説明

吸収性複合体の製造方法

【課題】高吸収性ポリマーの吸収能力を十分に発揮させる。
【解決手段】トウからなる繊維集合体10に対し、スプレーノズル11により高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、捲縮加工装置13により捲縮加工を施し、しかる後、紫外線ランプ14による紫外線照射によって繊維集合体10に保持された単量体を重合させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン等の製造に有用な吸収性複合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつ、生理用ナプキン等に用いられる吸収性複合体は、一般に紙、パルプ、不織布等の短繊維からなる繊維集合体上に、架橋したポリアクリル酸等の吸水性樹脂粉末を均一に分散させ、固着させて製造されている。しかし、この製造方法による場合は、繊維集合体に吸水性樹脂粉末を確実に固着し難い。また粉末を取扱う点で操作が煩雑である。
【0003】
上記問題を解決するため、アクリル酸及びアクリル酸塩からなる単量体混合物水溶液を繊維集合体に噴霧した後、これに電離放射線や微粒子イオン化放射線等を照射することにより、噴霧した単量体混合物を重合させて吸水性樹脂を繊維集合体に固着させる方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかしながら、従来の吸収性複合体では、高吸収性ポリマーの使用量の割りには吸収性能が不十分になるといった問題点があった。
【特許文献1】特開平1−292103号(第1〜3頁)
【特許文献2】特開平2000−328456号(請求項1)
【特許文献3】特開平9−67403号(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、高吸収性ポリマーの吸収能力を十分に発揮させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について本発明者らが鋭意研究したところ、従来の吸収性複合体は空隙が小さく、かつ繊維相互が比較的強固に交差し、絡み合っているために、高吸収性ポリマーが液を吸収して膨張するのに十分な容積がなく、また繊維相互の拘束力を超えて膨張することが困難であることが判明した。これでは、高吸収性ポリマーの使用量の割りには吸収性能が不十分になってしまう。以下の本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0007】
<請求項1記載の発明>
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させることを特徴とする吸収性複合体の製造方法。
【0008】
(作用効果)
本発明は、繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させるにあたり、敢えてトウ(繊維束)からなる繊維集合体を用いたものである。トウからなる繊維集合体は短繊維のものよりも嵩高にすることができるため、高吸収性ポリマーの膨潤に十分な空隙を確保できるとともに、繊維相互の絡み合いが少なく、高吸収性ポリマーの膨張に応じて空隙が広がる(膨張する)ことができる。よって、従来のような吸収阻害が発生し難くなり、高吸収性ポリマーが本来有する吸収能力を十分に発揮させることができるようになる。
【0009】
一方、トウは連続繊維であるため、例えば一般的な吸収体のように短繊維と高吸収性ポリマー粒子とを混合積繊するような製造手法を採ることができず、トウからなる繊維集合体に高吸収性ポリマー粒子を散布しても、高吸収性ポリマー粒子を繊維集合体内全体に均一に分散させ且つ保持させるのは不可能に近い。これに対して、本発明では、繊維集合体内部に液体の単量体が容易に分散され、その後に高吸収性ポリマーとなるため、高吸収性ポリマーを繊維集合体内全体に均一に保持させることができる。
【0010】
<請求項2記載の発明>
単量体を含む液を保持させた後であって、単量体を重合させる前のトウからなる繊維集合体に外力を加える、請求項1記載の吸収性複合体の製造方法。
【0011】
(作用効果)
このように、単量体液を繊維集合体に保持させると、一部の単量体液は繊維間に跨って膜状に保持される。これをそのまま重合させると繊維相互が高吸収性ポリマーを介して接合され、繊維間空隙が減少するとともに、繊維間空隙の膨張が困難になる。これに対して本項記載のように、単量体液保持後かつ重合前に捲縮加工等による外力を加えると、上記膜状化が解消され、繊維間に跨って膜状に保持されていた単量体液は繊維表面に移動し、繊維間に空隙が形成され、そして、この状態で重合が行われる。よって、最大限の繊維間空隙を確実かつ容易に確保できるとともに、繊維間空隙の膨張も阻害され難くなる。
【0012】
<請求項3記載の発明>
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させてなることを特徴とする吸収性複合体。
