また、R1 、R2 、R3 及びRに含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に置換でき、またCN基又はNO 基によって部分的に置換できる。また、R1 、R2 、R3 及びRに含まれる炭素原子は、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO −、−SO −、−N=、−N=N−、−NR’−、−N(R’) 、−PR’−、−POR’−、−POR’−O−、−O−POR’−O−及び−P(R’) =N−の群から選択した原子及び/又は原子団によって置換できる。ここで、R’は、炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、フッ素原子によって部分的に若しくは完全に置換された炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す。)
【0008】
また、本発明は、前記一般式(1)で表される含フッ素アシル化アミンの製造方法として、アルジミンとフッ化カルボニルとを、加圧下で、アミン系触媒の存在下に接触させることを特徴とする含フッ素アシル化アミンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体製造工程におけるクリーニングガス、ポリマー原料等として使用済みのフッ化カルボニルを用いて、医薬中間体、農薬、Li2次電池用添加剤、機能材料等として有用な化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のアシル化アルジミンを表す前記一般式(1)において、R1 、R2 及びR3 で示される炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デカニル、n-ドデカニル等が挙げられ、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、クロチル基、ゲラニル基等が挙げられ、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基としては、CH≡C−、CH≡C−CH2−、CH≡C-CH2−CH2−、CH3−C≡C−CH2−等が挙げられ、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデカニル等が挙げられ、複素環基としては、テトラヒドロイソキノリン テトラヒドロキノリン、2-ピリジン、3-ピリジン、4-ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピリミジン、ピロリジン、インドール等が挙げられる。
【0011】
また、前記一般式(1)において、R4 が−ORである場合の該Rで示される炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、及び複素環基としては、前記で挙げたR1 、R2 及びR3 で示されるものと同様のものが挙げられる。
【0012】
また、前記のR1 、R2 、R3 及びRに含まれる水素原子を部分的に若しくは完全に置換できるハロゲン原子としては、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素が挙げられ、前記のR1 、R2 、R3 及びRに含まれる炭素原子を部分的に若しくは完全に置換できる原子団中のR’で示される炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルn-ヘキシル、n-オクチル、n-デカニル、等が挙げられ、フッ素原子によって部分的に若しくは完全に置換された炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デカニル等が挙げられ、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデカニル等が挙げられ、置換されたフェニル基としては、トルエン、フェノール、アニリン、ニトロベンゼン、ベンゼンスルホン酸、シアノベンゼン等が挙げられ、置換されたヘテロシクルスとしては、3,4-ジヒドロキノリン、2-ピリジン、3-ピリジン、4-ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピリミジン、インドール等が挙げられる。
【0013】
前記一般式(1)において、R1 としては、フェニル基、アルキル基が好ましく、R2 としては、水素、アルキル基が好ましく、R3 としては、アルキル基が好ましく、R4 としては、フッ素、アルコキシ基が好ましい。
【0014】
本発明の含フッ素アシル化アミンの好ましい具体例としては、例えば下記の化合物1〜8を挙げることができる。これらの本発明の含フッ素アシル化アミンのうちでも、前記一般式(1)中のR1 がフェニル基、R2 が水素原子、R3 がn−ブチル基、R4 がフッ素原子又はメトキシル基である化合物が好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
次に、本発明の含フッ素アシル化アミンの製造方法について説明する。
本発明の前記一般式(1)で表される含フッ素アシル化アミンは、アルジミンとフッ化カルボニルとを、加圧下で且つ必要に応じて加熱下で、アミン系触媒の存在下に接触させることにより、下記反応式1に示すようにアルジミンとフッ化カルボニルとが反応して製造することができる。
【0017】
【化3】

(式中、R1 、R2 及びR3 は、前記一般式(1)中のR1 、R2 及びR3 と同じ基を示す。)
【0018】
アルジミンとフッ化カルボニルとの使用割合(アルジミン/フッ化カルボニルのモル比)は、0.8〜1.5が好ましく、1〜1.5がより好ましい。
【0019】
