吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法及びその利用
【課題】 優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法の提供。
【解決手段】 熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体。熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、前記吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【解決手段】 熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体。熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、前記吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法に関する。本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、吸水性熱可塑性樹脂発泡シート、該吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを用いた吸水性成形容器、吸水性容器蓋、吸水性下敷き材、吸水性折り箱などに利用可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂は、発泡シート、ボード状、箱状などの様々な形状の発泡成形体を製造することが容易であり、得られた発泡成形品は断熱性を有し、軽量で適度の剛性を持っていることから、各種の分野で多用されている。しかし、ポリスチレン系樹脂発泡体は撥水性があり、水分を吸収しない。その為、水滴が発生するような使用環境下では種々の問題が発生する。例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートを容器形状に成形した容器は、湿気が発生するような温かい食品を容器に入れておくと、容器蓋の裏側に湿気が付着し、凝縮して水滴となる。この水滴は食品の上に落下し、ご飯類のベトツキ、惣菜類の味覚低下を引き起こすことになる。また、トレー容器などでは、発生した肉汁や解凍された水分が容器内に残り、新鮮さをアピールし難くなる。そこでポリスチレン系樹脂発泡体の優れた特性を生かしつつも更なる機能付加として、吸水性を付与することが試みられている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
特許文献1には、密度が0.3〜0.03g/cm3で且つ連通気泡率が50〜95%の連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層と、密度が0.2〜0.05g/cm3で且つ連通気泡率が40%以下の独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層とを積層したことを特徴とする、スチレン系樹脂発泡積層シートが開示されている。この特許文献1中には、吸水能力を高めるために表面スキンに小孔を穿設することが好ましいこと、スキンを破るために、シートがロール状に捲き取られる間に針山ロールあるいは金属製回転ブラシ等を配して連続的にスキンを破ることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、50%以上の連続気泡率を有するポリスチレン系樹脂発泡シートからなる容器蓋であり、容器内部に面する側に製造時に形成された前記発泡シート自体の表皮層及び任意に積層された被覆層の少なくとも一部が破断もしくは除去されて湿気通路が形成されてなることを特徴とする容器蓋が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリスチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂組成物100質量部に対し、界面活性剤を0.5〜5質量部含有する樹脂組成物を発泡させて得られる連続気泡率が60%以上でかつ吸水率が10%以上である発泡体であって、前記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物のJIS K 7215記載のデュロメータタイプA硬度(HDA)の値が20〜90であることを特徴とする発泡体が開示されている。
【0006】
特許文献4には、吸水性樹脂を含有したポリスチレン系樹脂発泡シートからなる基体の一方の面に非発泡性樹脂を積層したポリスチレン系樹脂発泡シート積層体であって、前記非発泡樹脂が積層された面と反対側の基体表面の表層の押し出し方向と押し出し方向に直交する方向との14kHzの縦波の伝播速度の比が0.8〜0.9または1.1〜1.2となっていると共に、前記基体表面が、基体の厚みの1/2〜2/3の深さに複数の切り込みが設けられていることを特徴とする、吸水性及び水分保持性を有するポリスチレン系樹脂発泡シート積層体が開示されている。
【0007】
特許文献5には、水分を含有する食品を収納する食品容器の上面を覆うように被せられる蓋であって、該蓋は、食品容器内面側に微細な凹陥部を多数有することを特徴とする食品容器の蓋が開示されている。
【特許文献1】特開平9−254294号公報
【特許文献2】特開平10−129743号公報
【特許文献3】特開2004−352927号公報
【特許文献4】特開平10−202802号公報
【特許文献5】実開平6−16250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に記載された従来技術では、ピンによる穴あけによる吸水性の向上を記載しているが、小孔をあけるだけでは、水滴の様に表面張力が強い場合、穴の上部に水滴が乗る様な状態で力が均等になると吸い取らなくなる場合が発生することがわかった。
特許文献2に記載された従来技術では、切り込みを入れたり小孔をあけたりすることを記載しているが、切り込みは一定方向には大幅な物理強度を低下させ、これを避けようと表層面だけ薄く切り込みを入れようとすると表層スキンの反発により十分な吸水性の効果を得ることができなかった。
特許文献3に記載された従来技術では、小孔を設ける以外に発泡体の表面層をけずることが記載されている。しかしこれは、削り粉が大量に発生したり、強度が大幅に低下するおそれがあった。
特許文献4に記載された従来技術では、前記特許文献2と同様に切り込みをいれる記載があり、好ましい切り込み形状や切り込み深さの記載などがある。しかし切り込みを入れることである一定の方向には極端に曲げ強度の低下を招く欠点があった。
特許文献5には、凹陥部に関して、食品容器の内側に向かって断面積が漸次増大していても、漸次減少していても、あるいは断面積に変化を与えないようにしても良い旨が記載されている。しかし、このような単純形状の穴(凹陥部)では、前記特許文献1と同じく水滴の様に表面張力が強い場合、穴の上部に水滴が乗る様な状態で力が均等になると吸い取らなくなる場合が発生する問題がある。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
【0011】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔下部は有底であることが好ましい。
【0012】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔上部と小孔下部の間に縊れ部を有することが好ましい。
【0013】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記表面に対して前記小孔上部の傾斜面がなす傾斜角度が20°〜70°の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔上部の下端径/小孔上部の傾斜面の距離=0.2〜1の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体の連続気泡率が50〜80%であることが好ましい。
【0016】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体に連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡体が積層されていることが好ましい。
【0017】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体がポリスチレン系樹脂発泡体であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0020】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、シート状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを提供する。
【0021】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを成形してなることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート成形体を提供する。
【0022】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように容器形状に成形してなることを特徴とする容器を提供する。
【0023】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が密閉空間に面するように容器蓋形状に成形してなることを特徴とする容器蓋を提供する。
【0024】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートからなる吸水性下敷き製品を提供する。
【0025】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように所定形状に成形し、さらに箱形に折り曲げ加工して得られた折り箱を提供する。
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、厚板状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡ボードを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体本体の表面に、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有している小孔を多数設けたものなので、小孔上部の開口に水滴が付着すると、水滴は表面張力が作用しても、広がった小孔上部の開口に入り込み、小孔内に吸収される。また、熱可塑性樹脂発泡体本体の表面にこの小孔を多数設けても、熱可塑性樹脂発泡体本体の曲げ強度等の機械強度はそれほど低下しない。従って、本発明によれば、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体を提供することができる。
【0027】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧する簡単な操作によって、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることができるので、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体を安価にかつ高い生産効率で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体の一実施形態を示し、図1は吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の要部断面の電子顕微鏡観察画像を表す図、図2は吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の概略図であり、図2(a)は要部概略断面図、(b)は要部平面図である。
【0029】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔3を有し、小孔3は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを少なくとも有し、該小孔上部4は表面へ向って拡径された傾斜面6を有している。
