説明

吸水性不織布、その積層体、およびその製造方法

少なくとも(a)5〜95重量部の多分岐形状を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプ、(b)該合成パルプ同士を結合している5〜95重量部のバインダー樹脂を含み、不織布中に多分岐形状を有する合成パルプの形状が観察され、密度が0.03〜0.3g/cmである不織布と、その不織布を用いた積層体、およびその製造方法を提供する。この不織布水の吸収性が良好でリウェット防止性の良好であるため吸収体、衛生材料に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性不織布、およびその積層体、およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂からなる合成パルプと該合成パルプよりも低融点のバインダーからなる不織布であって、不織布中にフィブリル形状を有する合成パルプの繊維形状が観察されることを特徴とし、高吸水性で、かつリウェット防止性と拡散面積が良好なエアレイド不織布、その製造方法およびそれを用いた積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙おむつや生理用品等の衛生材料に用いられる吸収性材料は、ムレを低減しドライ感、サラット感を得るために、吸収速度が速く、リウェット量が少なく、そして表面ぬれ面積の小さいことが求められている。従来用いられている衛生材料は、ドライ感・サラット感を向上させるため、トップシートを改良したり、トップシートと吸収体の間にセカンドシートを入れて多層化されている。
【0003】
吸水性、液体吸収性に優れた不織布の積層体として、たとえば、特開昭55−152852号公報には、「3層一体構造の積層方乾式不織布」が提案されている。当該公報によると、「パルプ繊維40〜95重量部と繊維状または粒形状の熱可塑性樹脂5〜60重量部からなる層」が中心に配置され、「点の異なる2種の合成高分子からなる複合繊維100重量部の層を有する積層マットであって、且つ、前記複合繊維の低融点成分と熱可塑性樹脂の融点より高く複合繊維の高融点成分の融点よりも低い温度で前期積層マットが熱処理され、各層内及び層間の繊維間が結合された」積層体が開示されているが、ドライ感、サラット感を得るためには十分ではない。
【0004】
また、特開昭56−91052号公報には、高吸水性ポリマー入り乾式不織布積層物が記載されており、不織布には複合シートが用いられているが、3層構造である点で厚みが制約され、さらに中間層には天然パルプが用いられているので、液体の吸収量を多くできるが、リウエット量については満足できるものではない。
【0005】
ところで、特開平3−180504号公報には、幹繊維と、その幹繊維より枝分かれした極細な分岐繊維とからなり、毛管作用が極めて強く、保水性に優れている合成パルプについて記載されている。同公報に記載されている合成パルプは、分岐繊維の先端から他の分岐繊維の先端までの平均繊維長が通常0.01〜10mmであるとされている。
【0006】
合成パルプは、従来、一種の接着剤、あるいは結合剤として用いられていた。たとえば、米国特許4784892号公報には、中間層には直径が10ミクロン以上の熱可塑性微細繊維を含む3層の不織布積層体が記載されており、熱可塑性微細繊維の一部または全部を合成パルプを用いて良いとされているが、これは層の結合性を改善するために用いられているものである。
【0007】
また、特開2002−54085号公報には、高弾性ポリオレフィン繊維に、フィブリル状繊維がポリオレフィン製合成パルプを含む電池セパレータ用不織布が開示されているが、この密度は0.33g/cm以上であると計算できる。また、特開平10−18154号公報には、芯鞘型長繊維不織布とポリオレフィン系合成パルプを含む湿式抄紙合成紙との積層体が開示されているが、通常紙の密度は0.3g/cm以上であると考えられる。これらの発明において密度が高いのは、湿式抄造では合成パルプの水スラリーをメッシュで濾して紙を抄造するが、この時の水の抜ける力によって抄造紙が圧縮されるからであり、このような密度の高い合成紙の場合は、空隙率が非常に低いためほとんど吸水せず、吸収体には不向きである。
【0008】
さらに、特開平11−189959号公報には、長さ7〜30mm、繊度0.1〜0.8dの極細の熱可塑性合成繊維を機械的に交絡させた不織布が記載されている。ここで使用される熱可塑性合成繊維は、長さと繊度が決まっている為、いわゆる合成繊維と考えられ、合成パルプとは異なる形状を有していると考えられる。
【特許文献1】特開昭56−91052号公報
【特許文献2】特開昭56−91052号公報
【特許文献3】特開平3−180504号公報
【特許文献4】米国特許4784892号公報
【特許文献5】特開平10−18154号公報
【特許文献6】特開2002−54085号公報
【特許文献7】特開平11−189959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するために、不織布内部での水分の拡散性が良く、局所的にも吸水能力に優れているような、水分の拡散面積が実用上良好であり、いわゆるリウェットが防止されている不織布を、毛管作用が強くて保水性に優れている合成パルプを用いて提供することを課題とするものである
