説明

吸気バルブ装置

【課題】減速装置の樹脂製歯車体とシャフトとの間に相対摩擦運動が生じないようにし、小型軽量で、過酷な使用環境下においても長期にわたり高性能が得られる吸気バルブ装置を提供することにある。
【解決手段】エンジンへ供給される吸気が流れる吸気通路4に配設されたバルブ7に、モータ8の駆動力を減速して伝える減速装置9は、中間歯車12を構成する歯車体12Aとシャフト12cとの二者間に、軸受保持部材13を介して転がり軸受である玉軸受14を配設することにより、歯車体12Aとシャフト12cとの間に複雑な相対摩擦運動が発生しないので、過酷な使用環境下においても、歯車体12Aの早期摩耗を招くことがなく、長期にわたり良好な減速性能を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のごとき車両に搭載され、エンジンに吸入される空気(吸気)量を調節するために用いられる吸気バルブ装置、とりわけエンジンへの吸気量をモータによりアクセル操作量に応じて可変制御するのに好適な電動式スロットルバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
従来から、この種の電動式スロットルバルブ装置としては、種々の構成や方式のものが実用に供されてきたが、モータにより減速装置を介して弁軸を回動し、この弁軸と一体に回動する弁体によってスロットルボディの吸気通路の開度を調節することにより、エンジンの吸気量をアクセル操作量に応じて可変制御するものが一般的である。
【0003】
その代表的な電動式スロットルバルブ装置について、図7を参照して概説する。
図7は、特許文献1で知られている電動式スロットルバルブ装置を示すものである。
この電動式スロットルバルブ装置は、エンジンへの吸気通路(図示しない)を形成するスロットルボディ100を有しており、このスロットルボディ100は、カバー110と共にハウジングHを構成するものであり、このハウジングHには、上記の吸気通路に配設され、吸気通路の開度を調節するバルブ120と、このバルブ120を駆動するためのモータ130と、このモータ130の駆動力を減速してバルブ120に伝える減速装置140とを具備している。
バルブ120は、弁体(図示しない)とこの弁体を回動する弁軸121とからなり、減速装置140は、モータ130の出力軸131に設けられた駆動歯車141、バルブ120の弁軸121に設けられた従動歯車142、およびこれらの両歯車141、142を連結する中間歯車143からなる減速歯車機構で構成されている。
そして、減速装置140の中間歯車143は、駆動歯車141に噛合する大径の第1歯車143a、従動歯車142に噛合する小径の第2歯車143b、およびこれらの両歯車143a、143bを同軸上で回転可能に支持するシャフト143cから構成されており、シャフト143cがスロットルボディ100(もしくはカバー110)に圧入等の手段で固定されている。
【0004】
(従来技術の問題点)
このような電動式スロットルバルブ装置は、各構成部品に小型軽量化が要求され、減速歯車機構で構成される減速装置140、とりわけ中間歯車143の第1、第2歯車143a、143bが樹脂により一体形成され、1個の歯車体143Aをなしている。さらに、駆動時に発生するギヤ騒音を抑制するために、歯車体143Aの樹脂材としてはPA46(ポリアミド46)で代表される比較的硬度の小さい材料が使用される傾向にある。
一方、車両の広範な活用、エンジンの高性能化等により、当該電動式スロットルバルブ装置の使用環境はますます厳しくなってきている。
このため、減速装置140の歯車体143Aが早期に摩耗し、駆動歯車141および従動歯車142との噛合い不良を招き、所期の減速機能を得ることができなくなるという問題があった。
【0005】
なお、上述の問題点では、吸気バルブ装置の代表例である電動式スロットルバルブ装置の事例について詳述したが、最近のエンジンには、吸気マニホールドから各気筒の吸気ポートへの吸気流を、より好適な混合気や流れに変更するためのタンブルバルブ装置やスワールバルブ装置が設置されるものがあり、これらの吸気バルブ装置にも、樹脂製歯車の減速装置が採用される傾向にあるが、樹脂製歯車の摩耗問題については全く同様の課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−214194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、かかる問題を究明すべく、種々の実験・研究を重ねたところ、装置全体に加わる強烈な振動やバルブの急激な開閉等に起因して、特に減速装置における歯車体(第1、第2歯車)とこの歯車体を回転可能に支持するシャフトとの間で複雑な相対摩擦運動が惹起され、歯車体側に滑り摩耗や叩かれ摩耗が発生する結果、歯車体と駆動歯車および従動歯車との噛合い不良を招いていることが判明した。
