説明

吸気系排気導入構造

【課題】内燃機関の吸気系でEGR装置の凝縮水が特定気筒に偏るのを防止する。
【解決手段】排気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水としてEGRチャンバー8の内壁面に水滴として付着した場合、車両の加減速や旋回により内燃機関に対する加速度が生じると、EGRチャンバー8内の水滴は内壁面を流れて床部8bから上方にある第3ピース2cの内壁面に集合する。しかしEGRチャンバー8の内壁面にはリブ20が隣接する排気分配路12間に相当する位置に配置されていることにより、凝縮水は排気分配路12の配列方向での移動が困難となる。したがってEGR装置からの凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。このことから特定の気筒のみに顕著な失火状態が生じることはなく、低周波数の振動を防止できる。したがってトランスアクスルなどでの車両共振を防止でき、車両ドライバーに違和感を生じさせることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数気筒の内燃機関の吸気系に配置したチャンバー内に内燃機関の排気を導入し、このチャンバーに配列して開口する気筒毎の排気分配路から、吸気マニホールドに気筒毎に設けられた吸気分岐経路に排気を導入する吸気系排気導入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気再循環(EGR)装置では、排気をサージタンクや吸気枝管(吸気分岐経路)に供給することで、吸気中に排気を混合させている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1では吸気マニホールドにEGRチャンバーを併設し、EGRチャンバーの排気分配路から、各吸気分岐経路に排気を分配していた。この排気分配路は、排気中の水蒸気が凝縮した凝縮水の排出が促進されるように、排気分配路の底面両側では湾曲壁面との間に角度を有して接続した構成とされている。
【0004】
特許文献2については吸気分岐経路間の空間にEGR用排気通路を通過させて、排気を分配していた。凝縮水については特に考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−209855号公報(第10〜13頁、図4〜6)
【特許文献2】特開2009−133264号公報(第6〜9頁、図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関の排気中には水蒸気が含まれ、EGR装置内で冷却されることにより凝縮水が発生する。この凝縮水は最初は水滴となってチャンバー内壁面に付着するが、重力加速度や内燃機関が搭載された車両などの加減速に応じて流れてEGRチャンバー内にて集合する。このことにより特定の気筒の排気分配路に偏る可能性がある。このような偏りが生じると、特定の1つの気筒の失火が顕著となる。
【0007】
このように複数気筒、例えば4気筒ある内燃機関の気筒において1つのみ失火が顕著となり出力低下を生じると、全体が同一の失火状態である場合と異なり、低周波数の振動を生じる。この低周波数振動は、内燃機関が適用されている用途によっては、例えば車両用内燃機関では、トランスアクスルなどの共振を引き起こし、ドライバーにとって違和感を生じさせるおそれがある。
【0008】
特許文献1では、排気分配路からの凝縮水の早期排出が目的であり、気筒間での凝縮水の偏りを防止するものではない。特許文献2でも気筒間での排気の均一分配が目的であり、凝縮水の偏りについては防止できない。
【0009】
本発明は、複数気筒の内燃機関の吸気系においてEGR装置からの凝縮水が特定気筒に偏るのを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の吸気系排気導入構造は、複数気筒の内燃機関の吸気系に配置したチャンバー内に内燃機関の排気を導入し、このチャンバーに配列して開口する気筒毎の排気分配路から、吸気マニホールドに気筒毎に設けられた吸気分岐経路に排気を導入する吸気系排気導入構造であって、前記チャンバーにおける床面から上方に連続して設けられる内壁面に、前記排気分配路の配列方向で凝縮水が移動する際の抵抗となる移動抵抗部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
排気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水としてチャンバー内壁に水滴として付着した場合、内燃機関に対して何らかの加速度が加わると、チャンバー内壁に付着していた水滴は、加速度に対応して内壁面を流れる。このことによりチャンバーの床面から上方の内壁面に水滴が集合する。このように集合すると凝縮水の集合体として内壁面にて更に移動しやすくなる。そしてこのような凝縮水の集合体が、加速度により排気分配路の配列方向に移動すると、特定の気筒の排気分配路に集中して流れ込むおそれがある。
