説明

吸収されにくい極性薬物の経口用製剤

極性薬物の経口用医薬組成物が開示されている。組成物は、実質的に(a)高い親水性及び荷電イオンのために脂質膜を通過して吸収されにくい、生物学的利用率が30%未満の極性活性物質の1種以上;(b)水溶液で塩基性を示し、前記極性活性物質とイオン結合する、アミノ酸又はポリオール構造を有する有機アルカリ化剤の1種以上;及び(c)4ないし18のHLB値を有し、C6−18の脂肪酸構造を有する界面活性剤の1種以上からなる。または、この組成物は、実質的に、(d)有機アルカリ化剤及び界面活性剤に代えて有機アルカリ化剤及び界面活性剤の両方の特性を有する有機アルカリ化剤の1種以上からなる。この組成物は、極性活性物質が胃腸管の膜を透過すること及び注射剤を経口投与形態に置き換えることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極性薬物の経口吸収に適した医薬組成物に係り、さらに詳細には、脂質膜を殆ど通過できない、電荷を有して極性が高い活性物質の経口吸収に適した新規な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今のところ、世界的に開発中の薬物中には難溶性(非極性)で薬物の経口吸収が難しい薬物がある一方、極性が高すぎて脂質膜を殆ど透過できなくて経口吸収されない薬物もある。このように極性が高いかまたは水溶液中でのイオン化が大きい薬物の例としては注射剤用抗生剤及び抗癌剤、ペプチド及びタンパク質からなる薬物が含まれている。これら薬剤の多くは今までに経口吸収用に製剤化されていない。
【0003】
極性が大きい薬物は、主な吸収機作である、胃腸管の脂質膜を介する自由拡散及び透過が殆どなされないので、例外なく静脈内、筋肉及び皮下注射によって投与されるものとして認識されてきた。一部の薬物は、極性が高くて脂質膜を通過できないにもかかわらず、生体膜に特異的なジペプチド輸送体のような、輸送体により吸収される。しかしながら、殆んどの極性の高い薬物は脂質膜を通過する能力が非常に限られている。従って、本発明らは極性薬物の経口用製剤の開発を目的として鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは極性を減少させた疎水性の粒子を任意に形成し、この疎水性粒子を胃腸管に受動拡散分配できる医薬組成物を設計した。
【0004】
難溶性薬物の経口吸収を向上させるための最近の研究は、経口吸収率を高めるために難溶性薬物の溶解度を増加させることに絞られている。これに関連して、ドイツ特許第4,003,844号及びアメリカ特許第3,882,243号を含む、特許文献に水に難溶性又は不溶性の活性物質の溶解性を増加するために界面活性剤を使用することが記載されている。しかし、本発明で用いる活性物質は極性で比較的親水性の物質で、1.5以下、望ましくは1以下の分配係数(log p)を有するという点でこれら先行技術は本発明とは区別される。
【0005】
一方、アメリカ公開特許第2002−0015730号、ヨーロッパ特許第230,332号、韓国公開特許第2001−0042083号、韓国登録特許第103209号、国際公開特許第00/25,598号などは、自体が優れた経口吸収を有する薬物の放出特性を変化させるための製剤設計を開示している。これら先行技術によれば、構造上に脂肪酸を含むオイル又は界面活性剤を投与形態からの制御放出のために、これらの薬剤に添加している。すなわち、これら先行技術の目的は、経口吸収率の上昇とは関係なく、製剤から活性物質の放出速度を調節することにある。従って、本発明はその目的という点で先行技術から区別される。
【0006】
また、ペプチド薬物のような極性薬物に有機酸又は脂肪酸構造を有する界面活性剤を添加して経口吸収率を増加させる技術が、アメリカ特許第5,929,027号、アメリカ特許第5,665,711号、アメリカ特許第5,318,781号、アメリカ特許第4,397,951号、国際公開特許第94/25062号、韓国登録特許第026,778号などに記載されている。直腸又は膣、鼻腔投与を促進するために、シュガーエステルのような界面活性剤を極性薬物に添加する技術が、ヨーロッパ特許第983,769号、ヨーロッパ特許第702,958号、韓国公開特許第2001−0006361号、韓国登録特許第020,298号などに記載されている。これら先行技術は、脂肪酸構造を有する界面活性剤をペプチドのような極性薬物の脂質膜透過率を増加させるために使用するという点において本発明の組成物と類似している。しかし、これら先行技術ではただ脂肪酸構造を有する界面活性剤は単に薬物の吸収を増加させるために添加されている。これらの先行技術とは異なり、極性薬物を含有する相対的疏水性結合体(粒子)の形成が本発明の核心技術として記載されている。先行技術はこの核心技術を述べていない。具体的には、有機アルカリ化剤を極性薬物に結合して、電荷が中和された疏水性結合体を形成することにより脂質膜通過に極めて有利な条件を提供するという点において先行技術とは明らかに区分される。胃腸管の生体膜は燐脂質の二重膜構造を有している。従って、生体膜に酵素が存在している限り、極性薬物は脂質膜を通過しない。極性薬物は、極性薬物の電荷のために容易に脂質膜を通過できない。従って、脂質膜吸収に不利な電荷を遮蔽し、極性を減少させ、そして極性薬物の疏水性を相対的に増加させることにより脂質膜を通じた極性薬物の受動拡散を誘導する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の極性の高い活性物質は胃腸管の脂質膜通過が不可能なので、これらは殆ど注射によってのみ投与されている。