【0008】
本発明は、上記の究明結果に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、減速装置を構成する歯車体(第1、第2歯車)とシャフトとの間に相対摩擦運動が生じないようにし、小型軽量で、過酷な使用環境下においても長期にわたり高性能が得られる吸気バルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、エンジンへ供給される吸気が流れる吸気通路に配設されたバルブに、モータの駆動力を減速して伝える減速装置には、中間歯車を構成する第1、第2歯車とシャフトとの二者間、もしくはシャフトとハウジングとの二者間に、当該二者間を相対的に回転自在に結合する転がり軸受を配設していることを特徴としている。
【0010】
これにより、第1、第2歯車は、転がり軸受による回転作用を受けて、シャフトとの間に複雑な相対摩擦運動を一切生じることなく、シャフト上で円滑に回転するため、過酷な使用環境下においても、第1、第2歯車の早期摩耗を招くことがなく、長期にわたり良好な減速性能を得ることができる。
【0011】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、減速装置の第1歯車と第2歯車とが樹脂により一体成形された歯車体を構成していることを特徴としている。
このような構成にすることにより、樹脂成形という簡単な製造工程で歯車体が得られ、しかも歯車体自体の小型軽量化を図ることができる。また、歯車体の樹脂材として、PA46(ポリアミド46)で代表される比較的硬度の小さい材料を積極的に採用し、ギヤ騒音の抑制を図ることもできる。
【0012】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、請求項2の手段による構成に加え、減速装置は、歯車体がハウジングに固定されたシャフトに遊嵌されると共に、歯車体の一端面側に軸方向に突出する環状部を有する軸受保持部材が設けられており、この軸受保持部材の環状部の内周面とシャフトの外周面との間に転がり軸受が配設されることを特徴としている。
このような構成にすることにより、歯車体とハウジングとの間に形成される軸方向の僅かなスペースを有効活用して転がり軸受を配設することができ、装置全体の小型軽量化に貢献することができる。
【0013】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、軸受保持部材は、底面部と環状部をなす筒部とを有する断面コの字状のカップ型を呈していて、歯車体にインサート成形により固定されており、底面部は、歯車体に埋設され、筒部は、歯車体の一端面より軸方向に突出して、転がり軸受の外周面を保持することを特徴としている。
このような構成にすることにより、軸受保持部材自体に充分な強度が得られると共に、この軸受保持部材を歯車体にしっかりと取付けることができるため、軸受保持部材にて転がり軸受を強固に保持することができる。
【0014】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、軸受保持部材の底面部は、軸受保持部材が歯車体にインサート成形される際に樹脂の流動を助長する孔部を有していることを特徴としている。
かかる構成によれば、孔部により軸受保持部材自体の軽量化を図れると共に、軸受保持部材と樹脂との係合力を高め、軸受保持部材の歯車体に対する取付強度を一層向上することができる。
【0015】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、請求項2の手段による構成に加え、減速装置の歯車体にシャフトがインサート成形により固定されており、転がり軸受は、シャフトとハウジングとの間に配設されていることを特徴としている。
かかる構成によれば、シャフトを圧入手段により固定する場合には歯車体に無理な圧入荷重が加わり樹脂製歯車体の破損を招くことがあるのに対し、請求項6の手段を用いることによりそのような懸念を一切生じることなく、シャフトを歯車体に固定することができ、しかも、かかる固定のために特別な工数を要しなく、製造コストを安価にすることができる。
【0016】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、転がり軸受として、外輪および内輪を有する玉軸受を用いることを特徴としている。
