説明

吸汗シート

【課題】吸水性が良好で前腕の汗を良く吸収し、柔軟性に富み、肌触りが良く、机上で邪魔にならないほど薄く、折り畳めて持ち運びが容易で、吸汗面の反対面は滑り難い、安価で、ヒートシール可能な吸汗シートを提供することを課題とする。
【解決手段】一方の表面に吸水性繊維からなる不織布が露出した積層フィルムであり、かつ、他方の表面が無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面である積層フィルムからなる吸汗シート。机やテーブルの天面に敷いた際に人の前腕の汗を良く吸収して良好な肌触りが得られると共にずれ難く、良好な使用感を得ることができる。また、厚みも非常に薄く、柔軟性に優れるため机やテーブルに部分的に敷いても邪魔にならないし、物品が端に載っても斜めになることが無く、安心して使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性繊維からなる不織布に難滑性を付与した積層フィルムからなる吸汗シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、節電意識が高揚し、オフィスビルにおいて夏場の空調温度を高めに設定する事業所が大部分を占めている。更に近年はこれに電力不足が加わり、大規模停電防止のため、半ば強制的に、更に高めの空調温度設定がなされつつある。
このような状況下、クールビズと称して上着やネクタイを着用せずに就業することが奨励されていて、半袖のワイシャツで執務する男性が増加している。また、女性の大部分は元々暑い季節には半袖ブラウスで執務している人が多い。
しかしながら、机上での仕事の大部分はパソコンの入力や、文字書きなど、前腕部が机の天面に接した状態で行うのが普通だが、空調の温度設定が高いと必然的に汗を掻き、特に前腕部は発汗量も多く、机と前腕部とがべとついて非常に不快であったり、机面に置いた前腕部の汗で細菌が繁殖して天面や腕が汗臭くなったり、汗で前腕部に書類がへばりついてふやけてしまう等の問題が生じ、特に女性にとって大きな悩みの種となっている。
【0003】
このような状況を打開するため、机上の前腕部を置く位置にタオルを敷いたり、紙を敷いたりして対処している人が多い。しかし、タオルは机上で滑って動いてしまうため始終位置合わせが必要で面倒であり、また、机上でパソコンのマウスを操作する位置と、キーボードを打つ際に上腕を置く位置は非常に接近しているが、タオルの上ではパソコンのマウスの操作ができないのでどうしてもタオルを机の端に敷く必要があって、いつの間にか床に落として汚してしまうことが間々あり、更に、タオルがキーボードやマウスパッドの上に被さって邪魔になることも頻繁に生じている。また、紙を敷いた場合は汗で前腕にくっついて不快感を覚え、また、人によっては汗によって溶出する紙に含まれている蛍光染料、漂白剤、接着剤等が、アレルギー症状を引き起こす場合がある等の問題がある。
【0004】
また、上着を着用せず持ち運びして、ワイシャツ姿で移動し、客先等で上着を着用して商談や会議に臨む場合、前腕に上着を掛けて運ぶ時に、長袖ワイシャツを着用していると上着を掛けた前腕部が大量の汗を掻き、特に一般的なウールの上着の場合上着が汗で濡れてシミになったり、前腕部が非常に暑く不快な思いをしたりする。更に、半袖ワイシャツを着用したり、長袖ワイシャツの袖をまくったりして前腕に直接上着を掛けた時は、更に上着が汗で汚れ、また、前腕部が暑く不快な思いをするため、いくら暑くても半袖のワイシャツを着用しなかったり、長袖ワイシャツの袖まくりをしない人も多く、猛暑時の外出を甚だ不快に感じる理由の一つになっている。尚、上着を前腕に掛けずかばんの上に載せて運ぶと、気付かぬうちに上着が動き、上着の袖を地面に擦ってしまい汚してしまうことが間々あるが、かばんの中に上着を入れると大量のシワが付いてしまい、人前で着用できなくなってしまう。また、新幹線等、電車内で上着を網棚の上に載せると、落ちてくる心配や、シワになる心配があるが、窓際のフックに掛けるとスリの被害に会う恐れがある。スリはフックに掛けた上着の上に、ポケットの内側に孔を開けた上着を掛け、自分の上着のポケットを探るフリをしてポケットの孔から内側の上着のポケットに手を入れ、貴重品を盗む。
【0005】
また、従来、滑り止め面としてポリオレフィンエラストマーフィルムを支持体シートに積層した滑り止めシートが考案されているが、当該発明は電器製品の下に敷く滑り止めシートに関するものであって、支持体シートの吸水性に関する記述はなく、支持体シートとして選定されているものは吸水性が無いか、あってもほんの 僅かのため、吸汗性を期待することはできず、汗を掻いた皮膚に接触した感触はウールの上着より劣悪である。
更に、材質的にはヒートシール可能な樹脂であるにも係らず、難滑面同士を対向させてヒートシールを施し、新たな形態を創造することには一切言及していない。(特許文献1参照)
【0006】
