説明

含フッ素ビニルエーテル化合物およびその製造法

【課題】ヘキサフルオロプロペンオキシド重合体由来の含フッ素ポリエーテル基を有し、従ってパーフルオロアルキルビニルエーテルのパーフルオロアルキル基の如く剛直ではなく柔軟性があり、しかも熱的安定性、化学的安定性にすぐれ、良好な光学的性質、界面活性特性をも併せ持つ含フッ素ビニルエーテル化合物を提供する。
【解決手段】一般式RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OCH=CH2(Rfは炭素数1以上のポリフルオロアルキル基であり、aは0または1〜30の整数であり、bは1〜10の整数であり、nおよびmは1または2である)で表わされる含フッ素ビニルエーテル化合物。この化合物は、一般式RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OHで表わされる含フッ素アルコールと一般式XCH2CH2OCH=CH2(Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である)で表わされるアルキルビニルエーテルとを、パラジウム系触媒の存在下で、脱XCH2CH2OH化反応させることによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ビニルエーテル化合物およびその製造法に関する。さらに詳しくは、含フッ素ポリエーテル基を有する新規な含フッ素ビニルエーテル化合物およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム触媒の存在下に、フルオロアルキルアルコールとアルキルビニルエーテルとを反応させ、フルオロアルキルビニルエーテルを製造する方法が報告されているが、この反応ではフルオロアルキルアルコールに対して大過剰のアルキルビニルエーテルが用いられているばかりではなく、反応に要する時間が72時間以上で、また収率も75%程度にすぎない。さらに、この反応により得られる転化率の低い粗生成物の蒸留による精製を行った場合には、揮発性の高いフルオロアルキルアルコールが生成物と同伴して蒸留されるため、精製操作が困難となるという問題点もみられる。
Rf(CH2)nOH+H(CH2)mOCH=CH2 → Rf(CH2)nOCH=CH2
n:2〜6、m:1〜6
【特許文献1】WO92/05135
【非特許文献1】Macromol. Chem. 第193巻第275〜284頁(1992)
【0003】
また、同様の反応基質を用い、触媒として酢酸水銀Hg(OAc)2を用いた例も報告されているが、収率が50%程度と低いばかりではなく、環境負荷の点からも水銀系触媒の使用は好ましいものではない。
C6F13CH2CH2OH+C2H5OCH=CH2 → C6F13CH2CH2OCH=CH2
【非特許文献2】J. Fluorine Chem. 第44巻第395〜412頁(1989)
【0004】
さらに、パラジウム触媒の存在下に、炭化水素系アルコールR1OH(R1:炭素10〜18のアルキル基)とアルキルビニルエーテルR2OCH=CH2(R2:炭素数1〜4のアルキル基)とを反応させ、所望するアルキルビニルエーテルR1OCH=CH2を合成する方法も提案されている。この反応は、平衡反応の特徴を利用し、反応に伴って生成する原料アルキルビニルエーテル由来の副生成アルコールR2OHを系外に留去することにより反応平衡を偏らせ、収率を向上させている。
【特許文献2】特開2001−114718号公報
【0005】
しかしながら、この反応では、反応系中に存在する原料アルコール、原料ビニルエーテル、生成ビニルエーテル、副生成アルコールの内、平衡を生成側に偏らせるためには、系外に除去される副生成アルコールの沸点が最も低くなければならず、このため生成ビニルエーテルの構造ばかりではなく、原料アルコールや原料ビニルエーテルの構造も大きく制限されることとなり、汎用性の点に欠けるものがある。その上、副生成アルコールを系外に排出させる必要があるため、反応装置や実験操作が煩雑となり、容易にスケールアップすることが難しいという問題点もみられる。
【0006】
この他、イリジウム触媒〔Ir(cod)Cl〕2の存在下で、アルコールROHと酢酸ビニルCH3COOCH=CH2とを反応させ、対応するアルキルビニルエーテルROCH=CH2を合成する方法も報告されているが、用いられるイリジウム触媒が高価であるばかりではなく、トリエチレングリコールに対する収率は63%と低く、アルコール類の酸性度に大きく影響されるものと考えられる。
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 第124巻第1590〜1591頁(2002)
【0007】
こうした事実に加えて、これらの反応例は脂肪族含フッ素アルキルアルコールをビニルエーテル誘導体に変換する事例のみで、含フッ素ヒドロキシポリエーテル、より具体的にはヘキサフルオロプロペンオキシド重合体由来のアルコール等をビニルエーテル誘導体に変換した例は、報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ヘキサフルオロプロペンオキシド重合体由来の含フッ素ポリエーテル基を有し、従ってパーフルオロアルキルビニルエーテルのパーフルオロアルキル基の如く剛直ではなく柔軟性があり、しかも熱的安定性、化学的安定性にすぐれ、良好な光学的性質、界面活性特性をも併せ持つ含フッ素ビニルエーテル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、一般式
RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OCH=CH2 〔I〕
(ここで、Rfは炭素数1以上のポリフルオロアルキル基であり、aは0または1〜30の整数であり、bは1〜10の整数であり、nおよびmは1または2である)で表わされる含フッ素ビニルエーテル化合物によって達成され、このような含フッ素ビニルエーテル化合物は、一般式
RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OH 〔II〕
(ここで、Rfは炭素数1以上のポリフルオロアルキル基であり、aは0または1〜30の整数であり、bは1〜10の整数であり、nおよびmは1または2である)で表わされる含フッ素アルコールと一般式
XCH2CH2OCH=CH2 〔III〕
(ここで、Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である)で表わされるアルキルビニルエーテルとを、パラジウム系触媒の存在下で、脱XCH2CH2OH化反応させることによって製造される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る含フッ化ビニルエーテル化合物は、一般式〔II〕で表わされる含フッ素アルコールと一般式〔III〕で表わされるアルキルビニルエーテルとを脱XCH2CH2OH化反応させることにより得られ、特に脱2-ハロエタノール化反応させた場合には90%以上の反応転化率で目的物を得ることができる。
【0011】
この含フッ化ビニルエーテル化合物は、その重合部位が炭化水素ビニルオキシ基であるため、その重合特性はパーフルオロアルキルビニルエーテル化合物よりも良好であり、このため各種樹脂の架橋剤や改質剤に用いられ、樹脂の耐熱性、耐候性、耐薬品性等の諸特性の向上や改善を可能とする。
【0012】
また、分子中に多数のエーテル結合を有するため、非晶質性で柔軟性に富み、さらにフッ素含有量が多いため低屈折率であるので、ディスプレイ等の反射防止膜や光ファイバーのクラッド材等への利用が可能である。さらには、界面活性特性を生かし、各種表面コーティング剤、各種離型コーティング剤や表面改質剤、撥水撥油剤の形成成分としての利用も図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般式〔I〕で表わされる含フッ素ビニルエーテル化合物としては、次のような化合物が例示される。ここで、ポリフルオロアルキル基Rfは、炭素数が1以上、一般には1〜11のポリフルオロアルキル基、好ましくはパーフルオロアルキル基であり、aは0または1以上の整数、好ましくは1〜30の整数であり、bは1〜10、好ましくは1〜4の整数であり、nおよびmは1または2であり、好ましくはn=2の-CF(CF3)-基が用いられる。
C3F7OCF(CF3)CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF(CF3)CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF(CF3)CH2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7O〔CF(CF3)CF2O〕2CF(CF3)CH2CH2OCH=CH2
C3F7O〔CF(CF3)CF2O〕2CF(CF3)CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF〔(CF3)CF2O〕2CF(CF3)CH2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2OCF2CF2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2OCF2CF2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2OCF2CF2CH2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2O2CF2CF2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2O2CF2CF2CH2CH2CH2OCH=CH2
C3F7OCF2CF2CF2O2CF2CF2CH2CH2CH2CH2OCH=CH2
【0014】
これらの含フッ素ビニルエーテル化合物〔I〕は、一般式〔II〕で表わされる含フッ素アルコールと一般式〔III〕で表わされるアルキルビニルエーテルとを、パラジウム系触媒の存在下で、脱XCH2CH2OH化反応させることにより製造される。
【0015】
一般式〔II〕で表わされる含フッ素アルコールは、C3F6O基が-CF(CF3)CF2O-基の場合には、フッ化セシウム触媒の存在下にヘキサフルオロプロペンオキシドをアニオン重合させ、得られた末端-CF(CF3)COF基を炭酸セシウムおよびヨウ素を用いて-CF(CF3)I基とした後エチレン付加を行ない、-CF(CF3)CH2CH2Iとしてこれを加水分解して-CF(CF3)CH2CH2OH基に変換させることにより得られる。この反応は、ヘキサフルオロプロペンオキサイド2量体に相当するa=0の場合にも適用される。
【非特許文献4】J. Fluorime Chemistry 第65巻第59〜65頁(1993)
【特許文献3】特許第2,603,171号公報
【0016】
また、C3F6O基が-CF2CF2CF2O-基の場合には、フッ化セシウム触媒の存在下に2,2,3,3-テトラフルオロオキセタンをアニオン重合させ、得られた含フッ素ポリエーテル(CH2CF2CF2O)nをフッ素ガスで処理して(CF2CF2CF2O)nとなし、これを上述の-CF(CF3)COF基の場合と同様に処理して、-CF2CF2CF2OCF2CH2CH2OH基に変換させることにより得られる。
【0017】