かかる構成にすることにより、玉軸受は軸方向長が短いため、歯車体とハウジングとの間に形成される軸方向の僅かなスペースを、より一層有効活用して転がり軸受を配設することができ、装置全体の小型軽量化に一層貢献することができる。
【0017】
〔請求項8の手段〕
請求項8の手段を採用する吸気バルブ装置によれば、減速装置の歯車体は、大径の第1歯車と小径の第2歯車とが樹脂により一体成形され、シャフトは、ハウジングに固定されており、転がり軸受は、コロ軸受であって、小径の第2歯車とシャフトとの間に配設されることを特徴としている。
かかる構成に従えば、コロ軸受は径方向長が短いため、小径の第2歯車の軸方向長を最大限に有効活用してその内周面側に転がり軸受を配設することができ、転がり軸受の設置スペースを特に要しなく、装置全体の小型軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の吸気バルブ装置の実施例1として電動式スロットルバルブ装置を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1における減速装置の主要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1における減速装置の他の実施形態を拡大して示す主要部の断面図である。
【図4】図3中の軸受保持部材の単体構造を示すもので、(a)は正面図、(b)は(a)のX−X線に沿う縦断面図である。
【図5】本発明の実施例2として示す電動式スロットルバルブ装置における減速装置の主要部の拡大縦断面図である。
【図6】本発明の実施例3として示す電動式スロットルバルブ装置における減速装置の主要部の拡大縦断面図である。
【図7】従来技術に係る吸気バルブ装置(電動式スロットルバルブ装置)の中枢部の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
本実施例は、電動式スロットルバルブ装置への適用例を示すものであって、図1および図2に基づいて説明する。なお、以下の説明では、本装置の基本的な構成を図1により概説した後、特徴的な構成を主として図2により詳述する。
【0021】
〔実施例1の基本的な構成〕
スロットルボディ1はアルミダイキャスト等の手段を用いて成形された金属製のもので、樹脂モールド等の手段を用いて成形された樹脂製のカバー2と共にハウジング3を構成するものである。
スロットルボディ1には、中央部分に、エンジン(図示しない)へ供給される吸気を流す吸気通路4が形成されており、外面側に、有底筒状を呈するモータ収容ケース5と、カバー2が組み付けられることによって形成される減速装置収納室6とが直交するように配置されている。そして、スロットルボディ1は、複数の取付孔1aを用いて取付ボルト等の固定手段によりエンジンの吸気管(図示しない)に取付けられ、吸気通路4と吸気管との連通が図られる。
【0022】
吸気通路4には、この吸気通路4の開度を調節するためのバルブ7が配設されており、モータ収容ケース5には、バルブ7を駆動するための電動機で構成されるモータ8が収容されている。モータ8は、エンジン制御用のコントロールユニット(図示しない)からの指令により駆動されるものであり、出力軸8aが減速装置収納室6内へ突出している。
減速装置収納室6には、モータ8の駆動力を減速してバルブ7に伝える減速装置9が収納されている。なお、この減速装置収納室6は、後述するごとく、スロットルボディ1にカバー2が取付けられることにより密閉空間として形成されるものである。
【0023】
バルブ7は、スロットルボディ1に軸受1b等を介して回動可能に設けられる弁軸7aと、吸気通路4内に位置して弁軸7aに固定された弁体7bとからなり、この弁体7bが、吸気通路4の内径に対応した円形状の弁板をなしていて、弁軸7aと一体に回動することにより吸気通路4の開度を調節し、エンジンの吸気量を可変に制御するものである。なお、弁軸7aは一端側(図示右端側)が減速装置収納室6内に突出している。
【0024】
減速装置9は、電動モータ8の出力軸8aとバルブ7の弁軸7aとの間に配設されるもので、電動モータ8の出力軸8aに固着された小径の駆動歯車10と、バルブ7の弁軸7aの一端側に固着された略扇形状の従動歯車11と、これらの両歯車10、11間を連結する中間歯車12とからなる減速歯車機構として構成されている。この減速装置9は、電動モータ8の回転を歯車10、11、12間で減速し、バルブ7の弁軸7aに対して大きな回転駆動力を伝達するものである。
【0025】