【0013】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【0014】
<請求項4記載の発明>
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させてなる吸収性複合体を備えたことを特徴とする吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり本発明によれば、高吸収性ポリマーが本来有する吸収能力を十分に発揮させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明に係る吸収性複合体の製造方法を示しており、主に、連続的に供給される帯状のトウからなる繊維集合体10に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液(以下、単量体液ともいう)を保持させる第一工程と、繊維集合体に保持させた単量体を重合させる第二工程とから構成される。
【0018】
(第一工程について)
第一工程では、連続帯状のトウからなる繊維集合体10が供給される。本発明におけるトウからなる繊維集合体10としては次のようなものが好適に用いられる。すなわち、本発明に用いる繊維集合体10のトウを構成する繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0019】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0020】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0021】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0022】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0023】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0024】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0025】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0027】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0028】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0030】
トウからなる本発明の繊維集合体10は公知の方法により製造でき、その際、本発明では所望のサイズ、嵩となるように開繊される。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する高吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。
【0031】
トウの開繊度合いを調整することにより、繊維集合体10の密度を調整することができる。本発明の繊維集合体10としては、厚さを10mmとしたときの繊維密度が0.0075g/cm3以下、特に0.0060〜0.0070g/cm3であるものが好適である。過度に繊維密度が高くなると、トウからなる繊維集合体10を用いることによる利点が少なくなり、例えば軽量化や薄型化を図り難くなる。また、繊維集合体10の目付けは、0.0075g/cm3以下、特に0.0060〜0.0070g/cm3であるものが好適である。繊維目付けは、原反となるトウの選択、あるいはその製造条件により調整できる。
【0032】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行に伴なって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0033】
図2は開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ1が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアーを用いる拡幅手段2と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール3,4,5とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス6に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体10として形成されるようになっている。繊維集合体10は、第一工程のラインと直結し、製造した繊維集合体10を吸収性複合体の製造ラインに直接に送り込むことができる。
【0034】