従って、本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、極性の高い活性物質の経口吸収に適した新規な医薬組成物を提供することである。具体的には、この医薬組成物は、脂質膜の通過が殆ど不可能な極性が高い活性物質、極性活性物質の電荷を中和して極性を減少させる有機アルカリ化剤、及び脂肪酸構造を有する界面活性剤を含有してなる。必要により、有機アルカリ化剤と界面活性剤の代わりに、有機アルカリ化剤と界面活性剤の特性を共に有する他のアルカリ化剤を経口吸収率を増加するために用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した本発明の目的を達成するために、(a)高い親水性及び荷電イオンのために脂質膜を通過して吸収されにくい、生物学的利用率が30%未満の極性活性物質の1種以上;(b)水溶液で塩基性を示し、前記極性活性物質とイオン結合する、アミノ酸又はポリオール構造を有する有機アルカリ化剤の1種以上;及び(c)4ないし18のHLB値を有し、C6−18の脂肪酸構造を有する界面活性剤の1種以上;を実質的に含有することよりなる、極性活性物質の経口吸収用医薬組成物が提供される。
【0009】
必要により、有機アルカリ化剤及び界面活性剤の代わりに、(d)有機アルカリ化剤及び界面活性剤の両方の特性を有する有機アルカリ化剤の1種以上を用いることができる。(d)のアルカリ化剤は、水溶液でアルカリ性を示し、そして極性活性物質とイオン結合する。(d)のアルカリ化剤は、脂肪酸エステル構造を有するものから選ばれる。
【0010】
本発明によれば、極性活性物質(薬物)の陰イオン部位は有機アルカリ化剤の陽イオン部位とイオン結合して電荷を中和し、相対的に疏水性の結合体を形成する。このように形成された疏水性結合体を脂肪酸構造を有する界面活性剤と結合して、薬物を脂質膜を通して輸送されるようにする。
【0011】
具体的に、本発明によれば、活性物質の極性が減少し、活性物質の電荷が中和され、そして活性物質の自由拡散及び分配が誘導され、それによって活性物質の脂質膜を介する非特異的な吸収の顕著な増加が達成される。従って、極性が高いために脂質膜を殆ど通過できない、約1.5以下、望ましくは約1以下の分配係数(log p)を有する活性物質を経口で吸収できる。この分配係数(log p)は下記の方法によって算出できる。最初に、薬物をオクタノールと水の1:1混合液に溶解する。相が分離された時、各相に溶解された薬物の濃度を測定する。測定された濃度の相対値の対数を得て、薬物の分配係数(log p)を算出する。これは以下の式1に示される。
【0012】
【数1】

【0013】
octanol: オクタノール層に溶解されている薬物の濃度
water: 水層に溶解されている薬物の濃度
log pの値が大きいほど薬物の疏水性(脂溶性)が高い。log pの値が低いほど薬物の親水性が高い。当業界によく知られているように、全ての物質は実験的にLog P値で表すことができる。
【0014】
本発明は次の2つの核心技術の観点から説明できる。一番目の核心技術は活性物質(薬物)の陰イオン部位が有機アルカリ化剤の陽イオン部位とイオン結合することである。従って、活性物質の電荷が中和されて活性物質と有機アルカリ化剤よりなる、相対的に疏水性の単位が形成される。この疎水性単位は互いに凝集して相対的に疏水性の結合体(これは水相(外相)中で熱力学的に安定な形態である)を形成する。疏水性単位及び疎水性結合体が模式的に図1に示されている。図1によれば、疏水性結合体は相対的に減少した水溶性及び極性を有するので、脂質膜を通じた自由拡散及び分配を与えるために有利な条件を提供する。
【0015】
二番目の核心技術は、脂肪酸構造を有する界面活性剤を疏水性結合体に添加して薬物を脂質膜を通して輸送するという特徴を有する。当業者ははナノ単位の疏水性結合体は薬剤の経口吸収が可能であると容易に推測できる。実際は、この疎水性結合体は薬剤の経口吸収に全く役立たない。この問題を解決するために、脂肪酸構造を有する界面活性剤を疏水性結合体に添加して薬物を脂質膜を通して輸送する。図1に示したように、界面活性剤は疏水性の脂肪酸部位と非イオン性の親水性部分を有するので、結合体内部に形成されたイオン結合は妨害せずに、結合体と脂質膜との間の界面活性を増加させ、そして薬物の脂質膜を通る経口吸収を誘導する。また、界面活性剤は疏水性結合体を小さくしそして安定化させるので、薬物の生体膜通過を有利にする条件を提供する。
【0016】
結局、この二つの核心技術の組合わせは、経口吸収が不可能な極性活性物質の経口吸収率を画期的に増加させことを可能にし、これは高附加価値技術を創生する。同時に、本発明は注射剤使用の不便さを解消して、患者に便利な使用を保証する。
【0017】
本発明の組成物は極性活性物質と有機アルカリ化部位を有する機能性物質からなる結合体、及び脂肪酸を有する界面活性剤部位を実質的に含有する。必要により、本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含有することができる。
【0018】
