説明

含水物質の乾燥装置

【課題】 野菜・豆腐殻・魚類の臓物・汚泥などの含水物質を熱風により確実に連続乾燥することができる含水物質の乾燥装置を実現する。
【解決手段】 横設された円筒状の中空室102と、下端が中空室102に連通する箱筒状の上部中空室107を配設する。上部中空室107内の上部に、熱風の流れを変えるための熱風変流板11を垂直方向に沿って配設する。熱風供給路103を、中空室102の底部付近において先端を中空室102の周面に開口して中空室102の円周の接線方向に沿って配設する。含水物質供給路104を、上部中空室107と熱風供給路103との間において先端を中空室102の周面に開口して突立して配設する。乾燥された含水物質を取り出すための取出口108を上部中空室107の一方の側面に突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含水物質の乾燥装置に関する。具体的には、野菜・豆腐殻・魚類の臓物・汚泥などの含水物質を熱風により確実に連続乾燥することができる含水物質の乾燥装置を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
含水物質の乾燥装置の従来例として、豆腐殻(おから)を乾燥するための豆腐殻乾燥装置を、図4に示し説明する。ここで、図4は、この従来例の構成を示す縦断面図である。
【0003】
図4において、基台101上には、被乾燥物である豆腐殻が内部に供給される、円筒状に形成された中空室102が横設されている。この中空室102の上方には、箱筒状に形成された上部中空室107が配置され、その下端が中空室102に連通するとともに、その一方の側面の上端部には、装置の作動により乾燥された豆腐殻を取り出すための、円筒状に形成された取出口108が突設されている。
【0004】
他方、中空室102の底部付近の周面には、中空室102の円周の接線方向に沿って配設された、図示されてはいない熱風発生源からの熱風を供給するための熱風供給路103の先端が、開口している。
【0005】
また、この熱風供給路103と上部中空室107との間には、豆腐殻を中空室102内に供給するための豆腐殻供給路104が、先端を中空室102の周面に開口して突立するようにして配設され、その先端開口部の上方には、豆腐殻を定量供給するための外気遮断型のロータリ・フィーダ105が介設されている。
【0006】
なお、上部中空室107、熱風供給路103および豆腐殻供給路104の構造は、特に限定されるものではないが、中空室102の筒長とほぼ等幅の方形状断面に形成するのが好ましいとされている。
【0007】
つぎに、以上のように構成された豆腐殻乾燥装置を運転した場合の作動状態について説明する。まず、豆腐殻を中空室102内に供給するに先立って、図示されてはいない熱風発生源からの所要風圧の熱風を、熱風供給路103を介して中空室102内に供給する。
【0008】
供給された熱風は、中空室102の内周面に沿って図面上で時計方向に流れ、これにより中空室102内は加熱される。また、中空室102内に供給された熱風は、上部中空室107内に分流して上昇し、上部中空室107内も加熱される。
【0009】
そこで、ロータリ・フィーダ105を作動させると、豆腐殻が豆腐殻供給路104を介して中空室102内に連続的に供給され、供給された豆腐殻は中空室102の底部に向けて落下する。
【0010】
中空室102内に落下供給された豆腐殻は、熱風供給路103を介して供給される熱風により乾燥されつつ、中空室102の内周面に沿って上昇する。中空室102内を上昇した豆腐殻は、上部中空室107下端の口縁部106に衝突して細かく粉砕され、この粉砕により豆腐殻の伝熱面積が増加する。
【0011】
粉砕され、かつ、熱風により乾燥されて軽量化された豆腐殻は、上部中空室107内に分流する熱風とともに上部中空室107内を上昇し、この上昇中に乾燥がさらに促進される。上部中空室107内を上昇して乾燥され粉粒状となった豆腐殻は、上部中空室107の上端部に到達し、ここに設けられた取出口108を介して熱風に乗って外部に取り出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平1―222752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本願発明者が、図4に示した装置により豆腐殻を乾燥する実験を行ったところ、次のような問題点があることが分かった。実験では、容積が0.018立方メートルの中空室102を使用し、静圧が400mmAqの熱風を中空室102内に供給した。
【0014】