前記アミン系触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられ、これらの中でも、ピリジンが好ましい。
前記アミン系触媒は、アルジミンに対し0.1〜50質量%使用するのが好ましく、1〜5質量%使用するのがより好ましい。
【0020】
また、反応圧力は、0〜10MPaが好ましく、より好ましくは0〜2MPaであり、反応温度は、−20〜200℃が好ましく、より好ましくは0〜150℃である。
【0021】
また、前記一般式(1)においてR4 が−ORである本発明の含フッ素アシル化アミンは、前記反応式1に示すようにして製造された本発明の含フッ素アシル化アミンを、下記反応式2に示すようにアミンの存在下でROHと反応させることにより製造することができる。
【0022】
【化4】

(式中、R1 、R2 、R3 及びRは、前記一般式(1)中のR1 、R2 、R3 及びRと同じ基を示す。)
【0023】
含フッ素アシル化アミンとアルコールとの使用割合(含フッ素アシル化アミン/アルコールのモル比)は、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.1がより好ましい。
【0024】
前記アミンとしては、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン等が挙げられ、これらの中でも、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンが好ましい。
前記アミンは、含フッ素アシル化アミンに対し0.1〜150mol%使用するのが好ましく、70〜100mol%使用するのがより好ましい。
【0025】
反応温度は、−20〜200℃が好ましく、より好ましくは0〜40℃である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
合成例1(原料のアルジミンの合成)
下記反応式3に示すように、次のようにしてアルジミンを合成した。
【0028】
【化5】

【0029】
a) N-ベンジリデンエタンアミン
200ml容ガラス製フラスコに、ベンズアルデヒド (25g、0.24mol)、
70%エチルアミン水溶液(30g、0.47mol)、テトラヒドロフラン100mlを仕込み、硫酸マグネシウム10gを加え攪拌した。GCにより原料の転化を確認した後、固体をろ過し、濃縮した。この液体を減圧蒸留(沸点:88〜90℃/2.6KPa)してN-ベンジリデンエタンミンを27.9g得た(収率89%)。
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 1.32 (t,3H), 3.66 (q, 2H), 7.42 (m, 3H), 7.73 (m, 2H), 8.30 (br-s, 1H)
【0030】
b) N-ベンジリデンメタンアミン
上記a)の方法に準じてN-ベンジリデンメタンアミンを得た(収率83%)。沸点:70〜72/2.4KPa。
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 3.53 (d,3H) , 7.42 (m, 3H), 7.72 (m, 2H), 8.30 (br-m, 1H)
【0031】
合成例2(原料のアルジミンの合成)
c) N-ベンジリデン-n-ブチルアミン
ディーンシュターク冷却器を装着した100mLフラスコに、ベンズアルデヒド (22.8 g, 0.21 mol)、n-ブチルアミン(18.6 g, 0.25 mol)、トルエン100 mlを仕込み一晩還流させた後、放冷し、溶媒を留去・濃縮した。得た粗生成物を減圧蒸留(沸点 118 ℃/2.3 kPa)して、30.5 g(GC純度>99%)のN-ベンジリデンノルマルブチルアミンを得た(収率90%)。
1H NMR(300MHz, 溶媒: CDCl3)
δ 0.94 (t, 3H), 1.40(h, 2H), 1.68(h, 2H) , 3.61(t, 2H), 7.40(m, 3H) , 7.71(m, 2 H) , 8.26(s, 1H)
【0032】
d) N-ベンジリデン-t-ブチルアミン
上記c)の方法に準じてN-ベンジリデンメタンアミンを得た(収率73%)。沸点:70〜72/2.4KPa。
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 1.29 (s,9H), 7.41(m, 3H) , 7.77(m, 2H) , 8.30(s, 1H)
【0033】
実施例1(化合物1の製造)
次のようにして化合物1のアシル化アルジミンを製造した。
【0034】
【化6】

【0035】
e) 1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸フルオリド
200ml容SUS製オートクレーブに、N-ベンジリデンメタンアミン(20g、0.17mol)を仕込み、窒素により加圧し漏れを確認した後、窒素を除き、−100℃でCOF (15g、0.23mol)を導入した。その後、攪拌しながらゆっくりと昇温した。室温に戻した後、圧力を確認しながら100℃まで加熱した。この時の圧力は0.6MPaであった。100℃に12時間保持後、放冷し、圧力を開放し、粗生成物31.3gを得た。
この粗生成物をNMR,GCにより分析し、1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸フルオリドが生成していることを確認した。その結果を下記に示す。
【0036】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 2.75 (d,3H), 6.9-7.2 (br-m, 1H), 7.45 (m,5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -15.8 (s, 0.5F), -22.0 (s, 0.5F), -154.2 (d, 0.5F), -159.8 (d, 0.5F)
