説明

吸収性コア、及びこれを収容するマスク

【課題】清涼成分を含む保水液が含浸された場合でも使用者の不快感を防止することができる、吸収性コア、及びこれを備えたマスクを提供する。
【解決手段】本発明は、マスクに取り付けられる、吸収性コアであって、保水液を保持可能な吸収性を有するコア本体と、コア本体において、マスク着用者を向く面に取り付けられる液不透過性薄膜と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに取り付けられる吸収性コア、及びこれを収容するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中には、飲食物や唾液等の嚥下がないため、咽喉が乾燥しやすくなることがある。これを防止するため、例えば、特許文献1には、次のようなマスクが開示されている。この文献に記載のマスクは、口を覆うマスク本体に水分が保持された保水部材を収納している。これにより、睡眠中に口腔へ水分が補給され、咽喉の乾燥を防止している。また、睡眠中に限らず、冬期には全般的に空気が乾燥しており、さらに冬期以外でもオフィス内では、年中エアコンが稼働している。したがって、日中でも空気が乾燥しやすい環境が多くなっており、上記のようなマスクは日中でも使用されている。
【0003】
ところで、このようなマスクの保水部材には、水以外の液体を含浸させて使用することも提案されている。例えば、特許文献2〜5には、鼻づまりなどのアレルギー症状を緩和するために、ユーカリオイルやその他の清涼剤を保水部材に含浸させたマスクが開示されている。
【特許文献1】特開2001−178837号公報
【特許文献2】特開2002−370974号公報
【特許文献3】特開平11−342215号公報
【特許文献4】実公平6−1709号公報
【特許文献5】実用登録3101718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーカリオイルが直接肌に触れると、肌が刺激され不快感を与えるおそれがあった。なお、このような問題は、ユーカリオイルだけでなく、肌に刺激を与えるおそれがある清涼成分を含む液体全般に関わる問題である。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、清涼成分を含む保水液が含浸された場合でも使用者の不快感を防止することができる、吸収性コア、及びこれを備えたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マスクに取り付けられる吸収性コアであって、上記問題を解決するためになされたものであり、保水液を保持可能な吸収性を有するコア本体と、前記コア本体において、マスク着用者側を向く面に取り付けられる液不透過性薄膜と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、コア本体においてマスク着用者を向く面に液不透過性薄膜が設けられているため、コア本体に含浸される保水液に清涼成分が含まれていたとしても、この成分は薄膜によってブロックされる。そのため、マスク着用者の肌に保水液が直接接触するのを防止することができ、不快になるのを防止することができる。
【0008】
ところで、上記吸収性コアが装着されたマスクを着用する際、マスク着用者の顔の凹凸によって吸収性コアに外圧が作用することがある。この場合、上記薄膜が硬いと、面方向にスムーズに湾曲するように変形することが難しく、膜と垂直な方向に折れ曲がるように変形する可能性がある。そして、コア本体もこれに追随してスムーズに湾曲することができないため、含浸された保水液がしみ出すおそれがある。このとき、保水液は薄膜によってマスク着用者側にはしみ出さず、コア本体の面方向端部からしみ出すおそれがあり、これによって、マスク着用者の肌に接触する可能性がある。これを防止するため、上記薄膜は、ある程度の硬さを有する必要がある。そこで、例えば、本発明に係る薄膜は、その端部を面方向に2cm押圧するのに要する最大の力が、30mN以下である硬さを有していることが好ましい。これは、硬さが30mNより大きいと上記のようなしみ出しのおそれがあるからである。なお、この硬さの下限は特には規定されないが、0mNより大きければよい。
【0009】
上記薄膜は、例えば、樹脂フィルム、または疎水性不織布で構成することができる。
【0010】
上記コア本体には、例えば、3〜30gの保水液を含浸させることができる。
【0011】