【0030】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の材料である熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などが挙げられ、これらの中でも高発泡倍率で断熱性、強度に優れ、成形性も良好な発泡成形体を製造可能なことから、ポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体、または前記スチレン系単量体と他の単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ブタジエン等のビニル単量体との共重合体等を用いることができる。そのうちでは、ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体等を用いることが好ましい。これらは単独であるいは混合して用いることができる。
【0031】
ポリスチレン系樹脂には、改質のためにゴム状物質を少量添加してもよい。ゴム状物質としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、低シスポリブタジエン及びこれらの水素添加された共重合体等を用いることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の製造において用いる発泡剤としては、熱可塑性樹脂発泡体の製造分野で従来公知のものをいずれも使用でき、分解型発泡剤、気体又は揮発性の発泡剤が使用できる。分解型発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド等の無機系分解型発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホニルアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N'−ジニトロソペンタンメチレンテトラミン及びN,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド及びp,p'−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等を用いることができる。これらの発泡剤は、単独でも組み合わせてもよい。更に、分解温度、発生ガス量及び分解速度を調整する為に公知の発泡助剤を添加することもできる。
気体の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、メチルエーテル等が使用できる。なお、ここで気体とは常温(25℃)、常圧(1気圧)で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、水も使用することができる。これらを混合使用することもできる。上記発泡剤の内、ブタンが好ましい。
【0033】
本発明において熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状及び製造方法は限定されない。熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状は、例えば、シート状、厚板(ボード)状などの各種の形状とすることができる。また、シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を成形して容器、トレー、容器蓋などとすることもできるし、シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を適当な形状や大きさに裁断してコースターやトレー用吸水性下敷きなどとすることもできるし、あるいは裁断物を折り曲げて折箱とすることもできる。
【0034】
また、熱可塑性樹脂発泡体本体2の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状によって適宜選択できる。シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する方法としては、押出機に熱可塑性樹脂と必要に応じて加えられる添加剤を投入し、押出機内で加熱溶融し、前記揮発性の発泡剤を混ぜ、混練して押出機先端に取り付けたサーキュラーダイから押し出して発泡させ、直ちに冷却マンドレルにて冷却し、シート状に切り開き、得られたシートを巻き取ることによって製造することができる。ボード状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する方法としては、押出機に熱可塑性樹脂と必要に応じて加えられる添加剤を投入し、押出機内で加熱溶融し、前記揮発性の発泡剤を混ぜ、混練して押出機先端に取り付けたTダイから押出して発泡させ、発泡後、冷却ロールにて冷却し、裁断することによって製造することができる。
また、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層を積層する方法としては、非発泡樹脂フィルムを接着剤又は加熱融着により積層する方法、非発泡樹脂層を一つのダイ内で行う共押出法により積層する方法等が適用できる。熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に非発泡樹脂層を積層することで強度が向上する。
【0035】
また、箱状などの熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する場合には、発泡剤を含浸させた熱可塑性樹脂からなる発泡性熱可塑性樹樹脂粒子(発泡ビーズなどとも称される。)を用い、この粒子を蒸気加熱などによって加熱し発泡させて予備発泡粒子とし、製造する目的の形状に合致したキャビティを有する成形型の該キャビティ内に予備発泡粒子を充填し、その後蒸気加熱などによって成形型内の予備発泡粒子を発泡させると共に、隣接する予備発泡粒子同士の表面を融着させ、その後冷却して発泡成形体を成形型から取り出す、型内発泡成形によって製造することができる。
【0036】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、前述したようにして得られた熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に、図1及び図2に示す形状の小孔3を多数設けて構成されている。本実施形態において、小孔3は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを有し、小孔下部5は有底になっている。小孔上部4は表面へ向って拡径された傾斜面6を有している。
【0037】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に対して、小孔上部4の傾斜面がなす傾斜角度θは、20°〜70°の範囲であることが好ましい。この傾斜角度θが20°未満であると傾斜面6の傾斜が緩やか過ぎて、この小孔開口に水滴が付着した場合に水滴が小孔3内部に流れ込み難くなり、吸水性能が悪化する。また、この傾斜角度θが70°を超えると、傾斜面6の傾斜が強すぎて、表面に垂直に開けた針穴と同様に、この小孔開口に水滴が付着した場合に表面張力によって水滴が小孔3内に流れ込み難くなり、吸水性能が悪化する。
【0038】
本実施形態において、小孔3は、小孔上部4と小孔下部5との間に縮径した縊れ部10を有している。縊れ部10より下の小孔下部5は有底の空洞部5aになっている。この空洞部5aは、吸水した水を溜め、熱可塑性樹脂発泡体本体2の連続気泡層8にその水を吸水させるようになっている。
【0039】
図2に示す小孔3において、小孔深さA、傾斜面の距離B、小孔上部の下端径D、小孔上部4の幅E、小孔下部5の上端径Fは、特に限定されるものではなく、適宜設定可能であるが、小孔上部4の下端径Dと傾斜面の距離Bとの比であるD/Bの値が0.2〜1の範囲であることが好ましい。更に好ましくは、0.3〜0.7の範囲である。このD/Bの値が0.2未満であるとDに対してBが大きくなりすぎて強度低下を招くこととなり、D/Bの値が1を超えるとDに対してBが小さすぎて傾斜面を設ける効果が小さくなる。また、小孔深さAは0.5〜5mmの範囲が好ましく、傾斜面の距離Bは0.1〜10mmの範囲が好ましく、小孔上部の下端径Dは0.1〜7mmの範囲が好ましく、小孔上部4の幅Eは0.5〜10mmの範囲が好ましく、小孔下部5の上端径Fは0.5〜10mmの範囲が好ましい。
【0040】
本実施形態において、小孔3は、断面形状が図2(a)に示すように裾が広がった略矢印形状であり、平面形状が図2(b)に示すように長方形状に形成されている。この小孔3の形状は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを少なくとも有し、かつ該小孔上部4が表面へ向って拡径された傾斜面6を有していればよく、本例示に限定されない。
【0041】
図3〜図9は、小孔3の他の形状を例示するものである。
図3に例示した小孔3は、断面形状が図3(a)に示すように図2に示す小孔3と同じく裾が広がった略矢印形状であり、平面形状が図3(b)に示すように同心円状に形成されている。
図4に例示した小孔3は、垂直な角形穴状に形成された小径下部5と、その上部の片側のみに傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図5に例示した小孔3は、垂直な角形穴状に形成された小径下部5と、その上部の両側側に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図6に例示した小孔3は、断面V字状をなしている小径下部5と、その上部に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図7に例示した小孔3は、断面視略四角形の空洞部5aを有する小径下部5と、その上部に傾斜面6を有する小孔上部4と、それらの間に設けられた縊れ部10とからなっている。
図8に例示した小孔3は、熱可塑性樹脂発泡体本体2を貫通して設けられた小径下部5と、一方の面側の小径下部5の上部に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図9に例示した小孔3は、熱可塑性樹脂発泡体本体2を貫通して設けられた小径下部5と、両方の面側の小径下部5の開口側に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
【0042】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1において、熱可塑性樹脂発泡体本体2は、連続気泡率が50〜80%であることが好ましい。連続気泡率が50〜80%である発泡体は、水などの液体がその細い気泡通路内を流通可能であり、かつ毛細管現象によって連通した一方にある水滴を他方側に吸水するため、吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の基材として好ましい。この連続気泡率が50%未満であると、小孔3の吸水性能が低下する、一方、連続気泡率が80%を超えると、熱可塑性樹脂発泡体本体2の機械強度が低下して容器等を製造することが難しくなることから好ましくない。
【0043】
この連続気泡率が50〜80%である熱可塑性樹脂発泡体本体2、特にポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、連通気泡型シートと記す。)を製造する1つの方法は、押出機にポリスチレン系樹脂を入れて加熱溶融し、押出機の途中からブタン、ペンタン等の脂肪族又は脂環族炭化水素類からなる発泡剤をポリスチレン系樹脂1kgあたり0.3〜1.0モルの割合で圧入し、連続気泡率が30%以下のポリスチレン系樹脂発泡シートが得られる押出時の樹脂温度より、10℃程度高い樹脂温度に設定して押し出すことにより、連通気泡型シートを得ることができる。発泡剤としては前記の発泡剤に窒素、炭酸ガス、空気、水又はこれらの混合物からなる無機物発泡剤を混合して使用することもできる。
【0044】
この連通気泡型シートは大きな吸水能力を持っており、この吸水能力は大きいことが好ましい。この吸水能力はJIS A 9511に準拠して吸水率として定量的に表すことができる。具体的には、この連通気泡型シートから厚みをそのままにして100×100mmの正方形のサンプルを切り取り、このサンプルを24時間常温の水に浸漬し、取り出し表面の付着水をガーゼ等で拭き取り、このサンプルの重量を測定し、サンプルの元の重量に対する増加割合を計算し、この増加割合を吸水率とする。連通気泡型シートは吸水率が30%以上であることが望ましい。吸水率が30%未満では、小孔3を介して水分を効果的に連通気泡型シート内に取り込むことができなくなるからである。
【0045】