【0012】
しかしその内壁面には移動抵抗部が存在することから、凝縮水は、内壁面上を排気分配路の配列方向へ流れようとしても、その移動が困難となる。このためEGR装置からの凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。
【0013】
請求項2に記載の吸気系排気導入構造では、請求項1に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記内壁面上で、前記排気分配路の配列方向にて隣接する前記排気分配路の間に相当する位置に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このように移動抵抗部は、床面から上方に連続して設けられる内壁面において、隣接する排気分配路の間に相当する位置に形成されていることにより、凝縮水は、排気分配路間での移動が困難となり、特定気筒に集中しにくくなる。
【0015】
例え、排気分配路が3つあるいは4つなどの3つ以上の配列であっても、いずれかの隣接する排気分配路の間に相当する位置に移動抵抗部を配置することにより、特定の気筒に凝縮水が偏るのを防止できる。
【0016】
請求項3に記載の吸気系排気導入構造では、請求項2に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であることを特徴とする。
【0017】
排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条を設けることにより、排気分配路の配列方向にて凝縮水が移動する際の抵抗となり、凝縮水は排気分配路間を移動しにくくなる。このことから凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。
【0018】
請求項4に記載の吸気系排気導入構造では、請求項3に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記排気分配路の配列方向に対して直交方向に形成された突条であることを特徴とする。
【0019】
特に排気分配路の配列方向に対して直交方向に形成された突条は、排気分配路間での凝縮水の移動を困難にする。このことから凝縮水が特定の気筒に偏るのを効果的に防止できる。
【0020】
請求項5に記載の吸気系排気導入構造では、請求項1又は2に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、複数の突起であることを特徴とする。
移動抵抗部として突起が内壁の壁面に形成されていても、凝縮水は移動が困難となり、凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。
【0021】
請求項6に記載の吸気系排気導入構造では、請求項2〜4のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記排気分配路の配列方向にて、前記移動抵抗部に対して間隔を置いて、前記排気分配路の配列方向で凝縮水が移動する際の抵抗となる副移動抵抗部が形成されていることを特徴とする。
【0022】
このように移動抵抗部に対して、更に副移動抵抗部を、排気分配路の配列方向にて間隔を置いて形成しても良い。このことにより凝縮水は排気分配路の配列方向での移動が一層困難となり、特定気筒に凝縮水が偏るのを効果的に防止できる。
【0023】
請求項7に記載の吸気系排気導入構造では、請求項6に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であり、前記副移動抵抗部は前記移動抵抗部に平行な突条であることを特徴とする。
【0024】
このように突条の移動抵抗部に突条の副移動抵抗部を組み合わせることにより、より確実に排気分配路の配列方向での凝縮水の移動を阻止でき、特定気筒に凝縮水が偏るのを効果的に防止できる。
【0025】
請求項8に記載の吸気系排気導入構造では、請求項6に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であり、前記副移動抵抗部は突起であることを特徴とする。
【0026】
このように突条の移動抵抗部に突起の副移動抵抗部を組み合わせることにより、より確実に排気分配路の配列方向での凝縮水の移動を阻止でき、特定気筒に凝縮水が偏るのを効果的に防止できる。
【0027】