前記極性活性物質は高い親水性、脂溶性に比べて高い水溶性のために、吸収が困難である。ここで用いられている「極性活性物質」という語は、生物学的利用率30%未満、望ましくは生物学的利用率10%未満の薬物を意味する。極性活性物質を水に溶解すると、1以上の陰イオン含有している。そして、この極性活性物質は1.5以下の分配係数(Log P)を有し、オイルに比べて水に対する高い親和性を有する。このような極性活性物質は水溶性抗生物質、抗癌剤、ペプチドからなる薬物、タンパク質からなる薬物及びポリサカライドからなる薬物を包含する。極性活性物質の具体的な例は、セファロリジン、セフチオフル(ceftiofur)、セフィキシム、セフェピム、セフォぺラゾン、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、モキサラクタム、ゲンタマイシン、アズトレオナム、アミカシン、イセパマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、テイコプラニン、ポリミキシン−B、バシトラシン、へパリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン、インスリンなどである。一方、アンピシリン、アモキシシリン、セファレキシン及びセファクロールのような活性物質は水溶性であり、そして水にに溶解すると1以上の陰イオンを含有するが、胃腸管の脂質膜に存在するペプチド輸送体(PepT1、PepT2)により特異的に吸収されることが知られている。従って、本発明における活性物質を、極性で相対的に親水性であるのに特異的輸送方法によって経口でよく吸収される薬物ではなく、相対的に高い親水性により剤型が注射剤だけである活性物質に限定する。
【0019】
無機アルカリ化剤とは違って、本発明で用いられる有機アルカリ化剤は1以上の陽イオン(カチオン)を含有しているので、活性物質とイオン結合することができる。付随して、この有機アルカリ化剤は分子構造内に部分的な疏水性部位又は非イオン性親水性部位を有している。従って、活性物質と本発明の有機アルカリ化剤の間の荷電相互作用が、活性物質の電荷を遮蔽して中和された相対的に疎水性の結合体を形成することを可能とする。ここで用いられる「有機アルカリ化剤」は水に溶解するとアルカリ性を示し、その構造中に相対的に疎水性の部位を有する、有機物質を意味する。有機アルカリ化剤はアミノ酸、ポリオール又は脂肪酸エステル構造を有することができる。
【0020】
アミノ酸構造を有する有機アルカリ化剤の具体例は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンのような塩基性アミノ酸及びその誘導体である。これらの塩基性アミノ酸は有機アルカリ化剤として単独で又は組み合わせて使用することができる。アルカノールをアミノ酸のアルファ位置のカルボキシル基と結合させ、脱水することによりアミノ酸アルキルエステルが生成する。このアミノ酸アルキルエステルは1個以上のアミノ基を有するので、これらはアミノ酸構造を有する有機アルカリ化剤として使用することができる。このアミノ酸アルキルエステルのアルキル基が12個以下の炭素を有することが望ましく、6個以下の炭素を有することがらに望ましい。アミノ酸アルキルエステルの具体例は、グリシンアルキルエステル、アラニンアルキルエステル、ロイシンアルキルエステル、チロシンアルキルエステル、フェニルアラニンアルキルエステル、トリプトファンアルキルエステル、アルギニンアルキルエステル、リジンアルキルエステル、ヒスチジンアルキルエステルなどを包含する。また、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により連結され、塩基性アミノ酸の存在によって水溶液で塩基性を示すペプチドから選ばれる1種以上を有機アルカリ化剤として使用することもできる。
【0021】
1個以上の水酸基を有するポリオール構造を有する有機アルカリ化剤は、アルカリ性糖類、例えばグルコサミン、マンノサミン及びガラクトサミン、及びモノマーとしての20個以下のアルカリ性糖類から製造される、オリゴマー及びポリマーを包含する。 有機アルカリ化剤は、全てがアルカノールアミン構造を有する、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びコリンを包含する。糖に類似したメグルミン(meglumine)も本発明の有機アルカリ化剤の範疇に属する。これらの物質は有機アルカリ化剤として単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0022】
脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤は、両性物質のカルボキシル基(−COOH)と脂肪酸エステルのヒドロキシ基(−OH)の脱水反応によって得られ得るアルカリ性物質を意味する。ここで使用される「両性物質」とは水に溶解時酸性とアルカリ性の両方を示す、アミノ基(−NH)及びカルボキシル基(−COOH)の両方を有する化合物を意味する。両性化合物の適当な例はアミノ酸及びアミノ脂肪酸を包含する。脂肪酸エステルは、炭素数24以下、望ましくは炭素数12以下の脂肪酸が、グリセリン、プロピレングリコール又は他の多価アルコールとエステル化によって結合した脂肪酸エステルを包含する。この脂肪酸は1個以上のヒドロキシル基を有し、例えば脂肪酸モノ、ジ−グリセリンエステル、及び脂肪酸プロピレングリコールエステルである。両性物質のカルボキシル基と脂肪酸エステルのヒドロキシ基を脱水反応させるとエステル結合が形成される。この時、両性物質は1個以上の電荷されたアミノ基を有するので、これは水溶液でアルカリ性を示す。脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤は1−デカノイル−3−リジン グリセロール(デカン酸 3−(2,6−ジアミノ−ヘキサノイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル)、1−ドデカノイル−3−アルギニン グリセロール(ドデカン酸 3−(2−アミノ−5−グアニジノペンタノイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル)、1−デカノイル−2−リジン プロピレングリコール(デカン酸 1−(2,6−ジアミノ−ヘキサノイルオキシメチル)−プロピルエステル)、1−ドデカノイル−2−アルギニン プロピレングリコール(ドデカン酸 1−(2−アミノ−5−グアニジノペンタノイルオキシメチル)−プロピルエステル)などを包含する。これらの化合物は有機アルカリ化剤として単独で又は組み合わせて使用することができる。特に、この脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤は構造的特性により界面活性を有する。従って、本発明の医薬組成物において脂肪酸エステル構造の有機アルカリ化剤の使用は脂肪酸構造を有する界面活性剤の必要性を排除する。
