説明

吸収性物品の表面シートの製造方法

【課題】2枚の不織布の接合強度が高まり剥離が起こりづらくなると共に、両者の密着性が高まり液の透過性が良好になる吸収性物品の表面シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】重ね合わされた同一の又は異なる2枚の不織布11,12を部分的に接合して多数の接合部13を形成し、次いで両不織布11,12を貫通する開孔16を多数形成する工程を有する。接合部15の形成位置と異なる位置に開孔16を形成することが好ましい。各接合部15が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように該接合部15を列状に形成すると共に、その列を多列に形成し、各列において、前後隣り合う接合部15間に開孔16を形成することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の表面シートの製造方法に関する。また本発明は、吸収性物品の表面シートに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、構成繊維を融着させてなる多数の接着部を有するヒートロール不織布と、液体不透過性シートとを接着剤を介して貼り合わせた積層シートに、エンボス処理を施してなる複合シートを提案した(特許文献1参照)。この複合シートは、衛生物品の材料、例えば吸収性物品の裏面シートとして用いられる。特許文献1には、この複合シートに開孔を形成することは記載されていないが、仮に穿孔ピンを用いてこの複合シートに開孔を形成しようとすると、穿孔ピンに接着剤が付着し、それに起因して穿孔ピンに紙粉等の異物が付着し、開孔の効率が低下する可能性がある。
【0003】
この複合シートとは別に、2枚の不織布を、エンボスや針などの穿孔手段によって多数の穿孔を形成することで、互いの繊維を絡めて貼り合わせ積層した積層不織布が提案されている(特許文献2参照)。この積層不織布は、吸収性物品の表面側に位置するシートとして用いられる。しかし、この積層不織布では、穿孔による繊維の絡み合いのみで2枚の不織布を貼り合わせているので接合力が十分とは言えず、例えばこの積層不織布を搬送している間に、空気にあおられて一方の不織布が剥離してしまう可能性がある。
【0004】
更に、表面シートとエアレイド不織布の液獲得層とを圧着して圧着凹部を形成した吸収性物品が知られている(特許文献3参照)。圧着凹部は、吸収性物品の縦中心線から左右に離れた位置に形成されている。左右の圧着凹部間に位置する開孔領域においては、表面シートに多数の液透過孔が形成されている。この吸収性物品においては、開孔領域の左右外側に位置する圧着凹部においてのみ表面シートと液獲得層とが接合しており、開孔領域においては表面シートと液獲得層は単に接触しているだけなので、両者間に浮きが生じやすく、十分な液透過性を確保できない可能性がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−76592号公報
【特許文献2】特開2004−209715号公報
【特許文献3】特開2004−229767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、2枚の不織布の接合強度、風合い、液透過性等が一層向上した吸収性物品の表面シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、重ね合わされた同一の又は異なる2枚の不織布を部分的に接合して多数の接合部を形成し、次いで両不織布を貫通する開孔を多数形成する工程を有する吸収性物品の表面シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、前記の製造方法に従い製造される好ましい表面シートとして、
同一の又は異なる2枚の不織布を重ね合わせてなる吸収性物品の表面シートであって、
該シートには、それぞれ一方向に延びる溝部及び畝部が交互に形成されており、