このとき、保水液は、水に、清涼成分が0.01〜10重量%配合されてなるものとすることができる。ここで用いられる清涼成分は、例えば、メントール、カンフル、メチルサリチレート、メントン、セージ油、タイム油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油から選択された少なくとも一種を含むものとすることができる。清涼成分として好ましくはメントール、カンフル、メチルサリチレート、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油であり、より好ましくはメントール、カンフルである。このような清涼成分を含浸することで、咽喉の乾燥を防止すると同時に、清涼成分の揮発性および拡散性に優れ、鼻の閉塞感を改善するとともに清涼感を与えることができる。
【0012】
また、本発明に係るマスクは、上記問題を解決するためになされたものであり、上述したいずれか吸収性コアを収容している。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吸収性コア及びこれを備えたマスクによれば、清涼成分を含む保水液が含浸された場合でも使用者の不快感を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
吸収性コア
以下、本発明に係る吸収性コアについて説明する。本発明に係る吸収性コアは、マスクに取り付けられ、後述の保水液を含浸し使用時に保水液を徐々に放出させ、口腔に水分を供給するためのものである。この吸収性コアは、保水液を吸収して保持するコア本体と、このコア本体におけるマスク着用者側を向く面に取り付けられる液不透過性の薄膜とで構成されている。以下、各構成要素について説明する。なお、マスクの例については後述する。
(コア本体)
コア本体は、睡眠中に十分な水分を口腔に供給するには後述の保水液を3g/枚以上含浸できることが好ましい。したがって、目付けは200〜1000g/mであることが好ましく、300〜600g/mであることがさらに好ましい。これは、目付が200g/mより小さいと、水分を十分に保持することができない一方、1000g/mより大きいと、コアが硬くなりすぎて、着用時に不快になるおそれがあるからである。
【0015】
また口元で使用することから、吸収性コアの面積としては、例えば、15〜80cmであることが好ましく、30〜55cmの面積であることがより好ましい。吸収性コアの寸法としては例えば横方向に4〜12cm程度、縦方向に3〜8cm程度が好ましい。また、吸収性コアの形状も特には限定されず、矩形状、円形など種々の形状にすることができる。矩形状に形成する場合には、あごのラインにフィットするように、左右の下端部の角を斜めに切り落としたような形状、例えば、ホームベース形の5角形にすることができる。さらに、吸収性コアを一体的に形成する以外に、例えば、2分割することで形成することもできる。上述したように左右均等に折りたたんだマスク本体を拡げて使用する場合には、左右の領域にそれぞれ吸収性コアを配置することができる。この場合、両吸収性コアの合計面積が上述した好ましい面積であることが好ましい。
【0016】
コア本体は、種々の繊維素材により構成が可能であるが、親水性繊維や、親水性繊維と合成繊維の混紡とすることで構成できる。繊維素材として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、コットン、パルプなどが挙げられ、柔軟性・保水性の観点から好ましくはパルプである。このような吸収性コアは、製法は特に限定しないが、エアレイド法などにより製造することができ、生産性・加工性・耐久性の観点から主成分たるパルプにポリエチレンなどの熱融着性繊維を所定の割合で混紡することが好ましい。
【0017】
例えば、コア本体をパルプで構成する場合、パルプ:熱融着繊維の割合は60:40〜80:20が挙げられる。コア本体は、単層または複数層で構成することができるが、耐久性・保水性の観点から、後述の薄膜が取り付けられる面とは反対の面に、さらに不織布を配置した2層構成とすることが好ましい。さらに配置される不織布の素材としては、親水性繊維、疎水性繊維、合成繊維、または親水性繊維と合成繊維の混紡とすることができ、親水性繊維としてはレーヨン、コットン、ティッシュが挙げられ好ましくはレーヨンである。親水性にすると製造時に保水液をパルプに吸収させやすくなり、製造が容易になるという利点がある。より好ましくは親水性繊維であるレーヨンを用いることができる。以上の不織布については、例えば、20〜50g/mの目付にすることが好ましい。
(薄膜)