また、連通気泡型シートの吸水能力を高めるには、この連通気泡型シートの中に無機質粉末を1.0〜20.0質量%含ませるのが好ましい。無機質粉末が1.0質量%未満であると吸水能力の向上に効果がなく、20.0質量%を越えると吸水能力は向上するが、シートの外観が著しく低下するからである。これに用いる無機質粉末としては、炭酸カルシウム、タルク等を用いることが好ましい。無機質粉末は、また気泡調整剤としても有効である。また、連通気泡型シートの吸水能力を高めることは、この連通気泡型シートの中に吸水性高分子物を1.0〜20.0質量%含ませることでも達成し得る。
また、この連通気泡型シートの表面又は内部に界面活性剤を添加することでも達成し得る。
【0046】
熱可塑性樹脂発泡体本体2のさらに好ましい実施形態として、前述した連通気泡型シートと、連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡シート(以下、独立気泡型シートと記す。)とが積層された積層シートが挙げられる。連通気泡型シートからなる連続気泡層と独立気泡型シートからなる独立気泡層を有し、シート状をなしている熱可塑性樹脂発泡体本体2(以下、発泡積層シートと記す。)を製造する方法としては、例えば、特許文献1(特開平9−254294号公報)に記載されている方法を用いることができる。すなわち、押出機にポリスチレン系樹脂を投入し、押出機内で溶融したポリスチレン系樹脂に発泡剤を混入し、発泡剤を含んだ樹脂を押出機の先端に取り付けたダイから大気中に押し出し、発泡シートとすることによって作ることができる。但し、連続気泡層を形成する部分には、既に述べたように、連続気泡が生成するような配慮をし、独立気泡層を形成する部分には独立気泡が生成するような配慮をしなければならない。押し出し発泡は、一つの金型内で行う共押し出しによることが好ましい。あるいは連通気泡型シートと独立気泡型シートとを別個に用意し、両者を重ね合わせ、接着剤又は加熱融着により一体化して発泡積層シートにすることもできる。
【0047】
図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、前述した共押し出し法によって製造した発泡積層シートを熱可塑性樹脂発泡体本体2として用い、その表面に前述した小孔3を設けたものである。図1に示す熱可塑性樹脂発泡体本体2において、符号8が連続気泡層、9が独立気泡層である。また、積層された各層の上下両面側には、発泡積層シート製造時に表面が急冷されて形成された表面スキン層7が形成されている。連続気泡層8側の表面に形成された表面スキン層7は、連続気泡層8よりも気泡が細かくなり、かつ連続気泡率が低下している場合がある。小孔3は、連続気泡層8側に設けられ、表面スキン層7と連続気泡層8を貫いた状態で設けられている。
【0048】
図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3が設けられた側の表面が吸水性を有している。この表面に水滴が付着すると、水滴は小孔3の傾斜面6に流れ込む。この傾斜面6が無いと、小孔3の開口に水滴が付着しても、水滴の表面張力によって小孔内に流れ込み難い。一方、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3の開口部分(小孔上部4)に傾斜面6を有していることで、傾斜面6に入った水滴は、傾斜面6により表面張力に抗して小孔3内に浸入し、連続気泡層8に吸収される。この吸水時、小孔上部4と小孔下部5との間に縊れ部10が設けられていることで、傾斜面6に付着した水滴は縊れ部10において生じる毛細管現象によって小孔上部4から小孔下部5への移行が促進される。小孔下部5側に流入した水分は、空洞部5aに溜まるとともに、この空洞部5aに連通した連続気泡層8の細い連続気泡を通して、連続気泡層8に速やかに拡散される。このように、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3を設けた側の表面において優れた吸水性能を発揮することができる。
【0049】
また、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、機械強度に優れている独立気泡層9と吸水性に優れている連続気泡層8とを積層した発泡積層シートを熱可塑性樹脂発泡体本体2として用い、その連続気泡層8側の表面に前述した小孔3を設けたものなので、小孔3と連続気泡層8とにより優れた吸水性能を発揮できると共に、独立気泡層9を積層したことによって、良好な機械強度、断熱性、緩衝性を持たせることができ、ある程度の機械強度が必要となる用途、例えば、種々の容器やトレーなどに適用することが可能となる。
【0050】
次に、図10〜図14を参照して、本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の製造方法の一例を説明する。本例では、熱可塑性樹脂発泡体本体2として、前述した発泡積層シートを用い、その連続気泡層8側の表面に小孔3を設け、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を製造する場合を例示する。図10は、発泡積層シートからなる熱可塑性樹脂発泡体本体2の連続気泡層8側の表面に三角形の押圧刃11を押圧した状態を示す断面図である。図11は小孔3を形成する穴あけ加工に用いる穴あけ治具にセットされる歯車を示し、図11(a)は第1例の歯車12aの側面図、(b)は正面図、(c)は第2例の歯車12bの側面図、(d)は正面図である。図12は小孔3を形成する穴あけ加工に用いる穴あけ治具13の外観図である。図13は、発泡積層シート15に小孔3を形成する穴あけ加工を示す斜視図である。図14は、発泡積層シート15に穴をあけた後、小孔3が形成される状態を示す断面図である。
【0051】
本例の製造方法では、熱可塑性樹脂発泡体本体2として発泡積層シート15を用い、この発泡積層シート15を図13に示すように穴あけ治具13とローラ14の間を連続的に通すことによって、発泡積層シート15の連続気泡層8側の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔3を多数設け、吸水性発泡シート16(吸水性熱可塑性樹脂発泡体1)を製造する。穴あけ加工を終えた吸水性発泡シート16はローラに巻き取られる。
【0052】
この穴あけ加工において用いられる穴あけ治具13は、図12に示すように、シャフトに複数枚の歯車12A,12Bを等間隔で又はランダムに固定した構成になっている。歯車12A,12Bは、図11に示すように、外周に多数の押圧刃11が設けられている略円盤状をなしている。押圧刃11は、先端角度θ1、θ2が30°〜150°のV字状又は錐状をなしている。この歯車12A,12Bの各部の寸法は限定されないが、刃先外径G1,G2が100〜300mm、基部外周H1,H2がG1,G2よりも5〜20mm小さい値、厚さI1,I2が0.5〜10mm程度が好ましい。
【0053】
発泡積層シート15(熱可塑性樹脂発泡体本体2)の連続気泡層8側の表面に押圧刃11を押圧すると、図11に示すように、押圧刃11は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面スキン層7と連続気泡層8を突き破り、先端が独立気泡層9に達する。表面スキン層7と連続気泡層8は押圧刃11に突き破られる際、両層の機械強度の違いから、それらの境界部で切り離される。すなわち、連続気泡層8よりも表面スキン層7の方が緻密であることから機械強度が高く、これらの層が押圧刃11に突き破られる際に、連続気泡層8が容易に突き破られて押圧されるのに対し、表面スキン層7は押圧に抗することで、両層の境界部が剥離する。
【0054】
押圧刃11が離れると、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に形成されたV字状の小孔において、図14に示すように、独立気泡層9の反発によって小孔の底が上がり、さらに表面スキン層7が隆起して縊れ部10が形成され、図1及び図2に示す形状の小孔3が形成される。
【0055】
発泡積層シート15(熱可塑性樹脂発泡体本体2)の表面に設ける小孔3の数と配列状態は、歯車12A,12Bの押圧刃11の形成個数、先端角度、穴あけ治具13への歯車12A、12Bの取り付け間隔などを適宜設定することで容易に変更可能である。例えば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に、多数の小孔3を格子状、千鳥状、あるいはランダムに設けることもできる。また、穴あけ治具13に押圧刃11の形成個数や先端角度が異なる複数種類の歯車12A,12Bを交互に取り付け、発泡積層シート15に大きさや形状の異なる小孔3を設けることもできる。
【0056】
本実施形態の製造方法によれば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃11を押圧する簡単な操作によって、前述した吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を得ることができるので、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を安価にかつ高い生産効率で提供することができる。
【0057】
本発明は、前述した実施態様に限定されるものではなく、種々の修正や変更が可能である。
例えば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられた構成とすることもできる。
【0058】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、吸水性熱可塑性樹脂発泡シート、該吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを用いた吸水性成形容器、吸水性容器蓋、吸水性下敷き材、吸水性折り箱、結露吸水テープ、吸水性熱可塑性樹脂発泡ボード、吸水性断熱材、吸水性コンクリート養生被覆材、吸水性発泡成形体容器などに利用可能である。
【実施例】
【0059】
[発泡シートの製造]
押出機として内径90mm押出機(一段目押出機)と150mm押出機(二段目押出機)が連結されたタンデム型押出機を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名HRM−26)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学社製)を1.5質量部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を4.2質量部添加した。その後連続気泡を有する発泡に適した樹脂温度165℃付近まで冷却した。
【0060】
さらに先端部に取り付けた口径105mm、スリットクリアランス0.5mmに設定されたサーキュラーダイより樹脂を押し出して発泡させ、この発泡シートを外径414mm、長さ500mmの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に冷却温度30℃の空気を吹き付けて外周も冷却し、その後2枚に切り開いてロール状に巻き取った。得られた発泡シートは厚み2.5mm、密度0.09g/m2であった。
【0061】
得られた発泡シートの連続気泡率を測定した結果、連続気泡率は70.1%であった。
なお、連続気泡率についてはASTM D2856−87記載の測定方法に準じて測定した。すなわち25mm以上になるように切片で構成された試験体(25mmの立方体)を試料より5個切出し、ノギスを用いて見掛け体積を測定し、次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス社製)を用いて1−1/2−1気圧法により体積を測定し、以下の式にて連続気泡率を算出した。
連続気泡率(%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100
【0062】
[実施例1]
前述した通り製造した発泡シートを図12に示す穴あけ治具に通し、発泡シートの表面に小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。この穴あけ治具は、図11に示す歯車の先端角を30°にした歯車を通紙ロールに取り付けて構成し、図13に示すように穴あけ治具とローラとの間に発泡シートを通して小孔をあけた。形成された小孔の表面の電子顕微鏡写真にて屈曲している長さと小孔の開いている長さを測定した。更に内部セルの突き破られている傾斜角測定の為に傾斜角度の明確にわかる方向で断面をカットして小孔の断面を電子顕微鏡写真で撮り、シート表面との傾斜角を測定した。その際に小孔形状も観察した。なお、電子顕微鏡写真撮影については走査型電子顕微鏡S−3000N(日立製作所製)にて適切な倍率で測定した。図15に小孔の表面形状を示す。得られた小孔の形状は傾斜面の距離Bが0.55mm、小孔上部の下端径Dが0.30mm、傾斜角度θは50°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.55であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