各溝部に、両シートを接合する接合部と、両シートを貫通する開孔とが一定間隔をおいて交互に形成されている吸収性物品の表面シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2枚の不織布が、接合部及び開孔という2つの手段によって接合される。従って、両者の接合強度が高まり剥離が起こりづらくなる。更に両者の密着性が高まり液の透過性が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。先ず、本発明の製造方法の好ましい一実施形態に基づき製造された吸収性物品の表面シートについて図1及び図2を参照しながら説明する。本実施形態の表面シート10は、該シート10の一方の面を含む第1層11と、他方の面を含む第2層12とを有する二層構造になっている。表面シート10においては第1層11の側が、着用者の肌に向く側であり、第2層12の側が、吸収体に向く側になる。各層は同一の又は異なる不織布から構成されている。2枚の不織布を用いることで、各不織布にそれぞれ別個の機能を付与することが容易になり、表面シート10を設計する上での自由度が高くなる。例えば第1層11の不織布として、吸収性物品における通常の表面シートと同様のものを用い、第2層12の不織布として、サブレイヤーシート又はセカンドシートと呼ばれる、表面シートと吸収体との間に配されるシートと同様のものを用いることができる。各層の不織布は、何れもその長手方向が表面シート10の長手方向(MD)と一致している。表面シート10は、主としてその長手方向が吸収性物品の長手方向と一致するように吸収性物品に組み込まれる。
【0011】
表面シート10には、それぞれ一方向に延びる溝部13及び畝部14が形成されている。溝部13及び畝部14の延びる方向は表面シート10の長手方向と一致している。溝部13及び畝部14は表面シートの幅方向(CD)において交互に配列されている。溝部13及び畝部14は平面部を有しないように連なっている。溝部13は第1層11側から第2層12側へ向かって凸状に湾曲している。一方、畝部14は第2層側から第1層側へ向かって凸状に湾曲している。
【0012】
隣り合う溝部13の間隔は1〜6mm、特に1.5〜4mmであることが好ましい。また隣り合う畝部14の間隔も同様に1〜6mm、特に1.5〜4mmであることが好ましい。この範囲にすることで、溝部13及び畝部14と平行な方向、及びそれに直交する方向での曲げ特性(例えばバルクソフトネス)に大きな異方性を付与することができ、表面シート10の身体へのフィット性や風合いを高めることが容易になる。
【0013】
第1層11及び第2層12は、多数の接合部15によって部分的に接合されている。接合部15は、各接合部15が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように列状に形成されている。且つその接合部列が多列に形成されている。複数の接合部15からなる接合部列は、表面シート10の長手方向に延びている。接合部列は、表面シート10の溝部13に形成されている。
【0014】
図1及び図2においては、個々の接合部15は円形で描かれている。しかし接合部15の形状はこれに限られず、楕円形、三角形、矩形、その他の多角形、あるいはそれらの組み合わせでもよい。重要な点は、第1層11と第2層12とが小面積で且つ散点状に配置された接合部15によって部分的に接合されている点である。これによって第1層11と第2層11との密着性及び接合強度を確保することができる。この観点から、個々の接合部はその面積が0.1〜3.0mm2程度であることが好ましい。また、表面シート10を平面視したときの該シート10の面積に対する接合部15の面積の総和の割合(以下、この値を接合部面積率という)は、0.5〜15%、特に1〜8%であることが好ましい。
【0015】
接合部15は、第1層11及び第2層12の不織布を結合できる様々な手段によって形成することができる。例えばエンボス加工や超音波加工によって不織布を融着及び/又は圧着することで、接合部15を形成できる。また、ヒートシールによる熱融着(つまり熱エンボス加工よりも低加圧下での主として加熱による融着)によっても接合部15を形成できる。或いはホットメルト粘着剤等の接着剤を用いた接着によって接合部15を形成できる。
【0016】
表面シート10には、接合部15が形成されていることに加えて、多数の開孔16が形成されている。開孔16は、第1層11及び第2層12を貫通している。図1に示すように、開孔16は、第1層11側から第2層2側に向かって延出する不織布によって取り囲まれて形成されている。そして、開孔16の内壁17は、第1層11からの連続面で形成されている。即ち開孔16は立体的な開孔である。開孔16は、表面シート10の平面視において円形をしている。開孔16はその直径が第1層11から第2層12に向かって漸次減少しており漏斗状の形状となっている。開孔16が漏斗状になっていることで、表面シート10を一旦透過した液の逆戻りが起こりにくくなるという利点がある。
【0017】