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、合成繊維のみ、あるいは合成繊維と天然繊維の両方が保持されている状態の不織布および当該不織布を用いた積層体が、リウエット防止性や拡散面積に優れていることを見出しなされたものである。また、かかる不織布を実用的に紙おむつ等の実用品に供試できることを意図して用いるための積層体を提案する。さらに、本発明は、その製造方法についても提案するものである。
【0011】
すなわち、少なくとも(a)5〜95重量部の多分岐形状を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプ、(b)該合成パルプ同士を結合している5〜95重量部のバインダー樹脂を含み、不織布中に多分岐形状を有する合成パルプの形状が観察され、密度が0.03〜0.3g/cmである不織布を提供する。
【0012】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなる合成パルプは、1以上の分岐を有する繊維状構造を有し、繊維表面上に凹凸があり、表面上に繊維方向の縦皺が観察される。
【0013】
また、本発明の不織布を撹拌粉砕して篩により分画し、各画分に多分岐形状を有する合成パルプの形状が観察される。
【0014】
さらに、本発明の不織布は、エアレイド法で製造されることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明は、(a)熱可塑性樹脂からなる合成パルプと前記(b)バインダー樹脂を主たる原料として用いる不織布を製造するにあたり、バインダー樹脂の融点以上の温度で、かつ、熱可塑性樹脂からなる合成パルプが溶融しない温度以下で不織布を成形することを特徴とする不織布の製造する方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、不織布層と該不織布よりも嵩密度の小さいシート層からなる積層体において、該不織布が多分岐形状を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプと該合成パルプ同士を結合しているバインダー樹脂を少なくとも5重量部以上含み、該不織布中に多分岐形状を有する該合成パルプの形状が観察されることを特徴とする積層体を提供する。
【0017】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂からなる合成パルプは、界面活性剤が表面に付着するような親水性化処理をされていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に用いられている熱可塑性樹脂からなる合成パルプはポリオレフィンからなることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に用いられる熱可塑性樹脂の一部を天然パルプで置き換えて用いることができる。
【0020】
本発明に用いられる(b)バインダー樹脂は、前記(a)合成パルプを構成する熱可塑性樹脂よりも融点が低い合成繊維からなることが好ましい。
【0021】
また、本発明の不織布に吸水性ポリマーを併用することは好ましい態様の1つである。
【0022】
本発明の不織布を吸収体に用いることは本発明の好ましい態様の1つである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の不織布は、不織布中に熱可塑性樹脂からなる合成繊維の構造を残しているために、水分の吸収性に優れ、リウェット防止性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[図1]本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなる合成パルプの電子顕微鏡写真(2000倍)である。幹構造体から枝構造体が分岐していること、繊維は凹凸のあるために直径も一定していないこと、繊維の方向に皺のあることが確認できる。
[図2]本発明に用いられる合成パルプの光学顕微鏡写真(50倍)である。
[図3]本発明に用いられる天然パルプの光学顕微鏡写真(50倍)である。
[図4]本発明に用いられるバインダー樹脂である合成繊維の光学顕微鏡写真(50倍)である。
[図5]使用した合成パルプは融点135℃、バインダー樹脂としては鞘部分の融点が110℃の芯鞘合成繊維を用い、120℃で成形されたものの、光学顕微鏡写真(150倍)である。
[図6]上記と同様の原料を用いて、合成パルプの融点よりも5℃低い温度である130℃で成形した場合における本発明の不織布の光学顕微鏡写真(150倍)である。
[図7]上記と同様の原料を用いて、合成パルプの融点よりも3℃低い温度である132℃で成形した場合における本発明の不織布の光学顕微鏡写真(150倍)である。
[図8]上記と同様の原料を用いて、合成パルプの融点以上の温度である150℃で成形した場合における不織布の光学顕微鏡写真(150倍)である。
[図9]本発明のエアレイド不織布を製造するためのマットを製造する装置の模式図である。
[図10]本発明のエアレイド不織布を製造するために用いられるホットプレス機の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(熱可塑性樹脂からなる合成パルプ)