【0023】
界面活性剤は、C6−18の脂肪酸構造を有し、そして4ないし18の範囲のHLB(親水疏水平衡定数;Hydrophilic−Lipophilic Balance))値を有することが望ましい。界面活性剤の疏水性部分は脂肪酸鎖で構成され、親水性部分は1個以上のヒドロキシルル基を有するポリオール部分で構成される。このポリオール部分は糖類、例えばシュガー(sugar)及びサッカリン(saccharin);多価アルコール、例えばグリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール;及びソルビタン、例えばソルビタン及びポリソルビタン;から選択される。界面活性剤の親水性部分は電荷を有していないため、これは結合体中で形成されるイオン結合を妨害せずに、水溶液中で疏水性結合体を安定化する。さらに、界面活性剤の疎水性部分は、生体膜に非可逆的変成を起こさずに、脂質膜と結合体の両方に相互作用して表面張力を低めて活性物質の脂質膜への移行を助ける。本発明に用いられる界面活性剤の好ましい例は、脂肪酸シュガーエステル(sugar fatty acid ester)、脂肪酸サッカリンエステル(saccharin fatty acid ester)、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリソルビタンエステルなどである。これらの物質は界面活性剤として単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明の組成物は以下の方法に従って製造される。最初に、活性物質を水溶液に溶解し、次いでそこに有機アルカリ化剤を添加して相対的に疎水性の結合体を形成する。この時、活性物質の有機アルカリ化剤に対する電荷比は10:1ないし1:10、望ましくは2:1ないし1:2である。すなわち、活性物質が1個の陰イオンを含有し、有機アルカリ化剤が1個の陽イオンを含有する場合は、電荷比はモル比と同一である。一方、活性物質が1個の陰イオンを含有し、有機アルカリ化剤が1個以上の陽イオンを含有する場合は、電荷比はモル比と等しいか小さくなる。このように形成された疏水性結合体は、10nm〜100μmのサイズを有するこの粒子の形態である。有機アルカリ化剤が、例えばトリプトファンアルキルエステルのように、疏水性が相対的に高い試薬である場合は、大きな粒子が形成される。大きな粒子を長期間保存すると、これらは互いに凝集する。従って、活性物質の種類に応じた適切な有機アルカリ化剤の選択は重要である。水溶液中に形成される結合体は望ましくは10nm〜10μmのサイズを有する。その後、脂肪酸構造を有する界面活性剤をこの結合体に加えて、本発明の最終組成物を製造する。界面活性剤は結合体を含有するエマルジョンやミセルを形成するので、結合体小さくして安定化させると同時に脂質膜と結合体に相互作用して活性物質の輸送を誘導するようになる。薬物に対する界面活性剤の重量比は0.1ないし20の範囲であり、0.5ないし10が望ましい。しかしながら、本発明の組成物中の有機アルカリ化剤としての、脂肪酸エステル構造を有するアルカリ化剤の使用は、さらに界面活性を追加した組成物を排除する。また、本発明の組成物は本業界で通常に使用されている薬学的に許容される賦形剤をさらに含有することができる。賦形剤の適切な例は崩解剤、懸濁化剤、増粘剤、滑沢剤、甘味剤、可塑剤及び防腐剤を包含する。
【0025】
本発明の組成物はシロップのような液状にして投与することができる。必要に応じ、本発明の組成物は凍結乾燥をした後、投与のために懸濁又は乳濁することができる。さらにまた、固体状態の活性成分、有機アルカリ化剤、及び脂肪酸構造を有する界面活性剤を水のない状態で前述の割合で混合することができる。この場合は、本発明の組成物は、粉末状顆粒剤、錠剤及びカプセル剤のような固体の投与形態に製剤化することができる。そして体内で分泌される腸管液により活性物質を含有する疏水性結合体が形成され、同時に活性物質が生体膜通って輸送される。活性物質が胃酸に対して防御されていない場合は、ドライシロップ、粉末状顆粒、錠剤及びカプセル剤から選ばれる腸溶性皮膜で被覆された製剤を形成するために、腸溶性皮膜で被覆することができる。腸溶性皮膜剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸クエン酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸塩、アルギン酸ナトリウム、腸溶性皮膜用オイドラキット(メタクリル酸の商品名)などのように当業界で通常に使用されているものから選ばれる1種以上の腸溶性皮膜用高分子が使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するように意図されてはいない。
【0027】
[製造例1−10]