減速装置9において、中間歯車12は、駆動歯車10に噛合する大径ギヤ部12a(第1歯車)と、従動歯車11に噛合する小径ギヤ部12b(第2歯車)と、これらの両ギヤ部12a、12bを同軸上で回転可能に支持するシャフト12cとから構成されている。両ギヤ部12a、12bは、PA46(ポリアミド46)で代表される比較的硬度の小さい樹脂材料にて一体形成されて歯車体12Aを構成している。また、シャフト12cは、例えば金属ロッド等により形成されており、他端側がスロットルボディ1に設けられた軸孔部1cに圧入等の手段で固定されている。
【0026】
〔実施例1の特徴的な構成〕
上記歯車体12Aには、カバー2側の端面、つまり大径ギヤ部12a側の端面に軸受保持部材13の一端側が埋設されている。この軸受保持部材13は、単なる円筒管で、例えばステンレス等の金属管もしくはスーパーエンプラと総称される機械的強度の大きい樹脂等よりなる樹脂管にて作製されており、歯車体12Aから露出した部分が環状部13Aをなしている。
そして、軸受保持部材13の環状部13Aとシャフト12cの反固定側端との間に、転がり軸受をなす潤滑剤封入型の玉軸受14が配設されている。この玉軸受14は、外輪14a、内輪14bおよびその間で転動するボール14cを有する汎用のもので、外輪14aが軸受保持部材13の環状部13Aの内周面に、内輪14bがシャフト12cの外周面に、それぞれ圧入等の手段にて固定されている。
かくして、歯車体12A自体はシャフト12cに対して遊嵌状態にあるものの、歯車体12Aは、軸受保持部材13および玉軸受14を介して、シャフト12cに対し、相対的に回転自在に支持される。よって、歯車体12Aとシャフト12cとの間には隙間があるものの、歯車体12Aとシャフト12cとの間に相対摩擦運動が一切生じることがない。 なお、軸受保持部材13の反固定側端がカバー2の中央筒部2a内に嵌入されているが、この両者の間は遊嵌状態になっており、カバー2が歯車体12Aの回転の障害になることもない。
【0027】
また、歯車体12Aの大径ギヤ部12aは、外周に形成される歯部15の軸方向幅よりも基部16の軸方向幅の方を狭く形成し、カバー2側に凹部17が設けられている。この凹部17を有効活用して、歯車体12Aと軸受保持部材13および玉軸受14とを軸方向に並置している。
【0028】
なお、樹脂製のカバー2は、全体として断面コの字状の容器型を呈しており、スロットルボディ1に複数のクリップ18を用いて着脱可能に取付けられるものであって、スロットルボディ1との間に形成される減速装置収納室6は、カバー2とスロットルボディ1との衝合面に配設されたシール部材19によってシールされている。これにより、減速装置収納室6内に埃、水分等が侵入するのを防止している。
【0029】
本実施例による電動式スロットルバルブ装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動並びに奏する効果について説明する。
【0030】
まず、車両の運転者がアクセルペダルを踏込み操作したときには、図示しないエンジン制御用のコントロールユニットによって運転者のアクセル操作量が検出され、このコントロールユニットからの指令信号に応じてモータ8が駆動され、その出力軸8aの回転は減速装置9を介して減速されつつバルブ7の弁軸7aに大きな回転力となって伝わる。これにより、バルブ7の弁体7bは弁軸7aを介してアクセル操作量に対応した角度分だけ回動し、エンジンの吸気量が弁体7bによって可変制御される。
【0031】
このようなエンジン運転時において、車両に搭載されているこの種の装置(電動式スロットルバルブ装置)は、車両の走行状態やエンジンの運転状態によって種々な振動を受け、特に減速装置9の中間歯車12は、バルブ7に対する急開閉指令に伴ってモータ8の急激な加減速回転を受けることになる。
【0032】
このような過酷な使用環境下においても、本実施例の形態によれば、中間歯車12は、歯車体12Aが玉軸受14を介してシャフト12cに回転自在に支持されており、また玉軸受14が回転のみを円滑に伝達する機能を有しているため、歯車体12Aは、シャフト12cに対して、当該シャフト12cと直接接することなく、つまり相対摩擦運動を一切起こすことなく、良好に回転する。
かくして、モータ8の回転は、減速装置9の駆動歯車10、中間歯車12、従動歯車11にて確実に減速され、バルブ7の弁軸7aに伝達される。
したがって、歯車体12Aの材質として、特に、ギヤ騒音低減のためにPA46(ポリアミド46)で代表される比較的硬度の小さい樹脂材料を用いても、歯車体12Aの摩耗問題を心配する必要がない。
【0033】
また、玉軸受14は、歯車体12Aと軸方向に並置されているものの、玉軸受14自体軸方向長が短く、しかも大径ギヤ部12aの凹部17を活用して配置されているため、歯車体12Aとカバー2との間に形成される軸方向の僅かなスペースを最大限に活用して玉軸受14(勿論軸受保持部材13も)を効果的に配置することができる。