開孔16は、これを通じて排泄された液を表面シート10の下側に位置する部材、例えば吸収体又はサブレイヤーシート(セカンドシート)へ透過させるために形成される。この観点から、開孔16は、表面シート10を平面視したときの縁部18の直径が0.5〜3mm、特に0.7〜2mmであることが好ましい。同様の理由により、開孔率、即ち表面シート10の平面視における面積に対する開孔16の面積の総和の割合は2〜30%、特に5〜18%であることが好ましい。開孔3の直径及び開孔率は、本出願人の先の出願に係る特開平8−246321号公報の段落〔0062〕及び〔0064〕の記載に準じて測定される。具体的は以下の方法で測定される。
【0018】
<開孔径d>
(株)ネクサス製の画像解析装置「nexus New Qube」を用い、予め黒色台紙上に貼り込んだ上記表面シートを画像入力し、画面上で白黒二値化処理を行い、黒色部分を開孔部に相当させる。この黒色部分を円形としたときの面積から該円形の直径を計算し、これを開孔径とする。
【0019】
<開孔率>
(株)ネクサス製の画像解析装置「nexus New Qube」を用い、予め黒色台紙上に貼り込んだ上記表面シートを画像入力し、画面上の白黒面積比を算出する。この際、画面上の黒色の面積が開孔部に相当するので、全画面積に対する黒色面積をもって開孔率(%)とする。
【0020】
開孔16は後述するように、先端が尖鋭な穿孔ピンを用いて2枚の不織布を穿孔することで形成される。この穿孔操作によって2枚の不織布の構成繊維が開孔16の縁部及びその近傍で交絡し、これらの不織布が接合される。このように、表面シート10においては、2枚の不織布が、接合部15及び開孔16という2つの手段によって接合される。従って、両不織布の接合強度が高まり剥離が起こりづらくなる。更に両者の密着性が高まり、一方の不織布から他方の不織布への液の透過性が良好になる。
【0021】
開孔16は、各開孔16が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように列状に形成されている。且つその開孔列が多列に形成されている。複数の開孔16からなる開孔列は、表面シート10の長手方向に延びている。開孔列は、表面シート10の溝部13に形成されている。
【0022】
このように、表面シート10においては、接合部15及び開孔16の何れもが溝部13に形成されている。そして各溝部13に、接合部15と開孔16とが一定間隔をおいて交互に形成されている。つまり接合部15の形成位置とは異なる位置に開孔16が形成されている。接合部15の形成位置に開孔16を形成することも可能であるが、その場合には、接合部15の位置に穿孔ピンで穿孔を行うことになり、穿孔後に接合部15の破片の一部が開孔16の縁部に残存する可能性がある。従って、接合部15の形成位置とは異なる位置に開孔16を形成することが好ましい。
【0023】
各溝部13においては、前後方向で隣り合う接合部15どうしの間隔と、前後方向で隣り合う開孔16の間隔とは同じになっている。その間隔は1〜30mm、特に2〜15mmであることが好ましい。そして、前後方向で隣り合う2つの接合部15間の中央の位置に開孔16が位置している。同様に、前後方向で隣り合う2つの開孔16間の中央の位置に接合部15が位置している。
【0024】
図2に示すように、表面シート10の幅方向に関しては、各接合部15が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように列状に形成されている。且つ接合部列が多列に形成されている。同様に、各開孔16が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように列状に形成されている。且つ開孔列が多列に形成されている。更に、表面シート10の幅方向の各列に関し、接合部15と開孔16とが一定間隔をおいて交互に形成されている。
【0025】
以上の説明から明らかなように、表面シート10においては、接合部15及び開孔部16が市松模様の配置パターンで形成されている。接合部15及び開孔部16をこのように配置することで、第1層11と第2層12の接合強度が一層高まり剥離が一層起こりづらくなる。更に両者の密着性が一層高まり、第1層11から第2層12への液の透過性が一層良好になる。
【0026】
図示していないが、表面シート10においては、溝部13及び畝部14の延びる方向と直交する方向を該シート10の幅方向としたとき、幅方向中央域に形成された開孔の直径よりも、幅方向側部域に形成された開孔の直径が小さくなっていることが好ましい。これによって、排液ポイントである幅方向中央域の液の引き込み性及び液透過性が一層向上する。一方、幅方向側部域では開孔の直径が相対的に小さいので、着用者の大腿部と擦れやすい該側部域における繊維の毛羽立ちや抜け抑制がされる。