請求項9に記載の吸気系排気導入構造では、請求項6〜8のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面に形成された副移動抵抗部は、前記チャンバーの床面に連続して形成されていることを特徴とする。
【0028】
このようにチャンバーの床面にも前述した副移動抵抗部を設けることにより、床面においても凝縮水が、排気分配路の配列方向で移動するのを阻止できる。このため特定気筒に凝縮水が偏るのを、より確実に防止できる。
【0029】
請求項10に記載の吸気系排気導入構造では、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面に形成された移動抵抗部は、前記チャンバーの床面に連続して形成されていることを特徴とする。
【0030】
このようにチャンバーの床面にも移動抵抗部を設けることにより、床面においても凝縮水が、排気分配路の配列方向で移動するのを阻止できる。このため特定気筒に凝縮水が偏るのを、より確実に防止できる。
【0031】
請求項11に記載の吸気系排気導入構造では、請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面は前記チャンバーの天井面を含むことを特徴とする。
【0032】
このようにチャンバーの天井面にも前述した移動抵抗部や、更に前述した副移動抵抗部を設けることにより、天井面においても排気分配路の配列方向での凝縮水の移動を阻止できる。このため特定気筒に凝縮水が偏るのを、より確実に防止できる。
【0033】
請求項12に記載の吸気系排気導入構造では、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、内燃機関は車両に搭載された内燃機関であり、前記排気分配路の配列方向は、車両の左右方向であることを特徴とする。
【0034】
このような内燃機関に設けられた吸気系排気導入構造においては、車両の加減速によりチャンバーの内壁面に凝縮水が集中するおそれがあるが、前述したごとく移動抵抗部や副移動抵抗部により排気分配路の配列方向での凝縮水の移動は困難となっているため、凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。
【0035】
このことから、特定の気筒のみに失火が顕著に生じることはなくなり、低周波数の振動を防止できる。したがって車両の共振を防止でき、車両ドライバーに違和感を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態1の内燃機関の吸気マニホールドの要部構成を示す正面図。
【図2】同じく背面図。
【図3】同じく左側面図。
【図4】同じく斜視図。
【図5】図1におけるX−X線断面図。
【図6】実施の形態1の第3ピースの内部を示す斜視図。
【図7】実施の形態2の第3ピースの内部を示す斜視図。
【図8】実施の形態3の第3ピースの内部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[実施の形態1]
〈構成〉図1〜4は、上述した吸気系排気導入構造が適用された内燃機関の吸気マニホールド2の要部構成を表す。この内燃機関は、車両走行用として車両に搭載されている。
【0038】
吸気マニホールド2はサージタンク4を備え、このサージタンク4を介してスロットルバルブから吸気を導入している。そしてサージタンク4の下流側には吸気枝管集合部6を備えている。これらサージタンク4と吸気枝管集合部6とは樹脂にて一体成形されている。尚、吸気温センサ等を設置する貫通孔、吸気マニホールド2自身を支持するための各種係合部などを外周面に設けることができる。
【0039】
ここで内燃機関は4気筒であり、吸気枝管集合部6は、吸気分岐経路として4本の吸気枝管6a,6b,6c,6dを備えている。尚、内燃機関は他の気筒数でも良く、この場合には、吸気マニホールド2は気筒数分の吸気枝管を備えることになる。又、V型エンジンなどの複数バンクの内燃機関である場合には、バンク毎に吸気マニホールド2が設けられて、各吸気マニホールド2には同一バンクにおける気筒数分の吸気枝管が設けられることになる。
【0040】
吸気マニホールド2は、いくつかのピースを振動溶着などにより接合して一体化したものである。ここでは図5の縦断面構成に示すごとく、3つのピース2a,2b,2cを振動溶着して一体化したものである。この3つのピース2a,2b,2cの一体化により、吸気枝管集合部6の下側にはEGRチャンバー8が形成されている。
【0041】
このEGRチャンバー8内には、排気再循環実行時に、EGR装置に備えられたEGR弁を介して、吸気枝管集合部6の一方側に形成された排気供給部8aから排気が供給される。EGRチャンバー8からは、排気分配路10,12,14,16を介して各吸気枝管6a〜6dへ排気が分配される。
【0042】