中空室102内に熱風を供給すると、供給された熱風は、中空室102の内周面に沿って図面上で時計方向に流れ、上部中空室107内に分流する。
【0015】
上部中空室107内に分流した熱風は、図5(縦断面図)において破線の矢印で示すように、上部中空室107の上端部に設けられた、乾燥した豆腐殻を取り出すための取出口108に向けて上昇する。
【0016】
したがって、中空室102内に被乾燥物である豆腐殻を供給すると、豆腐殻は、中空室102の内周面に沿って熱風により乾燥されつつ上昇し、上部中空室107下端の口縁部106に衝突して細かく粉砕され、図5で破線の矢印により示した、上部中空室107内を上昇する熱風によって上昇することになる。
【0017】
しかし、このようにして上部中空室107内を上昇し、取出口108を介して取り出された豆腐殻の含水率を測定したところ、豆腐殻は十分には乾燥されてはおらず、「乾燥おから」(乾燥した豆腐殻)として要求される含水率である8%程度には及ばないことが判明した。
【0018】
これに対処するために、上部中空室107内での豆腐殻を乾燥するための時間を長くする、すなわち熱風の上昇速度を低くするために、供給する熱風の風圧を下げると、中空室102内に供給された豆腐殻は、風圧不足で中空室102の内周面に沿って上昇しなくなってしまう。
【0019】
これに対して、中空室102内に供給された豆腐殻を中空室102の内周面に沿って上昇させるために、熱風の風圧は下げずに熱風の温度を上げるとすると、中空室102内に供給された豆腐殻は、中空室102の内周面に固く焦げ付いてしまうことになる。
【0020】
このように、図4に示した従来例によると、豆腐殻が十分には乾燥されず、「乾燥おから」としての所望の含水率を実現することができないという解決すべき課題が、図4に示した従来例にはあった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、上記課題を解決するために、本発明はなされたものである。そのために、本発明では、次のような手段を用いるようにした。横設された円筒状の中空室と、中空室の上方に配置され下端が中空室に連通する箱筒状の上部中空室を配設する。上部中空室内の上部に、熱風の流れを変えるための熱風変流板を垂直方向に沿って配設する。熱風発生源からの熱風を供給するための熱風供給路を、中空室の底部付近において先端を中空室の周面に開口して中空室の円周の接線方向に沿って配設する。含水物質を中空室内に供給するための含水物質供給路を、上部中空室と熱風供給路との間において先端を中空室の周面に開口して突立して配設する。乾燥された含水物質を取り出すための取出口を上部中空室の一方の側面に突設する。以上のような手段を用いるようにした。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるならば、上部中空室内に熱風変流板を設けることにより、熱風によって上部中空室内に進入した含水物質が上部中空室内を移動する距離が、図4に示した従来例よりも長くなる。すなわち、豆腐殻を乾燥するための時間が長くなることから、所要風圧を下げたり、あるいは、熱風の温度を上げることなく、豆腐殻を確実に所望の含水率に乾燥することが可能となる。したがって、本発明によりもたらされる効果は、実用上極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した熱風変流板の構成を示すための部分断面図である。
【図3】図1に示した上部中空室内での熱風の流れの様子を説明するための説明図である。
【図4】従来例の構成を示す縦断面図である。
【図5】図4に示した上部中空室内での熱風の流れの様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による含水物質の乾燥装置では、円筒状の中空室を横設するとともに、中空室の上方に配置され下端が中空室に連通する箱筒状の上部中空室を配設する。上部中空室内の上部に、熱風の流れを変えるための熱風変流板を垂直方向に沿って配設する。熱風発生源からの熱風を供給するための熱風供給路を、中空室の底部付近において先端を中空室の周面に開口して中空室の円周の接線方向に沿って配設する。含水物質を中空室内に供給するための含水物質供給路を、上部中空室と熱風供給路との間において先端を中空室の周面に開口して突立して配設する。乾燥された含水物質を取り出すための取出口を上部中空室の一方の側面に突設する。以下、実施例により、詳しく説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の一実施例の構成を、図1に示し説明する。ここで、図1は、本実施例における含水物質の乾燥装置の縦断面図であり、図4における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付している(図1の含水物質供給路と図4の豆腐殻供給路は、構成が同一であるので、同一の符号を付している。)。