【0027】
第1層11及び第2層12に使用される繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル及びナイロンのようなポリアミド等の合成繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、並びにコットン等の天然繊維が挙げられる。しかしこれらに限定されるものではない。また、融点の高い繊維を芯とし且つ融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維等も好適に用いられる。これらの繊維は1種又は2種以上を使用することができる。必要に応じ、これらの繊維にTiO2等の顔料を所定量配合させて、表面シート10の隠蔽性を向上させてもよい。尤も、表面シート10は第1層11及び第2層12の多層構造となっているので、TiO2等の配合量を従来よりも低くしても隠蔽性が低下するおそれはない。
【0028】
表面シート10は、その坪量が10〜100g/m2、特に18〜65g/m2であることが、液を引き込むための空隙を形成するのに必要な量の繊維の確保、生産性及びコストの点から好ましい。また、表面シート10を構成する各層に関しては、表面シート10の液透過性を高める観点からは、各層の構成繊維の太さが同一であることを条件として、第1層11の方が第2層12よりも低坪量であることが好ましい。表面シート11の肌触りの良好さの点からは、逆に第1層11の方が第2層12よりも高坪量であることが好ましい。開孔16の見栄え(外観)の点からは、第1層11及び第2層12ともに低坪量であって且つ第1層11の方が第2層12よりも低坪量であることが好ましい。製造コストの点からは、第1層11及び第2層12ともに低坪量であって且つ第2層12の方が第1層11よりも低坪量であることが好ましい。これらの観点を基準として、第1層11及び第2層12の坪量は、5〜75g/m2の範囲、特に8〜40g/m2の範囲で適宜選択することが好ましい。
【0029】
表面シート10は、その厚みが0.5g/cm2荷重下において0.4〜3mm、特に0.6〜2mmであることが、十分な嵩高さが発現する点から好ましい。0.5g/cm2荷重下の厚みは、表面シート10に軽くタッチし始めたときの厚みにほぼ相当する。0.5g/cm2荷重下の不織布10の厚みは、特開平8−246321号公報の段落〔0063〕の記載に従い測定される。
【0030】
次に、図1及び図2に示す表面シートの製造方法について、図3(a)ないし(c)を参照しながら説明する。先ず、第1層11及び第2層12を構成する各繊維ウエブを製造する。各繊維ウエブは、例えばカード機を用いたカード法、紡糸ノズルから紡出された溶融状態の繊維をイジェクタで延伸しコンベアベルト上に堆積させる方法、エアレイド法などによって形成することができる。次いで、各繊維ウエブの構成繊維の交点を所定の手段によって結合させて第1層11の原反及び第2層12の原反を得る。結合には、熱の付与による熱溶融繊維の融着、バインダによる接着、エンボス装置や超音波溶着装置による溶融圧密化などが用いられる。特に嵩高さ及び柔軟性の付与が容易なことから、熱風の吹き付けによる融着を用いることが好ましい。なお本実施形態においては、第1層11の幅を、第2層12の幅よりも大きくしておく。
【0031】
各層の原反はロール状に巻回されており(図示せず)、そのロールから繰り出される。第1層11の原反は長尺帯状の不織布として繰り出され、図3(a)に示すエンボス装置20へ送られる。エンボス装置20は、それぞれ加熱されているか又は加熱されていないロール21及びロール22の一対のロールを備えている。ロール21にはその周面に多数のピン23が突設されている。一方、ロール22はその表面が平滑である平滑ロールとなっている。そして、ロール21とロール22との挟圧によってエンボス加工が施されるようになっている。各ロール21,22の周速と、第1層11の原反の搬送速度は同じになっている。
【0032】
一方、第2層12の原反も長尺帯状の不織布として繰り出され、図3(a)に示すカットスリップ装置24へ送られる。カットスリップ装置24は、カッターロール25及びアンビルロール26を備えている。カッターロール25は、カットスリップ装置24に導入された第2層12の原反を一定間隔で幅方向にわたって裁断する。アンビルロール26には吸引手段(図示せず)が設けられており、裁断された毎葉の第2層12を該ロール26の周面に保持可能となしている。アンビルロール26は、エンボス装置20の各ロール21,22の周速及び第1層11の原反の搬送速度と同速の周速で回転している。
