説明

吸排気カバー並びに誘導加熱調理器

【課題】本体の冷却効率の低下を抑制し、本体内の汚染を防止し、使用者の使い勝手が良く、意匠性の低下を防止可能な吸排気カバー並びに誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】誘導加熱調理器100の吸排気カバー40は、長手方向に平行且つほぼ等間隔に配された複数のスリットと、各スリットを跨るように配置される桟とを有するアルミニウム製の略矩形状の金属板で構成した。吸排気カバー40が本体10の後部上面の吸気口3、冷却風用排気口6及びロースター用排気口5の上に設置されるとき、桟42は冷却風用排気口6の上に位置づけられない構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器の吸気口及び排気口を覆う吸排気カバー並びにこの吸排気カバーを備えた誘導加熱調理器に関するものであり、特に吸排気カバーと吸気口及び排気口の位置関係に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱調理器の天板の後方且つ本体の後部上面に本体内部を冷却するための空気を吸入する吸気口と冷却後の空気を排出する排気口が設けられている。この吸気口及び排気口を覆う吸排気カバーとして、多数の通気穴を千鳥状に配した琺瑯製のものが知られている。(例えば特許文献1参照)。
また、近年デザインの向上を目的として琺瑯よりも薄くて平坦で、等間隔に複数のスリットを平行に配した金属製の吸排気カバーが出回るようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−301990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の誘導加熱調理器の吸排気カバーは琺瑯製であるため、壊れ易く、また厚さが比較的厚く、薄く引き延ばす展延加工やパンチングなどのプレス加工が難しいという問題がある。
【0005】
また、等間隔に複数のスリットを平行に配した金属製の吸排気カバーは、スリットの強度を確保するためにスリットと直交した複数の桟を備えている。また、従来の誘導加熱調理器では吸気口の開口面積よりも排気口の開口面積の方が小さい。従って、上記吸排気カバーが吸気口と冷却風用排気口とロースター用排気口を覆う際にこの吸排気カバーの桟が冷却風用排気口の上に位置すると、この桟により冷却風用排気口から排出される冷却風の圧力損失が発生し、その分、吸気口から吸入される冷却風の風量と冷却風用排気口から排出される冷却風の風量に差が発生する。これにより、本体内の空気圧が徐々に増加していき、やがて所定の圧力以上に到達すると、冷却風用排気口から排出されるべき冷却風が逆流したり、冷却風用排気口以外から排気が漏れ出したりしてしまう。冷却風の排気が風路内を逆流すると、冷却風の流れを妨害して冷却効率の低下を招いてしまう。また、冷却風用排気口から漏れ出した冷却風の排気がロースター用排気口へ排気されるべき油煙をロースター用ダクトの途中で引き込むので、油煙が本体内に漏れ出して本体内の壁面や天面だけでなく制御基板に搭載された部品に付着して汚染される。この汚染が蓄積すると、故障を招くことになる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するために為されたものであり、第1の目的は、本体の冷却効率の低下を抑制し、本体内の汚染を防止可能な吸排気カバー並びに誘導加熱調理器を提供することにある。
また、第2の目的は使用者の使い勝手が良く、意匠性の低下を防止可能な吸排気カバー並びに誘導加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸排気カバーは、長手方向に平行且つほぼ等間隔に配された複数のスリットと、各スリットを跨るように配置される桟とを有する略矩形状の金属板を備え、金属板が誘導加熱調理器本体の後部上面の吸気口、冷却風用排気口及びロースター用排気口の上に設置されるとき、桟は冷却風用排気口の上に位置しないように配置されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属板が誘導加熱調理器本体の後部上面の吸気口、冷却風用排気口及びロースター用排気口の上に設置されるとき、桟は冷却風用排気口の上に位置しないように配置されるので、排気口から排出される冷却風の圧力損失が発生しないため、誘導加熱調理器本体内の圧力上昇を抑制できる。これにより、冷却風用排気口から排出される冷却風が逆流して冷却風の流れを妨害することがないため、冷却風の冷却効率の低下を抑制できる。また、冷却風用排気口以外から排気が漏れ出すこともないため、ロースター用排気口へ向かう油煙を引き込むことによる本体内の汚染も防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】誘導加熱調理器全体を一部分解して示す斜視図である。