本明細書においては、「熱可塑性樹脂からなる合成パルプ」のことを単に「合成パルプ」とのみ記載することがある。
【0026】
本発明の不織布は、熱可塑性樹脂からなる合成パルプと合成パルプ同士を結合しているバインダー樹脂を含むものであって、不織布中にフィブリル形状を有する合成パルプの繊維形状が観察されることを特徴とするものである。
【0027】
合成パルプを製造するには既に公知の方法を適用することができ、その製法は、Encyclopedia of Chemical Technology 3rd ed, Vol.19,P420〜425に詳細に説明されている。例えば、溶融紡糸した繊維を短く切った後に叩解する方法、溶融フラッシュもしくはエマルジョンフラッシュを行った後に叩解処理する方法などを挙げる事ができる。そのようにして得られた合成パルプは、強い毛管作用高い保水性を併せ持っている。
【0028】
本発明の不織布に用いられる熱可塑性樹脂からなる合成パルプの材料には特に制限は無いが、通常ポリオレフィン樹脂が用いられる。ポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリプロピレン、そしてこれらのブレンド樹脂が好ましく用いられる。
【0029】
本発明でポリオレフィン樹脂としてポリエチレン系樹脂を用いる場合は、用いられるポリエチレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR、ASTMD 1238、190℃、2.16Kg荷重)が、0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分、さらに好ましくは、0.1〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。MFRが上記のような範囲にあるエチレン単独重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な熱可塑性樹脂からなる合成パルプが得られる。本発明に用いられる合成パルプの融点は、通常120〜165℃であり、さらに詳しくは、ポリオレフィンがポリエチレンを含むものである場合は、120℃〜135℃が好ましく、ポリオレフィンがポリプロピレンを主として含むものである場合は160℃〜165℃であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなる多分岐形状の合成パルプの「多分岐形状」とは、1以上の分岐を有する繊維状構造をいい、これを「フィブリル構造」と記載する場合もある。曲線構造的な幹構造体から1つ以上の枝構造体が分岐し、ときにはその枝構造体もさらに微細な枝構造体が分岐しており、あたかもある種の植物の根の様に見える。図2(光学顕微鏡50倍)は、本発明の合成パルプの光学顕微鏡写真であるが、植物の根や茎のように構造体同士が複雑に絡み合っていることが観察できる。また、図1の電子顕微鏡写真(2000倍)には、本発明の合成パルプの拡大写真であるが、1以上の分岐と、凹凸があり、繊維の直径は一様の大きさではなく、繊維方向に縦皺が延びていることが観察できる。なお、図4は、本発明で用いられる合成繊維の光学顕微鏡写真であるが、直線状の枝分かれのない繊維構造体のみが観察されるのが特徴であり、本願で用いられる合成パルプの多分岐形状との違いは明らかである。
【0031】
上記の分岐構造体はしばしば「幹繊維」、「枝繊維」と呼ばれることもあり、上述したように繊維直径は一様ではないが、幹繊維は通常、直径40μm程度のものをいい、枝繊維は直径1〜5μm、好ましくは直径1〜2μm程度のものをいうが、幹/枝は分岐した点における直径の大小で直感的に決定されるのであるから、観察部位によってはもっと細い部位もあれば太い部位もあり、連続的に変化する。
【0032】
また、樹脂の表面には凹凸が観察される。また、比表面積をBET式比表面積計で測定することが可能であり、本発明に用いられる合成パルプは、1〜20m/gのものが好ましい。
【0033】
さらに、合成パルプはその製法上カットされているので、平均繊維長を観念することができる。本発明においては、レーザー光線によって一本ずつの幹繊維の長さを計測、分布のある測定値の中から平均繊維長を算出する手法が取られている。たとえば、KAJJANI製FS−200で測定される本発明に用いられる合成パルプの平均繊維長は、通常0.01〜10mm、好ましくは、0.1〜5mmである。
【0034】
また、本発明の合成パルプは篩によって分離し、それぞれを観察することも可能である。分離の結果、原料のSWPや、従来法により製造された不織布はある大きさを中心にして分布しているが、本発明のエアレイド不織布は、逆に分布が広くなる。また、分離したものを電子顕微鏡等により観察すると、従来の不織布では、SWPの上記構造が全く観察されないか、明確に観察できないのに対して、本発明の不織布においては、どの層においてもSWPの上記構造を観察することができる。
【0035】
(バインダー)