【0033】
カットスリップ装置24に導入される第2層12の原反は、その搬送速度がアンビルロール26の周速よりも遅くなっている。従って、該原反がアンビルロール26の周面に到達してからカッターロール25で切断されるまでの間、該原反はアンビルロール26の周面を空滑りする(スリップする)ことになる。このような方式で該原反を切断すると、アンビルロール26の周面には、毎葉となった複数の第2層12が所定間隔をおいて保持されることになる。
【0034】
アンビルロール26の周面に保持された毎葉の第2層12は、次いでエンボス装置20の平滑ロール22に転写する。この転写を可能にするために、平滑ロール22にも、アンビルロール26と同様の吸引手段が備えられている。アンビルロール26の周速が、エンボス装置20の各ロール21,22の周速と同速であることは先に述べた通りなので、平滑ロール22に転写した各毎葉の第2層12においては、アンビルロール26の周面に保持されていたときの間隔が維持される。平滑ロール22の回転が進むと、その周面に保持されていた毎葉の第2層12は、長尺帯状の第1層11と合流して第1層11上に間欠的に配置される。これと共に、第1層11及び第2層12が、ロール21とロール22との挟圧によってエンボス加工されて多数の接合部15が形成され、両者が部分的に接合される。この状態を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、接合部15は、重ね合わされた2枚の不織布における溝部となるべき位置に、各接合部15が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように列状に形成される。図3(b)中、この接合部列を符号Rで示す。
【0035】
長尺帯状の第1層11及びこれに間欠的に接合された毎葉の第2層12は、次いで開孔装置27へ送られる。開孔装置27へ送られる前に、これら両者は蛇行修正器28上を通過する。蛇行修正器28においては、相対的に幅広である第1層11の一方の側縁の位置がモニターされる。そして該側縁が適正な位置に存してないと蛇行修正器28が判断した場合には、該側縁を適正な位置へ復帰させる制御が行われる。この制御を行う理由は、エンボス装置20で形成された各接合部列の位置に、開孔部列を確実に形成するためである。つまり、蛇行修正器28は第1層11(及び第2層12)の幅方向の位置ずれを修正するために用いられる。
【0036】
一方、第1層11(及び第2層12)の長手方向の位置ずれを修正するためには、開孔装置27に設置されたピンロール29及び受けロール30の周速を制御すればよい。
【0037】
開孔装置27に備えられたピンロール29においては、その周面に、ロール回転方向に沿って、先端が尖鋭な多数の穿孔ピン31が列状に突設され且つ該ピン列がロール幅方向に多列に並設されている。一方、受けロール30は、ピンロール29の周面に突設された穿孔ピン31の間に嵌入する突条部(図示せず)を多数有する突条ロールからなる。
【0038】
第1層11と第2層12の積層体が開孔装置27に導入されると、第1層11の側から第2層12の側に向けて穿孔ピン31が貫通する。貫通した穿孔ピン31は、受けロール30における突条部間に貫入する。この操作によって、接合部15が列状に形成された位置に開孔16が形成される。この状態を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、各接合部15が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように該接合部15が列状に形成され、その接合部列Rが多列に形成された状態下に、各接合部列Rにおいて、前後隣り合う接合部13間に開孔16が形成される。従って、接合部15の形成位置と異なる位置に開孔16が形成される。
【0039】
開孔16の形成と同時に、開孔16の形成位置にロールの回転方向に延びる溝部13が形成される。更に隣り合う溝部13間には、同じくロールの回転方向に延びる畝部14が形成される。つまり、接合された第1層11及び第2層12に、それぞれ一方向に延びる溝部13及び畝部14が交互に形成され、且つ溝部13及び畝部14の形成と同時に両層を貫通する開孔16が形成される。開孔16の形成によって、第1層11の構成繊維と第2層12の構成繊維とが交絡し、両層が開孔16の縁部及びその近傍において接合される。
【0040】