【0034】
上記実施例1においては、単なる円筒管で構成される軸受保持部材13を用いたが、図3および図4に示すごときカップ型の軸受保持部材13を用いると、玉軸受14の取付強度を一層高めることができる。
【0035】
図3および図4において、軸受保持部材13は、上記の実施形態同様、例えばステンレス等の金属もしくはスーパーエンプラと総称される機械的強度の大きい樹脂等で作製されるもので、底面部13aと筒部13bとを有する断面コの字状のカップ型を呈しており、中間歯車12の歯車体12Aにインサート成形により固定されている。底面部13aには、シャフト12cを嵌挿する取付穴13cと、インサート成形される際に樹脂の流動を助長する孔部13dが設けられている。この孔部13dは、一対の扇形状孔として構成されており、取付穴13cに連なっている。
そして、軸受保持部材13は、底面部13aが歯車体12A(大径ギヤ部12aの基部16)に埋設されると共に、筒部13bが歯車体12Aの一端面より軸方向に突出して環状部13Aを形成しており、この環状部13Aをなす筒部13bに玉軸受14の外輪14aが圧入されている。
【0036】
このように構成される実施形態でも、中間歯車12の歯車体12Aが玉軸受14を介してシャフト12cに回転自在に支持されており、歯車体12Aの摩耗問題については、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、軸受保持部材13は、それ自体剛性を有する形状のカップ型をなしており、充分な強度が得られると共に、その底面部13aが歯車体12Aに埋設されており、軸受保持部材13をしっかりと歯車体12Aに取付けることができるため、玉軸受14を軸受保持部材13にて強固に保持することができる。
また、軸受保持部材13は、底面部13aに孔部13dを有しているため、この孔部13dが軸受保持部材13の重量軽減に資すると共に、インサート成形時における樹脂の流れを円滑にし成形樹脂を隅々まで行き渡らせることができるため、軸受保持部材13と歯車体12Aとの樹脂による係合力を高めて、軸受保持部材13の歯車体12Aに対する取付強度を、より一層向上することができる。
【0037】
なお、実施例1においては、中間歯車12のシャフト12cをスロットルボディ1に固定したが、カバー2に固定しても良く、この場合には樹脂製カバー2にシャフト12cをインサート成形することもできる。
【0038】
[実施例2]
〔実施例2の構成〕
次に、図5に基づいて、本発明による実施例2(電動式スロットルバルブ装置への適用例)を説明する。図5は、本発明の主要部である減速装置9を示すもので、本実施例の形態では、上記実施例1の形態と同一または均等の構成要素については、図示もしくは構造説明を省略し、上記実施例1との相違点についてのみ説明するものとする。
【0039】
実施例2の形態の特徴は、図5に示すように、減速装置9の中間歯車12において、歯車体12Aとシャフト12cとの間に、転がり軸受をなすコロ軸受20が直接配設される構成としたことにある。
減速装置9の中間歯車12は、大径ギヤ部12aと小径ギヤ部12bとが樹脂により一体成形された歯車体12Aと、この歯車体12Aを支持するシャフト12cとを有しており、シャフト12cの他端側がスロットルボディ1に設けられた軸孔部1cに圧入等により固定されている。
コロ軸受20は、複数個の細長い円柱状(針状)のコロ20aとこのコロ20aを回転可能に保持する外環20bとから構成され、外環20bが歯車体12Aの小径ギヤ部12bにインサート成形により固定されている。そして、コロ20aがシャフト12cの外周面上を転動する。
かくして、歯車体12Aは、シャフト12cに対し、相対摩擦運動を一切することなくコロ軸受20により回転可能に支持される。
なお、コロ軸受20は、前述の玉軸受14と同様に、外環と内環とを有するタイプのものを用いることもでき、この場合には内環をシャフト12cに圧入固定すれば良い。
【0040】
このように構成される本実施例の形態でも、歯車体12Aが、シャフト12cに対し、相対摩擦運動を一切することなくコロ軸受20の回転運動を受けて良好に回転するため、歯車体12Aの摩耗問題については、上述した実施例1の形態と同様な作用効果を得ることができる。
特に、本実施例の形態によれば、コロ軸受20は、玉軸受14に比して、径方向長が短く軸方向長が長い特質を有しており、この特質を活かした配置になっている。つまり、歯車体12Aは、減速機能上大径ギヤ部12aと小径ギヤ部12bという径差を有する歯車の組合わせにならざるを得ず、小径ギヤ部12bの軸方向長を最大限に活用して、小径ギヤ部12bの内周面側にコロ軸受20を配設している。