コア本体に取り付けられる薄膜は、後述する保水液がマスク着用者に接触しないように、液不透過性とする必要がある。薄膜は、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリウレタンからなる樹脂フィルムで構成することかできる。また、疎水性不織布で構成することもできる。疎水性不織布は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PETなどの疎水性繊維で構成することができ、種々の公知の繊維で構成された不織布に疎水処理を施したものも含む。疎水処理は、例えば、不織布をシリコン液に十分浸漬した後、乾燥することによりできる。薄膜は、例えば、熱融着繊維やポリオレフィン系またはゴム系樹脂の接着剤によってコア本体に固定される。
【0018】
ところで、吸収性コアが装着されたマスクを着用する際、マスク着用者の顔の凹凸によって吸収性コアに外圧が作用することがある。この場合、薄膜が硬いと、面方向にスムーズに湾曲するように変形することが難しく、膜と垂直な方向に折れ曲がるように変形する可能性がある。そして、コア本体もこれに追随してスムーズに湾曲することができないため、含浸された保水液がしみ出すおそれがある。このとき、保水液は薄膜によってマスク着用者側にはしみ出さず、コア本体の面方向端部からしみ出すおそれがあり、これによって、マスク着用者の肌に接触する可能性がある。
【0019】
したがって、薄膜にはある程度の硬さが必要となる。この硬さの測定方法としては、例えば、次の方法を例示することができる。まず、長さ100mm、幅50mmの薄膜を垂直に配置し、その端部を面方向に押圧する。そして、20mm押圧されたところで、それに要した力の最大量を測定する。測定は、例えば、島津オートグラフ AGS−H 500N、解析ソフトとしてTRAPEZIUM 2を使用することができる。その結果として、測定された力が、30mN以下の薄膜を使用することが好ましい。硬さが30mNより大きいと上記のようなしみ出しのおそれがあるからである。
(保水液)
次に、本発明で用いる保水液について説明する。この保水液は、上述した吸収性コアに含浸させるためのものである。睡眠中に十分な水分を口腔に供給するには、3〜30gの保水液が、吸収性コアに含浸されていることが好ましい。より好ましくは、3.5〜15g、さらに好ましくは5〜15gである。
【0020】
保水液は、水を主成分とし、保水液中に10〜50重量%のポリオールを配合することができる。ポリオールを配合すると、吸収性コアからの水分蒸発スピードが抑制される効果があり、長時間の持続を要する睡眠中の保水液としては好ましい。ポリオールとしては、グリセリンやジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,2ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられ、その中でも、グリセリンが安全性の点で好ましい。これらの他にも、メチルパラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、ヒアルロン酸塩やベタインなどの保湿剤、植物エキス、キサンタンガムやヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC),ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、寒天、グアーガム、カラギーナンなどの水溶性増粘剤、ユーカリやミントなどの香料、香料を可溶化する界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤)などを適宜使用できる。保水液はあらかじめ吸収性コアに含浸されていてもよく、使用時に吸収性コアに含浸してもよい。予め保水液を含浸させる場合、例えば、液や香料が不透過性のアルミラミネートフィルムやアルミ蒸着PETフィルムや透明(シリカ)蒸着PETフィルムからなる袋などに収容しておくことが好ましい。
【0021】
また、保水液には、清涼成分を含ませることができ、例えば、メントール、カンフル、メチルサリチレート、メントン、セージ油、タイム油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等を含ませることができる。このような清涼成分を保水液に含ませることで、鼻の閉塞感を改善するとともに清涼感を与えることができる。また、このような清涼成分は、例えば、保水液中に0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%含ませることができる。
【0022】
マスク1