EGRチャンバー8内において、第3ピース2cが形成している内壁面には、3つのリブ20(移動抵抗部に相当)が設けられている。これらのリブ20は、図6に示すごとく、第3ピース2cの内壁面において、隣接する排気分配路10〜16の間に相当する位置に形成され、かつ排気分配路10〜16の配列方向に対して直交方向の突条として形成されている。
【0043】
更にEGRチャンバー8内において、床部8bの上面である床面8cには、各リブ20に連続して、隣接する排気分配路10〜16の間の壁部まで伸びる3つのリブ22(移動抵抗部に相当)が形成されている。
〈作用〉排気供給部8aからEGRチャンバー8内に導入された排気は、EGRチャンバー8の内部空間を排気分配路10〜16の配列方向に流れ、各気筒の排気分配路10〜16に分配される。この排気の分配時には、第3ピース2cのリブ20及び床部8bのリブ22のいずれも、EGRチャンバー8の内部空間においては高くなく、各気筒に対する排気の均等分配の障害とはならない。
【0044】
例えば、内燃機関が冷間状態であって、排気がEGRチャンバー8内で露点以下に冷却された場合には、EGRチャンバー8内で凝縮水が生じ、EGRチャンバー8の内壁面に水滴として付着する。
【0045】
この内壁面に付着した水滴には、特に内燃機関が車両に搭載されているため、発進・停止や加減速により、前後方向の加速度が加えられ、更に旋回時は左右方向の加速度が加えられる。このような加速度や走行時の振動をEGRチャンバー8の内壁面に付着した水滴が受けることにより、水滴が集合すると共にその集合体が加速度に応じて移動する。
【0046】
例えば図6で示すごとくEGRチャンバー8の内壁面全体に付着していた水滴は、車両減速や停止により、EGRチャンバー8内において前方へ移動して図示破線のハッチングで示すごとく、第3ピース2cの内壁面で、多量の凝縮水からなる水集合体Dwとなる。このままならば、水集合体Dwは排気と共に各気筒に導入される。したがって内燃機関に失火が生じたとしても、全気筒に均等な失火である。したがって失火による振動は周波数が高い。
【0047】
図6に示した状態で、更に減速と同時に車両旋回により左右方向の横加速度が生じた場合、例えば車両が左方向に旋回することにより、右方向に水集合体Dwに遠心力が働くと、水集合体Dwは、右端の#1気筒用の排気分配路10側へ移動しようとする。
【0048】
しかし第3ピース2cの内壁面では、隣接する排気分配路10〜16間に相当する位置に、排気分配路10〜16の配列方向に対して直交方向に形成された突条として、リブ20が形成されている。
【0049】
このため水集合体Dwは、右方向へ移動することが阻止され、#1気筒の排気分配路10に相当する位置に、他の3つの気筒の排気分配路12〜16に相当する位置の水集合体Dwが集中することが防止される。
【0050】
したがってこのように横加速度が生じても、水集合体Dwを各気筒の排気分配路10〜16に相当する位置に止めて、特定気筒、ここでは#1気筒に凝縮水が集中して他の3つの気筒にはほとんど凝縮水が流れ込まない状態が阻止できる。尚、横加速度が逆方向であれば、#4気筒の排気分配路16に、他の気筒の排気分配路10〜14の水集合体Dwが移動しようとするが、この場合も、#4気筒に凝縮水が集中して、他の3つの気筒にはほとんど凝縮水が流れ込まない状態が阻止できる。したがって内燃機関に失火が生じたとしても全気筒に均等な失火であり、失火による振動周波数は高い。
【0051】
尚、床部8bの床面8cにも第3ピース2cのリブ20に連続してリブ22が同様に各気筒の排気分配路10〜16間に相当する位置に形成されている。したがって、床部8bの床面8cに凝縮水が集合したとしても、横方向(排気分配路10〜16の配列方向)への移動を阻止できる。このため床部8bの床面8cのみでの凝縮水の集合により内燃機関に失火が生じたとしても全気筒に均等な失火であり、失火による振動は周波数が高い。
〈効果〉(1)排気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水としてEGRチャンバー8の内壁面に水滴として付着した場合、前述したごとく、車両の加減速や旋回により内燃機関に対する加速度が生じると、EGRチャンバー8内の水滴は内壁面を流れて床部8bから上方にある第3ピース2cの内壁面に集合する。
【0052】
しかしEGRチャンバー8の内壁面には移動抵抗部としてのリブ20が、隣接する排気分配路10〜16間に相当する位置に配置されていることにより、凝縮水は、排気分配路10〜16の配列方向での移動が困難となる。したがってEGR装置からの凝縮水が特定の気筒に偏るのを防止できる。
【0053】
このことから、特定の気筒のみに顕著な失火状態が生じることはなく、低周波数の振動を防止できる。したがってトランスアクスルなどでの車両共振を防止でき、車両ドライバーに違和感を生じさせることがない。