また、織布、編布又は不織布、フェルト等からなる基材の少なくとも片面に、加熱で膨張する発泡体を添加した熱硬化性樹脂組成物からなる含泡弾性被覆層を積層した滑り止め基材シ−トも考案されているが、弾力性を重視した滑り止めシートであるため厚みが厚く、折り曲げて持ち運ぶにはかさばって不便であり、机上に置いた際も段差が生じ邪魔である。また、発泡樹脂面同士を対向させてヒートシールを施すことは一切言及しておらず、実際、発泡樹脂であることと樹脂組成からしてヒートシールを施すことは困難である。更に、発泡樹脂を用いているため洗濯できず、かといって高価な材料を用いているため使い捨てにすることができず、皮膚に接触する用途に適用するのは困難である。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−46219号公報
【特許文献2】特開平08−290512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、吸水性が良好で前腕の汗を良く吸収し、柔軟性に富み、肌触りが良く、机上で邪魔にならないほど薄く、折り畳めて持ち運びが容易で、吸汗面の反対面は滑り難い、安価で、ヒートシール可能な吸汗シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような問題点を解決すべく種々研究を重ねた結果、本発明は、一方の表面に吸水性繊維からなる不織布が露出した積層フィルムであり、かつ、他方の表面が無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面である積層フィルムからなる吸汗シートである。
【0010】
また、請求項2は、吸水性繊維からなる不織布が、ナイロン長繊維不織布、または、綿不織布であることを特徴とする前記吸汗シートである。
【0011】
また、請求項3は、前記積層フィルムの厚さが0.2mm〜0.7mmであることを特徴とした吸汗シートである。
【0012】
また、請求項4は、前記吸汗シートの無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面同士を対向させて側端部にヒートシールを施し、上下に開口部を設けて形成した吸汗シート筒状体である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る吸汗シートは、一方の表面に吸水性繊維からなる不織布が露出した積層フィルムであり、かつ、他方の表面が滑り性の悪い無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面からなる積層フィルムである。薄く嵩張らない吸水性の不織布と水分を通さず滑り性の悪い無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂を積層している。従って、水分の吸収、拡散に優れた面と、滑り止めとしての優れた機能を有する面をそれぞれの面に持つ積層フィルムからなる吸汗シートをきわめて薄い膜厚で廉価に製造することができる。
本発明に係る吸汗シートは、積層フィルムの表面を吸水性繊維からなる不織布面とし、裏面を滑り性の悪い無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面として、机やテーブルの天面に敷いた際に、人の前腕の汗を良く吸収して良好な肌触りが得られると共にずれ難く、良好な使用感を得ることができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、吸水性繊維からなる不織布としてナイロン長繊維不織布、または、綿不織布を用いることでより良い吸汗効果と肌触りが得られ、綿不織布の場合更にアレルギーを引き起こし難いという効果も有する。
【0015】
請求項3に係る発明は、厚みも非常に薄く、柔軟性に優れるため机やテーブルに部分的に敷いても邪魔にならないし、物品が端に載っても斜めになることが無く、安心して使用できる。また、折りたたんでもかさばらず、かつ、使用に十分耐えうる強度を兼ね備えるものである。
【0016】
このような効果が求められる使用方法として、テーブルクロスや事務机の天面のカバーシートがある。
【0017】
テーブルクロスとして使用した場合は布製テーブルクロスのようにゴワゴワせず柔らかな感触があり、かつ、無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面を設けているため表面にこぼしたスープや醤油等の液体でテーブル表面を汚すことが無い。また、シンプルな構造で材料も汎用品のため安価に製造できることから使い捨てにでき、衛生的である。
【0018】
また、事務机の天面カバーシートとして、机の天面の着座側に敷くことにより、着座者の前腕が吸水繊維からなる不織布面に当たって汗を吸収するので腕がべとつくことがなく、快適な触感が得られると共に、腕が汗臭くなったりせず快適にデスクワークを行える。また、安価なため汚れたら廃棄すれば良く、継続的に衛生的に使用できる。更に、当該カバーシートの端にパソコンのキーボードやノート型パソコンを置いても、厚みが薄いのでガタついたりすることが無いのみならず、当該シート表面をマウスパッドとして用いることができ、かつ、マウス下面の汚れも不織布によって除去できるという副次的効果も得ることができる。