【0063】
(吸水性の評価)
得られた発泡シートに孔をあけ、水滴にみたてて、駒込ピペット5mL用にて小孔1つに1滴水滴を垂らして吸水するかを目視で確認した。小孔各10箇所に水滴を垂らし10秒以内に5箇所以上で吸水した場合に吸水性があると判断した。
実施例1の吸水性発泡シートは、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
【0064】
(成形性の確認)
得られた吸水性発泡シートについて成形機FM60WNCF205(東成産業社製)を用い、成形温度150℃、成形秒数6.1秒で成形を行い、成形形状は外周200mmφ、深さ30mmの容器形状で確認した。成形は特に問題なく可能であり、小孔形状は図3に示す形状となった。
【0065】
[実施例2]
穴あけ治具に取り付ける歯車の先端角度を60°とした以外は、実施例1と同様にして発泡シートに小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。
得られた小孔の形状は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.35mm、傾斜角度θが45°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.52であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0066】
[実施例3]
穴あけ治具に取り付ける歯車の先端角度を90°とした以外は、実施例1と同様にして発泡シートに小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。
得られた小孔の形状は、傾斜面の距離Bが0.90mm、小孔上部の下端径Dが0.45mm、傾斜角度θは40°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.50であった。小孔表面の形状を図16に示す。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0067】
[実施例4]
前述した通り作製したポリスチレン発泡シートに厚さ25μmのポリスチレンフィルム(大石産業社製)を重ね合わせ、加熱温度170℃、直径300mmの誘電加熱ロールに通して積層したのち、押圧刃の先端角度60°の歯車を取り付けた穴あけ治具を用いて穴あけ加工を施し、多数の小孔を設けて吸水性発泡シートを作製した。得られた小孔は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.38mm、傾斜角度θが55°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.57であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0068】
[実施例5]
押出機として内径90mm押出機(一段目押出機)と150mm押出機(二段目押出機)が連結されたタンデム型押出機を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名HRM−26)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学社製)を1.5質量部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を4.2質量部添加した。その後連続気泡を有する発泡に適した樹脂温度165℃付近まで冷却した。
一方、内径120mm押出機(B)を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名G−13−50B)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学株式会社)を1.5部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を3.7質量部添加した。その後独立気泡を有する発泡に適した樹脂温度155℃付近まで冷却した。
押出機(A)と押出機(B)を合流ダイで合流させて積層し、さらに先端部に取り付けた口径105mm、スリットクリアランス0.5mmに設定されたサーキュラーダイより樹脂を押し出して発泡させ、この発泡シートを外径440mm、長さ500mmの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に冷却温度30℃の空気を吹き付けて外周も冷却し、その後2枚に切り開いてロール状に巻き取った。得られた発泡積層シートは厚み2.8mm、密度0.075g/m2であった。
押出機(A)側の発泡層は、連続気泡率が68.5%の連続気泡層であった。
押出機(B)側の発泡層は、連続気泡率が10.5%の独立気泡層であった。
【0069】
得られた発泡積層シートに、押圧刃の先端角度60°の歯車を取り付けた穴あけ治具を用いて穴あけ加工を施し、多数の小孔を設けて吸水性発泡シートを作製した。得られた小孔は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.35mm、傾斜角度θが45°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.8mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.52であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。図1に実際に得られた小孔の断面形状を示す。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0070】
[比較例]
実施例5で作製した発泡シートに直径1mmの針を押し付けて小孔を設けた。得られた小孔は、開口部分に傾斜面がなく(B=0mm)、穴の開いている部分が直径0.65mmの円形で傾斜角度θは90°であった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。この小孔の断面形状を図17に示す。
得られた針穴付き発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち3個しか吸水せず、吸水性は×と判定した。
また成形は特に問題なく可能であった。
【0071】
これらの結果より、小孔の開口に表面張力のある水滴が付着した場合でも吸水特性を向上させる小孔形状を見出し、その小径を設けた吸水特性に優れた吸水性発泡シートを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る実施例5で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の断面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図2】本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔を概略的に表し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】小孔の形状の第2の例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図4】小孔の形状の第3の例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図5】小孔の形状の第4の例を示す断面図である。
【図6】小孔の形状の第5の例を示す断面図である。
【図7】小孔の形状の第6の例を示す断面図である。
【図8】小孔の形状の第7の例を示す断面図である。
【図9】小孔の形状の第8の例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る製造方法を説明する図であり、熱可塑性樹脂発泡体本体に押圧刃を押圧した状態を示す断面図である。
【図11】穴あけ加工に用いる歯車を示す図であり、(a)は歯車の第1例の側面図、(b)は正面図、(c)は歯車の第2例の側面図、(d)は正面図である。
【図12】穴あけ治具を例示する外観図である。
【図13】本発明に係る製造方法を説明する斜視図である。
【図14】押圧刃の押圧後に図1の形状の小孔が形成されるプロセスを説明する断面図である。
【図15】本発明に係る実施例1で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の表面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図16】本発明に係る実施例3で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の表面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図17】比較例1で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の断面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1…吸水性熱可塑性樹脂発泡体、2…熱可塑性樹脂発泡体本体、3…小孔、4…小孔上部、5…小孔下部、5a…空洞部、6…傾斜面、7…表面スキン層、8…連続気泡層、9…独立気泡層、10…縊れ部、11…押圧刃、12A,12B…歯車、13…穴あけ治具、14…ローラ、15…発泡積層シート、16…吸水性発泡シート(吸水性熱可塑性樹脂発泡体)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法に関する。本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、吸水性熱可塑性樹脂発泡シート、該吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを用いた吸水性成形容器、吸水性容器蓋、吸水性下敷き材、吸水性折り箱などに利用可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂は、発泡シート、ボード状、箱状などの様々な形状の発泡成形体を製造することが容易であり、得られた発泡成形品は断熱性を有し、軽量で適度の剛性を持っていることから、各種の分野で多用されている。しかし、ポリスチレン系樹脂発泡体は撥水性があり、水分を吸収しない。その為、水滴が発生するような使用環境下では種々の問題が発生する。例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートを容器形状に成形した容器は、湿気が発生するような温かい食品を容器に入れておくと、容器蓋の裏側に湿気が付着し、凝縮して水滴となる。この水滴は食品の上に落下し、ご飯類のベトツキ、惣菜類の味覚低下を引き起こすことになる。また、トレー容器などでは、発生した肉汁や解凍された水分が容器内に残り、新鮮さをアピールし難くなる。そこでポリスチレン系樹脂発泡体の優れた特性を生かしつつも更なる機能付加として、吸水性を付与することが試みられている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
特許文献1には、密度が0.3〜0.03g/cm3で且つ連通気泡率が50〜95%の連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層と、密度が0.2〜0.05g/cm3で且つ連通気泡率が40%以下の独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層とを積層したことを特徴とする、スチレン系樹脂発泡積層シートが開示されている。この特許文献1中には、吸水能力を高めるために表面スキンに小孔を穿設することが好ましいこと、スキンを破るために、シートがロール状に捲き取られる間に針山ロールあるいは金属製回転ブラシ等を配して連続的にスキンを破ることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、50%以上の連続気泡率を有するポリスチレン系樹脂発泡シートからなる容器蓋であり、容器内部に面する側に製造時に形成された前記発泡シート自体の表皮層及び任意に積層された被覆層の少なくとも一部が破断もしくは除去されて湿気通路が形成されてなることを特徴とする容器蓋が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリスチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂組成物100質量部に対し、界面活性剤を0.5〜5質量部含有する樹脂組成物を発泡させて得られる連続気泡率が60%以上でかつ吸水率が10%以上である発泡体であって、前記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物のJIS K 7215記載のデュロメータタイプA硬度(HDA)の値が20〜90であることを特徴とする発泡体が開示されている。