これらの含フッ素アルコールと反応させるアルキルビニルエーテルとしては、Xがハロゲン原子、好ましくは塩素または臭素である2-ハロエチルビニルエーテルが好んで用いられる。Xがエチル基であるブチルビニルエーテルなどを用いた場合には、反応転化率が約60〜70%に留まるのに対し、2-ハロエチルビニルエーテルを用いた場合には、その反応転化率は90%以上に達する。これは、この脱XCH2CH2OH化反応が可逆反応であり、すぐれた脱離能を有する2-ハロエチルビニルエーテルを用いた場合には、反応の転化率を向上させ、逆反応を抑えるため、反応転化率の著しい向上がもたらされるものと考えられる。アルキルビニルエーテルは、含フッ素アルコールに対して過剰モル、特に好ましくは10倍モル量用いられる。
【0018】
含フッ素アルコールとアルキルビニルエーテルとの間の脱XCH2CH2OH化反応は、パラジウム系触媒の存在下で行われる。パラジウム系触媒としては、(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム、(2,2′-ビピリジル)酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィノ)酢酸パラジウム等が用いられ、特に好ましくは(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウムまたは(2,2′-ビピリジル)酢酸パラジウムが用いられる。これらの触媒は、含フッ素アルコールに対して、0.5モル%以上で用いられ、特に好ましくは0.5モル%〜2.5モル%の間で使用される。
【0019】
反応は無溶媒で行われるが、溶媒を用いても良い。その場合、トルエンやキシレンなどの炭化水素系溶媒やテトラヒドロフランや1,4-ジオキサンなどの炭化水素環状エーテル系溶媒が適量用いられる。
【0020】
また、反応の結果生成した含フツ素ビニルエーテルの重合を抑制するために、アルカリ金属水酸化物を反応系中に添加することは有効である。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物は、用いられる含フッ素アルコールに対し、約0.01重量%から5重量%の間で用いられるが、特に好ましくは0.05重量%から1重量%の間で用いられる。
【0021】
反応温度は特に制限されないが、室温〜80℃の間で行われ、特に好ましくは40℃〜60℃の間で行われる。特に室温以上の温度で反応を行った場合には、加熱の効果は非常に高く、室温で48時間の反応時間が必要だったものが大きく短縮され、8時間で同程度の転化率、収率を得ることが可能となる。
【0022】
未反応のアルキルビニルエーテル、副生成物のアルコールおよび生成物たる含フッ素ビニルエーテル化合物は、分別蒸留により精製され、分子量が大きく高沸点のものは分子蒸留により精製され、重合等の反応に供される。
【実施例】
【0023】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0024】
実施例1
窒素ガス雰囲気下、還流冷却器、温度計および攪拌装置を備えた容量100mlのフラスコ中に、2-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エタン-1-オール(純度98.9GC%)20g(30.2ミリモル)、2-クロロエチルビニルエーテル32.2g(302ミリモル)および(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム0.28g(692ナノモル)を加え、内部温度を50〜55℃に維持するように、5時間加熱攪拌した。
【0025】
なお、(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウムは、酢酸パラジウム3g(13.4ミリモル)のトルエン溶液300mlに、1,10-フェナントロリン2.4g(13.4ミリモル)のトルエン溶液300mlを加え、室温下で攪拌し、茶褐色から橙色に反応液が変色して生じた結晶をロ別、減圧乾燥して、黄色結晶4.6g(収率85.6%)として合成した。
【0026】
5時間加熱攪拌して得られた反応混合物は2層に分離するので、上下層をそれぞれ分離し、19F-NMR、1H-NMRおよびガスクロマトグラフィ-(GC)による測定を行ったところ、下層が目的物の2-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エチルビニルエーテル(純度72.8GC%、収率92.3%)であった。
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2OCH=CH2
【0027】
19F-NMR(アセトン-d6,CFCl3):
-77.86〜-80.67(m,CFCF2O,CF2O,6F)
-79.03(s,CF3CFO,6F)
-80.49(s,CF3CF2,3F)
-78.75(dbr,CF3CFCH2,3F)
-126.37(ddt,CFCH2,1F,JHF=169Hz)
-128.61(s,CF3CF2,2F)
-143.64〜-144.15(m,CF(CF3)CF2O,2F)
1H-NMR(アセトン-d6,TMS):
6.51(dd,OHC=C,1H,JHH=6.79Hz,JHH=14.3Hz)
4.24(dbr,C=CH2,1H,JHH=14.3Hz)
4.07〜3.97(m,CH2CH2O,2H)
3.80(dbr,C=CH2,1H,JHH=6.59Hz)
2.78(dt,CFCH2,2H,JHF=17.4Hz,JHH=6.6Hz)
【0028】
実施例2
窒素ガス雰囲気下、還流冷却器、温度計および攪拌装置を備えた容量100mlのフラスコ中に、3-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)プロパン-1-オール(純度98.9GC%)10g(15.5ミリモル)、2-クロロエチルビニルエーテル15.8g(148ミリモル)、(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム0.13g(312ナノモル)および水酸化カリウム0.01gを加え、内部温度を50〜55℃に維持するように、5時間加熱攪拌した。
