説明

吸排気弁

【課題】タンク内から外気に通じる通気管に設けられる吸排気弁において、吸気弁が作動不良となったとしても外気を吸気でき、タンクが過度の減圧状態となることを防止できるようにすること。
【解決手段】タンク内から外気に通じる通気管Eに設けられ、タンク内の圧力を一定範囲内に維持する排気弁3と吸気弁7とを備えた吸排気弁において、吸気弁7のほかに、タンク内の圧力が所定圧力以下になったときに外気を吸気する補助吸気弁15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油類等の揮発性の液体を貯蔵するタンク内から外気に通じる通気管に設けられる吸排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性の液体を貯蔵するタンクとして、例えばガソリンスタンドの地下貯蔵タンクにおいては、図3に示すように、地下タンクA内の貯蔵燃料の液面をチェックするための液面センサ用配管Bの他に、地下タンクA内の貯蔵燃料の増減に関連する配管としては、ローリー車からの燃料を地下タンクAへ荷卸しするための配管Cと、需用者への燃料供給のための給油管Dがあり、さらには、地下タンク内のガス圧を調整するために地下タンクA内の空間から外気に開放された通気管Eが設けられている。すなわち、地下タンクAでは、燃料の出し入れ、気化などにより内圧が変化するため、通気管Eを設けて地下タンクAの気相部分と外気とを連通させ、地下タンクAの内圧と外気圧とを一致させるようにしている。
【0003】
従来、一般的に通気管は単なる管路として設けられ、その外気側の通気口には外部で火災が発生しても炎がタンク内に侵入しないように40メッシュ程度の防火網が取り付けられているものの、タンク内と外気は常に連通状態にあり、通常時においてガソリン等の有害蒸気がタンクから外気に放出され続けている状況にあった。
【0004】
ところが、近年、環境問題への認識の高まりにより、有害蒸気の外気への放出が問題視され、例えば、特許文献1に記載されているように、吸気弁及び排気弁を備えた構造のものが採用されつつある。また、本願出願人も、特願2005−224484において、通気管に適用する吸排気弁を提案した。
【0005】
図4は、本願出願人が提案した吸排気弁の構造を示す。図4に示す吸排気弁は、排気弁として弁本体1の上部に設けられた円形の排気口2と円板状の排気弁本体3とを備え、通常時は排気弁本体3が排気口2を上側から閉止し、タンク内の圧力が上昇すると、その圧力により上昇して排気口2を開放する機構となっている。また、吸気弁は、吸気弁本体7が通常時は排気弁本体3に設けられた吸気口8を下側から閉止し、タンク内の圧力が低下すると外気圧との差圧により下降して吸気口8を開放するように構成されている。
【特許文献1】特開2001−163400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図4に示すような吸排気弁においては、吸気弁及び排気弁が経年変化により劣化したり、タンクからの吹き上げ等による通気管内の錆等が吸気弁及び排気弁の作動部分に付着したりすると、正常に作動しなくなるおそれがある。吸気弁及び排気弁が正常に作動しなくなるとタンク内が加圧又は減圧状態となる。とくに吸気弁が作動不良となり外気を吸気できなくなると、タンクが過度の減圧状態となり、タンクが破損する等、重大な損害が発生する可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、タンク内から外気に通じる通気管に設けられる吸排気弁において、吸気弁が作動不良となったとしても外気を吸気でき、タンクが過度の減圧状態となることを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンク内から外気に通じる通気管に設けられ、タンク内の圧力を一定範囲内に維持する排気弁と吸気弁とを備えた吸排気弁において、吸気弁のほかに、タンク内の圧力が所定圧力になったときに外気を吸気する補助吸気機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
補助吸気機構は、吸気弁の吸気弁本体に設けられた補助吸気口を開閉する補助吸気弁から構成することができる。補助吸気弁による吸気を確実に行えるようにするには、補助吸気弁は、吸気弁の作動圧力よりも弱い圧力か同じ圧力で作動(開放)するように構成することが好ましい。一方、タンク内の揮発性の液体の種類や使用環境等によっては、補助吸気弁が常時作動すると補助吸気弁を構成する部品の経年変化、摩耗等が著しく顕在化するおそれがある。このようなおそれがある場合には、補助吸気弁を吸気弁の作動圧力より強い圧力で作動するようにして、補助吸気弁を常時作動させることなく、吸気弁に作動不良があった場合、すなわちタンク内の圧力が一定範囲外になった場合にのみ作動させるようにすることもできる。
【0010】
また、吸気弁が、タンクからの吹き上げ等による通気管内の錆等の付着によって作動不良を起こした場合でも、補助吸気弁に同様の作動不良が起きにくくするためには、補助吸気弁の補助吸気弁本体と補助吸気弁用弁座部との接触面積を、吸気弁の吸気弁本体と吸気弁用弁座部との接触面積より小さくすることが好ましい。
【0011】