【0006】
特許文献4には、吸水性樹脂を含有したポリスチレン系樹脂発泡シートからなる基体の一方の面に非発泡性樹脂を積層したポリスチレン系樹脂発泡シート積層体であって、前記非発泡樹脂が積層された面と反対側の基体表面の表層の押し出し方向と押し出し方向に直交する方向との14kHzの縦波の伝播速度の比が0.8〜0.9または1.1〜1.2となっていると共に、前記基体表面が、基体の厚みの1/2〜2/3の深さに複数の切り込みが設けられていることを特徴とする、吸水性及び水分保持性を有するポリスチレン系樹脂発泡シート積層体が開示されている。
【0007】
特許文献5には、水分を含有する食品を収納する食品容器の上面を覆うように被せられる蓋であって、該蓋は、食品容器内面側に微細な凹陥部を多数有することを特徴とする食品容器の蓋が開示されている。
【特許文献1】特開平9−254294号公報
【特許文献2】特開平10−129743号公報
【特許文献3】特開2004−352927号公報
【特許文献4】特開平10−202802号公報
【特許文献5】実開平6−16250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に記載された従来技術では、ピンによる穴あけによる吸水性の向上を記載しているが、小孔をあけるだけでは、水滴の様に表面張力が強い場合、穴の上部に水滴が乗る様な状態で力が均等になると吸い取らなくなる場合が発生することがわかった。
特許文献2に記載された従来技術では、切り込みを入れたり小孔をあけたりすることを記載しているが、切り込みは一定方向には大幅な物理強度を低下させ、これを避けようと表層面だけ薄く切り込みを入れようとすると表層スキンの反発により十分な吸水性の効果を得ることができなかった。
特許文献3に記載された従来技術では、小孔を設ける以外に発泡体の表面層をけずることが記載されている。しかしこれは、削り粉が大量に発生したり、強度が大幅に低下するおそれがあった。
特許文献4に記載された従来技術では、前記特許文献2と同様に切り込みをいれる記載があり、好ましい切り込み形状や切り込み深さの記載などがある。しかし切り込みを入れることである一定の方向には極端に曲げ強度の低下を招く欠点があった。
特許文献5には、凹陥部に関して、食品容器の内側に向かって断面積が漸次増大していても、漸次減少していても、あるいは断面積に変化を与えないようにしても良い旨が記載されている。しかし、このような単純形状の穴(凹陥部)では、前記特許文献1と同じく水滴の様に表面張力が強い場合、穴の上部に水滴が乗る様な状態で力が均等になると吸い取らなくなる場合が発生する問題がある。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
【0011】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔下部は有底であることが好ましい。
【0012】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔上部と小孔下部の間に縊れ部を有することが好ましい。
【0013】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記表面に対して前記小孔上部の傾斜面がなす傾斜角度が20°〜70°の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記小孔上部の下端径/小孔上部の傾斜面の距離=0.2〜1の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体の連続気泡率が50〜80%であることが好ましい。
【0016】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体に連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡体が積層されていることが好ましい。
【0017】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体において、前記熱可塑性樹脂発泡体本体がポリスチレン系樹脂発泡体であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0020】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、シート状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを提供する。
【0021】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを成形してなることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート成形体を提供する。
【0022】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように容器形状に成形してなることを特徴とする容器を提供する。
【0023】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が密閉空間に面するように容器蓋形状に成形してなることを特徴とする容器蓋を提供する。
【0024】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートからなる吸水性下敷き製品を提供する。
【0025】
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように所定形状に成形し、さらに箱形に折り曲げ加工して得られた折り箱を提供する。
また本発明は、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、厚板状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡ボードを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体本体の表面に、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有している小孔を多数設けたものなので、小孔上部の開口に水滴が付着すると、水滴は表面張力が作用しても、広がった小孔上部の開口に入り込み、小孔内に吸収される。また、熱可塑性樹脂発泡体本体の表面にこの小孔を多数設けても、熱可塑性樹脂発泡体本体の曲げ強度等の機械強度はそれほど低下しない。従って、本発明によれば、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体を提供することができる。
【0027】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧する簡単な操作によって、前述した本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることができるので、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体を安価にかつ高い生産効率で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体の一実施形態を示し、図1は吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の要部断面の電子顕微鏡観察画像を表す図、図2は吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の概略図であり、図2(a)は要部概略断面図、(b)は要部平面図である。
【0029】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔3を有し、小孔3は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを少なくとも有し、該小孔上部4は表面へ向って拡径された傾斜面6を有している。
【0030】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の材料である熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などが挙げられ、これらの中でも高発泡倍率で断熱性、強度に優れ、成形性も良好な発泡成形体を製造可能なことから、ポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体、または前記スチレン系単量体と他の単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ブタジエン等のビニル単量体との共重合体等を用いることができる。そのうちでは、ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体等を用いることが好ましい。これらは単独であるいは混合して用いることができる。
【0031】
ポリスチレン系樹脂には、改質のためにゴム状物質を少量添加してもよい。ゴム状物質としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、低シスポリブタジエン及びこれらの水素添加された共重合体等を用いることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の製造において用いる発泡剤としては、熱可塑性樹脂発泡体の製造分野で従来公知のものをいずれも使用でき、分解型発泡剤、気体又は揮発性の発泡剤が使用できる。分解型発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド等の無機系分解型発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホニルアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N'−ジニトロソペンタンメチレンテトラミン及びN,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド及びp,p'−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等を用いることができる。これらの発泡剤は、単独でも組み合わせてもよい。更に、分解温度、発生ガス量及び分解速度を調整する為に公知の発泡助剤を添加することもできる。
気体の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、メチルエーテル等が使用できる。なお、ここで気体とは常温(25℃)、常圧(1気圧)で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、水も使用することができる。これらを混合使用することもできる。上記発泡剤の内、ブタンが好ましい。
【0033】
本発明において熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状及び製造方法は限定されない。熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状は、例えば、シート状、厚板(ボード)状などの各種の形状とすることができる。また、シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を成形して容器、トレー、容器蓋などとすることもできるし、シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を適当な形状や大きさに裁断してコースターやトレー用吸水性下敷きなどとすることもできるし、あるいは裁断物を折り曲げて折箱とすることもできる。
【0034】
