説明

含窒素化合物の製造方法

【課題】 含窒素複素環化合物を工業的に効率よく製造するための方法を提供する。
【解決手段】 ヨウ化物塩と次亜ハロゲン酸塩またはエステルの存在下で、遷移金属化合物の非存在下、アミドとオレフィンの反応により、アジリジン化合物,及びオキサゾリン化合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬などのファインケミカル中間体として有用な含窒素複素環の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミド類とオレフィンを反応させ、含窒素複素環化合物を合成する方法としては、いくつかの手法が知られている。
【0003】
例えばスルホニルアミド誘導体を窒素源としてアジリジンを合成する手法として、N-(p-トルイルスルホニル)イミノヨージナン(PhI=NTs)を用いる方法が、非特許文献1〜3に、さらにこの試薬を不斉合成に適用した事例として、非特許文献4〜7に開示されている。また、スルホニルアジドを用いる方法が非特許文献8、9に、N-ハロスルホニウムアミド塩を用いる方法が非特許文献10〜14に、ニトリド錯体を用いる方法が非特許文献15〜17に各々開示されている。しかし、これらの方法では、窒素源として、化学的に必ずしも安定ではなく、かつ工業的にも入手が困難な化合物を用いているという問題点がある。
【0004】
スルホンアミドを直接オレフィンと反応させる事例としては、非特許文献18〜20を示すことができる。しかし、これらの事例では、酸化剤共存下、触媒量、もしくは等量の遷移金属化合物の使用が必須である。
【0005】
非特許文献21〜24には、クロラミンTを窒素源とし、ハロゲン化合物を触媒とする、N-スルホニルアジリジンの合成法が記載されている。しかし、これらの方法でも、必ずしも工業的に入手が容易ではないN-ハロスルホニウムアミド塩を出発原料としているという点に課題が残る。
【0006】
一方、カルボアミド誘導体を窒素源としてアジリジンを得る方法として、非特許文献25を例示することができる。さらに、カルボアミド誘導体を窒素源としてオキサゾリンを合成する手法として、非特許文献26が開示されている。しかし、これらの方法では、不安定かつ工業的にも入手が困難なN-ハロアミドを用いるという問題点がある。
【非特許文献1】ジャーナル オブ ケミカル ソサエティー ケミカル コミニュケ−ションズ, 1984年, 1161頁
【非特許文献2】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 1994年, 116巻, 2742頁
【非特許文献3】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 2003年, 125巻, 16202頁
【非特許文献4】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 1991年, 113巻, 726頁
【非特許文献5】テトラヘドロンレターズ, 1991年, 32巻, 7373頁
【非特許文献6】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 1993年, 115巻, 5326頁
【非特許文献7】テトラヘドロン, 2001年, 57巻, 8407頁
【非特許文献8】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 1995年, 117巻, 5889頁
【非特許文献9】ケミストリーレターズ, 2003年, 353頁
【非特許文献10】テトラヘドロンレターズ, 1998年, 39巻, 309頁
【非特許文献11】ジャーナル オブ オーガニックケミストリー, 1998年, 63巻, 9569頁
【非特許文献12】ヘテロサイクルズ, 2003年, 60巻, 289頁
【非特許文献13】ジャーナル オブ オーガニックケミストリー, 2001年, 66巻, 30頁
【非特許文献14】オーガニックレターズ, 2004年, 6巻, 1907頁
【非特許文献15】アンゲバンテヘミー インターナショナルエディション, 1998年, 37巻, 3392頁
【非特許文献16】テトラヘドロンレターズ, 2000年, 41巻, 7089頁
【非特許文献17】ジャーナル オブ オーガニックケミストリー, 2002年, 67巻, 2101頁
【非特許文献18】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 2001年, 123巻, 7707頁
【非特許文献19】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 2002年, 124巻, 13672頁
【非特許文献20】オーガニックレターズ, 2004年, 6巻, 4109頁
【非特許文献21】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー, 1998年, 120巻, 6844頁
【非特許文献22】テトラヘドロン, 1998年, 54巻, 13485頁
【非特許文献23】ジャーナル オブ ケミカル ソサエティー パーキン トランザクション 1, 2001年, 3186頁
【非特許文献24】アンゲバンテヘミー インターナショナルエディション, 2004年, 43巻, 79頁
【非特許文献25】ジャーナル オブ オルガノメタリックケミストリー, 268巻, 1984年, C29頁
【非特許文献26】カナディアン ジャーナル オブ ケミストリー, 55巻, 1977年, 700頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、オレフィンにアミド窒素を導入することにより、含窒素複素環化合物を工業的に効率よく製造するための方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記方法で得た含窒素複素環化合物を、容易な方法で化学変換し、医農薬中間体等として有用なアミノアルコールを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討の結果、ヨウ化物塩共存下、次亜ハロゲン酸塩またはエステルを用い、入手又は調製が容易であるスルホンアミドまたはカルボアミドとオレフィンとから、対応する含窒素複素環化合物を工業的に効率よく製造する方法を見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、一つの課題の解決手段として、
ヨウ化物塩と次亜ハロゲン酸塩またはエステルの存在下で、遷移金属化合物の非存在下、下記式(1)
【0011】
【化6】