【0029】
得られた反応混合物は2層に分離するので、上下層をそれぞれ分離し、19F-NMR、1H-NMRおよびGC測定を行ったところ、下層が目的物の3-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)プロピルビニルエーテル(純度85.3GC%、収率88.0%)であった。
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2CH2OCH=CH2
【0030】
19F-NMR(アセトン-d6,CFCl3):
-77.76〜-80.58(m,CFCF2O,CF2O,6F)
-79.02(s,CF3CFO,6F)
-80.46(s,CF3CFCH2,3F)
-82.17(dd,CF3CF2,3F,JFF=39.3Hz,JFF=8.48Hz)
-126.63(ddt,CFCH2,1F,JHF=119Hz)
-128.60(s,CF3CF2,2F)
-143.64〜-144.18(m,CF(CF3)CF2O,2F)
1H-NMR(アセトン-d6,TMS):
6.50(dd,OHC=C,1H,JHH=6.79Hz,JHH=14.3Hz)
4.22(dd,C=CH2,1H,JHH=14.4Hz)
3.98(t,CH2CH2O,2H,JHH=3.30Hz)
3.80(dbr,C=CH2,1H,JHH=6.59Hz)
2.48(dt,CF3CFCH2,2H,JHF=16.6Hz,JHH=7.9Hz)
1.95(tt,CH2CH2CH2,2H,JHH=16.3Hz)
【0031】
実施例3
窒素ガス雰囲気下、還流冷却器、温度計および攪拌装置を備えた容量100mlのフラスコ中に、2-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エタン-1-オール(純度98.9GC%)20g(30.2ミリモル)、2-クロロエチルビニルエーテル32.2g(302ミリモル)および(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム0.28g(692ナノモル)を加え、室温で48時間加熱攪拌した。
【0032】
得られた反応混合物は2層に分離するので、上下層をそれぞれ分離し、19F-NMR、1H-NMRおよびGC測定を行ったところ、下層が目的物の2-(パ-フルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エチルビニルエーテル(純度65.4GC%、収率68.0%)であった。
【0033】
実施例4
窒素ガス雰囲気下、還流冷却器、温度計および攪拌装置を備えた容量100mlのフラスコ中に、2-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エタン-1-オール(純度98.9GC%)20g(30.2ミリモル)、ブチルビニルエーテル30.2g(302ミリモル)、(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム0.28g(692ナノモル)および水酸化カリウム0.01gを加え、内部温度を50〜55℃に維持するように、5時間加熱攪拌した。
【0034】
得られた反応混合物は2層に分離するので、上下層をそれぞれ分離し、19F-NMR、1H-NMRおよびGC測定を行ったところ、下層が目的物の2-(パーフルオロ-3,6,9-トリオキソ-5,8-ジメチルドデカ-2-イル)エチルビニルエーテル(純度58GC%、収率62.0%)であった。
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2OCH=CH2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OCH=CH2 〔I〕
(ここで、Rfは炭素数1以上のポリフルオロアルキル基であり、aは0または1〜30の整数であり、bは1〜10の整数であり、nおよびmは1または2である)で表わされる含フッ素ビニルエーテル化合物。
【請求項2】
一般式
RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OH 〔II〕
(ここで、Rfは炭素数1以上のポリフルオロアルキル基であり、aは0または1〜30の整数であり、bは1〜10の整数であり、nおよびmは1または2である)で表わされる含フッ素アルコールと一般式
XCH2CH2OCH=CH2 〔III〕
(ここで、Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である)で表わされるアルキルビニルエーテルとを、パラジウム系触媒の存在下で、脱XCH2CH2OH化反応させることを特徴とする、一般式
RfO(C3F6O)a(CnF2n)(CmH2m)bCH2OCH=CH2 〔I〕
(ここで、Rf、a、b、c、nおよびmは前記定義と同じである)で表わされる含フッ素ビニルエーテル化合物の製造法。
【請求項3】
パラジウム系触媒が(1,10-フェナントロリン)酢酸パラジウム、(2,2′-ビピリジル)酢酸パラジウムまたはビス(トリフェニルホスフィノ)酢酸パラジウムである請求項2記載の含フッ素ビニルエーテル化合物の製造法。
【請求項4】
生成含フッ素ビニルエーテル化合物の重合禁止剤としてのアルカリ金属水酸化物の存在下で反応が行われる請求項2記載の含フッ素ビニルエーテル化合物の製造法。

【公開番号】特開2006−1904(P2006−1904A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182129(P2004−182129)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】