本発明に用いられる「バインダー樹脂」とは、合成パルプ同士を結合するものであり、本発明の不織布の繊維をつなぎ止めて成形体の形状を保持するために用いられる接着剤であるが、本明細書においては「バインダー」と表記することもある。すなわち、本発明に用いられるバインダー樹脂は、合成パルプを互いに結合させる接着剤である。さらに、天然繊維を添加する場合には、天然繊維同士や合成パルプ同士、あるいは天然パルプと天然繊維をも互いに結合させ、不織布としての成形体を形成するのに用いられる。接着させる方法としては、熱的に接着させる方法と化学的に接着させる方法とがある。
【0036】
熱的に接着させる方法に用いられる場合、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。すなわち、予め合成パルプ中にバインダーを存在させておき、続いてバインダーが溶融する温度以上又は熱硬化性樹脂の熱硬化温度であり、かつ、合成パルプが溶融する融点よりも低温度で加熱することにより、合成パルプと天然繊維とを接着させる。バインダー樹脂の融点は、通常SWPの融点よりも5℃以上、好ましくは15℃以上低温のものが用いられる。上記で述べた様に、SWPの融点が120〜165℃のものが通常用いられているので、バインダー樹脂は用いる合成パルプの融点と成形温度等を考慮して選択する必要がある。かかるバインダーとしては、低融点モノフィラメントや、チッソ(株)製短繊維EA(鞘部の融点100℃)およびEAC(同110℃)、ダイワボー(株)製短繊維NBF タイプE(同98℃)およびタイプSE(同98℃)等の低融点樹脂を使った複合繊維(芯鞘構造やサイドバイサイド型)、三井化学(株)製低密度ポリエチレン“ミラソン”,“タフマー”、三井・デュポンポリケミカル(株)製共重合低密度ポリエチレン“ニュクレル”等の低融点ポリエチレンバウダーや三井化学(株)製SWP“UL410”,“NL490”等の低融点合成パルプ、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、ポリエチレン・アクリル共重合樹脂等のホットメルトを用いることができる。
【0037】
また、化学的に接着させる場合は、ポリ酢酸ビニルや低融点ポリオレフィンのエマルションを用いて、スプレー塗布などの方法で繊維に吹き付け、その後オーブン中で乾燥溶融させ繊維同士を接着させる。
【0038】
(親水性化処理)
本発明で用いられる合成パルプに対して親水性化処理をすることにより、リウェット性を大幅に改善される。
【0039】
本発明における「親水性化処理」とは、たとえば合成パルプを水に分散させる等して界面活性剤と処理をし、界面活性剤を表面に付着させる処理のことをいう。親水性化処理の方法は特に制限は無いが通常、特開昭63−66380号公報に記載されているように合成パルプを水に分散させた状態で、親水剤を添加溶解して表面処理する方法で行う。
【0040】
ところで、本発明でも用いられる極性基含有合成パルプや、カルボキシル基を含む化合物による変性によって極性基が導入された合成パルプは、界面活性剤は不要の様にも思われるが、この方法によるリウェット性の改善は有効である。
【0041】
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール等を挙げることができ、特にポリプロピレングリコールを用いるのが好ましい。
このように親水性化処理をされた合成パルプは、脱水して、通常は約50%含水シートとし、さらにこのシートを乾燥させ、この乾燥シートを用いて親水性か否かを判断する。すなわち、乾燥シートに水を滴下すると直ちに水が吸収される場合は「親水性がある」といい、逆に、水を滴下してもパルプのシートに吸収されて行かないときは「疎水性」がある、という。ところで、従来用いられている天然パルプは通常親水性を示すので、本発明のリウェット防止効果が期待されるが、天然パルプが親水性であっても、本願発明のリウェット防止効果に乏しいことは予想外である。
【0042】
(天然繊維)
本願発明の合成パルプの一部を合成パルプに代えて天然繊維を用いることができる。置き換える天然繊維は不織布全体に対して通常0〜90重量部、好ましくは0〜50重量部である。天然繊維は、水分の拡散面積やリウェット性に影響するため、これらの値に応じて添加量は加除増減する必要がある。用いられる天然パルプとしては、公知のものを特に限定することなく用いることができる。たとえば、主にL−BKP、N−BKPに代表される木材漂白化学パルプが使用される。必要に応じてGP、TMP、BCTMP等の機械パルプ、ケナフ、コットンリンター、麻等の非木材パルプ、古紙パルプを適宜配合する事も出来る。
【0043】
また、羊毛、絹などの動物性繊維も必要に応じて配合する事ができる。
【0044】
(高吸水性ポリマー)
本発明の不織布中には、高吸水性ポリマーを存在させることができる。存在させることのできる量は、不織布100重量部に対して、通常1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部である。高吸水性ポリマーは、その添加量に応じて、水の拡散性、吸水性、リウェット防止性等に効くので注意して決める必要がある。本発明において用いることのできる高級水性ポリマーは、公知のものを広く用いることができ特に限定されない。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩を架橋反応させて水に対して不溶化させたもの、あるいはポリビニルアルコールを架橋反応させて不溶化させたものを挙げる事ができる。