【0037】
実施例2
f) 1−(1−フルオロベンジルエチルアミン)カルボン酸フルオリド
500ml容SUS製オートクレーブに、N-ベンジリデンエタンアミン(25g、0.19mol)を仕込み、窒素により加圧し漏れを確認した後、窒素を除き、−100℃でCOF (15g、0.23mol)を導入した。その後、攪拌しながらゆっくりと昇温した。室温に戻した後、圧力を確認しながら100℃まで加熱した。この時の圧力は0.4MPaであった。100℃に12時間保持後、放冷し、圧力を開放し、粗生成物37.8gを得た。
【0038】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 0.78 (t,3H), 3.0 (br-m, 1H), 3.2 (br-m, 1H), 6.8-7.2 (br-m, 1H), 7.41 (m,5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -16.3 (s, 0.5F), -20.2 (s, 0.5F), -149.9(d, 0.5F), -155.8 (d, 0.5F)
【0039】
実施例3
g) 1−(1−フルオロベンジル-n-ブチルアミン)カルボン酸フルオリド
500ml容SUS製オートクレーブに、N-ベンジリデン-n-ブチルアミン(30g、0.19mol)を仕込み、窒素により加圧し漏れを確認した後、窒素を除き、−100℃でCOF (20g、0.30mol)を導入した。その後、攪拌しながらゆっくりと昇温した。室温に戻した後、圧力を確認しながら150℃まで加熱した。この時の圧力は0.8MPaであった。150℃に11時間保持後、放冷し、圧力を開放し、粗生成物43.2gを得た。
【0040】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 0.78 (t,3H), 1.15 (h, 2H), 1.2-1.6 (br-m, 2H), 2.8-3.4 (br-m, 2H), 6.8-7.2 (br-m, 1H), 7.41 (m,5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -16.2 (0.5F), -20.0 (0.5F), -149.6 (0.5F), -155.5 (0.5F)
【0041】
実施例4
h) 1−(1−フルオロベンジル-t-ブチルアミン)カルボン酸フルオリド
500mL SUS製オートクレーブに、N-ベンジリデン-t-ブチルアミン(33g、0.19mol)及びピリジン(1ml)を仕込み窒素により加圧してリークを確認した後、窒素を除き、−100 ℃でCOF2(19g、0.29mol)を導入した。その後攪拌しながらゆっくりと昇温した。室温に戻した後、圧力を確認しながら100 ℃まで加熱した。15時間加熱後、放冷し、粗生成物43.2gを得た。得た粗生成物をNMR, GCにより分析した結果、原料のアルジミンが残っていた。
500mL SUS製オートクレーブに、回収物38.2 gを仕込み窒素により加圧してリークを確認した後、窒素を除き、−100 ℃でCOF2(19g、0.29mol)を導入した。その後攪拌しながらゆっくりと昇温した。室温に戻した後、圧力を確認しながら150 ℃まで加熱した。12時間加熱後、放冷し、得た粗生成物44.1gをNMR, GCにより分析した。
【0042】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 1.53 (s, 9H), 6.9(d, 1H), 7.3(m, 5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ +4.0(1F), -148.6(1F)
【0043】
実施例5
i) 1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸メチルエステル
20ml容のガラス製フラスコにメタノール(0.85g、26.5mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(1.60g、10.5mmol)、THF10gを加え室温で攪拌した。そこへ1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸フルオリド(3.1g、16.7mmol、実施例1で合成)を加えた。一晩攪拌した後、ヘキサン20mlを加えセライトによりろ過した。ろ液を濃縮し、クーゲルキットにより蒸留(沸点110℃/0.8kPa)して 1.9g(収率74%)の1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸メチルエステルを得た。
【0044】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 2.67 (s,3H), 3.84 (d, 3H), 7.1-7.4 (br, 1H), 7.2-7.5 (m, 5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -153.3 (0.5F), -156.3 (0.5F)
【0045】
実施例6
j) 1−(1−フルオロベンジルエチルアミン)カルボン酸メチルエステル
20ml容のガラス製フラスコにメタノール(0.32g、10mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(1.53g、10mmol)、THF10gを加え室温で攪拌した。そこへ1−(1−フルオロベンジルエチルアミン)カルボン酸フルオリド(2.0g、10mmol、実施例2で合成)を加えた。一晩攪拌した後、ヘキサン20mlを加えセライトによりろ過した。ろ液を濃縮し、クーゲルキットにより蒸留(沸点130℃/0.5kPa)して2.5g(収率>99%)の1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸メチルエステルを得た。