【0041】
なお、本実施例においては、中間歯車12のシャフト12cをスロットルボディ1に固定したが、シャフト12cをカバーに固定しても良く、この場合、樹脂製カバーにシャフト12cをインサート成形することができることは、上記実施例1と同様である。
【0042】
[実施例3]
〔実施例3の構成〕
次に、図6に基づいて、本発明による実施例3(電動式スロットルバルブ装置への適用例)を説明する。図6は、上記実施例2と同様に、本発明の主要部である減速装置9を示すもので、本実施例の形態では、前述の実施例1の形態と同一または均等の構成要素については、図示もしくは説明を省略し、前述の実施例1との相違点についてのみ説明するものとする。
【0043】
実施例3の形態の特徴は、図6に示すように、減速装置9の中間歯車12における歯車体12Aとシャフト12cとが固定されており、シャフト12cとスロットルボディ1との間に、転がり軸受をなすコロ軸受20が配設される構成としたことにある。
減速装置9の中間歯車12は、大径ギヤ部12aと小径ギヤ部12bとが樹脂により一体成形された歯車体12Aと、この歯車体12Aにインサート成形により固定されたシャフト12cとを有している。
このシャフト12cは、スロットルボディ1の軸孔部1cに嵌入されており、このシャフト12cと軸孔部1cとの間にコロ軸受20が配設されている。
コロ軸受20は、複数個の細長い円柱状(針状)のコロ20aとこのコロ20aを回転可能に保持する外環20bとから構成され、外環20bが軸孔部1cに圧入されており、コロ20aがシャフト12cの外周面上を転動する。
【0044】
なお、上記構成において、シャフト12cの抜け止めのために、シャフト12cには、他端部に形成された鍔部21と、この鍔部21に対して外環20bの軸方向長を隔てて形成された溝部22とが設けられている。まず、歯車体12Aにシャフト12cをインサート成形しておき、このシャフト12cにコロ軸受20を嵌挿したのち、カシメ等の手段により鍔部21を形成し、C型リング23を溝部22に嵌着することにより、鍔部21とC型リング23とによって外環20bを挟持することができ、この状態で外環20bを軸孔部1cに圧入すれば良い。
【0045】
かくして、歯車体12Aは、シャフト12cを介して、スロットルボディ1に対し、コロ軸受20により回転自在に支持される。
【0046】
このように構成される本実施例の形態では、歯車体12Aとシャフト12cとが完全に固定されているため、歯車体12Aのシャフト12cに対する摩耗問題は皆無となる。また、シャフト12cは、歯車体12Aにインサート成形により固定されているため、シャフト12cを圧入手段により固定する場合に比べて、歯車体12Aに無理な圧入荷重が加わり樹脂製の歯車体12Aを破損させる危惧が一切生じることなく、シャフト12cを歯車体12Aに固定することができる。しかも、かかる固定のために特別な工数を要しなく、製造コストを安価にすることができる。
【0047】
なお、本実施例では、シャフト12cとスロットルボディ1との間にコロ軸受20を配設したが、シャフト12cとカバー2との間にコロ軸受20を配設することも可能である。
【0048】
[変形例]
以上、実施例1〜実施例3について詳述し、図1〜図4に示す実施例1においては、転がり軸受として玉軸受14を用い、図5に示す実施例2および図6に示す実施例3においては、転がり軸受としてコロ軸受20を用いたが、これに限定されるものではなく、前者にコロ軸受を用い、後者に玉軸受を用いる等、転がり軸受の種類やその配置は本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変更することができるものである。
【0049】
なお、上述の実施例では、吸気バルブ装置の代表例である電動式スロットルバルブ装置への適用例について詳述したが、吸気マニホールドから各気筒の吸気ポートへの吸気流を、より好適な混合気や流れに変更するためのタンブルバルブ装置やスワールバルブ装置にも同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 スロットルボディ(ハウジングの一部)
2 カバー(ハウジングの一部)
3 ハウジング
4 吸気通路
7 バルブ
7a 弁軸
7b 弁体
8 モータ
9 減速装置
10 駆動歯車
11 従動歯車
12 中間歯車
12a 大径ギヤ部(第1歯車)
12b 小径ギヤ部(第2歯車)
12c シャフト
12A 歯車体
13 軸受保持部材
13a 底面部
13b 筒部
13c 取付穴
13d 孔部
13A 環状部