一方、第一工程では、供給される連続帯状の繊維集合体10に単量体液が保持される。この単量体液としては、重合により高吸収性ポリマーとなるものであれば特に限定されないが、アクリル酸および/またはその塩(以下アクリル酸系単量体と総称する)を主成分とする単量体の水溶液が好適に用いられる。好ましい単量体は、アクリル酸の20〜90モル%がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に変換されているアクリル酸とアクリル酸塩との混合物である。アクリル酸系単量体以外の単量体も併用することができ、具体例としては、メタクリル酸またはその塩、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2―アクリルアミド―2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩等が挙げられる。かかる単量体の好ましい使用量は、アクリル酸系単量体との合計量を基準にして20モル%以下である。
【0035】
単量体液における単量体の好ましい濃度は、20〜80質量%で、更に好ましくは40〜60質量%である。単量体濃度が高ければ、繊維集合体上に吸水性樹脂を多量に固着させ易く、また単量体を重合させた後の乾燥処理に際し、必要とする熱エネルギーを削減できる。従って、可能な限り高濃度の単量体液を使用することが好ましい。通常は、単量体の飽和溶解度付近の濃度が選択される。
【0036】
単量体液には、必要に応じて、単量体以外に架橋剤および重合開始剤等を添加することができる。架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルホスフェート等が例示できる。架橋剤の添加割合は、単量体合計質量に対して100〜1000ppmが好ましく、300〜750ppmが特に好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤や、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤等、公知のあらゆる重合開始剤を用いることができる。熱重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイド等の水溶性ラジカル重合開始剤等を用いることができる。これらの化合物は、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸またはアミン等の還元性化合物と併用して、レドックス系重合開始剤として使用しても良い。また、光重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩等のアゾ化合物、1−ベンゾイル−1−ヒドロキシシクロヘキサン及びベンゾフェノン等のケトン、ベンゾイン及びそのアルキルエーテル、ベンジルケタール類、並びにアントラキノン誘導体等の紫外線照射によりラジカルを発生させるものを用いることができる。
【0038】
光重合開始剤の添加量は、単量体に対して100〜2000ppmが好ましい。光重合開始剤の濃度が100ppm未満の場合は、充分に重合が起らず、また2000ppmを超える場合は得られる重合体の重合度が低下する。さらに光重合開始剤に加えて、熱分解型ラジカル重合開始剤を併用するのは好ましい形態である。この開始剤の併用により、UV重合と並行的に熱重合も起り、その結果重合転換率が上がり未反応単量体の残存量を低減できる。熱分解型ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体に対して100〜5000ppmが好ましく、特に500〜2000ppmが好ましい。熱分解型ラジカル重合開始剤の重合温度は50〜80℃が好ましく、従って熱分解型ラジカル重合開始剤としては、水中にて80℃以下で分解してラジカルを発生する化合物が好ましい。具体的には過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を用いることができる。
【0039】
単量体液には、更に添加剤として、連鎖移動剤や界面活性剤等を必要により添加しても良い。
【0040】
単量体液は、図1に示すようにスプレーノズル11により繊維集合体10に散布しても良く、また図3に示すように容器12に貯留された単量体液12M中に繊維集合体10を通過させ、繊維集合体中10に単量体液12Mを含浸させても良い。
【0041】
また、単量体液は、繊維集合体10に噴霧することにより、繊維集合体10に独立した微細粒子状に保持させることもできる。単量体液を霧状にする方法としては、公知の微粒化技術を利用できる。例えば、滴化法、スプレーノズルを用いた液滴化法、回転盤型アトマイザーを用いた液滴化法、超音波法等が挙げられる。噴霧液滴の平均径は、50〜500μmが好ましい。平均径が50μmに満たない場合は、繊維集合体10に噴霧した液滴が繊維集合体10に付着することなく裏側まで突抜けやすくなるため、繊維集合体10へ付着し難くなる場合がある。液滴の平均径が500μmを超える場合は、液滴の付着が不均一となる場合がある。50〜500μmの大きさの単量体液は重合、乾燥工程を経ることにより、略30〜300μmの粒子状の高吸収性ポリマーとなって、繊維集合体10に固着される。
【0042】
単量体液の保持量は、適宜定めることができるが、重合後における繊維集合体10に対する高吸収性ポリマーの固着量が5〜500g/m2となる量が好ましく、特に20〜300g/m2が好ましい。