【0012】
(式中、R1は、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示し、Aは、炭素又はS=O基を示す。)
で表されるアミドと、下記式(2)
【0013】
【化7】

【0014】
(式中、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R2、R3、R4は、互いに結合して環を形成してもよい。)
で表されるオレフィンを反応させ、下記式(3)
【0015】
【化8】

【0016】
(式中、AはS=O基、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
または下記式(4)
【0017】
【化9】

【0018】
(式中、Aは炭素、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
で表される化合物を得る、含窒素複素環化合物の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、他の課題の解決手段として、請求項1記載の方法で得られた式(4)の化合物を加水分解する、下記式(5)
【0020】
【化10】

【0021】
(式中、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
で表されるアミノアルコールの製造方法
で表される化合物を得る、アミノアルコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、入手又は調製が容易であるスルホンアミドまたはカルボアミドとオレフィンとから、遷移金属化合物を使用せずに、対応する含窒素複素環化合物を工業的に効率よく製造することができる。また、この方法により得た含窒素複素環化合物がオキサゾリン誘導体である場合、加水分解により、医農薬中間体等として有用なアミノアルコールを高い効率で得ることができる。さらに、本発明の方法は、汎用性が高く、取扱い易い原料を用いるため、工業的に極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<含窒素複素環化合物の製造方法>
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、ヨウ化物塩と次亜ハロゲン酸塩またはエステルの存在下で、遷移金属化合物の非存在下(非特許文献18〜20のように遷移金属化合物を使用しない)で、式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンを反応させる。
【0024】
式(1)で表されるアミドにおいて、R1は、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。
【0025】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(C1−6アルキル基など);ビニル基、アリル基などのアルケニル基(C2−6アルケニル基など);プロピニル基などのアルキニル基(C2−6アルキニル基など);シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;アルキル基で置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基などのアリール基(C6−14アリール基など);ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基などのアラルキル基(C7−19アラルキル基など);2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基などの芳香族性又は非芳香族性の複素環基(縮合複素環基を含む)が挙げられる。
【0026】
好ましいR1としては、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のほか、アリール基が挙げられ、特に炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基が好ましい。
【0027】
前記式(2)で表されるオレフィンにおいて、R2、R3、R4は、水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。これらの置換基としては、Rと同じものが挙げられる。
【0028】
2、R3またはR4は、互いに結合して、環を形成してもよい。環の員数は、例えば3〜15員程度である。このような環として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゾシクロヘキサン環などが挙げられる。
【0029】
ヨウ化物塩には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩(錯塩を含む)が含まれる。これらの塩は、ヨウ化水素と該当する塩基との中和反応により、本発明の反応系中で発生させて反応に供することもできる。ヨウ化物塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムなどを例示することができる。