また、補助吸気機構は、吸気弁の吸気弁本体の近傍に設けられた補助吸気口と、補助吸気口を塞ぐ弁膜とから構成することもできる。この場合、タンク内の圧力が吸気弁の作動圧力よりも低くなったときに、弁膜が破裂して外気を吸気するようにする。無論、弁膜は、タンクに損傷が発生するような減圧状態になる前に破裂させるように設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸気弁が作動不良となったとしても、補助吸気機構によって外気を吸気することができるので、タンク内が過度の減圧状態となることが防止され、タンクが破損する等の重大な損害発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。以下の実施例では、本発明の吸排気弁を通気管の先端に設けた。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の吸排気弁の第1実施例を示す。図1に示す吸排気弁は、排気弁として、弁本体1の上部に設けられた円形の排気口2と円板状の排気弁本体3とを備え、通常時は排気弁本体3が排気口2を上側から閉止し、タンク内の圧力が上昇すると、その圧力により上昇して排気口2を開放する機構となっており、開放の規定圧力(排気弁本体3が丁度上昇するときの圧力)として5kPaのものを使用した。また、排気弁本体3による排気口2の閉止を確実にするために、排気弁本体3と排気口2との間にはOリング4が設けられている。
【0015】
排気弁本体3の下側には錘5が一体的に設けられている。この錘5は排気口2より下方に位置するように延設されている。これによって、排気弁本体3の重心位置が排気口2よりも低い位置になり、排気弁本体3のバランスが良くなってスムーズに上下動できるようになる。また、錘5の重量を調整することで、開放の規定圧力が5kPaとなるように調整する。
【0016】
この錘5は、ガイド部6としての作用も兼ね備える。このガイド部6は排気弁本体3の外周に沿って等間隔に4箇所に設けられ、それぞれのガイド部6は排気口2の内周縁に内接するように設けられている。これによって、排気弁本体3が上下動する際はガイド部6にガイドされるので排気弁本体3の上下動がよりスムーズになる。なお、実施例ではガイド部6を4箇所に設けたが、少なくとも3箇所以上の複数箇所に設ければよい。ただし、各ガイド部は重量バランスがとれた等間隔に設けることが好ましい。
【0017】
図1に示す吸排気弁は、排気弁のほか吸気弁を備える。この吸気弁は、吸気弁本体7が通常時は排気弁本体3に設けられた吸気口8を下側から閉止し、タンク内の圧力が低下すると外気圧との差圧により下降して吸気口8を開放するように構成されている。吸気弁本体7は通常時は吸気口8を閉止するようにコイルスプリング9によって上方に付勢されており、その開放の規定圧力(吸気弁本体7が丁度下降するときの圧力)の調整はコイルスプリング9の強さを調整することにより行う。実施例では、その開放の規定圧力が−5kPaとなるように調整した。
【0018】
このように吸気弁と排気弁とを備える図1の吸排気弁においては、タンクへの荷卸し等による在庫量の増加により5kPa以上の高位の圧力がタンク内に生じる場合は、安全性の観点より排気弁が自動的に開放して圧力を外気に逃し5kPa以内での高位の圧力範囲を維持する。それ以外の時はOリング機構による気密性を高めた排気弁は常に閉じており、ほぼ密閉されたタンク内の空間を形成し揮発損失を積極的に低減する。
【0019】
また、計量機から車への給油等による在庫量の減少により−5kPa以下の低位の圧力がタンク内に生じる場合は、自動的に吸気弁が開放して外気を取り入れることにより、タンク内が−5kPa以下の負圧にならないようにする。それ以外の時は吸気弁は常に閉じており、ほぼ密閉された空間を形成し揮発損失を積極的に低減する。なお、計量機から車への給油等による在庫量の減少によりタンク内は一時負圧状態となるが、給油等終了後は液体燃料の揮発により5kPa以内で大気圧より高位の圧力が維持される。
【0020】
このように、図1の吸排気弁では吸気弁及び排気弁が正常に作動していれば、タンク内の圧力は、一定の圧力範囲内(±5kPa)に維持される。しかし、吸気弁及び排気弁が正常に作動しなくなるとタンク内が加圧又は減圧状態なる。とくに吸気弁が作動不良となり外気を吸気できなくなると、タンクが過度の減圧状態となり、タンクが破損する等、重大な損害が発生する可能性がある。
【0021】
そこで、図1の実施例では、補助吸気機構として補助吸気弁を設けた。この補助吸気弁は、補助吸気弁本体15が通常時は吸気弁本体7に設けられた補助吸気口16を下側から閉止し、タンク内の圧力が下降すると外気圧との差圧により下降して、図1(b)に示すように補助吸気口16を開放するように構成されている。したがって、吸気弁が作動不良となったとしても、補助吸気弁によって外気を吸気することができるので、タンクが過度の減圧状態となることが防止される。
【0022】
補助吸気弁本体15は通常時は補助吸気口16を閉止するようにコイルスプリング17によって上方に付勢されており、その開放の規定圧力(補助吸気弁本体15が丁度下降するときの圧力)の調整はコイルスプリング17の強さを調整することにより行う。実施例では、その開放の規定圧力が−3kPaとなるように調整し、吸気弁本体7より弱い圧力で作動するようにした。なお、補助吸気弁本体15が吸気弁本体7より強い圧力で作動するように設定する場合には、その開放の規定圧力は−6kPa程度にする。