開孔16を形成するに際しては、ピンロール29を60〜260℃に加熱して使用すると、首尾良く開孔16を形成できるので好ましい。
【0041】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記の製造方法は、図1及び図2に示す表面シートの好ましい製造方法であるが、本発明の製造方法は他の形態の表面シートの製造にも適用することができる。そのような表面シートとしては、例えば接合部及び開孔の配置パターンは図1及び図2に示す実施形態と同様であるが、前述した溝部及び畝部を有さない平面的な表面シートが挙げられる。
【0042】
また前記の製造方法においては、溝部13及び畝部14の形成と同時に開孔16を形成したが、これに代えて溝部13及び畝部14の前後に開孔16を形成してもよい。
【0043】
また前記の製造方法においては各接合部列における前後隣り合う接合部間に開孔を形成したが、開孔の形成位置はこれに限られない。
【0044】
また前記の製造方法においては、接合部及び開孔を溝部に形成したが、溝部以外の位置に接合部及び開孔を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の製造方法の好ましい一実施形態に基づき製造された吸収性物品の表面シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す表面シートの平面図である。
【図3】図3(a)は図1に示す表面シートを製造するために用いられる装置を示す模式図であり、図3(b)は重ね合わされた2枚の不織布に接合部が形成される状態を示す模式図であり、図3(c)は、接合部の形成後に開孔が形成される状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
10 吸収性物品の表面シート
11 第1層
12 第2層
13 溝部
14 畝部
15 接合部
16 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた同一の又は異なる2枚の不織布を部分的に接合して多数の接合部を形成し、次いで両不織布を貫通する開孔を多数形成する工程を有する吸収性物品の表面シートの製造方法。
【請求項2】
接合部の形成位置と異なる位置に開孔を形成する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
各接合部が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように該接合部を列状に形成すると共に、その列を多列に形成し、
各列において、前後隣り合う接合部間に開孔を形成する請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
接合された2枚の不織布に、それぞれ一方向に延びる溝部及び畝部を交互に形成し、且つ該溝部及び該畝部の形成と同時に又はその前後に両不織布に開孔を形成する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
重ね合わされた2枚の不織布における溝部となるべき位置に、各接合部が一定の間隔をおいて一直線上に位置するように該接合部を列状に形成し、しかる後に接合部が列状に形成された位置に溝部及び開孔を形成する請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
連続して繰り出される長尺帯状の不織布に、毎葉の不織布を間欠的に配置して両不織布を接合する請求項1ないし5の何れかに記載の製造方法。
【請求項7】
同一の又は異なる2枚の不織布を重ね合わせてなる吸収性物品の表面シートであって、
該シートには、それぞれ一方向に延びる溝部及び畝部が交互に形成されており、
各溝部に、両シートを接合する接合部と、両シートを貫通する開孔とが一定間隔をおいて交互に形成されている吸収性物品の表面シート。
【請求項8】
溝部及び畝部の延びる方向と直交する方向を幅方向としたとき、幅方向中央域に形成された開孔の直径よりも、幅方向側部域に形成された開孔の直径が小さくなっている請求項7記載の吸収性物品の表面シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−151678(P2007−151678A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348220(P2005−348220)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】