上記のような吸収性コアは、マスクに収容されて使用されるのであるが、以下、本発明で用いられるマスクについて説明する。本発明に係るマスクは、口及び鼻孔を覆うマスク本体と、このマスク本体の左右の両端に設けられた耳掛けバンドとを備えている。さらに、マスク本体には、保水液を含浸した吸収性コアが収納されるのであるが、マスク本体に直接収納してもよいし、吸収性コアを収容する収容体を別途マスク本体に取り付けることもできる。以下、各部材について説明する。
(マスク本体)
本発明に係るマスクは、口を覆うマスク本体を備えており、このマスク本体に上述した吸収性コアが取り付けられる。例えば、後述する収容体をマスク本体に固定しておき、この収容体に吸収性コアを収容することもできる。また、マスクとしての線状材からなる耳かけ部も取り付けられる。耳かけ部の素材は特に限定されないが、ポリエステルなどで構成される伸縮性のある素材がより好ましい。或いは、耳かけ部をマスク本体の左右の両端に耳が入る穴を設けることで構成することもできる。
【0023】
マスク本体の寸法としては、顔のサイズを考慮して例えば横方向に100〜190mm程度、縦方向に50〜100mm程度が好ましい。さらには、横方向に150〜180mm程度、縦方向に70〜90mm程度がより好ましい。マスク本体は、例えば、織布、不織布で構成でき、好ましくはスパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法またはスパンレース法による不織布、より好ましくは保形性の観点からスパンボンド法による不織布で構成することができる。
【0024】
マスク本体の構造としては、1層又は2層以上とすることができ、例えばS層(スパンボンド単層)、SS層(スパンボンド−スパンボンドの2層構造)、SMS層(スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドの3層構造)が挙げられ、より好ましくはS層、SS層、さらに好ましくはSS層とすることができる。
【0025】
上記織布及び不織布を構成する繊維素材は公知のものを選択することができ、例えば紙、レーヨン・コットン等の天然繊維、ポリプロピレン・ポリエチレン・ポリエステル等合成繊維とすることができる。また、生産性の観点から好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンであり、保形性の観点からさらに好ましくはポリプロピレンを選択することができる。
【0026】
マスク本体を2枚以上の織布または不織布で形成する場合、これらは、縫製、超音波溶着、熱融着により形成することができる。また、折り目により、少なくとも1つのプリーツ(襞)を形成することができ、これによってマスク本体が上下方向に伸張し、種々の顔の大きさに対応する。さらに、マスク本体には、例えばその上辺に沿っては、ポリエチレンのようなプラスチック樹脂や生分解性樹脂等からなる線状のノーズピースを取り付けることができる。このノーズピースにより、マスク本体が顔にフィットし、鼻とマスク本体との隙間が開くのが防止される。
(収容体)
本発明に係るマスクには、吸収性コアを収容する収容体を別途設けることができる。収容体は、袋状に形成することができ、また、織布、不織布で構成できる。より詳細には、通気性の観点から好ましくはスパンボンド法、サーマルボンド法またはスパンレース法による不織布で構成することができる。また、肌触りの観点からより好ましくはサーマルボンド法、スパンレース法、特に好ましくはスパンレース法を用いて不織布を形成してもよい。収容体の寸法としては、吸収性コアの入る大きさを考慮して例えば横方向に5〜13cm程度、縦方向に4〜10cm程度が好ましい。さらには、例えば横方向に9〜12cm程度、縦方向に6〜8cm程度がより好ましい。
【0027】
このような織布または不織布を用いて、1層又は2層以上の層からなる袋とすることができるが、通気性・柔軟性・防濡性の観点から着用者の口側を2層としマスク本体側を1層とすることが好ましい。繊維素材は公知のものを選択することができるが、通気性・柔軟性・防濡性・生産性の観点からポリプロピレン・ポリエチレン・PET等のポリエステル等の合成繊維が好ましく、PP芯/PE鞘などの芯鞘繊維や中空繊維も好ましく使用できる。収容体は、これら繊維素材のうち単一の繊維素材でできていてもよいし、2種以上の繊維素材でできていてもよい。
【0028】
このような収容体は、縫製、超音波溶着、熱融着など公知の方法でマスク本体に取り付けられる。収容体はマスク本体と全面または一部で取り付けてもよく、好ましくは収容体上部のみもしくは収容体左右部のみで取り付ける。より好ましくは収容体上部のみで取り付ける。上部のみで取り付けることにより、プリーツを有するマスクを広げて着用する際の妨げにならない。
【0029】
マスク2