【0019】
また、請求項4に係る発明のように、筒状体を形成して上着を筒状体に通し、筒状体の部分を前腕部に掛けて上着を持ち運ぶことにより、前腕の汗を吸水性繊維からなる不織布が吸収するため快適に、シワを付けることなく上着を持ち運ぶことができる。その際、通水性の無い積層フィルムを上腕に掛けることによる蒸れ等の不快感は殆どなく、むしろ通水性が無いことから上腕の汗が上着に付着することがなく、上着が汚れ難くなるメリットが大きい。また、筒状体の内面は滑りの悪い無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面であるため上着がずれ難く、腕に掛けているうちにいつの間にか片袖を引きずってしまうようなことがなく、安心して歩行できる。また、薄く、軽く、柔軟性があるので、不使用時は折り畳んで容易にポケットやかばんに収納でき、持ち運びに便利である。更に、上着のポケットが表面に出ないように筒状体に通した状態で、そのまま新幹線等の電車の窓際のフックに掛ければ、外側からポケットをまさぐることが困難になってスリの被害にも会い難くなるという副次的効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る吸汗シートの概略断面図である。
【図2】本発明に係る吸汗シートの押し出しラミネート工程の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る吸汗シートで製造した天面カバーシートの上面視における概略外観図(a)及びA、A’断面における矢印方向にみた断面図(b)である。
【図4】本発明に係る吸汗シートで製造した筒状体の正面視における概略外観図(a)及びB、B’断面における矢印方向にみた断面図(b)である。
【図5】本発明に係る筒状体に上着を通した状態を示す正面視における概略外観図(a)及びC、C’断面における矢印方向にみた断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明に係る吸汗シートの概略断面図であり、図2は本発明に係る吸汗シートの製造工程の一例を示す概略図であり、図3は本発明に係る吸汗シートで製造した天面カバーの外観概略図であり、図4は本発明に係る吸汗シートで製造した筒状体の概略外観図であり、図5は本発明に係る筒状体に上着を通した状態を示す概略外観図である。
【0022】
本発明に係る吸汗シート1は、図1に示すように、吸水性繊維からなる不織布2の片面に、無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3を設けた構造を有する。
【0023】
ナイロン長繊維不織布は、スパンボンド方式でウェブが製造された後、サーマルボンド方式によって繊維同士を接合して製造される。ナイロン自体が吸水性を有し、接着剤を使用せずに接合するため吸水性を維持したまま肌触りの良い不織布を製造できる。また、サーマルボンド加工時に施すドット状加熱痕が不織布に適度の凹凸を付与し、汗で濡れた上腕に纏わり付くことが無く、好適な使用感を得ることができると共に、アレルギー反応を引き起こし難い不織布である。
本発明に係る吸汗シートに用いるナイロン長繊維不織布の坪量は、要求される吸汗量や、肌触り、クッション性等を基準にして選定するが、20g/m2〜100g/m2(厚さ0.2mm〜0.6mm)のものが特に好適に用いられる。
【0024】
綿不織布は綿繊維をほぐしてシート化した後、水を噴射して繊維同士を絡ませるウォーターパンチ方式で製造される。綿繊維が吸水性を有し、接着剤を使用せずに不織布化されるため吸水性を維持したまま非常に肌触りが良く、アレルギー反応を引き起こさない不織布である。
本発明に係る吸汗シートに用いる綿不織布の坪量は、要求される吸汗量や、肌触り、クッション性等を基準にして選定するが、30g/m2〜100g/m2(厚さ0.3mm〜0.6mm)のものが特に好適に用いられる。
なお、本出願において膜厚は、JIS P 8118の紙及び板紙の厚さの試験方法に則り測定した値である。
【0025】
無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3を形成する材料としては、無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂を用いれば、本発明に係る吸汗シートの無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3同士を向かい合わせて折り畳んで流通させてもブロッキングを起こし難いので好都合である。
ポリエチレンに対するエラストマーのブレンド比率は、0%〜60%の範囲で滑り性やブロッキングのし難さ等を基準に選定すれば良い。