【0046】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 0.98 (t,3H), 3.00(m, 1H), 3.24 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 7.1-7.4 (br, 1H), 7.35-7.40 (m, 5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -148.2 (0.5F), -151.8 (0.5F)
【0047】
実施例7
k) 1−(1−フルオロベンジル-n-ブチルアミン)カルボン酸メチルエステル
20ml容のガラス製フラスコにメタノール(0.45g、14mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(1.67g、11mmol)、THF10gを加え室温で攪拌した。そこへ1−(1−フルオロベンジルエチルアミン)カルボン酸フルオリド(3.0g、13.2mmol、実施例3で合成)を加えた。一晩攪拌した後、ヘキサン20mlを加えセライトによりろ過した。ろ液を濃縮し、クーゲルキットにより蒸留(沸点120℃/0.4kPa)して2.9g(収率92%)の1−(1−フルオロベンジルメチルアミン)カルボン酸メチルエステルを得た。
【0048】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 0.77 (t,3H), 1.11 (h,2H), 1.30(m, 1H), 1.45 (m, 1H), 2.85(m, 1H), 3.25 (m, 1H), 3.83 (s, 3H), 7.1-7.3 (br, 1H), 7.33-7.45 (m, 5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -148.2 (0.5F), -151.6 (0.5F)
【0049】
実施例8
l) 1−(1−フルオロベンジル-t-ブチルアミン)カルボン酸メチルエステル
20ml容のガラス製フラスコにメタノール(0.30g、9.4mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(1.0g、6.6mmol)、THF10gを加え室温で攪拌した。そこへ1−(1−フルオロベンジルt-ブチルアミン)カルボン酸フルオリド(2.0g、8.8mmol、実施例4で合成)を加えた。一晩攪拌した後、ヘキサン40mlを加えセライトによりろ過した。ろ液を濃縮し、クーゲルキットにより蒸留(沸点120℃/0.6kPa)して1.57g(収率75%)の1−(1−フルオロベンジル−t−ブチルアミン)カルボン酸メチルエステルを得た。
【0050】
分析結果
1H-NMR (300 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 テトラメチルシラン)
δ 1.48 (s, 9H), 3.46 (s, 3H), 7.00 (d, 1H), 7.35 (m,5H)
19F-NMR (282 MHz, 溶媒 CDCl, 標準物質 CFCl3)
δ -146.5 (1F)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素アシル化アミン。
【化1】

(式中、R1 、R2 及びR3 は、互いに独立していて、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基の何れかを示す。また、R4 は、フッ素原子又は−ORを示し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、炭素原子数2〜30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基の何れかを示す。また、R1 、R2 、R3 及びRのうちの任意の基が共同で環状構造を形成してもよい。また、R1 、R2 、R3 及びRに含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に置換でき、またCN基又はNO 基によって部分的に置換できる。また、R1 、R2 、R3 及びRに含まれる炭素原子は、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO −、−SO −、−N=、−N=N−、−NR’−、−N(R’) 、−PR’−、−POR’−、−POR’−O−、−O−POR’−O−及び−P(R’) =N−の群から選択した原子及び/又は原子団によって置換できる。ここで、R’は、炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、フッ素原子によって部分的に若しくは完全に置換された炭素原子数1〜10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1 がフェニル基、R2 が水素原子、R3 がn−ブチル基、R4 がフッ素原子又はメトキシル基である、請求項1記載の含フッ素アシル化アミン。
【請求項3】
アルジミンとフッ化カルボニルとを、加圧下で、アミン系触媒の存在下に接触させることを特徴とする含フッ素アシル化アミンの製造方法。
【請求項4】
前記アミン系触媒がピリジンである、請求項3記載の含フッ素アシル化アミンの製造方法。

【公開番号】特開2009−249347(P2009−249347A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100001(P2008−100001)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】