上述したマスク1のほか、主として昼間に使用される立体型のマスクに対して本発明の吸収性コアを使用することもできる。以下、立体型のマスク2におけるマスク本体について説明する。
(マスク本体)
このマスク本体は、通気性を有し、口及び鼻孔を覆うシート状のものであり、顔に装着されたときに、口又は鼻孔との間に空間が形成されるように構成される。例えば、マスク本体をドーム状に形成すると、予め空間を形成することができる。或いは、マスク本体をシート状に形成し、これを左右均等に二つ折りにしたときに形成される折り目を円弧状に形成すれば、これを拡げたときに、円弧状の部分に空間が形成され、立体的な形状となる。これ以外でも口や鼻孔との間に空間が形成されるような構造であれば、特には限定されない。なお、このとき形成される空間は、顔の形状にもよるが、例えば、10〜200cmの体積を有することが好ましく、30〜150cmの体積を有することがさらに好ましい。
【0030】
マスク本体の左右の両端には、上記マスク1と同様に、マスク本体を顔に保持するための耳掛け部が設けられている。
【0031】
また、マスク本体には、吸収性コアを収納する収納部が設けられている。この収納部は、上述した空間と対向する領域に設けられ、これによって吸収性コアから蒸発する水分が空間内に入り、呼吸によって口腔を潤すことができる。収納部の構成は、特には限定されないが、例えばポケットを有する袋状の収納部をマスク本体の内側或いは外側に取り付けることができる。また、マスク本体を少なくとも2枚のシート材を重ね合わせることで構成し、隣接するシート材の間に吸収性コアを収納することもできる。このとき、吸収性コアがマスク本体内で移動しないようにすることが必要であり、そのために、例えば、2枚のシートの一部を接着し、この接着部が吸収性コアの周縁の少なくとも一部を囲むように構成することができる。例えば、接着部を線状に形成することができる。こうすることで、吸収性コアが接着部に囲まれるため、マスク本体内の所定の位置に保持することができる。
【0032】
マスク本体は、マスクとしての通気性を有することが必要であるが、不織布などで構成することで、通気性を得ることができる。要求される通気性としては、例えば、通気度が5〜150cm/cm・secであることが好ましく、30〜100cm/cm・secであることがさらに好ましい。通気度は、JIS L1096 8.27.1 A法(フラジール形法)により測定することができる。
【0033】
マスク本体を構成する材料、構造、織布及び不織布の構造は、マスク1と同様である。また、吸収性コアを挟むように収納する構造にする場合には、上述したS層、SS層、SMS層の2つ以上を組み合わせた構造にする必要がある。例えば、外側にSMS層、内側にS層を配置した2枚の不織布でマスク本体を構成し、これらの間に吸収性コアを収納することができる。
【0034】
マスク本体を2枚以上の織布または不織布で形成する場合、これらは、縫製、超音波溶着、熱融着により形成することができる。また、折り目により、少なくとも1つのプリーツ(襞)を形成することができ、これによってマスク本体が上下方向に伸張し、種々の顔の大きさに対応する。また、ポケットを有する袋状の収納部をマスク本体に取り付ける場合、このような収納部も上述したような不織布で構成することができる。このような収納部は、縫製、超音波溶着、熱融着など公知の方法でマスク本体に取り付けられる。収納部はマスク本体と全面または一部で取り付けてもよく、好ましくは収納部上部のみもしくは収納部左右部のみで取り付けることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(マスク及び吸収性コアの形状)
ここでは、本発明に係るマスクの実施例について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例に係るマスクの斜視図、図2は図1のマスクを左右均等に折りたたんだときの平面図である。
【0036】
図1に示すように、このマスクは、口及び鼻孔を覆うマスク本体1と、このマスク本体1の左右の両端に設けられた耳掛け部2とを備えている。さらに、マスク本体1には、保水液を含浸した2つの吸収性コア3が収納されている。
【0037】
マスク本体1は、縦中央線11を挟んで左右対称の形状を有しており、同じ形状の一対のマスク片12を縦中央線11において融着することで構成されている。図2に示すように、各マスク片12は、一端部(右側)が円弧状をなし、他端にいくにしたがって上下の幅が狭くなり、他端部では2つの突部122が上下に並ぶように形成されている。そして、2つの突部122を結ぶように、弾力性のある線状材2が取り付けられ、この線状材2が耳掛け部を構成している。