【0054】
(2)更に床部8bの床面8cにも、第3ピース2c側のリブ20に連続してリブ22が形成されているので、床面8cにおいても凝縮水が、排気分配路10〜16の配列方向で移動するのを阻止できる。このため特定気筒に凝縮水が偏るのを、より確実に防止できる。
【0055】
[実施の形態2]
〈構成〉図7に本実施の形態の第3ピース102cを示す。この第3ピース102cが前記実施の形態1の第3ピースの構造とは異なっており、他のピースについては前記実施の形態1と同じである。
【0056】
この第3ピース102cでは、#1気筒の排気分配路と#2気筒の排気分配路との間に相当する位置に1つの主リブ120が設けられ、#3気筒の排気分配路と#4気筒の排気分配路との間に相当する位置にもう1つの主リブ122が設けられている。
【0057】
そして、それぞれの主リブ120,122に対して、排気分配路の配列方向に間隔を置いて、主リブ120,122に平行な突条として、副リブ120a,120b,122a,122bが、前後4本ずつ設けられている。副リブ120a,120b,122a,122bは副移動抵抗部に相当する。
【0058】
そして#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間に相当する位置にはリブは存在しない。
尚、EGRチャンバーの床面については、前記実施の形態1と同じリブを配置しても良く、あるいは、図7に示した主リブ120,122と副リブ120a,120b,122a,122bとに対応したリブを連続して形成しても良い。
〈作用〉EGRチャンバー内で排気が冷却されて内壁面全体に付着した水滴が、車両減速時に前方に移動すると、前記実施の形態1の図6に示したごとく、ピース102cの内壁面に多量の凝縮水からなる水集合体となる。図7の構成でも、前記実施の形態1にて説明したごとく、このままでは、水集合体は排気と共に各気筒に導入されるので、内燃機関に失火が生じたとしても、全気筒に均等な失火であることから、失火による振動は周波数が高い。
【0059】
そして減速と同時に車両旋回により左右方向の横加速度が生じた場合、例えば車両が左旋回することにより、右方向に水集合体に遠心力が働くと、水集合体は右側の#1気筒側に移動しようとする。
【0060】
しかしピース102cの内壁面には、排気分配路の配列方向とは直交する方向の突条として主リブ120,122、及び副リブ120a,120b,122a,122bが形成されている。このため水集合体が右方向へ移動するのが阻止されて、#1気筒の排気分配路に相当する位置に、他の3つの気筒の排気分配路に相当する位置の水集合体が集中することが防止される。
【0061】
本実施の形態では、#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間に相当する位置にはリブは存在しない。このため左旋回時には#3気筒の排気分配路に相当する位置から#2気筒の排気分配路に相当する位置へ水集合体が移動する。このことから左旋回では#3気筒では失火が生じにくくなり、#2気筒では失火が生じやすくなり、#1気筒及び#4気筒については中間の失火発生程度となる。
【0062】
このように失火の発生程度に差が生じるが、従来のごとく#1気筒における失火が顕著となり他の#2〜#4気筒は失火が生じにくくなるということはないことから、失火による振動周波数は共振が問題となるような低下は生じない。
【0063】
尚、床部(8b:図5)にも、前記実施の形態1のごとくのリブが形成されているので、床部の床面に凝縮水が集合したとしても、横方向(排気分配路の配列方向)への移動を阻止できる。床部に、ピース102cの主リブ120,122及び副リブ120a,120b,122a,122bに連続してリブが形成されている場合にも同様である。このことにより床部のみでの凝縮水の集合により内燃機関に失火が生じたとしても、全気筒にてほぼ均等な失火であり、失火による振動周波数は高い。
〈効果〉(1)ピース102cにおいて、#1気筒の排気分配路と#2気筒の排気分配路との間、及び#3気筒の排気分配路と#4気筒の排気分配路との間に相当する位置に、主リブ120,122と副リブ120a,120b,122a,122bとが形成されている。このため、#2気筒と#3気筒との間にリブが存在しなくても、より確実に凝縮水が1つの気筒に集中するのを防止できる。
【0064】
このことにより前記実施の形態1と同様な効果を生じる。
[実施の形態3]
〈構成〉図8に本実施の形態の第3ピース202cを示す。この第3ピース202cが前記実施の形態1の第3ピースの構造とは異なっており、他のピースについては前記実施の形態1と同じである。
【0065】