【0045】
製品形態として、粉末状や顆粒状のものや繊維化したものが上市されている。粉末や顆粒状の製品としては、住友精化(株)のアクアキープ、三洋化成(株)のサンフレッシュやアクアパール、日本触媒(株)のアクアリックなどを用いる事ができる。繊維状の繊維としては、東洋紡(株)のランシールなどを用いる事ができる。
【0046】
(不織布Aの製造方法)
製造方法は、US4640810号公報等に記載のいわゆるエアレイド法、特開昭62−104955号記載の複合不織布装置においてセルロース繊維の代わりに合成パルプを使用する方法、米国特許4100324号、4426417号、4784892号各公報等に記載の方法、湿式法など、その他公知の方法により製造することができる。
【0047】
本発明の不織布は、熱的方法により成形する場合は、合成パルプ5〜95重量部、バインダー5〜95重量部(合成パルプとバインダー樹脂の合計が100重量部の組成物を含む原料を用いて成形される。バインダーを溶融固化して不織布成形する具体的な熱処理装置としてはエアースルードライヤー、エンボス装置、カレンダー装置などを用いることができる。
【0048】
また、化学的方法として、エマルションバインダー樹脂をスプレーで吹き付けて、乾燥固化して不織布が成形される。
【0049】
ここで、エアレイド法など乾燥した繊維を空気で搬送して不織布とする工程において、静電気の発生によってエアレイド製造装置のフォーミングヘッドなどの繊維を供給するプロセスの内壁に合成パルプが吸着、成長し、その塊が製造中の不織布に落ちて不織布の外観が悪くなることがある。
【0050】
そのような場合は、界面活性剤等を用いて、原料の合成パルプに対して静電防止処理をしておくことが考えられる。静電防止処理の方法については特に制限は無く、通常、合成パルプを水に分散させた状態で、親水剤を添加溶解して表面処理すること(特開昭63−66380号公報)等が行われている。そのほか、合成パルプの水分散体をメッシュ間に挟んでプレスし余分な水分を脱水して製造されたものであるいわゆる合成パルプの含水シートに界面活性剤を噴霧して、帯電防止処理をすることもできる。好ましくは、合成繊維の含水シートあるいは乾燥シートの片面もしくは両面へ、帯電防止剤の原液、もしくは水や揮発性アルコールに溶解した帯電防止剤の溶液を噴霧もしくは滴下させて帯電防止剤を付着させる方法を用いることができる。
【0051】
帯電防止剤の種類としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が一般的に用いられる。具体的には、アニオン系界面活性剤として、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、硬化ひまし油が挙げられる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。好ましい性状としては、液状、もしくは水やアルコールに溶解できる界面活性剤であれば使用する事ができる。なかでも、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤が好ましく、特にカチオン系界面活性剤が好ましく、具体的には第4級アンモニウム塩やアルキルベタインは最も好ましい。
【0052】
かかる帯電防止処理がなされた含水シートを、エアレイド不織布の合成パルプとして使用する場合は、シート乾燥後、もしくは半乾燥後にハンマーミルなどで粉砕する事により、合成パルプを開繊し、綿状の合成繊維として使用する。この時、用途によって天然パルプを混合したり、ステープル繊維を混合して要求性能に合わせたものを作ることができる。さらに、そのようにつくられた帯電防止処理した綿状合成パルプへ、帯電防止していない綿状合成パルプと混合して用いても良い。そして、このような開繊して得られたいわゆる開繊綿のJIS K6911により測定される表面低効率値は、5×1011Ω以下であることが好ましい。
【0053】
(不織布)
本発明の不織布の厚みは通常0.05〜50mm、好ましくは0.1〜10mmである。また、不織布の目付けは通常1〜3000g/m、好ましくは10〜1000g/mである。
【0054】
拡散面積は、吸水時の拡散面積を後述の方法により測定したものである。拡散面積が大きいと、一時に広範囲に水分を拡散させることができるので、リウエット防止に有効である。不織布内に、いわゆる高吸水ポリマーが存在すると、さらにリウエット防止に有効である。
【0055】
(積層体)
本発明は、本発明の不織布とシートとの積層体とすることもできる。不織布層(A)と積層されるシート層を構成するシート(B)は、シート層側にある水分を素早く吸収して不織布(A)層に搬送するのが重要な役割であり、親水性であることが好ましいが、層が水を保持し、あるいは吸収したまま膨潤してしまうのは好ましくなく、その意味で、水分搬送に有利な限度で親水性であるべきである。不織布層を構成する不織布(A)よりも低嵩密度でることを要する。本発明において低嵩密度であるとは、「目が粗い」等の表現を用いることもできる。具体的には、不織布や孔あきシートなどを挙げる事ができる。
【0056】
シート(B)は、親水性であることが好ましい。しかし、シート(B)を親水性にする場合は、疎水性の素材でシートを製造した後に、適当な方法により親水性化処理しても良いし、いわゆる親水素材によりシートを製造しても良い。