【0030】
次亜ハロゲン酸塩またはエステルとしては、次亜塩素酸tert-ブチル、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどを例示することができる。これらの次亜塩素酸エステルは、次亜塩素酸またはその塩とアルコールとの反応により、本発明の反応系中で発生させて反応に供することもできる。
【0031】
式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンの反応において、式(1)で表されるアミドの使用量は、式(2)で表されるオレフィン1モルに対して、0.3〜1.5モルが好ましい。ヨウ化物塩の使用量は、式(2)で表されるオレフィン1モルに対して、0.8〜2.0モルが好ましい。次亜塩素酸エステルまたは塩の使用量は、式(2)で表されるオレフィン1モルに対して、0.8〜2.0モルが好ましい。
【0032】
式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンの反応は、溶媒の存在下で行ってもよく、非存在下で行ってもよい。溶媒は、反応の進行を阻害せず、且つ反応成分を溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、スルホン類(例えば、スルホランなど)、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタンなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン含有化合物(例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)が使用できる。
【0033】
溶媒の量は特に限定されず、反応成分(式(2)のオレフィンなど)が溶解できればよく、例えば、式(2)で表されるオレフィン1質量部に対して、1〜1,000質量部程度の範囲から選択できる。
【0034】
式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンとの反応は、通常、常圧〜500気圧(50MPa)、好ましくは常圧〜100気圧(10MPa)、さらに好ましくは常圧〜10気圧(1MPa)で行われる。また、装置又は操作上の点から、必要であれば減圧下で反応を行ってもよい。
【0035】
式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンとの反応温度は、採用する反応圧力下において、反応系の融点以上で、沸点以下であれば特に制限されず、例えば−30℃〜200℃、好ましくは−10℃〜100℃であり、室温(−5℃〜40℃)の穏和な条件であっても反応が効率良く進行される。
【0036】
式(1)で表されるアミドと式(2)で表されるオレフィンとの反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式などの慣用の何れの方法も適用できる。
【0037】
反応終了後、必要に応じて、濾過、濃縮、蒸留、抽出、イオン交換、電気透析、晶析、再結晶、吸着、膜分離、遠心分離、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィーなど)などの慣用の分離精製手段やこれらの組み合わせにより分離精製することもできる。
【0038】
こうして得られる式(3)又は式(4)で表される含窒素複素環化合物は、医薬、農薬などのファインケミカルにおける中間体やポリアミド原料等として有用である。
【0039】
<アミノアルコールの製造方法>
本発明の製造方法で得られた式(4)の含窒素複素環化合物を加水分解することにより、式(5)で表されるアミノアルコールを製造する。式(5)のアミノアルコールにおいて、R1、R2、R3、R4は前記と同じである。
【0040】
加水分解は、既知の方法、例えば酸加水分解によって実施することができる。用いる酸には特に制限はないが、ジャーナル オブ オーガニックケミストリー 2002年,67巻,2101頁に記載された、塩酸による加水分解法を適用することができる。
【0041】
塩酸の濃度には特に制限はなく、好ましくは1規定から飽和濃度、より好ましくは6規定から12規定の塩酸を用いることができる。
【0042】
溶媒は、必要に応じて用いればよく、溶媒を用いる場合は、塩酸と混和できる溶媒でああればよく、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン類、水を挙げることができる。
【0043】
反応温度は特に制限はないが、好ましくは−5℃から系の加熱環流温度、より好ましくは40℃から加熱環流温度である。
【0044】
加水分解により生成したアミノアルコールは、用いた酸の塩(塩酸の場合は塩酸塩)として単離することもできるし、中和処理をすることでフリー体として得ることもできる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1(1-トシル-2-フェニルアジリジンの合成)