【0043】
このようにして単量体液が保持された繊維集合体10は、そのまま第二工程に供給しても良いが、より好ましくは、単量体の重合に先立ち繊維集合体10に外力を加え、繊維間に跨る単量体液膜を解消させる。具体的方法としては、繊維集合体に振動を与える、繊維集合体に空気流を通過させる等でも良いが、繊維集合体の製造時にトウの捲縮を行わない或いはある程度まで捲縮を行っておき、この段階、すなわち単量体を含む液を保持させた後であって、単量体を重合させる前に捲縮加工を施すのも好ましい形態である。図1に示す形態では、このための捲縮加工装置13が設けられている。
【0044】
次いで、単量体液が保持された繊維集合体10は、第二工程に送られ重合がなされる。単量体の重合は、一般的なラジカル重合法によって行うことができ、単量体液の組成に応じて適宜の手段により重合を開始させれば良い。重合方法としては、熱によりラジカルを発生する化合物を重合開始剤として用いる熱重合法、または紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合開始させる方法等が採用できる。本発明では、好ましくは熱重合法または光重合開始剤の存在下に紫外線照射する方法(以下、UV照射重合法という)であり、特に好ましくはUV照射重合法である。
【0045】
重合に際しては、単量体液を取り囲む雰囲気を窒素ガス等の不活性ガスで置換し、酸素を極力排除することが好ましい。
【0046】
UV照射を行う際の紫外線ランプとしては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の250〜450nmの波長を照射可能なもので、30〜240W/cmのランプ入力の水銀ランプが好ましい。紫外線照射量は100〜10000mj/cm2、より好ましくは2000〜6000mj/cm2である。必要な線量に応じて水銀ランプを多数並べて使用することができる。図1に示す形態ではこの紫外線ランプ14が示されている。
【0047】
UV照射により単量体の大半(約90%以上)が5〜60秒程度で重合を完結する。この際、重合温度は繊維集合体に塗布された単量体水溶液の微粒子の温度として80〜90℃程度と推測される。このようにして、水分を15〜30質量%程度および未反応単量体を0.1〜10質量%含む含水重合体粒子が繊維集合体10上に形成される。さらに適当な時間加熱または保温を継続し、未反応単量体を低減させるとともに含水重合体粒子を乾燥させることにより、吸収性複合体20が得られる。本発明の吸収性複合体20の製造方法では、繊維集合体10に対する高吸収性ポリマーの固着量は100g/m2以上であるのが好ましく、特に150〜1000g/m2であるのが好ましい。
【0048】
得られた吸収性複合体20は、吸水性能(吸水速度、吸水量、液拡散性、液逆戻り防止性等)をより一層向上させる目的で、必要に応じて更に熱圧縮することができる。熱圧縮は熱プレス、熱ロールまたはエンボスロール等を用いて行うことが好ましい。熱圧縮温度は、50〜150℃が好ましく、70〜120℃がより好ましい。熱圧縮温度が50℃未満の場合は十分な圧縮効果が得られず、150℃よりも高い場合は繊維集合体が熱溶融して得られる吸収性複合体の柔軟性が損われる場合があるので、好ましくない。熱圧縮圧力は、0.01〜100MPaが好ましく、0.1〜10MPaがより好ましい。熱圧縮時間は、熱圧縮温度及び熱圧縮圧力により異なるが、1〜100秒が好ましい。
【0049】
工業的規模で熱圧縮する場合は、特に熱ロールを用いることが好ましい。具体的には、図1に示すように一対のロール15,16を1〜100kg/cmの線圧になるように加圧しながら、吸収性複合体20を連続的にロール15,16間に導き、ロール15,16間で熱圧縮する。熱圧縮に用いる一対のロール15,16の間隙は熱圧縮される吸収性複合体20の厚さにもよるが、通常10〜500μmが好ましい。10μm未満の場合は、吸収性複合体20が切断される場合があり、また500μmを超える場合は圧縮効果が不十分になる。
【0050】
一対のロール15,16は、少なくとも一方のロールに凹凸模様が形成されていることが好ましい。凹凸模様の深さは、0.001mm以上、好ましくは0.01〜1mmが好ましい。凹凸模様は、10mm以下の間隔で凹凸が繰返されているものや、直径10mmの円に収る模様が10mm以下の間隔で連続的に形成されていることが好ましい。繰返し間隔が10mmを超える模様や、10mmの円に収らない模様の場合は繊維集合体を圧縮することにより生じる利点が不十分となるおそれがある。
【0051】
かくして、製造された吸水性複合体20は、図4に示すように、高吸収性ポリマー22の膨潤に十分な空隙が確保されるとともに、繊維21,21相互の絡み合いが少なく、高吸収性ポリマー22の膨張に応じて空隙が広がる(膨張する)ことができる。よって、従来のような吸収阻害が発生し難くなり、高吸収性ポリマー22が本来有する吸収能力を十分に発揮させることができるようになる。
【0052】