製造例1において、活性物質(薬物)としてセフタジジム1g及び有機アルカリ化剤としてアルギニン273.6mgを水100mlに加えた。得られた混合物を肉眼上で透明になるまで連続撹拌した。
製造例2ないし6において、活性物質としてセフタジジムナトリウム塩1g及び異なった有機アルカリ化剤として、グリシンエチルエステル塩酸塩215.9mg、ロイシンエチルエステル塩酸塩307.4mg、フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩360.8mg、トリプトファンエチルエステル塩酸塩422.1mg及びアルギニンエチルエステル塩酸塩216.1mgを水100mlにそれぞれ加えた。得られた混合物を肉眼上で透明になるまで連続撹拌した。
製造例7において、活性物質としてセフタジジム1g及び有機アルカリ化剤としてメグルミン306.7mgを水100mlに加えた。得られた混合物を肉眼上で透明になるまで連続撹拌した。
製造例8ないし10において、グルコサミン338.7mg、キトサンオリゴマー800.0mg及びキトサン800.0mgを製造例7で製造した溶液にそれぞれ加えた。得られた混合物を肉眼上で透明になるまで連続撹拌した。
前記のように製造された全ての透明溶液を−70℃に凍結した後、これらを真空乾燥して、それぞれ製造例1ないし10の乾燥試料を製造した。
【0028】
[製造例11及び12]
製造例11及び12において、活性物質としてセフタジジムナトリウム塩1g及び有機アルカリ化剤として1−デカノイル−3−リジン グリセロール・2塩酸(デカン酸 3−(2,6−ジアミノ−ヘキサノイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル・2塩酸)351.1mg及び1−ドデカノイル−3−アルギニン グリセロール・2塩酸(ドデカン酸 3−(2−アミノ−5−グアニジノペンタノイルオキシ)−2−ヒドロキシル−プロピルエステル2塩酸)395.1mgをそれぞれ水100mlに加えた。得られた混合物肉眼上で透明になるまで連続撹拌した。透明溶液を−70℃に凍結した後、これらを真空乾燥して、それぞれ製造例11及び12の乾燥試料を製造した。
【0029】
[比較製造例1及び2]
比較製造例1において、セフタジジム120mgを5mlの水に加え、これに懸濁化剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2gを加えた。得られた混合物を撹拌してセフタジジムの懸濁液を得た。比較製造例2において、セフタジジムナトリウム塩120mgを5mlの水に加えて、撹拌してセフタジジムナトリウム塩の溶液を製造した。
【0030】
[実施例1ないし6及び比較例1]
実施例1ないし3において、製造例1、4及び6で製造した乾燥試料(活性物質として120mg)をそれぞれ精製水5mlに撹拌して溶解し、溶液を得た。
実施例4ないし6において、製造例1、4及び6で製造した乾燥試料(活性物質として120mg)をそれぞれ精製水5mlに撹拌して溶解し、これにモノラウリン酸シュガー(sugar monolaurate;HLB 16)0.5gをこれに溶解した。このモノラウリン酸シュガーは脂肪酸構造を有する界面活性剤として使用した。得られた混合物を撹拌して溶液を得た。
比較例1において、比較製造例2で得られた溶液を使用した。
上で得られた全ての溶液中の粒子サイズ(nm)とゼータポテンシャル(Zeta Potential、mV)を粒子分析器(Particle Size Analyzer、Zeta PALS、Brookhaven Instrument Corp.)を用いて測定した。その結果を次の表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から分かるように、100nmから1μmの間の有効直径を有するナノ粒子が界面活性剤を含有していない実施例1ないし3の溶液中で観察され、100nm以下の有効直径を有するナノ粒子が界面活性剤を含有している実施例4ないし6の溶液中で観察された。また、実施例1ないし6の溶液中で測定されたゼータポテンシャル値は多少の差があるが、中性値に近かった。これらの結果は、有機アルカリ化剤の陽イオンと活性物質の陰イオンが中和されたことを示している。一方、比較例1の透明溶液中では中和はなされたが、ナノ単位の粒子は観察されなかった。 結局、経口吸収が不可能な極性の活性物質と有機アルカリ化剤は水溶液中で互いに結合して中和された疏水性の結合体を形成することが確認された。
【0033】
[実施例7]
製造例4で製造した乾燥試料1.36g及び界面活性剤としてモノパルミチン酸シュガー(sugar monopalmitate;HLB 15)1.5gを混合し、これに崩解剤として澱粉グリコール酸ナトリウムを混合物の全体重量に対して5重量%及び結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース3重量%を加えた。崩解剤及び結合剤は当技術分野で一般に使用されている薬学的に許容される賦形剤である。得られた均質な混合物を水で湿式顆粒化して乾燥した。この乾燥混合物を20メッシュ標準ふるいで定粒して顆粒を形成した。滑沢剤としてマグネシウムステアレート1%を顆粒に加えて均一に混合して、最終顆粒を形成した。
最終顆粒を打錠機を用いて打錠して、活性物質を300mg含有する錠剤を製造した。次いで、精製水1g当たりヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸クエン酸塩110mg、トリエチルクエン酸20mg及びタルク30mgを含有する懸濁液を腸溶性皮膜溶液として用いた。この腸溶性皮膜溶液を、錠剤の乾燥重量に基づいて約60mgずつの腸溶皮膜を有するように、Hi−coaterを用いてコーティングし乾燥した。