14 玉軸受(転がり軸受)
14a 外輪
14b 内輪
20 コロ軸受(転がり軸受)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへ供給される吸気が流れる吸気通路(4)に配設され、この吸気通路(4)の開度を調節するバルブ(7)と、
前記バルブ(7)を駆動するためのモータ(8)と、
前記モータ(8)に噛合結合される第1歯車(12a)、前記バルブ(7)に噛合結合される第2歯車(12b)、およびこの第1、第2歯車(12a、12b)を同軸上に支持するシャフト(12c)を有し、前記モータ(8)の駆動力を減速して前記バルブ(7)に伝える減速装置(9)と、
前記バルブ(7)、前記モータ(8)および前記減速装置(9)を担持するハウジング(1、3)と、
前記第1、第2歯車(12a、12b)と前記シャフト(12c)との二者間もしくは前記シャフト(12c)と前記ハウジング(1、3)との二者間に配設され、当該二者間を相対的に回転自在に結合する転がり軸受(14、20)とを具備する吸気バルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載した吸気バルブ装置において、
前記減速装置(9)は、前記第1歯車(12a)と前記第2歯車(12b)とが樹脂により一体成形された歯車体(12A)を有していることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載した吸気バルブ装置において、
前記減速装置(9)は、前記歯車体(12A)が前記シャフト(12c)に遊嵌されると共に、
前記歯車体(12A)の一端面側に軸方向に突出する環状部(13A)を有する軸受保持部材(13)が設けられており、
前記転がり軸受(14、20)は、前記軸受保持部材(13)の前記環状部(13A)の内周面と前記シャフト(12c)の外周面との間に配設されており、
前記シャフト(12c)は、前記ハウジング(1、3)に固定されていることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項4】
請求項3に記載した吸気バルブ装置において、
前記軸受保持部材(13)は、底面部(13a)と前記環状部(13A)をなす筒部(13b)とを有する断面コの字状のカップ型を呈し、前記歯車体(12A)にインサート成形により固定されており、
前記底面部(13a)は、前記シャフト(12c)に嵌まる取付穴(13c)を有し、前記歯車体(12A)に埋設され、
前記筒部(13b)は、前記歯車体(12A)の一端面より軸方向に突出して、前記転がり軸受(14、20)の外周面を保持していることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項5】
請求項4に記載した吸気バルブ装置において、
前記軸受保持部材(13)の底面部(13a)は、前記軸受保持部材(13)が前記歯車体(12A)にインサート成形される際に樹脂の流動を助長する孔部(13d)を有していることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項6】
請求項2に記載した吸気バルブ装置において、
前記減速装置(9)の前記シャフト(12c)は、前記歯車体(12A)にインサート成形により固定されており、
前記転がり軸受(14、20)は、前記シャフト(12c)と前記ハウジング(1、3)との間に配設されていることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載した吸気バルブ装置において、
前記転がり軸受(14)は、外輪(14a)および内輪(14b)を有する玉軸受(14)で構成されていることを特徴とする吸気バルブ装置。
【請求項8】
請求項2に記載した吸気バルブ装置において、
前記減速装置(9)の前記歯車体(12A)は、大径の前記第1歯車(12a)と小径の前記第2歯車(12b)とが樹脂により一体成形されており、
前記転がり軸受(20)は、コロ軸受(20)であって、前記第2歯車(12b)と前記シャフト(12c)との間に配設されており、
前記シャフト(12c)は、前記ハウジング(1、3)に固定されていることを特徴とする吸気バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197685(P2012−197685A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60952(P2011−60952)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】