【0057】
本発明のシート(B)層に用いられるものは、具体的には、ポリオレフィンやポリエステルのスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布で、繊維表面を親水処理したものを挙げる事ができる。
【0058】
不織布層(A)とシート層(B)の積層方法は、公知の方法であればいずれも用いることができる。たとえば、不織布(A)に用いられている合成パルプの融点以下の温度で(A)と(B)を加熱することにより溶融成分同士で融着させても良いし、接着剤等を使用して積層しても良い。
【実施例】
【0059】
(リウエット)
上記の「拡散面積」を測定した後、直ちに不織布上部に3枚のろ紙(目付335g/m、含水率10%、厚み1mm)を乗せて、その上に3.2kgの錘を乗せ、2分放置後ろ紙を取り外し、次の式よりリウエットを測定した。
リウエット=[ろ紙3枚の重量(吸水後)−ろ紙3枚の重量(初期)]÷5g(水全量)(嵩密度の測定方法)
目付および厚みを測定し、次の式から嵩密度を求める。
【0060】
嵩密度(g/cm3)=目付(g/m2)÷厚み(m)÷1000
目付けおよび厚みはJIS L1906に準拠した方法により測定した。
【0061】
(原料の準備)
親水性化処理した合成パルプ(製品名「SWP E795」(融点135℃);三井化学製)を、50℃×24時間の条件で乾燥し水分率0%にしたものを、ハンマーミルにて叩解し綿状にして使用した。
(エアレイド不織布の作製)
図9のようなバッチ式の試験機にてマットを作成し、その後マットを、図10のようなホットプレス機にてスペーサーを入れて厚み調整しつつバインダーとなる繊維を120℃で溶融し、エアレイド不織布を作製した。解綿機で投入繊維の解綿をすると共に複数の繊維を混合し、集塵機で吸引する事で、フォーミングボックス内に繊維を降らせてメッシュで繊維を捕集しマットを形成させた。
【0062】
得られたエアレイド不織布の拡散直径、リウェットを測定した。結果を表1に示す。
[実施例1]
30部の合成パルプSWP E795(三井化学(株)製)(融点135度)と、50部の常温で乾燥状態のものをハンマーミル(KIIW−1;不二パウダル(株)製にて叩解し綿状にした天然パルプと20部のバインダー樹脂である合成繊維(市販の芯PP/鞘PE繊維、鞘PEの融点110℃)を、バッチ式試験機を使ってマットを形成し、その後120℃のホットプレスにて1.5mmのスペーサーで厚み調整しながら、合成繊維を溶融してエアレイド不織布を作製した。得られたエアレイド不織布は目付150g/m、厚み1.5mm、拡散面積は100mm×100mmであり、リウエットは74%であった。結果を表1に示す。
【0063】
(参考例1)
ホットプレス機の溶融温度を150℃で行った以外は、実施例1と同様にエアレイド不織布を製造した。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
親水性化処理した合成パルプの代わりに親水性化処理をしていない合成パルプ(製品名「SWP E790」(融点135℃);三井化学製)を用いた以外は実施例1と同様にエアレイド不織布を製造した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
[実施例3]
80部の合成パルプSWP E795(三井化学(株)製)、20部のバインダー樹脂である合成繊維(市販の芯PP/鞘PE繊維、鞘PEの融点110℃)を用い、実施例1と同様の方法にて目付け150g/m、厚さ1.5mmのエアレイド不織布を製造した。拡散面積は120mm×120mmであり、リウエットは74%であった。結果を表2に示す。
【0067】
[実施例4]
実施例3において目付け150g/m、厚さ1.0mmのエアレイド不織布を製造した。結果を表2に示す。
【0068】
[実施例5]
20部の合成パルプSWP E795(三井化学(株)製)、80部のバインダー樹脂である合成繊維(市販の芯PP/鞘PE繊維、鞘PEの融点110℃)を用い、実施例1と同様の方法にて目付け150g/m、厚さ1.5mmのエアレイド不織布を製造した。結果を表2に示す。
【0069】
[実施例6]
実施例5において目付け150g/m、厚さ1.0mmのエアレイド不織布を製造した。結果を表2に示す。
【0070】
(参考例2)
実施例1において、合成パルプの代わりに、常温で乾燥状態のものをハンマーミル(KIIW−1;不二パウダル(株)製にて叩解し綿状にした天然パルプを用い、目付け150g/m、厚さ1.5mmのエアレイド不織布を製造した。結果を表2に示す。
【0071】
(参考例3)
参考例2において目付け150g/m、厚さ1.0mmのエアレイド不織布を製造した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
[実施例7]
実施例1において原料を合成パルプ、天然パルプ、合成繊維合わせて100重量部に対して、5重量部の高吸水性ポリマー(商品名;アクアキープ、住友精化(株)製)を混合し、同様の方法にてエアレイド不織布を作製した。結果を表3に示す。
【0074】
[実施例8]
実施例7において、エアレイド不織布の厚み1.0mmとした以外は同様にしてエアレイド不織布を製造した。結果を表3に示す。
【0075】
(参考例4)