二又反応管に、トシルアミド (86 mg, 0.50 mmol)、ヨウ化ナトリウム (225 mg, 1.5 mmol) を加え、減圧乾燥後、窒素置換した。アセトニトリル (3 mL)、スチレン (105 mg, 1.0 mmol) を入れた後、次亜塩素酸tert-ブチル (163 mg, 1.5 mmol) を加えて、室温で撹拌した。5時間後、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.3 M, 10 mL)を加えて反応を停止し、濃縮した。その後、水(10 mL)とCH2Cl2(10 mL × 5)を加えて分液処理を行い、得られた有機層をMgSO4で脱水し、濃縮した。粗収量202.0 mg。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane / EtOAc = 9 : 1) により分離を行い、1-トシル-2-フェニルアジリジンを95%の収率で得た。
【0047】
1H−NMR(CDCl3):2.38(d,1H,J=4.5Hz),2.43(s,3H),2.98(d,1H,J=7.3 Hz),3.77(dd,1H,J=4.5,7.3 Hz),7.19-7.35(m,7H),7.87(d,2H,J=8.2Hz)
実施例2(2,5-ジフェニルオキサゾリンの合成)
二又反応管に、ベンズアミド (61 mg, 0.50 mmol)、ヨウ化ナトリウム (75 mg, 0.50 mmol)、炭酸カリウム (69 mg, 0.50 mmol) を加え、減圧乾燥後、窒素置換を行った。アセトニトリル (3 mL)、スチレン (104 mg, 1.0 mmol) を入れた後、次亜塩素酸tert-ブチル (54 mg, 0.50 mmol) を加えて、室温で撹拌した。TLCによる反応追跡を行い、変化が見られなくなったため、6時間後、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.3 M, 10 mL)を加えて反応を停止し、濃縮した。その後、水(10 mL)とEt2O(10 mL × 5)を加えて分液処理を行い、得られた有機層をMgSO4で脱水し、濃縮した。粗収量64.1 mg。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane / EtOAc = 9 : 1) により分離を行い、2,4-ジフェニルオキサゾリンを22%の収率で得た。
【0048】
実施例3(1-トシル-cis-2-メチル-3-n-ペンチルアジリジンの合成)
二又反応管に、トシルアミド (86 mg, 0.500 mmol)、ヨウ化ナトリウム (150 mg, 1.0 mmol) を加え、減圧乾燥後、窒素置換した。アセトニトリル (3 mL)、cis-2-オクテン (111 mg, 1.0 mmol) を入れた後、次亜塩素酸tert-ブチル (107 mg, 1.0 mmol) を加えて、室温で撹拌した。24時間後、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.3 M, 10 mL)を加えて反応を停止し、濃縮した。その後、水(10 mL)とCH2Cl2(10 mL × 5)を加えて分液処理を行い、得られた有機層をMgSO4で脱水し、濃縮した。粗収量178.5 mg。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane / EtOAc = 9 : 1) により分離を行い、1-トシル- cis-2-メチル-3-n-ペンチルアジリジンを82%の収率で得た。
【0049】
実施例4(1-トシル-trans-2-メチル-3-n-ペンチルアジリジンの合成)
cis-2-オクテン に変えて、trans-2-オクテン (111 mg, 1.0 mmol)を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行い、1-トシル- trans-2-メチル-3-n-ペンチルアジリジンを63%の収率で得た。
【0050】
実施例5(1-トシル-2-n-ヘキシルアジリジンの合成)
スチレンに変えて、1-オクテン (111 mg, 1.0 mmol)を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行い、1-トシル-2-n-ヘキシルアジリジンを77%の収率で得た。
【0051】
実施例6(1-トシル-1-アザ-ビシクロ[1,4,0]ヘプタンの合成)
スチレンに変えて、シクロヘキセン(82 mg, 1.0 mmol)を用い、ヨウ化ナトリウム (150 mg, 1.0 mmol)、次亜塩素酸tert-ブチル(109 mg, 1.0 mmol) を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行い、1-トシル1-アザ-ビシクロ[1,4,0]ヘプタンを58%の収率で得た。
【0052】
実施例7(1-トシル-4,5-ベンゾ-1-アザ-ビシクロ[1,4,0]ヘプタンの合成)
スチレンに変えて、1,2-ジヒドロナフタレン (130 mg, 1.0 mmol)を用い、反応時間を0.5時間とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、1-トシル-4,5-ベンゾ-1-アザ-ビシクロ[1,4,0]ヘプタンを76%の収率で得た。