【0038】
各マスク片12は、2枚の不織布を重ね合わせ、その周縁部を熱融着121することで構成されている。周縁部のうち、各マスク片の上端の一部、つまり円弧状の一端部から連なる部分は熱融着されておらず、この非融着部123から2枚の不織布の間に吸収性コア3を収納できるようになっている。さらに、マスク片12には、吸収性コア3を所定の位置に保持するための接着部124が形成されている。つまり、後述するように吸収性コア3の下端部及び側部に沿うような線状の接着部124が、熱融着によって形成されており、この接着部124によって、マスク片12の上端から挿入した吸収性コア3が、下方及び側方に移動しないようになっている。
【0039】
このマスク本体1は、上述した材料の2枚の不織布で形成されており、外側の不織布がSMS層で形成され、内側の不織布がS層で形成されている。
【0040】
次に、吸収性コア3について説明する。図3は吸収性コアの平面図(a)及び断面図(b)である。同図に示すように、本実施例で用いられる吸収性コア3は、2つの部分に分割されており、それぞれが各マスク片12に収納される。より詳細には、上下対称の形状をなしており、上端及び下端の一方の角部が切り取られた六角形をなしている。これにより、吸収性コア3の下端部は、水平部分31、及び傾斜部分32がこの順で連結されることで構成される。そして、図2に示すように、各吸収性コア3の傾斜部分32がマスク本体1の左右の端部を向くように配置される。また、上述した接着部124は、これら水平部分31、傾斜部分32に沿うように形成されており、水平部分31と対応する接着部124により吸収性コア3が下方へ移動するのを規制し、傾斜部分32と対応する接着部124及び上述した縦中央線11によって左右へ移動するのを規制する。また、傾斜部分32を設けることで、吸収性コアを収納しやすくなり、かつ、使用中に頬部などに吸収性コアが触れることを防止することができる。
【0041】
図3(b)に示すように、吸収性コア3は、保水液を吸収、保持するコア本体4と、その一方の面に接着された薄膜5とで構成されている。薄膜5については、後述するように、複数の材料について検討する。また、コア本体4と薄膜5とは、ポリオレフィン系ならびにゴム系樹脂の接着剤で接着されている。吸収性コア3は、上記のように、各マスク片12に収納されるが、このとき、薄膜5が配置された面をマスク着用者側に向ける。
【0042】
以上のように形成されたマスクは、縦中央線11が円弧状に形成されているため、2つ折りの状態から拡げると、この部分に空間が形成される。これによって、吸収性コア3から揮散した清涼成分が空間内に満たされ、効率よく清涼成分を吸入することができる。そして、吸収性コア3から蒸発した水分は、空間の湿度を向上させ、これによって口腔内を潤すことができる。
(材料)
上述したマスク本体及び吸収性コアについては、以下の材料で構成した。
【0043】
1.マスク本体
【0044】
【表1】

2.コア本体
【0045】
【表2】

3.薄膜
薄膜については、表6に記載の7種類を検討した。なお、疎水処理は、信越化学株式会社製シリコンエマルジョン(polon MR)に不織布を10分間浸漬した後、十分に乾燥する方法でおこなった。
【0046】
4.保水液
保水液は、以下の材料を混合して作製した。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

(評価実験)
1.薄膜の硬さテスト
上述したように、薄膜の硬さは、保水液のしみ出しに影響する。そのため、各薄膜の硬さテストを行った。
【0050】
まず、図4に示すように、長さ100mm,幅50mmの薄膜を垂直に配置し、その端部を面方向に押圧する。そして、20mm押圧されたところで、それに要した力の最大量を測定する。測定は、島津オートグラフ AGS−H 500N、解析ソフトとしてTRAPEZIUM 2を使用した。
【0051】
得られた結果は、要した力により、以下に示す3段階評価とした。
【0052】
0mN以上10mN未満 ◎
10mN以上30mN未満 ○
30mN以上 ×
2.保水液のしみ出しテスト
吸収性コアが外圧を受けたときに、どの程度保水液がしみ出すかをテストした。以下の2種類のテストを行った。
【0053】
2−1 フィルムを直に通り抜ける量の測定
(1)コア本体に7g(十分量液がしみこむ量)の保水液を含浸させる。
【0054】
(2) 薄膜で吸収性コアをくるむ。
【0055】
(3) 不織布(ポリプロピレン スパンボンド不織布 38g/m)の重さを量る。
【0056】
(4) 薄膜でくるんだコア本体、不織布(ポリプロピレン スパンボンド不織布 38g/m)の順に重ねる。