他方、上記第一工程〜第二工程までの部分は、一回または複数回繰り返し行い、繊維集合体10に対する高吸収性ポリマーの付着量を増加させることができる。この場合1回当りの単量体液の塗布量は10〜1000g/m2が好ましく、さらに好ましくは50〜500g/m2である。また、先の工程における単量体液の重合が進み、重合率で50%以上となった段階で、次の単量体液を塗布するのが好ましい。先に塗布された単量体の重合率が50%未満の段階で次の単量体水溶液を塗布すると、単量体水溶液の液滴が半重合物と合一し、大きな粒子を形成する結果、得られる吸収性複合体20が硬くなり易く、また吸水性も不十分となり易い。このような単量体液の保持および重合操作の繰返し回数は、得られる吸収性複合体20の使用目的等を勘案して適宜決定することができる。
【0053】
またこのような単量体液の保持および重合操作の繰返しを行う場合、1サイクル毎に、カルボキシル基と反応性のエポキシ基等を複数有する表面処理液を複合体20に付着した高吸収性ポリマーに付与するのが望ましい。この操作により、先の工程で付与された高吸収性ポリマーの表面層の架橋度をさらに上げることができる。この表面処理剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオール、エチレンジアミン等のポリアミン等を用いることができる。表面処理剤の添加量は、吸水性樹脂粒子に対して100〜1000ppmが好ましい。
【0054】
(吸収性物品への応用形態)
図5及び図6は、本発明に係る吸収性複合体を含む吸収体を紙おむつに適用した例を示しており、使用者の肌側に位置する透液性の透液性表面シート31と、製品の外側に位置し、実質的に液を透過させない不透液性シート、例えばポリエチレン等からなる完全に液を透過させない不透液性裏面シート32との間に、前述の吸収性複合体からなる吸収体37が介在されたものである。
【0055】
この吸収体37は、前述の製造方法により製造した吸収性複合体20を適当な長さ、あるいは形状に切断することにより得ることができる。またこの吸収体37は、必要に応じて、クレープ紙等の液透過性シートにより包装することができる。
【0056】
裏面シート32は吸収体37より幅広の長方形をなし、その外方に肌触り向上のための不織布からなる外装シート38が設けられている。一方、透液性表面シート31は吸収体37より幅広の長方形をなし、吸収体37の側縁より若干外方に延在し、裏面シート32とホットメルト接着剤などにより固着されている(この固着部分を含めて本形態に関係する固着部分を符号*で示す)。
【0057】
おむつの両側部には、使用面側に突出する脚周り用起立カフスBが形成されている。この起立カフスBは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるサイドシート34と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は図示のように複数本の脚周り用弾性伸縮部材35とにより構成されたものである。サイドシート34は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましく、例えば不織布に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。
【0058】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されること、そして各弾性伸縮部材35の収縮力が作用することによって、脚周りでは、各弾性伸縮部材35の収縮力により起立カフスBが起立する。起立カフスBの起立部で囲まれる空間は、尿等の排泄物の閉じ込め空間を形成する。この空間内に尿等が排泄されると、その排泄物は表面シート31を通って吸収体37内に吸収され、この際、起立カフスBの起立部がバリヤーとなり、両脇からの体液の漏出が防止される。
【0059】
図示形態の紙おむつは、腹側部分および背側部分を有し、腹側部分および背側部分のいずれか一方(図示例は背側)の部分の両側端部に止着片37をそれぞれ有し、一方の部分の止着片37を他方の部分(図示例は腹側のターゲットテープ39)に止着することにより、胴回り開口部および一対の脚周り開口部が形成される、所謂テープ止着式紙おむつであるが、予め腹側および背側の両側端部が接合されたパンツ型紙おむつ、その他の体液吸収性物品にも適用できることはいうまでもない。
【0060】
他方、図7は、本発明に係る吸収性複合体の、紙おむつDPや生理用ナプキンNPに対する適用例を示している。吸収性複合体60は、そのトウの繊維(多数の線により示される)の連続方向が厚さ方向と直交する横方向に沿って設けられるのが望ましい。具体的には、図7(a)(b)に示すように、そのトウの繊維連続方向が物品の長手方向(前後方向)に沿うように設けられるのが望ましいが、図7(c)(d)に示すようにトウの繊維連続方向が物品の幅方向に沿うように設けられることもできる。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