【0053】
実施例8(1-トシル-2-メチル-2-フェニルアジリジンの合成)
スチレンに変えて、1-メチルスチレン (190 mg, 1.0 mmol)を用い、反応時間を2時間とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、1-トシル-2-メチル-2-フェニルアジリジンを52%の収率で得た。
【0054】
実施例9(1-(2-ニトロフェニル)スルホニル-2-フェニルアジリジンの合成)
トシルアミドに変えて、2-ニトロフェニルスルホニルアミド(101 mg, 0.50 mmol)を用い、ヨウ化ナトリウム(150 mg, 1.0 mmol)、次亜塩素酸tert-ブチル(109 mg, 1.0 mmol)として、反応時間を12時間とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、1-(2-ニトロフェニル)スルホニル-2-フェニルアジリジンを66%の収率で得た。
【0055】
実施例10〔1-(2-(トリメチルシリル)エチル)スルホニル-2-フェニルアジリジンの合成〕
トシルアミドに変えて、(2-(トリメチルシリル)エチル)スルホニルアミド(91 mg, 0.50 mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行い、1-(2-(トリメチルシリル)エチル)スルホニル-2-フェニルアジリジンを87%の収率で得た。
【0056】
実施例11(テトラヒドロフラン溶媒の使用)
溶媒として、アセトニトリルに変えて、テトラヒドロフラン3 mLを用いた以外は、実施例1と同様に反応をおこない、1-トシル-2-フェニルアジリジンを32%の収率で得た。
【0057】
実施例12(メタノ−ル溶媒の使用)
溶媒として、アセトニトリルに変えて、メタノール3 mLを用いた以外は、実施例1と同様に反応をおこない、1-トシル-2-フェニルアジリジンを19%の収率で得た。
【0058】
実施例13(塩化メチレン溶媒の使用)
溶媒として、アセトニトリルに変えて、塩化メチレン3 mLを用いた以外は、実施例1と同様に反応をおこない、1-トシル-2-フェニルアジリジンを64%の収率で得た。
【0059】
実施例14(ベンゼン溶媒の使用)
溶媒として、アセトニトリルに変えて、ベンゼン3 mLを用いた以外は、実施例1と同様に反応をおこない、1-トシル-2-フェニルアジリジンを66%の収率で得た。
【0060】
実施例15(アミノアルコールの製造)
4−メチル2,5−ジフェニル−2−オキサゾリン75.5mgを、12N塩酸2.4mLに溶解し、加熱環流下30時間攪拌した。室温まで放冷後、反応混合物をろ過し、ろ液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mLを添加して、溶液を得た。この溶液を、10mLの塩化メチレンで5回抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。抽出液をろ過して無水硫酸ナトリウムを除き、ろ液を濃縮することにより、目的とするアミノアルコールである2−アミノ−1−フェニルプロパノール44.7mgを得た。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化物塩と次亜ハロゲン酸塩またはエステルの存在下で、遷移金属化合物の非存在下、下記式(1)
【化1】

(式中、R1は、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示し、Aは、炭素又はS=O基を示す。)
で表されるアミドと、下記式(2)
【化2】

(式中、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R2、R3、R4は、互いに結合して環を形成してもよい。)
で表されるオレフィンを反応させ、下記式(3)
【化3】

(式中、AはS=O基、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
または下記式(4)
【化4】

(式中、Aは炭素、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
で表される化合物を得る、含窒素複素環化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法で得られた式(4)の化合物を加水分解する、下記式(5)
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)
で表されるアミノアルコールの製造方法。

【公開番号】特開2007−55958(P2007−55958A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245185(P2005−245185)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第85春季年会 講演予稿集 2」に発表
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】