【0057】
(5) 100g荷重をかけ1分静止する。
【0058】
(6) 不織布の重さを量り、(3)で測った重さの差から染み出した液量を測定する。
【0059】
(7)染み出し量により、以下に示す3段階評価とした。
【0060】
染み出し量 0 g以上0.1g未満 ◎
0.1g以上0.2g未満 ○
0.2g以上 ×
2−2 横からの染み出し量の測定
(1) コア本体に7g(十分量液がしみこむ量)の保水液を含浸させる。
【0061】
(2) 不織布(ポリプロピレン スパンボンド不織布 38g/m)の重さを量る。
【0062】
(3) 薄膜、コア本体、不織布(ポリプロピレン スパンボンド不織布 38g/m)の順に重ねる。
【0063】
(4) 100g荷重をかけ1分静止する。
【0064】
(5) 不織布の重さを量り、(2)で測った重さの差から染み出した液量を測定する。
【0065】
(6)染み出し量により、以下に示す3段階評価とした。
【0066】
染み出し量 0 g以上0.4g未満 ◎
0.4g以上0.6g未満 ○
0.6g以上 ×

3.官能テスト
保水液を5g含浸させた吸収性コアを上記マスク本体の収容部にそれぞれセットし、5分装着後の「肌への刺激」「鼻通り感」「喉のうるおい感」を官能評価した。このとき、コア本体には、上述した6種類の薄膜を取り付けたほか、薄膜を取り付けていないものも合わせてテストした。
【0067】
官能テストでは、上記3種類の質問をし、1〜5の5段階評価で、1が最もよい評価とした。例えば、「肌への刺激」は1が「なし」となり、その他の項目は1が「満足」となる。被験者は、6人である。評価の平均点により、以下に示す4段階評価とした。
【0068】
平均点 0 以上2.0未満 ◎
2.0以上3.0未満 ○
3.0以上4.0未満 △
4.0以上 ×
4.結果
結果は、以下の通りである。括弧内の数値は、測定値である。
【0069】
【表6】

上記結果によると、ポリエチレンフィルム−1,−2、疎水処理ポリプロピレン不織布は、外圧が作用したときの保水液のしみ出しがない。これは、これらのフィルムが柔らかいことによると考えられる。また、これに起因して肌への刺激もなく、官能テストの結果も良好である。その他については、しみ出しテストの結果がよくなく、それにより、官能テストの結果が悪かったと考えられる。なお、表3〜表5のいずれの保水液を用いても同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るマスクの実施例の斜視図である。
【図2】図1のマスクを折りたたんだときの平面図である。
【図3】図1のマスクに収納される吸収性コアの平面図及び断面図である。
【図4】薄膜の硬さテストの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 マスク本体
2 耳掛け部
3 吸収性コア
4 コア本体
5 薄膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに取り付けられる、吸収性コアであって、
保水液を保持可能な吸収性を有するコア本体と、
前記コア本体において、マスク着用者を向く面に取り付けられる液不透過性薄膜と、
を備えている、吸収性コア。
【請求項2】
前記薄膜は、その端部を面方向に2cm押圧するのに要する最大の力が、30mN以下である硬さを有している、請求項1に記載の吸収性コア。
【請求項3】
前記薄膜は、樹脂フィルムである、請求項1または2に記載の吸収性コア。
【請求項4】
前記薄膜は、疎水性不織布である、請求項1または2に記載の吸収性コア。
【請求項5】
前記コア本体には、3〜30gの保水液が含浸されている、請求項1から4のいずれかに記載の吸収性コア。
【請求項6】
前記保水液は、清涼成分が0.01〜10重量%配合されてなる、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性コア。
【請求項7】
前記清涼成分は、メントール、カンフル、メチルサリチレート、メントン、セージ油、タイム油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油から選択された少なくとも一種を含む、請求項6に記載の吸収性コア。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の吸収性コアを収容したマスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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