【図2】誘導加熱調理器の天板部を取り外した状態での本体部全体を示す斜視図である。
【図3】本体部全体の平面図である。
【図4】吸排気カバーの一例を示す図である。
【図5】吸排気カバーの別の例を示す図である。
【図6】吸排気カバーのさらに別の例を示す図である。
【図7】吸排気カバーのさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
ここでは、一例として加熱口が3個の3口型誘導加熱調理器を挙げて説明する。
図1〜図7は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示すものであって、ビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の例を示している。
図1は誘導加熱調理器全体を一部分解して示す斜視図である。
図2は誘導加熱調理器の天板部を取り外した状態での本体部全体を示す斜視図である。
図3は本体部全体の平面図である。
図4は吸排気カバーの一例を示す図である。
図5は吸排気カバーの別の例を示す図である。
図6は吸排気カバーのさらに別の例を示す図である。
図7は吸排気カバーのさらに別の例を示す図である。
【0011】
図1に示すように誘導加熱調理器100は本体10と本体10の上に載置され、耐熱性セラミックを含むトッププレート20から構成されている。本体10の正面(図1〜2においては下側)には、火力の設定や各種調理の開始指令の操作等を行う操作部1が設けられており、図3に示すようにトッププレート20の周囲の前側(図3において、前側は紙面の下側)にも操作部2が設けられている。また、図1〜2に示すように本体10の後方の上枠30には、本体10の外部から空気を吸気する吸気口3が本体10の左右の中心軸に対してほぼ対称の位置に1つずつ設けられ、さらに左右方向のほぼ中央にロースター4からの排気を排出するロースター用排気口5が1つ設けられ、このロースター用排気口5と左右の吸気口3の間に左右の中心軸に対してほぼ対称の位置に加熱コイル等を冷却する冷却風用排気口6が設けられている。2つの吸気口3と、1つのロースター用排気口5と、2つの冷却風用排気口6は2つの吸排気カバー40によって覆われている。本体10の中間部(上下方向の中間部であり、トッププレート20の下方に位置する)には、図2に示すように、前方の左右に1台ずつ加熱コイル7L、7Rが設けられており、左右方向のほぼ中央且つ後方にはラジエントヒーター7Cが設けられている。
また、トッププレート20の表面には、左右の加熱コイル7L、7Rとラジエントヒーター7Cのそれぞれの位置を示すマーク7LM、7RM、7CMが印刷されている。また、トッププレート20の表面の前方には、表示部21が設けられている。
【0012】
また、図3は本体10の吸気口3とロースター用排気口5と冷却風用排気口6の領域と吸排気カバー40との位置関係を示している。吸排気カバー40は、アルミニウム材の金属板を展延加工によって薄くて平坦な略矩形状の金属板に仕上げた後、この略矩形状の金属板の長手方向に平行且つほぼ等間隔に配された複数のスリットと、隣接するスリット間で構成される棒状体同士を接続する桟とを有するようにプレス加工による打ち抜きによって構成される。この吸排気カバー40は、吸気口3、ロースター用排気口5及び冷却風用排気口6を含む領域に着脱可能に設置される。また、吸排気カバー40は、図3及び図4に示すように桟42は金属板の長手方向の中央軸に対してほぼ対称に配置され、スリット41の長手方向にほぼ等間隔(図中では間隔A)に、スリット41と直交する直線状に2個配置されている。また、この吸排気カバー40は長手方向のほぼ中心軸に対して対称であり、短手方向のほぼ中心軸に対しても対称である。また、表裏対称である。
これにより、調理者が吸排気カバー40を設置する際に、吸排気カバー40を前後左右いずれの方向に反転させても同形状であり、表裏の判別なく装着可能となるため、誤装着を防ぐことができ、調理者の使い勝手が向上する。
【0013】
また、2つの吸排気カバー40を本体10の後部上面の左右に並んで配置された位置決め部(図示せず)に設置すると、2つの吸気口3と、1つのロースター用排気口5と、2つの冷却風用排気口6は完全に覆われるだけでなく、桟42が排気口6の上に位置しないように配置される。この状態は、吸排気カバー40を180°回転しても、表と裏を反転しても変わらない。
これにより、冷却風用排気口6から排出される冷却風の圧力損失が発生しないため、本体10内の圧力上昇を抑制できる。従って、冷却風用排気口から排出される冷却風が逆流して冷却風の流れを妨害するようなことがないため、冷却風の冷却効率の低下を抑制できる。また、冷却風用排気口6以外から排気が漏れ出すこともないため、ロースター用排気口5の油煙を引き込むことによる本体10内の汚染も防止することが可能となる。