【0034】
[実施例8]
製造例6で製造した乾燥試料1.22g及び界面活性剤としてモノラウリン酸シュガー(HLB 16)1.5gを混合し、これに崩解剤としてクロスカメロースナトリウムを混合物の全体重量に対して3重量%及び結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース3重量%を加えた。崩解剤及び結合剤は当技術分野で一般に使用されている薬学的に許容される賦形剤である。得られた均質な混合物を水で湿式顆粒化して乾燥した。この乾燥混合物を20メッシュ標準ふるいで定粒して顆粒を形成した。滑沢剤としてマグネシウムステアレート1%を顆粒に加えて均一に混合して、最終顆粒を形成した。
最終顆粒をカプセル充填器を用いてカプセルに充填して、活性物質300mgを含有するカプセルを製造した。
【0035】
[実験例1]
比較製造例2で製造した溶液を実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の左頚静脈に、実験動物の体重(kg)に対して活性成分の40mg/kgに該当する量を注射した。投与5、10、15、30、60、90、120、180及び240後に右頚静脈から血液試料(それぞれ0.6ml)を採取した。血漿を高速液体クロマトグラフィでを分析した。活性物質の血中濃度曲線を作成し、薬動力学ソフトウェア(WinNonlin 3.0)を用いてAUC(Area Under Curve、μg・hr/ml)値を計算した。
その結果、138.90±27.63(μg・hr/ml)のAUC値を示した。これを生物学的利用率(bioavailability)の算出に使用した。
【0036】
[実験例2ないし7]
製造例1ないし6で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液を製造した。実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつグリセロールカプリリック酸エステル0.2mlと共に十二指腸の上部に管を通して併用投与した後、腹部を縫合した。薬物投与15、30、60、90、120、180及び240分後に右頚静脈から血液試料(0.6mlずつ)採取した。高速液体クロマトグラフィ法で血漿を分析した。分析された活性物質の血中濃度曲線を作成し、薬動力学ソフトウェア(WinNonlin 3.0)を用いてAUC(Area Under Curve、μg・hr/ml)値を算出した。下記式2によってこの組成物の生物学的利用率を算出した。
【0037】
【数2】

【0038】
動物実験例2ないし7による本発明組成物の実験動物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図2に示されている。このグラフから分かるように、本発明の組成物は20ないし110%の高い生物学的利用率を示した。すなわち、本発明の組成物は極性が高くて経口吸収が約3%に過ぎない活性物質に対して約5ないし25倍まで経口吸収率を画期的に上昇させことができる。
【0039】
[実験例8ないし11]
製造例4で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液4個を製造した。それぞれの薬物溶液にジステアリン酸サッカロース(saccharose distearate;HLB7)、モノ−ジステアリン酸シュガー(sugar mono−distearate;HLB11)、モノステアリン酸シュガー(HLB15)及びモノラウリン酸シュガー(HLB16)の1種を50mgずつ加えて溶解した。実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつ十二指腸の上部に投与した。その後、実験例2ないし7と同様な方法で生物学的利用率を算出した。
実験例8ないし11による本発明組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図3に示されている。このグラフからはっきりわかるように、本発明の組成物は10ないし40%の高い生物学的利用率を示した。すなわち、本発明の組成物は経口吸収が約3%にも及ばない活性物質に対して約3ないし12倍まで経口吸収率を画期的に上昇させることができる。
【0040】
[実験例12ないし14]
製造例1、5及び6で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液を製造した。実験例12及び14の薬物溶液にはモノラウリン酸シュガー(HLB16)を50mgずつ、そして実験例13の薬物溶液にはモノステアリン酸シュガー(HLB15)を50mg加えた。得られた混合物を溶解した。実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつ十二指腸の上部に投与した後、腹部を縫合した。実験例2ないし7と同様な方法で生物学的利用率を算出した。
実験例12ないし14による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図4に示されている。図4に示されているように、本発明の組成物は35ないし55%の高い生物学的利用率を示した。すなわち、本発明の組成物は極性が高くて経口吸収が約3%にも及ばない活性物質に対して約11ないし18倍まで経口吸収率を画期的に上昇させることができる。
【0041】
[実験例15ないし18]