【0026】
無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面を形成する層の形成3の形成は、無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂を単層押し出しで形成しても良いが、厚みを増やしたい場合や、廉価な汎用ポリエチレン樹脂を不織布面に押し出しラミした上に前記無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂を薄く押し出してコストダウンしたい場合、前記無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂単独で押し出しラミネートすると貼り合わせ強度が低い場合等において、押し出し機を2基有するタンデム押し出しラミネーターを用いる等して複層化することもできる。また、フィルム化した前記無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂を、溶融ポリエチレン樹脂を介して積層し、複層化することもできる。更には、共押し出しダイを使用して、前記無添加ポリエチレン樹脂、または、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂層が裏面になるように共押し出し樹脂層を押し出しラミネートしても良い。
【0027】
前記無添加ポリエチレン樹脂層、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂層の厚みを特に限定する必要はないが、薄すぎると物理的強度が不足し、厚すぎると柔軟性が損なわれ、折り畳んでポケットに入れ難くなる等の弊害が生じるので、通常は8μm〜60μmの範囲で、好適には15μm〜50μmで設定すると良い。
不織布に溶融樹脂を押し出しラミネートした場合、溶融樹脂が不織布に食い込むため、吸汗シートの厚さは不織布の厚さと溶融押し出し樹脂の厚さを足した厚さより薄くなる。また、不織布の厚さはばらつきが大きく、溶融樹脂の押し出し厚さは一定でも不織布に食い込んで厚さはランダムになり、かつ、押し出しラミネーターの押し付け圧が異なれば食い込み方も異なる。本発明に係る吸汗シートの厚さを一概に規定することはできないが、不織布の厚さが押し出し樹脂の厚さより充分大きいので、本発明に係る吸汗シートの厚さは不織布の厚さでほぼ決まり、その範囲は0.2〜0.7mmなので、机上に敷いても邪魔にならない厚さである。厚さが0.2mm未満の場合、不織布の繊維がまばらになって吸汗性が劣ると共に肌触りも悪くなり、厚さが0.8mm以上になると机上に敷いた場合に厚みによる段差を感じるようになり、切断面に物がぶつかってめくれやすくなったり、キーボードの端を載せるとガタついたりするようになる。更には、折り畳むとかさばってしまい、携行すると邪魔に感じてしまうようになる。
【0028】
次に、本発明に係る吸汗シートの製造方法について説明する。
図2は、本発明に係る吸汗シート1の押し出しラミネート工程の一例を示す概略図である。
不織布2を繰り出してニップロール13に当接し、冷却ロール12上方に設置された押出機として、巻取りの供給方向と交差する方向にTダイ11先端からエラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂14を溶融押し出ししつつ、冷却ロール12に押し付けたニップロール13の間に、不織布2、および、エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂を挟み込んでラミネートした吸汗シート1は、巻取機によって巻き取られる。巻き取った吸汗シート1は、図3に示すように矩形に断裁して天面カバーシート等のカバー類に用いられる。
【0029】
次に、本発明に係る筒状体について説明する。
前記吸汗シート1を製袋機にセットし、無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3を製袋機でヒートシール8を施して断裁することにより筒状体7が形成される。筒状体7はピロー袋製袋機を用いて製造した場合には図4に示したようにヒートシール部8が1箇所となり、三方シール袋の製袋機を用いて製造した場合には特に図示しないがヒートシール部は両側端の2箇所となるが、どちらの筒状体7も好適に使用できる。筒状体7は図5に示すように上着9を通して使用する。このように使用することによって、滑りの悪い無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3は上着9をずれることなく保持し、筒状体外面の吸水性を有する吸水性繊維からなる不織布2の面を前腕に掛けることによって、前腕の汗が吸水性繊維からなる不織布2に吸収されて心地よい使用感が得られると共に、汗は無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面3を透過しないため、前腕の汗による上着9の汚れも防止できる。また、本発明に係る筒状体7に上着9を通した状態で襟の部分を電車内のフックに掛けることができるので、上着9のシワを防止できると共に、外から容易にポケットに手を入れられなくなるので、スリによる被害の防止効果も期待できる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>