【0014】
なお、上記の例では、アルミニウムで構成すると説明したが、これに限る必要はなく、引き延ばし加工やプレス加工が可能な材質のものであればどのようなものでも良い。
また、上記の例では、桟42はスリット41の長手方向にほぼ等間隔(図中では間隔A)に、2個配置されると説明したが、吸排気カバー40を前後左右いずれの方向に反転してさらに表裏を反転しても冷却風用排気口6の上に桟42が位置しないように配置されるならば、どのような構成にしても良い。
また、上記の例では、桟42は吸排気カバー40のスリット41と直交する直線状に設けられると説明したが、これに限る必要はない。
例えば、図5に示すように、桟42は吸排気カバー40のスリット41毎にこの吸排気カバー40の長手方向に所定の間隔でずれた位置に設けられ、全体として吸排気カバー40の短手方向にほぼ軸対称な略山形または略谷形の模様を描くように構成しても良い。この場合も上記と同様の効果奏する。
また、図6に示すように、桟42は吸排気カバー40のスリット41毎にこの吸排気カバー40の長手方向に所定の間隔でずれた位置に設けられ、全体として吸排気カバー40の短手方向にほぼ軸対称な市松模様を描くように構成しても良い。この場合も上記と同様の効果を奏する。
また、図7に示すように、吸排気カバー40が本体10の後部に形成された吸気口3と排気口5及び6の上に設置されるとき、吸排気カバー40のスリット41の、排気口6の上に位置する部分の開口面積は、それ以外の部分の開口面積よりも大きくなるように構成しても良い。これにより、冷却風の圧力損失が低減されるので、冷却効率が向上する。
【符号の説明】
【0015】
1 操作部、2 操作部、3 吸気口、4 ロースター、5 ロースター用排気口、6 冷却風用排気口、7 加熱コイル、7L 左加熱コイル、7R 、右加熱コイル、7C ラジエントヒーター、20 トッププレート、21 表示部、30 上枠、40 吸排気カバー、41 スリット、42 桟、100 誘導加熱調理器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に平行且つほぼ等間隔に配された複数のスリットと、各スリットを跨るように配置される桟とを有する略矩形状の金属板を備え、
前記金属板が誘導加熱調理器本体の後部上面の吸気口、冷却風用排気口及びロースター用排気口の上に設置されるとき、前記桟は前記冷却風用排気口の上に位置しないように配置されることを特徴とする吸排気カバー。
【請求項2】
前記桟は前記金属板の長手方向の中央軸に対してほぼ対称に配置されることを特徴とする請求項1記載の吸排気カバー。
【請求項3】
前記桟は前記金属板の、短手方向の中央軸に対してほぼ対称に配置されることを特徴とする請求項1記載の吸排気カバー。
【請求項4】
前記桟は前記金属板の、長手方向の中央軸に対してほぼ対称であり、短手方向の中央軸に対してほぼ対称に配置されることを特徴とする請求項1記載の吸排気カバー。
【請求項5】
前記金属板は表裏対称であり、
前記桟は前記金属板の表と裏でほぼ対称に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項6】
前記桟は前記金属板のスリットと直交する直線状に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項7】
前記桟は前記金属板のスリット毎にこの金属板の長手方向に所定の間隔でずれた位置に設けられ、全体として前記金属板の短手方向にほぼ軸対称な略山形または略谷形の模様を描くことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項8】
前記桟は前記金属板のスリット毎にこの金属板の長手方向に所定の間隔でずれた位置に設けられ、全体として前記金属板の短手方向にほぼ軸対称な市松模様を描くことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項9】
前記金属板が前記誘導加熱調理器本体の後部に形成された吸気口と排気口の上に設置されるとき、前記金属板のスリットの、前記冷却風の排気口の上に位置する部分の開口面積は、それ以外の部分の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項10】
前記金属はアルミニウム製であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸排気カバー。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれかに記載の吸排気カバーを備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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