製造例7ないし10で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液を製造した。実験例15の薬物溶液にはモノラウリン酸シュガー(HLB16)を25mg、そして実験例16ないし18の薬物溶液にはモノラウリン酸シュガー(HLB16)を12.5mgずつを加えた。得られた混合物を溶解した。実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつ十二指腸の上部に投与した後、腹部を縫合した。実験例2ないし7と同様な方法で生物学的利用率を算出した。
実験例15ないし18による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図5に示されている。図5で示されているように、本発明の組成物は20ないし35%の高い生物学的利用率を示した。すなわち、本発明の組成物は極性が高くて経口吸収が約3%にも及ばない活性物質に対して約7ないし11倍まで経口吸収率を画期的に上昇させることができる。
【0042】
[実験例19及び20]
製造例11及び12で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液を製造した。実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつ十二指腸の上部に投与した後、腹部を縫合した。実験例2ないし7と同様な方法で生物学的利用率を算出した。
実験例19及び20による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図6に示されている。図6で示されているように、本発明の組成物は20ないし35%の高い生物学的利用率を示した。この結果は、脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤はその構造的な特徴によって界面活性力を有するので、界面活性剤を追加しなくても経口吸収率の増加が可能であることを立証している。本発明の組成物は極性が高くて経口吸収が約3%にも及ばない活性物質に対して約7ないし11倍まで経口吸収率を画期的に上昇させることができる。
【0043】
[比較実験例1ないし4]
比較実験例1及び2において、比較製造例1及び2で製造した薬物溶液0.5mlをそれぞれ使用した。比較実験例3において、製造例1で製造した乾燥試料を、実験動物(Sprague-Dawley Rat、雄性6〜8週齢)の体重(kg)に対して活性成分として40mg/kgに該当する量を取って全体投与容量が0.5mlになるよう水に撹拌溶解して薬物溶液を製造した。比較実験例4において、比較製造例2の薬物溶液0.5mlを使用した。
比較実験例1ないし3において、実験動物の腹部を手術で切開し胃の基底部からポリエチレン管を十二指腸に挿入した。それぞれの薬物溶液を0.5mlずつ十二指腸の上部に投与した。但し、比較実験例4の場合はさらにグリセロールカプリル酸エステル0.2mlを十二指腸の上部に投与した。動物実験例2ないし7と同様な方法で生物学的利用率を算出した。
比較実験例1ないし4による比較組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフが図7に示されている。図7で示されているように、薬物を一般の方式で懸濁したり溶解した比較実験例1及び2の場合は、生物学的利用率が約3%以内であって、本活性物質は経口吸収されないことを示した。そして、有機アルカリ化剤を単独で使用したり、あるいは界面活性剤を単独で使用する比較実験例3及び4の場合は、生物学的利用率は5ないし11%と低かった。この結果は、有機アルカリ化剤と脂肪酸構造を有する界面活性剤を同時に投与するか、有機アルカリ化剤と界面活性剤の両方の特性を有するアルカリ化剤を投与するときだけ、活性物質の経口吸収を画期的に増加することができるということを示している。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上の記載から明らかなように、本発明の医薬組成物は、脂質膜の通過が殆ど不可能な極性活性物質、極性活性物質の電荷を中和して極性活性物質の極性を減少させるための有機アルカリ化剤、及び脂肪酸構造を有する界面活性剤を含有してなる。必要に応じ、有機アルカリ化剤及び界面活性剤の代わりに、有機アルカリ化剤及び界面活性剤の両方の特性を有する他のアルカリ化剤を経口吸収率を増加させるために使用することができる。本発明は、高付加価値の技術を創出して、経口投与が不可能であった極性薬物の経口吸収率を大きく増加させることを可能にする。本発明の組成物は注射投与しかできない薬物の注射剤を経口投与形態に置き換えることができるので、注射剤を用いる不便さを解消し、患者に便利な使用を保証する。
【0045】
本発明の好ましい態様が説明の目的で開示されているが、添付の特許請求の範囲に開示されている発明の範囲及び精神から逸脱することなく、多種の改変、追加及び置換が可能であることは当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の疏水性単位体及び結合体の模式図。
【図2】動物実験例2ないし7による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。
【図3】動物実験例8ないし11による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。
【図4】動物実験例12ないし14による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。
【図5】動物実験例15ないし18による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。