実施例1において、ホットプレス温度を150℃とした以外は同様にしてエアレイド不織布を製造した。結果を表3に示す。
【0076】
[実施例9]
実施例3において原料を合成パルプ、合成繊維合わせて100重量部に対して、5重量部の高吸水性ポリマー(商品名;アクアキープ、住友精化(株)製)を混合し、同様の方法にてエアレイド不織布を作製した。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
[実施例10]
〔上層(B)〕合成パルプ(三井化学(株)製SWP E795、融点135℃)30部、天然パルプ50部、合成繊維(芯PP/鞘PEの複合繊維、芯PP融点163℃、鞘PE融点110℃)20部を混合し、バッチ式のエアレイド不織布でマットを作成後、ホットプレスにて150℃で合成繊維の鞘部分と合成パルプを溶融熱接着し、エアレイド不織布を作成した。このエアレイド不織布を顕微鏡で観察したところ、合成パルプのフィブリル繊維形状は熱処理時の溶融のため観察されない事を確認した。
【0079】
〔下層(A)〕合成パルプ(三井化学(株)製SWP E795、融点135℃)30部、天然パルプ50部、合成繊維(芯PP/鞘PEの複合繊維、芯PP融点163℃、鞘PE融点110℃)20部を混合し、バッチ式のエアレイド不織布でマットを作成後、ホットプレスにて120℃で合成繊維の鞘部分を溶融熱接着し、実施例1のエアレイド不織布を作成した。このエアレイド不織布を顕微鏡で観察したところ、合成パルプは熱処理時に溶融せずに、フィブリル繊維形状が観察される事を確認した。
【0080】
〔積層体〕上記のように作成した上層と下層をスプレーのり(住友3M(株)製スプレーのり55)で接着させて積層体を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度3.9g/sec、表面ぬれ面積40mm×40mm、リウエット47%であった。結果を表4に示す。
【0081】
[実施例11]
〔上層〕界面活性剤(花王(株)製エマノーン4110)をPPスパンボンド不織布(三井化学(株)製シンテックスPS−120)含浸し、100℃のオーブンにて乾燥させ、親水性のPPスパンボンド不織布を作成した。界面活性剤の乾燥塗布量は0.5%であった。
【0082】
〔積層体〕実施例10において、上層として上記の親水性PPスパンボンド不織布に変えて積層体を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、表面ぬれ面積35mm×35mm、リウエット25%であった。結果を表4に示す。
【0083】
[実施例12]
〔上層〕実施例11と同様の方法にて、PPニードルパンチ不織布(三井化学(株)製タフネルPA−4021)を親水処理した。界面活性剤の乾燥塗布量は0.5%であった。
【0084】
〔積層体〕実施例11において、上層として上記の親水性PPニードルパンチ不織布に変えて積層体を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度8.2g/sec、表面ぬれ面積25mm×25mm、リウエット10%であった。結果を表4に示す。
【0085】
(参考例5)
〔上層〕実施例10の下層不織布において、目付100g/m2、厚みを1mmに変えた不織布を作成した。
【0086】
〔積層体〕実施例1の積層体において、上層を上記不織布に変えた不織布を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度1.2g/sec、表面ぬれ面積80mm×80mm、リウエット74%であった。結果を表4に示す。
【0087】
(参考例6)
実施例1の下層エアレイド不織布作成時において組成を、合成パルプ、天然パルプ、合成繊維の他に、高吸水性樹脂(住友精化(株)製、アクアキープ)10部を混合しエアレイド不織布を作成した。上層および積層体は、実施例1と同様の方法にて積層体を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度3.9g/sec、表面ぬれ面積40mm×40mm、リウエット10%であった。結果を表4に示す。
【0088】
(参考例7)
参考例6の下層エアレイド不織布作成時においてホットプレス温度を150℃に変えて、合成パルプを溶融させたエアレイド不織布を作成した。上層および積層体は、実施例1と同様の方法にて作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度3.9g/sec、表面ぬれ面積80mm×80mmで実施例1と同様であったが、リウエットは90%で大きく劣るものであった。結果を表4に示す。
【0089】
(参考例8)
参考例5の下層エアレイド不織布作成時において組成を、合成パルプ、天然パルプ、合成繊維の他に、高吸水性樹脂(住友精化(株)製、アクアキープ)10部を混合しエアレイド不織布を作成した。上層および積層体は、実施例1と同様の方法にて積層体を作成した。この積層体の吸水性能を測定したところ、吸水速度1.2g/sec、表面ぬれ面積80mm×80mm、リウエット35%であった。
【0090】
【表4】

【0091】
[実施例13]
合成パルプ(SWP E795)、実施例1で用いたバインダー樹脂、