アクリル酸ナトリウム70mol%、アクリル酸30mol%からなる単量体水溶液(単量体合計含有量42質量%)に、架橋剤としてテトラエチレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックスM−240)0.05質量%(単量体質量基準)を添加し、この単量体水溶液を20℃に冷却した。次いで、この単量体水溶液に窒素ガスを吹込み、溶存酸素濃度を1ppm以下に低減させた。
【0062】
この単量体水溶液に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン0.02質量%(単量体質量基準)、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.15質量%(単量体質量基準)を添加した。
【0063】
一方、トウからなる繊維集合体(繊維密度0.0065g/cm3、非捲縮)に、調製した単量体水溶液をスプレーノズルを用いて300g/m2(該水溶液の量で)の割合で散布した。この単量体水溶液をスプレーした繊維集合体に捲縮加工を施して、捲縮度を50個/インチとした後、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射した。紫外線光量は4000mj/cm2であった。得られた吸収性複合体は、吸水性樹脂が200g/m2固着した柔軟性のあるものであった。
【0064】
(実施例2)
予め捲縮度が50個/インチとなるように捲縮加工を施した繊維集合体を用い、単量体水溶液付与後の捲縮加工を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0065】
(比較例1)
トウからなる繊維集合体に変えて、PE/PPからなるエアスルー不織布(目付:40g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして吸収性複合体を得た。
【0066】
実施例1、2及び比較例1の吸収性複合体を以下に記載の試験法により評価した。その結果を表1に示した。なお、人工尿(10kg当り)は以下の組成のものである。
尿素/NaCl/MgSO4・7H2O/CaCl2・2H2O/純水=200g/80g/8.0g/3.0g/9709g
【0067】
(人工尿吸収量)
300mlのビーカーに6cmx7cmに切出した吸収性複合体、及び人工尿200mlを入れ、30分間室温で放置した。その後、人工尿を吸収して膨潤した吸収性複合体を人工尿中から取出し、200メッシュの濾布で付着した人工尿をぬぐい去り、その質量を測定した。人工尿吸水量A(kg/m2)を下記式(1)により算出した。
A=(W1−W2)/0.42 ・・・(1)
但し、W1は吸水後の、W2は吸水前の吸収性複合体の質量を示す。
【0068】
結果を表1に示した。この結果からも本発明の吸収性複合体が従来のものに比べて吸収性能に優れることが判る。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、紙おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品における吸収体として適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の吸収性複合体の連続的製造方法に用いる製造装置のフロー図である。
【図2】繊維集合体の製造フロー図である。
【図3】別の単量体液付与手段を示す概略図である。
【図4】本発明の吸収性複合体の微細構造を概念的に示した図である。
【図5】本発明の吸収性複合体の応用例を示す、展開状態の紙おむつの平面図である。
【図6】図5のII-II断面図である。
【図7】本発明の吸収性複合体の応用例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1…、2…、3…、4…、5…、6…、7…、8…、9…、10…トウからなる繊維集合体、11…スプレーノズル、13…捲縮加工装置、14…紫外線ランプ、15,16…熱ロール、20…吸収性複合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させることを特徴とする吸収性複合体の製造方法。
【請求項2】
単量体を含む液を保持させた後であって、単量体を重合させる前のトウからなる繊維集合体に外力を加える、請求項1記載の吸収性複合体の製造方法。
【請求項3】
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させてなることを特徴とする吸収性複合体。
【請求項4】
トウからなる繊維集合体に、高吸収性ポリマーの単量体を含む液を保持させた後、この単量体を重合させてなる吸収性複合体を備えたことを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−16719(P2006−16719A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194855(P2004−194855)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】