幅1300mm、坪量40g/m2の綿不織布(製品名「コットエースC040S/A01」、ユニチカ株式会社製)に、タンデム押し出しラミネーターを用いてポリエチレン樹脂20μmと、エラストマーを60%ブレンドしたポリエチレン樹脂15μmを続けて押し出しラミネートし、630mm幅にスリットして巻き取って、本発明に係る厚さ0.3mmの吸汗シートを得た。
前記吸汗シートを長さ300mmに裁断し、マウスパッド兼用机の天板カバーシートを得た。
当該机の天板カバーシートの右端に着座者の右前腕が載るように事務机の天面の着座側端部に不織布面を上にして敷き、外気温31℃、空調設定温度28℃の室内で、デスクトップパソコンを用いて執務した。
その結果、両前腕ともに汗をかいても吸汗シートはさらさらした感触で肌触りが良好で、また、当該シート上でマウスの操作は全く問題なく行えると共に、副次的効果として、机上で直に使用していた際に付着したマウス下面の汚れが当該シート面に転移してマウスが綺麗になり、また、キーボードの前端のみを当該シート上に置いたにも拘わらずキーボードがガタつくことは無く、更に、副次的効果として、数日間使用してもマウス表面が汚れてベタつくことがなかった。
【0031】
<比較例1>
幅1300mm、坪量40g/m2のポリエステル長繊維不織布(製品名「マリックス90403WSO」、ユニチカ株式会社製)に、タンデム押し出しラミネーターを用いてポリエチレン樹脂20μmと、エラストマーを60%ブレンドしたポリエチレン樹脂15μmを続けて押し出しラミネートし、630mm幅にスリットして巻き取って、比較例の厚さ0.3mmのシートを得た。
当該シートを用いて実施例1と同じ使用方法で執務した。
その結果、ポリエステル長繊維不織布は吸水性がない不織布であるため、ポリエステル長繊維不織布の中では比較的ソフトな不織布でありながら、上腕の感触はザラザラして不快であった。また、汗を吸収しないのでベタついてしまい、最終的には前腕に絡みついて動いてシワが生じてしまい、使用を中断した。
【0032】
<実施例2>
実施例1で製造した吸汗シートを幅360mm、長さ400mmに断裁し、椅子の背もたれカバーを得た。
当該背もたれカバーをソファーの背もたれの背面から前面にかけて載せ、背もたれカバーに頭部をもたれかけるようにしてテレビを見たり、居眠りをしたりしたところ、背もたれカバーがずれることなく、肌触りが良く、快適に過ごせた。
【0033】
<実施例3>
幅1300mm、坪量100g/m2のナイロン長繊維不織布(製品名「ナイエースP1003WTO」、ユニチカ株式会社製)に、押し出しラミネーターを用いてエラストマーを40%ブレンドしたポリエチレン樹脂25μmを押し出しラミネートし、スリットして両側を切り揃えて1250mm幅とした後、長さ1000mmに切り取って、本発明に係る厚さ0.5mmのテーブルクロスを得た。
当該テーブルクロスを食卓に被せて食事をしたところ、清潔で滑らず、肌触りが良く、快適に食事ができた。
【0034】
<実施例4>
実施例3で製造した吸汗シートを幅420mm、長さ300mmに断裁し、ランチョンマットを得た。
当該ランチョンマットを食卓に敷いて食事をしたところ、清潔で滑らず、快適に食事ができた。
【0035】
<実施例5>
幅700mm、坪量30g/m2のナイロン長繊維不織布(製品名「ナイエースP0303WTO」、ユニチカ株式会社製)に、押し出しラミネーターを用いて無添加ポリエチレン樹脂30μmを押し出しラミネートして巻き取った厚さ0.2mmの吸汗シートを三方シール袋製袋機にセットし、縦300mm、横330mm、両サイドの縦シール幅5mmの本発明に係る筒状体を得た。
半袖ワイシャツを着用し、当該筒状体に上着を通して前腕に掛け、気温32℃の街中を30分間散策した。その結果、多少暑さは感じたものの、時折筒状体の前腕に接する面を変えたり、上着を掛ける腕を変えたりすることにより、蒸れて不快になることはなく、筒状体の中で上着がずれることもなく、上着に汗が付着することもなかった。また、散策後に筒状体を外して折り畳み、上着のポケットに入れたが嵩張ったりせず、容易に収容できた。
【0036】
<比較例2>
坪量40g/m2の、芯部がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる、芯鞘構造のポリエチレン長繊維不織布(製品名「エルベスS0403WDO」、ユニチカ株式会社製)を幅300mm、長さ650mmに切り取り、長辺の中心で折り曲げて略V字状とし、折り曲げ先端を揃えて重ね合わせ、インパルスシーラーを用いて幅5mmのヒートシールを施すことにより、吸水性の無い、不織布単独のため通気性、および、通水性を有する比較例の筒状体を得た。