および、70重量部の上記合成パルプと30重量部の上記バインダー樹脂を用い125℃で処理をしたエアレイド不織布(本発明の不織布)、30重量部の上記合成パルプ、40重量部の実施例1の天然パルプ、および30重量部の上記バインダー樹脂を用い150℃で熱処理をしたエアレイド不織布を、家庭用ミキサーにて、1Lの水中で10gの不織布を1分間攪拌し、不織布を離解した。JIS P8207「パルプのふるい分け試験」の方法を使い、メッシュ番手を次に述べる様に変更して篩い分け試験を行った。使用したメッシュは、第1層:#12、第2層:#20、第3層:#36、第4層:#60、パス品回収層#150の各々を篩を用いた。篩い分けにより分離し、各層の存在率(重量比)と合成パルプの構造が確認できるかどうかを電子顕微鏡により観察して判定した。結果を表5に示す。
【0092】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の不織布は吸水性、リウェット防止性に優れているため、積層体は、紙おむつや生理用品などの衛生材の吸収体として用いることができる。その場合、シート(B)層側をおむつなどのトップシート側に配置するのが良い。また、シート層(B)に孔あきフィルム等を用いれば、トップシートと従来の吸収体の代わりに本発明の積層体を用いることができる。さらに、不織布(A)層の両側にシート(B)層を積層したものは、ワイバーの用途に用いることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)5〜95重量部の多分岐形状を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプ、
(b)該合成パルプ同士を結合している5〜95重量部のバインダー樹脂を含み、不織布中に多分岐形状を有する合成パルプの形状が観察され、密度が0.03〜0.3g/cmである不織布。
【請求項2】
前記多分岐形状を有する合成パルプは、1以上の分岐を有する繊維状構造を有し、繊維表面上に凹凸と繊維方向の繊維が観察されることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項3】
撹拌粉砕した不織布を篩により分画し、各画分に多分岐形状を有する合成パルプの形状が観察されることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項4】
エアレイド法で製造されることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項5】
前記(a)の熱可塑性樹脂からなる合成パルプが表面に界面活性剤が付着している親水性化処理をされていることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項6】
前記(a)の熱可塑性樹脂からなる合成パルプの一部が不織布重量100重量部に対して0〜90重量部の天然繊維で置き換えられていることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項7】
前記(a)の熱可塑性樹脂からなる合成パルプがポリオレフィンからなるパルプであることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項8】
前記(b)のバインダーが前記(a)パルプを構成する熱可塑性樹脂よりも融点が低い合成繊維からなることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項9】
前記(a)の熱可塑性樹脂からなる合成パルプと前記(b)のバインダー樹脂を主たる原料として用いる不織布の製造方法であって、バインダー樹脂の融点以上の温度で、かつ、熱可塑性樹脂からなる合成パルプが溶融しない温度以下で不織布を成形することを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の不織布を用いた吸収体。
【請求項11】
高吸水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項12】
不織布層と該不織布よりも嵩密度の小さいシート層からなる積層体において、該不織布が多分岐形状を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプと該合成パルプ同士を結合しているバインダー樹脂を少なくとも5重量部以上含み、該不織布中に多分岐形状を有する該合成パルプの形状が観察されることを特徴とする積層体。
【請求項13】
前記不織布層の密度が0.03〜0.3g/cmである請求項8の積層体。
【請求項14】
前記不織布層に高吸水性ポリマーを含むことを特徴とする前記請求項8記載の積層体。
【請求項15】
前記高吸水生ポリマーが前記不織布層の全体に分散、若しくは層状に配置されていることを特徴とする前記請求項8記載の積層体。

【国際公開番号】WO2005/012616
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512535(P2005−512535)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010968
【国際出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】