【図6】動物実験例19及び20による本発明の組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。
【図7】比較実験例1ないし4による比較組成物の十二指腸投与後の生物学的利用率(%)を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高い親水性及び荷電イオンのために脂質膜を通過して吸収されにくい、生物学的利用率が30%未満の極性活性物質の1種以上;(b)水溶液で塩基性を示し、前記極性活性物質とイオン結合する、アミノ酸又はポリオール構造を有する有機アルカリ化剤の1種以上;及び(c)4ないし18のHLB値を有し、C6−18の脂肪酸構造を有する界面活性剤の1種以上;を実質的に含有してなる、極性活性物質の経口吸収用医薬組成物。
【請求項2】
(a)高い親水性及び荷電イオンのために脂質膜を通過して吸収されにくい、生物学的利用率が30%未満の極性活性物質の1種以上;及び(b)水溶液で塩基性を示し、前記極性活性物質とイオン結合する、脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤の1種以上;を実質的に含有してなる、極性活性物質の経口吸収用医薬組成物。
【請求項3】
前記極性活性物質がセファロリジン、セフチオフル(ceftiofur)、セフィキシム、セフェピム、セフォぺラゾン、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、モキサラクタム、ゲンタマイシン、アズトレオナム、アミカシン、イセパマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、テイコプラニン、ポリミキシン−B、バシトラシン、へパリン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン及びインスリンから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アミノ酸構造を有する有機アルカリ化剤がアミノ酸、アミノ酸誘導体及びペプチドの中から選ばれる1種以上であり、ポリオール構造を有する有機アルカリ化剤がアルカリ性糖類、20個以下のアルカリ性糖類をモノマーとするこれらのオリゴマー及びポリマー、及び糖類類似化合物から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、脂肪酸シュガーエステル、脂肪酸サッカリンエステル(saccharin fatty acid ester)、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル及び脂肪酸ポリソルビタンエステルから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸エステル構造を有する有機アルカリ化剤が脂肪酸エステルのヒドロキシ基(−OH)とアミノ基(−NH)及びカルボキシル基(−COOH)を共に有する両性物質のカルボキシル基(−COOH)とを脱水して製造されるアルカリ性物質の1種以上である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記極性活性物質と前記有機アルカリ化剤が電荷比で10:1ないし1:10の比率で存在する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記極性活性物質が1以上の陰イオン性部位を有し、そして1.5以下の分配係数(log p)を有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記極性活性物質と前記有機アルカリ化剤が互いに結合して、水相で10nmないし100μmサイズを有する疏水性結合体を形成する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
崩解剤、懸濁化剤、粘増剤、滑沢剤、甘味剤、可塑剤及び防腐剤から選ばれる薬学的に許容される賦形剤の1種以上をさらに含有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
固体状態で経口投与した後、腸液により活性物質が疏水性結合体を形成する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項12】
組成物がシロップ剤、ドライシロップ剤、粉末状顆粒剤、錠剤又はカプセル剤に製剤化されている、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
活性物質が胃酸に不安定な場合、前記組成物がさらに腸溶性皮膜で被覆されている、請求項11に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−510656(P2006−510656A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558536(P2004−558536)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002700
【国際公開番号】WO2004/052405
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(502153215)チョン・クン・ダン・ファーマシューティカル・コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】