また、熱可塑性樹脂発泡体本体2の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の形状によって適宜選択できる。シート状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する方法としては、押出機に熱可塑性樹脂と必要に応じて加えられる添加剤を投入し、押出機内で加熱溶融し、前記揮発性の発泡剤を混ぜ、混練して押出機先端に取り付けたサーキュラーダイから押し出して発泡させ、直ちに冷却マンドレルにて冷却し、シート状に切り開き、得られたシートを巻き取ることによって製造することができる。ボード状の熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する方法としては、押出機に熱可塑性樹脂と必要に応じて加えられる添加剤を投入し、押出機内で加熱溶融し、前記揮発性の発泡剤を混ぜ、混練して押出機先端に取り付けたTダイから押出して発泡させ、発泡後、冷却ロールにて冷却し、裁断することによって製造することができる。
また、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層を積層する方法としては、非発泡樹脂フィルムを接着剤又は加熱融着により積層する方法、非発泡樹脂層を一つのダイ内で行う共押出法により積層する方法等が適用できる。熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に非発泡樹脂層を積層することで強度が向上する。
【0035】
また、箱状などの熱可塑性樹脂発泡体本体2を製造する場合には、発泡剤を含浸させた熱可塑性樹脂からなる発泡性熱可塑性樹樹脂粒子(発泡ビーズなどとも称される。)を用い、この粒子を蒸気加熱などによって加熱し発泡させて予備発泡粒子とし、製造する目的の形状に合致したキャビティを有する成形型の該キャビティ内に予備発泡粒子を充填し、その後蒸気加熱などによって成形型内の予備発泡粒子を発泡させると共に、隣接する予備発泡粒子同士の表面を融着させ、その後冷却して発泡成形体を成形型から取り出す、型内発泡成形によって製造することができる。
【0036】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、前述したようにして得られた熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に、図1及び図2に示す形状の小孔3を多数設けて構成されている。本実施形態において、小孔3は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを有し、小孔下部5は有底になっている。小孔上部4は表面へ向って拡径された傾斜面6を有している。
【0037】
熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に対して、小孔上部4の傾斜面がなす傾斜角度θは、20°〜70°の範囲であることが好ましい。この傾斜角度θが20°未満であると傾斜面6の傾斜が緩やか過ぎて、この小孔開口に水滴が付着した場合に水滴が小孔3内部に流れ込み難くなり、吸水性能が悪化する。また、この傾斜角度θが70°を超えると、傾斜面6の傾斜が強すぎて、表面に垂直に開けた針穴と同様に、この小孔開口に水滴が付着した場合に表面張力によって水滴が小孔3内に流れ込み難くなり、吸水性能が悪化する。
【0038】
本実施形態において、小孔3は、小孔上部4と小孔下部5との間に縮径した縊れ部10を有している。縊れ部10より下の小孔下部5は有底の空洞部5aになっている。この空洞部5aは、吸水した水を溜め、熱可塑性樹脂発泡体本体2の連続気泡層8にその水を吸水させるようになっている。
【0039】
図2に示す小孔3において、小孔深さA、傾斜面の距離B、小孔上部の下端径D、小孔上部4の幅E、小孔下部5の上端径Fは、特に限定されるものではなく、適宜設定可能であるが、小孔上部4の下端径Dと傾斜面の距離Bとの比であるD/Bの値が0.2〜1の範囲であることが好ましい。更に好ましくは、0.3〜0.7の範囲である。このD/Bの値が0.2未満であるとDに対してBが大きくなりすぎて強度低下を招くこととなり、D/Bの値が1を超えるとDに対してBが小さすぎて傾斜面を設ける効果が小さくなる。また、小孔深さAは0.5〜5mmの範囲が好ましく、傾斜面の距離Bは0.1〜10mmの範囲が好ましく、小孔上部の下端径Dは0.1〜7mmの範囲が好ましく、小孔上部4の幅Eは0.5〜10mmの範囲が好ましく、小孔下部5の上端径Fは0.5〜10mmの範囲が好ましい。
【0040】
本実施形態において、小孔3は、断面形状が図2(a)に示すように裾が広がった略矢印形状であり、平面形状が図2(b)に示すように長方形状に形成されている。この小孔3の形状は、傾斜角度が異なる小孔上部4と小孔下部5とを少なくとも有し、かつ該小孔上部4が表面へ向って拡径された傾斜面6を有していればよく、本例示に限定されない。
【0041】
図3〜図9は、小孔3の他の形状を例示するものである。
図3に例示した小孔3は、断面形状が図3(a)に示すように図2に示す小孔3と同じく裾が広がった略矢印形状であり、平面形状が図3(b)に示すように同心円状に形成されている。
図4に例示した小孔3は、垂直な角形穴状に形成された小径下部5と、その上部の片側のみに傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図5に例示した小孔3は、垂直な角形穴状に形成された小径下部5と、その上部の両側側に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図6に例示した小孔3は、断面V字状をなしている小径下部5と、その上部に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図7に例示した小孔3は、断面視略四角形の空洞部5aを有する小径下部5と、その上部に傾斜面6を有する小孔上部4と、それらの間に設けられた縊れ部10とからなっている。
図8に例示した小孔3は、熱可塑性樹脂発泡体本体2を貫通して設けられた小径下部5と、一方の面側の小径下部5の上部に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
図9に例示した小孔3は、熱可塑性樹脂発泡体本体2を貫通して設けられた小径下部5と、両方の面側の小径下部5の開口側に傾斜面6を有する小孔上部4とからなっている。
【0042】
本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1において、熱可塑性樹脂発泡体本体2は、連続気泡率が50〜80%であることが好ましい。連続気泡率が50〜80%である発泡体は、水などの液体がその細い気泡通路内を流通可能であり、かつ毛細管現象によって連通した一方にある水滴を他方側に吸水するため、吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の基材として好ましい。この連続気泡率が50%未満であると、小孔3の吸水性能が低下する、一方、連続気泡率が80%を超えると、熱可塑性樹脂発泡体本体2の機械強度が低下して容器等を製造することが難しくなることから好ましくない。
【0043】
この連続気泡率が50〜80%である熱可塑性樹脂発泡体本体2、特にポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、連通気泡型シートと記す。)を製造する1つの方法は、押出機にポリスチレン系樹脂を入れて加熱溶融し、押出機の途中からブタン、ペンタン等の脂肪族又は脂環族炭化水素類からなる発泡剤をポリスチレン系樹脂1kgあたり0.3〜1.0モルの割合で圧入し、連続気泡率が30%以下のポリスチレン系樹脂発泡シートが得られる押出時の樹脂温度より、10℃程度高い樹脂温度に設定して押し出すことにより、連通気泡型シートを得ることができる。発泡剤としては前記の発泡剤に窒素、炭酸ガス、空気、水又はこれらの混合物からなる無機物発泡剤を混合して使用することもできる。
【0044】
この連通気泡型シートは大きな吸水能力を持っており、この吸水能力は大きいことが好ましい。この吸水能力はJIS A 9511に準拠して吸水率として定量的に表すことができる。具体的には、この連通気泡型シートから厚みをそのままにして100×100mmの正方形のサンプルを切り取り、このサンプルを24時間常温の水に浸漬し、取り出し表面の付着水をガーゼ等で拭き取り、このサンプルの重量を測定し、サンプルの元の重量に対する増加割合を計算し、この増加割合を吸水率とする。連通気泡型シートは吸水率が30%以上であることが望ましい。吸水率が30%未満では、小孔3を介して水分を効果的に連通気泡型シート内に取り込むことができなくなるからである。
【0045】
また、連通気泡型シートの吸水能力を高めるには、この連通気泡型シートの中に無機質粉末を1.0〜20.0質量%含ませるのが好ましい。無機質粉末が1.0質量%未満であると吸水能力の向上に効果がなく、20.0質量%を越えると吸水能力は向上するが、シートの外観が著しく低下するからである。これに用いる無機質粉末としては、炭酸カルシウム、タルク等を用いることが好ましい。無機質粉末は、また気泡調整剤としても有効である。また、連通気泡型シートの吸水能力を高めることは、この連通気泡型シートの中に吸水性高分子物を1.0〜20.0質量%含ませることでも達成し得る。
また、この連通気泡型シートの表面又は内部に界面活性剤を添加することでも達成し得る。
【0046】
熱可塑性樹脂発泡体本体2のさらに好ましい実施形態として、前述した連通気泡型シートと、連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡シート(以下、独立気泡型シートと記す。)とが積層された積層シートが挙げられる。連通気泡型シートからなる連続気泡層と独立気泡型シートからなる独立気泡層を有し、シート状をなしている熱可塑性樹脂発泡体本体2(以下、発泡積層シートと記す。)を製造する方法としては、例えば、特許文献1(特開平9−254294号公報)に記載されている方法を用いることができる。すなわち、押出機にポリスチレン系樹脂を投入し、押出機内で溶融したポリスチレン系樹脂に発泡剤を混入し、発泡剤を含んだ樹脂を押出機の先端に取り付けたダイから大気中に押し出し、発泡シートとすることによって作ることができる。但し、連続気泡層を形成する部分には、既に述べたように、連続気泡が生成するような配慮をし、独立気泡層を形成する部分には独立気泡が生成するような配慮をしなければならない。押し出し発泡は、一つの金型内で行う共押し出しによることが好ましい。あるいは連通気泡型シートと独立気泡型シートとを別個に用意し、両者を重ね合わせ、接着剤又は加熱融着により一体化して発泡積層シートにすることもできる。
【0047】
図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、前述した共押し出し法によって製造した発泡積層シートを熱可塑性樹脂発泡体本体2として用い、その表面に前述した小孔3を設けたものである。図1に示す熱可塑性樹脂発泡体本体2において、符号8が連続気泡層、9が独立気泡層である。また、積層された各層の上下両面側には、発泡積層シート製造時に表面が急冷されて形成された表面スキン層7が形成されている。連続気泡層8側の表面に形成された表面スキン層7は、連続気泡層8よりも気泡が細かくなり、かつ連続気泡率が低下している場合がある。小孔3は、連続気泡層8側に設けられ、表面スキン層7と連続気泡層8を貫いた状態で設けられている。
【0048】
図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3が設けられた側の表面が吸水性を有している。この表面に水滴が付着すると、水滴は小孔3の傾斜面6に流れ込む。この傾斜面6が無いと、小孔3の開口に水滴が付着しても、水滴の表面張力によって小孔内に流れ込み難い。一方、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3の開口部分(小孔上部4)に傾斜面6を有していることで、傾斜面6に入った水滴は、傾斜面6により表面張力に抗して小孔3内に浸入し、連続気泡層8に吸収される。この吸水時、小孔上部4と小孔下部5との間に縊れ部10が設けられていることで、傾斜面6に付着した水滴は縊れ部10において生じる毛細管現象によって小孔上部4から小孔下部5への移行が促進される。小孔下部5側に流入した水分は、空洞部5aに溜まるとともに、この空洞部5aに連通した連続気泡層8の細い連続気泡を通して、連続気泡層8に速やかに拡散される。このように、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、小孔3を設けた側の表面において優れた吸水性能を発揮することができる。
【0049】