この第3ピース202cでは、#1気筒の排気分配路と#2気筒の排気分配路との間に相当する位置に1つのリブ220が設けられ、#3気筒の排気分配路と#4気筒の排気分配路との間に相当する位置に、もう1つのリブ222が設けられている。
【0066】
そして、それぞれのリブ220,222に対して、排気分配路の配列方向に間隔を置いて、移動抵抗部として、突起220a,220b,222a,222bが、前後4個ずつ設けられている。すなわち突起220a,220b,222a,222bは副移動抵抗部に相当する。
【0067】
更に、#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間に相当する位置には、設計上、内部空間が狭いことからリブは存在しないが、合計8個の突起224が、移動抵抗部として排気分配路の配列方向に1列に配列して設けられている。
【0068】
尚、EGRチャンバーの床面については、前記実施の形態1と同じリブを配置しても良く、あるいは、図7に示した主リブ120,122と副リブ120a,120b,122a,122bとに対応したリブを形成しても良い。あるいは図8のリブ220,222に対応したリブを配置しても良く、更に突起220a,220b,222a,222b,224に対応した位置にリブあるいは突起を配置しても良い。突起の場合には、一列のみでなく平行に複数列配置する。
〈作用〉EGRチャンバー内で排気が冷却されて内壁面全体に付着した水滴が、車両減速時に前方に移動すると、前記実施の形態1の図6に示したごとく、ピース202cの内壁面に多量の凝縮水からなる水集合体となる。図8の構成でも、前記実施の形態1にて説明したごとく、このままでは、水集合体は排気と共に各気筒に導入されるので、内燃機関に失火が生じたとしても、全気筒に均等な失火であることから、失火による振動は周波数が高い。
【0069】
そして減速と同時に車両旋回により左右方向の横加速度が生じた場合、例えば車両が左旋回することにより、右方向に水集合体に遠心力が働くと、水集合体は右側の#1気筒側に移動しようとする。
【0070】
しかしピース202cの内壁面には、排気分配路の配列方向とは直交する方向の突条としてリブ220,222が形成され、更に突起220a,220b,222a,222b,224も形成されている。このため水集合体が右方向へ移動するのが阻止されて、#1気筒の排気分配路に相当する位置に、他の3つの気筒の排気分配路に相当する位置の水集合体が集中することが防止される。
【0071】
本実施の形態では、#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間に相当する位置にはリブは存在しないが、突起224が存在する。このため#3気筒の排気分配路に相当する位置から#2気筒の排気分配路に相当する位置へも水集合体が移動しにくく、移動が阻害される。このことから#2気筒と#3気筒での失火の程度に差が付くのが抑制される。
【0072】
したがって従来のごとく#1気筒での失火が顕著となり他の#2〜#4気筒については失火が生じにくくなるということはなく、失火による振動周波数は高い。
尚、床部(8b:図5)にも前記実施の形態1のごとくのリブが形成されたり、あるいは前記実施の形態2のピース102cや本実施の形態のピース202cのリブや突起に連続したリブや突起が形成されるので、床部の床面に凝縮水が集合したとしても、横方向(排気分配路の配列方向)への移動を阻止できる。したがって床部のみでの凝縮水の集合により内燃機関に失火が生じたとしても全気筒に均等な失火であり、失火による振動周波数は高い。
〈効果〉(1)ピース202cにおいて、#1気筒の排気分配路と#2気筒の排気分配路との間、及び#3気筒の排気分配路と#4気筒の排気分配路との間に相当する位置に、リブ220,222と複数の突起220a,220b,222a,222bとが形成されている。更に#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間に相当する位置には、複数の突起224が形成されている。このため、#2気筒の排気分配路と#3気筒の排気分配路との間にリブが存在しなくても、より確実に凝縮水が1つの気筒に集中するのを防止できる。
【0073】
このことにより前記実施の形態1と同様な効果を生じる。
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、リブや突起は、第3ピースの内壁面に加えて、EGRチャンバーの床面にも形成した例を示したが、床面以外に、前記図5に示すEGRチャンバー8の天井面8dにも、第3ピース側のリブや突起の位置に対応させて、リブや突起を形成しても良い。
【0074】
・前記各実施の形態において、リブは排気分配路の配列方向に対して直交方向に形成された突条であったが、直交でなく、排気分配路の配列方向に対して交叉する方向としても良い。このことによっても凝縮水の移動抵抗となり、凝縮水が特定気筒に偏るのを防止できる。