【0023】
また、補助吸気弁本体15と補助吸気弁用弁座部21との接触面積は、吸気弁本体7と吸気弁用弁座部22との接触面積より小さくしている。これによって、吸気弁が、タンクからの吹き上げ等による通気管内の錆等の付着によって作動不良を起こした場合でも、補助吸気弁には同様の作動不良が起きにくくなる。
【0024】
補助吸気弁については、必ずしも吸排気弁と一体に設ける必要はなく、例えば、通気管E部分に設ける等、外気を吸気できる箇所に設けることが可能である。
【0025】
また、図1に示す吸排気弁は、その通気管E側にゴミ除去用のストレーナ20を備える。このストレーナ20を設けることよって、タンクからの吹き上げ等による通気管E内の錆等のゴミが捕捉され、吸気弁や排気弁にゴミが付着にくくなり、作動不良が発生しにくくなる。
【0026】
さらに、図1に示す吸排気弁は、外部で火災が発生しても炎が吸排気弁からタンク内に侵入しないように防火網10を備える。この防火網10は、40メッシュ程度の金属製網からなり、排気口2及び排気弁本体3の上方全体を覆うように設けられ、かしめピン11及び止め金12によって通気弁本体1に固定されている。また、防火網10の上方には雨や塵を除けるためにキャップ13が設けられ、タッピングビス14によって通気弁本体1に固定されている。このように、図1に示す吸排気弁では、排気口2及び排気弁本体3の上方(外気側)には防火網10とキャップ13以外には筺体を設けておらず、防火網10を排気口2及び排気弁本体3の上方全体を覆うように設けているので、通気口となる防火網部分を広くすることができ、充分な通気面積を確保できるようになっている。
【実施例2】
【0027】
図2は、本発明の吸排気弁の第2実施例を示す。この実施例は、補助吸気機構を吸気弁の周囲に設けた補助吸気口18と補助吸気口18を塞ぐ弁膜19とによって構成したものである。
【0028】
補助吸気口と弁膜についても、先の補助吸気弁と同様に、例えば通気管E部分に設ける等、外気を吸気できる箇所に設けることが可能である。
【0029】
補助吸気口18は、吸気弁の周縁に沿ってリング状に設けられ、その上端が弁膜19によって閉塞されている。この弁膜19は、タンク内の圧力が−10kPa以下になると破裂するように設定されている。すなわち、吸気弁が作動不良となったとしても、タンク内の圧力が−10kPa以下になると弁膜19が破裂して補助吸気口18から外気が吸気されるので、タンクが過度の減圧状態となることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の吸排気弁の第1実施例を示す。
【図2】本発明の吸排気弁の第2実施例を示す。
【図3】一般的なガソリンスタンドの配管を示す。
【図4】従来の吸排気弁の構造を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 弁本体
2 排気口
3 排気弁本体
4 Oリング
5 錘
6 ガイド部
7 吸気弁本体
8 吸気口
9 コイルスプリング
10 防火網
11 かしめピン
12 止め金
13 キャップ
14 タッピングビス
15 補助吸気弁本体
16 補助吸気口
17 コイルスプリング
18 補助吸気口
19 弁膜
20 ストレーナ
21 補助吸気弁用弁座部
22 吸気弁用弁座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内から外気に通じる通気管に設けられ、タンク内の圧力を一定範囲内に維持する排気弁と吸気弁とを備えた吸排気弁において、
吸気弁のほかに、タンク内の圧力が所定圧力になったときに外気を吸気する補助吸気機構を設けたことを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
補助吸気機構が、吸気弁の吸気弁本体に設けられた補助吸気口を開閉する補助吸気弁からなる請求項1に記載の吸排気弁。
【請求項3】
補助吸気弁が、吸気弁の作動圧力より弱い圧力か同じ圧力で作動するようにした請求項2に記載の吸排気弁。
【請求項4】
補助吸気弁が、吸気弁の作動圧力より強い圧力で作動するようにした請求項2に記載の吸排気弁。
【請求項5】
補助吸気弁の補助吸気弁本体と補助吸気弁用弁座部との接触面積を、吸気弁の吸気弁本体と吸気弁用弁座部との接触面積より小さくした請求項2〜4のいずれかに記載の吸排気弁。
【請求項6】
補助吸気機構が、吸気弁の吸気弁本体の近傍に設けられた補助吸気口と、補助吸気口を塞ぐ弁膜とからなり、タンク内の圧力が吸気弁の作動圧力よりも低くなったときに、弁膜が破裂するようにした請求項1に記載の吸排気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−161267(P2007−161267A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356744(P2005−356744)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000187024)昭和機器工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】