また、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1は、機械強度に優れている独立気泡層9と吸水性に優れている連続気泡層8とを積層した発泡積層シートを熱可塑性樹脂発泡体本体2として用い、その連続気泡層8側の表面に前述した小孔3を設けたものなので、小孔3と連続気泡層8とにより優れた吸水性能を発揮できると共に、独立気泡層9を積層したことによって、良好な機械強度、断熱性、緩衝性を持たせることができ、ある程度の機械強度が必要となる用途、例えば、種々の容器やトレーなどに適用することが可能となる。
【0050】
次に、図10〜図14を参照して、本実施形態の吸水性熱可塑性樹脂発泡体1の製造方法の一例を説明する。本例では、熱可塑性樹脂発泡体本体2として、前述した発泡積層シートを用い、その連続気泡層8側の表面に小孔3を設け、図1に示す吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を製造する場合を例示する。図10は、発泡積層シートからなる熱可塑性樹脂発泡体本体2の連続気泡層8側の表面に三角形の押圧刃11を押圧した状態を示す断面図である。図11は小孔3を形成する穴あけ加工に用いる穴あけ治具にセットされる歯車を示し、図11(a)は第1例の歯車12aの側面図、(b)は正面図、(c)は第2例の歯車12bの側面図、(d)は正面図である。図12は小孔3を形成する穴あけ加工に用いる穴あけ治具13の外観図である。図13は、発泡積層シート15に小孔3を形成する穴あけ加工を示す斜視図である。図14は、発泡積層シート15に穴をあけた後、小孔3が形成される状態を示す断面図である。
【0051】
本例の製造方法では、熱可塑性樹脂発泡体本体2として発泡積層シート15を用い、この発泡積層シート15を図13に示すように穴あけ治具13とローラ14の間を連続的に通すことによって、発泡積層シート15の連続気泡層8側の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔3を多数設け、吸水性発泡シート16(吸水性熱可塑性樹脂発泡体1)を製造する。穴あけ加工を終えた吸水性発泡シート16はローラに巻き取られる。
【0052】
この穴あけ加工において用いられる穴あけ治具13は、図12に示すように、シャフトに複数枚の歯車12A,12Bを等間隔で又はランダムに固定した構成になっている。歯車12A,12Bは、図11に示すように、外周に多数の押圧刃11が設けられている略円盤状をなしている。押圧刃11は、先端角度θ1、θ2が30°〜150°のV字状又は錐状をなしている。この歯車12A,12Bの各部の寸法は限定されないが、刃先外径G1,G2が100〜300mm、基部外周H1,H2がG1,G2よりも5〜20mm小さい値、厚さI1,I2が0.5〜10mm程度が好ましい。
【0053】
発泡積層シート15(熱可塑性樹脂発泡体本体2)の連続気泡層8側の表面に押圧刃11を押圧すると、図11に示すように、押圧刃11は、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面スキン層7と連続気泡層8を突き破り、先端が独立気泡層9に達する。表面スキン層7と連続気泡層8は押圧刃11に突き破られる際、両層の機械強度の違いから、それらの境界部で切り離される。すなわち、連続気泡層8よりも表面スキン層7の方が緻密であることから機械強度が高く、これらの層が押圧刃11に突き破られる際に、連続気泡層8が容易に突き破られて押圧されるのに対し、表面スキン層7は押圧に抗することで、両層の境界部が剥離する。
【0054】
押圧刃11が離れると、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に形成されたV字状の小孔において、図14に示すように、独立気泡層9の反発によって小孔の底が上がり、さらに表面スキン層7が隆起して縊れ部10が形成され、図1及び図2に示す形状の小孔3が形成される。
【0055】
発泡積層シート15(熱可塑性樹脂発泡体本体2)の表面に設ける小孔3の数と配列状態は、歯車12A,12Bの押圧刃11の形成個数、先端角度、穴あけ治具13への歯車12A、12Bの取り付け間隔などを適宜設定することで容易に変更可能である。例えば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に、多数の小孔3を格子状、千鳥状、あるいはランダムに設けることもできる。また、穴あけ治具13に押圧刃11の形成個数や先端角度が異なる複数種類の歯車12A,12Bを交互に取り付け、発泡積層シート15に大きさや形状の異なる小孔3を設けることもできる。
【0056】
本実施形態の製造方法によれば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃11を押圧する簡単な操作によって、前述した吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を得ることができるので、優れた機械強度を維持したまま、水滴状に付着した水でも容易に吸収可能な吸水性熱可塑性樹脂発泡体1を安価にかつ高い生産効率で提供することができる。
【0057】
本発明は、前述した実施態様に限定されるものではなく、種々の修正や変更が可能である。
例えば、熱可塑性樹脂発泡体本体2の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられた構成とすることもできる。
【0058】
本発明の吸水性熱可塑性樹脂発泡体は、吸水性熱可塑性樹脂発泡シート、該吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを用いた吸水性成形容器、吸水性容器蓋、吸水性下敷き材、吸水性折り箱、結露吸水テープ、吸水性熱可塑性樹脂発泡ボード、吸水性断熱材、吸水性コンクリート養生被覆材、吸水性発泡成形体容器などに利用可能である。
【実施例】
【0059】
[発泡シートの製造]
押出機として内径90mm押出機(一段目押出機)と150mm押出機(二段目押出機)が連結されたタンデム型押出機を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名HRM−26)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学社製)を1.5質量部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を4.2質量部添加した。その後連続気泡を有する発泡に適した樹脂温度165℃付近まで冷却した。
【0060】
さらに先端部に取り付けた口径105mm、スリットクリアランス0.5mmに設定されたサーキュラーダイより樹脂を押し出して発泡させ、この発泡シートを外径414mm、長さ500mmの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に冷却温度30℃の空気を吹き付けて外周も冷却し、その後2枚に切り開いてロール状に巻き取った。得られた発泡シートは厚み2.5mm、密度0.09g/m2であった。
【0061】
得られた発泡シートの連続気泡率を測定した結果、連続気泡率は70.1%であった。
なお、連続気泡率についてはASTM D2856−87記載の測定方法に準じて測定した。すなわち25mm以上になるように切片で構成された試験体(25mmの立方体)を試料より5個切出し、ノギスを用いて見掛け体積を測定し、次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス社製)を用いて1−1/2−1気圧法により体積を測定し、以下の式にて連続気泡率を算出した。
連続気泡率(%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100
【0062】
[実施例1]
前述した通り製造した発泡シートを図12に示す穴あけ治具に通し、発泡シートの表面に小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。この穴あけ治具は、図11に示す歯車の先端角を30°にした歯車を通紙ロールに取り付けて構成し、図13に示すように穴あけ治具とローラとの間に発泡シートを通して小孔をあけた。形成された小孔の表面の電子顕微鏡写真にて屈曲している長さと小孔の開いている長さを測定した。更に内部セルの突き破られている傾斜角測定の為に傾斜角度の明確にわかる方向で断面をカットして小孔の断面を電子顕微鏡写真で撮り、シート表面との傾斜角を測定した。その際に小孔形状も観察した。なお、電子顕微鏡写真撮影については走査型電子顕微鏡S−3000N(日立製作所製)にて適切な倍率で測定した。図15に小孔の表面形状を示す。得られた小孔の形状は傾斜面の距離Bが0.55mm、小孔上部の下端径Dが0.30mm、傾斜角度θは50°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.55であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
【0063】
(吸水性の評価)
得られた発泡シートに孔をあけ、水滴にみたてて、駒込ピペット5mL用にて小孔1つに1滴水滴を垂らして吸水するかを目視で確認した。小孔各10箇所に水滴を垂らし10秒以内に5箇所以上で吸水した場合に吸水性があると判断した。
実施例1の吸水性発泡シートは、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
【0064】
(成形性の確認)
得られた吸水性発泡シートについて成形機FM60WNCF205(東成産業社製)を用い、成形温度150℃、成形秒数6.1秒で成形を行い、成形形状は外周200mmφ、深さ30mmの容器形状で確認した。成形は特に問題なく可能であり、小孔形状は図3に示す形状となった。
【0065】
[実施例2]
穴あけ治具に取り付ける歯車の先端角度を60°とした以外は、実施例1と同様にして発泡シートに小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。
得られた小孔の形状は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.35mm、傾斜角度θが45°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.52であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0066】
[実施例3]
穴あけ治具に取り付ける歯車の先端角度を90°とした以外は、実施例1と同様にして発泡シートに小孔を設け、吸水性発泡シートを作製した。
得られた小孔の形状は、傾斜面の距離Bが0.90mm、小孔上部の下端径Dが0.45mm、傾斜角度θは40°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.50であった。小孔表面の形状を図16に示す。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0067】
[実施例4]
前述した通り作製したポリスチレン発泡シートに厚さ25μmのポリスチレンフィルム(大石産業社製)を重ね合わせ、加熱温度170℃、直径300mmの誘電加熱ロールに通して積層したのち、押圧刃の先端角度60°の歯車を取り付けた穴あけ治具を用いて穴あけ加工を施し、多数の小孔を設けて吸水性発泡シートを作製した。得られた小孔は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.38mm、傾斜角度θが55°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.57であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0068】
[実施例5]
押出機として内径90mm押出機(一段目押出機)と150mm押出機(二段目押出機)が連結されたタンデム型押出機を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名HRM−26)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学社製)を1.5質量部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を4.2質量部添加した。その後連続気泡を有する発泡に適した樹脂温度165℃付近まで冷却した。
一方、内径120mm押出機(B)を用い、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名G−13−50B)100質量部に対してタルクMBであるタルペット40GS(宗和化学株式会社)を1.5部添加した配合原料を押出機に投入し、最高温度230℃で溶融、混練した後、発泡ガスとしてブタン(イソ/ノルマル=50/50)を3.7質量部添加した。その後独立気泡を有する発泡に適した樹脂温度155℃付近まで冷却した。