【0075】
・EGRチャンバーの内壁面にて水滴として付着した凝縮水が、特に車両の加減速により床面から立ち上がっている第3ピースの内壁面に移動して集合し、その後、遠心力などの横加速度により特定の気筒に集中すると、内燃機関の出力変動が車両共振振動を引き起こすことになる。このため床面や天井面にリブや突起を設けなくても、図5〜8のごとくのリブ20,120,120a,120b,122,122a,122b,220,222や突起220a,220b,222a,222b,224のみを備えたEGRチャンバーでも凝縮水が特定気筒に偏るのを防止できる。このことにより特定の気筒での失火状態が顕著とならず、低周波数の振動を防止できることから、車両の共振を防止でき、車両ドライバーに違和感を生じさせることがない。
【符号の説明】
【0076】
2…吸気マニホールド、2a,2b…ピース、2c…第3ピース、4…サージタンク、6…吸気枝管集合部、6a,6b,6c,6d…吸気枝管、8…EGRチャンバー、8a…排気供給部、8b…床部、8c…床面、8d…天井面、10,12,14,16…排気分配路、20,22…リブ、102c…第3ピース、120,122…主リブ、120a,120b,122a,122b…副リブ、202c…第3ピース、220,222…リブ、220a,220b,222a,222b,224…突起、Dw…水集合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数気筒の内燃機関の吸気系に配置したチャンバー内に内燃機関の排気を導入し、このチャンバーに配列して開口する気筒毎の排気分配路から、吸気マニホールドに気筒毎に設けられた吸気分岐経路に排気を導入する吸気系排気導入構造であって、
前記チャンバーにおける床面から上方に連続して設けられる内壁面に、前記排気分配路の配列方向で凝縮水が移動する際の抵抗となる移動抵抗部が形成されていることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記内壁面上で、前記排気分配路の配列方向にて隣接する前記排気分配路の間に相当する位置に形成されていることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項4】
請求項3に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、前記排気分配路の配列方向に対して直交方向に形成された突条であることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は、複数の突起であることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記排気分配路の配列方向にて、前記移動抵抗部に対して間隔を置いて、前記排気分配路の配列方向で凝縮水が移動する際の抵抗となる副移動抵抗部が形成されていることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項7】
請求項6に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であり、前記副移動抵抗部は前記移動抵抗部に平行な突条であることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項8】
請求項6に記載の吸気系排気導入構造において、前記移動抵抗部は前記排気分配路の配列方向に対して交叉する方向に形成された突条であり、前記副移動抵抗部は突起であることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面に形成された副移動抵抗部は、前記チャンバーの床面に連続して形成されていることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面に形成された移動抵抗部は、前記チャンバーの床面に連続して形成されていることを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、前記壁面は前記チャンバーの天井面を含むことを特徴とする吸気系排気導入構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸気系排気導入構造において、内燃機関は車両に搭載された内燃機関であり、前記排気分配路の配列方向は、車両の左右方向であることを特徴とする吸気系排気導入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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