【0026】
図1において、本発明による含水物質の乾燥装置の構成が、図4に示した従来例の構成と異なるところは、上部中空室107内の上部に、中空室102内に供給され、上部中空室107内に進入して流れる熱風の流れを変えるための熱風変流板11が、垂直方向に沿って設けられていることである。その他の構成は、図4に示した従来例と同じである。
【0027】
この熱風変流板11は、中空室102と上部中空室が連通するための、中空室102上部の開口よりも、上部中空室107上端部に設けられた取出口108側に近付いた位置、すなわち、熱風変流板11の下端を下方に延長した線が、上部中空室107の斜面壁に当たる位置に設ける。
【0028】
また、熱風変流板11は、図2(部分断面図)に示すように、上部中空室107の一方の内側壁から他方の内側壁にわたる幅の正方形板に形成されている。
【0029】
このような熱風変流板11を設けることにより、中空室102内に供給され、上部中空室107内に分流した熱風は、図3(縦断面図)において破線の矢印で示すような流れとなることになる。
【0030】
そこで、以上のような構成による乾燥装置を用いて、含水物質として例えば豆腐殻を乾燥する場合について説明する。中空室102の容積が、0.018立方メートルであるとすると、静圧が400mmAqの熱風を中空室102内に供給する。
【0031】
供給された熱風により中空室102内が十分に加熱されたならば、図示されてはいないホッパー内に収容された豆腐殻を、ロータリ・フィーダ105の作動の下に、中空室102内に供給する。
【0032】
中空室102内に供給された豆腐殻は、中空室102の内周面に沿って熱風により乾燥されつつ上昇し、上部中空室107下端の口縁部106に衝突して細かく粉砕される。粉砕された豆腐殻は、上部中空室107内に分流する熱風とともに上部中空室107内に進入する。
【0033】
上部中空室107内に進入した豆腐殻は、図3で破線の矢印で示した熱風の流れに乗って上部中空室107内の上部を移動した後、上部中空室107の上端部に設けられた取出口108を介して乾燥装置より排出されることになる。
【0034】
このように、本発明による乾燥装置によれば、上部中空室107内に進入した豆腐殻が上部中空室107内を移動する距離が、図4に示した従来例よりも長くなり、したがって、豆腐殻を乾燥するための時間が長くなる。その結果、所要風圧を下げたり、あるいは、熱風の温度を上げることなく、豆腐殻を確実に所望の含水率に乾燥することが可能となる。
【0035】
以上においては、熱風変流板11を正方形板に形成した場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、長方形板に形成する場合についても、本発明は適用され得るものである。
【符号の説明】
【0036】
11 熱風変流板
101 基台
102 中空室
103 熱風供給路
104 豆腐殻供給路
105 ロータリ・フィーダ
106 口縁部
107 上部中空室
108 取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横設された円筒状の中空室(102)と、
前記中空室の上方に配置され下端が前記中空室に連通するとともに、供給された熱風の流れを変えるための熱風変流板(11)が内部の上部に垂直方向に沿って配設された箱筒状の上部中空室(107)と、
前記中空室の底部付近において先端を前記中空室の周面に開口して前記中空室の円周の接線方向に沿って配設された、熱風発生源からの熱風を供給するための熱風供給路(103)と、
前記上部中空室と前記熱風供給路との間において先端を前記中空室の周面に開口して突立して配設された、含水物質を前記中空室内に供給するための含水物質供給路(104)と、
前記上部中空室の一方の側面に突設された、乾燥された前記含水物質を取り出すための取出口(108)と
を具備した含水物質の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112299(P2011−112299A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269985(P2009−269985)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(507309518)株式会社転生 (1)
【Fターム(参考)】