押出機(A)と押出機(B)を合流ダイで合流させて積層し、さらに先端部に取り付けた口径105mm、スリットクリアランス0.5mmに設定されたサーキュラーダイより樹脂を押し出して発泡させ、この発泡シートを外径440mm、長さ500mmの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に冷却温度30℃の空気を吹き付けて外周も冷却し、その後2枚に切り開いてロール状に巻き取った。得られた発泡積層シートは厚み2.8mm、密度0.075g/m2であった。
押出機(A)側の発泡層は、連続気泡率が68.5%の連続気泡層であった。
押出機(B)側の発泡層は、連続気泡率が10.5%の独立気泡層であった。
【0069】
得られた発泡積層シートに、押圧刃の先端角度60°の歯車を取り付けた穴あけ治具を用いて穴あけ加工を施し、多数の小孔を設けて吸水性発泡シートを作製した。得られた小孔は、傾斜面の距離Bが0.67mm、小孔上部の下端径Dが0.35mm、傾斜角度θが45°であった。小孔上部幅Eは0.75mmであった。小孔の深さAは1.8mmであった。小孔上部の下端径D/傾斜面の距離B=0.52であった。小孔の断面形状は図2に示す形状であった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。図1に実際に得られた小孔の断面形状を示す。
得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち10個が吸水し、吸水性は○と判定した。
また、得られた吸水性発泡シートについて、実施例1と同様に成形性を調べた。その結果、成形は特に問題なく可能であった。成形後の容器に設けられた小孔の形状は図3に示す形状となった。
【0070】
[比較例]
実施例5で作製した発泡シートに直径1mmの針を押し付けて小孔を設けた。得られた小孔は、開口部分に傾斜面がなく(B=0mm)、穴の開いている部分が直径0.65mmの円形で傾斜角度θは90°であった。小孔の深さAは1.5mmであった。小孔は発泡積層シート100cm2当たり169個設けた。この小孔の断面形状を図17に示す。
得られた針穴付き発泡シートについて、実施例1と同様に吸水性を調べた。その結果、小孔10個のうち3個しか吸水せず、吸水性は×と判定した。
また成形は特に問題なく可能であった。
【0071】
これらの結果より、小孔の開口に表面張力のある水滴が付着した場合でも吸水特性を向上させる小孔形状を見出し、その小径を設けた吸水特性に優れた吸水性発泡シートを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る実施例5で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の断面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図2】本発明に係る吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔を概略的に表し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】小孔の形状の第2の例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図4】小孔の形状の第3の例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図5】小孔の形状の第4の例を示す断面図である。
【図6】小孔の形状の第5の例を示す断面図である。
【図7】小孔の形状の第6の例を示す断面図である。
【図8】小孔の形状の第7の例を示す断面図である。
【図9】小孔の形状の第8の例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る製造方法を説明する図であり、熱可塑性樹脂発泡体本体に押圧刃を押圧した状態を示す断面図である。
【図11】穴あけ加工に用いる歯車を示す図であり、(a)は歯車の第1例の側面図、(b)は正面図、(c)は歯車の第2例の側面図、(d)は正面図である。
【図12】穴あけ治具を例示する外観図である。
【図13】本発明に係る製造方法を説明する斜視図である。
【図14】押圧刃の押圧後に図1の形状の小孔が形成されるプロセスを説明する断面図である。
【図15】本発明に係る実施例1で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の表面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図16】本発明に係る実施例3で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の表面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【図17】比較例1で作製した吸水性熱可塑性樹脂発泡体の小孔部分の断面の顕微鏡観察画像を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1…吸水性熱可塑性樹脂発泡体、2…熱可塑性樹脂発泡体本体、3…小孔、4…小孔上部、5…小孔下部、5a…空洞部、6…傾斜面、7…表面スキン層、8…連続気泡層、9…独立気泡層、10…縊れ部、11…押圧刃、12A,12B…歯車、13…穴あけ治具、14…ローラ、15…発泡積層シート、16…吸水性発泡シート(吸水性熱可塑性樹脂発泡体)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項2】
前記小孔下部は有底であることを特徴とする請求項1に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
前記小孔上部と小孔下部の間に縊れ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項4】
前記表面に対して前記小孔上部の傾斜面がなす傾斜角度が20°〜70°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項5】
前記小孔上部の下端径/小孔上部の傾斜面の距離=0.2〜1の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体の連続気泡率が50〜80%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体に連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡体が積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体がポリスチレン系樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、シート状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項12】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを成形してなることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項13】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように容器形状に成形してなることを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が密閉空間に面するように容器蓋形状に成形してなることを特徴とする容器蓋。
【請求項15】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートからなる吸水性下敷き製品。
【請求項16】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように所定形状に成形し、さらに箱形に折り曲げ加工して得られた折り箱。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、厚板状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡ボード。
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面から内部に通じる多数の小孔を有する吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、前記小孔は、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有していることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項2】
前記小孔下部は有底であることを特徴とする請求項1に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
前記小孔上部と小孔下部の間に縊れ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項4】
前記表面に対して前記小孔上部の傾斜面がなす傾斜角度が20°〜70°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項5】
前記小孔上部の下端径/小孔上部の傾斜面の距離=0.2〜1の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体の連続気泡率が50〜80%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体に連続気泡率が30%以下の熱可塑性樹脂発泡体が積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に非発泡樹脂層が積層され、それに前記小孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂発泡体本体がポリスチレン系樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂発泡体本体の少なくとも一部の表面に、先端角度30°〜150°のV字状又は錐状の押圧刃を押圧し、傾斜角度が異なる小孔上部と小孔下部とを少なくとも有し、該小孔上部は表面へ向って拡径された傾斜形状を有する小孔を多数設け、請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体を得ることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、シート状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項12】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを成形してなることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項13】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように容器形状に成形してなることを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が密閉空間に面するように容器蓋形状に成形してなることを特徴とする容器蓋。
【請求項15】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートからなる吸水性下敷き製品。
【請求項16】
請求項11に記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡シートを、小孔を設けた表面が内側になるように所定形状に成形し、さらに箱形に折り曲げ加工して得られた折り箱。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性熱可塑性樹脂発泡体であって、厚板状をなしていることを特徴とする吸水性熱可塑性樹脂発泡ボード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−265295(P2006−265295A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81786(P2005−81786)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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