半袖ワイシャツを着用し、当該筒状体に上着を通して前腕に掛けた人間が、実施例5の被験者と一緒に気温32℃の街中を30分間散策した。その結果、上着を掛けた前腕部は筒状体の感触がザラザラして汗だくになり不快であるのみならず、顕著な蒸れを覚え、かつ、散策後筒状体を外して観察した結果、上着が汗で濡れてしまっていた。
【0037】
<実施例6>
幅1300mm、坪量100g/m2の綿不織布(製品名「コットエースC100S/A01」、ユニチカ株式会社製)に、押し出しラミネーターを用いて厚さ20μmの溶融押し出しポリエチレン樹脂を介して厚さ40μmの無添加ポリエチレンフィルム(製品名「L185」、アイセロ化学株式会社製)を押し出しラミネートし、本発明に係る厚さ0.7mmの吸汗シートを作成した。前記吸汗シートを幅360mm、長さ400mmに断裁し、椅子の背もたれカバーを作製し実施例2と同様に使用した。
当該背もたれカバーをソファーの背もたれの背面から前面にかけて載せ、背もたれカバーに頭部をもたれかけるようにしてテレビを見たり、居眠りをしたりしたところ、背もたれカバーがずれることなく、肌触りが良く、快適に過ごせた。
【0038】
<実施例7>
また、実施例6にて作成した吸汗シートのサンプルを幅650mm、長さ300mmに切り取りマウスパッド兼用机の天板カバーシートを得た。
当該机の天板カバーシートの右端に着座者の右前腕が載るように事務机の天面の着座側端部に敷き、外気温31℃、空調設定温度28℃の室内で、デスクトップパソコンを用いて執務した。
その結果、両前腕ともに汗をかいても吸汗シートはさらさらした感触で肌触りが良好で、また、当該シート上でマウスの操作は全く問題なく行えると共に、副次的効果として、机上で直に使用していた際に付着したマウス下面の汚れが当該シート面に転移してマウスが綺麗になり、また、キーボードの前端のみを当該シート上に置いたにも拘わらずキーボードがガタつくことは無く、更に、副次的効果として、数日間使用してもマウス表面が汚れてベタつくことがなかった。
【0039】
<比較例4>
幅1300mm、坪量150g/m2の綿不織布(製品名「コットエースC150S/A07」、ユニチカ株式会社製)に、タンデム押し出しラミネーターを用いてポリエチレン樹脂30μmと、無添加ポリエチレン樹脂30μmを続けて押し出しラミネートし、比較例の厚さ1.2mmの吸汗シートを作成した。
前記吸汗シートを幅630mm、長さ300mmに裁断し、マウスパッド兼用机の天板カバーシートを得た。
当該机の天板カバーシートの右端に着座者の右前腕が載るように事務机の天面の着座側端部に敷き、外気温31℃、空調設定温度28℃の室内で、デスクトップパソコンを用いて執務した。
その結果、両前腕ともに汗をかいても吸汗シートはさらさらした感触で肌触りが良好であったが、前腕部がシートの端に当たると厚みのせいで違和感を感じ、また、キーボードの前端のみを当該シート上に置くと、僅かだがキーボードがガタついてしまい、操作し難かった。
【符号の説明】
【0040】
1 吸汗シート
2 吸水性繊維からなる不織布
3 無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面
4 天面カバーシート
5 事務机の天面
6 事務机の天面の座席側端部
7 筒状体
8 ヒートシール部
9 上着
11 Tダイ
12 冷却ロール
13 ニップロール
14 エラストマーをブレンドしたポリエチレン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に吸水性繊維からなる不織布が露出した積層フィルムであり、かつ、他方の表面が無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面である積層フィルムからなる吸汗シート。
【請求項2】
吸水性繊維からなる不織布が、ナイロン長繊維不織布、または、綿不織布であることを特徴とする請求項1記載の吸汗シート。
【請求項3】
前記積層フィルムの厚さが0.2mm〜0.7mmであることを特徴とした請求項1、または、請求項2記載の吸汗シート。
【請求項4】
請求項1、請求項2、または、請求項3記載の吸汗シートの無添加ポリエチレン樹脂面、または、エラストマー混合ポリエチレン樹脂面同士を対向させて側端部にヒートシールを施し、上下に開口部を設けて形成した吸汗シート筒状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35147(P2013−35147A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170884(P2011−170884)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】